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『精神医療』9(4) 特集:80年代の精神医療にむけて

精神医療委員会 編 19801222 精神医療委員会,128p.

last update: 20110624

■精神医療委員会 編 19801222 『精神医療』9(4) 特集:80年代の精神医療にむけて,精神医療委員会,128p. ISSN: 03030105 ※(第3次・通巻37)
 ※19801222 『精神医療』3-9-4(37)

■目次

声明(精神医療委員会) 3

 保安処分新設阻止のために
保安処分新設再び政治焦点へ(上野豪志) 5-9
「保安処分新設――刑法全面改正」を阻止し精神医療改革をすすめるために――基本的視点をどこにおくか(東京都地域精神医療業務研究会) 10-14
刑法改「正」・保安処分の制定の動きに対する反対決議(日本精神医学ソーシャルワーカー協会) 14

 精神医療ジャーナル
第23回病院精神医学会総会を引き受けて(兵庫県臨床精神医学研究会) 15-18
精神外科を治療指針から削除せよ――東北精神神経学会総会で決議を採択(横川弘明) 19-22

 活動報告
大阪地域精神医療を考える会(稲垣俊雄) 23-26

 □討論
駅前活動についての若干のコメント(木村昭彦) 27-32

 □投稿
「この頃思うこと」(藤井郁雄) 33-34

脱入院化運動とベトナム戦争――「アメリカの精神医療」にふれて(浅野弘毅) 35-38

 □精神科医療と法律シリーズ(16)
今日の精神医療における倫理の諸問題 1(寺嶋正吾) 39-52

わが国における幼児自閉症論批判(2)(小澤勲) 53-72

 特集 '80年代の精神医療にむけて――共同討論
基調報告(藤沢敏雄) 74-80
基調報告に対して(小澤勲) 80-82
  この10年の運動の内実は(基調報告の補足的発言)(中山宏太郎) 82
  医師運動の限界(島成郎・田原明夫・小澤勲藤沢敏雄) 82-83
これからの運動にむけてのいくつかの私論(長田正義) 84-87
  精神医療の基準とは(島成郎中山宏太郎・長田正義・藤沢敏雄小澤勲) 87
精神障害者福祉法(案)の批判的検討(山下剛利) 88-91
精神医療を規定している諸問題(中山宏太郎) 92-94
豊岡病院での実践活動からみえてくるもの(朝日俊弘/小澤勲藤沢敏雄・仲野実・中山宏太郎・田原明夫・島成郎・星野征光・長田正義・広田伊蘇夫による討論含) 94-101
全体に理解される結論のためにかみ合った議論を期待する(高橋一/中山宏太郎・森川英一による討論含) 102-104
自治体立病院と労働運動(猪野亜朗/高橋一・大越功による討論含) 105-110
一民間病院の報告(壇原暢/中山宏太郎島成郎・森武夫・朝日俊弘・森山公夫) 111-115
精神医療にかかわる者たちのつながりのあり方(仲野実/田原明夫・中山宏太郎・山下剛利・瀬尾博・大越功による討論含) 116-119
地域機関や家族との協業を提起したい(森川英一) 119-120
われわれの運動がめざすもの(森山公夫/星野干城・大越功・長田正義・朝日俊弘・小澤勲・仲野実・石川信義松本雅彦藤沢敏雄による討論含) 121-125
司会者として(田原明夫) 125-127

事務局より(吉森次郎) 128

■引用

・巻頭の声明
声明
 私たちは,わが国の精神医療の現状が「医療」と呼ぶにあたいしない悲惨な状況にあることを認識し,しかもそのことについて従来の精神医学に重大な責任のあることを自己批判的に明らかにしてきた.そして精神医療改革のために衆知を集め,力を結集して新しい展望をきりひらくことに微力をつくしてきた.
 1980年8月26日の奥野法務大臣の閣議発言によって再び浮上してきた保安処分―刑法改「正」の動きは,精神障害者に対する予断と偏見にもとづくことだけではなく,ひろく「人権」に対する重大な挑戦であることに私たちは注目しなければならない.
 私たちの生きている社会は,表層のはなやかさと安定にもかかわらず,人間の生き方について重大な不安を蔵していることを指摘しなければならない.そのよってきたるところは,人間尊重という言葉の流行にもかかわらず,深刻な人間疎外と人間不信が進行していることにあるといってよい.
 私たちは精神障害者に対する処遇があまりにも酷薄・悲惨である実態に目をそらすわけにはいかない.
 ここに保安処分新設に反対し,精神医療改革と精神障害者の生活を守る運動をさらに前進させることを声明する.

1980. 12
精神医療委員会

◆共同討論

藤沢敏雄 19801222 「基調報告」,『精神医療』3-9-4(37):74-80

「精医研運動(主として関西精医研連合)についての総括
 精医研運動について現在の段階モ明確な担批判をしておく必要があると考えています。精神神経学会を舞台とした精神医学・精神医医療の批判・告発が数年にわたり停滞し,その間にさまざまな反動が準備され,改革運動の全国的なひろがりが分断され,厚生省・日精協ブロックの強化と医局講座体制の修復がはかられたことは,精医研運動の一時的な拾頭がひき起こしたことだったからです。 <0078< さらに今日的な状況でいえば,精医研運動とわれれわれの運動の対立の激化によって地域精神医学会再建準備会の継続に学会再建が頓挫していることは重大なことモあります。
 精医研運動が拾頭し,われわれの運動に不毛な対立が生じたことについては一面的な総括は不正確・不十分であり,今後の精神医療改革運動にとって教訓をもたらさないことになります。かといって何事にもふれないて経過ずることはいたずらに時の風化をまつのみで,私としても無責任であると考えまず。
 この段階で私なりに精医研連動についてまとめておくことが必要であると考えますし,そのことがわれわれの運動の点検にもなることだと考えまず。
 総括的にいえぱ,精医研運動は部分的に的確な問題提起を時にしていながらも,精神医療改革運動の長期的な展望にたてば,あやまったもので,障害となるものであったと私は考えます。これは,われわれの運動動が絶対的に正しく,それに敵対した精医研運動がまちがっていたというようなことをいわんとしているわけではありません。精医研運動は,その思想性や組織論に精神医療改革運動とは本質的になじまないものをもっていたからこそ,時間と状況の中で運動全体の障害になったということなのです。
 それではどこが問題であったかということになります。また精医研運動の思想性は何かというこなります。精医研運動は伝統的な精神医学を徹底して学習した医師集団がへゲモニーをにぎって,大衆を組織織していこうという思想によって貫かれていたとまとめることができます。そしその連続性の中で,規律性の高いというか,ヒエラルキーの確固とした組織性を持とうということになり,「組織された暴力は正しい」というような極端な――革命連動について論じているのではないにもかかわらず――自己正当化が生まれてきただろうといえまず。したがって精医研運動は,揺れうごきながらもきわめて大衆操作的であったいえます。時に威圧的で,時に迎合的であり,「保安処分反対」の論理さえ投げ捨てることになったといえます。これは状況にあわせた柔軟性ということでなくて,大衆操作主義によるものだと考えざるをえません。
 精神医療改革は人間と人間とのかかわり方の重要性を出発点とするものであるとずるならば,精医研運動の思想性と認識論は明らかにまちがっているということになります。ただここで,精医研勤の批判は,同時にわれわれの運動の弱さについての批判としてもふりかかってくるものだということは銘記しておく必要があると考えます。つり精医研運動は,われわれの運動の弱さが肥大している姿であったのではないかという自戒を持続していかなければならないということであります。
 「良心的医師として実践に埋没するだけではだめだ」という批判を金沢学会以来,われわれは行ってきた。しかしそれは,運動にかかわるものが「良心的医師としての実践」や「良心的医療従事Fとしての実践」をしなくてもいいなどということをいったわけではありません。批判者は,批判した相手を超える実践を自分に課していくのでなければ,私たちの運動はなれあいとなり,威勢のよい政治主義がはびこることになりまず。われわれの運動の中にあった分担主義は,そのようなところに生じてきたことを確認すべきです。第二の精医研運動を生み出さないようにわれわれが運動の自己点検と相互批判をきちんとできるようになることが重要なのだと考えます。」(藤沢[1980:78-89])

小澤勲 19801222 「基調報告に対して」,『精神医療』3-9-4(37):80-82

◆19801222 共同討論 『精神医療』3-9-4(37)

「小澤:僕がいいたいのは「精神神病院解体」というスローガンであるにせよ,あるいは医療労働運動と他の運動との関連にせよ,そういう問題は今まですでに何回か提起されてきた。しかしここでなぜ再び精神病院解体なり医師運動だけでは駄目だということを提起するかというのは,具体的には患者さんをひとり退院させる時に,福祉から金をとるにしても,アパートを捜すにしても,年金のことでも,どれひとつとってきてもこの一年,況が非常にむずかしくなってきていると,私は感覚的に思うんですね。
 そういう意味では竹村堅次氏がある雑誌で非常にひどいアンケートを作ってますね。「あなたは長い間精神病院にいたいですか,それとも福祉施設ができたら入りたいですか」といって長期在院の患者さんに「福祉施設に入りたいです」と答えさせているわけです。そういう状況というのがうまく作られてきている。
 そういう困難性などをまずきちっと討論して,それをただ単に大変だとか,壁があるというのではなくて,どういう形でどう突破するのかという具体的な方針まで含めての討論を是非したいということを提起しておきます。」([83])

中山宏太郎 「精神医療を規定している諸問題」92-94

■書評・紹介


■言及



UP: 20110624 REV:
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