◆『JALSA』049号(2000/02/11)
◇熊本雄治「ALS/MND協会国際同盟第7次年次総会等に参加して」
『JALSA』049(2000/02/11):22-24
◇佐藤 きみよ 20000211 「ベンチレーター(人工呼吸器)と共に自立生活」
『JALSA』049(2000/02/11):36-42
「ベンチレーターは「生命維持装置」であり重症の人が付けるものというイメージがまだまだあります。が、実は車椅子やメガネと同じ「日常生活用具」なのです」(佐藤[2000:41])
□「介護保険情報
〔…〕
二。現在"特定疾患治療研究事業"(公費負担、一部自己負担)の対象となっている医療サービス(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導)については、介護保険が実施されても(注))引き続き、この事業で取り扱われます。
(注)介護保険と医療保険とにおいて重なる医療サービスについては、原則は介護保険の給付が優先することとなっているが、この事業の目的遂行のため。」(p14)
○なお、ケアプランをつくるうえで重要かつ、欠かせない訪問看護については、医療保険によるのはもとより、「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業」(医療保険とは別枠で年間260回の訪問看護、2分の1補助の国の予算4億円)を推進するためにも、主治医による指示書を複数の訪問看護ステーション等で受け入れられるよう改めることが不可欠として、改めて厚生省に対し、強く要望、併せて介護保険をより良いものにするためにも、吸引等について、ホームヘルパーなどが進んでその役割を担えるよう是非とも医療行為とのしばりを解いて貰いたい旨強調しました。私共が切望していた"診療報酬の逓減制の見直し"が審議会の場で検討されていることでもあり、期待して今後の動きを見守りましょう。」(p15)
□ 特別寄稿
○「大分医大での講演から (本田昌義医大講演)大分県支部支部長 本田昌義
〔…〕
しかし、それはそれとして病気が治癒したわけではありません。24時間の看護を必要としますし、何一つとして他人様の介護がなくては、事を起こせません。一部の療友達や自嘲の意味を含めて、「私は丸太ん棒人間です。」と言っていますが、私はこのように申します。「私は丸太ん棒人間ですが、他人の為に暖かい心と、自分の為の冷静な判断の出来る頭脳を持った人間です。」と。
(p31)
〔…〕
予想した通りの進行であり、家には年老いた父母もいる事も気にかかるので、看護役の妻が慣れれば帰宅して在宅療養に踏み切ろうと考えていました。しかし当時大分県下ではレスピレーターを装着して自宅で療養しているALS患者は、私の知る限りでは一人もありませんでした。人工呼吸器を病院が管理するものだと言う考え方が一般的で、療友の中には冷ややかに見ている者もおりました。
(p32)
〔…〕
これは私の持論ですが、「ALSは病気ではない。唯、全身の神経が犯された障害者です。だから介助があれば何でもできるのです。」と。
〔…〕
私はかねがね病院という所は「一般的に言って人間の修理工場だと言っています。あくまでも、社会に復帰すると言う前提で、心身に障害を受けた人が立ち寄って、その傷を癒して再び勇気を得て、社会へと戻って行く所と理解しておりましたが、これは現行の医療制度や医療の仕組みに問題があるのではと思いますが、大きい病院になればなるほど病院は高齢33<34者で溢れています。更に此の集団の中に、治療の方法もない而も、不可逆性の難病患者が加わることはどうみても、社会的に不合理だと思います。
(p33-34)
〔…〕
神経内科医、外科、呼吸器内科それに整形外科とチームを編成して患者の管理にあたって下されば好都合と思うのですが、現実には医師同士の結び付きは私どもで考えているより薄いようです。」(p35)
○「ベンチレーター(人工呼吸器)と共に自立生活」 ベンチレーター使用者ネットワーク(J.V.U.N.)代表 佐藤きみよ
1.ベンチレーターとは
ベンチレーター(人工呼吸器)とは、自発呼吸のできない人の肺に空気を送り込む機械(道具)で、ALS(筋委縮性側策硬化症)、筋ジストロフィー、ポリオ、高位頚髄損傷、脳性マヒ、側わん、脳血栓、肺胞低換気症候群、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな障害をもつ人々がベンチレーターを使用しています。日本の在宅人工呼吸(Home Mechanical Ventilation 略してHMV)においては、筋ジストロフィー等による神経筋疾患の障害が一般的ですが、アメリカでは自立生活運動の先駆者であった故エド・ロバーツをはじめポリオ障害の人が多いのです。障害の種別を問わず、肺の呼吸する力が弱い全ての障害者に必要なものです。
〔…〕
2.日本のバックグラウンドと自立生活
1970年代後半から、日本の社会福祉や医療のあり方は、ノーマライゼーション理念の普及や、障害をもつ当事者による自立生活運動の大きな広がりによって、施設(病院)収容主義から、脱施設化へと大きく変化してきました。
そして90年代に入ってから、ベンチレーターをつけた子どもやベンチレーターを使用者が先駆的に在宅生活を実践し初め、高額な人工呼吸器の自己負担や無に等しい在宅生活の支援体制など、厳しい現実を社会問題化し、同時に医療・福祉制度が整いさえすれば、ベンチレーターを利用者も在宅生活が可能なんだということを実証してきました。
しかし、今もって日本のベンチレーター使用者の多くは、病院や療養施設に隔離収容されたままです。在宅での介助・医療的ケアの保障、「ベンチレーターは生命維持装置」という偏見の根強さ、ベンチレーターについての情報不足など、さまざまな問題がクリアされていないからです。
ほとんどのベンチレーター使用者が社会の環境さえ豊かになれば、病院や施設に隔離されないで地域の中で生活したいと願っています。
今まで自立生活運動は、いい意味で脱施設化を目指してきましたが、ベンチレーター使用者にとってはさらに、医療変革までもその活動の視野に含めなくてはならないでしょう。
現在では健康保険の診療報酬も初期に比べて大幅にアップされ、人工呼吸器の36<37レンタルが可能になりました。それまでは、障害当事者が300万円もする人工呼吸器を自費で購入したり、病院の協力により無償で貸し出されていたのです。バックアップ体制も充実してきており、在宅人工呼吸器を実施する病院やディーラーは24時間体制で、故障や緊急時に備えたバックアップ体制を整えています。ですから今ではベンチレーターを使用していても、比較的安心して自立生活を行えるようになっています。
また気管カニューレや吸引チューブ等の消耗品も健康保険の診療報酬内で自己負担なしで購入することもできますし、人工呼吸器回路をはじめとした、ピンセット、Yガーゼ等のガス滅菌も病院やディーラーに依頼することもできます。
まずは自分の呼吸障害をよく理解すること。そして、自分のベンチレーターの種類や換気量等の設定値をきちんと自己管理して介助者に伝え、医師の指導のもと、吸引等の医療的ケアや人工呼吸器のセットアップなどを専従の介助者がマスターできるように研修を行えば、自立生活は必ず実現できるのです。また、病院や療養施設よりも、在宅生活の方が、安全性においてもコスト的にみても優れているのです。
3.ベンチレーターをつける時期は
ベンチレーターは出来るだけ早めに、できるだけ体力のあるうちにつけるべきです。カゼをひいてタンがだせず、呼吸困難になり意識のなくなった状態で強制的につけられるよりもはるかにリスクが少ないからです。
日本では、こういった呼吸障害に関する正しい知識をもったドクターはほんとうに少ないので、自分自身で自分の障害を知っておくことが何よりもの自己防衛となります。
〔…〕
6.専門知識をもち理解のあるドクターを探す
〔…〕
ほとんどの医療機関では、未だにベンチレーターに対する正しい知識や情報が不足しており、とにかく理解のある、つまり専門知識と同じくらいに障害者の声に充分に耳を傾けてくれるドクターを探す必要があります。
〔…〕
7.吸引機を利用する
気管切開をしベンチレーターをつけると吸引をする必要があります。〔…〕
吸引機は今年度から日常生活用具の給付対象になりました。〔…〕
8.吸引は医療的ケア?
気管にたまったタンを吸引する行為を「医療的ケア」と呼ばれていることはみなさんご存じの方も多いと思います。しかし吸引は医師から指導を受ければ誰にでも行える簡単なケアです。私たちは吸引ケアを医療行為とは言わず、日常生活行為と呼んでいます。私自身は10年以上も自分の手で吸引をしています。タンがどこにあるのか、どうすればきれいにタンがとれるのか、など自分でやるとよくわかりますし、苦しまずに吸引が行えます。手が動かせる方は人にやってもらうよりも、自分で吸引するのがよいでしょう。
10.介助体制
私の自立生活の介助体制については現在札幌市の制度では1日12時間分が保障されていますので、3〜4人分の介助者を有料で雇っています。足りない部分はボランティアや友人で埋めています。1日24時間使用のベンチレーター使用者にとっては、吸引やベンチレーターのトラブルを考えると24時間の介助体制が必要なことはいうまでもありません。〔…〕
11.ベンチレーターが突然故障したら
ベンチレーター使用者の在宅にかかせないのは、アンビューバックという手動式人工呼吸器です。
〔…〕
12.気管切開の気管カニューレが抜けてしまったら…
在宅人工呼吸の中ではさまざまな予測しない出来事も発生します。そのひとつの中に、気管カニューレが抜けてしまうということがまれにあります〔…〕
このようなときのために、日頃から専従介助者にドクターのカニューレ交換時に立ち会ってもらい、さらにドクターからカニューレ交換のやり方を教えてもらい習得しておく必要があります。
14.自立生活センターが幅広い情報提供を
ベンチレーターは「生命維持装置」であり、重症の人が付けるものというイメージがまだまだあります。が、実は車椅子やメガネと同じ「日常生活用具」なのです。」(p36-42)
◆『JALSA』050号(2000/04/27)
□「平成十二年度総会議案
一、平成十二年度活動報告
〔…〕
F来年4月実施の診療報酬の改定において、かねて切望していました「入院料逓減制の見直し<平均在院日数の計算除外>、特定疾患入院医療管理料(病室単位)の新設」等の実現をみたことは、画期的な成果を得たものと評価できます。
(p23)
□「毎日新聞記事「ヘルパーも医療行為」について
○4月8日(土)の朝刊で表題タイトルの報道がなされ、私たちの希求に叶う朗報と喜んだのもつかの間、4月10日(月)厚生省は、これを否定するとともに、「今後引き続き検討していく予定」との情報(要約を下に掲載)を発出しました(吸引問題などの改善に向けての協会の取り組み方については52、53頁をご覧ください)
ヘルパーも医療行為
介護現場 ガーゼ交換や血圧測定 厚生省方針
厚生省は、法律上認められていないホームヘルパーの簡単な医療行為について、介護現場での判断に任せて黙認する方針を固めた。これまでも利用者や家族の要望で、ヘルパーがたんの吸引などを違法に行わざるをえないケースがあり、しばしば混乱が発生。このため総務庁は介護保険制度の導入を機に、法的にヘルパー業務を幅広く認めるよう同省に勧告していた。
医療行為は医師法などで医師や看護婦などに限られる。しかし、総務庁が一昨年以降、事業者などを対象にした行政監察でホームヘルパーの業務を調べた結果、家族らから傷口のガーゼ交換や体温・血圧測定、たんの吸引などの医療行為を求められることが多く、処置を断ってトラブルになるケースもあった。
在宅介護を支援する介護保険制度では、ヘルパーの果たす役割はこれまで以上に大きく、総務庁は制度を円滑に進めるため、身体への危険度が低い医療行為はヘルパーも行えるよう昨年、見直しを勧告していた。【出水奈美】」
各都道府県介護保険担当課御中
介護保険最新情報
vol.65
平成12年4月10日
厚生省介護保険制度実施推進本部
※管下市町村に速やかにFAX送信していただきますようよろしくお願いいたします。
毎日新聞記事「ヘルパーも医療行為」について
○平成12年4月8日(土)に毎日新聞朝刊に、「厚生省は、ホームヘルパーの簡単な医療行為について介護現場での判断に任せて黙認する方針を固めた」との記事が掲載されましたが、厚生省において、こうした事実はありませんので、ご連絡いたします。
○なお、医療的なケアを必要とする要介護者に対するホームヘルプサービスにつきましては、今後、訪問看護等との連携のあり方について具体例を示すことが可能かどうかなどを検討していく予定としています。」(p51)
□ 平成12年4月診療報酬改定の特筆点<組織渉外部>
今回の診療報酬改訂のうち、ALS療養にかかわる特筆すべきポイントは、次の2点に絞られます。
1. 特殊疾患入院医療管理料(病室単位、2000点/日)が新設され、併せて、この病室に入院する患者については、平均在院日数の計算から除外されたこと。また、人工呼吸器を装着している場合は、人工呼吸器使用加算(600点/日)が認められたこと。
2. 入院料の逓減制を見直し、廃止または緩和したこと。
これらはいずれも協会として長年にわたり強く要望してきたもので、両方が相まってALS患者等の入院を受け入れる医療機関が増えるというかたちで、療養環境が改善されるものと期待できます。しかし、現実にどの程度効果をもたらすかについては定かでなく、不充分な場合は実態を踏まえて厚生省に再度要望する必要がありますので、この問題についての総合的な調査研究をALS基金による研究助成の対象とし、ご応募下さった九州大学大学院吉良潤一教授にお願いすることとなりました。
残る大きな課題は、@吸引等のいわゆる医療行為とされている問題の解決と、A複数の訪問看護ステーション等が活用できるようになることですが、@については「介護保険制度がより良い制度になるための決定的な鍵」であることは間違いないところですしAについては高齢者在宅医療の分野で、複数の保険医による連携体制確保を評価して診療報酬の加算対象としていること、さらには介護保険制度における訪問看護においては複数の事業者と契約することが何ら妨げられていないことからみて、どちらも否定すべき理由は考えられません。厚生省に対し何としても実現するように希求してまいります。
(p52)
□ 介護保険の問題点と今後への取り組み<組織渉外部・企画調査部>
「経済的負担が減り有難い」(注3)と評価する声は少数に止まっているのが実態です。
(注3)吸引の出来る介護人を長年全額自賄いでお願いしていたが、これらの人を介護保険の事業者に取り入れて貰えたので一割負担に軽減された。
○このように介護保険は、目下のところ残念ながら私たちの期待に沿うようなものになっていません。在宅での看護・介護が欠かせずこれらと密着している私たちども患者会の立場としては、この制度をより良いものに育成してゆく必要と責務があると思います。そこで該当する会員の皆様にお願いします。これまでの公費(税金)によるサービス受給ではなく、保険料を納め、少なくない自己負担をしてサービス内容の契約をする訳ですから、"決してうのみにしない、あきらめないでください"そして面倒でも"近隣とも連携して質問し、確認してください"全国津々浦々で声をあげることが行政側の理解を促進させます。協会では現場の実態を踏まえて、介護保険制度が本当に頼りになる社会保障制度の三本柱として育つまでウォッチング&プッシュし続けます。」(p53)
◆『JALSA』051号(2000/09/20)
◇山口 進一 「本部総会に出席して」
『JALSA』051号:25-27
◇橋本 みさお 「ALS国際会議参加を目指して」
『JALSA』051号:29
□「厚生省に対し理事会メンバー有志による要請行動を実施
○本部事務局では、多くの理事方に選挙権行使問題訴訟の第二回公判(七月十日(月)一六時半〜、東京地裁)を傍聴して頂きたいとの意図もあって、本年度第一回理事会開催日を公判日と連続するよう当初予定の七月八日(土)から一日繰り下げ、七月九日(日)に変更したいと考え、松本会長に伺いました。これに対し、会長からは「大変結構だが、折角の機会なのだから傍聴までの時間を活かし、厚生省への陳情行動を併せ行うことはできないものか」との有難く前向きな示唆を頂戴しました。
○要請事項の中で、最優先課題としている「在宅療養の場における吸引行為等9<10の問題解決」ならびに「複数の訪問看護ステーションの活用容認」などについて、前任時来、ご理解が深い、津島雄二新厚生大臣の下で一日も早く英断が下るのを皆で期待しましょう。
要請書 平成12年7月
T。介護保険をより良い制度に育成し、在宅療養の改善につなげるために不可欠な重要事項
1. 主治医により在宅人工呼吸療養(HMV)への移行、継続が適切と判断された場合に限っては、吸引、経管栄養注入等の行為を生活必須行為と位置付け、医師・訪問看護婦等による指導・訓練を経た家族以外の介護職(者)にも担えるよう、新たな指針を打ち出して下さい。
2. 特殊疾病対策に基づく訪問看護婦(士)の派遣については、マンパワーを確保するため主治医からの指示書を複数の訪問看護ステーションに対し発出し得るように改めて下さい。
3. 重症難病患者にとって入院中であれば全額公費負担でカバーされるものが、在宅に移行すると少なくない自己負担(衛生材料費、介護保険費用)を余儀なくされるという欠陥と矛盾を解消して下さい。
4. 「全身性障害者介護人派遣事業」について、本事業を採用していない自治体に対し、積極的導入を奨励するとともに「ALS等在宅優先医療機器使用患者」は全て利用できるよう条件を見直して下さい。
5. 在宅療養における家屋の改善・改築についいての助成制度を、やむを得ずかつ適切な建て替えの場合にも適用し得るよう改めて下さい。
U。ALS等神経難病対策としての基本的事項
1. 国立病院・療養所への神経難病専門病棟設置を積極化して下さい。
2. 国立病院には神経内科をもれなく設置するなどし、神経内科専門医の育成、増員を図って下さい。
3. ALSの診断・告知、人工呼吸器装着を含むインフォームドコンセント等に関し、地域や病院等による差異をなくすため、有用なガイドラインを作成して下さい(当事者たる患者会としては積極的に参画したいと考えております)。
以上」
□ ALS相談員研修会の模様 療養支援部
残暑厳しいさ中の八月二五日(金)初めての相談員研修会を開催しました。
この研修会は、医療的な側面から折々助言を頂いている都立神経病院副院長の林秀明先生のご協力を得て開催できたもので、相談員および事務局員全員のほか埼玉精神・神経センターの丸木先生とソーシャルワーカーの柏瀬さんの一四名が参加し、相談の手順や相談員の心得などを中心に話し合いを進めました。
さらに林先生から、各国のALSケアの現状について「例えばイギリスでは一〇数年前迄は、人工呼吸器はもちろん、経管栄養も使わないで、最後はホスピスで迎えることが多かったのですが、ここ五、六年来、内視鏡的胃瘻増設術や鼻マスクでの呼吸補助法などの医療の発展で、人工呼吸器や胃瘻も用いるように変わってきています。一方、自己決定権が最優先するアメリカでは、先ず早期から、本人自身に病名を告知し、経済的負担を含め自分の責任で、呼吸器装着から装着した呼吸器の離脱の選択まで行うことが行われ、国によって違いがあります」とお話があり、翻って日本の状況を考えると、告知については病気の説明、人工呼吸器の装着とその後の介護や生活についてなど、本人はもちろん家族にも充分詳しい説明や情報提供がないままここの相談室を頼って見える人が多いように思うという発言があり、これについて話し合いをしました。また、「病気の臨床像だけでなく、嚥下筋麻痺、呼吸筋麻痺後の療養を含めて患者・家族と一緒に療養に前向きに対処している神経内科医がどれだけいるでしょうか。これは私たち医療者に課せられたこれからの課題」との話が出されました。これについては林、丸木両先生から、診断する大学病院の医師と長期療養の経過を見ていく医師がなかなか連携しにくい状況にあるのが問題ではないか、との指摘につながりました。
とくに、特殊疾患療養病棟(注)で一二名の呼吸器装着患者を診ている丸木先生から、「長期療養を保証するベッドが少ない今の医療状況では、告知しても自12<13分が責任をもって最後まで診ていけないために曖昧にならざるを得ないこともあるのではないか。私は患者さんが転院してきた時に改めて予後や呼吸器について話し合うように心がけている」と発言があり、「これからは、在宅ケア体制を整えることと併せて特殊疾患療養病棟を地域に作っていくように働きかけることが必要ではないか」と提案がありました。
(注)特殊疾患療養病棟とは神経難病や重度障害などに長期の入院医療を行う病棟(室)
相談員からは、告知の時に必ずALS協会を紹介してくれて、患者や家族との交流を勧める先生も増えてきているのでその受け皿としても相談員の役割があると思うという意見があり、そのためにもまず、相談者の話をよく聞くということが重要であると全員で再認識しました。また、相談の内容によっては、患者さん宅の見学・相談や、住まいの地域で行政や専門職と交渉しなければいけないこともあるので、支部があるところはより一層協力連携を進めていくことが大切だと確認し合いました。
これからの課題としては、人工呼吸器の装着を選択しない患者さんのケアのあり方を考えるうえで、患者さん本人や関わっている医療スタッフのお話を伺いたいと要望があったので、今後の研修に生かしていきたいと思います。
(p12-13)
□ お便りの中から
○医療相談室の設置を望む 山梨県支部 山口元子
夫が山梨医大で「筋委縮性側策硬化症」と診断され、告知されてから五年半がたった。呼吸器をつけた患者が在宅に移ってから三年半を迎えようとしている。山梨県における先駆けとして無我夢中でここまで走ってきたが、さまざまな問題も浮上してきている。〔…〕重大な病気を告げられた患者・家族がぼうぜんと立ちすくむとき、冷静にこれからのことを相談できるプロフェッショナルがぜひとも必要である。
(p28)
○ALS国際会議参加を目指して 東京都支部 橋本みさお
二〇〇〇年一二月にデンマーク・オーフス市で開催される国際会議に参加を希望して、準備を進めています。飛行機嫌いの私を、厳寒のデンマークへと引き寄せたのは、一九九九年冬の日の新聞記事でした。そこにはALS患者が、北欧を訪ねた体験談を寄せていたのです。
たしかに福祉先進国かも知れないし、夏の北欧の美しさは想像に難くありません。でもそこに、引用されていた医師の談話の「人工呼吸器は、神の意志に逆らう行為なので、呼吸器は付けない」には、不快感を禁じ得ませんでした。
私達の在宅介護支援は、誰彼なしに、呼吸器を付けて欲しいというつもりなど、毛頭ないのです。「生きたい人が生き、死にたい人が死ねる」といった環境が欲しいのです。
一五年前、五歳の娘にALSの発病を告げて、お友達のお母様ほど、ずっと一緒にはいられないと告げた時、朝に晩にイエス様にお祈りしていた彼女は「神様なんていないんだから、幼稚園のお祈りは無駄だ」と怒って私を困らせたものです。
もともと無宗教の私ですが、内なる存在(自分の作り主)としての神と大いなる宇宙の造り主の存在を信じています。
だからこそ、「生きる方法と、死ねる方法の、双方を提示しない医療についての議論をせずに、あまつさえ、そこに尊厳死を持ち出すことは、重度障害者の生を否定することにほかならない」と考えています。
およそ国情の違いは、不公平の一言で済まされない、大きな悲しみを発生させるのです。日本には「告知」の壁がありますが、欧米にはそれはありません。日本には呼吸器の選択肢はあるのですが、多くの患者に呼吸器の選択肢は与えられないのです。
ALS患者の介護を考える時、現実に呼吸器を装着して社会で暮らす人々がいて、その生活を支える家族がいる以上「呼吸器をつけて生命を永らえることは、神の御心に反する」の一文は承服できないのです。もしも、皆様が、学齢期の子を持つ、終末期のALS患者であったならば、親の介護を手伝う子等に「あなたの親が生きることは神が許さない」と言えるでしょうか。」(p29)
◆『JALSA』052号(2001/02/26)
□「巻頭言 世界会議出席
人工呼吸器を付けても、社会人として活躍できることを見てもらいたいと、橋本、熊谷、山口の三氏を中心に、遠くデンマークまで世界会議に臨んだ。
それも、患者の燃えるような意志の強さがあってのこと。世界会議や、デンマークでは、さぞ驚いたことと思う。これで、日本では、呼吸器患者が立派に人間として生き抜いていることを見てもらえた。みんなの勇気ある行動のおかげ。行けなかった患者も応援していた。
患者が国際会議に出席したのは、日本から初めて。とても偉い。
支援者は、医師、看護婦、呼吸器メーカー、通訳の松岡氏など総勢二五人。皆様の厚意のおかげで、行くことができた。感謝にたえない。
今回の行動は、二〇世紀の良い締めくくりになった。二一世紀は、さらに人の命を大事にする世紀にしたい。日本は、世界一番の長寿国。エーエルエスもその一端を担いたい。
たくさんの人から、寄付も頂戴した。本当にありがたい。皆様のおかげで思いがかなった。
日本ALS協会 会長 松本 茂」(p3)
□「介護保険実施に伴う在宅療養実態調査報告 企画調査部長 金沢公明
はじめに
昨年の八月下旬から九月上旬にかけて、全国の在宅療養を基本としている患者さんを対象に行った「介護保険実施に伴う在宅療養実態調査」の結果がまとまりましたので、紙上報告いたします。
二、個々の集計結果と分析
〔…〕
J喀痰吸引等(いわゆる医療行為)の実施状況
在宅療養において吸引などが必要な患者さんは介護保険対象回答者の六二%(介護保険ホームヘルプサービス利用者の七一%)おられます。
在宅における吸引等は医師の指導により、ほぼ全てのご家族が担われています。更に五二%の方がヘルパー、全身性等の介護人、私的有料介護人、親族等の無料ボランティアに依頼しています。(図11)
また、看護婦(士)が六二%の患者さんに行っていますが、このことは吸引等等が訪問看護の大切な業務として位置付けられていることを示している半面、患者さんの実際の吸引実施回数に占める割合は低く(前述Iで訪問看護回数が週平均一〜三回)、必ずしも吸引等をカバーできているとは言えません。
今回の調査で一番多かった要望が介護時間の長いホームヘルパーによる吸引の実施でした。
経管で栄養摂取している方や呼吸器を装着している患者さんにとって、吸引は日常的に不可欠な行為であり、個人差はあるものの短い人では約三〇分に一度必要な方もおられます。そのため家族にとっては患者さんにから昼夜離れられず、喀痰吸引は介護負担のなかでも最も大きな比重を占めています。
吸引のできる介護人の派遣がなければご家族の介護負担は軽減されません。
〔…〕
三、まとめ
今回の調査により介護保険上で明らかになったこと
@ 在宅療養を基本とされているALSの患者さんの九割が申請しており約八四%の方が介護保険を利用されている。
A 要介護度認定は患者さんの八四%が要介護五と四に認定されており、現行制度上では概ね妥当な審査がされている。
B 介護保険サービスはホームヘルプを八〇%、訪問入浴を六三%と多くの患者が利用しているがホームヘルプを利用してもヘルパーが吸引できないことや患者に習熟したヘルパーが少ないため家族の介護負担の軽減は少ない。
また、呼吸器装着患者の短期入所(ショートステイ)の受け入れ先が少ない。
C 介護保険利用負担額は一〜二万円が多く、以前より利用負担額が増えた方が五四%おり、経済的負担が重くなっている。そのためにサービスの利用を抑えている。
D 患者さん、ご家族の介護保険の総合的評価は「良くなった」と「悪くなった」がそれぞれ二割で全体としては経済的負担が増えた割には家族介護の負担は軽減されていないとの評価をしている。
患者さんご家族が切実に改善を求めていること
@ ヘルパーが行っている吸引を公的に認め、家族の介護の負担を軽減する。
A 介護保険利用者負担額の軽減
B 呼吸器装着患者が家族の付添い無しで短期入所(ショートステイ)や入院ができる環境の整備
C 患者の介護に習熟した介護人が選べ、夜間を含めて長時間利用できる介護人制度(全身性障害者介護人派遣事業等)の拡充
D 週一〜三回の利用にとどまっている訪問看護回数を増やせる様、訪問看護婦(士)の増員と併せ複数の訪問看護ステーションの利用を認める。
おわりに
〔…〕
これからの厚生労働省や自治体への働きかけに貴重な資料となります。
〔…〕」(p11-19)
「[付]
「介護保険実施に伴う在宅療養実態調査」患者さん、ご家族の意見
〔…〕
一、ヘルパー利用に関して
@ 吸引行為と家族の介護負担について
(声1)吸引のできるヘルパーがいなければ介護者は解放されません
(声2)ヘルパーを頼んでも家族がいなければならず介護者負担は変わらない
(声3)寝るわけにもいかず気兼ねにもなる
(声4)誰かが病気をしたら患者を看る者がいなくなる
(声5)現在は全くの素人を見つけ教えながら介護をして貰っている
A ヘルパーの働き方、質と量に関する意見
(声1)患者本人の食事づくりや部屋の掃除などしかできない
(声2)夜間のヘルパー派遣は無理でしょうか
(声3)滞在型で長時間夜勤してもらえるヘルパーがほしい
(声4)ヘルパーがある期間ごとに替ってしまう
(声5)ヘルパーは勝手気ままで横暴を極めている
二、家族の肉体的、精神的、経済的な負担の大きさ
(声1)八一歳の父が経済的中心で経済的負担もきつい
(声2)生活は苦しく、子供からの援助もないので、介護保険制度を全面的に利用できない
(声3)介護が高度になるほど対応が無くお金がかかる
(声4)介護保険になってありがたいことは全くなく、支払の金が増えただけ
(声5)介護保険はとにかくお金がかかる
(声6)介護保険を満額利用しても一ヶ月六五万の出費がある
(声7)家族介護の負担は保険導入前と変わらない
(声8)病気が進んで自己負担が増えたらどうすればよいのか。負担を軽くしてほし い
三、訪問看護やショートステイの利用上の不満・要望について
@ 訪問看護について
(声1)訪問看護婦は短時間で帰り、定時に来ないが何も言えず情けない
(声2)介護保険開始後、訪問看護を減らされた
(声3)人数が足りずステーションは一か所しか利用できないため、折角の施策も絵に描いた餅である
(声4)複数のステーション利用を認めてもらいたい
A ショートステイについて
(声1)呼吸器を着けた患者はショートステイの受入れが無い
(声2)呼吸器装着等の全身性障害者がデイサービスやショートステイを利用する場合、家族同伴を要求される
(声3)夜間、たまにはゆっくり休みたいがショートステイで受入れてくれない
(声4)在宅介護が困難になった場合に受入れてくれる病院と施設がほしい
四、全身性障害者介護人派遣事業等について
(声1)介護保険で全身性障害者介護人派遣時間を制限しないで欲しい
(声2)全ての寝たきりの患者には全身性介護人派遣事業が利用できるように
(声3)仙台市の特別措置と宮城県のASL在宅療養介護人派遣事業
(声4)全身性障害者介護人派遣事業を全部のALS患者の制度として確立させてほしい」
(p20-25)
□ 支部活動状況
<青森県支部>
県知事に看護・介護人派遣に関し要望書を提出
青森県支部活動の一環として、全身性障害者に対する「看護人派遣事業」の展開をして欲しい旨の要望を県保健福祉部へ提出した。介護人派遣事業(サービス)は市町村レベルで工夫すれば(患者からの要望があること)、また条件が整えば障害福祉ホームヘルパー事業の中で出来るという見解であったことから。看護人をという形にしたところ、県当局は今後これを財政部と協議(予算要求)の上で承認が出れば来年度より実施されるものと期待している。」(p33)
お便りの中から
「闘い」 東京都支部 関正一
◆『JALSA』053号(2001/05/16)
□「日本ALS協会北海道支部の誕生
日時 二〇〇一年四月二二日(日)
ところ 札幌市社会総合福祉センター
〔…〕
さらに、在宅療養の患者さんを後方支援医師として診て居られる秀友会札幌病院藤原院長に、現状と問題点をお話して頂きました。特に札幌市における医師会を含めた在宅ケア連絡会の結成が大いに期待されます。
そして、日本ALS協会熊本事務局長には、全国的な立場からトムに介護保険の意味、問題点などをお話して頂きました。医療行為として吸引などがヘルパーさんなどに認められていない状況を打開するためのお考えなどをお聞きしました。
補足として島先生から、在宅患者の受け入れ体制の問題、専門医の連携、コミュニケーション機器の早期給付と教育的サポートの体制作りなど今後の問題点が話されました。
藤原先生からは吸引行為の法的な裏付けが欲しいこと、短期入院の体制で、国立病院の統廃合の問題もあり、地域の病院にどうかかわってくるかなど指摘がありました。
〔…〕」(p21-22)
□「ALS在宅療養者を介護する家族の疲労と負担の計量化
東京医科歯科大学老人看護学講座高崎研究室 小長谷百絵
1. はじめに
介護の社会化を目的に介護保険がスタートしました。しかし人工呼吸器や、吸引を必要とする医療依存度が高い神経難病の患者さんや、重度の痴呆症の患者さんにとっては、そのサービスの整備が不十分であるために、介護保険サービスだけではまかないきれず、介護が途切れた時間や質を、家族が補わなければならないのが実情です。また看護婦や、ヘルパー、ボランティアなど、職種にかかわらず、その技術の習熟度が異なる多数の人数が、入れ替わり立ち代わり訪れるという問題もあります。従って介護をされている全ての御家族で介護保険によって負担が軽くなったとはいえず、依然として精神的、肉体的負担は解消しておりません。
〔…〕」(p24)
□「「吸引問題」我が家の場合
東京都支部 松浦百合子
私の父は、人工呼吸器をつけて在宅生活を続けています。ケアに入っているスタッフから「吸引行為」について質問を受けました。「自分が医療行為をしてもいいのだろうか?急変した場合はどうすればいいのだろうか?という不安があります。」というものでした。
私達、家族の考えを伝えたところ次のようなレポートがきました。
家族からの手紙「血糖値の測定・インシュリンの注射(父は糖尿病があるため朝・夕行っている)や吸引・呼吸器の回路交換など、本来家族がするように指導されたことを、すべて皆さんにお願いしています。皆さんには、指導された通りにやって頂いているので、私は安心して仕事ができるし、母も休息や気分転換の時間を持つことができます。もし、皆さんが引き受けてくださらなかったら、私達の生活や家族関係も全く違ったものになっていただろうと思います。私自身、なにもかもが父中心の生活ではないので、一番心配だった夫との関係も大事にできています。たまの休みには、父母の家に遊びに行くことが楽しみになりました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。もし、なにか質問や疑問があったら、聞いてください。私達は、皆さんとの信頼関係を築いてゆきたいと思っています。また、私達家族のことも、もっと知って頂きたいと願っています。」
スタッフのレポート「茂氏(父)が在宅生活をすることで、家族の誰かが犠牲になることがないようにしたいというのが、ご家族の考えです。そうすることで、家族が介護の負担や犠牲を感じることがないし、茂氏も家族を犠牲にしていると思うことがないので、発病前と変わらぬ親子関係・夫婦関係を保つことができます。医療行為をご家族に担わせるような援助では、茂氏とご家族が望まれていることは実現できません。このご希望に添った援助をすることで、信頼関係が深まるし、もし何か起きたとしても、それで、援助者を責めることはないので安心34<35して援助に入ってくださいといわれて、心強く思いました。そして、ケア協会に援助を依頼して良かったと思ってくださっています。
茂氏は、以前、(こういう体になってしまったら、何かあったらと心配していたり、遠慮していてはなにもできない)とおっしゃっていたそうです。茂氏は、生きることにとても前向きな方です。」
先日、父の誕生会に援助していただいている皆さんもご招待しました。援助者の一人一人とは、よく話をしていたのですが、"この人たち全員が私達を支えてくれているんだ、一人もかけがえのない大事な人だ、全体がひとつになっている"と感じました。この人たちに支えられている父は、病気になったのはかわいそうだけれども、本当に幸福な人生だと思っています。」(p34-35)
◆『JALSA』054号(2001/10/10)
□「巻頭言 陳情
桝屋副大臣に陳情した。
叶内、橋本、塚田、私と患者四人、熊本、金沢、梅田、川上、佐々木、大勢で押し掛けた。
枡屋副大臣は、亡くなられた山口県支部の清水正男支部長と親しくしておられた。呼吸器をつけてからも、見舞いに行ってくれた。ALSのことが、よくわかってくれる副大臣だ。
次のことを訴えた。
一、ヘルパーも吸引できるように。吸引してくれないと家族は、休むことも買物に行くこともできない。
二、ALSは長い闘病生活で、蓄えもなくなって、介護保険で介護度五となっても、十%の自己負担が重いため、半分しか使えない人がいる。自己負担を零か、せめて三パーセントにして欲しい。
三、早く法人にして欲しい。法人でないと、活動が制約される。全員一同、法人になることを、一日千秋の思いで待っている。
枡屋副大臣は、一時間も陳情を受けてくれた。
あとからもサポートをしてくれている。
有意義な陳情であった。
日本ALS協会
会長 松本 茂」(p2)
□「坂口厚生労働大臣あて要請書を提出―枡屋副大臣に直接陳情を実施―
〔…〕
これに対し、枡屋副大臣は、「ALSが加齢に伴う疾病として介護保険に組み入れられた当時、良かったと喜んだ一人だが、今や本当に良かったのかどうか疑問を抱かざるを得ない心境」と語り、次いで、「ALSは、政策医療として、国がきちんとみていなければならない難病」との持論を披瀝されたこともあって、陳情団の中によき理解者で何を話しても真摯に受け止めて下4<5さる、との安堵感が満ちました。
〔…〕
最後に副大臣からは「ご要請をいただいた点にはそれぞれに難しい背景や課題があって今日に至っている訳だが、今一歩踏み込んで新しい切り口でアイデアを出すかたちで検討させることとしたい」と約束して下さいました。
〔…〕
松本会長から枡屋副大臣にあてた陳情時のお礼のファックスに対し、副大臣から届いた返信のはがき
前略
御ていねいなお手紙をいただき恐縮しています。改めてヘルパーの医療的ケアの問題、介護保険料のこと、訪問看護のこと、そして法人化の問題について要請をいただきました。いずれも従前から私が深く感じていることであり、私自身の課題として取り組みを進めていることです。一歩前進できるよう、会長の思いを受けとめて頑張ります。」(p4-5)
□「平成一三年度総会の模様
松本会長挨拶
〔…〕
次は介護の問題です。昨年、皆様のご協力をいただき「介護保険に伴う在宅療養の実態調査」を企画調査部が中心になり実施しました。その集計結果はJALSA52号に記載されております。その主な問題点を申しますと、
@ 介護保険で良くなった人は二〇%でした。介護保険前より利用料負担が増えた人は五四%もあり、これでは介護保険はありがたいとは言えません。ALSは重度障害、長期療養ですから、利用者負担は困難です。何とか、医療費のように無料にしてもらいたいのです。
A ホームヘルパーを利用しているALS患者の七一%は痰吸引の必要な患者です。三〇分おきに吸引をしなければ生きられない人が大半ですから、吸引のできないヘルパーさんに来てもらって8<9も、家族は助かりません。吸引は医療行為でなく、いまや生活必須行為ですので、一日も早く規制をといて吸引のできるヘルパーさんにしなければなりません。この問題は今年の最重点課題として運動します。
B ALSは頭脳は正常で個性的な生き方を望んでいる人ばかりですので「患者の介護になれた介護人を自選でき、夜間を含め長時間滞在型の介護人制度」である「全身性障害者介護人派遣事業」を七四%の患者が望んでいますので、厚生労働省に働きかけ、この実現に努力しなければなりません。現在東京都や一部の自治体では、既にこの制度をとり入れ、全身性重度障害者を支援していますので、私達自らも県や居住地の役場に働きかけるなど、全国的な運動にしていきたいと思います。
〔…〕」(p8-9)
□「特別講演 国立療養所宮城病院神経難病センター―神経難病患者の要望を満たす病棟で適切な医療看護を確保するために―
国立療養所宮城病院 神経内科・神経難病センター 望月 廣先生
〔…〕
神経難病医療の経済面
「神経難病をあつかう病院は経営に行き詰まり、神経難病医療にはペイしない」との風評があります。これはある意味では事実です。それは日本では神経難病医療が安いからです。
アメリカにおけるALS医療は高額です。アメリカでは、入院費が高いため、検査診断は大学やALSセンターなどの外来で実施されます。診断後は、在宅での療養と地域の病院への外来通院となります。人工呼吸器を装着した患者さんは、一般的に入院での人工呼吸器は保険で認められないため、在宅が原則です。脱水や栄養障害や呼吸障害での緊急時には地域病院へ短期入院しますが、その15%が死亡すると報告されています。また、ALS患者の死亡場所は、在宅が61%、病院が27%、ホスピスが4%と報告されています。
このような人工呼吸器を装着した在宅ALS医療の経費は、年間二千万円から二千五百万円かかると報告されています。また、緊急時の入院医療には、1日あたり30万円かかり、この費用で長期の入院をすれば年間1億円の費用がかかる計算になります。
日本でのALS医療の経費面についての報告はありません。当院でのデータでは、人工呼吸器のALS患者8例の入院での保険診療の平均点数は1日あたり27,880円、年間10,175,960円でした。また、人工呼吸器なしのALS患者3例の入院での保険診療平均点数は1日あたり20,650円、年間7,537,250円でした。在宅での経費も、入院と大差がないものと推測されています。
この金額は、アメリカに比べれば安いが、高額な費用がかかるものだと言うのが一般的な感じ方かも知れません。しかしこの金額では、病院は経営して行けません。
〔…〕
神経難病病棟入院料:包括3000点の新設を提案
〔…〕
神経難病患者が安心して入院できる看護力と療養環境を提供でき、病院としても運営可能な診療報酬として、神経難病病棟入院料:包括3000点/日の新設を提案します。
〔…〕
これからの神経難病医療を、どこが、どのように、になうのか
〔…〕
国立療養所が生き残るためには、国立療養所の自助努力による経営改善が必要です。患者に選択されるだけの医療の質とサービスの向上が必要です。しかし、それだけでは国立療養所の経営基盤は確立できません。先に提案した神経難病病棟入院料の新設などの診療報酬面での配慮が必要です。このような行政サイドの決定を引き出すためには、患者団体の支援が必要です。ある意味では、患者団体の政治力が必要です。
〔…〕」(p12-17)
□「吸引行為に不可解な政府見解
○政府は、九月一一日の閣議で「吸引行為は医行為である」と位置付けたうえで、現段階においてとしながらも「医療関係資格を有していない訪問介護員(ヘルパー)が特例的に吸引行為を認めるについて検討している事実はない」などの見解を了承、内閣総理大臣から参議院議長に対し、答弁書を送付した。
これは渡辺孝男参議院議員(公明、山形)が国会法第七四条に基づき質した「医師や看護婦による緊急対応が困難な場合、十分な教育を受けたヘルパーについては、特例を設けて吸引行為ができるような措置を求める」ことに対するものであるが、当協会が坂口厚生労働大臣に要請している希求(p6、要請書参照)などに照らし、不可解極まりないことと云わざるを得ない。
○この答弁書がどのような経緯、経過の下、したためられたものかは定かにされてないが、考え方のうえで欠落しているポイントや問題点を挙げれば次の通り。
@ 医療費の抑制が求められる中で、社会的入院を減らし、在宅療養への移行(社会復帰への途)を推進している立場でありながら、その受け皿となる介護保険制度をより良いものに改める熱意、視点に欠ける。―総務庁(現総務省)の勧告や患者団体からの切実な訴えに未だ何ら答えていない。
A 人工呼吸器装着患者が病院から在宅へ移行するに際し、主治医は主たる介護者(家族)に必要な指導を行っているが、医療関係資格を有していない者による介護を前提としているこうした現実をどうみているのか不明。
B 吸引行為は資格があるかどうかが問題なのではなく、"実践的な習練を積む"ことと、"患者を支える熱意"の二点にあることを理解していない。―医師、看護婦であっても、ALS等呼吸器患者に接して経験する機会がなければ、"無資格同然"である一方、「家人の中では小学6年の孫娘の吸引が最も優しく上手で安心」と目を細める患者も居るのが実態。(吸引は特殊技能ではなく、慣れることが肝心な証左)。
C 吸引行為が患者の身体に及ぼす危険性を問題にしているが、かりに気管を傷つけ出血するなどのリスクがあるとしても、痰の吸引が滞り患者が呼吸不全で命を失うことにつながるリスクに比べれば、どちらを優先すべきかは自明であるが、この点を見21<22落とし、ないし無視している。―在宅優先医療機器使用患者は、政策医療の最優先対象と考えるが、医師・看護婦(有資格者)による24時間カバーが非現実的である以上、次善の策を打ち出すべき。また、介護者が負担に耐えかね倒れれば、患者も倒れることを心に刻むべき。
D 吸引を要する患者宅には、家庭医や看護婦が頻度の差はあれ、訪問しており、日頃の症状の変化の把握や、緊急時の対応について体制が整っているので、万が一、吸引によって何らかの問題が発生した場合でも、これらの医療関係資格者による処置が可能である。
E 答弁書のなお書きにおいて「訪問介護員が緊急やむを得ない措置として吸引行為を行うことは…医師法第一七条に違反するものではない」としているが、緊急時に人の命を救うという観点からすれば、刑法第三七条の[緊急避難]の定めが優先する筈で、医師法上の問題たり得ないであろう。
○わが国の構造改革が迫られ、これに伴う規制緩和や各種見直しが求められている今日、役所作成の答弁書が閣議案件としてさしたる詰めや議論のないまま了承されるという事態に危機感を抱くのは杞憂であろうか。
日本ALS協会としては、これらを踏まえ厚生労働省に猛省を促し、難病や障害に苦しむ人々にとってより良い社会が到来するよう邁進してまいります。」(p21-22)
□「ALS相談室より
<東京近郊の訪問看護婦さんより>
『今、ALS患者さんの訪問看護をしている。最近、唾が多く吸引の回数が増えて、家族の負担が重くなっている。良いアイディアがあれば参考にしたい』
↓
・口にガーゼを挟んで吸い取る方法、マスクで唾を受ける方法など他の患者さんのアイディアをお知らせした。
・金魚蜂に酸素を常時送るポンプを改造して低圧で吸引する器具を利用する方法があり、北海道の吉田さんのホームページに詳しく記載されているので、それをお知らせして、合わせて器具を作ってくれるボランティアの方がいることをお伝えした。」(p30)
◇「ALS原因遺伝子を特定」 35
新聞記事紹介
◆『JALSA』055号(1900/00/00)
◆『JALSA』056号(2002/05/10)
◇金沢 公明 20020501 「改善が望まれる長期入院施設の確保――ALS患者長期入院施設利用等の実態調査・概要報告』
『JALSA』056:22-27
◇林 秀明 20020501 「12回ALS/MND国際シンポジウムで「新しいALS観」を紹介して」
『JALSA』056:42-43
◇山口 衛 20020501 「ALS/MND国際会議飛行機旅行体験記」
『JALSA』056:43-46
◆『JALSA』057号(2002/09/03)
◇吉野 英(国立精神・神経センター国府台病院神経内科医長・治験管理室長) 20020903 「ALS治療法開発の試み」
『JALSA』056:23-24
◆『JALSA』058号(2003/02/19)
◇中村 祐輔(東京大学・ヒトゲノム解析センター長) 20030219 「ゲノム医療――二一世紀の医療はどう変わるのか?」
『JALSA』058:15-16
◇金沢 公明 20030219 「メルボルン国際同盟会議・シンボジウム参加報告」
『JALSA』058:18-19
「吸引問題解決へむけて数多くの方々からご署名(一七八,二〇一名)頂きました要望書を携えて,平成一四年一一月一二日一二:三〇から衆議院第一議員会館第一会議室で大臣陳情が行われました.
当方側参加者は全国から一七名の患者さん(内,呼吸器装着一名)とバクバクの会から二名(内,呼吸器装着一名)のお子さんをふくめ,総勢八〇名にも及び,会場は吸引問題解決を願う熱気に包まれておりました.一五分という限られた陳情時間ではありましたが,坂口大臣から前向きな発言をいただくことができました.」(『JALSA』58:4 [2003-3-10],仲口[☆]に引用)
◆『JALSA』059号(2003/05/17)
◇厚生労働省医政局設置「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」ヘルパー等介護者による痰の吸引検討に関する意見・要望書
『JALSA』059:26
◆『JALSA』060号(2003/08/30)
◇中村 祐輔(東京大学・ヒトゲノム解析センター長) 20030830 「ALS原因解明のためのゲノム解析について」(2003/05/31 日本ALS協会総会での講演)
『JALSA』060:09-12
◇林秀明「豊倉康夫先生に育まれてきた「患者・家族と歩む」JALSAの理念」
『JALSA』060:16-19
◇山本 真 「気管カニョーレコネクターに関する意見」(首相官邸への意見投稿)
『JALSA』060:32-33
◇鎌田竹司追悼 鎌田幸子/伊藤道哉(宮城県支部事務局長)
『JALSA』060:42
◇多比羅千賀子 2003/08/30 「かけがえのない友へ」
『JALSA』060:45 *井上真一哀悼
*作成:仲口 路子