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『障害の地平』No.101

視覚障害者労働問題協議会 編 20000705 SSK通巻第1603号;身体障害者定期刊行物協会,28p.

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last update: 20210528



視覚障害者労働問題協議会 編 20000705 『障害の地平』第101号,SSK通巻第1603号;身体障害者定期刊行物協会,28p. ds. v01

■全文

表紙
 SSKー障害者開放運動の理論的・実践的飛躍のためにー
 子宮から墓場までノーマライゼーション!
 ー視労協ー
 障害の地平 No.101
 「どうする!どうする!!」
 視覚障害者労働問題協議会
 一九七一年六月十七日第三種郵便物許可(毎月六回 五の日・0の日発行)
 二〇〇〇年七月五日発行SSK通巻1603号

 目次
 パート継続問題を通じて 野口 由紀子 1頁
 交通バリアーフリー法を新たなバリアーにしないために
 宮 昭夫 6頁
 東京都障害者福祉会館民間委託反対運動への取り組み
 森 登美江 10頁
 視労協的なにわ節 的野 碩郎 16頁
 資料1 抗議並びに質問状 22項
 資料2 回答書 25頁
 編集後記 28頁
 会費納入とカンパのお願い 〃

p1
 パート継続問題を通じて
 野口 由紀子
 1.
 平成9年秋、アリコジャパン(以下アリコ)が日本盲導犬協会(以下協会)を通じ、盲導犬使用者(以下ユーザー)に対してパート社員の募集をしました。8人の採用枠に対して最終的に私ともう1人Tさんという男性ユーザーの採用が決まりました。平成10年、それぞれ時期はずれましたがアリコと1年の雇用契約を交わしました。勤務地は契約書に基づき、協会指定の場所という事で当協会所有の神奈川訓練センター(以下センター)となり、週20時間以上22時間以内という条件でアリコスタッフの点字の名刺づくり、協会職員の点字名刺づくりや、センター内で点字が必要な時の協力や、センター内の掃除雑用を仕事としてやりました。
 翌年3月、協会本部の障害本部長が私たち2人に新たな契約更新の意志があるかどうかの確認に来ました。私たちは契約更新を希望し、それぞれの契約日に新たにもう1年の契約を交わしました。契約時初回も2回目も協会本部とセンターの職員が立ち会い内容の確認をしています。
 そして今年3月1日、人事部の厚生課長が「満了通知」を持って私たちの所を訪れました。当初Tさんはもろもろの事情や、本人なりの計画、また従来からやっている自宅での3療業の事などもあって、これ以上無理にアリコで働く意志はありませんでしたが、3療の資格も、またほかにとりたてて出来る事もない私は、いま突然仕事を失えば息子と2人の暮らしはたちまち

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たちゆかなくなります。
 視労協で相談し、アリコに話し合いの場を設けて貰えるようはたらきかけをしました。
 3月15日1回目の話し合いの場が設けられ、2時間近い話し合いの中で契約継続の可能性の方向へ話が進みました。そして「視覚障害者にどんな仕事が考えられるか」という課題が私たち視労協に投げかけられました。
 3月24日、9項目の考えられる仕事内容を提起した意見書をアリコ側へ提出し、4月13日、これを受けた形で2回目の話し合いの場が設けられました。話し合いの中で、障害者が出勤して健常者と同じ職場で働くことの意味や今後について話し合い、アリコが提起してきた新たな契約内容を受ける形で契約の継続が決まり、後日本社に於いて覚え書きを交わしました。
 2.
 3月15日の話し合いの場でわかった事として、アリコは私たち2人を採用してもなお、障害者の法定雇用率は達成していなかったこと。にもかかわらずここへきてユーザーの採用を中止した理由として、一つ目には、アリコが勤務地やある程度の仕事の提供を依頼していた協会側が私たちの出勤そのものや仕事の提供に難色を示したことで、勤務地の確保が難しくアリコとしては引かざるをえなくなったとのこと。二つ目には、以前から社会貢献の取り組みで実施していた、盲導犬育成のための寄付つき癌保険販売促進をねらった、営業所代理店対象の研修会が、平成10年春に担当部長の異動があった後は全く開かれず、人事部としては大きな誤算となってしまったとのこと。三つ目には、点字の名刺がひととおり一巡し需要があまりないことや、積極的に使う人はいるものの職場の近所の業者に安く短期間で

p3
作って貰えることで、人事部に依頼がこなくなってしまったとのことなどでした。
 3.
 アリコはユーザー採用の計画の時点で、障害者雇用をどのように考えていたのでしょうか。8人の採用枠というのは、法定雇用率を念頭においた数字だったのでしょうか。そして、8人の採用に見合う仕事を責任をもって、計画的に準備していたのでしょうか。2年間のアリコの対応を見る限り、私たち二人の仕事でさえそこまで責任をもって準備したとは思えません。寄付つき癌保険関連の取り組みが停滞して以後、人事部として担当部署へどのように働きかけをしてきたのでしょう。
 また、アリコと協会は、どのような約束事のもとにユーザー採用、そしてセンターへの出向という勤務形態をとったのでしょう。私たちの立場や待遇について、どのように双方は責任の範囲を話し合ったのでしょう。常に私たちの立場は微妙で、協会のその時々の都合で、「アリコ社員だから関係ない」とか「ここで働く限りセンター職員と同じです」とか「あなた方はユーザーだから」などといわれ、振り回されてきました。
 私たちの介助者として採用されたOさんは、アリコの採用ではなく協会採用のパートの職員でした。私たちとアリコの間には常にOさん、アリコ担当の主任クラスの訓練士、センターの施設長、アリコの窓口となっていた障害本部長が介在していました。主任訓練士は、「忙しいから」、「人手がないから」と私たちの勤務表などの事務処理をはじめ、一切合切をOさんに任せきりにしていました。センターの職員とのやりとりもOさんを通してしかできず、私たちの意向や考え状況などは、Oさんによって全く違った形で協会へ伝えられ、たまに開かれるアリコミ

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ーティングでは、その行き違いで年中もめていました。私たちとアリコが交わした覚書に差し障りのない範囲で、私たちの立場や職場環境は大きく変化してきました。アリコは毎月月末に給与明細書と翌月の仕事としての名刺を届けるために私たちのところへ来ていました。来れば現状はわかるはずですが、なには一つ改善されることなく、協会が勤務地提供に難色を示したなどと云うだけで、簡単に満了通知を出したということは、その責任をどう考えていたのでしょう。普通このような場合には、双方で覚書を交わすのではないでしょうか。覚書はどうなったのでしょう。あったにしろ無かったにしろ、こんな失礼極まりない話があるでしょうか。私たちは物ではないのです。障害者であっても一人の人間なのです。形だけの社会貢献をしても何の意味もないのではないでしょうか。
 4.
 アリコは私の3年目の契約で、多少の軌道修正をしました。勤務地も在宅となり、立場や待遇もはっきりし、協会との直接的な関わりもなくなりました。ですが根っこの部分ではそう変わっていないと思います。契約は1年契約です。そして「ユーザー」であることが覚書のなかの必須条件として記されています。さらに3月の話し合いの席で最も契約継続に前向きな考えを示した人事部長が、この5月1日付けで異動になりました。今後のアリコの人事に関する方針が、どのように変わるのか全くわかりません。
 一方、私自身の方にもいくつかの問題課題があります。たいへん恥ずかしい限りの話ですが、私は2年間アリコのパート社員でありながら、アリコを知る努力を何一つして来ませんでした。それだけではなく、私には満足にこなせるものが何一つ無

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いという現実を思い知らされました。それは私のものごとへの取り組みや姿勢の甘さがもたらした力量の貧しさで、アリコであろうと他であろうと同じだと思いました。
 遅まきながら、本当に遅まきながらですがアリコの会社や保険について、必要な学習資料を人事部でカセットテープにいれてもらい、学習をはじめました。また、いままでできるつもり、知っているつもりで、中途半端になっていたものについても改めて一つ一つ固めていく作業をはじめました。また、「苦手」と避けてきたことにも、いくつかチャレンジしてみようと準備をはじめました。どこまでできるか分かりません。でもこの1年が私の正念場だと思います。来年アリコはどうなるか分かりませんが、長期勤務契約を結べる方向でがんばってみようと思います。
 アリコに限らず、どこもそうですが、「あなたに提供できる仕事がない」、「通勤途中で事故にでもあったら」などと口をそろえたように云います。どんなにハイテクが進み、機械化されても、さらにその隙間にはいろいろな仕事があるはずです。仕事がないとか事故にあったらなどというのは、障害者をうっとうしがり、関わりを面倒くさがる故の体のいい言い逃れではないでしょうか。障害をもっていても仕事につき、自立したいと願っているのです。障害はあっても私たちは皆同じ「人間」なのです。
 アリコは毎年業績を伸ばしている企業です。障害者雇用という企業の社会的責任を形だけではなく、名実ともに果たしてほしいと願うばかりです。

p6
 交通バリアーフリー法を新たなバリアーにしないために
 宮 昭夫
 交通バリアーフリー法とは
 去る5月10日通称「交通バリアーフリー法」と呼ばれる一つの法律が参議院本会議で可決、成立した。若干の修正と付帯決議を付けた形で最終的には全会一致での採択となった。この法律の正式名称は「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」と言う。
 ちなみにこの法律で言う移動の円滑化とは「公共交通機関を利用する高齢者、身体障害者等の移動に関わる身体の負担を軽減することによりその移動の利便性、および安全性を向上すること」(2条2項)だそうである。視覚障害者、特に私のような全盲の者にとっては「移動に関わる身体の負担を軽減する」と言われてもなんとなくピンと来ない。また、知的、あるいは精神的負担の軽減についてはどうなっているのだろうという疑問も湧く。
 それでは実際にこの法律によって何が出来、何が変わるのかについて簡単にまとめてみよう。いささか大雑把になるが、以下3点にそれをまとめてみた。
 国がやるべきこと

p7
 1.国はこの法律を「総合的かつ計画的に推進するために移動円滑化の促進に関する基本方針」を定める。
 2.その具体的実施のために関係省庁は移動円滑化基準を作成する。
 3.国は、新たに建設される駅、施設や車両等がこの「移動円滑化基準」に適合しているかどうかを審査しなければならない。
 4.審査の結果、改善命令に従わない場合には100万円以下の罰金とすることが出来る。
 公共交通事業者等がやるべきこと
 1.公共交通事業者等は旅客施設を新たに建設し、もしくは旅客施設について主務省令で定める大規模な改良を行う時、または車両等を新たにその事業の用に供する時は、当該旅客施設又は車両等を移動円滑化のために必要な構造設備に関する主務省令で定める基準(移動円滑化基準)に適合させなければならない。
 2.既存の施設や車両については適合させるように努めなければならない。
 3.移動の円滑化のための必要な情報を提供するよう努めなければならない。
 4.移動円滑化に関する社員教育に努めなければならない。
 市町村がやるべきこと
 市区町村は国の「基本方針」を受けて区域内にある一日の乗降客が5000人程度以上の駅とその周辺の公共施設や福祉施設などを結ぶ地域を「重点整備地区」として移動円滑化に関わる事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想(基本構想)を作成する事が出来る」(6条)その際には、公共交通事業者、道路管理者、公安委員会などが一体となって駅施設、道路の構造、信号機などについて移動円滑化基準に適合した「計画」となるよう調整しなければならない。

p8
 「できる」と「努める」の枠を打ち破る
 この法律もそうだけれど、日本の法律家はどうも「促進」とか「円滑化」とか言う言葉が好きなようである。また、法律のなかみにおいても「しなければならない」という表現より「することが出来る」とか「努めなければならない」といった曖昧さを残す規定が多い。
 この法律においても「基本方針」の作成や「移動円滑化基準」の作成を除けば、「しなければならない」と規定されているものはものは、「届け出」や「審査」に関わるものであって肝心の「命令」については「することができる」といったものが多い。この点に関して私達がどうしても思い出してしまうのが、「雇用促進法」において雇用率未達成の企業の名前を「公表することができる」という規定を現実化させるためにどれだけ苦労したかということである。雇用率未達成の企業がほとんど半分以上を占めるなか、労働省に特に悪質な3社か4社の企業の名前を公表させるのは並大抵のことではなかった。われわれの実感では「することができる」というのは「することもありうるが、実際にはほとんどしない」ということのようである。
 この法律の大きな目玉のひとつである市区町村による「基本構想」の作成はやはり「出来る」(つまりしなくてもいい)という規定である。ただし一旦「基本構想」の作成が決まった時には駅施設や周辺の道路、信号機に到るまで「移動円滑化基準」に適合したものになるような計画をつくらなければならない。例えば市町村はその計画を実施しない公共交通事業者等に対して、それを実施するように要請することができる。それにも従わない場合はそのことを主務大臣に「通知」することができ、主務大臣は市町村の「要請」に従うように事業者等を「勧告」することが出来、それにも従わない時、はじめて計画を実施するよう命令することができる。そしてそれに従わない場合には100万円以下の罰金と

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なるのである。この回りくどさにはウンザリするけれども私達の身近な駅周辺のバリアーフリー化を実現するためには、とにもかくにも市町村に「基本構想」を作らせなければ始まらず、その後も「構想」が実施されるよう様々な圧力をかけていく必要があるのである。
 今後の課題
 まず問題なのはこの法律でいう公共交通事業者等の中にタクシーが含まれていないことがある。さらには「基本方針」「移動円滑化基準」「基本構想」などの作成に当事者の声を十分反映させることが重要である。この点については付帯決議のなかで盛り込まれたけれど、それを現実化するために私たちの取り組みが不可欠であるのは言うまでもない。この法律が現実に意味のあるものになるかどうかは実際には「移動円滑化基準」にかかっているといっても言い過ぎではない。例えば「床面の低いバス」とはどの程度のバスを言うのか、あるいは視覚障害者のための安全基準に防護柵やホームドアは入るのかどうかといったことが重要なポイントとなる。
 そのほか付帯決議には「重点整備地区」とする駅について単に乗降客の数だけではなく「高齢者、身体障害者等の利用が多いと見込まれる駅等」を加えることや政府調達についてユニバーサルテザインに十分に配慮することとか当事者個人のニーズに応じたスペシャルトランスポート(輸送)サービスの検討とか交通ボランティアの活用、福祉機器の研究、バリアーフリー・マップの作成が盛り込まれた他、内部障害者や盲導犬を伴った「身体障害者等」への配慮が盛り込まれたりしている。
 これらの付帯決議の条項については利用できるものは多いに利用し、チェックすべきものは慎重にチェックしながら5年後の法律の見直し向けて備えていかなければならない。とかく「移動の円滑化」という言葉の中から、抜け落ちがちな「安全」という側面を私達視覚障害者としてどれだけこの法律のなかに盛り込めるかも重要である。

p10
 東京都障害者福祉会館の民間委託反対運動への取り組み
 森 登美江
 東京都障害者福祉会館(以下、障館)は、私達視労協にとって結成以来大きな活動拠点となっています。その障館が民間委託されようとしています。私達は多くの利用者とともに反対運動を展開しているところです。私達視労協がその問題を知ったのは、昨年3月の定例の利用者懇談会の場でした。それは一昨年12月に打ち出された「行政改革プラン」に基づくものでした。東京都は福祉や医療の分野で縮小や廃止を決め、障害者や高齢者、ひとり親家庭をはじめ都民の生活を締め付けおびやかし労働者の賃金カットを行うなど都政の失敗を都民や労働者に背負わせようと着々と動いているのです。そのひとつが直営事業から手を引く民間委託であり、当然のように障館にもその波が押し寄せてきたということです。
 私達は昨年5月「グループ飛躍」と東視協(東京視力障害者の生活と権利を守る会)と話し合いを持ち、反対運動を利用者に呼びかけることを決めました。6月の「東京都障害者福祉会館の民間委託を考えるつどい」と7月の反対する利用者の会結成準備会をへてようやく9月下旬に正式結成へとすすめることができました。
 しかしその間にも事態は動いており、それに対して具体的な行動を組んできました。
 8月には他団体に呼びかけ反対の意思表明を書面にし、福祉局へ提出するとともに各政党をまわり記者クラブに行って組合へも足を運びました。また第1回目の利用者懇談会でも民間委託反対と直営継続を強く訴えました。

p11
 第1回目の利用者懇談会では在宅福祉課長が「皆さんと十分に話し合い合意をえて民間委託をすすめていきたい」と繰り返し発言し「これまでのサービス水準を維持する、予算も減らさない」と何の根拠もない説得力のない口先のその場しのぎに終始しました。
 利用者からの相次ぐ質問にも答えようともせず、意見にも耳を貸さないまったく話し合いにならないものでした。
 第2回目では曖昧な説明を繰り返したばかりではなく、利用者が「民間委託の是非について話し合うべきだ」と言っているのを無視して「民間委託に向けた素案を出してほしい」と強引に議事を進め、抗議の声があがっているにもかかわらず、素案提出の日程を押しつけてきました。私達は「素案でなく意見書ですね」という確認をとるのが精一杯でそれすら曖昧のまま終わりました。この強引さは2000年4月から委託を実施するための予算編成日程の都合からくる利用者無視の都の姿勢としか考えられませんでした。
 私達は意見提出締め切りの10月9日に反対する利用者の会を臨時会議を開くとともに、障館館長に宛てて、抗議および質問状を提出しました。また同12日には、都庁へ出向き福祉局の局長室並びに在宅福祉課さらに知事室へと直接文書を持って抗議行動を行いました。同日視労協とグループ飛躍は共同で、都庁前早朝ビラまきを行いました。
 第3回目の利用者懇談会にいたっては、「十分に話し合って合意を得た上」の前言を翻し、福祉局は「皆さんからはご意見を頂いたので、この先は運営懇談会(これは館長がどういう根拠をもってかはわかりませんが、11団体を指名し構成されているもので、利用者の代表というわけではない集まり)で意見をまとめさせて頂き、その上で改めて利用者懇談会を開きたい」と言ってきました。「合意が得られるまで何度でも皆さんと話し合う」という最

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初に福祉局側から明言したこの基本的な確認はこうして葬り去られ、未だに利用者懇談会は開かれずじまいなのです。反対意見には発言を認めず、発言中でも強引に打ち切り、賛成意見のみを時間をかけて指名までして求めるという、まったく民主的でない議事運営のまま、99年度の利用者懇談会は終わったのです。在宅福祉課は「賛成多数、反対はごく一部」との報告を上に上げていたのです。
 運営懇談会は利用者懇談会から移行されて後、これまで5回開かれており、傍聴は認められたものの傍聴するに耐えない、ひどい議事運営が続きました。「障害者の主体的運営」をはじめ、中味のない、美辞麗句をならべたてていた福祉局も運営懇談会が開かれる度に、徐々に徐々に本性を現してきました。先ず「予算は減らさない」とはっきりと利用者懇談会の場で発言していたにもかかわらず、「昨今の経済情勢の中で、この会館だけ聖域ということで守るのは無理」と言い切りました。それについて私達は、再三再四、本当に減らすことはないのかと「財政再建プラン」や障館運営の予算推移などを参考にきっちりした質問を投げかけてきた筈です。更に「サービス水準も落とさない」の言も、予算が減らされる以上守られるはずのないことは、誰もが判ることです。予算も減らすし、サービスも低下するし、事業は徐々に区や市に移管していくという東京都提案を以て何故障害当事者自身の運営が素晴らしいものだと、都は言えるのでしょうか。もう自分たちの手には負えないから、早く手を引きたいと言っているにすぎません。2月3月の運営懇談会の中では「都の決定だから、知事からの要請だから、その方向で作業を進めている」と言い、実際に利用している当事者の思いなどまったく考えようともしない姿勢を顕にしました。委員も賛成と言っているのは、11団体中(それも今回まったく最初から出席もなく、利用もしていない団体を含む)2、

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3団体で他は「どうしてもと言うなら、やむを得ないが本当は直営が望ましい」とはっきり言っています。都は「やむを得ない」だけを取って委員の総意を賛成と位置づけ委員の意見の真意でなく、ちょっとした発言の一部を都合良く理解し、また利用者懇談会も開かないまま、受託団体の公募を行う作業へと勝手に動いているのです。委員の中では、育成会と都身連が受託団体として、手を上げる準備があるとのこと、また都盲協は反対の機関決定をしており、東視協も直営を基礎とした具体的提案を行うなどしています。福祉局は基本的な話し合い(最初に行うべき民間委託是非論など)の説明もせず、利用者の必死の訴えも受け止めようとしないまま、2001年4月には、どうあっても委託を強行する構えです。
 私たち反対する利用者の会(東京都障害者福祉会館の民間委託に反対する利用者の会)は、昨年9月下旬結成以来事務局(現在4団体構成)は会議を重ねながら、1か月に1度程度全体会を開き、経過の確認やこれからの進め方、そしてすでに民間に委託されている所の現状報告や情報交換などを行って、「委託されるとどうゆうことになるのか」を学習してきました。また、自治労都職労(東京都職員労働組合)の方を招き、都財政の現状や都の姿勢なども勉強しました。
 そういうなかで、昨年11月30日には3週間ほどの短い期間に集中して集めた反対する利用者の会集約の反対署名を議会に陳情の形で提出しました。残念ながらそれは3月都議会で否決されましたが、引き続き集めてきた署名を加えて今年6月1日に在宅福祉課長に直接手渡しました。
 反対する利用者の会の動きが当初、都がもくろんでいた2000年4月からの民間委託を1年先延ばしせざるを得ない状況に追い込む力となったことは確かだと言えます。都としては運営懇談会、利用者懇談会あわせて2、3

p14
回開き、説明すれば委託が行えるものと簡単に考えていたに違いありません。思い通りにことが運ばないなかでの準備不足や、形だけでももう少し話し合いの場を持った方が先々良いと考えたからか、強行を1年見送ったわけです。2001年4月には何が何でも委託を実行するでしょう。
 私たち反対する利用者の会は会として運営懇談会傍聴の際、反対の意思を文書で伝えました。また、各団体ごとにも多数反対の意思表明が行われました。昨年来のそのような多くの反対の意見を福祉局はどのように捉えていく考えなのでしょうか?口頭でももちろん文書によっても未だ回答がなされていない状況です。
 私たちは事務局として2001年3月までの期間、どう運動を展開していくのか心新たに取り組みを積み重ねていかなければなりません。
 私たち視労協としては直営を要求し続けること、受託団体公募というまるで利用者無視の暴挙が行われる前に利用者懇談会を開催させること、そして昨年8月、第1回目の利用者と福祉局との話し合いの最初に次元を戻して、話し合うことを求めていきたいと考えています。上記の6月1日、署名を受け取った在宅福祉課長は「ただ反対と言うのではなく、福祉局提案も検討してほしい。」と言いました。その言葉にあるように、福祉局側には私たちの意見書の中身は反対だと言っているとしか読まれていないことになります。なぜ反対なのかについて読み取ろうとしていないのです。私たちはなぜ直営が駄目なのか福祉局の提案をみても全くわかりません。基本理念も事業計画もそれがなぜ直営ではできないのか、委託する必要がどこにあるのか全くわかりません。それは福祉局が私たち利用者を騙そうとしているだけだからなのです。
 相次ぐ差別発言の石原知事を長として行われている都政の元で都民は、様

p15
々な負担を強いられています。私たちの立場に立って、業務を進めてくれなければならないはずの福祉局も知事の意向だからといって、障害者や高齢者をはじめとする社会的に弱い立場の人達に、負担を負わせようとしてくるのです。私たちは障館の民間委託問題に取り組むなかで、その縮図を改めて再確認させられました。
 2001年4月の強行を阻むため、活動を続けていかなければなりません。
 (懇談会資料や福祉局提案については事務局にお問い合わせ頂ければお送り致しますので御一読下さい。)

p16
 視労協的なにわ節
 的野 碩郎
 1.まずは2000年2月5日の視労協結成25周年・機関誌「障害の地平」100号記念イベントにご参加ご協力頂きましてありがとうございました。ここまできたという軽やかな思いと、この重さをこれから背負い続けていけるのかというしんどさとが、複雑に混じり込んでいるのが実態です。
 うわさでは、あちこちの団体の会員数の減少や活動の低迷といった話が聞こえてきますが、視労協もその困難性にあいかわらずぶつかっていて、あの手この手の脱出作戦も、もはや手だては尽き果てたというところです。「解散なんて言わないで下さいよ」という本当に大事な言葉はうれしいのですが25年を背負う背負い方をまるっきり変えない限り正直きつく無理かもしれません。
 会員を増やそうとか担い手をつくろうとか、上手に世代交代とか全員参加の活動とか1億2千万総視労協などというきつさから解き放たれて緩やかでゆったりでひよわで浪花節でも継続は力なりと、うなり続ければいいのだと思ったりします。
 2000年7月101号が出ました。あせらず急がずこだわらず気にもせず、活動を続けていこうと思います。きたる21世紀障害者運動の行く末はわかりませんが、活動し続けていれば必ずひらけると思いながら「視労協的なにわ節」をうなりましょう。
 ここのところの視労協の活動は、(1)駅ホームと公園の点検(2)あんまマッサージ指圧師免許を持たない、いわゆる無資格者摘発の動き(3)民間企業に働き続けるための動き(4)東京都障害者福祉会館の民間委託反対の動き(5)通信や機関誌を含むいつもの基本的な動き、というところかもしれません。しかし何度となく訴えてきたことは、ひとつも進みません。いつのまにかグチめいてきて「時代をとらえること」や「人の心をつかむこと」や「継続は力」という部分を見過ごしてしま

p17
いそうです。もはや一人の力には限界があるということでしょうか。
 2.まちづくりと言ってもここのところ、地下鉄と公園とノンステップバスが主な対象となっています。地下鉄は都営三田線や大江戸線が中心で三田線にはホームゲートが着々とつきはじめ、そのドア前の点字ブロックの敷設の仕方をめぐって主に視労協と他の2団体等が都交通局と話し合いを進めてきていますが、まだ敷設されていません。一説によれば「つける必要がない」といった大きな団体に押し切られたといううわさもあるぐらいで、今度しっかりと見届ける必要があると思います。新設の大江戸線は相変わらずの36点の警告ブロックを使用していて視労協の考えと異なっています。視覚障害者団体同士の手柄のたてっこではない車椅子をも含めた移動困難者の立場にたって、やり続けたいという思いがあって一部の会員ではありますが、車椅子使用者の仲間とバス乗り点検もこなしています。私事ですが今年になって僕の通勤路に低床バスが走るようになりました。一定車椅子使用者の立場にたっているのでしょうが、バス内のレイアウトに問題があって後部がスロープになっていて長時間混んだ状態で乗り続けるには困難ですし、同じく後部座席も35センチ以上の段差の上にのっかっていたりと大変さがあると思います。このことを見る限りでも視覚や肢体障害、妊産婦や高齢者など全体を考えてのレイアウトではないような気がします。
 また、地下鉄点検の中では特に相互乗り入れ駅に着目しています。「まちづくり通信」上で詳しくは述べていこうと準備をはじめました。(「まちづくり通信」について創刊号・2号の欲しい方は事務局へお問い合わせください)
 公園点検では、砧公園(世田谷)武蔵野中央公園・井の頭公園(武蔵野)上野動物公園(台東)と点検監修を行い、特に危険箇所の発見につとめましたが、視労協的公園はなるべく制約のないノビノビとできる場所、安らげる場所(飲める場所という陰口もありますが)であればという基本的な考えは変わりません。
 動物公園の点検は、久しぶりでしたが昔と違ってニオイや檻の周囲の設備が進んでいて、そのことの驚きもありました。確かテープなどで動

p18
物の説明をしていたものが、なくなっていました。動物の等身大の模型や足形など触って実感できるものも増えてはいましたが、一人で見て回るのは困難です。ただまちづくりでは一人で見ることを想定する必要はありますが、実際のところ一人で見に行くことがあるのでしょうか?
 以前会員の要求にともなって平和島(大田)の通勤路点検をし、関係団体へ提言や現場写真、要求項目などを含んだ冊子をつくり、点検監修をしてきましたが、このたび工事のとりあえずの終了をみて確認点検をしました。国道を渡る横断歩道のマンホールヘの点字ブロック敷設の問題や音響信号機が鳴き交わし方式で真ん中のグリーンベルトに音声がないため、一気に渡れないときの恐怖感などなど再度要求すべきことが出てしまいました。
 今後視労協では、独自の点検箇所を組んで交渉へとつなぐ方向です。ぜひ多くの参加を期待したいものです。
 3.あんまマッサージ指圧師の免許を持たない無資格者問題にも動きました。Nさんの訴えにより温泉場や観光地におけるホテルや旅館に無資格マッサージ師を送り込んでいる業者またそれを受け入れているホテル・旅館側に当然問題はありますが、その地域の特殊性つまり視覚障害者を含むマッサージを業としている業団体のありかた、それを認可する保健所、違法を取り締まる警察といった関係団体の対応の仕方にも強い疑問を持ちました。今回は本人からの具体的報告を誌面に載せる時間がありませんでしたので、次号か「三療通信」の形で報告したいと思っています。視覚障害者のもっとも重要な課題でもありますので、ぜひ興味をもって読んでいただければと思います。資料として氷山の一角へ出した視労協からの質問状と回答書をあわせて載せます。前後の事情が見えないところもあるでしょうが情報として載せたいと思います。
 温泉場や観光地で働く視覚障害者は孤立を余儀なくされています。はっきり言って働いている大半が無資格者であると推測されます。このことは東京のサウナや健康ランドでもまかり通っています。厚生省の手ぬるい指導にも問題がありますし、生計を立てる手段として気楽な手頃な仕事となっています。どのような包囲網で無資格者を追放するのか、
 
p19
それぞれの垣根を超えたところで大きな運動が必要と思います。うわさですが、盲学校では追放しきると教え子の首をしめるという声があるとか。人権団体でも仲間を追い込むようなことになるから迷ってしまうというような声があると聞いています。Nさんをきっかけとして十分考えながら動きたいと思っています。また同時に「手をつなごう集会」や「盲人からあはきを奪うな連絡会」の戦いでわかった晴眼者(目の見える人)養成学校の新設や鍼灸科の増設などが野放し状態になったことも怒りをもって反対の声をあげていくべきと思います。関係情報を事務局へぜひ集中してください。
 さらには実感ですが開業者を取り巻く状況は、政府のいう経済見通しとは裏腹に収入が落ち込んでいる人が多いと聞きます。また不況ゆえに接骨院や韓国エステや整体、カイロプラティックを開設する人が周囲に目立ちます。この厳しい実感の中であえぐ仲間もたくさんいると思います。互いにつぶされないよう足腰を鍛え直しておきましょう。
 4.東京都障害者福祉会館の民間委託反対の戦いは、当局の準備不足と僕たちの反対の力により1年間先延ばしとなり、この8月9月の東京都福祉局の予算づくり、そのあとの総務財務局の予算づくりという大きなヤマ場とまたなりました。残念ながら都議会宛に出した手紙は不採択となってしまいましたが、残りの署名を福祉局へと切り替え提出しました。反対する会のほうでは民間委託の実例による問題点や東京都の財政を含む行政の姿勢の問題点の学習会を重ねてきました。ご存じの石原都知事の強気発言は、いまだ変わることがありません。それに準ずる福祉局は受託先をしぼる作業をはじめました。僕たちの間でつまり会館利用者との間でかわされた「理解が得られるまで誠意をもって何度でも話し合う」という言葉は利用者懇談会を3度で切り上げ、運営懇談会(会館館長の任命した団体で利用者の総意ではない、視労協は入っていません)へと舞台を移してしまいました。その運営懇談会も6回程度でこの4月より開かれていないというありさまです。視労協では都直営を掲げていることと利用者との直接の対話、しかも利用者懇談会の場に戻して話し合うべきと位置づけています。月1回ペースの反対する利用者の会

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 (校正者注:原本左端の印字が切れているため不明な箇所は*で表す)
 代表者会議や事務局会議に対して、意見や情報をお願いします。
 5.民間企業のパート採用で会員であるNさんの継続勤務を勝ち取ることができました。経過を含めて機関誌内に本人からの原稿が寄せられていますので、ぜひご一読ください。
 重要なポイントとして視労協としては毎年の継続に向けて何らかの契*例えば障害者雇用率の未達成を達成させる方策として位置づけさせるということです。また交渉(話し合い)の中で、障害者側の主体性、*まり仕事に対するかまえや姿勢というものの大切さもわかりました。*てがわれるのではなく積極的に仕事を生み出していく態度や上司との話し合いの重要性が問われているとも思いました。在宅勤務という一見*の先端をいくような手段にも現段階での矛盾があると思われます。*パート契約の継続と長い目でみての正社員への道を探る活動に、さらには民間企業の入り口を大きく開けさせることによる障害者雇用の創*大へとつながればと思います。
 また、本人の立場性と視労協という会、あるいは障害者全体の立場性むずかしさの話し合いによる積み重ねの必要性も、この問題の重要なポイントと位置づけています。契約書の公開が認められていませんので、*や情報をお持ちの方は事務局へ連絡をください。
 また観光地での職場もこの在宅勤務も言ってみれば一人職場的要素が*、孤立を余儀なくされることが予想されます。仲間の声かけの重要*問われると思います。
 6.今までの機関誌の上にも登場してきた普通小学校教諭の視覚障害者のOさん。人工透析を受けながらなんとか職場をこなしていました
 脳梗塞の再発で入院。現在リハビリ中とのことです。学校現場では*考課という制度が導入されはじめ、それぞれの先生が現状の自己分*達成目標などを書いて管理職へ提出、それを管理職が一定の意見を*教育委員会へという代物であるとのことです。障害を持つ教師にと*この制度で最高ランクはもちろんのこと、最低ランクから抜け出る*は至難の業ではないでしょうか。100%教師になろうとする障害を*教員は困難性が伴うし、なろうとすること自体間違いだと思います。

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ましてや人工透析や脳梗塞という中で教壇に立ち続けることは困難を極めます。管理職や同僚からの白い目や針のむしろではいっそう困難をきたすと言わざるを得ません。それでも生活がある以上働き続けなければなりません。視労協はまだ人事考課なるものと対決をしていません。ある意味では視労協の今にとっては教育委員会は巨大です。とにかく学習をするところからはじめたいと思いますし、Oさんが1日も早く復帰されることを願うばかりです。
 この人事考課は中教申の中間まとめにあった問題教師の拾い出し作業と相まってさらには東京都教育委員会が出した「要配慮教員に対する要項」とも連動しているように思えてなりません。Oさんが転勤2年目の小学校は比較的居心地も良く一定の理解も見られるところです。本当に早め復帰を願いたいものです。
 また埼玉のM先生は視力が落ち続ける恐怖感と家族の高齢化に伴う病気などを一手に引き受ける中で、授業数を減らす為の講師配当は受けることができましたが、ヒューマンアシスタントの導入や同僚の十分な理解を得るまでにはまだまだ時間がかかるようです。
 視労協として関係当事者団体との交流の中で、一翼を担っていこうと努力し続けているところです。
 7.おおまかな活動報告を駆け足で記しました。重要な活動も載せきれていない気もしますが、個別通信で報告できればと思います。
 視労協は高齢化の中で活動へのフットワークや動員も鈍っています。それは必ずめぐってくることではありますが、後継者づくりや会員増やしもままならない中では覚悟しなければなりません。運動の時間帯や活動日の設定や活動の中身など変わっていかなければならない課題もあります。高齢化による病気や老後や年金や保険といった問題も重要な課題になりはじめました。
 冒頭にも掲げたように21世紀視労協は、視覚障害者はどう生きていけばという討論を積み重ねたいものです。

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 2000年5月16日
 抗議ならびに質問状
 リゾートトラスト株式会社
 社長 伊藤 勝康殿
 視覚障害者労働問題協議会(視労協)
 代表 的野 碩郎

 拝啓 貴社におかれましてはホテル業という極めて社会性の高い業種においてよりよいサービスをめざして日夜努力されていることと推察致します。
 私たち視労協は、1975年の会結成以来東京都をはじめとする各自治体に対し職員採用試験や教員採用試験の点字による受験を認めさせる運動や各地の病院やサウナ等で働く視覚障害者のマッサージ師の地位や労働条件を守る取り組みなど一貫して視覚障害者の働く場の拡大と労働条件の改善のために、活動を続けております。
 そうした取り組みの中、本年3月に「エクシブ琵琶湖」において、マッサージ師として働いていた視覚障害者の仲間から無免許者を使わないよう申し入れたところ、誠意ある対応がなされなかったのみならず、そのことと関連して、予定より早く仕事をやめなければならなくなったという訴えがありました。もしそのことが事実だとするならば、私たちとしてもはなはだ遺憾なことと言わざるを得ず強く抗議するとともに、一刻も早くそうした認識を改めて頂くよう要望する次第です。
 マッサージ師などの身分を規定した「あんまマッサージ指圧師及びはり師きゅう師等に関する法律」をみるまでもなく、免許を持たない者がマッサージを行うことは、あらゆる角度から見て議論の余地のない正真正銘の「違法行為」であります。従って無免許のマッサージ師と専属契約を結んだり、無免許のマッサージ師を派遣する業者の出入りを許すことは、そうした「違法行為」をみずからも経営するホテルの1室で反復継続的に容認していることであり、社会的責任の大きいホテル業という立場から見ても、到底許されるべきことではないと考えます。

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 確かに警察や保健所の取り組みは、なまぬるいところがありますが、先にも書きましたように無免許のマッサージが違法行為(つまりは犯罪行為)であることは疑う余地のないことであり、彼らとしてもしかるべき手続きをふみ、しかるべき証拠を提示した訴えがあれば、それをしりぞけることは、できません。千葉その他の例を見ても分かるとおり、摘発は少ないながら現実に行われます。そうした観点からもホテルとして、無免許者をチェックする対策や方法を真剣に講じられることを強く要望します。
 さらにこの問題は、単に一般的な「違法行為」の摘発という側面とは別に、視覚障害者の働く場の確保という私たちのとって死活問題ともいうべき重要な問題に関連しています。
 ご承知のこととは思いますが、いまなお大半の視覚障害者にとって、はりきゅうマッサージの仕事は、ほとんど唯一の職業的自立の手段であります。そのことは、あんま師等法の19条に視覚障害者の生活を困難に陥れるおそれがある場合には、事実上この業界への健常者の参入を制限することができるという一項がつけ加えられていることをみても明らかです。法律にこのような条項がつけ加えられていること自体異例のことであり、このことをみても視覚障害者にとって、あんまマッサージ指圧業がいかに重要であり、死活的意味をもつ職種であるかわかると思います。
 しかし現実には、こうした規制措置をもってしても健常者のこの業界への進出を抑えることはできないばかりか、そうした言ってみれば合法的な進出とは別に無免許者による違法な職業の取り上げが一層露骨になっており、私たちの生活はますます圧迫され苦しいものとなっています。
 その一方、雇用促進法に基づく障害者雇用はいまなお雇用率未達成の企業が50%を越えるという不十分な状況であり、特に視覚障害者の雇用は、とりわけ厳しい状況にあります。こうした状況に対し、ホテル業界においてもその社会的責任を果たし積極的に障害者雇用に努力されることを強く要望します。ホテル本体の部分への雇用にも取り組んで頂くことはもちろん、とりわけ視覚障害者にとって極めて重要な意味をもつマッサージの分野でホテルとして視覚障害者の職場確保に積極的に貢献されることを要望します。そのためにもエクシブ傘下の各ホテルにおいては、無免許者の一掃をはかるとともに、視覚障害者に優先的にマッサ

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ージ師として働く機会を与えるよう強く要望します。また、以下の点についての質問に対する回答をお願いしたいと思います。
 記
 1.無免許者を使うことをどのように思われますか?
 2.エクシブにおいて、現実に無免許のマッサージ師が現在働いています。早急に解消して頂きたいのですが、いかがですか?
 3.無免許者を雇用し派遣している業者のホテルヘの出入りをどのように考えられますか?
 4.現在無免許のマッサージ師をチェックする対策や方法を持っていますか?また今後検討されるつもりがありますか?
 5.貴社全体として障害者雇用率(1.8%)を達成しておられるか?
 6. 障害者雇用促進の観点から貴社関連のホテルにおけるマッサージについて、視覚障害者のマッサージ師に対し何らかの優先措置を考えているか? または今後考えるつもりがあるか?
 以上、6項目の質問に関して6月17日(土曜日)までに、下記の住所地まで文書にてご回答下さいますようよろしくお願い致します。
 回答送付先:〒178ー0063 東京都練馬区東大泉6ー34ー21
 稜雲閣マンション403 視覚障害者労働問題協議会
 電話:03ー3925ー3522

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 資料7
 視覚障害者労働問題協議会
 代表 的野 碩郎殿
 貴会よりご指摘のありました件につき下記の通り回答致します。
 1.本年3月、「エクシブ琵琶湖」において、派遣マッサージ師として就業されていた視覚障害者の方からの訴えにつき、事実関係は次の通りです。
 訴えの趣旨は、「エクシブ琵琶湖」が無免許者を使っており、その点につき当人が問いただしたところ誠意ある対応がなされず、その結果、職を奪われたという内容でしたが、調査したところによりますと、事実は以下の通りであり、決して違法行為を知りながら容認していた訳ではありません。
 @「エクシブ琵琶湖」は、マッサージ師派遣業者として、柴原マッサージ(滋賀県坂田郡米原町)と中日マッサージ(三重県烏羽市)の2業者に依頼しておりましたが、今般、問題となっております中日マッサージからは木屋三保子さん(業務開始H10.8.1〜業務終了H12.5.20)及び叶敦子さん(業務開始H11.2.20〜業務終了H12.5.31)の2名が派遣されておりました。
 A本年3月、木屋さんが私傷病のため業務続行が困難となったため、交代要員として中日マッサージから中井きよえさん(業務開始H12.2.29〜業務終了H12.3.29)が派遣されてきましたが、当人より叶さんが無資格であることの指摘があり、ホテル側と中日マッサージ側に対し厳重に抗議がありました。
 Bホテル側は、木屋さんと叶さんの両名にあらためてあん摩マッサージ指圧師免許証の提示を要求し、木屋さんは確認できたものの叶さんは「松橋テル」の免許証のコピーを提示。その際、「叶」は通称名(芸名)であるからと弁明していました。
 C3月27目、中日マッサージからの指示にて、中井さんが派遣終了、引き上げることになりましたが、この件についてはホ

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テル側は一切関与しておりません。
 D4月初旬、長浜健康福祉センター(長浜保健所)健康福祉課高木眞司主査が「エクシブ琵琶湖」来館。管理担当者同席の上、木屋さんと叶さんの両名に免許の有無につき事実関係を調査しました。その際、木屋さんは免許証コピーと自動車運転免許証を提示。叶さんは「松橋テル」の免許証のコピーと、後日、「松橋テル」の国民健康保険被保険者証のコピーを提示。名前が違う理由も釈明し、主査も納得されたようでした。尚、あん摩マッサージ指圧師滞在業務開始届の未提出を指摘されましたので、速やかに滋賀県知事宛て提出を完了しました。
 E5月30日、本件に関し、再度長浜健康福祉センターから問合わせがあり、管理担当者が叶さんと面談。その席で叶さんは自ら無資格を認め、本名は松村敦子と言い、「松橋テル」の免許証のコピーについては木屋三保子さんからもらったと供述。尚木屋三保子さんは、中日マツサージの経営者木屋末雄氏の娘であり、一連の指示は木屋末雄氏からすべて出ていたことが判明しました。
 F上記事実を受け、6月2日、中日マツサージとの取引終了を決定通知し、取引関係は終了させました。
 2.次に、別掲6項目の質問についての回答は以下の通りです。
 @無免許者を使うことをどのように思われますか?(校正者注:「無免許者を〜思われますか?」下線)
 個人の免許の有無については、従来、出入り業者を信頼し過ぎていたきらいがあり、お客様の健康、身体に関わることであり、今後は派遣されてくる個々人につき、厳しくチェックする所存です。
 Aエクシブにおいて、現実に無免許のマジサージ師が現在働いています。早急に解消して頂きたいのですが、いかがですか?(校正者注:「エクシブ〜いかがですか?」下線)
 今般ご指摘の件については、すでに記述しました通り、現在は無免許者の就労はありません。
 B無免許者を雇用し派遣している業者のホテルヘの出入りをどのように考えられますか?(校正者注:「無免許者を〜考えられますか?」下線)

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 容認されるべきことではないと考えます。出入り業者が無免許者を使用していることが判明した場合は、即刻出入りを中止するよう処置します。
 C現在無免許のマツサージ師をチェツクする対策や方法を持っていますか? また今後検討されるつもりがありますか?(校正者注:「現在〜ありますか?」下線)
 あん摩マツサージ指圧師免許証原本の確認と運転免許証等による本人確認を即日実行しております。
 D貴社全体として障害者雇用率(1,8%)を達成しておられるか?(校正者注:「貴社全体〜おられるか?」下線)
 現状は未達成ですが、法定雇用率達池に向けで採用努力は続けております。大阪支社において、視覚障害者の男性(27歳)を在宅勤務の形で雇用している例もあります。
 E障害者雇用促進の観点から貴社関連のホテルにおけるマツサージについて、視覚障害者のマツサージ師に対し何らかの優先措置を考えているか? または今後考えるつもりがあるか?(校正者注:「障害者〜つもりがあるか?」下線)
 特別の優先措置は取ってはおりませんが、現在は視覚障害の方に従事していただいております。今後、マッサージ師の派遣においては、できるだけ視覚障害の方に多く就労の機会が与えられるよう努めたい所存です。
 以上
 平成12年6月15日
 名古屋市中区東桜二丁目18番31号
 リゾートトラスト株式会社
 総務グループ次長 住本信幸(印)

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 (校正者注:原本左端の印字が切れているため不明な箇所は*で表す)
 編集後記
 *周年記念イベントで参加された方、カンパをして頂いた方、陰から*して頂いた方、本当にありがとうございました。今後は1年1年を*に活動していこうと思います。皆様方のいっそうのご支援ご協力を*
 宜しくお願い致します。
 *号は新しく踏み出した1号ではありますが、十分討論することもで*に発行となりました。いまの視労協の具体的活動報告という形にさせて頂きましたので、ご意見を頂ければ幸いです。

 会費納入並びにカンパのお願い
 *計より振込用紙を同封させて頂きます。2000年度会費年間4,*0円、機関誌購読料活字版880円(郵送料込み)点字版800円*
 郵便局にてよろしくお願いします。
 2002年のDPI世界大会派遣に向けてカンパのお願いをはじめまし*札幌での2泊3日、大事な大会となります。ぜひともよろしくお願*ます。また自力で点字や活字の印刷が行えるよう印刷機購入等のカ*活動もはじめました。あわせてよろしくお願い致します。いつも身*で申し訳ありません。

裏表紙(奥付)
 2000年7月9日
 定価 200円
 編集人 視覚障害者労働問題協議会
 東京都練馬区東大泉6ー34ー28
 陵雲閣マンション403
 的野碩郎気付
 発行人 身体障害者団体定期刊行物協会
 世田谷区砧6ー26ー21

 視覚障害者労働問題協議会



■引用



■書評・紹介



■言及





*作成:仲尾 謙二
UP: 20210528 REV:
障害学 視覚障害  ◇身体×世界:関連書籍  ◇『障害の地平』  ◇雑誌  ◇BOOK  ◇全文掲載
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