HOME > BOOK > 雑誌 >

『社会政策研究』第4号

東信堂,337p. 2800+税

『社会政策研究』
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~takegawa/jsps/


このHP経由で購入すると寄付されます

◇『社会政策研究』第4号 東信堂,337p. 2800+税 [amazon][bk1]


特集:障害者と社会政策

◇特集のまえがき

  各々の人がみな同じだけできる/できないのであれば、つまり障害者/健常者という区別が(ごく常識的な意味で)存在しないのなら、この社会においてすべての人は基本的にみな同じだけの生活ができるはずで、あとは「不慮の事故」等に備えた貯蓄や民間保険だけで対応できるはずだという理解はまずは妥当な理解である。とするなら、政治という回路を通して(強制という手段を通して)なされる社会政策としての社会保障・社会福祉の存在理由と(広義の)障害者の存在とは本質的に結びついていると言える。障害者がいるという理由によって(のみ)政策は正当化されるのだとも言える。
  このように考えずとも、障害者に関わる政策については、様々に調べられ考えられるべき主題がたくさんあるのだが、意外なほど研究はこれまで多くなかった。けれど、その必要を感じていた人やそのおもしろさに気づかされてしまった人たちによって、そろそろとその動きが活発になっているようにも思われる。「障害学(disability studies)」なるものも一定の関心を集め、既にそれなりの蓄積を有し、2003年10月には「障害学会」も設立された。この流れも「政策」と無縁であることはできず、既存の政策に批判的に対峙しながら別様に現実を構築することを志向しているようだ。
  状況はこのようである。そこで、研究・議論が進められ、より活発でおもしろいものになったらよいと考え、また論議が政策の変容・形成につながったらよいと考え、この特集が組まれた。担当の秋元・立岩は幾人かの方に執筆を呼びかけた。その際、既に重要な論稿を多数発表されている方々についてはまずそれを学べばよい、今回はもっとその研究が知られるべき研究者、これから多くを産出していくだろう研究者の論文を読んでもらいたいと私たちは考えた。また投稿論文募集において、希望する場合には特集論文として掲載するとした。さらに自由論文として投稿されたが特集にふさわしい論文もあったので、著者の承諾を得てこれも含めた(編集後記参照)。今後の研究を担っていくだろう人たちの論文が集まり、充実した特集になった。
  各々の論文の主題は多様であり、それを短く要約することは不可能でもありまた不要でもあろう。どこからでも読んでいただければよい。多様でありながら互いに連関していること、いずれについてもその先さらに調査され考えられるべき主題が多くあることを読者は感じられると思う。(立岩真也


・『社会政策研究』 20040220 特集:障害者と社会政策,『社会政策研究』04,東信堂,337p. 2800

立岩 真也 20040220 「問題集――障害の/と政策」
 『社会政策研究』04:008-025  資料

秋元 美世 20040220 「権利擁護における支援と自律」
 『社会政策研究』04:026-050

岩崎 晋也 20040220 「障害者施策における差別禁止戦略の有効性と限界性」
 『社会政策研究』04:051-072

久野 研二 20040220 「開発という取り組みと障害」
 『社会政策研究』04:073-092

田中 邦夫 20040220 「情報保障」
 『社会政策研究』04:093-118

瀬山 紀子 20040220 「「障害者に係る欠格条項」の見直し過程における争点――厚生労働省による見直し作業を中心に」
 『社会政策研究』04:119-141

寺本 晃久 20040220 「1970−1980年代における知的障害者(児)者入所施設の見直しについて」
 『社会政策研究』04:142-162

遠山 真世 20040220 「障害者の就業問題と社会モデル――能力をめぐる試論」
 『社会政策研究』04:163-182

 *感想(↓)

岡部 耕典 20040220 「支援費支給制度における「給付」をめぐる一考察――ヘルパー規準額(上限枠)設定問題」を手がかりに」
 『社会政策研究』04:183-202

◇自由論文

畑本 裕介 20040220 「ブレア第三の道の社会政策とその批判――コミュニティの重視へ」
 『社会政策研究』04:205-225

廣川 嘉裕 20040220 「政策ネットワーク論から見るわが国の医療政策の変容」
 『社会政策研究』04:226-246

鈴木 智さと 20040220 「国民優生法制定過程における家族言説」
 『社会政策研究』04:247-269

伊藤 眞知子 20040220 「山形県の男女共同参画政策――市町村への調査をもとに」
 『社会政策研究』04:270-287


■遠山 真世 20040220 「障害者の就業問題と社会モデル――能力をめぐる試論」
 『社会政策研究』04:163-182
 について(立岩)

 論は、努力による部分(したがってその人の責任とされる部分)とそうでない部分(障害による部分)という区別に依拠しているのだが、すると、誰もが思うであろうように、それをどうやって分けるのか、分けられるのかという問題が生ずる。それは、ここで示される「責任モデル」がどれほど有効かという問題に関わる。

 分けようとすれば、Z'iを取りだすことを要請することになる。しかし、その方法は示されていないだけでなく、(むしろこちらの方が重要なのだが)理論的に困難であると考えられる。
 ここではその困難である理由を列挙することはしない。しかし、直観的にもこのことは感じられるはずである。(努力(の不足)に起因するものとそうでないものとをどのように弁別するのか。おそらく他方の障害に起因する部分を取りだし、全体からそれを差し引いたものとして、努力に由来するものは規定することになるだろう。身体の障害に関わる部分については、それでなんとかなるかもしれないとも思う。しかしとりわけ知的な「障害」あるいは「能力」についてはどうなるだろうか。といったことを考えることになる。)
 (ところでこの種の理論はまったく初めてのものというわけではない。社会的分配に対して肯定的なリベラル派ほぼそういう方向の議論をしている――ゆえにまた同様の困難を抱えることになっている。例えば
 Roemer, John E. 1998 Equality of Opportunity, Cambridge: Harvard University Press *

 もう一つ加えておけば、問題は、雇用されないことの問題をどこで捉えるか、問題への対処としてどのような策がありえ、その中で(なんらかのかたちでの)雇用という策はどのように位置づけられるかである。(例えば収入が得られないのが問題(の一つ)なのであれば、それについては所得保障で対応するというのも一案である。しかしこれで十分でないとすればそれはなぜか、といったことを考える必要がある。)こうした論が基礎に置かれるべきである。ただ、そこまで議論を展開していくのはこの紙数では困難でもあり、そのことはここでは求めない。 **

* この辺りについての議論は拙著『自由の平等』第4章等を参照のこと
** 関連して書いたものとして
立岩 真也 2001/12/25 「できない・と・はたらけない――障害者の労働と雇用の基本問題」
 『季刊社会保障研究』37-3:208-217(国立社会保障・人口問題研究所)


■言及

◆岡部 耕典 20040220 「支援費支給制度における「給付」をめぐる一考察――ヘルパー規準額(上限枠)設定問題」を手がかりに」
 『社会政策研究』04:183-202

◇立岩 真也 2004/04/05「抗する側に道理はある」
 『われら自身の声』20-1:6-7(DPI日本会議


UP:20040201 REV:0224,0406 0825
障害者と政策  ◇『社会政策研究』  ◇障害学  ◇雑誌  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)