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『グローバル・エイズ・アップデイト』創刊第2号

アフリカ日本協議会



■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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 創刊第2号 2004年10月21日
  Vol.1-No.2 October 21, 2004

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
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はじめに:発行趣旨
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○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報が伝わっておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝えるメディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、ほぼ隔週刊で発行いたします。

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■「創刊第2号」目次
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(1)米国大統領選挙迫る!米国のHIV/AIDS政策関係ニュース
(2)国際会議に関するニュース
(3)アフリカとエイズ治療薬に関するニュース
(4)その他HIV/AIDS関係ニュース

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(1)米国大統領選挙迫る!
 米国のHIV/AIDS政策関係ニュース
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★副大統領チェイニーと同候補エドワーズ、広がる米国黒人女性のエイズ対策について討論
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 米国内外におけるHIV/AIDS政策は、同国大統領選挙においても大きな焦点となっている。
 10月5日にHIV/AIDSをはじめとする保健政策の討論会が行われ、米副大統領ディック・チェイニー Dick Cheney と民主党副大統領指名候補者ジョン・エドワーズ上院議員 Sen. John Edwardsが参加した。その中で「米国において、25歳から44歳の黒人女性は、白人の同年齢層に比べ、13倍も多くエイズで亡くなっているが、そのために政府はどんな対策をとるべきか」との質問に、チェイニー氏は「その事実は知らなかったが、エイズ教育と国民の意識向上、研究や薬品の進歩により、米国の新規HIV感染率は改善された」と答えた。一方、エドワーズ上院議員は「もし予防措置や必要な治療を受けなければ、エイズの進行だけでなく、他の命に関わる病をも引き起こしかねず、HIV感染予防は、将来的にも国全体の大きな医療問題の一つだ」と応酬した。
 チェイニー副大統領は「ブッシュ大統領は、国際的なHIV/AIDS問題に非常に高い関心を持っており、エイズの流行が労働人口の減少を引き起こし、経済が停滞している地域があることを憂慮している。そのため、これらの地域へ150億ドルを支援する、大統領エイズ救済緊急計画 PEPFARを打ち立てた。」と述べた。これに対し、エドワーズ氏は、彼と民主党大統領指名候補ジョン・ケリー上院議員 Sen. John Kerry は、PEPFARの2倍にあたる300億ドルの支援を計画しているとし、PRPFARの初年度予算は不充分だと批判した。

原文表題: VP Candidates Cheney, Edwards Move Debate to
Foreign AIDS Policy When Asked About HIV Prevalence Among
Black U.S. Women
日付: 2004 10月6日
出典: Kiaser Network Daily Report
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_hiv.cfm#26098

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★米国ブッシュ政権、「禁欲」プログラムに新たに1億ドルを拠出
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 米国ブッシュ政権は、世界のエイズ対策に150億ドルを投入する「米国大統領エイズ救済緊急計画」(PEPFAR: President's Emergency Plan for AIDS Relief)の一環として、「禁欲」abstinence に焦点を当てるプログラムに新しく1億ドルを拠出することを表明した。この拠出金は、PEPFARの15の対象国において使用され、宗教系団体・コミュニティを基礎とする団体によって活用される。
 「禁欲」に焦点を当てるプログラムを展開する理由は以下の通りである。
HIV/AIDS感染が拡大する地域では、婚姻年齢も早く、性行為自体も早い段階から行われ始める。こうした地域では、感染者の半数が15歳から24歳の年齢層に分布している。婚前交渉を持たないよう促すことは、この年齢層における感染を防ぐ上で重要である。また、性行為の開始を1年でも遅らせることは、若年層のHIV感染の可能性をそれだけ減少させることにつながる。
 こうした趣旨に基づき、若年層の「禁欲」と「健全な選択」によるHIV/AIDS予防を掲げる緊急対策プログラムは、以下のような活動をサポートする。

・とくに低年齢者と少女を対象とした、技能を中心としたHIV教育
・コミュニティー内における、健康的基準の促進
・両親や若者への影響力の強い保護者の役割強化
・若者の強制された性行為や性的暴力、性的搾取への対処

である。この資金拠出を受けるのは、アドラ・インターナショナル ADRA International、カトリック救済サービス Catholic Relief Services、ワールド・ビジョンなど11団体である。

原文表題:$100 Million in Abstinence-Focused Grants for HIV/AIDS Prevention Awarded Under President Bush's Emergency Plan for AIDS Relief
日付:2004年10月5日
出典:アメリカ合州国国際開発庁(USAID)
URL:http://www.usaid.gov/press/releases/2004/pr041005.html


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★治療薬へのアクセスを阻害しない貿易協定を−国連子供の権利に関する委員会がボツワナに警告
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 国連子供の権利に関する委員会(CRC)the UN Committee on the Rights of the Child は、ボツワナに対し、現在米国との間で協議中の貿易協定が、HIV/AIDS治療薬を必要とする子供たちの権利を阻害することのないよう、強く勧告した。
 ボツワナが加盟している南部アフリカ関税同盟(SACU the Southern Africa Customs Union 加盟国はボツワナ、レソト、ナミビア、南アフリカ、スワジランド)は、現在米国との間で自由貿易協定 Free Trade Agreementの交渉中である。しかし厳しい知的所有権規定Intellectual property (IP) rulesと保健医療サービスの自由化を米国が要求し、交渉は暗礁に乗り上げている。CRCはボツワナの子供の権利状況について調査する中で、新たな貿易協定の厳格な知的所有権の規定が、子供たちの健康と権利、特にHIV/AIDS治療薬へのアクセスを阻害する恐れがあると指摘している。
 同様の対米貿易協定交渉は、南米のアンデス諸国、タイ、パナマでも進行中である。こうした貿易協定が、適切な価格の薬、保健医療サービス、そして何よりもHIV/AIDS治療へのアクセスに悪影響を及ぼすことのないよう、CRCのボツワナに対する勧告をてこに、世界に訴えていく必要があるのではないか。

原文表題:BOTSWANA: Access to Affordable Drugs: Victims of HIV/AIDS Should Not Suffer From Trade Rules
日付:October 4, 2004
出典:Pambazuka News
URL: http://www.pambazuka.org/index.php?id=24991

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★最貧国のIMF・世銀への債務、帳消しに至らず
IMF・世銀年次総会・G7蔵相会議
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 11月1〜3日に開催されたIMF・世銀年次総会およびG7蔵相会議では、イラク債務問題と絡めて最貧国のIMF・世銀への債務の帳消しが討議される予定だった。しかし、実際の会議では、最貧国に対する債務軽減に関する合意は得られなかった。
 債務削減に熱心だったのは米国および英国政府だった。とくに英国政府は最貧国が世銀やアフリカ開発銀行に対して負っている債務の返済を免除すべきとの提案をし、他国にも同様に債権放棄をするよう求めた。また、英国政府は、IMFが保有している金を再評価することによって資金を調達して債務軽減の支払いにあてることを提案した。しかし、他国は英国の呼びかけに慎重な姿勢を示し、会議では合意に至らなかった。
 IMF・世銀年次総会・G7蔵相会議で貧困国の債務帳消しに関する合意が得られなかったことに関して、最貧国の債務帳消しを求める市民社会組織であるジュビリー・USAは、強い遺憾の意を表した。同団体は、債務帳消しが実現しなかったことは貧困国で暮らす人々の生活にまで深刻な影響が及ぶと批判している。ジュビリー・USAは、G7が債務帳消しに対応できず、G7各国の意見が対立して、どのように最貧国の債務をカバーするかに関する交渉が泥沼化しているのは非常に恥ずべきことである、と指摘し、「債務危機がどれほど人間生活に影響を及ぼすかを考慮し、事態改善のために一刻も早い行動を起こしてほしい」と求めた。
 
原文表題: IMF failing to agree on debt plan
日付: Sunday, 3 October, 2004
出典: BBC website
URL: http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/3711078.stm

原文表題: G7 Ministers Fail to Take Action on Poor Country Debt Cancellation
日付: Sunday, 3 October, 2004
出典: Jubilee USA Website
URL:
http://www.jubileeusa.org/jubilee.cgi?path=/press_room&page=october1_failure.html

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★(論説紹介)米国の政策と女性の健康と権利−次の10年への戦略
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※米国ブッシュ政権は、94年の国連人口開発会議で採択されたリプロダクティブ・ヘルス/ライツの路線に反対する立場に固執してきた。これに関わる論説を紹介する。(Women's Health, Women's Rights and US Global Policy, Jodi L. Jacobson)

 1994年、国際人口・開発会議(カイロ会議) International Conference on Population and Development (ICPD) が開かれ、家族計画やHIV/AIDS予防への資金拡大、安全でない妊娠中絶や出産時死亡率の低減、性・結婚・子育てに関する女性の権利の実現、暴力・抑圧・差別からの自由などを求める行動計画が採択された。当時、米国はこの行動計画の実行に積極的に取り組み、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖における健康)において世界で主導的役割を果たしていた。
 だが10年後の今、ブッシュ大統領が率いる米国は、家族計画への資金を減らし、妊娠中絶に関わる活動をする団体への資金供与を拒否するなど、全く逆の方向で主導的役割を果たしている。これは極右勢力 the far right のキャンペーン戦略の勝利ともいえる。90年代半ば以降、米国の極右勢力がリプロダクティブ・ヘルスの権利を後退させることに成功したのは、自分たちのビジョンを、わかりやすく支持しやすい形にして広く大衆に示すことに成功したからである。
 これからの10年、カイロ会議の行動計画を生き返らせ、リプロダクティブ・ヘルスの権利を確立するには、ただ時流が変わるのを待っているわけにはいかない。極右勢力のやり方を逆手にとるのだ。明確かつ大胆で議論に耐えうるビジョンを持ち、エイズ問題に取り組む国内外の市民社会、非白人女性、移民など多様な層に支持を広げ、共通の目標を持って協働していくべきだ。また、極右勢力が流す誤った情報にはすばやく効果的に反論する必要がある。そのためには、充分な数の議員を味方につけ、様々な市民や団体を、共通の目標に向けて幅広く巻き込んでいくべきだ。

原文表題:Women's Health, Women's Rights and US Global Policy, Jodi L. Jacobson
日付:September 15, 2004
出典:Center for American Progress
URL:http://www.americanprogress.org/site/pp.asp?c=biJRJ8OVF&b=187151

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(2)国際会議に関するニュース
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★第11回PLWHA(HIV感染者・AIDS患者)国際会議の報告書まとまる
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 第11回世界HIV感染者/エイズ患者 People Living with HIV/AIDS(PLWHA)国際会議に関する報告書が、先日まとまった。この会議は、世界PLWHAネットワークThe Global Network of People Living with HIV/AIDS(GNP+)が、2003年10月26日から30日にウガンダの首都カンパラで開催された。「新たな感染者リーダーシップ」と題された本会議は、アフリカ人HIV感染者の国際会議としては過去最大の規模であった(80ヶ国以上、300以上の組織から関係者が参加)。この報告書は、以下のウェブサイトから入手できる。
http://www.gnpplus.net/conferences.html
 2005年11月には、ペルーのリマで、HIV感染者/エイズ患者の第12回国際会議 the twelfth International Conference for People Living with HIV/AIDSと、第7回・PLWHAと家族・コミュニティケア国際会議 the seventh International Conference on Home and Community Care for People Living with HIV/AIDSの開催が予定されている。これは、HIV感染者/エイズ患者の権利拡大、ケアとサポートに全力を尽そう、という趣旨のもとに、「Living with HIV Partnership」という、GNP+、女性PLWHA国際コミュニティー ICW: the International Community of Women Living with HIV/AIDS、国際エイズ・サービス組織評議会 ICASO: the International Council of AIDS Service Organisations、国際赤十字社・赤新月社 IFRC: the International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies、国連エイズ計画 UNAIDSおよび世界保健機関から構成されたグループが主催する。アンデス地方で国際エイズ会議が開催されるのは今回が初めて。

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★アフリカの聴覚障害をもつ女性HIV感染者/AIDS患者国際会議、ワシントンで来年6月開催
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 「アフリカの聴覚障害を持つHIV感染者・AIDS患者国際会議」International Conference on Deaf Women and HIV/AIDS in Africa が、2005年6月10日から12日まで、米国ワシントンDCにあるギャローデット大学ケロッグセンターで開催される。ギャローデット大学 Gallaudet Universityとハワード大学Howard Universityがこの会議を講演する。各大学は後援を来年2月11日までに承諾する予定だ。
HIV/AIDSと闘うすべてのアフリカ人グループに対する認識を高めることを目的とした本会議は、特に聴覚障害を持つ女性のHIV感染者・AIDS患者との相互理解の推進に焦点をあてている。参加者は聴覚障害者団体、米国その他諸国の学術団体をはじめ、政府、非政府組織そして公的および民間保健組織の代表者を含む。各参加者は自国で政府や非政府組織などと共に聴覚障害のエイズ女性患者のケアのために活動することが期待されている。

原文表題: International Conference on Deaf Women and HIV/AIDS in Africa
日付: Fri, 24 September 2004
出典: Kaiser network Daily HIV/AIDS report
URL: http://www.afronets.org/archive/200409/msg00102.php

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(3)アフリカとエイズ治療薬に関するニュース
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★ケニアのジェネリック製薬企業、
 ARV(抗レトロウイルス薬)製造に踏み切る
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 ケニアの企業であるコスモス社 Cosmos Ltd. が、特許を所有するイギリスの巨大製薬会社、グラクソ・スミスクライン(GSK)から認可を受け、3種類の重要なジェネリック薬品の製造を始めた。このことにより、ケニアの200万人近いHIV感染者が、命を救う薬を安価に手に入れることができる可能性がでてきた。
 コスモス社はラミブジン、ジドブジンおよびこの2種類の薬の混合薬であるコンビビルの計3種類のジェネリック薬品の製造を開始する。
 GSKはその3種の薬品の特許を所得し、ケニアでの製造と販売の全ての権利を所有しており、ローカルレベルで使用される薬の商標に関し2企業が合意に達し次第、製造が開始するものと思われる。
 薬の現地製造は、薬のラベルの投薬量などの説明が、英語とスワヒリ語の両方で表記され、服薬方法を改善できるという利点がある。そして、HIV感染者により重要なのは、ジェネリック抗レトロウイルス薬の現地製造により、医療費の負担が減少することである。輸入した抗レトロウイルス薬に依存するという現在のシステムは、外国為替変動や輸送の混乱などの煽りを受けやすい。
現地製造により、命を救う薬が工場から患者へ、より確実に流れていくことに、多くの人が期待をかけている。

原文表題:Kenyan Firm Cleared to Make HIV Drugs
日付:September 22, 2004
出典:Allafrica.Com, The Nation
URL: http://allafrica.com/stories/200409220244.htm

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★ザンビア政府、外資製薬企業にARV製造に関し強制実施権を付与。
来年始めにも製造開始。
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 9月22日、ザンビアのディパク・パテル Dipak Patel 通産相は、イタリアの製薬企業ファルコ PHARCO に、抗レトロウイルス薬の三剤混合薬であるノルマビル Normavir 30 および Normavir 40製造に関する強制実施権を付与したと発表した。ザンビアの国内市場で供給されていないラミブジン、スタブジン、ネビラピンの多剤混合薬であるノルマビル製造計画はファルコから提出されていた。
 付与された強制実施権に基づき、製造された多剤混合薬はザンビア国内でのみ販売され、製造者のファルコは、毎会計年度ごとに総販売額の2.5%を超えない額を特許権使用料として支払うことになる。ファルコは来年始めにも製造を開始する。
 通産相によると、特許法第41条の規定により、現在のエイズ危機がもたらした国家非常事態が収まり次第、compulsory licenseは無効となる。また、通産省官房デヴィッドソン・チリパムシ Davidson Chilipamushi書記官は、2009年まで強制実施権が継続されることを示唆した。
 ファルコのジョヴァンニ・レオナルヂ Giovanni Leonardi 支社長は、3ヶ月間、調査研究を行って製造を開始すると語った。ザンビアは、アフリカの中でも最もエイズの影響を受けている国の一つで、90万人以上がHIVに感染している。エイズ発症者の数は、調査されていない。2003年末までのエイズによる死亡者は 83万人を超え、おおよそ75万人の子どもたちが後に残されている。

原文表題:Pharco Granted License to Make ARVs
日付:September 23, 2004
出典:Allafrica.com (The Times of Zambia Ndora)
URL:http://allafrica.com/stories/200409230415.html

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(4)その他HIV/AIDS関係ニュース
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★カトリックの国際援助団体がコンドームの使用を容認する立場を表明
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 カトリックの国際援助団体「カトリック海外開発機関」CAFOD: Cathoric Agency for Overseas Development は、発展途上国のHIV感染リスクの高い人々にカウンセリングをする際、ヴァチカンが提唱しているコンドームの不使用 prohibition on the use of condoms を、推奨していないことを認めた。
 カトリックの雑誌タブレットThe Tablet に掲載された、CAFODのアン・スミス氏 Ann Smith は、禁欲がHIV感染防止の唯一の予防策、という教会の考え方は、非現実的だというのが団体の見解である。エイズの感染拡大防止がうまくいかなければ、保健政策に携わる人々は、限られたリソースを治療やケアに振り向けることになる。これは経済的な側面だけに限らず、大きなコストを伴う。コンドームは、エイズの最も一般的な予防方法の一つであり、セックス・ワーカーなど感染リスクの高い人々の間で有効だ、と述べている。
 さらに、アフリカやアジアの社会において、売春はしばしば生存のために必要な唯一の糧であり、人々が自らの意思で性行為をしているという考え方は誤りである、と指摘している。また、(禁欲や貞操をしたところで)HIVに感染した女性の多くは、夫やパートナーから、感染しているという事実もある。
 CAFODは、自身が教会の教えに反して、実際にコンドームの使用を指導したりしているわけではないことを強調しているものの、ヴァチカンの公式見解から明確に距離を置いている。ヴァチカンは、コンドームの使用は、それが感染を防ぐためであっても絶対に認められず、そもそもコンドームの感染予防効果自体が疑わしいと、主張してきた。
 CAFODの事務局長クリス・ベイン氏 Chris Bain は、"我々は、常に禁欲及び貞節が主な予防策であるというスタンスをとってきた。コンドームの使用は感染リスクを低減するという科学的な根拠があり、人々は事実を告げられるべきである。"と述べている。

原文表題:Catholic aid agency advocates condoms
日付:September 24, 2004
出典:The Guardian
URL:http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,1311614,00.html

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★中国:HIV感染範囲特定の全国的調査ヘ
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 中華人民共和国の保健省広報官マオ・クナン氏Mao Qunanによれば、同国はHIV感染の地域範囲を特定するために1990年代の売血者の全国調査を計画しているという。90年代初めから半ばに集められた、安全確認を怠った安全でない血液の収集が、中国の地方農民たちの間でのHIV感染を助長してしまった事実に基づいている。中国のいくつかの村では20%の住民がHIVに感染しているという。
 政府は今年7月、HIV陽性者数調査のため、河南省の18都市、35郡で100万人以上を対象とした調査を始めた。現在84万人がHIV陽性で8万人がエイズを発病していると予測している。しかしながら、国連は、中国政府がきちんとした対応をしていなかった場合、少なくとも100万人以上が中国全土で感染していると見込んでいる。マオ氏は「中国のHIV感染状況は深刻であり、1995年前後の売血行為がそれを助長してしまった」と話している。中国政府は8月に売血禁止法を成立させている。

原文表題: China To Launch Nationwide Survey of People Who Sold Their Blood To Determine Extent of HIV/AIDS Epidemic
日付:  Oct 14, 2004
出典: Kaiser network Daily HIV/AIDS report
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?hint=1&DR_ID=26229

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★コートジボワール:AIDS予防対策が反乱軍占領都市で崩壊
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 現在コートジボワール西部の町マンは新たな侵略者、エイズに立ち向かっている。正確な感染者数は不明だが、かなり高い感染率だろうといわれている。マンはコートジボワールの中心都市アビジャンから550km北西に位置し、新反乱軍運動 the New Forces rebel movementの本拠地でもある。新反乱軍は、2002年クーデターの失敗以来国土の北部半分を占領しており、その占領地ではHIV/AIDSは全く気にかけられていない。エイズキャンペーンは中止され、新たな活動を開始することもできない。わずかなデータは深刻な傾向を示している。例えば、エイズ感染率の指標の一つである妊娠が12〜19歳の少女の間で非常に多い。通常、一つの高校では2,3人の妊婦がいるのみだが、80人もの少女が妊娠している例があった。
 国際NGOのCAREは100万ドルの予算でコンドームの配布と知識向上プログラムを始めた。しかしマンを含め反乱軍の占領している地域では経済が反乱軍に管理され、人々の生活は厳しい状態にある。それゆえ、少女たちにとってお金を持つ兵士は魅力的であり、コンドーム使用やエイズには関心がない。
 2003年5月に反乱軍が一掃作戦を展開した後、フランス平和維持軍と国連軍のバングラデシュ部隊がパトロールとして派遣されたが、ある少女はフランス軍兵士に性交渉を撮影され、そのテープが町で売られているという。フランス平和維持軍のスポークスマンは噂にすぎないと否定するが、マンでフランス軍が不品行を行ったことは明らかである。本来
警護すべき町で12人のフランス兵が銀行強盗の容疑で逮捕され、現在本国で裁判を受けている。
 国境なき医師団(MSF)は紛争開始以来マンで病院を維持しており、輸血の際にHIVテストを実施しているが、治験者の感染率は14%にのぼる。治療は無料だが、エイズ検査は実施していない。マンでの活動期間は未定のため、抗レトロウイルス剤を使っての治療は医師の長期の観察が必要である以上、人々にHIV陽性と知らせても治療を行わないのは倫理に反するからだ。マンでの長期滞在が可能になればテストと治療を開始する予定である。その際最も重要なのは感染率を知ることだと、MSFプログラム代表のイブス・リチャード氏は Yves Richard語っている。

原文表題: COTE D IVOIRE: AIDS prevention measures collapse in rebel-held city
日付:2004/10/7
出典: IRINPLUS 
URL: http://www.irinnews.org/pnprint.asp?ReportID=3972

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★シェラ・レオネのレズビアン活動家が暗殺される
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 9月29日、西アフリカの国シェラ・レオネで活発に活動を行っていた同性愛者の活動家、ファニャン・エディ氏Fannyann Eddy が、「シェラ・レオネ・レスビアン・ゲイ協会」 SLLAGA Sierra Leone Lesbian and Gay Association のオフィスで殺害されているのが発見された。殺害の残忍の手口から、事件は同性愛嫌悪 homophobia に基づく憎悪犯罪 hate crimeであると推測されている。多くの活動家や、国際人権組織、援助機関が、この訃報に接してエディ氏への追悼の意を述べている。
世界銀行アフリカ地域上級アドバイザー the senior advisor on the Africa regionであるハンス・ビンスワンガー氏 Hans Binswanger による報告によると、シェラ・レオネの勇気あるレズビアンの活動家で、SLLAGAの創立者でもあったエディ氏は、先週水曜日(9月29日)の夜から木曜日(30日)の朝にかけて残酷に殺害されたという。犯人がSLLAGAのオフィスに侵入した際、エディ氏以外には誰もオフィスにはいなかった。犯人はエディ氏を強姦し、頭部を鋭利な刃物で刺したうえ、彼女の首の骨を折ったと報告されている。この残忍な事件に接し、シェラ・レオネのレスビアン・ゲイ・コミュニティは深い衝撃を受け、身をこわばらせている。
エディ氏は、ジンバブウェのレズビアン・ゲイの団体である「ジンバブウェのゲイとレズビアン」GALZ: Gays and Lesbians in Zimbabwe で同性愛者の社会運動の方法を学び、シェラ・レオネの同性愛者、バイセクシュアル、トランスジェンダーの組織化に多大な貢献をなし、シェラ・レオネにおける同性愛者の市民権獲得のために積極的に活動していた。

原文表題:Activist Murdered
日付:2004年10月4日
出典:Behind the Mask
URL:http://www.mask.org.za/sections/AfricaPerCountry/ABC/sierra%20leone/sierra%20leone_6.htm

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★南アフリカ共和国:都市へと移住してきた女性は、HIV感染に高いリスク
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 南アフリカ共和国の都市で仕事を求めるため移住してきた女性は、その男性よりもHIV感染可能性が高いことが、新たな研究でわかった。英国国際開発省 DFIDの報告書によると移住女性のHIVの感染率が46%、それ以外の女性では35%であった。
 今回、ヨハネスバーグ南西50kmの小さな炭鉱町カールトニビルCarltonvilleにおいて843人の女性を対象にしたHIV感染要因を特定するための調査が実施された。結果は既婚、未婚にかかわらず移住女性はHIV感染率が高かった。これは移住女性が不特定多数の男性と性交渉を行っていることを示している。
報告書の著者の一人、カンゲラニ・ズマ氏Kangelani Zumaはこう述べている。「彼女たちは、都市に着いた直後は、金も住む場所もない。生きていくために複数のパートナーとの性交渉を強いられている。ほとんどの移住女性は無力であり、安全な性交渉を男性に頼むことは不可能であるため、コンドームの使用率も低い。」
 報告書によると、HIV感染への危険性は年齢、既婚・未婚やアルコールの摂取によっても左右される。未婚や35歳以上の女性は性交渉に消極的とみなされ、35歳以下の既婚女性が最もリスクが高い。アルコールの摂取自体は危険要因ではないが、摂取の影響下での性的行動が危険性を伴う。
 移住女性間のHIVと性感染症の広がりは緊急に措置を要すべきであり、原因となる社会的や経済的要因に取り組まなくてはならないと報告書は述べている。移住女性の性感染症治療、コンドーム使用のための教育やエンパワーメント促進プログラムが必要不可欠である。そして、移住女性は本来家族を持った世帯用の再定住地域 resettlement areasに住むことを推奨している。「移住男性が家族を都市に連れてくるための場所を提供する取組みは増えてきている。同様に、家を離れて、仕事を探す女性たちにも家族で住む場所を保証すべきである」とズマ氏は語る。

原文表題:South Africa: Migrant women at much higher risk of HIV/AIDS -new report
日付:September 14, 2004
出典:IRIN News
URL: http://www.irinnews.org/pnprint.asp?ReportID=3880

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