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『大障研』

障害者問題資料センターリボン社 c1974-


■大阪「障害者」教育研究会 1974 『大障研』創刊号,障害者問題資料センターリボン社,57p. ※r

 ※どこにも発行年(月日)は記されていない。「大阪「障害者」教育研究会(大障研)規約」が1974年5月19日の日付になっていることなどから1974年発行と推定する。

■目次

大阪「障害者」教育研究会―結成のための討論集会―

基調報告案

大阪「障害者」教育研究会(大障研)規約

資料

1−1 兵庫県「不幸な子供の生れない運動」に対する、公開質問状

1−2 人間の息ぶきする、全ての場所での上映運動を!あびいる

2 もう、これ以上、養護学校を作るな、あびいる!

3−1 被差別統一戦線に参加するに当って(申し入れ書)

3−2 被差別統一戦線に参加するに当って(街頭でのよびかけ)

3−3 被差別統一戦線に参加するに当って(大阪青い芝の会の報告と提案)

4 障害者をぬきにした所で語られる障害者問題を私達が許すと考えるな!

5 大阪青い芝の会、1974年(第2回)定期大会

6 全障研岡山大会教育分科会レポート

■目次

▽035
資料3-1
■申し入れ書

                    日本脳性マヒ者協会、大阪青い芝の会
                    大阪市東淀川区南方町306 大広荘内
                    電話 省略
                    会長 かまたに、まさよ

(1) 今回の、部落解放同盟のよびかけによる、被差別統一戦線(仮称)の結成ならびに、結成準備会に参加するに当たって、私達、大阪青い芝の会は次の諸点について申し入れを行いたい、と考えます。それは、各団体のこれまでの差別に対する戦いの歴史を相互に尊重し合い、共通した課題の元に各おのの戦いをつなげ、解放への戦争を勝利したい、あるいは、勝利するためには統一した戦線が必要であるし創り上げたい、とする私達の願望の素直な表現でもあります。いまだ、統一戦線の内容が十分に深められていない時、私達の申し入れが内容検討に役立ち、各団体からの意見交換のよび水にでもなれば幸いだとも考えます。
 また、この統一戦線の戦いを成功させるためには、各戦いの個別の実績を学び合い、相互対等、多くの組織、団体への門戸開放という原則が守られなければなりません。私達は、その上に立って、私達の戦い、原則をふまえ、主体的に、統一戦線をになう決意である事を表明する所です。
(2) 統一戦線内部で留意していただきたい事
 (イ) 私達、障害者、特にCP者は、言語障害、筋肉硬直があり、音やとっさの動作に過敏に反応しやすい。
 この事は、私達には、私達のペースやリズムがあるという事なのです。会議や行動の時、往々にして私達の言いたい事、やりたい事がすぐに表現出来ないため、黙殺され、健全者ペースですすめられてしまう。あるいは、言語障害特有のしゃべり方のために、相当、健全者の方がたには聞く努力をしていただかなければなりません。
 私達の組織員は、在宅障害者が多いため、会議の時間、会場の設定のしかた等、ぜひ、十分な配慮を要請します。▽036
 (ロ) 労働に対する考え方の転換
 労働は本来、人間の生存権を保障する手段にしかすぎませんでした。しかし今日、労働は賃労働を指す様になってしまいました。障害者問題の基本的視点は、重度重症障害者問題です。賃労働の出来ない障害者にとって労働はいかなる意味を持つのかを統一戦線の中で追求しないかぎり、働ける者が、働けないものを助ける、という差別構造をぬけ出す事は出来ない。働けなくても生きて行かなければならない障害者を、健全者と言われる人びとは、どうしても「あってはならない存在」と考えてしまいがちです。人間の尊厳の対等性を考えるならば、労働に対する考え方の転換を統一戦線の中で常に追求しないと、支配者と同じ考え方になってしまうでしょう。つまり、健全者のためのサシミのツマになってしまうのです。
(3) 統一戦線の統一要求スローガンに次の2要求を加えていただきたい。
 (イ) 優生保護法改悪阻止〜解体!
 (ロ) 大阪第8養護学校建設阻止〜障害児に普通教育を!
 (イ)について  今国会に提出されようとしている優生保護法改悪案は、はっきりとした優生(健全者)の強調を内容としており、劣生(障害者)を圧殺しようとするものです。私達は、優生保護法そのものも解体しなければならない、と考えていますが、障害者が生まれる事が羊水チェック等で判明すれば堕胎をすすめる、とする改悪案は、私達障害者を「あってはならない存在」とする優生思想であり、私達の生存権を否定するものに外なりません。また、これら改悪作動を続ける政府は、この法によって福祉政策の基本をつらぬき、一般社会にある障害者差別意識(かわいそうだ、不幸だ。) とする気持ちをあおりたて、よりかかり、巨大コロニー建設、隔離政策を展開し、安上がりの福祉の実現をめざしています。これらは、障害者の人間性を圧殺するものである、と断言できます。また、この改悪案を先どりする形で、兵庫県では(不幸な子供を生まない運動)、和歌山県では(黒潮の子供を生む運動)が、羊水チェックを中心にして行われている。私達は、兵庫県に対して百年戦争をしかけ、名称の変更をかちとりましたが、なお、障害者はダメなんだ、とする障害者差別はますます強化されています。▽037
 (ロ)について 現在の教育体制は明治23年、教育勅語の発布をもって原基が形づくられましたが、同じ年、障害者に対する就学免除の制度も発足しています。つまり、現在の教育は、障害者を排除した、障害者差別教育です。その実体を放置したまま、「学校に行きたい」と言う障害者や障害児を持つ親の願いをさか手にとり、「障害がある」という理由のもとに、養護学校や施設の増設をすすめ、障害者である私達を社会から切りすてて来たのです。はたして、学ぶという行為のために障害があるとか、ないとかいいう事が関係あるのでしょうか。私達は、ないと考えます。支配者にとっては、手間のかかる障害者のいない、よく働く人間をつくる学校こそのぞむ所ではありましょうが、この様な学校教育は、人間の未来を切り開く事には役立ちません。すべての子供は、自由で、平等な普通教育をうける権利がある。私達が、養護学校でうけて来た恥辱と非人間的あつかいをふりかえるならば、普通学校とは別な所につくられるいかなる、障害者ばかりを集めた教育機関を拒否します。
 中教審答申で報告されている様に、昭和49年度養護学校設置義務化、昭和53年度全員就学をめざして、行政は、別仕立ての学校体系を完成しようとしています。大阪では、そのために第8養護学校がつくられ様としています。
 おどろいた事に、ある革命政党(?) 系と言われる全国障害者問題研究会(全障研)が、この第8養護学校の建設をすすめる運動をはじめている事です。親の弱味につけこみ選挙運動のつもりで彼等は養護学校をつくろうとするのです。障害児を普通教育からますます遠ざける、この様な差別作動や養護学校の増設を阻止しよう。

 障害者に対する差別は日常ふだんに、私達におそいかかって来ますが、以上2点の問題は、それが集中的に表現だれているものです。しかし、だからと言ってこれは、障害者だけの問題である、とは言えません。すべての人にかかわるものとしての性格をもっています。世の中は、まさに、ある特殊なものを差別する事によって合理的に歩もうとしています。これは、(38ページ〜) はっきりと人間の堕落の歩みであると言わねばなりません。社会のすべてのいなみから隔離され、健全者を幻想する事によってしか生きる事を許されず、自らダメな存在と言わなければならない情況、つまり、障害者は、障害者として生きる事を否定されているのです。ひるがえって考えるならば、健全者は、障害者を切りすてる事によって、死んだまま生きつづけ、人間としての生をうばわれている、と言わなければなりません。今の時代は、差別社会を強力に成長させ様とする動きと、差別と対決して新しい価値観を創り出すのかを争う時代と言わねばなりません。
 「障害者差別を許さない」と言う運動は「いかなる差別も許さない」と言う事と同質であります。以上、2点の要求スローガンを加えていただく様強く要請します。

 追記〜それぞれの差別には、各おの歴史があり、ちがい性があります。そして、本質をみつめながら、そのちがい性をふまえなければ本当の統一は出来ません。なんでもいいから差別問題だから一緒にやろう。とするのは、十把一からげのためにする統一です。私達は、その様な安易な態度を許す事は出来ません。今まで、その様な中から生まれる空気の様な差別によって、兄弟が殺されてきたのですから。 
 私達、障害者の事を知っていただくために(理解してくれ、と言っているのではありません)私達の兄弟組織である、自立障害者集団グループ・リボン連合制作の映画「カニは横に歩く」をぜひ共みていただきたい。と思うと同時に、上映運動への参加を要請します。
以上

▽039資料3-2
■よびかけ

 道行くすべてのみなさん!
 私達は、大阪、神戸、姫路に居住する在宅障害者集団です。私達、障害者に対する差別は、今まで多くの兄弟の命をうばって来ました。そして、現在の社会は私達を「不合理な存在」として「かわいそうだ。同情する。」と言うベールをかぶせて隔離し、切りすてています。教育や働く所や生活する所から私達は追いたてられ、非人間的な生活を強いられる施設や養護学校にとじこめられるのです。私達は、決して無理な要求をしているのではありません。普通の人間として、喜び、悲しみ、いかり、語り、苦労する事が当然な事である。と主張しているのです。私達、障害者を特別あつかいしないでくれ。と言っているのです。
 私達は、今までに障害者を生まれる前に圧殺しよう。とする優生保護法改悪阻止のための運動や差別をおそれずに(そよかぜのように街に出よう。)運動を続けて来ました。そして、その中で多くの兄弟の結集を実現して来ました。また、みなさんのご協力のもとに、障害者自身の制作による映画(カニは横に歩く)を完成させ上映運動を始めています。
 それから、私達は障害者差別を許さない運動をするだけではなく、あらゆる差別と闘う人びとと手をとり合ってすすむために、被差別統一戦線への結集をすすめています。どうかみなさん、私達の運動に支援のちからをかして下さい。
  大阪市東淀川区南方町306 大広荘 

◎ 脳性マヒ者は、自分の権利にめざめよ。差別と対決しよう。日本脳性マヒ者協会大阪青い芝の会 ◎障害者問題資料センターりぼん社
◎ 在宅障害者はとじこもらずに街に出よう。 自立障害者集団グループ・リボン連合会
◎ 障害者の友人になり、自由な人間になろう。自立障害者集団友人グループ・ゴリラ
◎ 第8養護学校設置阻止、障害児に普通教育を  大阪「障害者」教育研究会
あなたも、私達の仲間になりませんか、いつでも私達の事務所のドアはあなたのために開いています。
映画「カニは横に歩く」上映運動に参加を! 重度重症障害者在宅訪問に参加しよう! 被差別統一戦線に結集しよう! 障害者自身の経営する施設建設運動にご協力を!

▽040 資料3-3
■本日の集会に参加されたすべてのみなさんへ(大阪青い芝の会の報告と提案)

日本脳性マヒ者協会、大阪青い芝の会
                     大阪市東淀川区南方町306 大広荘内
                     電話 省略

私達のたたかい。
 私達、大阪青い芝の会は結成以来、全国青い芝と共に他府県の兄弟と力を合わせ数かずの戦いをになって来ました。そして、その中で数多くのCP者を結集し、CP者の団結とは何かを追求し続けて来ました。それは、CP者の団結の理念を確立しなければ、障害者全体の団結が不可能である。あるいは、個別、症状ごとの障害者の自立がなければ、障害者全体の団結がひ弱なものになってしまう。と考えたからに外なりません。
 私達、青い芝の会をして、障害者の自立と解放の戦いに向かわしめるものは、日々私達をおそい続ける差別と抑圧、私達の兄弟を次々と殺していく社会のあり方なのです。私達は、本日の集会に参加するに当たって、単に集会の人数をそろえる、と言うのではなく、戦いの線上にあるものとして、国家の思想(優生保護法)改悪阻止の戦い、5月22日国会前における全国青い芝の戦いを第一番に報告しなければなりません。22日には、優生保護法改悪案が国会の委員会に上程される、との報告のもとに私達、大阪青い芝の会は、21日緊急代表団会議を行い、22日当日には20名の代表団を国会前に送り、全国CP者百名と共に、国会周辺における抗議行動を展開しました。そしてまた、この28日には、兵庫県「不幸な子供の生まれない運動」解体のための、民生部、母子保健課との交渉をかまえています。
 私達が今日ここまでCP者としての主体的な戦いを拡大しえたのは、私達自身の戦いを思想の問題としてとらえなかったからです。私達は、分類学的に、あるいは思想上の位置づけの上にこの社会に存在しているのではありません。私達は今まで、いかなる思想にも組み入れられた事はありませんでした。つまり、障害者に対する差別は、私達自身に私達自身の思想を持つ事をゆるさなかったのです。▽041 私達は、私達にかけられてくる一つ一つの差別に直接対峙する事によって私達自身の考え方を創り上げてきたのです。障害者として私達は、生きる事が戦いであり、発言し、行動する事が戦いである事を知りました。言葉を換えて言うならば「存在としての自己主張」となります。私達は、障害を持つ事によって不利益を受けている(その側面も多分にありますが)と言うだけではありません。その上に不合理な、あってはならない存在として位置づけられ、同情のベールをかぶせられ、圧殺されようとしているのです。私達は、戦わなければ殺されます。文字通り、私達の戦いは生活としての戦いなのです。歴史の中で自分達を規定し、方向を作り出す思想運動ではなく、生活(戦い)を追求する中で差別とぶつかり、それと対決する中で自分達の社会位置を確定し、障害者の自立と解放の思想を創り上げて行くのが私達の運動です。ですから私達は、青い芝の会は、思想が正しければ少数でも良い、とか同一の思想を持つ人びとしか結集しない、と言う事はありません。多くのCP者、差別を差別と感じとれない人びとでも、その生き様を共有する事で、多数を結集する事で私達自身の思想を創り出す運動の正しさを実証するのです。その意味では健全者の組織のあり方と若干ことなります。
 多数を結集しなければ正しさを実証できない。と言う事はウラをかえせば少数の運動が、健全者に反省をうながすだけの精神主義におちいり(決してむだな事ではありませんが)、障害者の生活実態を変革する事につながりません。と同時に、障害者の現実が健全者と対等ではない事を明らかにしているのです。異次元の人間として(本当にCP者は、健全者と感覚がちがうし、もの事のうけとり方がちがうのです。)あつかわれてきた私達は(健全者を幻想し、目的とする生き方の強制)未来の総体としての人間のあり方を目指しながらも、現実には、私達を差別し続けてきた健全者の言葉をつかい、異次元の人間として、障害者として、障害者の生活と思想を形づくるのです。そうしなければ、私達は、支配の関係を私達の力でみつけ出す前に、健全者と言われる人びとの中におぼれこんでしまうでしょう。特に、健全者の力をかりなければ動けない重度重症障害者の問題が障害者の自立と解放にとって、その環をなすと考える青い芝にとってなおさらの事です。私達はハッキリと言います。「障害者であって何が悪い。障害者を悪いときめつけたのは健全者の方である。」と。▽042
 以上の様な組織運動を通じて、多様な人間による、多様な社会関係を創り出すために私達は、CP者の日常生活に基盤をおきながら障害者年金の増額、介護手当、等級制の変更、医療制度の改善、地域生活の保障等の要求を行政レベルで追求し、成果を上げてきました。特に、74春闘の中では、春闘共闘委の不十分性をのりこえ、東京都庁交渉、厚生省交渉を全国規模で行い、等級制度、医療制度、電動車イス、タイプ等の事で大きな前進をかちとりました。私達、青い芝の会はこうした生活要求と並行して、障害者に対する差別や優生思想に対する戦いも追求してきました。76年には、兵庫県内にある施設での重度障害者去勢手術事件に対して、行政責任を追及し、県庁内すわりこみ闘争を一週間続け、民生部長の謝罪をかちとり、県不幸な子供の生まれない運動への糾弾を引きつづき続け、名称の変更を実現しましたが、県当局の障害者に対する姿勢を変更させるにはいたっておりません。現在も、兵庫県に対する百年戦争を宣言し交渉を続けています。また、障害者を差別する教育への戦いや、個別の差別事件に対してハッキリとした態度を表明する活動を続けていますが、まだ私達の力は十分ではなく、自らの正しさを実践し切れていません。その意味で、私達は他の差別と戦う運動から多くの事柄を学んで行きたいと考えています。この集会の意図する被差別統一戦線の結成も、私達の参加の理由がそこにあります。私達は次の3つの集会に参加されたみなさんに要請します。1.戦いの場としての統一戦線を、2.本当に差別をうけている人びとの統一戦線を、3.統一戦線内に様ざまな立場の障害者団体の協議会を、私達の未熟な経験はおしえています。差別されている者の正しい連帯こそのぞまれている、と。
以上
       戦いの場としての統一戦線を!
       本当に差別されている人々の統一戦線を
       統一戦線内に障害者団体の協議会を
       我々はすべての差別を許さないぞ!

■言及

◆立岩真也 編 2014/12/31 『身体の現代(準)――試作版:被差別統一戦線〜被差別共闘/楠敏雄』Kyoto Books
 ※ご注文うけたまわり中→Kyoto Books


*記録作成:定藤 邦子堀智久
UP:20120106 REV:0213, 20141231
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