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『精神医療』8(1) 特集:日本の精神病院をめぐる各地の状況――総括

精神医療委員会 編 19790405 精神医療委員会,111p.

last update: 20110608

■精神医療委員会 編 19790405 『精神医療』3-8-1(30) 特集:日本の精神病院をめぐる各地の状況――総括,精神医療委員会,111p. ※

■目次

第3次「精神医療」創刊の辞(森山公夫) 1

 □総特集 シンポジウム 日本の精神病院をめぐる各地の状況
編集にあたって(松本雅彦藤沢敏雄島成郎・松沢富男・井本浩之・大越功・桑原治雄・中山宏太郎) 3-11
 II 各地の医療状況
特集号のねらいとそのまとめ(藤沢敏雄) 12-13
東北レポート(浅野弘毅森山公夫) 14
東大赤レンガレポート(森山公夫) 14-15
新潟レポート(磯野雄) 15
兵庫レポート(朝日俊弘) 15-16
広島レポート(森武夫) 16
沖縄レポート(島成郎) 16-18
京都レポート(中山宏太郎) 18-19
大阪レポート(長田正義) 19
東京レポート(高橋一) 19-20
徳島レポート(山下剛利) 20
愛知レポート――2.2研修体制(芳賀幸彦) 21-23
九州レポート――中村病院告発闘争とその影響(井本浩之) 24-25
 III 精神医療と運動の方向を探るために
[コメント]英米における精神医療変革の理念(寺嶋正吾) 26-31(松本雅彦の質問と寺嶋の回答含)
[コメント]児童精神医療の流れからみた精神医療の展望(小沢勲) 31-33.
[コメント]精神医療運動の新たなる展開のためのメモ(島成郎) 33-36
[討論]全体状況とわれわれの対応(小沢勲島成郎・山下剛利・寺嶋正吾・大越功・中山宏太郎森山公夫富田三樹生藤沢敏雄) 36-40
 IV わが国の現状と運動論のまとめ
会議をふまえての総括(藤沢敏雄) 41-43
藤沢レポートへの若干の質疑(長田正義・藤沢敏雄・桑原治雄) 43-44
[コメント]精神医療における基本構造と可変構造(山下剛利) 45-49
[コメント]精神医療における今日的課題(松沢富男) 50-53
 V 治療の場のあらたな構築を求めて
[コメント]近代精神医療の総括と今後の方向(森山公夫) 54-59
[コメント]臨床におけるわれわれの限界(松本雅彦) 59-64
[討論]関係性とは(小沢勲・長田正義・桑原治雄・山下剛利・吉田哲雄・島成郎藤沢敏雄森山公夫浅野弘毅・卜部圭司) 64-69
後記(広田伊蘇夫) 70

 精神科医療と法律シリーズ(10)
英米刑法における精神障碍者の責任能力(1)(寺嶋正吾) 71-82
「精神医療と法律シリーズ」前号までの案内 82

 連載
病態構造論試論(VIII)――規範・身体・自然(冨田三樹生) 83-89

 現場の窓から
「看護人」から,「開かれた病棟」の看護へ――三枚橋病院,松尾明義氏に聞く(松尾明義) 90-94

 精神医療ジャーナル
「行動療法」の危険性――国立武蔵療養所53.9.13事件(徳島大学精神科医師会議) 95-96
「精神衛生社会適応施設」に関して(藤沢敏雄) 103-105
中予精神医療(山下剛利) 105-107

 論評
もう一度,「生活療法」に関する討論を(中川善資) 108-109

編集後記(著者署名なし) 110

雑誌「精神医療」継続発行についてのアピール(精神医療委員会) 111

■引用

 総特集 シンポジウム 日本の精神病院をめぐる各地の状況
 I 今,何を問うべきか
 [討論](山下剛利・松本雅彦藤沢敏雄島成郎・松沢富男・井本浩之・大越功・桑原治雄・中山宏太郎) 3-11

 「司会:病院での運動の視点という立場で,大越さん,何かありませんか?
 「大越(洛南病院):統計的にみて,在院日数や措置入院が減少したたといわれているが,よく分析してみるとちょっとちがうんじゃないか。
 […]
 こういう状況のなかで, 60年代末に大学問題で闘った部分がサンドウィッチ構造のなかに入れられ,これから何を軸にして結集してゆくかが見えにくくなっているんだと思う。勿論個々の地域では実際に,現実的,日常的にアンチテーゼを出して闘ってはいるんだが,全体的基軸がみえにくくなっているんだと思う。
 京都の例で話すと,精神病院は老人(内科的)を入院させることで,経営を安定させようとする傾向が強くなっている。そのために,老人以外の在院患者が社会生活の保障もないままに,退院させられることが多くなっている。そして,この部分が,大学あるいは府立洛南病院などへまわってくる。そして,この部分が,大学あるいは府立洛南病院の民間では労働過重となるようなケースが公立へまわってくる。こういった動きは,いうなれぱ経営に重点をおいた病院の再編成の動きであるし,分類収容の方向なんだと思う。一方,行政はどうかというと,社会復帰センターについていえば,運営の人事権を京都精神病院協会系の者が握るならば,事業を開始しようという動きをはっきり出してくる。これは地域精神衛生審議会の討論でもはっきり出てくる。あきらかに,洛南病院,京大評議会がパージされてゆく体制がてきているわけです。[…] <0007<」

II 各地の医療状況

 京都レポート 中山宏太郎森山公夫小沢勲 18-19

 「中山:京都の特徴をいうと,まず十全会病購院が老人医療を早くからとり入れ,昭和45年以降急激に老人医療ベッドが上昇した地区である。現在では,千数百ベッドといわれている。京都の人口構成としては,老齢化はさしてすすんんでいないにもかかわらずかかる現象がみられるわけで,その内容は極めて悲惨である。1年間の死亡者数は1,000名を越している。
 精神科一般のベッドが老人ベッドに転換するなかで,本来の精神科科が背負わされることになる。ベッド数の不足現象が起きている。全国と同様,中毒者が増加しているわけだが,これをひきうけるところがなかなかない。はみ出したのは大学学や府立病院に来ることになる。
 私個人としての考えでは,地域ともっっと密接な関係をもつ病院の運営,そこを核とした診療所群の形成が必要なんだろうと思う。今のままの病院中心主義では,開放化,自由化をしても,全体としてのベッド数の減少にはつながらないんだと思う。
 大学医局の解体闘争についていえば, 京都府立医大では連動の担い手が,すべてパージされ今にいたっている。この間,精医研問題があり,運動上, 2年間のブランクがあった。例えばこのために,十全会告発闘争が停滞したり,京都精神科医会も中断してしまったりした。病院協会と府行政が結びついて,わわれわれを排除しようとしている構造は全国的的にみて,同じものだと思う。例えば大越さんがいった社会復帰センターの問題などに見られる現象である。
 小沢:中山さんに追加すると,緊急入院制度が精神病院協会を中心にして推進されようとしているが,これを阻止しようとして,現在のところ緊張関係がつづいている。この過程で,医 <0018< 療センター構想が生まれている。大学教授,有力病院長,官僚が中心となり,京都全体の病院の人事権を握ろうという目論見があり,いうならば医局講座制が下からでなく,上から解体され,近代化される方向といってよい。これに対し,各病院,あるいは地城で活動している保健婦,福祉事務所の職員などと,反撃体勢を組もうとしている。
 十全会闘争については,京都の8, 000床のうち約1/3が十全会系の病院のものであり,われわれが診た患者も十全会系の病院へいってしまっている。その場合に,医師・保健婦が十全会病院へしつこく訪問するようにしている。十全会病院は,中山さんがいったように,老人医療へと転換していると同時に,精神病者の追い出しを計り,問題をおこすと,公立病院へ送ってくる。結果的に,救急医療体制のようなものを,われわれが背負わされることになる。」

■書評・紹介


■言及


◆立岩 真也 2014/07/01 「精神医療現代史へ・追記4――連載 101」『現代思想』41-10(2014-7):8-19


UP: 20110608 REV:20140719
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