HOME > ajf >

『グローバル・エイズ・アップデイト』第55号

http://blog.melma.com/00123266/

アフリカ日本協議会


■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
----------------------------------
第55号(第3巻第4号) 2006年(平成18年)10月X日
Vol.3-No.4 (No.55) Date: October ×, 2006

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:(特活)アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
・電 話:03-3834-6902
・FAX:03-3834-6903
・電子メール:info@ajf.gr.jp
◆バックナンバー:下記ブログをご覧ください。
・http://blog.livedoor.jp/ajf/
◆Melma!を通しての購読申し込みは
・http://www.melma.com/mag/66/m00123266/
◆本メールマガジンから転送・引用を行う場合は、事前に発行者にご連絡をお願いい
たします。

*********************
------------------
はじめに:発行趣旨
------------------

○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報が伝
わっておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝えるメ
ディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、隔週で発行いたし
ます。

----------------------
■「第55号」目次
----------------------

地域情報
●アフリカ
1.南アフリカ: 政府が服役者にARVの提供開始
2.コンゴ民主共和国:ピグミーにHIV感染拡大- 性的暴力行為と保健医療対策不備
に起因

●アジア
タイ:HIV/AIDS 見直しを迫られる予防戦略−既婚女性がバルネラブル・グループに

●北米地域
1.米国、HIV抗体検査のルーチン化推進策を打ち出し

●国際関係
1. 米国の反対でWHO会議混乱 HIV/AIDS治療と薬物問題 
2.2006年世界エイズ・デーのテーマは「アカウンタビリティ」に。

-------------------------------------------- Vol.3 _ No.4 ★----

----------------------------------------------------------------------
★ 南アフリカ: 政府が服役者にARVの提供開始
----------------------------------------------------------------------

南アフリカ政府は、刑務所に服役中のHIV陽性者に治療薬の提供を開始した。現在東
部クワズール KwaZulu-Natal の3つの刑務所で抗レトロウイルス薬(ARV)が手に入
る。南アフリカ共和国HIV陽性者団体 治療行動キャンペーン Treatment Action
Campaigns (TAC) とエイズ法律プロジェクトAids Low Project (APL) がダーバンウ
エストビル刑務所Durban Westville Prison のHIV陽性者がエイズに関連した病気で
死亡したことをきっかけにHIV陽性の服役者への対策を取ることを求めた裁判で勝っ
たことが背景にある。TACのザッキー・アハマット氏 Zackie Achmat は、「裁判で勝
利したことは、大変光栄だが、十分な措置とは言えない。たった200人程度しか治療
が受けられない状況は由々しき事態だ。未だ治療が受けられる刑務所の数は少なく、
このような対策を始まるのが遅すぎた。」と述べる。

南アフリカでHIV陽性者が死亡した事件に関しては、こちらの記事をご参照下さい。

http://blog.livedoor.jp/ajf/archives/50730756.html

原題:Three KZN jails get ARVs
日付:September 26, 2006
出典:編集部にお問い合わせ下さい。

----------------------------------------------------------------------
★ コンゴ民主共和国:ピグミーにHIV 感染拡大- 性的暴力行為と保健医療対策不備
に起因
----------------------------------------------------------------------

コンゴ民主共和国(DRC)の森の民ピグミーといわれる民族バトゥワBatwaは社会的に隔
離された存在であり、同国東部の各州に広がった紛争では武装集団の格好の標的と
なった。この10年間に及ぶ紛争では、地元住民がレイプや略奪の犠牲となった。HIV
感染率はDRC全体と比べると低いが、貧困や差別が強く残っており、また、保健医療
の設備が不足しているため、今後の状況の悪化が懸念されている。

カフジビエガ国立公園Kahuzi-Biega National Parkは、1994年ルワンダ大虐殺を引き
起こした主要勢力の一つである、フツ武装勢力Interahamweの基地となっている。そ
の国立公園内に位置するバトゥワの村チョムボChomboの住民は、何年間にもわたって
フツ武装勢力の略奪行為に脅かされている。ある村民の女性は、畑を耕していた時に
民兵に連れ去られ、繰り返しレイプされた後、2週間後にやっと逃げることができた
という。しかしその4年後から健康を害し、地元のNGO、地方在住女性解放連盟Union
Pour l'Emancipation de la Femme Autochtones (UEFA) によるHIV抗体検査を受けた
ところ、陽性であった。

バトゥワのHIV陽性者は、DRCの保健医療施設を利用しようとしても、保険制度の問題
や被差別待遇があるために利用しにくい。抗レトロウィルス薬(ARV)の入手も難し
い。国立公園の道路建設のために、居住地から追い出された人もいる。彼らは栄養不
足の傾向にあり、衛生状態が良くないため日和見感染症が発生しやすい状況にある。


チョムボ村の長老マーレガン・ルケーラMarhegane Lukheraは次のように話した。
「12歳以上の子どもたちに対して、性交渉しないよう、若い女性には売春行為をしな
いよう教えている。男性は妻との貞節を守るよう忠告し、女性は夫以外の男性とはつ
きあわないよう忠告している。全員がAIDSについて関心を持つことが重要である。子
どもたちを教育し、大人は検査を受ける必要がある。」

原題: DRC: Sexual violence, lack of healthcare spreads HIV/AIDS among
pygmies Press Release
日付: September 13, 2006
出典: IRIN plus news
URL: http://www.plusnews.org/aidsreport.asp?reportid=6371


----------------------------------------------------------------------
★ タイ:HIV/AIDS 見直しを迫られる予防戦略−既婚女性がバルネラブル・グループ

----------------------------------------------------------------------

タイの公衆衛生省Public Health Ministryは、既婚女性の間でHIV感染が増加してい
ると報告した。感染した夫との性交渉時に防御策が講じられていないことが原因とみ
られる。

昨年のHIVの新規感染者は17, 000人と推定され、その内訳は30%以上が既婚女性であ
り、男性との性交渉のある男性(20%)、薬物の静脈内注射常用者(10%)、その他
ティーンエージャーやセックス・ワーカーやその客と続く。既婚女性の感染率増加の
主な原因は、貞節やコンドームの使用の不徹底であると推測される。

タイのAIDS/結核/性病対策局Aids, Tuberculosis and Sexually Transmitted
Diseases Bureau の局長ソムバット・タンプラセルトサックSombat Tanprasertsuk
は、今回の調査結果でこれまでHIV感染の可能性が低いと思われていたグループにお
いても新規感染者が増加したことが判明したため、保健当局は今後のHIV/AIDS予防対
策の見直しを迫られていると述べた。

タイはこれまでセックス・ワーカーなどHIV感染の可能性が高いと思われるグループを
特に対象にしたコンドーム使用の啓発や、安価なエイズ治療薬を普及させたことに
よってHIV/AIDS対策に成功してきた。今後は、保健当局はコンドーム使用キャンペー
ンに加えて、既婚カップルに定期的に血液検査を受けるよう勧める、性教育強化やコ
ンドーム使用推進キャンペーンなど、全国民を対象にしたキャンペーンを拡大してい
くという。

原題:HIV/AIDS / PREVENTION STRATEGY UNDER REVIEW: Married women a
high-risk group
日付:September 6, 2006
出典:Bangkok Post ウェブサイト
URL:http://www.bangkokpost.com/090906_News/09Sep2006_news14.php


------------------------------------------------------------------------
★米国、HIV抗体検査のルーチン化推進策を打ち出し
-----------------------------------------------------------------------

米国疾病予防管理センターThe U.S. Centers for Disease Control and
Prevention(CDC)は9月21日、13〜64歳の米国民全員に対するHIV抗体検査ルーチン化
推進策を発表した。HIV感染の早期診断による感染の拡大防止と、全米で25万人いる
と推定されているとされている未診断のHIV感染者に適切なケアを受けさせるのが目
的だ。

このHIV抗体検査ルーチン化推進策では、すでにルーチン化を進めているハイリスク
集団や妊婦等の一部の対象に加え、国民すべてが緊急時やさらに定期健診時にも標準
の健康検査の一部としてHIV抗体検査を受けるよう推奨している。この推進策に対
し、保健政策の専門家や医師、患者を擁護する立場からの反応は概ね好感触で、米国
医師会the American Medical Associationもこの推進策を支持している。法的に拘束
力はないが、これは医師の業務や健康保険の管掌範囲に影響を与えるものである。

しかし、一部の医師の間には、検査やカウンセリング、またそれらの改定にかかる多
大な費用と時間への懸念があり、米国家庭医学会the American Academy of Family
Physiciansの会長によれば、検査対象を広げることの有効性を疑問視する考え方もあ
り、実施を悲観している。また、検査実施の同意を得るために、各医療機関での標準
的同意文書を用い、患者は検査を拒否できるとされているが、米国自由人権協会
American Civil Liberties Union(ACLU)は、HIV問題を標準的同意文書で扱い、検査
前カウンセリングを軽視する検査ルーチン推進案に異議を唱え、ルーチン化が強制的
になることを懸念している。他にも、費用面での先行きも不透明である。HIV検査対
象者数が増えれば、ただでさえ資金繰りの苦しい公的健康保険にはさらなる負担が課
され、または、逆に検査の必要性が増すことによって、財政支援が強化される可能性
もある、との声もある。

医師会やHIV陽性者支援団体を含む100以上の団体からアドバイスを受け、約3年かけ
て作成された本推進策であるが、実行の見通しは困難であるようだ。


原題:CDC: Regular, routine HIV test for all between 13-64
日付:September 21, 2006
出典:yahoo news
URL:http://news.yahoo.com/s/ap/20060921/ap_on_he_me/hiv_testing


------------------------------------------------------------------------------------------

★ 米国の反対でWHO会議混乱 HIV/AIDS治療と薬物問題 
-------------------------------------------------------------------------------------------


ニュージーランドのオークランドで開かれたWHOアジア太平洋会議で9月22日、アジ
ア太平洋地域におけるHIV/AIDS治療への普遍的アクセスを求める決議案が、米国の強
い変更要求のために否決された。

21日には、「2010年までにアジア太平洋地域でのHIV/AIDS治療を普遍的アクセス可能
なものにする」という内容の決議案をアジア太平洋諸国代表らは要求していたが、米
国は22日の決議採択直前に、アジア太平洋諸国の決議案内にある「薬物常習者への注
射針交換プログラムを促進する」という文言に削除を求めために、会議は混乱に陥
り、最終的にアジア太平洋諸国らの作成した決議案は否決された。

HIV/AIDS患者擁護団体によると、アジア太平洋諸国の提案した文言にある薬物常習者
への注射針交換プログラムは、注射器使い回しによるHIV感染抑止に有効なのだが、
米国側は「注射針の交換を認めれば、薬物使用を増大させてしまう」として反対して
いる、と述べた。さらに、米国の提出した決議修正案は、HIVに感染しやすいバルネ
ラブル・グループの定義の詳細(性産業従事者・注射針による薬物常習者・男性と性
交渉を持つ男性など)の説明をも求めており、WHO西太平洋地域課長代理のリチャー
ド・ネスビット氏 Richard Nesbit は、決議案の言い回しにこと細かく変更要求が出
たのは米国政府の指示があったためと見ている。また、議長を務めたニュージーラン
ド保健相のピート・ホジソン氏 Pete Hodgson は、「米国の修正案は決議案を骨抜き
にするもので、文言の内容を弱めた妥協案を採択するくらいならば、決議案を出さな
い方がましだった」と語っている。

WHOの推計では、西太平洋地域において、新規HIV感染者の3分の1以上は注射針によ
る習者であるという。薬物使用拡大とHIV問題のハームリダクションという観点から
の相互関係は複雑に絡み合っているようである。

原題:AIDS treatment resolution withdrawn at WHO meeting because of U.S.
opposition
日付:September 21, 2006
出典:International Herald Tribune
URL:
http://www.iht.com/articles/ap/2006/09/22/asia/AS_MED_WHO_Asia_AIDS.php


----------------------------------------------------------------------
★国際関係: 2006年世界エイズ・デーのテーマは「アカウンタビリティ」に。
----------------------------------------------------------------------

12月1日は世界エイズ・デーである。今年のテーマは、「アカウンタビリティ(説明責
任)」に決定をした。世界エイズ・デーは、毎年世界エイズキャンペーン World
AIDS Campaign WAC によって主導され、全世界においてHIV/AIDSに関する意識喚起・
行動変容に一役買っている。

今年の世界エイズ・デーでは、特に以下の目的を達成するため「アカウンタビリティ」
を掲げる;
・各国リーダーらによる、エイズに関する誓約の説明責任の拡大
・共通の目的・アイデンティティのため市民社会による幅広いムーブメントを支持
全世界におけるエイズ問題において、より多くの市民が意識喚起・行動変容促進
各々の国や地域に即し、「アカウンタビリティ」という全体テーマの範囲内で、それ
ぞれ決定される。これらのキャンペーン・テーマは、世界エイズ・デーの「スローガ
ン」である「ストップ・エイズ 約束を守れ Stop AIDS. Keep the Promise.」 をよ
り効果的に見せていく。例えば、国のキャンペーン・テーマが治療・ケア・予防に関
する普遍的アクセス Universal Access についてのものであれば、「普遍的アクセス
のゴールを決めろ: ストップ・エイズ 約束を守れ Set the goals for Universal
Access: Stop AIDS. Keep the Promise」 といった具合に、各々の国や地域でスロー
ガンの前半部分を決め、キャンペーンを張る。

世界エイズ・デーでは、赤色のTシャツやリボンを使用する、政府にエイズ対策の重
要性を伝える為にマーチ、広告、手紙などを活用するなど、WACでは、ポスターや
CD-ROMを英語、スペイン語、ロシア語、フランス語で提供している。また全世界の世
界エイズ・デーの活動は、 www.worldaidscampaign.org で参照することができる。

原題:Accountability: Theme for World AIDS Day 2006
日付:September 21, 2006
出典:Aids-HIV Information
URL:http://www.aidshiv.info/theme-for-world-aids-day-2006/theme-for-world-aids-day-2006.html


------------------------
■□編集後記
------------------------

猫の眼のようにめまぐるしく空模様が変わる今日この頃、読者の皆様はいかがお過ご
しですか。
編集員Wは先週筑波山に登ってきました。標高約800メートルと、決して大きい山では
ないのに、岩場が多くて登るのが大変でした。その分、頂上で食べるおにぎりの味は
格別でした!日に日に朝晩の冷えが厳しくなるのを感じますが、深まる紅葉を楽しめ
るいい季節ですよね。読者の皆様も、素敵な秋の過ごし方を教えてくださいね。

------------------------
■□メールマガジンご案内
------------------------

○メールマガジン「グローバル・エイズ・アップデイト」は、世界のHIV/AIDS問題の
最新動向を網羅するメールマガジンとして発行しています。

○このメールマガジンは、購読者の皆さまにお送りします。継続購読をご希望の方
は、以下の講読申込票をメールマガジン発行元((特活)アフリカ日本協議会)まで
ご送信下さい。また、本メールマガジンを発行している「Melma!」の以下のサイトか
ら登録することもできます。
http://www.melma.com/mag/66/m00123266/

---------------------------------------
<講読申込票>info@ajf.gr.jpまで
---------------------------------------
○氏名
○所属(あれば)
○メールアドレス
○ご在住の市町村
○コメント
---------------------------------------


UP:20061027
アフリカ日本協議会
TOP HOME (http://www.arsvi.com)