*この頁は故西尾等さんが遺されたホームページを再録させていただいているものです。→その表紙ALS [2003.7 再録:立岩 真也]



ベッドのイラスト床ずれ防止マット各種ベッドのイラスト

ALSは進行すると、筋肉の喪失により、アチコチの骨が露出し、痛みを生じます。体位交換をしていても、数時間は同じ体位を続けるために、持続圧迫や血流阻害の為に痛みを生じます。痛みを放置すると、床ずれとなり、皮膚の表面が爛れ、感染をおこします。特に尾骨と肩の背中側の骨(肩甲骨)が痛みます。
また、手や足の指が内側に曲がり、マットにひっかかって痛くなります。
そのために、各種の福祉用具が開発され販売されています。これらの製品の情報/カタログを集め、患者の進行に合わせ、痛みを防止してあげる努力は、何よりも身動きの出来ない患者にとり、非常にうれしい行為です。
痛みや苦しみがあると、カーッと暑くなり、汗をかき、風邪や発熱の原因になります。熱が無いのに異常に汗をかいていたり、赤い顔をしている時は、痛みや痰がつまり苦しい時などの場合が多いのです。
蓐瘡(床ずれ)は、病院入院患者にとり感染のリスクとなります。特にMRSA(メシチレン耐性黄色ブドウ球菌)や皮膚炎症菌や伝搬性の強い疥癬の巣になることが有ります。これらは主に医療従事者を介して伝搬します。最後の切り札の抗生物質、バンコマイシン耐性菌の出現は脅威です。
これらに対処するには、免疫力、抵抗力を失わない事です。もちろん蓐瘡防止と、鼻孔や口腔のイソジン液による消毒も基本ですが。
もし急激に体重減少がある時は、カロリー不足が考えられるので、主治医に積極的に相談しましょう。
  1. 病院で使用しているエアーマット
    凹凸のあるビニールに空気をコンプレッサーで送り、持続的に膨らまします。マットには複数の小さな空気穴が開いており、空気が常に出て、乾燥させるそうです。上に電気毛布を敷く機会が多いし、シーツ/バスタオルで殆ど効果は無く、逆に尿が漏れると故障の原因になる。それに、ALSのように、まったく身動きの不可能な患者には、痛みの軽減にはあまり効果はありません。大抵のALS患者は臀部に痛みを訴えています。

  2. 特殊な波打つエアーマット
    凹凸のあるビニールに空気をコンプレッサーで送るのは同じですが、波打つように、空気を順番に抜いたり膨らましたりして、同じ位置での圧迫を防止して、痛みをかなり軽減してくれます。

    1. ドクターマット。(ケープ社)
      エアーマットの堅さは、おおよその体重を設定する事で可能です。
      エアーマット写真
    2. 花ゆらぎ。(モルモン社)
      特徴は、頭の部分に空気が入ると、固定されて上下しない事です。
    3. ウエービングマット。
      松下電工の製品です。

      どの製品も10万から13万位の定価です。日常給付対象外になっている自治体が多く、自己負担を覚悟しておきましょう。

  3. フローテーションマット
    こんにゃく状の特殊なゲルで体圧を分散させようとするタイプです。車椅子用とベッド全面に敷くものと、肩から尻までをカバーする3種類があり、メーカーによりウレタンの二重構造のものや、厚さもいろいろあります。
    かなり重く、ベッドに敷き詰めると電動ベッドが壊れそう。あまり長時間の使用には、痛みを生じる。車椅子用の30cmx30cmでさえ、両手で持上げないと上げにくい。両サイドに持つ所のあるカバー付きが便利。冷感がある。

  4. 踵の痛みを軽減する円座
    踵や手首がマットにあたり、特に足首が倒れすぎたりすると、踵や足首が痛くなります。 そのための、踵用の小さな円座が市販されています。
    マジックテープにより、自由に円の大きさを変えられます。綿やタオルを使い家族でも作れます。

  5. 膝下に入れる枕
    足を伸したままだと、膝が伸びたままになり、突っ張ってしまいますし、尾骨もあたる部分がいつも同じになります。また踵も立った状態を維持しなければならず、しんどくなります。適度な太さの丸太状の枕が、快適です。

  6. 体位交換の時に、背中に入れる枕
    折畳み式の物から、普通の市販の枕など、様々なタイプが有ります。あまり厚いものにすると窮屈に感じます。また肘の骨が出た時に、背中の枕の上に置き、体から離したい時があります。手や肘や膝の間に入れる軟らかくて平らな小さな座布団も便利です。

  7. その他の問題になる部分

    1. 手のひらの親指の付け根の骨
      痩せてくると、マットに置くのが苦痛になります。

    2. 腰骨
      腰骨骨格イラスト
      痩せると、突き出て、手をお腹の上に置くと、あたって痛くなります。

    3. 肘の骨
      ひじ骨格イラスト
      夏の間は、手を布団の外に出し、羽毛布団にのるようにしています。

    4. 足の指
      指はどうしても内側に重力に引かれるように、曲がります。手の指もなるべく伸すようにしましょう。足と手の指1つ1つに挟むようにする小道具(五輪の輪みたい)があります。



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