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『グローバル・エイズ・アップデイト』第37号

http://blog.melma.com/00123266/

アフリカ日本協議会


■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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第37号 2006年(平成18年)2月16日
Vol.2 -No.16 Date: February 16, 2006

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:アフリカ日本協議会
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はじめに:発行趣旨
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○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報が伝わっておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝えるメディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、隔週で発行いたします。

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■「第37号」目次
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★地域情報

○アフリカ
1. レソト王国:国を挙げたHIV検査キャンペーンを展開 
 〜国王自らがHIV検査を受診〜

2.南アフリカ: ノーベル文学賞受賞作家 ナディン・ゴーディマ氏がHIV陽性者団体に150万ランド(3200万円)を寄付

3.ナイジェリア:国家エイズ行動委員会が抗レトロウイルス薬の無料化を発表

○欧州

英国:途上国の頭脳流出に規制 〜実効性には疑問符も〜

○アジア・太平洋地域

アジア太平洋地域: 世界基金を支援する域内組織 「世界基金支援アジア・太平洋委員会」設立

中国:エイズ予防条例を施行

★NGO情報

アジア地域の移住労働者とHIV/AIDSのネットワークが
移住労働者国際連帯デーで移住労働者の健康に関する権利を要求する声明

★国際機関情報

世界貿易機関:必須医薬品のアクセスに関連して
TRIPS協定 の条文を改訂


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★レソト王国:国を挙げたHIV検査キャンペーンを展開
〜国王自らがHIV検査を受診〜
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 南部アフリカの山間部に位置する小国、レソト王国の保健省は2005年12月、全国民に対してHIV/AIDS検査を受けることを促進するキャンペーンに乗り出した。国王レツィエ3世 Letsie III は、レソトの最高指導者として自らも検査を受けると表明した。この検査プログラムはWHOとレソト保健省が共同して行う。このキャンペーンの目標は、2007年末までに12歳以上の国民全員のHIV感染状況を把握することである。HIV感染の有無に関する情報はプライバシーにも関わることであり、検査は全国民に義務づけられるわけではないが、レソト政府はなるべく多くの国民が検査を受けるよう呼びかけている。

 国王レツィエ3世 が公式にHIV検査を受けるのは、国内におけるHIVに関連するスティグマを減らすための、いわばパフォーマンスといえる。HIVへの偏見をなくしてHIV感染予防のための安全な性行為を促進するのが目的だ。現在のレソトではHIV/AIDSへの偏見や恐怖心が根強く、HIV感染は「死亡宣告」と思い込んでいる人も多いという。検査は全国で3,700名超の医療従事者が行い、約3,600名のカウンセラーが受診者の精神面からサポートする。

WHOのキム・ジムヨンJim Young Kim HIV/AIDS部長は、全国民を対象とした検査キャンペーンが、他の感染率が10%を超える国でも実施されることを期待している。

レソトでは、成人(15〜49歳)の約30%がHIVに感染しており、HIV感染拡大が世界で最も深刻な国のひとつである。HIV感染拡大のために平均余命が2000年以降52歳から34歳に悪化。山がちで地形が農業に不適なことに加え、エイズにより多くの労働人口が失われてため、慢性的な食糧不足が続く。医療従事者らの諸外国への頭脳流出もエイズ問題の深刻さに拍車をかけている。

原題:Land where everyone from the King down has AIDS test Sam Lister
日付:2005-12-01
出典:Health Systems Trust
URL: http://www.hst.org.za/news/20041057

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★南アフリカ: ノーベル文学賞受賞作家 ナディン・ゴーディマ氏がHIV陽性者団体に150万ランド(3200万円)を寄付
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2005年11月30日、南アフリカ共和国・ジョハネスバーグにて、1991年にノーベル文学賞を受賞した南アフリカの著名な作家ナディン・ゴーディマ氏 Nadine Gordimerと歌手のリンゴ・マヂンゴジ氏 Ringo Madlingoziは、南アフリカのHIV陽性者団体 「治療行動キャンペーン」 Treatment Action Campaign (TAC) に150万ランド(約3200万円)を寄付した。

TACは南アフリカのみならず国際社会によびかけ、新たなHIV感染の拡大を防ぐとともに、HIV陽性者の治療へのアクセスの促進や治療に関する知識の拡大に向けた活動を展開している。

マヂンゴジ氏は、ミュージシャンとして「人々を癒す音楽を作る」と宣言し、次回発売予定のアルバムに入れる1曲は、TACの活動に寄付するという。マジンゴジ氏は、若い女性はコンドームを持ち歩くなどして、自分の身を自分で守ることが必要だ、と語った。

ナディン・ゴーディマ氏は、数年前に、大江健三郎氏をはじめ5人のノーベル文学賞受賞者を含む著名な作家による作品を集めた短編集、「Telling Tales」を出版。この短編集は16ヶ国で翻訳・出版され、その収益として約150万ランドをTACに寄付した。

原題:Nadine Gordimer donates R1.5 million to TAC
日付:30 November 2005
出典:TACウェブサイト
URL: http://www.tac.org.za/ns30_11_2005.htm

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★ナイジェリア:国家エイズ行動委員会が
抗レトロウイルス薬の無料化を発表
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ナイジェリアの全国エイズ行動委員会 National AIDS Action Committee: NACA は2005年12月、来年から、政府のHIV/AIDS治療サイトにおいて、抗レトロウイルス薬(ARV)による治療を無料化すると発表した。ナイジェリア政府は現在、補助金をつけることによってARVへの安価なアクセスを実施しており、現在、政府の供給するARVは月平均8ドルである。しかし、それでも国民の3分の2が1日1ドル以下で生活しているナイジェリアでは高額だ。NACAの発表が実現すれば、今後は無料またはそれ以下の値段で入手が可能になる。

同国のHIV陽性者数は現在約350万人で、インド、南ア共和国に次いで世界で3番目に多くのHIV陽性者人口を抱えている。現在、約4万人がARV薬を服用している。

同国のオルシェグン・オバサンジョ大統領 President Olusegun Obasanjo は、ナイジェリア政府の目標として、来年までに25万人に対して治療薬を無料配布することを掲げている。

無料でのエイズ治療を促進している国際NGO、「国境なき医師団」 Medicins sans Frontieres: MSFは、政府が治療薬の無料配布を発表したことは評価できるが、ARVの無償かだけでは十分でないという。ナイジェリアでエイズ治療プロジェクトを実施しているMSFオランダでナイジェリアの国代表を務めるフランソワ・ジディー氏 Francois Giddey は、「エイズの治療はARV薬が全てではない」と言う。HIV陽性者は、治療が効果を上げているかを確認するため、毎月、免疫量(CD4)検査を必要としているが、HIV陽性者はこの検査に、3000〜7000ナイラ(約2500〜6000円程度)を支出しなければならない。このことについて、NACAのババトゥンデ・オソティメヒン委員長 Babatunde Osotimehinは、検査などにかかる費用にも助成金を投入する予定だと述べたが、詳細は今後解決していくと語った。

MSFは、エイズ治療にコストがかかるのは危険なことだと述べている。経済的な理由で治療を中止したり、不適切な投薬を受けることで、ARV治療が適切に効果を上げられなくなってしまうからだ。

オソティメヒン委員長は、妊婦や子供のHIV陽性者には無料で全てのエイズ治療を提供すると宣言した。ユニセフによると、ナイジェリアの子供たちがHIVに感染する可能性は高まっており、母子感染を防ぐために、妊婦に対するARV薬の投与が求められている。しかし、実際にHIVに感染している妊婦のうち、母子感染予防のためにARV服用できているのは全体の1%以下だという。

原題: Nigeria says it will provide free AIDS drugs
日付: December 25, 2005
出典: CNN.com website
URL:
http://www.cnn.com/2005/WORLD/africa/12/25/nigeria.aids.reut/index.html
Nigeria says it will provide free AIDS drugs

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★ナイジェリア:危機に瀕するHIV/AIDS対策
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現在、ナイジェリア政府のHIV/AIDS対策が批判にさらされている。

ナイジェリアのHIV陽性者たちは、一部の官僚が恣意的なHIV/AIDS対策しか行っておらず、根本的な解決に取り組もうとしていないと不満の声をあげている。

HIV/AIDSを含む三大感染症への対策資金を供与する「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(世界基金)は、ナイジェリアに供与する予定だった1億700万USドルの資金援助停止を検討した。2005年12月に開催された世界基金第12回理事会では、援助停止は否決されたものの、事務局は、同国が抜本的な改善に乗り出さなければ今後も援助の中止を勧告することを示唆している。

世界基金は、援助停止の理由として、ナイジェリア政府がHIV/AIDS対策の目標を一向に達成しないこと、発表しているデータの信憑性の薄いことに加え、拠出された資金の使途が不明瞭になっていることを挙げている。同国はコンピューターでHIV/AIDS対策費の資金使途を把握するよう要請されていたが、そのシステムを導入していない。資金の一部が、役所の備品や官僚らの海外出張費に使われたこともあるという。

同国は豊富な石油資源や対外援助で膨大な外貨収入を得ている。昨年、国際石油資本からナイジェリア政府に支払われた資金は、シェル Shell 一社だけで62億USドルにのぼる。ところが、1日2ドル以下で生活をしている国民が全体の91%を占めており、貧富の差が深刻だ。原油収入のほとんどを政府高官や政治家らが独占しているためだ。経済的な理由で治療を打ち切らざるを得ないHIV陽性者も少なくない。

ナイジェリアは、米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)や上記の世界基金からエイズ対策に向けて豊富な資金を得ているが、現在、治療を受けている人はARVを必要している人のうち10%、わずか5万人である。

政府は、2006年末までに治療を受けられる人を25万人に増やすと宣言した。しかし、ナイジェリアのHIV陽性者のアドボカシー団体である「ナイジェリア治療アクション運動」 Treatment Action Movement のルーシー・ウセン Lucy Usen 氏は「たとえ連邦政府が対策に乗り出しても、州政府においても官僚主義がはびこっているため、地方で治療へのアクセスを拡大するのは極めて困難だろう」と悲観的だ。

原題:Nigeria faces AIDS treatment crisis Despite oil wealth, corruption forcing aid agencies to re-evaluate funding
日付:December 16, 2005
出典:Globe and Mail
URL: http://www.theglobeandmail.com/servlet/Page/document/v4/sub/MarketingPage?user_URL=http://www.theglobeandmail.com%2Fservlet%2Fstory%2FRTGAM.20051216.wxnigeria16%2FBNStory%2FInternational%2F%3Fpage%3Drss%26id%3DRTGAM.20051216.wxnigeria16&ord=1135655466259&brand=theglobeandmail&force_login=true

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★英国:途上国の頭脳流出に規制
 〜実効性には疑問符も〜
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途上国の頭脳流出、とくに医療関係の人材不足が深刻化している。南部アフリカの王国スワジランドでは過去2年間で、同国に200人いる看護師の有資格者のうち150人が英国へ渡った。魅力的な待遇に惹かれて国を出ていく医療関係者は後を絶たない。

英国政府は最近、途上国の医療関係の人材流出を食い止めるため、対策に乗り出し始めた。英国政府は、特定の途上国出身者が英国の国営医療保健サービスNational Health Service :NHSの枠内で就労することを禁止する規則を制定したほか、昨年12月には政府が民間医療施設での就労の制限も強化した。就労の受け入れそのものを拒否することで、医療関係者の流出を防ぐ方針だ。

しかし、民間施設のにおける雇用制限について法的拘束力はないため、現実には何千人もの看護士、助産婦の有資格者が英国に働きにやってくる。あるデータによると、昨年はNHSでの就労禁止対象国のうち16カ国出身の3,301人が看護師または助産師として新規登録をした。民間機関で数週間でも働いたのちに、別途、看護師として登録を受ければ、NHSで合法的に就労できる。結局、政府の規制に関わらずNHSで働く途上国出身者は多く、規制は形骸化している。

概して、民間施設での待遇はよくない。NHSで働くための登録をしてあげる、と約束して、一定期間無報酬で働かせている例もあるという。

一方で規制を疑問視する声もある。英国が人材流出を止めたいならば、就労の受け入れ拒否ではなく、技術および資金面の援助をするほうが有効だという見方だ。ロージー・ウィンタートン保健省大臣Rosie Winterton は先日、アフリカを視察した際に、途上国からの雇用を一律に禁止するのは人権侵害なのではないかとコメントした。

2004年から2005年にかけて、規制の存在にも関わらず、英国に流出した看護師は南アフリカ共和国出身が933人と突出している。次いでナイジェリアの466人、西インド諸島の352人と続き、アフリカ諸国以外ではパキスタンやネパールなどの出身者が目立つ。

原題:UK agencies still hiring poorest nations' nurses; Loophole undermining
Africa's fight against Aids; Staff on banned list 'join NHS by the back
door'
日付:December 20 2005
出典: Guardian website
URL: http://society.guardian.co.uk/health/news/0,8363,1671150,00.html

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★ アジア太平洋地域: 世界基金を支援する域内組織
「世界基金支援アジア・太平洋委員会」設立
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2005年12月6日、インドの首都ニューデリーにて、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)支援アジア・太平洋委員会 Asia Pacific Friends of the Global Fundの発足が発表された。コーディネイターのボビー・ジョン氏 Dr. Bobby John は、世界基金へのアドボカシーとよりよいコミュニケーションのため、同地域の市民社会の基盤となるような組織にしたい、と語った。

世界基金支援アジア・太平洋委員会は、世界基金支援米国委員会 Friends of the Global Fight 、同日本委員会 Friends of the Global Fund Japan、同欧州委員会 Amis du Fonds Mondial Europeなど世界基金を支援・支持する組織のネットワークに参加する。

ボビー・ジョン氏は同日、世界基金支援アジア・太平洋委員会は以下の項目を含む7つの事項について合意することにより発足したと述べた。

・ アジア・太平洋地域全体でのHIV・結核・マラリア対策に関して、市民社会の参画を促していく上で、世界基金が触媒としての重要な役割を持つこと

・ アジア・太平洋地域は経済成長のの方向性にある一方で、三大感染症により成長が妨げられる可能性があること。

・ アジア・太平洋地域における三大感染症への対策の如何によって、三大感染症への世界の取り組みの成果が左右される点で、アジア太平洋地域には世界に対する大きな責任があること。

・アジア・太平洋地域は、国際社会からの経済的・人的資源に加え、感染症への取り組みに提供できる資源を域内で確保できること。

ボビー・ジョン氏は、これに付け加えて、同委員会は、今後アジア・太平洋地域内で速やかにパートナーシップを拡大し、開発パートナーらとともに3つの感染症対策支援のため、世界基金からの支援を得つつ、アジア・太平洋地域の市民社会の代表として世界に声を上げていく所存である、と述べた。

原題:"Asia Pacific Friends of the Global Fund" launched
日付: December 18, 2005
原典: The Global Fund Newsletter Issue #6 - December 2005
出典:Asia Pacific PLWHA resorce centre website
URL:http://www.plwha.org/News.2005-12-13.4025

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★ 中国:エイズ予防条例を施行
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2006年2月11日、中華人民共和国国務院 State Council は、「エイズ予防治療条例」を交付した。この条例は、同年1月18日に開催された国務院第122回常務会議の際に採択され、温家宝首相によって署名されたものである。同条例は、3月1日より施行される。条例では、7章に分かれ、中央政府および各地方自治体の責任について規定するとともに、HIV陽性者の権利・義務を明確に定義している。

条例によれば、県 county レベル以上の人民政府は、農村部に住むエイズ患者と経済的に救済が必要な患者らに対し、無償での抗レトロウイルス薬(ARV)の配布が義務づけられる。また、母子感染予防の観点から、HIV陽性者である妊産婦に、無償で治療や相談などを行うことも定められている。

一方、HIV陽性者は、適切な方法を用いて他人へのHIV感染を防止しなければならないと明記している。

(※編集部注:近年、東アジアでは、HIV感染が急速に拡大していますが、中国がこれについて、「予防治療条例」を制定し、HIV/AIDSに関する国家の政治的コミットメントを確立したことは非常に重要です。今後この条例がHIV陽性者らの人権などが守られながら施行されていくのか、など様々な疑問点が残りますが、編集部としても新しい情報が入り次第、記事を発信してまいりたいと思います)

原題:China issues AIDS control statute, defining duties of governments, patients
日付:February 13, 2006
出典:新華社ウェブサイト Xinhua website
URL:http://english.people.com.cn/200602/12/eng20060212_242045.html

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★ アジア地域の移住労働者とHIV/AIDSのネットワークが移住労働者国際連帯デーで移住労働者の健康に関する権利を要求する声明
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移住労働者国際連帯デーInternational Day of Solidarity with Migrant Workers にあたる2005年12月18日、アジア地域のHIV/AIDSと移住労働者の人権について取り組むネットワークである「人口移動とエイズに関する行動調査調整機構・アジア」CARAM Asia Cordination of Action Research on AIDS and Mobility in Asiaは、移住労働者の安全と健康、HIV感染の低減のためには、健康と開発への平等なアクセスが必要であるとして、アジア諸国の経済開発の不可欠な観点として「平等」を盛り込むことの必要性を強く訴えた。

CARAM-Asiaは、人々の移住によって、HIVが流行拡大しないよう、保健分野とと経済開発分野のの双方を考慮しながら、尽力していかなければならないと訴えた。

現代の世界では、HIV陽性者の95%が途上国に在住し、抗レトロウイルス薬(ARV)の治療が必要な650万人のうち、ARVにアクセスできている人は、全体の僅か15%だけにとどまっている。先進国はARVが高価であるが、社会保障制度の存在によって、治療へのアクセスに関しては、大きな問題とはなっていない。

一方、アジア・太平洋地域では720万人のHIV陽性者がいると推定され、その500万人以上が労働力送出国 labour sending countries である南アジアの人々である。HIVの感染が拡大するにつれ、移住者の問題とHIVの問題の結びつきが強くなっている。

経済のグローバル化の過程での不公正は、人々の健康にまで及んでいる。医療機関の民営化が進み、一次医療(編集部注:疾病の予防や健康増進活動などを指す)が軽視された結果、保健サービスは、政府による公共サービスが減少し、民間の製薬・保険産業へと移行し、不公正さを増幅させている。

労働送出国と受入国の保健システムの隙間に既に落ち込んでいる移住労働者はさらに不利を被っている。彼らは保健サービスを十分に受けることができず、よりHIVに感染しやすい立場におかれている。しかも国によっては、HIVに感染していると診断されると即座に国外退去処分を受けることもある。CARAM Asiaは、経済発展と表裏一体をなす、移住労働者の人権や健康的に生きる権利を無視し労働力を搾取するような経済のグローバル化を非難する。

世界貿易機関(WTO)は、2005年12月にTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定 trade-related aspects of intellectual property rights )を修正した。これは、途上国のHIV陽性者が新しいタイプの抗レトロウイルス薬にアクセスすることを妨げるものであり、CARAM-Asiaは、この修正を批判する。

移住労働者のHIVに対する脆弱性を助長している受入国は、保健サービスの不均衡の責任を無視し続け、彼らが健康であるための権利を認めていない。 一方、HIV陽性で国外追放され戻ってくる移住者の数が増えつづけ、労働送出国は資源不足に対応できていない。

CARAM Asiaは、移民を含む全ての人々が、無料で容易にARV治療にアクセスできるよう、強く国際的に要請をしていく。移住労働者国際連帯デーの今日、CARAM-Asiaは移住労働者との世界的連帯とその人権や健康権を尊重・保護・実現する貿易や発展政策を要求することを再度表明した。健康は人間の権利であり、移住者の権利は人間の権利である。

原題:International Day of Solidarity with Migrant Workers Health is a Human Right. Migrant Rights are Human Rights.
日付: December 18, 2005
出典:CARAM asia website
URL:http://caramasia.gn.apc.org/


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★ 世界貿易機関:必須医薬品のアクセスに関連して
TRIPS協定 の条文を改訂
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世界貿易機関(WTO)一般理事会は12月6日、強制実施権の発動によって製造した医薬品の輸出の権利に関して、TRIPS協定の条文を改訂することについて合意に達した。

2001年11月、WTOドーハ閣僚会議で採択された「ドーハ宣言」では、WTO加盟国が国民の健康を守るための措置として、強制実施権を発動して医薬品を製造する権利が認められた。しかし、TRIPS協定の条文から、このようにして製造された医薬品は、製造国の国内にのみ供給されるべきであるとされた。

これでは、WTO加盟国は、強制実施権の発動によって製造された安価な必須医薬品を、製薬能力の乏しい途上国に輸出することができなくなり、せっかくの「ドーハ宣言」も、製薬能力の乏しい国にとって意味のあるものではなくなってしまう。この問題については、WTO内で長期間の検討を経た結果、003年8月30日、WTOは、特定の条件を満たせば強制実施権の発動によって、ジェネリック薬の輸出が認められるように、一時的に原則を変更することを決定した。

2005年12月に開催されたWTO一般理事会では、TRIPS協定の条文を改訂し、この決定をそのまま条文に盛り込むことが提案された。この提案は、2003年の決定から長期間の検討の末にようやく提案されたものである。これに向けた交渉は難航した。TRIPS理事会の各国代表が、議長原案に反対したためである。

実際のところ、この提案は、強制実施権発動によって製造された医薬品の輸出を認めることによって知的財産権が侵害される可能性を恐れる先進国に迎合する内容となっている。2003年の決定は、強制実施権の発動に基づいて製造された医薬品の輸出については、「商業・産業上の目的追求ではなく、公衆衛生に関わる」目的に基づいて行われなければならない、と明記された。

12月6日、加盟国は、この決定を原則化することで合意した。WTOによれば、今回の見直しは、議長原案を含め、2003年に採択された条件を可能な限り満たす内容であると主張する。EUと米国はこの見直しを歓迎している。米国通商代表 Trade Representative ロブ・ポートマンRob Portman氏は、「HIV/AIDSや疾病に苦しむ途上国を救う大きな成果」であると述べる。

しかし、国境なき医師団必須医薬品キャンペーン Medecins Sans Frontieres' Campaign for Access to Essential Medicines 担当 エレン・トーエン氏 Ellen t'Hoen は、同決定に疑問を呈している。2003年の決定では、医薬品ごと、国ごとにいちいち取り決めを結ばなければならない。この決定を条文の改訂によって恒久化してしまえば、各国が保健上の必要に応じて強制実施権を発動して医薬品を製造し、輸出することに消極的になり、結果として、途上国で医薬品を安く入手することが困難になるばかりだ、として、トーエン氏は今回の改訂を批判している。

一方、国際的な医薬品メーカーの連合体である「国際医薬品製造業者連合」 the International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations の代表ハーベイ・ベール氏 Harvey Bale は、「この見直しは途上国のみならず、あらゆる国のニーズを満たすものである。」と述べている。

原題:WTO amends TRIPs rules on compulsory licences
日付:December 12, 2005
出典:Managing Intellectual Property
URL:http://www.managingip.com/?Page=9&PUBID=198&ISS=21054&SID=602971

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■□編集後記
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今回で37号となりましたグローバル・エイズ・アップデイトですが、みなさま、ご購読ありがとうございます。いよいよ春めいた季節がやってきましたね。編集員Nは、花粉症の季節がやってきたとかなりおびえております。編集をしていた2月15日は、都内はかなり温かく、何度かくしゃみをしてしまいました。早速ヨーグルトを買いにスーパーへ駆け込み、免疫力を高めようと決心したのでした。

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UP:20060218
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