last update: 20230725
2023年8月号 特集:裁判官とは何か
2023年7月号 特集:〈計算〉の世界
2023年6月号 特集:無知学/アグノトロジーとは何か
2023年5月号 特集:フェムテックを考える
2023年4月号 特集:カルト化する教育
2023年3月号 特集:ブルーノ・ラトゥール
2023年2月号 特集:〈投資〉の時代
2023年1月号 特集:知のフロンティア
■『現代思想』51-1(2023-1) 2023/01/01
とどまることなく思考し続けるために
人類学、数学、美学、政治学、生物学、歴史学……さまざまな領域で〈思想〉は自らが身を置く〈現代〉の課題に対応し、たえず練磨されてきた。だとすれば、ますます混迷を極めるこの社会において、知はこれまでとは違う新たな言葉をさらに紡ぎ出す必要も生じているだろう。本誌刊行50周年を迎える今、これからの50年を多様な角度から照らし出す記念号。
特集*知のフロンティアーー今を読み解く23の知性
文明と倫理
- 強い制度志向と倫理のアウトソーシング / 玉手慎太郎
- 賢い模倣、人間の文化、集合知 / 豊川航
- 社会派科学哲学の道をゆっくり歩く / 清水右郷
- 方法を理論として読む――社会学的想像力のフロンティア / 松村一志
- 「安心して炎上できる場所」が人工知能の開発・利用・運用に必要な理由 / 江間有沙
- 他者の心の理解――マスクによる影響と人間らしさの知覚 / 齊藤俊樹
記憶と価値
- 政治思想はいつ過去になるのか / 上村剛
- キャンセル・カルチャーの標的となる歴史概念 / 小俣ラポー日登美
- 世界宗教と日本文化――近代仏教という辺境 / 碧海寿広
- 新学習指導要領下での『源氏物語』――紫の上垣間見場面と妻の座をめぐって / 青島麻子
- 美術史を語ること、語り直すこと / 松井裕美
- 大地の重みに耐えること――中東欧現代史を歩いて考える土地と思想 / 中井杏奈
惑星と政治
- 身体の拡張を、麻酔の浸透にさせないために――惑星意識的逸脱、フリクション、映像人類学 / 太田光海
- 知識人とはなにか――先住民フェミニズムと〈ケアし合う社会〉へむけて / 石原真衣
- 国際刑事司法(論)の概況と展望 / 越智萌
- 国境開放論争とは何だったのか――移民正義論の現在と展望 / 宮井健志
- すれ違う世界観、間を流れる福祉――東アフリカの都市の事例 / 仲尾友貴恵
- 危機の時代の物語のかたち / ハーン小路恭子
言語と物質
- オラリティの感性論 / 星野太
- 言語哲学におけるいくつかのトレンド / 和泉 悠
- 「イメージ知」――見ること・写すこと・触れること / 河南瑠莉
- 天文民俗学の可能性――心意現象としての星から / 中野真備
- 万物の理論としての圏論――ライプニッツとニュートンから圏論的量子計算と圏論的機械学習へ / 丸山善宏
連載 科学者の散歩道
- 第八八回 量子情報の時代へ――EPR実験と存在の「非局所性」 / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第二四回 柄谷行人における「世界史」の問い方 7――その「起源」と「構造」 / 成田龍一
研究手帖
■『現代思想』51-2(2023-2) 2023/02/01
何が私たちを〈投資〉に駆り立てようとするのか
不確実な将来への不安や残余乏しい資源をやりすごすための生存手段として、〈投資〉はいまや私たち個々人の日常にまで深く根ざしている。本特集では、国家・企業・家庭など様々な次元を横断しながら〈投資〉なるものを多方面から検討する。為替や財政問題に耳目が集まる昨今、資本主義と向き合うためのキーワードとしての〈投資〉について、それを内側から組み替えるような試みにも迫りながら、その内実を問う。
特集*〈投資〉の時代――金融資本主義・資産運用・自己啓発…
インタビュー
- 松尾匡 資本主義を乗り越える〈投資〉に向けて 疎外から連帯の時代へ
〈投資〉の射程
- 山田鋭夫 「貯蓄から投資へ」の虚像と実像
- 藤田菜々子 「人への投資」を問い直す
- 佐藤滋 何のための成長か ケイパビリティ、ニーズ、財政
- 杉本俊介 悪徳企業の株を売るべきか 株式売却のパズルから「よりよくお金を使う」を考える
暮らしの輪郭
- 太田省一 投資とテレビ、その”対立”がフィクションとなるとき
- 金井郁 生存をめぐる保障の投資化 生命保険営業の現場から見えるもの
- 山田陽子 働く人のための健康投資論・序 健康経営・ウェルビーイング
- 前島志保 貯金から利殖、そして再び貯金へ 戦間期日本における女性向け資産運用言説
貨幣の想像力
- 深田淳太郎 貝殻貨幣経済における老人のマネープラン 投資と退蔵の関係をめぐって
- 林公則 脱成長時代の「投資」 フライカウフという考え方を手掛かりに
- 陳海茵 中国現代アート市場は欧米モデルをいかに模倣する/しないか オークション、ギャラリー、独立策展人の語りに着目して
未来への眺望
- 木澤佐登志 イーロン・マスク、ピーター・ティール、ジョーダン・ピーターソン 「社会正義」に対する逆張りの系譜
- 宮本道人 SF投資の時代 SF格差を防ぐためのSFプロトタイピング
資本論の余白に
- 橋本努 贈与投資説 A theory of gift as investment
- 檜垣立哉 投資と賭博と資本主義
- 橋迫瑞穂 贈与という陥穽 「スピリチュアル市場」における経済とその問題
- 山本泰三 価値づけ/計算 慣行と配置にもとづく機制についてのノート
連載 科学者の散歩道
- 第八九回 佐藤文隆 思想で乗り切った量子力学誕生劇 コペンハーゲン解釈の思想
連載 「戦後知」の超克
- 第二五回 成田龍一 柄谷行人における「世界史」の問い方8 その「起源」と「構造」
連載 社会は生きている
研究手帖
■『現代思想』51-3(2023-3) 2023/03/01
世界の描き方を変える思想
昨年10月に惜しくも逝去したブルーノ・ラトゥール。20世紀後半以降の社会科学のあり方を刷新した「アクターネットワークセオリー(ANT)」の提唱者の一人としても知られる彼の思想は、科学・宗教・戦争・法など多様な領域を超えて、私たちの生きる「近代」を常にラディカルに問い直し続けるものだった。本特集ではその歩みの全貌をたどりなおすとともに、諸分野におけるANTの最新の展開を一望することを通じ、ラトゥールの遺したインパクトとアクチュアリティを多角的に検証したい。
特集*ブルーノ・ラトゥールーー1947-2022
翻訳
- 地球に住む(抄) / B・ラトゥール+N・トリュオング(聞き手)/池田信虎+上野隆弘訳
- ブリュノ・ラトゥール──近代の妄想 ブリュノ・ラトゥールの哲学的遺産 / G・ハーマン/飯盛元章訳
肖像
- ラトゥールとは誰か──総説 / 福島真人
- 媒介子・フラット・ポストモダン――ラトゥールとフランス哲学 / 檜垣立哉
- 現代のエコロジー危機とブルーノ・ラトゥール / 村澤真保呂
- ノンモダン・ノーマンズランド / 久保明教
軌跡
- ラトゥールの戦争――存在の政治性と「政治を不可能にする」意志について / 田中祐理子
- フェティッシュ・フェティシズム・ファクティッシュ / 佐々木雄大
- 『存在様態探求』に照らして呪術の実践を考える / 春日直樹
- ラトゥールの『地球に降り立つ』を読む――「テレストリアル」の科学と特異なるものの多様体 / 近藤和敬
- 「地球への私たちの帰属を再物質化せよ」――ブルーノ・ラトゥールの警告 / 川村久美子
- テレストリアルたちのパンデミック / 浜田明範
共鳴
- 「とんでもなくもつれあっているのに全然違うし」――フェミニストにして動的協働体、ブリュノ・ハラウェイ / 逆卷しとね
- ミシェル・セールから見るブリュノ・ラトゥール――科学的精神からハイブリッドへ / 縣由衣子
- タルドのモナド、ラトゥールのプラズマ――アクター・ネットワークの外部に残るもの / 中倉智徳
- 非ネットワーク的外部へ――ラトゥール、ホワイトヘッド、ハーマンから、破壊の形而上学へ / 飯盛元章
- 〈媒介〉が開く知の光景――ラトゥールと田辺哲学と現象学の交叉点 / 田口茂
- ラトゥールの〈形而上学〉――アクターネットワーク理論と社会システム論 / 大黒岳彦
展開
- 一介のアリ(ant)であり続けることの意味と意義――運動体としてのアクターネットワーク理論の現在とこれから / 栗原亘
- 生命の薄膜――ラトゥールとマルチスピーシーズ人類学 / 奥野克巳
- アクターネットワーク理論と記述的社会学の復権 / 伊藤嘉高
- 何とも言えぬ何かの群れに囲繞される(こともある)私たち――プラズマ、無関係、妖怪、怪奇的自然、幽霊、ぞっとするもの、エクトプラズム、タンギー / 廣田龍平
- 書記技術のマテリアリズム――ブリュノ・ラトゥールのメディア論のために / 岡澤康浩
- アリのラトゥール化(再帰ループ一周分の遅れ) / 中井悠
- 応用領域会計学の世界から――ラトゥールを偲ぶ / 堀口真司
特別寄稿●追悼*磯崎新
- 歴史を現代と接続させ、未来に解き放つ / 五十嵐太郎
- 境界線を引く場所――磯崎新のパートナーシップ / 松井茂
- 翁の後髭(うしろひげ) / だつお/青柳菜摘
連載 科学者の散歩道
- 第九〇回 量子力学の観測者に見るマッハ残照――アインシュタインとマッハの四つの時期 / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第二六回 柄谷行人における「世界史」の問い方 9――その「起源」と「構造」 / 成田龍一
連載 社会は生きている
- 第八回 主体の生態社会学 6――主体の系譜 / 山下祐介
研究手帖
■『現代思想』51-4(2023-4) 2023/04/01
遍在する〈教育現場〉から問う
教育の現場は、学校や家庭にとどまらない。その輪郭は日々形を変え、そこで扱われる問題も多様化している。教育とは、いつどこで、何を教える/学ぶべきなのか。長らく議論され続けながらも古びることのないこの問いに改めて向き合いながら、本特集では教育をめぐる最新の状況を議論する。
特集*カルト化する教育ーー新教科「公共」・子どもの貧困・学校外教育
討議
- 新自由主義再編下の宗教とイデオロギー / 大内裕和+三宅芳夫
現場のリアル
- 性的マイノリティの若者の学校体験とその後 / 杉田真衣
- 教育と市場、ときどき身体――「新自由主義」批判を超えて / 矢野利裕
- 先生、わたしたちは主体的なのですか? 自由なのですか? それとも――生権力に統治される学校と新自由主義的学校化 / 岡崎勝
〈育てる〉を問い直す
- 選抜構造論からみた日本の教育――日本で入試の公平性が重要となる社会学的理由 / 中村高康
- 自覚的な「客分」を育む主権者教育の方へ――新教科「公共」の性格をめぐる覚書 / 和田悠
- 哲学はどのような意味で現代日本の学校教育に求められているのか――「方法論」としての哲学と、「知識」としての哲学 / 土屋陽介
- 理科離れ再考――ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの視点から / 加納圭
- キャリア教育は「未来の可能性領域」とどう関わるか?――「庭づくり」のメタファーから考える / 土元哲平
教室の外には
- 児童養護施設と「教育」をめぐる問題 / 三品拓人
- 戦後日本の夜間中学と識字運動――就学と識字を巡るアポリアを超えて / 江口怜
- おもちゃ箱としての「居場所」に投げ入れられているものはなにか? / 阿比留久美
- コロナ禍と教育――生活困難層調査が浮き彫りにする課題 / 山田哲也
労働をめぐって
- 保育労働の現在――新自由主義的保育政策とその帰結 / 蓑輪明子
- 「忙しくない」を考える――教師の多忙化論の先へ / 野村駿+菊地原守
- 給特法下の「禅問答」に終止符を――二つの判例から考える制度の矛盾と現場の力 / 赤田圭亮
連載 科学者の散歩道
- 第九一回 量子情報の前哨戦――「世紀転換期」のウィーン / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第二七回 柄谷行人における「世界史」の問い方 10――その「起源」と「構造」 / 成田龍一
連載 社会は生きている
- 第九回 主体の生態社会学 7――基体から主体へ / 山下祐介
研究手帖
■『現代思想』51-6(2023-5) 2023/05/01
「女性のためのテクノロジー」とは何か
企業や政府が喧伝する「女性活躍」の新騎手として、近年とみに耳目を集める「フェムテック」。リプロダクティブ・ジャスティスとの関係から、市場原理にもとづく自己責任論の強化、生物学的本質主義への回帰といった問題まで、さまざまな視点から広く検討することで、性・身体・科学技術のありうべき姿を模索したい。
特集*フェムテックを考えるーー性・身体・技術の現在
討議1
- 政治・市場・運動のせめぎあう渦中から問う / 菊地夏野+標葉靖子+筒井晴香
問われる倫理
- 政策的関心の対象としての「フェムテック」とその倫理的課題 / 渡部麻衣子
- フェムテックと「女性の健康」――誰のための研究開発か / 川崎唯史
- その「フェムテック」は誰向けの製品なのか / 西條玲奈
- 「フェム」テックとトランスジェンダーの身体の接点――その可能性と限界について / 山田秀頌
- 「女性の健康」の隘路とフェムテック / 菅野摂子
討議2
- 未来をえがく二つの技巧――〝無茶ぶり〟から問い、物語ることで〝脅し〟続ける / 高野ひと深+長谷川愛
生活する身体の声
- 戦いとしてのセルフケア / S・アーメッド/浅沼優子訳
- がんサバイバーシップにみられる「私」の回復過程と葛藤――表現によるセルフトランセンデンスの促進 /佐々木加奈子
- CoCo 壱と国鉄――あるいは野良のフェムテック / 仲西森奈
- 国家に抗するフェムテック / 横田祐美子
- 痛みを感じる身体、変容する身体――『TITANE /チタン』(二〇二一年)を例に / 関根麻里恵
技術と規範を攪乱する
- 「情報の神殿」としての女性たち / 田中東子
- フェムテックにフェミニズムを取り戻す / 飯田麻結
- 現代アメリカにおけるSNSフェミニズムからフェムテックを考える / 井口裕紀子
- フェムテックの生政治とジェンダーポリティクス / 佐々木香織
- テクノロジーとスピリチュアリティの〈あいだ〉――女性・身体・モノ / 橋迫瑞穂
- 「ヒーブ」とフェムテックのあいだ――働く女性をケアするのは誰か / 満薗勇
いくつもの性の歴史
- キリスト教性倫理における「生殖」の位置 / 朝香知己
- 月経周期研究からフェムテックへ――その歴史的展開 / 横山美和
- フェムテックから月経教育を問う / 杉田映理
- 男性の視点から見た生殖――「生殖医療は女性を救うのか」という問いを逆照射するもの / 日比野由利
- 女性の人生設計が変わる?――卵子凍結保存がもたらす社会への影響と課題 / 久具宏司
連載 科学者の散歩道
- 第九二回 エントロピーと主体の参加――エディントンの二種類の法則 / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第二八回 柄谷行人における「世界史」の問い方 11――その「起源」と「構造」 / 成田龍一
連載 社会は生きている
- 第一〇回 主体の生態社会学 8――動物と人間 / 山下祐介
研究手帖
■『現代思想』51-7(2023-6) 2023/06/01
私たちを〈無知〉へ追いやるものは何か
科学は知識を生み出すものでありながら、同時に無知も作り出してきたのではないかーーこうした反省から出発した無知学は、従来の科学史の再解釈を試みる。それは私たちを無知でいさせようとする有形無形の圧力を明らかにする学問であり、それに対抗するための運動でもあるのだ。本特集では無知学から広がり、様々な分野から知と無知のあり方を問う。
特集*無知学/アグノトロジーとは何か――科学・権力・社会
討議
無知学とは何か
- 無知学(アグノトロジー)の現在――〈作られた無知〉をめぐる知と抵抗 / 鶴田想人
- 無知が作られているとき――対談 / P・ギャリソン+R・プロクター(村瀬泰菜+岡本江里菜訳・解題)
〈知らないこと〉の科学
- 無知をめぐる断想 / 野家啓一
- 「ポスト・ヒューマン」の無知学 / 樋口敏広
- 無知の大海に目を凝らす――一九五〇年代の生物学的知の軌跡 / 飯田香穂里
- 原爆後障害をめぐる「無知」と「知識」――ABCCの疫学研究と研究材料としての被爆者 / 中尾麻伊香
- 結核患者のバイオソシアリティと選択的無知――大正末期の患者雑誌に集う人々 / 宝月理恵
エッセイ
生存の不均衡
- 消されたパンデミック――「スペイン風邪」と女性参政権運動 / 小川眞里子
- 強制収容所の女性同性愛者を掘り起こすこと――クィア・ヒストリーとアグノトロジー / 弓削尚子
- 無知としての道徳と自由――啓蒙期フランス博物学における女性と猿 / 大橋完太郎
- 無知学からみた沖縄の基地問題と課題 / 西山秀史
- 「新鮮な果物と野菜」で肥満問題は解決できるか?――食と健康をめぐる知識のポリティクス / 碇陽子
社会実装を試みる
- 無知学と科学政策と科学哲学の接続 / 清水右郷
- RRIの哲学に向けて――ドゥルーズを手がかりに / 得能想平
- 知らないでいることの恩恵と価値――規範的非知論の挑戦 / 井口暁
- 解釈的不正義という無知 / 飯塚理恵
- 世界の暗さと緩慢さ――市民科学の方向性 / 吉澤剛
問い直される知のかたち
- 知らないということ――ソクラテスの哲学を究める / 納富信留
- 知の共異性をめぐって――アグノトロジーと存在論の人類学 / 石倉敏明
- 法における知と無知の配置 / 吉良貴之
連載 科学者の散歩道
- 第九三回 「真の」理論と「良い」理論――概念の「粒度」と個物 / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第二九回 見田宗介の「近代」と「現代」 1 / 成田龍一
連載 社会は生きている
- 第一一回 主体の生態社会学 9――主体の階層性 / 山下祐介
研究手帖
■『現代思想』51-8(2023-7) 2023/07/01
計算の歴史は人類の歴史である
私たちが生きる社会と、それを支えるあらゆる科学技術の根底に横たわるもの――「計算」。量子コンピュータの開発競争や対話型AIの急速な進化など、情報環境のいちじるしい変動期にあるいま「計算とは何か」を改めて問い直すことで、何が見えてくるのか。現代数学における計算理論から物理学、メディア論、科学史、哲学など、多様な観点から「計算」の正体に迫る。
特集*〈計算〉の世界
interview
- 計算から修復へ――小さな庭から始まる新しい思考の可能性 / 森田真生(聞き手=丸山隆一)
foundations
- 計算とは何だろう? / 細谷曉夫
- 計算の世界へ / 渡辺治
- 「計算」概念の多元性――コンピュータ・サイエンス形成期を中心に / 河西棟馬
- 数学における《計算可能性》の厳密化、抽象化、そして発展 / 木原貴行
- 計算、証明、有限、無限 / 渕野昌
philosophy
- 計算不可能なものと計り知れないもの / Y ・ホイ/原島大輔訳
- 万物の計算理論と情報論的世界像 / 丸山善宏
- 計算と相互行為――特異性、共通部分、条件的なもの / 近藤和敬
- 数理モデルをめぐる、最近の科学哲学論争から / 松王政浩
sciences ; technologies
- 計算で世界がわかるか / 谷村省吾
- 言語と計算――構造と構成の再構築に向けて / 田中久美子+峯島宏次
- 形式言語理論とは何か / 新屋良磨
- 計算と自然――ライプニッツ・熊楠・触譜 / 鈴木泰博
genealogy
- 数と数字 / F・キットラー/梅田拓也訳
- 古代ギリシャの計算 / 斎藤憲
- イスラーム科学と計算――一〇進法と六〇進法の融合 / 三村太郎
- 一七世紀ヨーロッパの数学者の図形活用法――サイクロイドを事例として / 稲岡大志
- フッサール数学論における「計算」・「演繹」・「直観」の付置 / 富山豊
- tertium datur――排除されない第三項と汲み尽くしえない無限 ゲーデルを通過するデリダのフッサール読解を手がかりに / 長坂真澄
連載 科学者の散歩道
- 第九四回 量子力学が哲学だった時代――西田父子と湯川秀樹 / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第三〇回 見田宗介の「近代」と「現代」 2 / 成田龍一
連載 社会は生きている
- 第一二回 主体の生態社会学10――脳と心 / 山下祐介
研究手帖
■『現代思想』51-9(2023-8) 2023/08/01
人が人を裁くとはどういうことか
司法の判断には客観性が想定される一方で、その職権は根幹に「良心」という主観的・属人的な概念を前提としている。また大量の判例や法令を高次に処理できる大規模言語モデルの登場により「誰が裁くのか」も急速に揺らぎつつある。本特集ではこうした両義性やゆらぎを踏まえ、裁判官という存在を通じて〈裁き〉をめぐる問いに臨みたい。
特集*裁判官とは何か――家庭から国家まで…法と社会のはざまから問う
正義の秤を見つめる
- 裁判と裁判官をめぐる幻想 / 瀬木比呂志
- 個別意見からみる最高裁判所裁判官――第一次夫婦同氏制違憲訴訟判決における寺田逸郎裁判官補足意見を素材として / 渡辺康行
- 裁判官の良心と法律家共同体の責任――片親疎外論を素材に / 木村草太
- 裁判官と「表現の自由」――沈黙強制からの自由と良心 / 志田陽子
- 国際刑事裁判所の裁判官――裁判所の独立と国際政治の狭間で / 竹村仁美
討議
- 性犯罪を裁くシステムと「常識」 / 小宮友根+牧野雅子
〈裁き〉は誰のものか
- 裁判官を裁く――一九七〇年代イタリアにおけるフェミニズムの裁判実践 / 小田原琳
- ゲーテと裁判――嬰児殺しをめぐる詩と真実 / 石原あえか
- 裁判官の熟慮と直感――アフリカ民族誌の比較視点 / 石田慎一郎
審判の哲学
- 裁判官の良心 / 木庭顕
- 裁判官は感情に動かされてはならないのか?――「法と感情」研究を手がかりに / 橋本祐子
- 裁判と時間 / 吉良貴之
- 裁判官が衡平を実現すること / 伊藤克彦
- 「バイアス」を問い直す――人間の判断と「客観性」の問題 / 松村一志
社会にひらかれる法廷
- 「無名」の裁き――その隙間で見るもの / 高橋ユキ
- 心理学からとらえた裁判官という存在 / 綿村英一郎
- 裁判官の「感動」物語――法の道徳化とメディアコンテンツ化 / 岡沢亮
- 〈裁き〉のドラマトゥルギー――舞台芸術から考える自己と他者の弁証法 / 本橋哲也
連載 科学者の散歩道
- 第九五回 シュレーディンガーのラストメッセージ――「ウィグナーの友人」とQBism / 佐藤文隆
連載 「戦後知」の超克
- 第三一回 見田宗介の「近代」と「現代」 3 / 成田龍一
連載 社会は生きている
- 第一三回 主体の生態社会学 11――遺伝子と生気論 / 山下祐介
研究手帖
*作成:今井 浩登