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『グローバル・エイズ・アップデイト』第25号

http://blog.melma.com/00123266/

アフリカ日本協議会


■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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第2巻 第2号(通算 25号)2005年9月15日
Vol.2 -No.2 Date: September 15, 2005

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:アフリカ日本協議会
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・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
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◆本メールマガジンから転送・引用を行う場合は 事前に発行者にご連絡をお
願いいたします。

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はじめに:発行趣旨
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○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報
が伝わ っておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝
えるメ ディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、隔週で発行
いたし ます。

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■「第2号」目次
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●地域情報
アフリカ
1.ナイジェリア:ヒルトンホテル、従業員に無料ARV配布

アジア・太平洋地域
1.豪州: シドニーのゲイ・コミュニティにて梅毒が流行
2.中国:囚人にHIV抗体検査を義務付け
3.台湾:外国人に対する健康診査の強化を発表
4.サウジアラビア:外国人HIV陽性者に対する対応

ヨーロッパ
ウクライナ:麻薬所持厳罰化の動きに抗議

米州地域
ラテンアメリカ: 11ヶ国が、薬品会社と割引抗レトロウイルス薬供給契約

●ドナー関連
米国: 来年ベトナムへ3400万ドル増資

●会議情報
拠出誓約金額の少なさに市民社会から多くの不満
〜ロンドン・世界基金「資金補充会議」〜


-------------------------------------------- Vol.2-No.2----

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★ ナイジェリア:ヒルトンホテル、従業員に無料ARV配布
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 ナイジェリアの首都アブジャは、今から15年ほど前に同国最大都市のラゴス
から首 都機能が移転した新しい都市である。アブジャにある二つの高級ホテ
ルの一つ、ナイ コン・ヒルトン・ホテル NICON Hilton Hotel は、HIVエイズ
抗体検査で陽性となっ た従業員が従来通り、生産的な人生を過ごせるよう、
抗レトロウイルス(ARV)薬を 無料で支給すると発表した。これはナイコン・
ヒルトン・ホテルのHIV/AIDSに対する 職場での方針 Workplace Policy の一
環として打ち出されたものである。
 ホテルの支配人はこの方針を打ち出すに当たり、「ARV薬の支給を申し出る
従業員 には無償で配布する。これは、全世界に拡がる病気に対するヒルト
ン・インターナシ ョナルの方針である。HIV抗体検査の結果による解雇は絶対
行われないので、全従業 員は気軽に検査を受けて欲しい。これはナイコン・
ヒルトンだけでなく、全世界のヒ ルトンの方針である。エイズの問題はナイ
ジェリアだけの問題でなく、全世界の国々 に関わる問題である。全世界のヒ
ルトンに先駆けて、このホテルから始める」と述べ た。
 また支配人は、「この運動を通じて、HIV/AIDSの社会的重大性を理解し、従
業員と 経営者を適切な形で支援し、迅速に対応することが重要である。またH
IV陽性者・エ イズ患者である従業員に治療を供給し、共に働くことが重要で
ある。ナイコン・ヒル トンでのこの措置が、職場でのいわれなき非難と差別
を減らすことへの一歩となると 信じる。私たちの目標は、全ての従業員の意
識が変わり、広く会社全体での認識が形 成されることである。私たちは、従
業員へコンドームの配布、HIV/AIDSに関する配慮 事項遵守トレーニング、ピ
ア・カウンセリング・セミナーの実施、パンフレットやポ スター、4半期ごと
の健康プログラムなどの方法で、HIV/AIDSに対する継続的な認識 を作り出す
ことなどを通じて、既に実績を築いてきた」と語った。
 国家エイズ行動委員会 National Action Committee on AIDS (NACA)のババ
トゥン デ・オショテメヒン Babatunde Oshotemehin 博士は、ナイコン・ヒル
トン・ホテル による率先した行動を賞賛し、HIV/AIDS対策のため、他の民間
組織に対してヒルトン を見習うことを呼びかけた。

原題:HIV/AIDS: Nicon Hilton Gives Free Anti-Retroviral Drugs
日付:August 4, 2005
出典:allafrica.com
URL: http://allafrica.com/stories/200508050664.html

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★ オーストラリア: シドニーのゲイ・コミュニティで梅毒が流行
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 シドニーにおいて、ゲイの間で梅毒が流行っていることが、調査で明らかに
なっ た。一方、オーストラリアの医学雑誌「the Medical Journal of Austra
lia」の最新 号によれば、2000年に比べて、HIVに感染した男性は10倍にも増
えているという。こ の報告の共著者であるアンドリュー・グルーリッチ氏 An
drew Grulich によると、 HIVに感染している男性は、感染の可能性の高い性
行為によってHIV感染したことが判 明したと述べた。一方、グルーリッチ氏は、
梅毒の感染はオーラル・セックスを通じ て広がっているが、これは多くの
人々が、梅毒について認識していない一方で、オー ラル・セックスはHIV感染
につながらない安全なセックスだという誤った考えを持っ ていることも一つ
の要因だ、と述べた。(編集部注)
 「オーラル・セックスではHIV感染しない」という考えは、オーストラリア
では男 性同性愛者間で梅毒が流行っていなかった90年代のものである。
 グルーリッチ氏によると、「2000年以降、梅毒患者が著しく増加し、シド
ニーでは 年間200例以上の症例がみられるという。梅毒については、ゲイ・コ
ミュニティの中 ではあまり認識されていないので、人々の間で梅毒の問題を
啓発し、その症状につい ての認識を深めて、早く対応できるようにすること
が必要だ」と述べた。最近まで、 オーストラリアでは、梅毒の流行は低く押
さえられてきており、ゲイ社会では梅毒に 対する認識が低かったが、今後は
その認識を変えていく必要がある。

編集部注)オーラル・セックスは、一般的に感染の可能性が「ない」、あるい
は「極 めて低い」性行為であると認識されていることがありますが、精液を
口に含むと、口 やのどの粘膜にふれるため、感染の可能性が全くないと断定
することができません。 国際的な事例でもオーラル・セックスによる感染の
可能性は報告されています。
編集部注2)「グローバル・エイズ・アップデイト 第1巻11号」(2005年3
月3日 発行)において、オーストラリアの隣国であるニュージーランドで梅
毒を中心とした 性感染症が流行拡大した、という記事をお送りしています。
あわせてご覧下さいませ。

原題:Syphilis epidemic hits Sydney's gay community
日付:Aug, 15 2005
出典:ABC NEWS ONLINE
URL:http://www.abc.net.au/news/newsitems/200508/s1437384.htm

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★ 中国:囚人にHIV検査を義務付け
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 北京刑務所管理局 Beijing Prison Management Bureau は8月14日、刑務所
の在監 者(囚人)を対象に強制的 compulsory にHIV抗体検査を行うと発表し
た。感染が確 認されれば、無料で治療を受けることができ、刑期を終えた後
も治療は続けられる。 これは、中国のHIV/AIDS対策の一環として位置づけら
れており、在監者の間での HIV感染拡大を防ぎ、治療を提供することが目的で
ある。
 米国の国際エイズプログラム北京事務所長 Director of the Beijing Offic
e of Global AIDS Program of the US のレイ・イップ氏 Ray Yip は、当局の
対策を、 「賢明で効果的な手段」であると評価する。同氏は、HIV感染者・エ
イズ患者の早期 治療は、その後の感染拡大を防ぐのに有効である、と語った。
在監者は、HIV感染の 可能性が高いグループといわれている。北京市において
登録されているHIV陽性者・ エイズ患者の総数は2,000人以下であるのに対し、
在監者の感染率は1,000人中3人。 一般人口の4倍以上である。さらに、当局
は薬物中毒者にも対策を講じている。薬物 の服用が認められた場合には、3
年の懲役が課されることもあるため、在監者のう ち、HIV陽性者・エイズ患者
の中には、薬物依存者の割合が高い。薬物依存者は発見 され次第、直ちに治
療、リハビリが施されることになっている。
 北京におけるHIV陽性の在監者は、市の普通刑務所に収容され、付属の病院
で治療 を受ける予定。イップ氏によると、米国の大半の州立刑務所では、HIV
の感染に関わ らず、検査を受けた在監者は同じ刑務所に収監されるという。
氏は、「このような制 度が、刑務所においてのHIV感染抑制につながった」と
語っており、中国の制度もこ れにならっているとみられる。

(編集部注)UNAIDSは、強制的なHIV検査はHIV陽性者の人権を脅かし、差別や
偏見の拡大につながる上、HIV陽性者の潜在化を招くとして、HIV検査につい
ては自発的に行 われるべきであるというガイドラインを出しています。当
メールマガジンで本件記事 を紹介したのは、強制検査を認めるという趣旨で
はなく、中国におけるHIV/AIDS対策 の現状を紹介するためです。

原題:Prisoners in Beijing to receive compulsory HIV tests
日付:Aug 15, 2005
出典:China View website
URL:http://news.xinhuanet.com/english/2005-08/15/content_3354924.htm

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★ 台湾:外国人に対する健康診査の強化を発表
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 台湾保健省は8月12日、東南アジアからの外国人労働者とその配偶者に対し
て、台湾入国前の健康診断と、滞在中の定期検査を義務付けると発表した。検
査を通じて感 染症、特にデング熱の流行拡大の予防を目指す。台湾では、東
南アジアの移住労働者 が原因で感染したデング熱患者が、今年に入りすでに4
0名確認されている。
 保健省疾病管理センター検疫課長のリン・ウェンフェイ氏 Lin Wen-fei に
よると、東南アジアからの労働者と配偶者は、台湾への出発前、台湾到着後3
日以内、そして滞在半年後、18ヵ月後および30ヵ月後にそれぞれ受診が義務付
けられる。これらの検診では、結核、HIV、梅毒、B型肝炎、寄生虫およびハ
ンセン病の検査が行われ る。
 HIV感染の判明した後、保健当局への通知を怠った者には、ビザの延長が認
められ ない場合がある。また、寄生虫に関してのみ、再検査が認められる。
また、違反者に 対してはビザの一時取り消し、もしくはその雇い主に対して
6万から30万新台湾ドル (1,880から9,400米ドル)の罰金が科せられる可能
性もあるという。

原題:Officials announce tighter health checks of foreigners
日付:Aug 13, 2005
出典:Taipei Times
URL:http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2005/08/13/2003267533

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★ サウジアラビア: 外国人HIV陽性者に対する対応
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 サウジアラビアでは、HIVに感染している外国人に抗レトロウイルス(ARV)
薬治療 を施さず、本国への送還か、死亡まで病室に閉じ込めていると、ボス
トンのグローブ ・アンド・メール紙が伝えた。
 サウジアラビア保健省は、HIV/AIDSを「海外から輸入されたもの」であると
認識し ており、2004年度報告では、国家政策としてHIVに感染している外国人
に対し、症状 が落ち着き、出国できる健康状態になるまで治療をすると定め
たが、ある医師は、「外国人感染者の多くは、交通事故や勤務中の事故によ
り病院で治療を受ける際、強 制的にHIV抗体検査を受け、陽性とわかることが
多い。また患者というよりも囚人のような扱いを受けている。」と語った。
また、多くの人々が、薬、治療などを受ける ことができず、出国を待ってい
る間に死を迎えている。病院で出国を待つ時間は国籍 によって違い、フィリ
ピン人はすぐに自国に帰国できるが、サウジアラビアと外交関 係を結んでい
ない国の国民は、かなり長く待機していなければならない。
 サウジアラビアに滞在する外国人は、全人口の25%を占め、同国のHIV感染者
の 54%が外国人である。政府は、サウジアラビア国籍を持つHIV感染者に対し
ては、1人 につき月1,500ドルの経費をかけてARV薬を提供している。

原題:Global Challenges | Globe and Mail Examines Saudi Arabia's Treatment of HIV-Positive Foreigners
日付:Aug 10, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS Report
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?hint=1&DR_ID=31927

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★ ウクライナ:麻薬所持厳罰化の動きに抗議
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【キエフ発8月1日】ウクライナ政府は、麻薬の合法的所持量を引き下げる法
改正の 検討を開始した。同国保健省が発表した。ウクライナでは、薬物の種
類ごとに所持が 合法と認められる許容量の上限値を定めているが、改正予定
の新法令によると、これ までは合法とされていた量を所持していても、今後
は刑罰を課されることになる。法 律専門家らは、新法令が悪影響をもたらす
のではないかと懸念している。HIV/AIDS活 動家らも警告を発しており、政府
に麻薬対策の方針を変更するよう求めている。
 改正予定の新法令では、例えばアヘンの上限値はヘロインと同じ0.005gにな
り、こ の基準値を超過する量を所持すれば、3年以下の懲役に問われること
になる。問題な のは、特定の種類の薬物については以前より上限値が引き上
げられる一方で、自宅で ケシを栽培して生成したアヘンについては、合法的
に所持できる量が引き下げられて いる点だ。
 ウクライナでは、多くの薬物使用者が、自宅でのケシ栽培によって生成した
アヘン を使用している。これらの人々の多くは、主に所得が低く、社会的・
経済的に弱い立 場に置かれている。法改正が実現すると、これらの層に属す
る薬物使用者が主に処罰 の対象となる。一方、大規模なプロの麻薬密売につ
いては、何ら効果を期待できな い。HIV/AIDS活動家らが今回の法改正に反対
しているのはそのためである。
 HIV/AIDS活動家らは、一連の法改正への動きは、政治的な動機に基づいてお
り、麻 薬問題についての対策としては短絡的なものに過ぎないため、賛成で
きないと話し、 より賢明な対策を政府に要求している。

原題:Statement: Ukraine: Proposed drug law changes would increase spread of HIV
日付:August 1, 2005
出典:PWHA _ net
URL: http://archives.healthdev.net/pwha-net/msg01244.html

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★ ラテンアメリカ:政府と企業の契約により
 抗レトロウイルス薬の価格をディスカウント
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 インター・プレス・サービスの報道によると、11のラテンアメリカ諸国が、
26の製 薬企業と、最大66%値引きされた抗レトロウイルス(ARV)薬の供給を
保証する契約 を締結した。
 この契約は、全ての国内HIV感染者がARV薬にアクセスできるようにするため
に実施 されたもので、まず2年間という期限付きで開始される。契約国は、ア
ルゼンチン、 チリ、ボリビア、エクアドル、ブラジル、ペルー、ベネズエラ、
コロンビア、メキシ コ、パラグアイ、ウルグアイ。契約相手である製薬企業
は、アボット・ラボラトリー ズ Abbott Laboratories、グラクソ・スミス・
クライン GlaxoSmithKline、Merck、 ブリストル・マイヤーズ・スクィブ Bri
stol-Myers Squibb、ロシュ Roche、バイエ ル Bayer の各社である。薬の値
引率は15%から66%と薬により異なる。ARV薬に関し ては平均で45%割引にな
る。汎アメリカ保健機構 (PAHO)Pan America Health organizationによると、
ラテン・アメリカ地域には約150万人のHIV 陽性者がいる が、38万5千人が抗
レトロウイルス薬を必要としているのに対し、27万5千人しか治療 を受けてい
ない。

(編集部注:この数字は、一見、サハラ以南アフリカ諸国などと比較をすると、
ラテン・アメリカ地域内のARV薬アクセスは良好なものに見受けられます。し
かし、実際 には、この地域でARVにアクセスできているのは、無料のARV供与
政策を実施している ブラジルの在住者が多く、その他の国々では、HIV/AIDS
に対する差別やスティグマが 色濃く残っており、ARVへのアクセスが進んでい
ないのが現状です。
 またラテン・アメリカ諸国全体に広がる所得間格差などの貧困の問題とHIV
感染者 ・エイズ患者らのARVにアクセスできる環境は非常に密接なつながりが
あることも、 ラテン・アメリカのHIV/AIDSの状況を考える上で、大切な要素
となってきます。
 今後、ブラジルを含め、ラテン・アメリカ諸国のHIV/AIDSの概況などの記事
などがあり次第、編集部でも大きくクローズアップしていければと考えてお
ります。どうぞご期待下さい。)

原題:Drug Access | Latin American Countries Reach Agreement With Drug Companies To Receive Discounted Antiretrovirals
日付:Aug 10, 2005
出典:Kaisernetwork Daily HIV/AIDS Report
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?hint=1&DR_ID=31924

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★ 米国: 来年ベトナムへ3400万ドル資金供与
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 アメリカは、大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)のスキームを通して、20
06年ベ トナムに対して行う資金供与額を、2,500万ドルから3,400万ドルへ増
額する、とベト ナム通信社が報じた。PEPFARの計画は、ベトナムでHIV感染者
の人々に抗レトロウイ ルス(ARV)薬を提供するもので、HIVの母子感染を抑
制するプロジェクトも支援。ベ トナムは、アジア唯一のPEPFAR対象国であり、
エイズ対策だけでなく、結核やマラリ アプログラムも行われている。
 一方、ドイツのジェネリック医薬品の製薬会社であるSTADAは、グラクソ・
スミス ・クライン社のARV薬を、安価でベトナムに提供し始めた。ホーチミン
市エイズ予防 委員会によると、現状では、ベトナムの中央・地方政府は充分
な予算を持っておら ず、HIV感染者にARV薬を無料提供するのは不可能である。
しかし、ベトナムの医療部 門は、HIV陽性者・エイズ患者らの治療が実現する
ように努力を継続していく予定で ある。現在、9万7,300人のHIV感染者がベト
ナムにおり、9,100人の人々が日和見感染 症等で死亡しているという。このま
までは、2010年までに、同国ではHIV感染者が 35万人以上に増大し、10万4,70
0人が日和見感染症等で死亡すると予測されている。

原題:U.S. To Increase Vietnam's PEPFAR Funding to $34M in 2006
日付:Aug, 08 2005
出典;Kaisernetwork Daily HIV/AIDS Report
URL:http://kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?DR_ID=31868

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★拠出誓約金額の少なさに市民社会から多くの不満
〜ロンドン・世界基金「資金補充会議」〜
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【東京発2005年9月7日・グローバル・エイズ・アップデイト編集部】ロンド
ンで9 月5日・6日の二日間にわたって開催されていた「世界エイズ・結
核・マラリア対策 基金」(世界基金)の自発的資金補充メカニズム第3回会
議では、世界基金の2006年 ・2007年の資金として、合計29ヶ国から37億ドル
の拠出誓約が表明された。世界基金 側は、この2年間の資金需要を71億ドル
と算出しており、資金補充会議で誓約された 資金拠出は、この半分をわずか
に上回るだけの結果に終わった。

○会議への評価:肯定論と否定論

 同会議の議長を務めたアナン国連事務総長は、「本日の各国の資金拠出表明
によっ て、世界基金の持続性を担保する道が切り開かれた」と肯定的な評価
を行った。ま た、世界基金のリチャード・フィーチャム事務局長も、「この
会議は成功であり、こ れにより、私たちは2007年までの資金需要の確保に向
けて、希望を持つことができ た」と述べた。
 一方、市民社会側は総じて、この会議において援助国側が世界基金の資金需
要を満 たすだけの拠出誓約をしなかったことに失望を隠していない。アクシ
ョン・エイドの フェリシティ・デイリー氏 Felicity Daly は「援助国は事態
の緊急性を認識してい るのか。援助国は、2010年までにエイズ治療への包括
的アクセスを実現するというG 8諸国の歴史的な誓約を真に達成する機会を
みすみす逃してしまっている」と憤る。 同基金理事会で三大感染症の患者・
感染者及び影響を受けているコミュニティの代表 理事を務めているインドの
アナンディ・ユヴァラジ氏 Anandi Yuvaraj も「世界基金 の資金不足が解消
されなかったことで、感染症に痛めつけられている人々は希望を持 てなくな
った。これは大きな打撃だ」と悲痛なコメントを出した。

○米国政府への失望

 市民社会側の不満は、2007年までにわずか6億ドルの拠出誓約しか行わなか
った米 国政府に向けられている。ブッシュ大統領を始め米国政府関係者は、
米国は世界基金 の予算の3分の1を目処に拠出誓約を行う、と明言していた。
グローバル・エイズ連 合 Global AIDS Alliance のデイヴィッド・ブライデ
ン氏 David Bryden は、「ブッ シュ大統領の約束違反により、世界の弱い立
場にある人々が息絶えることになる。大 統領は約束を守るべきだ」とブッシ
ュ大統領を非難した。ちなみに、米国のシンクタ ンクの調査によると、米国
は対イラク戦争に、月額56億ドルを拠出しており、世界基 金の2年間の資金
需要71億ドルは、米国の対イラク戦争での出費の2ヶ月分をはるか に下回る
額である。

○今後の展望

 今回の会議での拠出表明額が少なかったことから、今回の会議では、2006年
6月 に、さらなる資金拠出表明を引き出すための会議を再度開催することを
決定した。そ れまでに各国の資金拠出表明がなされなければ、世界基金は、
すでに拠出を決定して いるプロジェクトに対する拠出の継続は可能になるも
のの、新たな案件募集を行うこ とができないということになりかねない。そ
のため、各国の市民社会は、援助国に対 して、さらなる資金拠出の要求をし
ていくことになる。また、各国の自発的な資金拠 出には限界があることから、
例えばフランスが提唱している「国際航空税」(国際線 の航空運賃に若干の
課税を行い、これを世界基金に拠出する)など、新たな資金調達 制度の実現
などが具体的に検討されていくことになるものと思われる。


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■□編集後記
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 いつもご購読いただきありがとうございます。

 まだまだ暑さの残る都内ですが、皆さまはいかがお過ごしでいらっしゃいま
すでしょうか。衆院選を終え、政治に対する関心がさらに高まったところです
が、現在米国ニューヨークでは、ホワイトバンドサミット国連2005ワールド・
サミットが開催中です。
 ニューヨークからの速報によれば、成果文書が大きく訂正され、具体的な政
策が盛り込まれないのではないか、という懸念がされているようです。具体的
な成果につきましては、本メールマガジンでも今後追跡をしてまいりたいと思
っておりますので、乞うご期待下さい。

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