HOME > ajf >

『グローバル・エイズ・アップデイト』第19号

http://blog.melma.com/00123266/

アフリカ日本協議会



■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
----------------------------------
 第19号 2005年(平成17年)6月30日
  Vol.1 -No.19 Date: June 30, 2005

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■


◆発 行:アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
・電 話:03-3834-6902
・FAX:03-3834-6903
・電子メール:info@ajf.gr.jp
◆バックナンバー:以下のブログを参照!
・http://blog.melma.com/00123266/
◆Melma!を通しての購読申し込みは
・http://www.melma.com/mag/66/m00123266/
◆本メールマガジンから転送・引用を行う場合は
 事前に発行者にご連絡をお願いいたします。

*********************
------------------
はじめに:発行趣旨
------------------

○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報
が伝わっておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝
えるメディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、隔週で発行
いたします。

----------------------
■「第19号」目次
----------------------

●地域情報

ラテンアメリカ
ベネズエラ:手術をしない医師たち

アフリカ
1.ザンビア:地域プロジェクトからARV入手へ
2.南アフリカ:HIV陽性者の自殺傾向(研究レポート)
3.南アフリカ:軍がHIV/AIDS対策へ前進
4.ベナン:HIV感染比率が50%低下??
5.治療:PEPFARによるHIV/AIDS治療対策

●ドナー情報

英国:インドネシアに25万ポンドの資金提供

●国際機関情報

国連:UNAIDS事務局長が「MDGs達成困難」と発言

●オピニオン

不当な国家体制と「賠償」:南アフリカの場合

==============================================ミ☆ No.19===

---------------------
●地域情報
---------------------

----------------------------------------------
★ ベネズエラ:HIV陽性者に手術をしない医師たち
----------------------------------------------

 ベネズエラ西部ズリア州には、2,000人近くのHIV陽性者が在住しているが、この地域で、医師や地域にある施設が彼らの「締め出し rejection 」をしていることが明らかになった。
「適切な医療を受けることができないのであれば、『死ね』と宣告されたようなものだ。」感染者の一人は語る。 医師は感染者に対して、どんなに簡単な手術も行おうとしない。その結果、不法な手段でHIV感染陰性の検査結果を入手して手術を受けざるをえないというケースも出てきている。
 抗レトロウイルス療法 ART は薬の処方によっては、結石の原因ともなりうる。そのような状況になったときに、考えられるオプションは二つ:結石とともに生きるか、何らかの方法で陰性証明を得て、手術をしてもらうかである。
 感染者の一人は、地域エイズ・性感染症協会 the Regional AIDS and Sexually Transmitted Diseases Coordination に対して次のような証言を行っている。
 2月に交通事故にあったある感染者は、右足側の大腿骨骨折をし、いくつかの腕部の骨折もした。この事故で、南部の総合病院へと搬送された。病院では、意識のない彼への緊急手術が始まろうとしていた。ところが、彼が「自分はHIVに感染している」と医師に述べた途端、全ての状況が一変した。彼は、ずっとベッドの上に乗せられ、歩くことさえもできず、30日以内に大学病院にて手術が行われると言われたことだけを信じていた。
 ズリア医学校マリセラ・レベロル校長 Marisela Reverol は、「感染拡大防止ができないような状況でない限り、HIV感染者・エイズ患者の診察拒否をした医師はその旨を報告しなければならない」と述べている。

原題:HIV patients report doctor's negativity to operate on them
日付:2005年5月26日
出典:Asociacion Civil Impacta Salud y Educacion (Spanish)
URL:http://www.impactaperu.org/pages/noticias/noticias087.htm (Spanish)

----------------------------------------------
★ ザンビア:地域プロジェクトからARV入手へ
----------------------------------------------

 ザンビアの首都ルサカから北西に約700キロ離れた街ソルウェジ Solwezi にある、ザンビアHIV/AIDS感染者ネットワーク NZP+ では、メンバーが収入向上活動を通してHIV抗原検査やARVの入手を可能にしている。
 ザンビア全国エイズネットワーク The Zambia National AIDS Network, ZNAN は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(以下「世界基金」)から資金援助を受ける4主要団体の一つである。この団体は、NZP+ソルウェジ・メイズ・ミリング・プロジェクト (とうもろこし製粉事業)設立のために1,350万クワチャ(2,918 USドル)を提供し、収入生産活動を支援した。NZP+ソルウェジの職員、トムソン・カンガヤ氏 Thomson Kangaya は「メンバーのほとんどは仕事のない社会的弱者であるので収入生産活動を行なえば治療薬を購入できる」とし、「活動によってグループの将来の独立が可能である」と述べている。
 しかし、プロジェクト委員会のロバート・チニャマ委員長 Robert Chinyama は「ネットワークの参加者数増加により、現在の活動による収入だけではARV購入に不十分」と指摘する。そのため、チニャマ委員長は「各グループに独立した収入生産活動を行ないたい」と意気込んでいる。
 また、ZNAN情報コミュニケーション部 サム・カペンワ氏 Sam Kapembwa は、各グループが単独に活動するのではなくパートナーシップを形成してより多くの資金援助プログラムに応募するよう働きかけている。カペンワさんは「個々に応募するのは自由だが、パートナーシップは事業の透明性を強化し説明責任を果たすのに有効である。だから、積極的に協力関係を持つべきである。」と指摘する。

原題:ZAMBIA: Community groupproject funds ARVs
日付:May 30, 2005
出典:IRIN Plus News
URL:
http://www.irinnews.org/report.asp?ReportID=47394&SelectRegion=Southern_Africa


----------------------------------------------
★ 南アフリカ:HIV陽性者の自殺傾向(研究レポート)
----------------------------------------------

 南アフリカでは、HIV感染者およびエイズ患者は、そうでない人と比較して自殺する確率が36倍高いと、ネルソン・マンデラ医学校 Nelson Mandela School of Medicine の研究者は発表した。現地の新聞「スター」紙は、同校のローレンス・シュレブシュ教授 Lourens Schlebusch の談話を以下のように引用している。「自殺とはプロセスなのです。つまり、この問題に取り組むことが出来るのは、精神科医だけでなく、日々患者の診療に関わる掛かりつけ医師や地域レベルのヘルスケアワーカーも重要な役割を果たしているのです。」
 南アフリカ抑うつ神経症協会 South Africa's Depression and Anxiety Group も、この研究結果を支持し、HIV陽性者の心理的情緒的支援へのニーズは大きいと述べている。シュレブシュ教授の推定によると、南アフリカでは、毎時間、20-40人が自殺を図り、うち1人が実際に自殺で亡くなっている。

原題:SOUTH AFRICA: HIV-positive people more suicidal - study
日付:2005年5月31日
出典:IRIN Plus NEWS
URL:http://www.plusnews.org/pnprint.asp?ReportID=4870

----------------------------------------------
★ 南アフリカ:軍がHIV/AIDS対策へ前進
----------------------------------------------

 南アフリカ共和国軍の兵士は国際平和維持軍に参加する際、HIV検査を義務づけられている。これについて、南ア政府は、検査は派遣前の健康診断の一環として実施されており、陽性であれば派遣を見送ると決定した。軍隊という過酷な環境下では病気の進行が早まると考えられているからだ。しかし、この決定に批判が上がり、政府は方針の見直しを迫られている。
 南アフリカ軍医療サービス 陸軍准将 Brigadier-General ピーター=オエロフセ Pieter Oelofse は「HIVに感染した兵士が、派遣の諾否に関して、自分自身で決定できることが我々の目標である。HIV陽性者であっても、進行の状態によってはHIVに感染していない兵士よりも健康である。南ア政府の決定は、我々の倫理に対する挑戦である。」と述べた。
 南アフリカ国防軍 South Africa National Defense Force SANDFによると、兵士のHIV感染割合は23%にのぼる。SANDFは、2004年にHIV/AIDS対策を開始し、米国大統領エイズ救済緊急計画 PEPFAR からの支援を受けている。兵士とその家族を対象に、自発的カウンセリング・HIV検査(VCT)や末期患者のケアなど様々なサービスを提供している。
 SANDFの兵士のうち76%が、これらのエイズプログラムについて認識しており、半数はエイズ教育を受けている。また80%の兵士はエイズ検査を受けている。その結果、HIV感染の可能性が高い行動をとる兵士が激減した。
 昨年HIV陽性の兵士と家族に対して無料の抗レトロウイルス剤(ARVs)を6ヶ所の病院で配布を始めた。これまでに2,700名のSANDF職員と家族が、ARV無償配布のため検査を受け、771名がすでに治療を受けている。ショラニ・クリエ大佐 Colonel Xolani Currie は「ARV治療を受けられるおかげで以前の生活がもどってきた。SANDFの内部でもHIV感染者に対する態度が変化しており、HIV/AIDSを他の病気と同じように捉え始めている。」と述べた。
 情報公開が不十分で、薬物使用者が依然として多いこと、データの正確性など課題は残る。しかし、SANDFは、ARVs を提供するクリニックを65に拡大する予定である。近い将来には軍病院に研究室を設立する計画もある。

原題:SOUTH AFRICA: Military makes headway against HIV/AIDS
日付:17 June 2005
出典:IRIN Plus News
URL:http://www.irinnews.org/pnprint.asp?ReportID=4935


----------------------------------------------
★ ベナン:HIV感染比率が50%低下??
----------------------------------------------

 ベナンの最新のエイズ調査によると、HIV感染率は、以前報告された4.1%より大幅に下がり、2.0%となった。しかし専門家は、この感染率低下は、調査の手法が改善した結果であり、感染率を制御可能な範囲内に収めることに成功したということを示すものではない、と警告している。
 ベナン国家エイズプログラム the government's National Plan to Fight AIDS (PLNS)の広報官アルメイダ・メローム氏 Marie Constance d'Almeida Melome は、2002・3年に行われた7,800人の妊婦のHIV検査では、HIVの感染率は2%であり、2000年に行われた同様の調査で得られた感染率4.1%と比較可能な数字であると述べた。しかし同氏は、これは人々の行動が変わったからではなく、調査地域の数が増えたためと説明している。調査地域は都市部のみに偏った7ヶ所から、国内のすべての地域にまたがる39ヶ所に広がった。
 UNICEFのフィリップ・デュメル氏 Philippe Duamelle は、ベナンが人々の往来や公益が活発な都市的地域であることを考えると楽観視は許されないと述べた。コートジボアールの中心都市アビジャンと、ナイジェリアの中心都市であるラゴスの間に位置するベナンは、国で言えば、ナイジェリアとトーゴに挟まれ、人や貨物の流動が激しい西アフリカの中継地である。
 昨年、世界銀行は、この地域のエイズ流行拡大防止のため、プロジェクトに1,660万ドルの資金援助を承認した。世銀は、ナイジェリアからコートジボアールに向けたこの800キロの海岸道路を旅する人々は、年間300万人にのぼり、そのうち10%がHIV感染者であると見積もっている。
 このプロジェクトの目的は、トラック運転手、移民、セックスワーカーやこの交易路が通過する全5ヶ国の地元住民など、感染に対して社会的に脆弱なグループ間でのHIV/AIDSの拡大に対応することである。
 2004年のある調査では、ベナンのセックスワーカーの感染割合は50%であった。このような数字は、人々が、HIVの脅威に対して楽観視すべきでないこと、感染防止のため責任を持った行動を心がけるべきであることを示している。ベナン政府は近い将来、2004年に行われた新しいHIV感染率の調査を発表する予定である。

原題:BENIN: Experts throw doubt over HIV prevalence figures that show 50 percent drop
日付:14 June, 2005
出典:IRIN Plus News
URL: http://www.plusnews.org/AIDSReport.ASP?ReportID=4918&SelectRegion=West_Africa&SelectCountry=BENIN


----------------------------------------------
★ アフリカ エイズ治療:PEPFARによるHIV/AIDS治療対策
----------------------------------------------

 現在、PEPFARによるHIV/AIDS治療対策は、厳しい状況を呈しながつつも、切迫した需要を満たしている。しかしながら、治療の質には、疑問が残る。
先週、エチオピアの首都アディスアベバで開催された 米国大統領エイズ救済緊急計画 PEPFAR フィールドワーカー会議を受け、PEPFARによる新たな治療への取り組みが、今週からサハラ以南のアフリカ全体で実行されている。実行場所の中には、乏しい保健インフラしかない地方も含まれる。
 PEPFARが資金を提供する国のひとつであるウガンダの共同臨床研究センター長 Joint Clinical Research Center ピーター・ムギエニ氏 Peter Mugyenyi は、「ウガンダのある地域では、既存の病院が厳しい条件の下にありながら、膨大な数の患者を診察しなければならないため、ヘルスワーカーがテントを設置し、ARVを導入した」と述べた。
 関係者は、2005年6月までに20,000人にARVを導入するというPEPFARの目標はすでに達成されたと公表している。一方で、目標に向け、性急に治療が導入されたため、治療の質が置き去りなされたと述べる利用者もいる。
 米国疾病予防管理センター主任アドバイザー CDC's principal adviser クリスチャン・ピッター Christian Pitter は以下のように述べる。「ウガンダでは、50,000人がARTを受けているが、それだけでは治療の内容は判らないし、治療継続への取り組みがどんな内容なのかも判らない。問題なのはいかにして治療を継続するかということなのだ。治療を開始するだけならば何の困難もないが、人々が治療を継続しなかったら、効果がないばかりか逆に状況を悪化させてしまう。」
 アラバマ大学バーミンガム校エイズ研究センター長 Center for AIDS Research at the University of Alabama-Birmingham マイケル・サーグ氏 Michael Saag は、「ザンビアで、PEPFARで実施されているARVプログラムでの治療継続率と患者の生存割合は、アメリカ国内での成績と大差ない」と述べた。 米国世界エイズコーディネーター副代表 Deputy U.S. Global AIDS Coordinator マーク・ディブル Mark Dybul によると、治療プログラムの質維持の方法を探るため、国内のエイズ対策専門家の投入を要請しているという。

原題:PEPFAR-Funded HIV/AIDS Treatment Programs Meeting Urgent Needs in Africa Under Challenging Conditions; Quality Remains Concern
日付:2005年5月31日
出典:Kiaser network HIV/AIDS daily report
URL:http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv.cfm#30401


---------------------
●ドナー情報
---------------------

----------------------------------------------
★ 英国:インドネシアに25万ポンドの資金提供
----------------------------------------------

 英国政府は英国際開発省 DFID を通じてインドネシアHIV/AIDSパートナーシップ基金 Indonesian Partnership Fund for HIV/AIDS に25万ポンドの拠出を表明した。同基金への資金拠出はこれが初となる。この基金は、国家エイズ委員会 the National AIDS Commissionが運営しており、UNDPが資金面、UNAIDSが技術的面からの協力をしている。
 インドネシアのHIV感染率は5%未満だが、今後の感染拡大を防ぐため、早急な対策が求められている。最近、獄中者を含む注射薬物使用者、セックスワーカーやその客たち、異性装者 transvestites の間で感染率が急速に広がっているからだ。
 国家HIV/AIDS戦略(2003-2007)は、
1) 性的感染の減少
2) 薬物注射による感染の減少
3) 一般国民(特に若者)への認知の拡大
4) レベルの高い治療へのアクセス
5) 感染者の生活の質の向上に重点を置き、今後3年に渡り、国家/草の根レベルで支援をしていく。基金はその実現のために設立された。
 専門家によるとインドネシアには9-13万人のHIV感染者・エイズ患者がいる。そのうち女性の感染者・患者数が増加している。刑務所在監者の感染も深刻で、ジャカルタの刑務所収容者の感染率は1999年から上昇し始めた。その2年後には薬物注射の使用者の間で感染が広がり、2002年の感染率は25%に達した。
 DFIDは「スリー・ワンズ」(編集部注:UNAIDSのエイズ政策方針で、1つの国家フレームワーク、1つの国家調整機関、1つのモニタリング・評価枠組みを設定するというもの)を通じた資金の優先化と配分を支援する。3年後には主要な州や郡に地方エイズ委員会を設置する見通し。この動きはミレニアム開発目標(MDGs)に対するインドネシア政府の成果の現れである。

原題:The UK Government Pledges 25 million pounds for the Indonesian Partnership Fund for HIV/AIDS
日付:18 May 2005
出典:SEA-AIDS listserv
URL: http://eforums.healthdev.org/read/messages?id=5860


---------------------
●国際機関情報
---------------------

----------------------------------------------
★ 国連:UNAIDS事務局長が「MDGs達成困難」と発言
----------------------------------------------

 UNAIDS事務局長ピーター・ピオットPeter Piot 氏は、2015年までにミレニアム開発目標 Millennium Development Goals (MDGs) の一つであるHIV/AIDSの拡大阻止は実現困難であるという認識を示した。
 ピオット氏は「目標達成はまだ可能であるが、エイズのグローバリゼーション化が進んでいる」と指摘した。
 一方、国連事務総長コフィ・アナン Kofi Annan 氏は、6月に開催された「国連エイズ特別総会中間評価ハイレベル会合」で「エイズの流行拡大、全大陸で加速しており、途上国で抗レトロウイルス治療を必要としている人の12%しか治療を受けられてない。」と述べ、資金の増大とより強いリーダーシップを呼びかけた。ピオット氏はまた「HIV/AIDSの流行拡大は、アフリカでは成功の兆しを見せているが、対策に使われた800億ドルと言われる年間支出を2倍にしないとさらなる効果は期待できない」と指摘した。
 このハイレベル会合では、HIVの拡大を防ぐ新技術の開発に関して、エイズワクチンやマイクロビサイドの研究について議論された。これについては、先進国、途上国の各機関が連携して開発に取り組む必要があり、女性がマイクロビサイドなどを不自由なく使える環境を作らないと、HIV/AIDSの感染拡大防止は難しいと話し合われた。
 また、この会合自体が途上国への援助資金獲得の場になるだけでなく、途上国の負担軽減のきっかけになることに期待感が持たれた。また、国連総会議長ジーン・ピンJean Ping は、9月に行なわれる先進国首脳会議にて、MDGsの実行に関する提案をするように呼びかけた。アナン事務総長は、HIV/AIDS拡大防止は、その他の目標達成の必要条件であるとともに、それが可能になれば、人道的、健康的で平等な世界を作ることができるだろうと述べた。

原題:U.N.: Goal to Halt AIDS Spread Unrealistic
日付:June 2, 2005
出典:Aetna InteliHealth website
URL:http://www.intelihealth.com/IH/ihtIH/WSIHW000/333/8013/423246.html

---------------------
●オピニオン
---------------------

----------------------------------------------
★ 不当な国家体制と「賠償」:南アフリカの場合
----------------------------------------------

【記事解説】ジュビリー南アフリカ Jubilee South Africa は、国際金融グループであるバークレイズ Barclays が、南アフリカ共和国で90年代初頭まで施行されていた人種隔離(アパルトヘイト)体制と商取引を行ったとして、賠償金の支払いを求めている。
 本論文の著者トリスタン・テイラー Tristen Taylor は、ジュビリー南アフリカで、アパルトヘイト債務・賠償運動の担当者。アパルトヘイト時代におけるバークレイズ・グループの取引を糾弾、賠償金の支払いを訴えている。
 *なお、同氏の主張は、必ずしもジュビリー南アフリカを代表するものではない。

【南アフリカ発:ジュビリー南アフリカ】

☆力を増すグローバル企業

 現代の資本主義社会において、経済活動の中心はグローバル企業が担っている。第2次世界大戦以来、これらの企業の影響力が増す一方、労働者や市民社会、国家の力は弱まり続けている。ベルリンの壁の崩壊後、米国流の資本主義が世界を席捲し、世界中のローカルマーケットはグローバルな金融システムに飲み込まれている。
 1990年代、東欧や旧ソ連圏その他、社会主義国の市場の開放を経て、いまやグローバル企業は、経済的にも政治的な意味でそして倫理的な意味でも、一般市民や地域社会と対等な関係を結べなくなっている。企業は営利を追求し、倫理は、考慮されるどころか、多くの場合、リスク要因のひとつとして捉えられる(非倫理的な行動によって企業イメージが悪化するリスク等)。
 企業は営利の追求を意思決定の最優先基準に掲げているが、そのような主体は、他にはあまり存在しない。しかし、短中期的に、多国籍企業群なしの世界は考えられない。とするならば、今後グローバリゼーションは世界に何をもたらすだろうか。その答えは、国家の衰退である。
 私企業のほうが国家よりもコスト面で優位に立つという論理にに基づいて、これまで国家政府が担ってきた社会福祉活動の外部委託が世界中の国々で進行している。納税者は、保健や教育のために税金を払っているが、今日の国家は、その税金をサービスを請け負う私企業に支払っている。これらの請負企業が中間商人として国家を蹴飛ばす人が現れる日も遠くないだろう。
 また、国家が企業活動に不利な方針を取ると、短期的にも長期的にも、その国の経済や社会に大きな悪影響を及ぼす。そこで、このような悪影響を回避するために、貧しい国々は、より安い労働力の提供や有利な税制度を整備して、多国籍企業を誘致しようとする。これは、企業が国家に対して優越性を持った結果である。

☆不当な国家体制と賠償責任

 さて、「賠償」の考え方は非常に単純だ。加害者は、被害者に賠償金を支払う。賠償が支払われる場合は様々で、例えば宗主国の植民地支配や、奴隷制に対する賠償などがある。賠償は、経済的・政治的なものではなく、倫理的基準に基づいて行われる。人は何か悪いことをしたとき、責任をとり可能な限り状況を改善する責務がある。
 企業による賠償の問題は多様であるが、その中のひとつに、国際的にみて不当な国家体制を支援することに対する賠償が考えられる。例えば、軍事政権の独裁者が支配する国家において、石油会社が支払った採掘料によって、軍事独裁者が新たな武器を購入し、人々を抑圧したとする。この石油会社の行為は違法ではない。しかし、賠償の問題は、違法・合法という問題ではなく、倫理的な問題なのだ。歴史を通じて、あらゆる場所で非倫理的行動を合法化されてきた。アパルトヘイトがその一例である。
 企業が、不当な国家体制と取引をする裏には意図がある。企業は、それらの国家体制と取引することによって得られる利益を熟知した上で、他の選択肢があるのにも拘らず、そのような国家体制と取引しているのだ。ここに、企業が賠償する根拠がある。企業に対するこのような賠償請求は、世界中の企業に倫理性を追及する流れの一部である。世界は企業に属するのではない。私たち人間全員に、平等に開かれたものである。人類は倫理観を持ち、善悪の判断ができる。そして、企業や金融資本という概念だけが、倫理から解放されているというのだとしたら、それは現代社会における、非常に大きなまやかしであるといって過言ではない。

【編集部より】7月に英国で開催されるG8サミットが「アフリカ問題」を焦点とし、また、9月の国連ミレニアム+5サミットで途上国での国連ミレニアム開発目標達成が大きな課題になっています。市民社会でも、援助増額のキャンペーンが展開されていますが、「途上国へ支援を」のスローガンの一方で、これまでの先進国と途上国との歴史的な関係や、現在の関係のあり方の問題が覆い隠される嫌いもあります。本論考は、こうした時期において、途上国との関わりのあり方について独自の視座を与えてくれる論考であると判断して掲載しました。

原題:The Case for corporate reparations
日付:2005-05-19
出典:Pambazuka website
URL:http://www.pambazuka.org/index.php?id=28210

------------------------
■□編集後記
------------------------
梅雨を通り越して、夏本番のような天気の今日この頃ですね。
電車で、ノーネクタイの男性が増えてきたように思います。
みなさまの暑さ対策などありましたら、教えてくださいね。

------------------------
■□メールマガジンご案内
------------------------

○メールマガジン「グローバル・エイズ・アップデート」は、世界のHIV/AIDS問題の 最新動向を網羅するメールマガジンとして発行しています。

○このメールマガジンは、購読者の皆さまに逐次お送りするほか、HIV/AIDSや国際保健・医療関係のメーリングリスト、関係機関等に継続して送付いたします。ただし、メーリングリスト等への投稿は、徐々に減らす形となります。継続してお読みになりたい方は、以下の講読申込票をメールマガジン発行元(アフリカ日本協議会)までご送信下さい。また、本メールマガジンを発行している「Melma!」の以下のサイトから登録することもできます。
http://www.melma.com/mag/66/m00123266/

---------------------------------------
<講読申込票>info@ajf.gr.jpまで
---------------------------------------
○氏名
○所属(あれば)
○メールアドレス
○ご在住の市町村
○コメント
---------------------------------------

○このメールマガジンの記事は、グローバル・エイズ問題や国際保健医療に関連するホームページを定期チェックして要約・記事化する研究員によって作成されています。あなたも、研究員になって記事を作ってみませんか。研究員になりたい方は、以下の研究員申込票に所定の事項をご記入の上、メールマガジン発行元(アフリカ日本協議会)までご送信下さい。研究員のお仕事の詳細を別途、ご連絡いたします。

-----------------------------------------
<研究員申込票>info@ajf.gr.jpまで
-----------------------------------------
○氏名
○所属(あれば)
○メールアドレス
○ご在住の市町村
○コメント
-----------------------------------------


UP:20050630
アフリカ日本協議会
TOP HOME (http://www.arsvi.com)