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『グローバル・エイズ・アップデイト』第27号

http://blog.melma.com/00123266/

アフリカ日本協議会


■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
----------------------------------
 第27号(第2巻第4号)2005年(平成17年)10月13日
  Vol. 2-No.4 Date: October 13, 2005

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会
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 事前に発行者にご連絡をお願いいたします。

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はじめに:発行趣旨
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○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報
が伝わっておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝
えるメディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、隔週で発行
いたします。

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■「第27号」目次
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●地域情報
アフリカ
1.南ア:フォルクスワーゲンがHIV/AIDS教育のボードゲームを作成
2.ウガンダ:世界基金のHIV/AIDS対策費管理を会計事務所に依頼
3.ウガンダの「コンドーム不足」の責任は誰に?
米国・ウガンダ政府ともお互いの影響を否定
4.タンザニア:一部の伝統医療従事者らの活動に保健副大臣が疑問を投げか
ける
5.カメルーン:「知識のある富裕層は感染可能性が高い」
人口統計と保健の調査結果発表

アジア
1.マレーシア:注射薬物使用者に針とコンドームを提供開始

欧州
1.ブルガリア:自国看護師の死刑宣告問題でリビア政府に治療薬・技術を提

2.スウェーデン:ユニセフにエチオピアのエイズ遺児のため500万ドル拠出

●国際機関関連
1.UNDP人間開発報告書:HIV/AIDS拡大による開発への悪影響を指摘
2.世界基金:第5回案件募集での推奨プロポーザルを事実上採択

-------------------------------------------- Vol.2-No.4★----

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★ 南ア:フォルクスワーゲン社がHIV/AIDS教育のボードゲームを作成
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 ドイツの自動車メーカーフォルクスワーゲン(VWSA)南アフリカ共和国支社
は、HIV/AIDS・結核・レイプ・妊娠について労働者や地域の子供達に学んでも
らうためのボードゲームを作成した。
 このボードゲームについては、東ケープタウンのユイテンハーグ Uitenhage
の5つの学校が11-13歳の児童を対象に、エイズの正しい知識を教える一環と
して取り入れている。同社の公共医療サービス部部長 アレックス・ゴヴェン
ダー Alex Govender によると、「HIV/AIDS、レイプ・結核・妊娠に関する雑
学的知識を競うゲームで、実際に遊ぶ児童の年齢を考慮して作られている。」
という。
 VWSAの社員6,000人のうちおよそ300人がHIV陽性と推定されているが、同社
は福利厚生プログラムの一環として、社員やその両親、子供に無料でHIV抗体
検査を行い、抗レトロウイルス治療を提供している。このプログラムは4年前
に開始し、すでに約62万ドルの資金が活用されている。
 また、HIV/AIDSで親を失った子供に食料等の援助も提供し、また結核感染者
に対してHIV等他の性感染症の検査も行っている。「労働者たちは、もし早め
に感染に気が付けば、健康を維持しながら、長期間にわたって会社に勤めるこ
とができる。」とゴヴェンダー氏は話す。今後、同社は東ケープ州のポートエ
リザベス近くの工場でも同様のプログラムを取り入れる予定だ。

原題:Reuters Profiles Volkswagen of South Africa's Efforts To Fight HIV/AIDS, Including New Children's Board Game
日付:Aug 31, 2005
出典:Kaiser Daily News
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=31-Aug-05#32318

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★ ウガンダ:世界基金のHIV/AIDS対策費管理を会計事務所に依頼
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 9月2日、ウガンダ政府は、国際会計事務所アーンスト・アンド・ヤング E
rnst and Young に世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)から受
けた拠出金の一時的な管理を依頼した。
 世界基金が拠出するプロジェクトの資金は、プロポーザルで指定された「主
要資金引受先」(PR: Primary Recipient)によって管理され、その監査は国
際監査法人などが請け負う「現地基金監査組織」(LFA: Local Fund Agents)
が実施する。ウガンダについては、PRを保健省が設置したプロジェクト・マネ
ジメント部門(PMU)が担い、LFAについては国際監査法人であるプライスウ
ォーターハウスクーパーズ PriceWaterHouseCoopers(PWC)が担っていた。本
年8月、PWCの監査によりウガンダの拠出金に関する「深刻な管理ミス」 seri
ous mismanagement が発覚し、世界基金はウガンダのすべてのプロジェクトに
関する拠出を停止した。その後、善後策についてウガンダ政府との協議が進め
られていた。ウガンダ政府が資金管理をアーンスト・アンド・ヤングに依頼し
たのはこうした背景によるものである。ちなみにウガンダ政府は疑惑発覚後、
PMUを解散するなどの処置をとっている。
 ウガンダのムクラ保健省大臣 Mike Mukula は、「私たちは、国際機関から
受けたHIV/AIDS対策費用の管理に関して現在課題を抱えているが、アーンス
ト・アンド・ヤングがPMUの役割を果たしてくれると期待している。」と述べ
ている。

原題:UGANDA: New PMU to help with AIDS cash
日付:September 2, 2005
出典:IRIN Plus News
URL:http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=5195&SelectRegion=Southern_Africa&SelectCountry=UGANDA

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★ ウガンダの「コンドーム不足」の責任は誰に?
〜米国・ウガンダ政府ともお互いの影響を否定〜
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 ウガンダでは近年、コンドーム不足や「禁欲・貞操」を重点化した予防教育
などが導入され、同国で従来取られてきたHIV/AIDS対策が大きく変化している。
これについて、アフリカ地域HIV/AIDS国連事務総長特別代表のスティーブン・
ルイス氏は、こうした政策変更は米国政府の圧力によるものであるとして米国
を強く非難した。この非難に対して、米国政府の地球規模エイズ副調整官、
マーク・ディブル氏 Mark Dybul は、ウガンダ政府の政策変更に関する米国の
影響を強く否定した。
 前述のスティーブン・ルイス氏は、アメリカがコンドームのための資金提供
を削減し、禁欲推進に新しく重点を置いたことが、ウガンダでのコンドーム不
足の一因となったと述べていた。これに対しディブル氏は、ウガンダのコン
ドーム不足は問題のある製品が市場に出回ったことによると述べ、また、米国
はウガンダがHIV予防政策において掲げている「ABCモデル」(Abstinence, Be
-faithful, Use a Condom=禁欲・貞操・コンドーム)を支持すると述べた。
また、「ウガンダで注文された大量のコンドームは、においが悪く、品質検査
でも標準以下であると報告されている。」と語った。
 一方、ウガンダ政府や保健省も、米国政府のABCモデルへの干渉を否定する。
ジム・ムウェジ保健大臣 Jim Muhwezi は「我々が圧力を受け、世界エイズ・
結核・マラリア対策基金の支援が中断されたと主張をする方々もいらっしゃる
ようだが、それは事実ではない。」と述べた。
 ディブル氏は、今までコンドーム使用のみが「過剰に強調されてきた」と指
摘した上、ブッシュ政権がエイズ予防教育において、禁欲と貞操に重点を置い
ていることを認めた。これは、ABCモデルのバランスをとるためであるという。
ディブル氏はこれに加え、「感染が、ある特定の集団に集中している場合には、
コンドーム使用のみのアプローチでも適度な効果をあげることができる。しか
し、一般市民にまで拡大した場合には、ABCモデルが有効である」と述べた。

原題:U.S. Denies Driving Uganda From Condom Use
日付:September 1, 2005
出典:NIGERIA HIV/AIDS NEWS
URL: http://www.nigeria-aids.org/news/content.cfm/104

(編集部注:「グローバル・エイズ・アップデイト」前号(第26号)で、上記
スティーブン・ルイス氏の米国批判演説についての記事を掲載していますので
あわせてお読み下さい。なお、当編集部は、上記米国政府のABCモデルやウガ
ンダ政府の政策変更についての見解を支持するものではありません。)

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★ タンザニア:一部の伝統医療従事者らの活動に保健副大臣が疑問を投げか
ける
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 タンザニアのフセイン・ムウィニ保健副大臣Hussein Mwinyi は8月31日、W
HOが後援する「アフリカ伝統医療・代替医療の日」の記念会議で、「国内で75,
000人いる地域保健医療従事者らはHIV感染者・エイズ患者らに大きな恩恵を与
えている。しかし一方で、その一部は、HIVを除去し、エイズを完治させるこ
とができるといった、誤った発言をしている。」と、警告をした。
 「咳や吹き出物、嘔吐や下痢といった日和見感染症を軽減させる薬草は実際
に存在する。しかし今のところ、HIV感染やエイズが発症した状態を完治させ
る方法はない。一部の伝統医療従事者の行為は詐欺的なものであり、医療サー
ビスを受ける人たちをぬか喜びさせたり、迷信に基づいた適切でない治療を施
したりしている。」と、続けた。
 タンザニア・エイズ委員会の最新調査では、国民200万人のうち、7%がHIV
陽性者であると報告された。その多くは保健医療へのアクセスを持っていない。
一方、会議では、医師たちの功績を称える報告もなされた。ムウィニ副大臣は、
「私たちは、治療について共に調査していかなければならない。科学的根拠に
基づき、薬草の活用や、日和見感染症の症状を緩和させる調合を行い、可能な
ら特許申請も行う。」と、前向きな姿勢を見せている。

原題:TANZANIA: Some local healers help relieve AIDS; others are charlatans
日付:September 1, 2005
出典:IRIN Plus News
URL:
http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=5188&SelectRegion=Great_Lakes&SelectCountry=TANZANIA

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★ カメルーン:「知識のある富裕層は感染可能性が高い」
〜人口統計と保健の調査結果が発表に〜
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 8月17日、カメルーンの首都ヤウンデのヒルトン・ホテルで、カメルーンで
2004年2月から8月までの期間に実施された人口統計と保健の調査結果が発表
された。
 国立エイズ管理委員会中央技術団 the Central Technical Group of the Na
tional AIDS Control Committee のモーリス・フォーゾー博士 Maurice Feuze
u は、「HIV感染率が最も高いのは、教育を受けた豊かな層である。」と発表
した。この発表には、否定や非難の声が渦巻いたが、一方で、知識のある富裕
層は道徳心に欠け、性交を迫るための資金的手段も持っているとして、この報
告に賛意を表明する人々もいた。
 今回の調査は、10,000人の男女を対象に行われた。カメルーンにおけるHIV
感染率は5.5%であるとの結果が出た。フォーゾー博士は、高い教育を受けた
女性の方が、そうでない女性と比べ、2倍感染しやすいという統計結果が出て
いると述べた。また、夫との離婚や死別を経験した女性も、大きな影響を受け
ていることが指摘された。実際、25-29歳の女性は、10.3%、35-39歳の男性は8.
6%と感染率が高くなっている。
 報告書はまた、幼児死亡率の低下も同様に強調している。国立統計局長のジ
ョセフ・テドウ氏 Joseph Tedou は、幼児死亡数の低下を発表した。テドウ氏
はこれを、予防接種拡大プログラム the Expanded Programme on Immunizatio
n によって実施された精力的な予防接種キャンペーンによるものとして評価し
た。
 計画・プログラム・地域開発大臣 the Minister of Plan, Programming and
regional Development のコダック氏 Kodock はこの調査を、政府がミレニア
ム開発目標 the Millennium Development Goals (MDGs) を達成し、貧困削減
戦略ペーパー the Poverty Reduction Strategy Paper (PRSP) を実施する上
で大変有効であると述べた。

原題:HIV/Aids Highest Amongst Educated, Rich Cameroonians
日付:August 22, 2005
出典:NIGERIA HIV/AIDS NEWS
URL: http://www.nigeria-aids.org/news/content.cfm/105

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★ マレーシア:注射薬物使用者に針とコンドームを提供開始
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 9月4日マレーシアのチュア・ソイ・レック保健大臣Chua Soi Lek は、保
健省が、2006年の1月にマレーシアの4つの都市の一部地域で1,200人の注射
による薬物使用者に注射針とコンドームを配布する6ヶ月の試験的プログラム
を開始すると発表した。
 大臣はもともと、6月にHIV感染拡大抑制の目的でこのプログラムを10月に
開始すると発表していたが、延期していた。地元メディアはその理由について、
イスラム勢力の反発があるためだ報じていた。大臣はこれを否定し、次のよう
に述べた。「プログラムの開始が延期されたのは、スタッフの研修が必要であ
ったためである。私たちは、これらの針やコンドームを全ての人に与えるわけ
ではない。プログラムは、クアラルンプール、ジョホールバル、ペナン、クア
ンタン(パハン州)の一部の地域でまず開始する予定である。」と説明してい
る。
 このプログラムのために、保健省代表者、国家薬品局、警察および他の政府
機関関係者からなるタスク・フォースが立ち上げられた。半年後にプログラム
は再評価し、うまくいけば全国的に実施することが見込まれている。さらに政
府は、注射による薬物使用者間のHIV感染拡大を抑えるために、プログラムの
一環として、翌月から半年間メタドン(薬物代替療法に用いられる薬剤の一
種)を支給するためにおよそ63万ドルの予算を確保した。10の医療施設がメタ
ドン・プログラムに参加し、それぞれが120人の薬物使用者を治療することが
できるという。
 昨年発表された統計によると、マレーシアにはおよそ6万人がHIV感染、その
うち75%は注射による薬物使用者であるという。

原題:Malaysia To Launch Pilot Program To Provide Needles, Condoms to
Injection Drug Users Next Year, Health Minister Says
日付:September 7, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS report
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=07-Sep-05#32422

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★ ブルガリア:自国看護師の死刑宣告問題でリビア政府に治療薬・技術を提

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 リビア政府は2004年、リビア人の多くの子供たちをHIVに感染させたとして、
ブルガリア人看護師とパレスチナ人医師に銃殺刑を宣告し、さらに100万ドル
の罰金を科した。これに対し、看護師らの無罪を主張し、罰金の支払いを拒否
してきたブルガリア政府は9月7日、この看護師および医師の釈放を再度要求
する一方で、リビアに対してHIV/AIDS治療薬と設備を提供すると発表した。
 この事件について、専門家たちは、子供たちのHIV感染について、この看護
師や医師の責任ではなく、血液を十分にスクリーニングしなかったリビア保健
省、および滅菌作業を怠ったベンガジ市 Benghazi のアル・ファテ小児病院 A
l Fateh Children's Hospital のミスであると分析している。リビア最高裁は
11月15日に審理を行う。
 ブルガリアのリュボミール・キュシュカフ外務副大臣 Lyubomir Kyuchukov
は9月7日、「ブルガリアは、リビア政府が要求する40項目中24項目には対応
する。しかしこれは、看護師の罪を認めたからではなく、あくまでも11月の審
理に向けて『友好的な状況』を築くためである。」とコメントした。
 一方、EUもリビアのHIV/AIDS対策のための政策提言・技術援助を開始した。
具体的にはベンガジ感染症・免疫センター Benghazi Center for Infectious
Diseases and Immunology の研究を国際基準に引き上げるための技術援助など
を目標としている。欧州委員会は、2004年11月にEUが推進したベンガジHIV/AI
DS行動計画 HIV Action Plan for Benghaziを直ちに実行に移すとした覚書に
署名した。
 同行動計画は、安全な輸血システムの確保、実験結果の解析、病院施設の管
理やHIV感染者・エイズ患者の社会復帰などに関して、EUがリビアに専門的ア
ドバイスを行うものである。EUは同計画と看護師裁判との関連性はないとして
いるが、多くの専門家は、上記の援助開始については同事件がきっかけとなっ
た可能性が高いとみている。

原題:Bulgaria Set To Provide Equipment, Medicine To Libya in Effort To Free Health Workers Accused of Infecting Children With HIV
日付:September 8, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS report
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=08-Sep-05#32439

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★ スウェーデン:ユニセフにエチオピアのエイズ遺児のため500万ドル拠出
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 スウェーデン政府は9月7日、エチオピアで増加するエイズ遺児に対応する
組織の強化のために、約500万ドルをユニセフに拠出したことを発表した。
ユニセフおよびそのエチオピアにおけるパートナーである「遺児と脆弱な子
供たちのためのタスク・フォース」(OVC National Task Force)は、HIV/AID
Sにより影響を受けた子供たちを救うためのエチオピア国家行動計画を実行す
る際の第一段階として、まず1,100万ドルを必要とするとしていた。同計画で
は、まず5万6千人の遺児のニーズに応えることが見込まれている。
 「我々の最初の目標は極めて謙虚なものであったにも関わらず、ドナーの反
応は薄かった。今回のスウェーデンからの寄付は、昨年12月に計画を発表して
以来初の大規模な拠出である」と、ユニセフ駐エチオピア事務所代表のビョー
ン・リングヴィスト氏 Bjorn Ljungqvist は語った。
 過去3年間に渡るノルウェーとオーストリア政府からの支援により、ユニセ
フはエチオピア全体で、エチオピア・ユース・ネットワーク National Youth
Network の構築と1万以上のエイズに取り組む組織を発足させることに成功し
たという。ユニセフは、今回のスウェーデンからの寄付のうち4.96万ドルにつ
いて、既存の組織のネットワークを強化し、若者を対象にカウンセリング・
サービス、検査や教育的支援を行うという。
 エチオピアにおけるエイズ遺児の数は、2014年までに250万人に増加すると
予想されている。現在同国では、150万人のHIV感染者・エイズ患者がおり、そ
して、その数は2015年までに240万人に到達すると予測されている。ユニセフ
は、若者は大人よりも行動変容が容易であるため、若者への支援が非常に重要
であると強調している。

原題:ETHIOPIA: UNICEF receives Sweden's donation for AIDS orphans
日付:September 12, 2005
出典:IRIN PlusNews
URL:http://www.irinnews.org/report.asp?ReportID=49004&SelectRegion=Horn_of_Africa

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★ UNDP人間開発報告書:HIV/AIDS拡大による開発への悪影響を指摘
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 国連開発計画(UNDP)は、9月7日に刊行された2005年度の人間開発報告書
において、HIV/AIDSがサハラ以南のアフリカ諸国や旧ソ連の人間開発の後退に
深刻な影響を及ぼしていると発表した。人間開発指数は人々の生活や教育の質
や平均余命などを変数として計算し、指標を数値化して各国を順位付けしたも
のであるが、これによればサハラ以南アフリカ18カ国のうち12カ国の順位が19
90年から2003年の間に後退している。南アフリカ共和国は120位から15位後退
して135位に、ジンバブエ、ボツワナはそれぞれ23位、21位順位を下げた。
 このように、HIV/AIDSは保健・食料安全保障や教育等の分野で悪影響を及ぼ
している。HIV/AIDSは世帯収入だけでなく、社会・経済構造を蝕んでおり、ボ
ツワナの平均余命は1970年代以降16歳も縮小し、ザンビアでは30歳の平均余命
が1840年代のイギリス人よりも低いことがわかった。
 一方、HIV/AIDSはタジキスタンやウクライナやロシアなど旧ソ連の国々にも
悪影響を及ぼしており、各国はそれぞれ21位、17位、15位の順位の後退を示し
ている。
 報告書は、各国が国連ミレニアム開発目標(MDG)達成のためにさらなる援
助資金を提供する必要があると訴えている。報告書によれば、先進諸国は開発
援助資金の10倍に相当する額を軍予算に支出しているという。HIV/AIDSプログ
ラムの年間予算は軍隊の予算のたった3日分である。人間開発報告書はニュー
ヨークで行われる2005年国連サミットで発表される。

原題:HIV/AIDS Epidemics Negatively Affecting Development Progress of
African, Former Soviet Union Nations, Report Says
日付:September 8, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS report
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv_recent_rep.cfm?dr_cat=1&show=yes&dr_DateTime=08-Sep-05#32438

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★ 第5回案件募集での推奨プロポーザルを事実上採択
 〜世界エイズ・結核・マラリア対策基金第11回理事会〜
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【ジュネーブ発2005年9月30日=グローバル・エイズ・アップデイト編集部】
 2005年9月28日から30日までの3日間、世界エイズ・結核・マラリア対策基
金(世界基金)の第11回理事会がジュネーブで開催された。

 今回の理事会では、(1)本年3月に開始され6月に締め切られた「第5回
案件募集」(Round 5)に提出された新規のプロジェクト案件の承認をどうす
るか、(2)ビルマ(ミャンマー)、ホンジュラスなど、世界基金の資金拠出
の停止や凍結などが取りざたされている案件に関して、理事会としてどう決定
するのか、の二点が焦点となった。今号では、最初の点についてとりあげ、第
2の点については次号で取り上げることとする。

◇資金不足の下での案件承認

 世界基金では、年間1〜2回の新規案件募集を行い、世界各国に設立されて
いる「国別調整メカニズム」(CCM)および各NGOがプロポーザルを提出する。
このプロポーザルを、理事会・事務局から独立した技術審査機関である「技術
審査パネル」(TRP: Technical Review Panel)が審査し、拠出が適切である
と判断されたプロポーザルを理事会が承認する。このようにして承認された案
件について、事務局が当該国の関係者と契約を結んで拠出が開始されるという
仕組みとなっている。第5回案件募集は、世界基金の資金不足により、その実
施が危ぶまれたが、結局、昨年11月に開催された第9回理事会で実施が決定さ
れ、本年3月に募集開始、6月に締め切られた。105ヶ国から合計168の応募案
件があり、TRPはこれを審査して、63のプロポーザルについて資金拠出可能と
判断した。
 今回の募集については、結核・マラリア・HIV/AIDS、AIDS/TB複合感染対策
に加え、保健システムの強化(HSS:Health System Strengthening)がテーマ
に加えられた。TRPの審査結果を見ると、マラリア、結核に関するプロポーザ
ルの採択率が上がっている一方で、HIV/AIDS、とくにAIDS治療に関するプロ
ポーザルの採択率は下がっている。また、HSSについては、初回ということも
あって、非常に低い採択率となっている。
 一方、今回の募集では、NGOがCCMを経由せず直接事務局にプロポーザルを提
出するケースが目立ったが、これらの多くは不採択となった。また、中進国で
の貧困層や特定のコミュニティに関する事業のプロポーザルの多くも不採択と
なった。これについては、本来、世界基金からの拠出による事業展開が必要で
あるにもかかわらず、プロポーザルの質が低い結果として不採択になった可能
性もあり、プロポーザルの作成その他に関する積極的な技術協力の提供が必要
であるとの意見も表明された。

◇「包括的拠出原則」をめぐる問題

 今回の案件承認で最大の問題は、慢性的な資金不足の下でどのように案件承
認を行うか、ということであった。世界基金が個別案件を承認して資金拠出を
行うにあたっては、「包括的拠出原則」(Comprehensive Funding Policy)と
いう原則があり、案件を承認する場合には、当該案件を2年間実施するために
必要な資金が世界基金の口座に確保されているか、もしくは拠出誓約がなされ
ている必要がある。しかし、今回の場合、TRPが資金拠出可能と判断した63案
件の2年間の実施に必要な資金は合計約7億ドルであったが、2005年予算で第
5回案件募集のために確保されていた資金は4億ドルに過ぎず、今回の理事会
で全案件を承認することは不可能であった。
 これについては、来年になってしまえば2006年の予算から資金を捻出でき、
2006年予算については、若干の技術的な変更を加えることで、上記の拠出原則
に従って全案件を承認できるため、事実上、深刻な問題とはならなかった。し
かし、世界基金は原則的に、TRPが拠出可能と判断したすべての案件について
拠出することが必要であること、また、資金需要に対して資金が不足している
ことについては、第一義的にはドナー国・ドナー機関に責任があることから、
現行の「包括的拠出原則」を見直すべきであるとの主張もレシピエント側から
提起された。
 結局、今回の理事会においては、「包括的拠出原則」の見直しに向けた具体
的な議論はなされなかった。また、案件の承認については、同原則の下で現行
の2005年予算で承認できる案件は承認し、承認できないものについては、承認
しうる財源が得られた時点で各理事の意思表明をえて承認するという決定とな
った。ただし、今後も世界基金の資金不足が続くであろうことは明白であり、
この問題を解決するためには、ドナー国・機関がより多くの財源を投入するか、
もしくはフランス等が提唱している国際航空税といった、新たな資金創出メカ
ニズムを実際に導入して十分な資金を確保するといった、資金確保の点での新
たな試みが必要であろう。(次号に続く)


参考ウェブサイト:
世界エイズ・結核・マラリア対策基金 http://www.theglobalfund.org
 AIDSPAN(世界基金ウォッチングNGO) http://www.aidspan.org

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■□編集後記
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 10月8日からの3連休は、あいにくの雨模様でしたね。今週は日中になって
も気温がさほど上がらず、朝晩は布団から抜け出したくないなぁ、と既に体も
心も温かいものを欲している、といった感じです。これから、鍋やおでんなど
がおいしい季節になってまいりますね。とても楽しみです。
 さてその一方で、この2週間、パキスタンの大地震、グアテマラを中心とし
た中米各国でのハリケーンの被害などがニュースで取り上げられています。多
くの方々の人命をはじめとして、大きな被害が出てきているようです。日本の
NGOからも緊急支援チームが各国に出発しているようです。地震やハリケーン、
その他の災害に関連したHIV/AIDSのニュースもこれからフューチャーしていけ
ればと思っておりますので、どうぞ皆さまご期待下さいませ。

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UP:20051019
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