表紙 SSKA・障教連だより ひとずじの白い道 第5号1994年6月 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 編 p.1 巻頭記・ひとすじの白い道・・・大葉利夫・・・P.2 第一部軌跡一会の活動報告・個別問題…P.7 軌跡一93年12月〜94年3月の動き…宮城道雄・・・P.8 都教委交渉の経過報告…坂西ひとみ…P.13 大里問題の経過報告・その3…大里暁子…P.12 93年度末報告…宮城道雄…P.20 資料1・都教委への申入れ書(12月)…P.21 資料2・都教委への申入れ書(1月)…P.23 資料3・都教委への申入れ書(3月〉…P,25 資料4・大葉教諭の来年度異動実現に向けた取り組みのお願い 都高教あて・・・P.27 資料5・大葉教諭の来年度異動実現に向けた取り組みのお願い 都高教東村山高校分会あて…P.29 資料6・東村山高校長への手紙…P.30 資料7・異動に関する事情…P.31 資料8・異動に関する緊急」のお願い…丸山隆…P.33 資料9・大葉教諭の異動に関する緊急のお願い…宮城道雄P.34 資料10・アシスタントに関する資料…P.36 資料11・筑波大付属盲学校長あて要望書…P.38 資料12・JR国分寺駅あて要望書…P.40 資料13・読売新聞記事…P.42 資料14・毎日新聞記事…P.43 資料15・生活ネットワーク熊本への原稿…P.44 資料16・三多摩処分交流集会…P.46 資料17・マスコミむけビラ「街頭署名第三弾」…P.47 編集後記…宮城道雄…P.48 p.2 巻頭記「ひとすじの白い道があるD」 検証「ひとすじの白い道」 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表 大葉利夫  本会が1991年10月に発足して2年半が過ぎます。巻頭記第2回 目として「ひとすじの白い道」を検証してみたいと考えています。短く もあり長くも感ずるこの期間でありましたが、良いことも悪いことも 色々とありました。まだ、歩き始めたばかりの私達の道を検証してみま しょう。 T.道標(みちしるべ)  我らが道に「制度」への標識がたてられた。しかも、私達自らの力で 立てる事が出来た「道標」である。私達の血と汗が染み込んだ「道標」 である。 @勤務時間内「人口透析」通院が実 現!!  93年12月、ついに都教委は全都の教育現場に、私達の主張を「認 める」指示を出す。 A「障碍」を理由とした「持ち時間の適正化(軽減)」が実現!! 94年1月、12年に渡る大葉の要求に対して、障教連に正式に都教 に要求が可能になった。 p.3  以上2点についての詳細は、次号以降で「道標」のコーナーを設けて 述べさせて頂きたいと思います。経過や成果や問題点も含めて書きま す。 U.大いなる成果 @道標(上記) A点と点を結び支援運動  本会の目標の第一に揚げられている、孤立している当該者との連絡が 出来、当該50人、共に100人を数える会員数となった。そして、い ま全国を大きく3地域に分けて、今後の連絡のネットワーク化をしなけ ればならない時期になり、現在3人の方にその役割をお願いしていま す。 B広がり  他団体・組合との連携・NHKテレビ・朝日新聞等マスコミの報道が かなりの回数となっており、本会の主旨と支援の広がりが増している。 C行政との交渉の継続  都教委とほぼ毎月のペースでの交渉が行なわれている。制度について と当該個人の問題について交渉が継続されている。 D「特別措置教員制度」適用からの脱却、復職の実現、分限免職・休職 の撤回の実現、当該に対する職務内容の配慮の実現。 E「障碍保障制度」確立に向けての全国署名  都道府県の教育行政と文部省に宛てての署名が展開中で、本年6月に 東京都に対して提出の予定で進行中。 V.問題点と取組方  私達の道は誰も踏み切れなかった所に道を作ろうと言う事業であり、 苦しい事が当然で、しかも未経験であり道に迷ったり引き返したり、い ちいち考え直しながら進まねばならぬ事ばかりです。その為私が、「明 日無き障教連」「特別記事:限界障教連」を会員通信に掲載せざるを得 なくなりました。それに対する反応として、「冗談でしょ」「考えすぎ p.4 じゃないのか」の反論的意見や、「本当にそう思う」「なんとかしなけ れば」「知らなかった」「頑張れ」と様々な反応が有りました。ともか く私としては、本会が抱え込んでいる「危機」を伝え、「解決」の道を 見いだしたいと真剣であり、切迫した心境で書き綴った事は間違いあり ません。改めて問題点を整理し今後の対策を考えてみましょう。 1.当該者について @自分自身の障碍を容認しきれないでいる事が多い。障碍に対する恐怖 感から脱出する必要がある。 A障碍を持つ者が置かれている過去や現在の現実の厳しさを知らない場 合が多い。その為、障碍があれば周りが「何で温かくしてくれないのか 不思議だ」とか、「自分の危機」が切迫している事に気がつかない事が ある。 B自分自身の障碍に対して精いっぱいで、他の障碍に対する「共有化」 が必ずしも出来ない。 C自分の問題が解決すると去ってしまう会員もある。退職すると脱会し たりする当該もある。自分の経験を今後の運動の中で生かして行く事が 必要である事を考えて欲しい。 D本会が自分達で作っていく会である事が忘れられ、「某相談センタ ー」と捉えている感があり、頼り切ったり任せ切ったりで、それでは会 が押し潰されてしまう事に気がつかない場合が多い。 E現状では、教師を辞めても「年金」があり、本当に生活が困る状態に はならない。無理をしない事と、頑張る事がここでは「交錯」する。 F障碍を持つ教師が働き続ける為の運動は何かをよく考え、お互いの立 場を認識しながら運動していかなければならない。 2.会の運営について @当該も共に会員も「専従者」に成り得る余裕(ゆとり)のある者は、 私を含めて誰もいない。会の推進役(担い手)になれる人は少ない。そ の為一部の人達(運営部)に非常に大きな負担がかかったままである。 この状態では長くは続かない。 p.5 A問題に直面している当該は「藁をもつかむ」様な勢いで来るが、その 勢いをまともに受け止めて来た。これも今のままでは限界がある。受け 止める必要性はあるが。 B当該を支援する立場は、当該に対する客感的見方がなかなか出来な い。問題解決の為には総合的な視点を持って行わないと、当該の勢い に流され、結果を誤った方向に導いてしまう。私も素人であり、会も経 験が浅いので、この観点でのやり方を身に付けなければならない。 C会費の使い方は、印刷代・郵送費で精いっぱいである。電話代や交通 費その他の必要経費が、一部の人の個人負担にならないようにする必要 がある。現実はそうだが、一部に年会費四千円が高いとか、自分に直接 見返りがない等の声があったりして当惑している。 Dさらに多くの人の入会が望まれるが、東京中心の動きでも精いっぱい の中だけに、早く全国的な動きの取れる会にしなければならない。担い 手と時間と体力とが不可欠となる。 3.対外的 @個人の対応に始まり、その人の職場・組合・管理職・教育委員会と活 動の範囲は広く限りなくなる。これに対して動ける者の数は少ない。 A行政との壁は厚く、制度の上で仕事をしている立場からは「制度が無 いから出来ない」で逃れようとするのを、なんとか真実を訴え人間的対 応をさせる手法は、簡単には表現出来ない困難がある。例えば、都教委 がこの1月の交渉で「打ち切り宣言」うぃ出して来たりした。現在それを 一応乗り切って交渉を続けるに至っているが。 B「制度化」させる働きかけは、多くの支援・理解を得ながら政治力の 大きな城壁を崩して行かなければならず、果てしない体力と気力が必要 になる。 Cマスメディアの協力も不可欠であるが、継続的な取材は殆望めない。 しかし、継続的な取材がなければ、本会の運動の真意は広がらない。 D主権国民は、自らが守り主張すべきだと言うパワーが弱くなってい る。運動のエネルギーの源がここに存在するはずであるが。 p.6 4.私として  本会の代表である私も、視覚に障碍を持つ教師である。普通高校で 「生徒の顔や黒板の字が見えない」中で数学の授業を行っているが、 やはり障碍を持つ者が制度の無い中で職務を遂行する事は大変である。 同僚の理解・協力だけでは限界があり、さまざまな困難を生じる。  肉体的には眼精疲労のひどさから、週2回ハリ・マッサージ治療を 受けているが、疲れは日に日にひどくなり、意識や平衡感覚が麻痺した り、首や背中のコリの痛みにより思考力が失われる時間の方が多くなっ てしまった。鎮痛剤を手放せない状態である。  この状態で本会の運営に責任を持って携われない場面も出て来てい る。本会の目的達成の為に頑張る所存でおりますが。 Y.ひとすじの白い道は続く  以上、色々と「ひとすじの白い道」を検証してきましたが、大きな成 果を得ながらも問題も多く出て来ているようであります。  しかしながら、私達の道は苦しい事が99.9%であるが、それでも この道は歩まねばならない。障碍を持つ者が当然に生きられる社会にた どり着くまで、働ける条件や生きられる条件が当然に整った社会を目指 して道は続く。風雪にさらされても、炎暑の中でも歩き続けなければ、 目的には決してたどり着けないのである。 写真省略「道行く人たちに署名をよびかける、協議会のメンバー=18日午後、JR飯田橋西口で p.7 第1部 軌跡 会の活動報告・個別問題 今回はページ数の都合により 第1部のみとなっています。 p.8 軌跡−93年12月〜94年3月の動き 宮城 道雄  今回は93年12月から94年3月までの活動の報告をします。 1.前進  93年度に入ってから月に1度のペースで都教委交渉を行ってきて いるが、その結果として年度末になって大きな2つの成果を得ることが できました。  第1は、2月22日に、来年度については、勤務時間適正化(5時間 の講師配当による授業時間の軽減)が障碍者であるという理由で正式に 認められたことです。昨年の9月から6時間の時間軽減は実施されてい ましたが、それは校務運営上必要であるからという理由で、本質をぼか して限定された措置でした。その後、1月27日の交渉の席上、講師時 数の配当方針の「その他」の項目の中に、障害がある場合を入れて考え ているということを確認してはいましたが、数回の交渉の粘り強い積み 重ねが今回の結論を引き出したと言えます。視覚障碍を持つ人が教師と して充実した授業をやるために認められ、補助を受けながらの授業準備 等の時間が保障された事になり、障碍保障制度につながる第一歩として 画期的な成果と言えます。  第2に人口透析を受けている人の勤務時間内の透析通院が時間病欠 (身分上・賃金上不利益の無い)が94年4月から正式に認められたこ とです。区教委にもすでに連絡済みだそうですが、これも障碍保障制度 につながる一歩として大きな成果です。  要配慮教員制度の問題点については、都教委としては、障碍者が働き 続けるための制度では無いことを認め、障碍者が働けるようにするには どんな対応措置を取ればよいのかを検討しているとの返答を出させた事 は前進です。障碍保障制度の検討経過は、人事部として、視覚障碍者が 働くための条件作りとしてアシスタントの配置など、実例を収集調査し て必要性など研究しているとの回答を引き出せました。  障碍保障制度の確立に向けた全国署名については、昨年の9月に開始 してから7ヶ月経って、全体の集約をしてみると、文部省宛は8万6 p.9 千、東京都宛は6万6千と日教組が取り組んでくれたこともあり、大量 の数が集まったと言えます。「障」教・連独自の署名活動も意欲的に行 われてかなりの成果をあげているし、運営部として街頭署名を実施し て、マスコミ等の取材も入って宣伝活動を幅広く展開してきた事は極め て効果的でした。勿論、これらの取組みの中において、日教組をはじめ 各組合につながりができて今後の活動へと発展する可能性を切り開いた といえます。地域的にも大きく広がり、熊本や兵庫にも活動の足場が確 実にできてきています。 2. 課題  94年度も都教委交渉を月に1度のペースで持ち、障碍保障制度確立 に向けて着実な話合いを計継続することが大切です。  交渉の中で、第1に中途障碍を持つ教員が仕事を続けるために、要配 慮教員制度に便宜的に適用するのでなく、障害者が職務を継続するため の対応措置を引き出すことが必要です。第2にこの交渉に応じている都 教委は3氏が障碍保障制度を検討する人であることが確認されたわけ、 それを継続させ実をあげるように努力すること。具体的には、去年から 話題になっていた視覚障碍者に対してのアシスタントの配置について都 教委の中で研究検討した結果を明らかにして、新規採用者並びに中途障 碍者にも適用させることです。  会としては、数多く存在する当該者の抱えている困難や問題を把握し て、校長と教育委員会に要望事項として提出していき、困難にぶつかっ て苦しんでいる教員の実例を交渉のテーブルに載せる活動をしなければ なりません。継続している課題と新しい課題について粘り強く交渉して いき獲得される成果の積み重ねが障碍保障の中身になることは明白で す。  大葉問題では、異動が実現できなかったために通勤が危険極まりない 状況を解消しなければなりません。また補助機材のソフトの研究・開発 のための外出を認めさせる必要があります。大里問題では、要配慮教員 制度の便宜的な適用の3年目となるが、障害があっても働けるように加 p.10 配措置を取るように要望し、同時に授業をやれるという実績を積み上げ なければならない。また、長期研修中(夏休み等)の透析通院が時間病 欠を取らないとできない状況にあるが、改善しなければなりません。  署名については、集約したものを都議会及び文部省に請願署名として 提出し、その活動の過程で、マスコミ等の協力を得て大量の宣伝活動を 展開して署名の主旨を広める世論形成の運動に組み立てて行くことで す。都議会の全会派の議員に働きかけて紹介議員になってもらい、すぐ に採択されないまでも、保留のままにしておき、継続的に署名活動を実 施して、まだ残されている組織や団体に働きかけて署名の主旨を全国 津々浦々まで広げて行かねばならない。焦らずにじっくりとした運動の 継続の中に採択の展望も開けるだろうし、この様な活動の高まりの中で 教育委員会の姿勢にも少しずつ影響が出てきて都教委交渉にも反映する にちがいない。  以上の活動を積極的に進めるうちに、多くの障碍を持つ教員が本会に 加入することが期待できるし、会員も全国的に広がりをもつことにな り、文字とおり点からネットへと組織が拡大し、本会と組合や各団体と の協力関係ができて来るし、マスコミとのつながりもできて、それを 担って行く運営部の活動の大きさと重みがますます増大して来ます。運 営部の自覚を高めて活動を活性化するとともに、各地域の活動を確立す る必要性がも出てきています。  多くの中途の障碍を持った人は自分の障碍を受け入れて生き方を定め るという難しさがあり、障碍について周りの仲間に理解を求めるという 困難さと仲間に支援を受けながら働き続けるための条件作りをしなけれ ばならない難しさがあります。健常者と障碍者が共に生きる社会の実現 の為にはこのことは当たり前の活動だと思われますが、大変自覚的な前 向きの行動です。当該者とかく苦境に陥ると余裕が無くなり、自分の事 しか見えなくなりがちですが、上記の事を冷静に考えて、それぞれの困 難を乗り越えて会と共に頑張りましょう。 3.主な日程と動き p.11 ■12月 04日(土)運営会議、飯田橋セントラルプラザ 18日(土)定例会、学習会、特別措置教員制度について      忘年会、小石川後楽園函徳亭 25、26日(土、日) クリスマス会及び合宿、            多摩障害者スポーツセンター 26日(日)臨時拡大運営会議、赤ひょうたん 29日(水)担当会議 ■1994年1月 04日(火)担当会議 05、06日(水、木)全国視覚障害教師の会役員会、京都 08日(土)運営会議、赤ひょうたん 09日(日)読売新聞「教員転化試験で視聴覚条件など撤廃へ」掲載 13日(木)都教委部と電話交渉 22日(土)街頭署名、定例会、JR四谷駅下車、       盲人職能開発センター       学習会:難聴問題について 23日(日)NHK「障害者の時間視聴覚条項等撤廃」 27日(木)都教委交渉、都庁28F教育委員会 29、30日(土、日)伊豆高原旅行 ■2月 05日(土)中野駅北口、中野勤労福祉会館 10日(木)坂本職員課長との話合い 19日(土)定例会、盲人職能開発センター 20日(日)荒馬まつり、浦和障害者交流センター ■3月 p.12 04日(金)三多摩反処分交流集会、国分寺勤労福祉会館      担当会議 05日(土)国分寺駅改札口実地調査      運営会議、富士見会館、飯田橋、署名 06日(日)視労協交流大会、王子障害者スポーツセンター 12日(土)大人の学芸会 18日(金)国分寺駅改札口改善の要望書の提出 19日(土)大里問題担当会議 25日(金)毎日新聞、国分寺駅問題掲載 26、27日(土、日)春のミニ合宿(浦和武蔵野会館)           JR京浜東北線北浦和駅 p.13 都教委交渉の経過報告(93・12〜94・3) 【12月9日】 出席:宮崎管理主事・井上人計課係長・中島職員課係長 障教連5名 (1)大里さんについて ◇人工透析のための勤務時間内通院について  中島氏より、大里さんの有給休暇がなくなるという事態を考慮し、年内には庁内の 合意を得た上で具体的な対応策を出し、所属長を通して本人に伝えるという回答があ った。 ◇勤務内容について  通級学級「研修」の受け入れが決まらないことについては、区教委に本人の 要望を伝えて任せてあるので、これ以上の指導は都教委としては出来ないとのこと。 また、現在大里さんが授業を一部受け持っている音楽と図書の時間の評価に関しての 質問には、「個人の評価について述べることは出来ないが、順調に消化しているとい う観点で見ている」との返答。校長が大里さんが一人で授業をすることを「要配慮教 員だから」と認めない点については、宮崎氏から「大里さん一人でやらせる方向でよ ろしく」と伝えてあるとのことだった。  次年度は、「要配慮教員」の便宜的適用をはずし、障碍者が働くための「加配措置」 を講じるようにという私たちの要望に対しては、過員解消が至上命令の現状で制度と しても認めていない加配をするのは財政上難しいと強調するばかりで、平行線に終わ った。また一般論と断った上ではあるが、都教委内には、「要配慮教員制度」を中途 障碍者にも拡大してリハビリテーション機関にあてたらどうかという意見もあるとの ことだった。 (2)大葉さんについて  ◇異動の要望について担当者と直接話し合うことに関しては、伝えておくとは言う ものの、校長を通じたヒアリングという正規のルートで要望を出すようにとの原則論 に終始した。  ◇補助機器の研究・開発や資料収集のための勤務時間内の外出が、校長が変わって から認められなくなったことについて都教委は、研修日に行くのが服務の原則である と強調し、障碍者に対して配慮しようとする姿勢は全く見られなかった。中島氏が校 長からも事情を聞いてみるとのことで今回は終わった。 p.14 ◇教科書や教具等にかかる費用の公費保障については、予算面の問題はあるが、基 本的には考えて行かなければならない課題だと答えた。 ◇持ち時間軽減のための講師配当を次年度以降も継続するようにという要望に関し ては、単年度限りの措置なので改めて検討することになるとの回答。 (1)栗原さんについて  ◇慢性関節リウマチにより現在休職中だが、94年5月には復職の予定。学級担任と なった場合、体育の授業や遠足等の行事は病気の悪化につながるので事実上困難であ ることを訴え、具体的な対応措置を要望した。都教委としては今後の課題として受け 止めていると抽象的に述べるにとどまり、校長とよく話し合って対処してもらいたい との回答だった。 (2)障碍保障制度について  ◇制度が整備される以前に緊急な対応を必要とする教員に対しては、ここの事情に もよるが、申し出があれば対応する方法を考えるとの回答。  ◇前回、人的対応を重点的に考えていると答えたのは、出席している担当者が人事 部所属だからであり、補助機器・施設設備等の物的保障に関しては管轄が異なるので 校長から各所管課に予算要求をしてもらうことになると説明があった。物的保障も含 めた要綱の可能性については難しいとの回答だった。 【12月17日】 出席:井上氏 障教委3名 ◇大葉さんの異動希望について 昨年度、荘田さんのケースで異動の実務担当者に直接会って要望した例があり、障 碍ゆえに緊急に異動を必要としている大葉さんの場合も特例として取り扱ってもらい たいことを、希望する事情を再度詳しく説明し、民間における進んだ実例も紹介して 強く要望した。 【1月27日】 出席:井上・中島氏 障教連5名 (1)障碍保障の制度化に向けた都教委内での話し合いの経過  8月以降5、6回会議が持たれた中で、最初にワークアシスタントについて検討し た。次に「要配慮教員制度要綱」について、障碍者に対しては別のものとして考える p.15 か、要綱を根本的に見直して、その中で同じように定数措置が出来るようなものにし て行くのか検討されている。点字受験による新規採用者のこともあるので、採用選考 の時期までには何らかの考え方を持っておく必要があると考えている。 (2)異動要綱の中に「障碍がある場合」を特別事情の一項目として加えることにつ いては、現在の要綱でも個々の事情は校長を通したヒアリングで聞いているから対応 出来るとの回答だった。折しも来年度の中間内示があった直後で大葉さんの異動は今 年も実現しなかったことから、再度、特別事情として加えることを強く要望した。 (3)「講師時数の配当方針」の中野勤務軽減を認める事由に「障碍がある教員」も 対象に加えて、必要な場合に持ち時間の軽減を、という要望については、(3)「そ の他」を、個々の事情に応じて必要な場合と読み込んで大葉さんのケースにも対応し たと回答があった。 (4)大里さんに関して、次年度は「要配慮教員制度」の適用からはずして加配扱い に、という要望に対しては、次年度の扱いについては検討しているところであり、結 論は出ていないとの回答。担当の宮崎氏が欠席したこともあり、突っ込んだ話し合い は出来なかった。 (5)大葉さんについて  ◇次年度の持ち時間軽減について  2月に入って各学校からの聞き取り調査が始まるので、その後検討することになる との回答。  ◇補助機器の研究・開発等のための時間内外出について  「服務を正す」ことにおいては障碍者も一般の教員も同じであるとし、障碍ゆえの 困難性を主張したが、平行線。  ◇公費保障については、学校を通して管轄している課に要望して行けば、後は説得性 の問題であるとの見解だった。 【2月10日】 出席:坂本職員課長 障教連3名  ◇大葉さんの異動について  中間内示が出され、来年度の異動だ出来ないことが明らかになったため、理由の説 p.16 明を求めた。都教委としては過員解消を第一に考えていて、現在どれくらい過員を生 じているかの説明が大方であった。しかしながら結果として過員になる場合が必ず出 てくるのだから、「結果過員」として異動させられないかと要望したが、難しいとの 回答であった。来年は12年目で必異動の対象にもなるから今年よりは異動しやすく なるだろうと気休め的な話は出たが・・・。大葉さんは現在、学校と最寄り駅の間は生 徒やボランティアの介助を受けて通勤している実態を話し理解を求めたところ、出退 勤時間をずらす等の工夫が校長との話し合いで出来ないかと提案があった。 【3月25日】 出席:宮崎・井上・中島氏 障教連7名 (1)大里さんについて  ◇94年度も「要配慮教員」の適用が決定されたことについて  93年度に計画していた「研修」の中身(通級学級での研修)が十分やりきれてい ないことが理由として上げられ、どういうかたちで現場復帰が可能か出先が見えない 状態なので、校長や区教委とも相談してごこが適切か総合的に判断して行きたい、と 宮崎氏。校長から出されている「研修実績」の内容については、個人の評価に関わる ことなので言えないが、マイナス評価だけではなく、これまでの積み重ねが研修にな っていると強調していた。また、制度の適用は3年が限度であり、延長はないとのこ とである。  ◇94年度の勤務内容について  93年度、通級学級での「研修」受け入れ校が決まらない中で3年の音楽を受け持 ってきた実績を踏まえ、低学年の音楽専科を希望した。それに対し都教委は、低学年 の音楽専科という配置はしていない、障碍者ということでの加配も難しい、現状の中 で見通しの持てる方向で考えてもらいたいと、否定的な見解を示した。 ◇透析通院について  去年12月に大里さんに対し認められた「時間病欠」(定期昇給等の賃金上の不利 益はなし)が94年4月から東京都全体に適用され、各市区教委に口頭で伝えられた ことが明らかにされた。ただし、長期研修中(学校の夏休み等の期間)の通院も、研 修には当たらないので時間病欠の扱いになるという問題点は残されており、今後の交 渉課題である。 (2)大葉さんについて ◇補助機器の研究・開発等のための時間内外出については、中島氏が何度か校長に電 p.17 話をしているので結果を聞いてみたが、他の人とのバランスを欠くことにもなり、特 別扱いは出来ないから研修日を利用せよという服務上の原則論が改めて繰り返された だけだった。 (3)障碍保障制度について ◇資料集めや検討した中身の再整理をしており、4月以降に開かれる全体会の中で、 人事部として対応出来る中身について提案して行く予定とのこと。 (文貴 坂西) p.18 大里問題の経過報告 その3 品川区立城南第二小学校 教諭 大里暁子 {視覚障害 人工透析} 1 93年度の勤務内容  音楽・・・3年1組{火・4校時、金・1校時}担任は40代後半 のベテラン。主に授業を見せてもらう。9月からシンギングゲーム{ふ りつけ歌}を月に1曲の割で毎時間5分くらい授業をさせてもらう。 3年2組{火・3校時、金・3校時}担任は20代後半の若手の先生。 音楽は苦手らしく、もっぱらCDを愛用。そこでオルガンで伴奏を 手伝う。9月から1組と同じ様にシンギング・ゲームの指導とオルガン の伴奏に慣れると共に歌唱指導も伴奏中にできるようになる。  図書・・・1年1組{月・2校時}、1年2組{火・2校時}、2年 1組{土・2校時}、2年2組{木・2校時}、4年1組{金・2校 時}、4年2組{水・2校時から月・3校時へ} 2年と4年は4月か ら、1年は9月から始める。クラス担任が児童を図書室まで連れてきて くれる。授業の始めの5分から10分ぐらいを点訳したものやテープ 図書から抜粋したもの{主に童話などのオリジナルなもの}を話して聞 かせる。その後は読書指導。クラスによっては45分間まかせてもらっ ている。図書の貸出しは担任もしくは、できる学年は児童を使って行 う。  心障学級・・・3学期から。始めは水曜日の3・4校時。2月からは 水曜日の1から4校字まで。いろいろ授業を見せてもらったり、指導に 参加させてもらったり。  校務分掌・・・ほとんど名前だけ。{庶務・生活指導部・環境部会}  生活指導部では毎月の生活目標を画用紙に印刷して配る仕事をひとり p.19 で担当。学校行事では名前だけは入っているが実際仕事はない。看護当 番{日直}は朝の開門だけは積極的にやらせてもらう。一度日誌が机の 上に置いてあったので回りの同僚の協力を得て、なんとか書いたがその 後二度と机の上には置かれなくなった。クラブは絵本作家クラブで、名 前だけ。{ただ、いるだけ}委員会も保健委員会に名前だけ{活動日が 主に月曜なので透析通院のため参加できない}  また、児童用の印刷物を配布。児童数と家庭数を点字化して職員質の 先生の机上にくばる。{空き時間のみ} 2 94年度に向けて   94年度の措置は2月15日に決定した。92年度、93年度は年 度末ぎりぎりまでかかったが、今回は校長が私との約束{「本人が納得 しない限り更新の手続きはしない」と校長は言っていた}を破って「特 別措置教員」の更新をしてしまったからである。研修報告は学期毎に校 長が作成して都教委へ提出しているが、実際と報告の内容が違っていて {授業時数や授業を校長本人が見ていないことばど}、それをもとに措 置が決定されたのだとしたら困るので、3学期に入ってから区教委に電 話で誤りを伝えてもらったが、何の変哲もない。要は授業が一人でどれ だけできるかという事にかかっている。そこで都教委から校長に指導 {一人で授業をさせてもらえるよう}してもらうが校長自身は都教委の いう障害者が働くための「特別措置教員」の制度{?}だとは理解して いない。とにかく、なるべく一人で授業を持たせてもらい、障害があっ ても授業は出来る事を認めてもらうしかないと思う。  そこで94年度は93年度の授業を生かし、音楽専科をめざすことと する。但「障碍保障制度」ができるまで過配の形で低学年の音楽を担当 したいと思っている。このため授業は去年係わった3年を持たせてもら い、4年は音楽専科の先生の授業を見せてもらい、2年の授業も手伝わ せてもらえればと思っている。一度には無理でも徐々にできる範囲を広 げて行きたい。 p.20 93年度末報告 宮城 道雄  94年度に向けた校内人事の結果と今後の課題をまとめます。  新年度の校内人事は分掌調整委員会の発表によると、2学年団の中に 学年付きとして所属することになりました。分掌は去年同様に進路指導 部です。学年付きとは私の弱視を配慮して特別に作り出された配置で、 担任8人副担任4人のほかにプラス1として、いわば加配の形で、できる 仕事があれば副担任と同じ様にやるという立場です。副担任の仕事は担 任の補助的なもので事務的な内容が多く、自分としては自信を持ってで きる仕事はほとんどありませんが、学年会の流れの中で経験を生かしな がら障害の実情を理解してもらうように努力して、自分の立場を行かせ る方法を見つけるこが課題だと考えています。進路指導部は慣れた部署 ですが、同僚の理解と協力の下に、統計処理などの事務的作業は軽減し てもらい、外部からのお客の接待とか、生徒に対する直接の指導に関わ るようにしたいと考えています。  私は職場では1年前に自分の目の障害の実情を公表したことや、会に 入って活動していることも知れているためか、かなりの配慮された立場 にあることに大変感謝しています。しかし、自分の職場での在り方をふ り返って見るとき、自分の障害を受け入れ切っていないことを反省させ られます。できない仕事はやらなくてもいいよと配慮されていることに なぜいらだつのか。気持ちをきりかえ自分はこれをやり切るという生き 方を確立しなければならないのですが、ふらついている情けない現状に 愕然とします。この辺を乗り切って道を切り開いていくことが重要な課 題です。 p.21 資料.1 1993年12月6日 東京都教育委員会職員課課長 坂本 清治 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表 大葉 利夫  貴教委と本会との間で継続して話し合いの場を設けて頂いていること感謝致 します。  さて、来る12月9日に予定されている話し合いを、短い時間の中で有意義に 且つ効率よく進めるために、これまでの経過を踏まえた上で、本会からの要望な らびに継続して話し合いたい項目を以下に列記しました。当日は下記の点につい て貴教委の見解を聞かせて頂くとともに、双方の話し合いを進めて行きたいと考 えていますので、宜しくお願い申し上げます。 記 一.大里教諭(品川区立城南第二小学校)について (1)人工透析のための勤務時間内通院について @11月11日に、主治医を囲んで、夜間透析の実態や身体に与える負担につ  いて学習する機会を持ったが、それを受けて都教委としてどう考えるか、改  めて見解を示して頂きたい。 A89年に都労連との間で合意が成立し、他の部署では実質的に認められてい  るにも関わらず、教育委員会のみ認めない立場を固執するのはなぜか。 (2)勤務内容について @受け入れ校の事情で二学期中は通級学級での「研修」が実現しなかったが、  今後の見通しはどうか。 A現在、音楽と図書の時間を担当教諭と連携しつつ受け持っており、その範囲  も着実に拡大しているが、この間の実績をどのように評価するか。 Bダブル障碍を抱えながらも、今年度着実に勤務内容を充実させてきている。 p.22 身分上も不安定な「要配慮教員制度」の便宜的適用ではなく、ノーマライゼ イションの見地に立って、障碍者が働き続けられる環境を整えるために、加 配措置を次年度は講じて頂きたい。 二.大葉教諭(都立東村山高校)について (1)視覚障碍が進行し通勤路が極めて危険な状況にあるため、異動を希望して  いる。現在の異動要綱の中には「特別事情」として「障碍」の項目は含まれてい  ないので、実体を知って頂くために、ぜひ担当者に直接話せる時間を設けて頂き  たい。 (2)視覚障碍を補う補助機器を研究・開発するための、関連施設への勤務時間  内出張が今年度に入って認められなくなったが、都教委としてはどう考えるか。 (3)現在は個人で負担している教科書等の点字・テープ化および教材作成に必  要な費用を、公費で保障して頂きたい。 (4)授業内容を充実させるための事前の教材準備や対面朗読の時間を保障する  観点から、次年度以降も講師配当を継続して頂きたい。 三.栗原教諭(足立区立宮城小学校)について  慢性関節リウマチのため現在休職中で、94年5月復帰予定。障碍の性質上 担任を受け持った場合の体育の授業や遠足等の学校行事に不安がある。復職に当 たっては、都教委としてどのような配慮が可能か。 四.障碍を持つ教員が働き続けるための制度的保障について (1)現在は検討段階とのことであるが、制度化以前に早急な対応を要する障碍  を持つ教員に対しては、当面どのような措置を講じて頂けるのか。 (2)まずは人的措置を先行させるとの考えを示されているが、補助機器、施設  設備等の物的保障はどのように進めて行かれるのか。 (3)現行制度の部分的見直しではなく、様々な障碍に応じた対応措置を一括し  て明確にした「障碍保障制度要綱」の作成に関する考えは。 (4)公立高校で「障碍保障」が制度化された場合に、私学への「指導」も考え  られるか。 以上 p.23 資料.2 1994年1月24日 東京都教育委員会職員課課長 坂本 清治 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表 大葉 利夫  1月27日に予定されている貴教委と本会との話し合いに向けて、以下の項目 を要望ならびに質問事項として申し入れます。  なお、これまでの話し合いの中で、「担当外なのでわからない」というお答え が何度かありましたが、貴重な時間を有意義なものにするためにも、担当者の出 席、もしくは出席できる方が事前に担当者と話し合って、責任をもって回答して 頂けるようあらかじめ要望するものです。 記 一.都教委で、昨年8月以降、数回に渡って障碍を持つ教員への対応について 検討するための話し合いが行われているようですが、その経過と今後の見通しを お聞かせ願いたい。 二.「異動要綱」の中に「障碍がある場合」を特別事情として加え、優先的に異 動できるよう配慮して頂きたい。 三.「講師時数の配当方針」の中に「障碍がある教員」も対象に加え、必要な場 合に持ち時間の軽減が行えるようにして頂きたい。 四.人工透析を受けている教員に対して、本人が希望する場合には勤務時間内の 通院を保障して頂きたい。 五.大里教諭(品川区立城南第二小学校)について p.24 (1)透析通院について、次年度の取り扱いはどうなるのか。 (2)今年度の勤務実績を踏まえ、次年度は「要配慮教員制度」の適用から外し て加配扱いにして頂きたい。 六.大葉教諭(都立東村山高校)について (1)次年度の異動を従前から要望していますが、昨日の中間内示の結果を聞か せて頂きたい。 (2)現在の「講師配当」は当面今年度限りの措置とされていますが、次年度の 取り扱いはどうなるのか。 (3)補助機器の研究・開発のために関連機関へ勤務時間内に外出できるよう要 望している件について、校長からも事情を聞かれたと思いますが、どう判断され るか。 (4)教科書等の点字・テープ化および教材作成に必要な費用を、公費で保障し て頂きたい。 七.栗原教諭(足立区立宮城小学校)について  本年5月復職予定。慢性関節リウマチのため、体育の授業や遠足等の学校行事 への参加が困難なので、講師等の対応措置を講じて頂きたい。 八.藤本奈津子教諭の件  人工弁と片足切断の障碍あり。週4時間程度の家庭科講師を希望しています。 本人の意欲を生かし、通勤に支障がない範囲の学校に勤務できるよう可能な援助 をお願いしたい。 九.他府県の障碍を持つ教員への対応例について(資料持参) 以上 p.25 資料.3 1994年3月21日 東京都教育委員会職員課課長 坂本 清治 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表  大葉 利夫 3/5の話し合いに向けて  貴職におかれましては、毎回ご多忙の中で本会との話し合いの時間を設けて頂 いていることを感謝致します。  先に、大葉教諭の94年度の持ち時間に関しては、私達が要望しておりました 「障碍」への配慮による講師配当が行われることとなり、「障碍」を持つ教員が 働き続ける上で大きな前進となる措置を講じて頂きました。まだ様々な課題は残 っておりますが、引き続き検討を進めて頂き、「障碍保障制度」への足がかりが 一日も早く実現することを念願しております。  さて、今回もお忙しい時期ではありますが、以下の項目について話し合いを進 めて行きたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。 記 一.大里教諭(品川区立城南第二小学校)について (1)94年度も特別措置教員制度による「要配慮教員」の決定が出されたこと について  ア.決定の理由  イ.校長の報告に事実と異なる点があったことへの対処は  ウ.盲学校においては加配措置が講じられているが、大里教諭との違いは何か  エ.94年度が3年目にあたるが、95年度以降の対応の見通しについて (2)94年度の勤務内容について  今年希望していた「通級学級」での「研修」が実現しなかった結果を踏まえ p.26 て、今後の希望を述べたい。 (3)透析通院について 先日、校長を通じて申し渡された都教委通達の内容に関して 二.大葉教諭(都立東村山高校)について (1)通勤時の危険を避けるための出退勤時間への配慮について (2)補助機器の研究・開発や資料収集のための外出(出張)について 三.障碍保障制度の確立に向けて (1)前回の話し合い(1/27)以降の検討状況について (2)人的保障、特に今回はアシスタント体制について、大葉教諭の例や他府県 の事例を参考にして話し合いたい。 以上 p.27 資料.4 1993年11月15日 東京都高等学校教職員組合 執行委員長 清水 泰岳殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 副代表 尾崎裕子(視覚障碍担当) 大葉教諭の来年度異動実現に向けた 取り組みのお願い  日頃より私たちの会の活動に御理解と御協力を頂いていることを感謝致します。ま た、本会の代表でもある大葉利夫教諭(東村山高校分会所属)の持ち時間軽減(講師 時数の措置)が9月から実施されるに当たって、貴教組の多大なご支援を頂いたこと に対し、改めて御礼申し上げます。  さて、先に提出した来年度の異動希望調査書にも書きましたように、大葉教諭は目 の障碍が進行した89年以降、毎年異動希望を出しておりますが、叶えられないまま 現在に至っています。来年度の異動に向けては会としても全力を尽くすつもりでおり ますが、貴教組のお力添えを是非ともお願い申し上げたく、異動を希望する事情を以 下に記すとともに御協力を要望する次第です。  現在、最寄り駅から勤務校までは徒歩で15分程度ですが、歩道が全くなかったり、 片側にしかなかったりするため自転車との接触事故等が頻繁にあり、毎日大変な緊張 を強いられながら通勤しています。また、朝夕とも日光を真正面に受けて歩く方角と なり、光に弱い目の障碍にとっては危険性が一層増している状況にあります。通勤路 でこのように日々危険に直面していることは、精神的にも身体的にも大きな負担とな っており、大葉教諭にとって異動の実現は緊急な問題であると考えます。  現在校において授業など日々の職務は問題なく遂行されており、視覚障碍があって も教師として働き続けて行くことの可能性は、この間の実践で十分認められてきてい ると私たちは自負しております。  希望する地域を具体的に上げると小金井市・国分寺市・武蔵野市内の中央線沿線に ある高校となりますが、中でも通勤の便を考えますと、小金井北・武蔵・小平南の各 校を第一希望としています。御承知のように、現在ボランティアの方に対面朗読に来 て頂いていますが、慣れている方々に引き続きお願いするためには、あまり遠方にな p.28 らないようにしたいという事情もあります。手持ちの資料によれば小金井北高校に数 学担当の異動希望者がおられるようであり、そちらへ移動できれば最も希望に沿うも のとなります。  異動を希望されている方々はそれぞれ御事情がおありかとは思いますが、大葉教諭 の場合も上記に述べたような深刻な事情を抱えており、来年度の異動実現に向けて貴 教組のお力添えを、本会より切にお願い申し上げます。 以上 p.29 資料.5 1993年12月6日 東京都高等学校教職員組合 東村山高等学校分会 本部委員 熊手祥之殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 副代表 尾崎裕子 大葉教諭の来年度異動実現に向けた取り組みのお願い(校正者注:「大葉〜お願い」下線)  日頃より、私たちの会の活動に御理解と御協力を頂いておりますことに 対して、お礼を申し上げます。また、本会の代表でもある大葉利夫教諭の 持ち時間軽減が実現致しましたことも、貴分会の多大なご支援の お陰と、深く感謝致しております。  さて、先に提出した来年度の異動希望調査書にも書きましたように、大葉 教諭は、目の障碍が進行した1989年以降、毎年異動希望を出しており ますが、叶えられないまま、現在に至っております。来年度の異動に向けては 本会としても全力を尽くすつもりでおりますが、貴分会を通して校長や都高教へ 働きかけをして頂けましたら、どんなに心強いか知れません。  異動を希望する第一の理由は、通勤の不自由さにあります。自宅から貴校 までは、武蔵境と国分寺の両駅で乗り換えをしますが、ラッシュ時で、しかも 大勢の乗り換え客とぶつかり合うような位置関係にあり、たびたび 危険な思いをしておりますし、東村山駅下車後も、歩道の不備な道を 自転車との接触事故等にも遭いながら、毎日大変な緊張を強いられて 通勤している訳です。また、朝夕ともに日光を真正面に受けて歩く方角 となり、光に弱い目の障碍にとっては、危険性が一層増している 状況にあります。通勤路で、このように日々危険に直面していること は、精神的にも身体的にも大きな負担となっており、大葉教諭にとって 異動の実現は緊急な問題であると考えます。  通勤上の危険性のより少ない、大葉教諭の希望している地域への 異動を何としても実現させて頂きたく、都教委が最優先に配慮 するよう働きかけてください。  校内での対面朗読ボランティアを引き続きお願いするためにも、 あまり遠方にならないようにしたいという事情もあります。組合の資料に よれば、小金井北高校に、数学担当の移動希望者がおられ るようであり、そちらへ異動できれば最も希望に沿うものとなります。  交通事故等のために悔いを残すことのないよう、また大葉教諭が教 育に専念できるよう、格段のお力添えを切にお願い申し上げます。 p.30 資料.6 1993年12月6日 東京都立東村山高等学校長 留目 祐光殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 副代表 尾崎 裕子 大葉教諭の異動実現のためのご尽力の要請(校正者注:「大葉〜要請」下線)  日頃より私たちの会の活動にご理解と御協力をいただいておりますことに対して お礼を申し上げます。また、本会の代表でもある大葉利夫教諭の持ち時間 軽減が実現致しましたことも貴職のご尽力に俵るものと、深く感謝致 しております。  さて、先に提出した来年度の異動希望調査書にも書きましたように、大葉教 諭は目の障碍が進行した1989年以降、毎年異動希望を出しておりますが、 叶えられないまま現在に至っています。来年度の異動に向けては、本会としても 全力を尽くすつもりでおりますが、貴職のお力添えなしには困難な状況ですので、 是非 御尽力頂けますようお願いする次第です。  異動を希望する第一の理由は通勤の不便さにあります。自宅から勤務 校までは、武蔵境・国分寺駅での乗り換えがありますが、ラッシュ時で、しか も、大勢の乗り換え客とぶつかり合うような位置関係にあり、たびたび 危険な思いをしておりますし、東村山駅下車後は、歩道の不備な道を 自転車との接触事故等にも遭いながら、毎日大変な緊張を強いら れて、、通勤している訳です。また、朝夕ともに日光を真正面に受けて 歩く方角となり、光に弱い目の障碍にとっては危険性が一層増して 精神的にも身体的にも大きな負担となっており、大葉教諭にとって 異動の実現は緊急な問題であると考えます。 通勤上の危険性のより少ない、大葉教諭の希望している地域への異動を 何としても実現させて頂きたく、都教委へも最優先に配慮して頂くような 具伸をお願い致します。  校内での対面朗読ボランティアを引き続きお願いするためにも、あまり遠方に ならないようにしたいという事情もあります。手持ちの資料によれば、  小金井北高校に数学担当の異動希望者がおられるようであり、そちらへ 異動できれば最も希望に沿うものとなります。 交通事故等のために悔いを残すことのないよう、また大葉教諭が教育に 専念できるよう、格段のお力添えを切にお願い申し上げます。 p.31 資料.7 1993年12月9日 東京都教育庁人事部職員課長 坂本 清治 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表  大葉 利夫 異動に関する事情 ◆大葉利夫教諭(都立東村山高等学校)に関して  1989年1月に視覚障碍(障害)の認定を受けて後、職場やその他 の理解と協力・支援を受けながら今日まで教員を続けて来られました。  具体的には、この間「持ち時間の軽減(適正化)」、「ボランティア の校内派遣」、「音声機器の公費購入」、「障碍関係施設機関への勤務 時間内出張」等の、様々な形で勤務の可能性と充実につながる配慮が実 現して来た事は、多くの方の理解・努力と支援のお陰と感謝しておりま す。  障碍とは「治療の可能性」が無く悪化する事はありえても回復の見通 しのない状態をさしています。従って、教員を続ける為には、喪失機能 の代替能力の開発が必要となります。しかし、また代替能力開発だけで は補えないものがあります。それに対しては、上記の様な配慮の実現が 必要でありました。 A異動に関する事情 1.主旨  1989年以前から「調光機能悪化」があり、「通勤負担」を感じ勤 務校の異動を訴えて参りましたが実らず、さらに障碍認定を受けて後も その必要性を毎年の様に訴え、「異動カード」および「異動の事情」等 を提出して、その早期実現を願い続けて来ました。  特に、本年は医師の診断でも認められている「調光機能」の急速な低 下が5月あたりから顕著になり、「通勤負担」は人身事故につながる危 険に陥っております。1994月年度の異動は、人命保持の視点から絶 対実現のお願いをせざるを得なせん。 2.調光機能悪化  視力的には文字の判読不能の程度でありますが、それと反比例するよ うに、光に対して「眩しさ」を強く感じるのであります。比喩的には、 p.32 白い霧の中から光だけが目に突き刺さってくる感じであります。太陽・ 蛍光等・車のヘッドライトの直接的な光と硝子・テーブルなどからくる 反射光にも非常に眩しさを感じます。従ってサングラス・帽子等を使用 していても、光に向って歩く事は困難であります。特に通勤路は往復と も光に向う経路の為困難の限界です。 3.白杖の効果無し  西武線東村山駅より学校までの道のりは、歩道も無く一方通行の中を 後ろからは車、前からは駅に向う人や自転車が忙しく殺到し、相手に対 して警告効果を持つ白杖を持っていてもその効果が無く、衝突や接触事 故が毎日の様にあります。 4.通勤経路の負担  三系統の乗り継ぎのたびにせわしない雑踏に入り白杖の効果も無く、事 故が起きない様にと長時間の緊張が続きます。自宅から学校までの距離 が長い為、代替交通手段として車も使えない。特に、東村山駅と学校間 はバスも無くタクシーの便も悪い。また、大雨の時などは冠水した道路 を目標を失って歩く状態となる。 B.異動先への希望  上記の様な人命に関わる状態から解放され毎日安心して通勤出来る事 を希望する。その為には、自宅より西武多摩川線多磨墓地前駅を利用 し、中央線武蔵境駅で下り方向へ向う経路で、駅から学校までの距離が 短く危険も少なく代替交通が便利な勤務校を希望する。自力通勤を基本 としたいが、状態が悪いときはタクシー等で短時間で通勤出来る所を希 望する。  京王線を利用する経路については、自宅より最寄り駅武蔵野台駅迄が 徒歩20分もあり、東村山駅から学校までと同様の危険性があるので避 けたい。  また、現在実施している「ボランティアの派遣」継続可能の為にも下 記の全日制普通校への異動を希望する。具体的には、 @小金井北高校(組合のリストに異動希望者あり)  自宅―8分→多磨墓地前駅―7分→武蔵境―2分→東小金井―15分→学校  自宅―8分→多磨墓地前駅―7分→武蔵境―5分→武蔵小金井―バス5分→小金井北高校前 A武蔵、国立、立川、小平南 p.33 資料.8 1994年1月29日 東京都教育庁人事部 職員課長 坂本 清治 殿 異動担当者 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 副代表 丸山 隆 異動に関する緊急のお願い  日頃より貴教委と本会との間で、障碍を持つ教員の「障碍保障制度確 立」に向けての話合いや、現行制度下で起きている「当該問題の解決」 の為の有意義な話合いを持つことが出来る事は、大変有難いと考えて おります。  さて、具体的なお願いをさせて頂きます。すでに数回に渡る直接のお 願いと、本人の「異動に関する事情」でお判り頂いている、本会の代表 である都立東村山高等学校大葉利夫教諭の94年度異動に関してであり ます。  非公式な段階でありますが、去る1月26日の中間内示によれば、来 年度の異動は出来ないとの結果を知るに至り、あえて筆をとらせて頂き ました。  94年度の異動結果につきましては、坂本職員課長よりその事情をご 説明頂けると、事務局次長の坂西を通じてお聞きしておりますが、それ では事遅しと思いあえてお願いの義に至りました。  1989年以降、貴教委の御理解により「持ち時間の軽減」を受ける 中で、本人の努力により「職務の遂行」に努めて参りましたが、「通勤 の負担」に関しては、障碍の進行に伴い抜き差しならない状況に陥って おります。時間的な負担はもとより、交通事故による「人命の危機」に さらされる毎日を強いられております。強度弱視者の場合の一つの特徴 である「調光不能」も、大きくその原因となっております。人命に関わ る事故が発生する前に、異動を希望しておる事は御存知の通りですが、 異動に関しては本人の力ではどうにも出来ず、貴教委の御判断のみによ るものです。この点を今一度再考されて、「異動の実現」をどうか宜し くお願い致します。  また、異動に関する本人の希望は8年前から出されながら今日に至っ ている事は誠に遺憾と考えます。  過員解消が本年度の場合も貴教委にとっては大変な状況の様ですが、 そんな中で未確認情報ではありますが、「過員異動」があるとも聞きま す。「過員異動」であるならば、大葉教諭の異動はさして困難なく実現 出来ると考えられますがいかがでしょうか。是非貴教委の御英断をお願 い致します。 p.34 資料.9 1994年2月3日 東京都高等学校教職員組合 執行委員長 清水 泰岳殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 事務局長  宮城 道雄 大葉教諭の異動に関する 緊急のお願い  日頃より本会の活動にご理解と語支援を頂き感謝しております。ま た、本会の代表である大葉教諭(東村山高等学校分会)の持ち時間軽減 の9月から実現、並びに94年度の異動に向けて取り組んで頂いたこ とに対して、御礼申し上げます。  さて、具体的なお願いをさせて頂きます。すでに以前、お願いしてあ る大葉教諭の異動に関しては、その事情をご理解頂いて、前向きに取り 組んで頂いたのですが、去る2月1日の内示によれば来年度の異動はで きないとの結果を知り、あえて筆を取らせて頂きました。  異動に関する本人の希望は、目の障碍が進行した89年以来、毎年出 されながら今日に至っていることは、誠に遺憾なことと考えます。現 在、持ち時間の軽減を受ける中で、本人の努力により「職務の遂行」に 励んでおりますが、「通勤の身体的精神的負担」は、障碍の進行に伴い 極限に達している状況です。時間的な負担はもとより、交通事故による 生命の危険にさらされる毎日を強いられております。強度弱視者の場合 の特徴の一つである「調光不能」も大きな原因となっております。人命 に係わる事故が発生する前に、異動を希望していることは御存知の通り です。是非、貴組合の再度のお力添えにより都教委の英断を促して頂く ようお願い致します。  都教委の移動においては、今年度も過員解消が大変なことの様です が、そんな中で未確認情報ではありますが、過員異動があると聞きま す。過員異動であるならば大葉教諭の異動は、さほど困難無く実現でき ると考えられます。本会としては都教委に対して1月29日付けで大葉 p.35 教諭の過員異動の要望を出しておりますが、貴組合におかれましてもこ の件について取り組まれ都教委に対して働きかけて頂くことを、改めて お願い致します。2月中頃までに働きかけをして頂き、その結果に関し て2月21日までに本会に連絡して下さるようにお願い致します。 p.36 資料.10 1994年3月25日 東京都教育庁人事部職員課長 坂本 清治 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表 大葉 利夫 アシスタントに関する資料 −公務員・教職− 1.岡崎 学 @神奈川県庁 A1982年4月 県庁労働部労働総務室 Bアルバイト C一日四時間・週四日 2.石津 明夫 @神奈川県庁 A1991年、県庁渉外部国際交流課 Bアルバイト C一日八時間・週四日 3.仁科 豪士 @京都府庁 A1991年4月・職員研究所 1992年4月上級職員・府庁総括調整室総務調整課分誉係 B非常勤職員 C一日八時間・週四日 4.大塚 強 @舞鶴中央図書館 A1984年10月 Bボランティア/簡易対面朗読者謝金有り C一日八時間・週四日 5.未確認 6.伊藤 義昭 @川崎市 A1990年5月・川崎市盲人図書館 p.37 @非常勤職員 A一日六時間・週二日 B「視覚障碍職員補助者」1990年5月から開始され1991年4月 に要綱制定 7.伊藤 桃子 @東京都 A1978年.東京都養育板橋ナーシングホーム。現在東村山ナーシ ングホームの介護福祉課福祉係り Bボランティア C随時 8.込山 光広 @東京都 A1980年7月.福祉局 Bアルバイト、朗読、1984年4月より開始 C一日四時間、週一日 9.高田 剛 @大阪府 A1982年3月 市立中学校 B常勤講師 C随時 D1992年4月から非常勤講師  1993年4月から常勤講師 10.有本 圭希 @大阪府 A1980年 大阪府高校英語教諭 B職場内対応/英語科教諭定数プラスワン C一日三時間・週三日英語科教員三名で対応 11.栗川 治 @新潟県 A1993年盲学校から新潟県立西川竹園高校へ異動に B常勤講師 C随時 D持ち時間を常勤講師と折半し、残りの時間をアシスタントに当る p.38 資料.11 1994年3月14日 国立筑波大学附属盲学校長 宮崎 嘉夫 殿 筑波大附属盲学校 英語科主任 殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表  大葉 利夫 要望書  本会は、「障碍」(身体障碍や慢性疾患等)を持つ者が「教師になり たい、教師を続けたい」の実現を目指し、1991年10月に発足しま した。その目的実現の為に、意識面の改善や人的・物的対応の実現を、 行政や雇用主に対して要求して来ています。  具体的な例としては、視覚障碍であれば朗読アシスタント・内部障碍 であれば勤務内容の適正化(軽減)等であります。これらを私達は、 「障碍保障制度」と呼んでおります。現在、東京都教育委員会とは月一 回のペースでその実現に向けての交渉の場を持っております。また、組 合などとの連携も進めております。「制度」実現に向けて、国や都道府 県に宛てての全国署名も行なっております。遅れている教育現場のノー マライゼーションの実現を、自らの力で実現すべく活動を続けておりま す。  そんな最中、貴校において1994年度の英語科教員際要基準に、 「視力0.7以上の者」の規定があった事実を知り、本会の主旨に反し ており、誠に遺憾と考えております。視覚障碍を持つ教師をアシスタン トをつける等してでも、一人でも多く採用しようという意識がなかった 事は、誠に残念であります。また今回の事は、貴校が障碍を持つ生徒の 社会進出に関して、今日まで非常に積極的に取り組まれて来たという歴 史に反する行為であり、対外的に盲学校においても視覚に障碍を持つ教 p.39 師は「不必要である」と公言した事になり、ましてや盲学校以外におい てはその限りではないという概念を生じさせてしまったのではないで しょうか。本会の運動にも大きな打撃を与えた事になったと考えており ます。  具体的な要望としては、 1.今後このような事が無いようにして頂きたい 2.対外的なマイナス面の回復措置をこうじて頂きたい この二点につき、3月25日迄に本会に文書にて納得がいくような形で お答え頂きたい。  色々と不躾な要望を述べましたが、本会としては貴校の前進的な歴史 に日頃より敬意を評しており、今回の件を共に乗り越えた後、障碍を持 つ教師が一人でも多く教壇に立てる為の運動を続ける事が出来れば幸い と考えております。 連絡先 〒183 府中市朝日町1-15-26     大葉利夫 0423-62-7776 p.40 資料.12 1994年3月18日 JR国分寺駅長 殿 JR本社    殿 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 事務局長 宮 城 道 雄 国分寺駅改札口に関する 要望書  本会は、「障碍」(身体障碍や慢性疾患等)を持つ者が、「教師にな りたい・教師を続けたい」の実現を目指し、1991年10月に発足し ました。目標達成の為に、行政や事業主や社会に対してはたらきかけを しています。施設面の改善やヒューマンアイスタント等の人的改善の要 求をしています。これらの改善要求を「障碍保障制度」と名付けていま す。東京都教育委員会との交渉や、組合との連携の実現。制度実現の為 の全国署名展開中。  さて、前置きが長くなりましたが、去る2月19日より国分寺駅にお いて、JRと西武との連絡改札口が自動改札化された事に伴い、本会の 代表で視覚に障碍を持つ都立高校教師大葉利夫さんの提起を受け、本要 望書を提出する事に致しました。  大葉さんは毎日JRより西武へ連絡改札口を利用して通勤をしていま す。視覚障碍者であるため、白杖を用い点字誘導ブロックを便りに当駅 を利用しています。ところが、自動改札化に伴い2月21日の通勤時よ り連絡改札口通過の為の点字ブロックが撤去され、また、無人改札化さ れた為に、 1.自動改札を通過する為の方向がつかめない事や、雑踏に巻き込まれ る危険が生じた。 2.白杖を持っているため、定期券のケースの出し入れが不便になっ た。ましてや雨天時は傘もある。 3.定期券の挿入口への投入が困難である。 p.41 の問題が生じ、大葉さんが係員に訴えた所、 「点字ブロックがありますJRの改札を出て西武の改札を通れば。」 「本社の意向でこうなったので判りません。」 大葉さんはその場で名刺を渡し、本社からの改善の話しを待ちました。 しかし、その後連絡が無いため、3月5日私と大葉さんを含め3名で現 場に出向き、実態の検証・確認をし、JR・西武の両助役に改善の要望 を再度致しました。  本来、改札連絡口は利用者に、より便利に通行出来る為にあるはず で、障碍者やお年寄りにとっては、尚更便利な物でなければならないは ずです。特に精算所や有人改札もなく大廻りをさせる方式は理解出来ま せんでした。今回の方式はその意に反して、それらの人を受け付けない 形となっています。より不便となり、社会的な言葉を使えば、 「福祉の後退であり、差別」 であります。  私達は、本社に対して以下の改善を早急に要望致します。1994年 3月20日迄に文書にてご回答頂きたい。 改善事項 1.点字誘導ブロックを敷設する事。 2.有人改札(精算事務を含む)を設置する事。 連絡先 〒339 埼玉県岩槻市府内1-3-52       宮城道雄 048-797-1323 〒183 東京都府中市朝日町1-15-26       大葉利夫 0423-62-7776 *同日、同様の要望書を西武鉄道にも提出しました。 p.42 資料・13 読売新聞 1994年(平成6年)1月9日(日曜日) 都の教員検定 視・聴力条件など廃止へ 課題なお残る採用の壁 東京都教育委員会は八日までに、教員免許を持つ人が上級免許や別の教科の免許を取る際に受ける「検定」の合格基準から「矯正視力が0.7以上あること」など視力、聴力に関する条件をなくすことを決めた。教員免許はすでに視覚障害者にも与えられており、これで資格の面での壁は取り払われることになる。しかし都教委は、実際にはまだ障害者を一人も一般教員に採用しておらず、障害者団体などは「次は積極的な雇用を」と求めている。 教員免許は、一定の単位を取得すれば自動的に与えられるシステムになっており、ここ十年ほどは、視覚・聴覚障害者を受け入れる大学が急速に増えたため、盲学生情報センター(東京都杉並区)によると、毎年全国で四、五人の視覚障害者が教員免許を取得している。 しかし、すでに二種免許(短大卒程度)を持っている教員が上級の一種免許(大卒)を取る場合や、別の教科の免許を取得する場合に新たに受ける検定では、障害者に厳しい合格条件が設けられている。 都の場合は、教員の免許に関する規則の中で、視力の基準のほか「著しい色覚異常者」は小学校教諭、中高校の社会、美術などの教科には合格できず、聴力も「授業に支障がない聴力を有すること」などと定めている。 昨年度の都の検定受験者は約750人。都教委では「これらの項目は、今までも柔軟に運用してきた」としているが、大学が障害者を受け入れている今となっては実態に合わなくなっていることを認め、身体条件の項目を削除することにした。早ければ、一月末の教育委員会で正式決定する。 「障碍(しょうがい)を持つ教師と共に・連絡協議会」代表で、自身も五年前から強度の弱視となった都立高教師、大葉利夫さん(43)は「障害者にとってはもちろん、視力や聴力が衰えた五十代の教師が検定を受ける場合にも、これまでの基準は難しいものだった」と、一歩前進を喜んでいる。 一方、盲学生情報センターによると、盲学校・養護学校を除く一般教員に視覚障害者が採用された例は、まだ大阪、兵庫でわずか3人だけ。その中には、東京で何度も教員採用試験に挑戦したが合格できず、大阪でようやく念願をかなえた中学教師もいる。 「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会」では「資格制度を公平にしたら、次は実際にその資格を生かした就職が出来るようにしてほしい」と話している。 p.43 資料・14 毎日新聞 1994年3月25日 自動改札が視覚障害者“締め出し” 点字ブロック消え遠回りで私鉄へ JR東日本の私鉄連絡口で初めて自動改札になった国分寺駅(東京都国分寺市)で、自動化に伴い目の不自由な人たちが締め出されている。誘導点字ブロックが撤去され、いったん駅から外へ出なければならない。同社によると連絡口は双方からの出入りが頻繁なため、「目の不自由な人は他の利用者と衝突する危険がある」と締め出し理由を説明している。視覚障害者は「これでは福祉の後退」と反発している。連絡口の自動化は今後も進むため同様のケースが予想され、人件費削減の切り札の最新鋭機に思わぬ難問が持ち上がった。 人件費削減に思わぬ難問  連絡口はJR線と西武国分寺・多摩湖線との間にあり、2月19日から自動化された。障害者の教師たちでつくる「障碍(しょうがい)を持つ教師と共に・連絡協議会」(事務局・埼玉県岩槻市)によると、目の不自由な大葉利夫代表(43)が同月21日、府中市の自宅から東村山市の勤務先へ通勤途中、同駅でJR中央線から西部国分寺線に乗り換えようとして、ブロックが撤去され代わりに「立ち入り禁止」のブロックが設置してあるのに気付いた。  事情を駅に聞くと、「連絡口を使わず、外を回ってほしい」「工事は本社が行ったので、有人改札廃止の理由などは答えられない」という。納得できないため、連絡協議会として今月5日と18日の2回、同駅とJR東日本に対し、視覚障害者も利用できるよう改善を申し入れた。  JR東日本東京地域本社広報課によると、連絡口の自動改札は双方から通れるものもあるほか、出入りが多いため、向かい側の利用者に気付きにくい視覚障害者が衝突事故に巻き込まれる恐れがある――がブロック撤去の理由。またJRには無人改札口は障害者が通れないよう点字ブロックを設置しない原則がある。「特に朝夕のラッシュ時には走って改札口を通るお客さんが多く、目の不自由な人に利用していただくのは難しい」という。  連絡協議会の申し入れに対しては、職員を呼べるインタホンを設置し、障害者が利用する場合はその都度誘導すると回答。しかし、連絡協議会の宮城道雄事務局長は「視覚障害者だけに不便を強いるという発想はいかがなものか。インタホンの設置もその場しのぎのアイデア。従来通り職員を置き、自由に連絡口を使えるようにしてほしい」と主張。JRは「初めてのケースなので、利用者の意見に耳を傾けていきたい」とはいうものの、具体的にどのように対応するか苦慮している。  JR東日本が開発した連絡口の自動改札機は、国分寺駅に設置後、松戸駅にも備えられ、今後は首都圏の約30駅に順次設置される予定。 写真省略「点字ブロックの撤去後を調べる大葉さん(右)と宮城さん」 p.44 資料.15 ◆生活ネットワーク熊本◆.原稿◆1994年3月 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 1.始めに  本会のスローガンである「ノーマライゼーションは教育現場から」 が、熊本の方々にも用いられている事を知り、非常に感動をしていま す。また、熊本の方々と念願かなって知り合えた事も大変嬉しく思って います。これを機会に、本会の主旨を御理解頂き、孤立している「障碍 (しょうがい)」を持つ教師の仲間が増え、また、「ネットワーク」と の強い連携が出来ればと期待は大きく膨らんでいます。すでに、「全国 署名」で多くのご支援を頂いていることを考えればなおさらでありま す。 2.本会結成への軌跡  1989年に、視覚障碍認定を受けた私は、東京砂漠で一人さまよっ て「退職・転職」の勧めの砂嵐に吹き飛ばされそうになっておりまし た。しかし、「教師は辞めない・障碍を理由の排除は拒否」の姿勢だけ は持っていました。何故そのように「こだわり」が持てたのかは、別の 機会に致します。  そんな私が多くの理解・支援者をその後得る事が出来たのは、言うま でもありません。思い出の一つとしては、89年に天草に全盲の高校教 師を尋ねに飛んでいった事です。私が、現在網脈絡膜萎縮の為に、「生 徒の顔が見えない・文字が読めない」中で、都立東村山高等学校で数学 の教師を続けていられるのも、熊本での貴重な仲間との出会いがあった からだと言えます。  私は、今日も困難を抱えた状態でいますが、それでも「幸運な立場」 であると思っています。多くの当該者は、孤立無援のまま教壇を去って います。その様な現在までの歴史的な状況を帰る為に、今の会の発足に 踏み切りました。 3.会の主旨 @孤立無援の仲間を点と点で結ぶ Aお互いに支援・運動をする。障碍の共有化が必要。 p.45 B行政・組合・マスコミ・社会に問題の解決を求める。 C「ノーマライゼーションは教育現場から」の実現 すなわち、イデオロギーの壁を越えて運動活動していく会とする。 4.活動の方向 主旨を具体化する為に「障碍保障制度要項」をまとめ、とりあえず 92年12月2日都教委に交渉と申し入れをする。しかし、当面の制度 が無い中での問題と、制度を作らせる問題とが大きな課題となる。  都教委とは、毎月の様に交渉を持てる様になったが、それだけでは二 つの問題の解決にはならない。ましてや、会員以外の教師も全国に点在 している事も考えれば、根本的な変革をもたらさなければならない。そ の為には、国及び各都道府県に対して署名を提示し、議会や行政・社会 が注目する様な運動とならなければならない。全国署名はその大事な使 命を担っていると言えます。署名集めも大きなエネルギーのいる活動で すが、提示後の動きはさらに長く、気を許せない段階に入ると思われま す。  さて、大枠の運動の話しばかりになりましたが、実は一番大切であり しかも大変なのは、当該者の障碍を共有し、その支援に当る事です。こ れは、会の担い手の必要性が求められる事になります。 5.成果のまとめ  全国的な仲間の広がり。必要な「持ち時間」の適正(軽減)化の実 現。人工透析者の勤務時間内通院の実現。障碍に応じた勤務校の異動の 実現。組合との連携。日教組にプロジェクトチームを結成させる。働き 続ける為の「障碍保障制度要項」の作成と、都教委への提出とその後の 毎月の交渉の機会獲得。さらには、「制度確立」に向けての全国署名展 開。新聞・テレビ報道。 6.課題と今後  担い手も当該者である事が忘れられてしまったり、ついつい「個人の 障碍」に陥ってしまう事が大変多い事が気になります。また、全国の会 員のネットワーク化を進めて行く必要があります。当該会員と、共に会 員の意識の充実と社会に対して運動の主旨を広めて行く継続性が、今後 の本会の機関誌の名称である「ひとすじの白い道」が切り開かれていく のでないでしょうか。  今後とも皆さんと一緒に歩んで行きたいと思います。 p.46 資料.16 ◆三多摩反処分交流集会1994年3月4日(金)◆ 「障碍」を持つ教師の 排除は許さない!! =教育現場でのノーマライゼーションの実現を= 「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 代表 大葉利夫 (都立東村山高等学校教諭)  1989年に視覚障碍を認定されて5年が経過しました。現在も黒板 の字が読めない、生徒の顔が判らない中で数学の教師として教壇に立っ ています。授業は生徒との「心の関係や様々な工夫」で遂行していま す。しかし、この間「転職・退職の勧め」による排除との闘い、「特別 措置教員制度の適用」による教師としての資格・身分の剥奪との闘いな ど、常に困難の連続でありました。世界的にはノーマライゼーションの 理念の下に、「完全参加と平等」が叫ばれて、障碍を持つ者が人間とし て差別を受けないという理念の実現の施策が進められている中で、私は まったくかけ離れた世界を歩んで来ました。その様な状況の中で、少数 ではありながらも理解・支援の力を得て、今日までたどり着いた様で す。教育現場でのノーマライゼーションの理念の実現に少しは力を出せ たとも考えます。  困難は今だに継続しています。働き続ける為の「支援システム(障碍 保障制度)」が無いため、「自己努力と自己の身体的・精神的犠牲」を 強いられます。「いつ辞めてもおかしくない危機」を感じながらも、教 鞭を取っている毎日であります。  具体的には 1.授業準備の負担増 2.対面朗読や事務処理のアシスタントがいない 3.持ち時間に対する配慮が無い 4.賃金的身・分的不利益がある。 5.補助機材購入や答案採点等が自己負担 6.通勤時間が長いことや、危険な交通事故にさらされている 7.ハリ、マッサージ治療しても取れない眼精疲労 8.障碍を持つ者が働く事に対する理解が足りない 等があげられる。  これらの問題の解決があってこそ、私が「障碍者の排除」を受ける事 無く教師を続けられるのであります。私以外の障碍を持つ教師も同様で あります。  教育現場でのノーマライゼーションの実現は必要であり、その実現の 為には多くの人の一体化が不可欠であります。 p.47 ◆マスコミに街頭署名実施お知らせビラ第三号◆ 1994年2月 街頭署名第三弾!! テーマ 「障碍」を持つ教師が働き続ける為 の「障碍保障制度確立」に向けて 東京都並びに文部大臣 日時 2月19日(土) 14時15分〜15時00分 場所 JR四谷駅麹町口 主催 「障碍」を持つ教師と共に・ 連絡協議会 連絡先 @代表 大葉利夫 0423-62-7776 A事務局長 宮城道雄 048-797-1323 p.48 編集後記 宮城 道雄  今回、第5号が完成してほっとしています。会報等の発行において は、5号を出せるか否かが継続できるか否かの分れ道だと言われている からです。予定よりかなり遅れてしまい迷惑をおかけしましたが、どう やら持ちこたえられそうです。今後とも編集委員会全員で頑張って発行 して行きたいと思います。  本号は93年度末の活動報告とその資料が結構沢山あり、ページ数が 多いので、思い切って二分割して後半のスクランブルは切り離して次号 にまわすことにしました。本号は軌跡と焦点を載せてあります。御了承 ください。  さて、今回遅れた原因をふりかえってみると、年度末には困難な課題 ににも一応の解答を出さねばならず時間を取られたことと、集約した署 名を都議会や文部省に請願署名として提出する手続きが大変だからで す。多くの場合、署名はすぐに採択されないことの方が普通で、採択さ れなくとも継続審議として、いつか取り上げられる機会を持つしかない のです。そのために、都議会の全会派の支持を取り付けて紹介議員に なってもらうことが決め手になるのです。議員さんは皆、忙しい方ばか りでなかなか面会できずに苦労しました。でも、「障」教・連の運動で、 障碍保障要綱の都教委への提出が第1の節目だったとすれば、署名の提 出は第2の節目になる重大な取組みです。前者が都教委交渉を定期的に 持つきっかけを作り、後者は都議会や新聞・テレビ等を媒介にして世論 を盛り上げて、やがて教育委員会の姿勢にも影響を及ぼす程の画期的な 事なのです。  署名活動を通して、本会は多くの組合や団体と協力関係ができ、マス コミとのつながりもできて、運動が広く拡大しました。障碍を持ち苦し んでいる当該者が会の存在を知り、期待して加入して来るでしょう。会 は一回り大きくなりその責任が増大し重くなります。  会員の皆さん、各自の力をできる限り出して、この運動を担って行き ましょう。是非、積極的に運営部に入って活動しませんか。そして運営 部の足腰をもっと強化して行きましょう。 裏表紙 「障」教・連だより ひとすじの 白い道 第5号 1994年6月 障教連 編集:「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会 〒183 府中市朝日町1-15-26大葉方 0423-62-7776 郵便振替 東京2-707824 定価 300円 1971年8月7日第三種郵便物認可 毎月1の日、6の日発行 SSKA増刊通巻第2192号 1993年12月7日発行 発行所 東京都世田谷区砧6-26-21 身体障害者定期刊行物協会