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『グローバル・エイズ・アップデイト』創刊準備1号

アフリカ日本協議会



Date: Wed, 07 Jul 2004 12:43:30 +0900
From: ajf
Subject: [viva_hiv_aids] グローバル・エイズ・アップデイト 創刊準備1号

皆さま こんにちは。

 アフリカ日本協議会では、2001年に「感染症研究会」を発足させて以降3年ほど、グローバルなHIV/AIDS問題に関する情報提供やアドボカシーの事業を展開してきました。

 HIV/AIDSは地球規模の問題であり、日本においても、地球規模のHIV/AIDS問題に関する情報がより多く提供される必要があります。しかし、これらの問題のニュースソースはほとんどが英語であり、日本語で情報を得ることができるメディアはほとんどありませんでした。

 そこで、当会としては、9月の下旬を目処に、隔週刊でグローバル・エイズ問題の最新動向を伝えるメールマガジン「グローバル・エイズ・アップデイト」を創刊することにしました。創刊までに「創刊準備号」を2号出していくことにしています。本日、以下のように「創刊準備1号」を発行します。

 HIV/AIDS問題に関するメーリングリスト等には、今後も流していきたいと思いますが、継続的に講読されたい方、ぜひとも、末尾にある講読申込票を使って申し込んでいただければ幸いです。また、このメールマガジンは、現在、6名の研究員と2名の編集インターンがボランティアとして働くということでできています。記事の作成や編集などのご協力もいつでも受けつけておりますので、ぜひともお申し込みいただければ幸いです。

 では、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

アフリカ日本協議会
担当 稲場 雅紀

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■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

グローバル・エイズ・アップデイト
GLOBAL AIDS UPDATE
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 創刊準備1号 2004年7月6日
  Vol.0-No.1 July 6, 2004

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
・電 話:03-3834-6902
・FAX:03-3834-6903
・電子メール:ajf@mtb.biglobe.ne.jp

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◆グローバル・エイズ問題の最新情報を日本へ
〜「グローバル・エイズ・アップデイト」発行趣旨〜
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・HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。成人人口の2〜3割が感染し、国家や地域社会の存立自体が脅かされている南部アフリカ。今後、感染の大規模な拡大が予想される南・東南アジアや中国、旧ソ連圏。HIV/AIDSへの取り組みは急を要しています。

・しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報などは、十分に伝わっておらず、公共・民間・市民社会セクターそれぞれにおいて、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。

・このメールマガジンは、世界の市民社会のHIV/AIDSへの取り組みの最新動向をはじめ、主要国や国際機関等の政策動向、HIV/AIDSをめぐる個別課題の動きなど、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝えるメディアが必要だという認識から生まれました。HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、ほぼ隔週刊で発行いたします。

・本メールマガジンが、日本におけるグローバル・エイズ問題への取り組みを促進することに少しでも貢献すれば幸いです。

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■「創刊準備1号」目次
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・グローバル・エイズ・ポリシー(記事2つ)
・グローバル・エイズ・アドボカシー(記事1つ)
・アジアのエイズ(記事1つ)
・アフリカのエイズ(記事5つ)
・女性とエイズ(記事1つ)
・エイズと栄養(記事1つ)
・ご案内

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■グローバル・エイズ・ポリシー
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★WHOの3by5キャンペーンに60億ドルが必要との試算

 2005年までに300万人へ抗レトロウィルス薬(ARV)治療の供与を目指すWHOの「3by5キャンペーン」の達成には、約60億ドルが必要となるという試算が、2004年7月3日発行の「ランセット」誌HIV/AIDS特集号で発表された。(訳者注:これまでのWHOの試算では、55億ドルとされていた)。
 この試算は、メキシコの国立公衆衛生研究所 National Institute of PubliceHealth のフォアン・パブロ・グティエレス氏 Juan Pablo Gutierrez とWHOのベンジャミン・ジョンズ博士 Dr. Benjamin Johns によるもので、ARV治療を必要とする発展途上国在住の感染者のうち9割が暮らす、34ヶ国を対象に調査した。抗レトロウィルス薬、サポート・プログラム、治療モニタリング、管理費のコストを計算し、国別に患者一人当たりのコストを割り出し、総計を出したものである。抗レトロウィルス薬のコストと、薬の普及拡大の速度を変数として考慮している。
 なおUNAIDSは、2005年までに発展途上国全体のHIV/AIDS対策に107億ドルが必要となり、さらに2007年までには149億ドルに達するだろうと報告している。

News Title: Nearly $6B Needed To Reach WHO Goal of Treating Three Million People by 2005, WHO Official Says
News dated: July 2, 2004
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?DR_ID=24530

★2003年の1年間に全世界で500万人が新たに感染
〜UNAIDS最新報告書より〜

 2003年の1年間に、世界で500万人が新たにHIV感染し、感染者の総数は3800万人に達した。エイズによる死者は2003年の1年間で約300万人で、1981年に最初のエイズ患者が発生して以来2000万人が死亡したことになる。
 アジアではこの1年で110万人が新たにHIV感染し、現在740万人の感染者がいる。特に中国、インドネシア、ベトナムで急速に感染が拡大している。全世界の人口の6割がアジア地域に集中していることを考えると、この感染拡大の意味するところは大きい。アジアでは注射薬物使用者、男性同性愛者、セックス・ワーカーなどに感染が集中する傾向がなおも見られるが、偏見と差別意識のために効果的な対応がなされていない。インドの感染者は510万人で、一国の感染者数としては南アフリカ共和国に次ぐ規模だが、HIV/AIDSに関する知識の普及は不十分であり、男性同性愛者から女性への感染拡大も懸念されている。
 南部アフリカの感染者数は2500万人に達する。感染率は一見頭打ちのように見えるが、これはエイズによる死者と新たな感染者の双方が増加しているためである。2003年には、300万人が新たに感染し、220万人が死亡している。これは昨年の全世界のエイズ死者数の75%を占める。アフリカでのHIV感染のレベルや傾向には地域差がある。感染率2%以下の国が6カ国ある一方、20%以上の国も6カ国ある。南部アフリカでは地域全7カ国が17%を超える感染率であり、中でもボツワナとスワジランドは35%以上である。西アフリカではすべての国が感染率10%以下となっている。
 アフリカでは特に女性の感染リスクが高く、男性よりも低い年齢で感染している。若い世代の感染者の男女比率をみると、南アフリカ共和国では男性10人に対し女性は20人、ケニアでは男性10人に対し女性45人となっている。

Source: UNAIDS, 2004 Report on the Global AIDS Epidemic - Executive
Summary - Overview
報告書のフルテキスト:http://www.unaids.org/bangkok2004/report.html

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■グローバル・エイズ・アドボカシー
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★南アフリカのAIDS活動家ら、米国のブッシュ政権のAIDS政策に抗議

 今週の木曜日、南アフリカ共和国と米国のエイズ活動家は、ブッシュ政権がAIDS/HIVと取り組むためにさらなる努力をするべきであるとして抗議行動を行った。
 ジョハネスバーグで約500人、ケープタウンで約350人の支援者が各市の米国領事館前で抗議を行った。米国の活動家はニューヨーク市のメトロポリタン共和党クラブ Metropolitan Republican Club とブッシュ大統領の再選運動の本部、ペンシルベニア州ハリスバーグ Harrisburg・ニューハンプシャー州マンチェスター manchester・ミシガン州サウスフィールド Southfield で抗議活動をした。 活動家によれば、ブッシュ大統領はアフリカやカリブ地域のAIDS問題に数十億ドルを拠出すると明言したが、現在までに3億5000万ドルしか拠出されていない。そしてブッシュ大統領は性行動への禁欲 abstinence のみを重視する性教育を支援していると非難した。 米国のエイズ・アドボカシー団体ヘルス・ギャップ Health GAPのローリー・ウェン氏 Laurie Wen は「禁欲だけでは十分ではない」と主張する。「それは肺がんに関しては何もする必要はありません、タバコを止めればいいのです、といっているようなものだ」と述べた。
 南アフリカ・ジョハネスバーグの活動家たちは、ブッシュ大統領の計画ではコンドーム・性と生殖に関する健康管理 reploductive health care・ジェネリック薬へのアクセスの促進が不適切であり、それがAIDS問題を台無しにしていると主張している。南アフリカのエイズ活動家の組織「治療行動キャンペーン」 Treatment Action Campaign の事務局長であるマーク・ヘイウッド Mark Heywood 氏は「イラクでの不法な戦争により世界の注目や援助が国際保健や貧困から遠のいている。」と言った。
 これに対して米国政府の報道官ケン・ルイス氏 Ken Luis は「『大統領AIDS救済緊急計画(PEPFAR)』は世界で最もAIDSに侵されている国々を援助するものであり、その計画は患者・感染者の延命、救命に大きく貢献しているのだ。」と反論している。

News Title: AIDS Advocates in South Africa, United States Protest Bush Administration's AIDS Policies
URL: http://www.kaisernetwork.org/daily_reports/rep_index.cfm?hint=1&DR_ID=24409
News Dated: June 25, 2004
Source: Kaisernetwork

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■アジアのエイズ
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★一夫一婦制にある女性たちが、新たなAIDSの犠牲者に
〜国連の警鐘〜
ミッシェル・マース Michael Mathes フランス−プレス局

 国連およびヘルスワーカーが語ったところによると、アジアの若い既婚女性たちは、夫以外の相手と性行為を持っていない人も多いのに、新たなAIDS患者グループとして、急激にその数を増してきているという。パートナーが不特定多数の人間と性交渉をもつことで、かつては感染の危険率が低いとされていたグループが感染し、警告されるほどの感染率増加を示しているのである。
 タイを含むアジア文化の中には、男性の不倫は当たり前のことと考える向きがある一方、女性は避妊についての知識も充分でなく、男性支配の社会において、パートナーにコンドームの使用を要求することもできないでいる。
 ルチータ・ラゾ Lucita Lazo・国連女性基金東・東南アジア地域プログラムディレクター the UN Women's Fund(UNIFEM) regional programme director for East and Southeast Asia は、「かつてはいわゆる『ハイリスク』の人々の間で広がっていた病気が、今やいわゆる『ローリスク』とされていた人々、つまり一般の一夫一婦制の関係にまで危険を及ぼしている」と述べ、一般家庭にもエイズが広がっている状況に警鐘を鳴らした。
 昨年、国連はHIV感染者数の驚くべき男女差を報告した。世界的規模で見た場合、15−24歳の若い女性約730万人がHIVポジティブであったのに対し、男性の同グループは約450万人であった。タイでは、男性のHIV有病率は高く見積もっても1.33%だが、女性の方は2.0%である。ラゾは「家長制の文化、沈黙の文化、といった文化的タブーを今より系統的に知らしめなければならない。」と言い、性差による力関係の不均衡が、大きな障害になっていることを指摘した。
 女性のためのシェルターを運営している「女性の地位向上協会」 the Association for the Promotion of the Status of Women (APSW)の事務局長・メイティニー・モングスヴェジ Maytinee Bhongsvejは、病気と戦うために政府は新しいアプローチをとる必要があると言い、「もしHIVとジェンダーの関係がよりよく理解されなければ、進展は難しいだろう」と述べている。

News Source: SEA−AIDS
News dated: 29 June 2004
News Title: "Monogamous Women the New Victims of AIDS, UN Warns"
URL: http://archives.healthdev.net/sea-aids/

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■アフリカのエイズ
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★コンドームへの攻撃が、ウガンダの若者を危険に晒す
「健康と開発ネットワーク」特派員チーム 

 ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領 Yoweri Museveniと教会は「コンドームの配給は、命を救うかわりに若者の乱交 promiscuity を促進している」 と若者のコンドーム使用を非難した。このことにより、ウガンダ国内のコンドームの配給に、危険な「Uターン」現象が起こるのではないかとの懸念が広がっている。「ウガンダ教会」 The Church of Uganda の広報担当は、未婚の若者のコンドーム使用は倫理的な弊害があり、神の言葉に反するものであると述べている。
 しかし、大統領の方は初めからこうした見解を示していたわけではない。実際、2000年に行われたアフリカ開発フォーラムでムセベニ大統領は、コンドームの使用率が57.6%(1995年)から76%(1998年)まで増加したという成果を伝え、翌年には8000万のコンドームを必要とするだろう、とまで述べていたのである。一体なぜ大統領は突然180度見解を変え、コンドームの普及を「ウガンダ人に不適当」であるとしたのか。
 この理由の一つとして、米国からの影響が考えられる。5年で150億ドルの資金を調達している「大統領エイズ救済緊急計画」President Bush's Emergency Plan For AIDS Relief (PEPFAR)は、「禁欲に基づいた非現実的なHIV予防政策を行っている」と批判されている。米国AIDSコーディネーター、ランドール・トバイアス氏 RandollTobias は、性行動を遅らせ、一夫一婦制を促進する方が、コンドーム配布よりも遥かに生産的であると主張している。トバイアス氏がアフリカを訪問した際、こうしたメッセージが、その訪問国の一つであったウガンダのムセベニ大統領に伝わったと見られている。
 これに対し、国連エイズ合同計画(UNAIDS)のピーター・ピオット博士 Peter Piot は、「コンドームの普及が若者の乱行に拍車をかけたという証拠はどこにもなく、コンドームの正確で一貫した使用がHIV予防の大黒柱である」、つまり「コンドームは集団防衛の武器である」、という見解を述べた。また国連のステファン・ルイス特使 Stephen Lewisもピーター博士に賛同し、大統領のコンドーム攻撃がAIDS予防の深刻な後退に繋がり、非常に多くの生命を危険にさらすのではないかと述べている。

News Source: AF-AIDS 
News Dated: 26 May 2004
News Title: Condom U-turn puts many young Ugandans at risk
URL: http://archives.healthdev.net/af-aids/msg01372.html

★マラウィ:少女のエンパワーメントがHIVと取組むための鍵とな


 マラウィでは若者、特に若い女性の職業訓練の向上がHIVを阻止するための重大な鍵である。人道援助組織では、若い女性の感染率上昇は、教育及び職業訓練の不足によるとしている。HIV/AIDSへの認識を高め、生活技術を向上させるため、UNFPA(国連人口基金)、UNICEF(国連児童基金)と同局は協力体制を構築した。UNFPAプログラムアシスタントのダニエル・ムソンダ氏 Daniel Msonda は次のように説明する。「現在、国連機関では少女が社会活動への参加を促進するため2つのプロジェクトを実施している。大工、洋裁、自動車機械などの職業訓練を行い、同時に少女たちをエンパワーさせている。自分のビジネスを始めるための元金を与えたり低利貸付を行うことは、少女たちがAIDSへ立ち向かう手段の一つである。」
 UNICEFからの資金は、若い女性たちが魚の養殖、養鶏や縫製などの小規模ビジネスを始めるために使用されている。プロジェクトでは少女たちの間でHIV/AIDSの知識を広めることも目的であり、その一つが、地元での「同じ立場で教育する人」(ピア・エデュケーター:Peer educator)の訓練である。「訓練後、ピア・エデュケーターはコミュニティに戻り、他の若者たちにどこでHIV/AIDSや性感染症について情報が得られるかを説明する。コンドームの配布の手助けもする。」とムソンダ氏は言う。
 「我々はより多くの少女たちに技術的な仕事を獲得してほしい。彼女らは性と生殖に関することや家族計画へのサービスにもアクセスできるようになるべきである。我々は目標のほぼ75%を達成した。プロジェクトの開始以来、妊娠もHIV感染率も減少した。」と、青年部のプロジェクトを監督しているウィルフレッド・リチャパ氏 Wilfred Lichapa は言及している。

News Title: MALAWI: Empowerment of girls key to tackling HIVNews Dated: Jun 27, 2004
URL: http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=3568&SelectRegion=Southern_Africa&SelectCountry=MALAWI

★南ア・エイズ治療薬導入を前にNGOが結束

 南アフリカ共和国クワズールー/ナタール州 KwaZulu-Natal province で活動する約90のNGOが、同州でのエイズ治療薬(ARV)導入を効果的なものにするため、ネットワークを作り、政府機関との協力を目指している。市民団体によるこうした組織的な試みは、アフリカ全体でも恐らく初めてのものである。
 この「クワズールー/ナタールHIV/AIDS市民社会ネットワーク」 KwaZulu-Natal HIV/AIDS Civil Society Network には、同州で保健、人権、HIV/AIDS、子供、福祉などの分野に携わってきた個人、教会、法律関連団体、研究者、ドナー団体など約90のNGOが参加している。
 南アの東海岸沿いに位置するクワズールー/ナタール州では、HIV感染率が33%に達し、南ア全体の平均である25%を上回る。多くのNGOがエイズ問題に取り組んできたが、これまで相互の連携は不十分であった。「クワズールー/ナタールHIV/AIDS市民社会ネットワーク」では、加盟NGOが協力して専門家チームを作り、治療薬の配付拠点である各地の病院に配置する予定である。これにより、カウンセリング、在宅ケア、エイズ教育、啓発、栄養、社会サービス、子供の権利、法律などの専門家から、病院関係者や患者は必要な情報やサービスを受けることができる。「治療薬の普及を成功させるには、市民社会と政府が長期的に協力し、共に感染者へサービスを提供していく必要があります。多様な分野にわたるサービスを、政府機関や個々のNGOが単独で提供することは難しくても、たくさんの団体で協力すればそれが可能になるのです」とコーディネーターを務めるカティ・ボウダ氏 Cati Vawda は語る。
 ネットワークの成功には、政府保健省の協力と、提供するサービスや情報の質を高める努力が欠かせない。同州の保健大臣は協力に前向きの姿勢を示しているが、ボウダ氏は、32ヶ所とされる治療薬配付拠点の詳しい情報が伝えられていないなど、保健省の協力はまだ不十分であると指摘している。

URL: http://medilinkz.org/news/news2.asp?NewsID=6853
News Dated: June 11, 2004
Source: Pambazuka News

★スワジランド:男性割礼に対する論争

 スワジランド前下院議長で現職の議員であるマルウィック・クマロ氏 Marwick Khumalo は、HIVに対しての真摯な取組みを示すため、スワジランドの伝統に背いて4人の息子を割礼させたと有権者に演説した。これを受け男性割礼がHIV感染危機を減少させる手段かどうか広く論争が巻き起こった。
 UNICEF(国連児童基金)のスワジランド代表アラン・ブローディー博士 Alan Brody は男性割礼をHIV感染への一つの予防策と考えており、その効果は統計に顕著に表れていると述べている。報告書にもよるが、男性割礼を行った場合、感染の可能性は25%から50%も削減されるという結果がある。
 しかし、この保守的な国で伝統を重んじる人々はこの成り行きに難色を示している。スワジランドでは本来このような習慣がなかったからである。ムスワティ現国王やソブーザ前国王など王室に象徴される伝統を忠実に守っている、クマロ氏の同僚たちも、男性割礼に対し否定的な反応を見せている。
 3児の父であるジェーソン・シメラネ氏 Jason Simelaneも「男性割礼は他民族の儀式あり、スワジランドでは必要ない」と言う。また、男性割礼を肯定する医学的見地も否定している。「当初はAIDSを防ぐためにコンドームの使用を訴えてきた。今度は割礼しろと言う。我々に干渉するのはやめ、AIDSを治療する注射でも開発するべきだ。」と述べている。
 スワジランド成人の約40%がHIV陽性と推測されているが、保健省では男性割礼奨励の方針はない。しかし、AIDSや保健問題を扱う多くのNGOはこの傾向を支持している。SASO (Swaziland AIDS Support Organisation)は「公共衛生の政策として男性割礼を支持している。しかし、それは感染リスクを減らす一選択肢であり、コンドームの使用や一人の相手と関係を持つといった予防策の代替案ではない」とを強調している。
 国会議員でありPSI SwazilandというNGOの渉外部長フロブシテ・ンドロウ氏 Hlobisite Ndlou は男性割礼に激しく反対している。このNGOではコンドームを配布しているが、割礼によりHIV感染が増えAIDSが蔓延すると懸念している。スワジランド男性はコンドームを使いたがらないので、割礼をすれば感染しないと誤って信じてしまうのではないかと警鐘を鳴らしている。

News Title: SWAZILAND: Debate over male circumcision
News Dated: June 25, 2004
URL: http://www.plusnews.org/AIDSreport.asp?ReportID=3574&SelectRegion=Southern_Africa&SelectCountry=SWAZILAND

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■女性とエイズ
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★世代間性行為 Cross-Generational Sex で高まる少女たちのHIV感染率

 6月初めワシントンで開かれた世界保健会議 Global Health Conference の「世代間性行為に対応するためのプログラム Program Responce to Cross-Generational Sex」で、世代間性関係とHIV感染の問題、対応策が討議された。
 アフリカ諸国では「世代が上の男性と性的な関係を持っている少女たちがHIVに感染する可能性が高い」という状況が広がっているというのである。
 その背景には、教師・医師・ビジネスマン・トラックドライバーといった収入とチャンスを得やすい男性たちが、「若い女性は『手なずけやすく(easy) 』しかも性感染症に感染していない」のでセックスの対象としていることがある。
 一方では、学校の授業料、教科書代、ヘルスケア、あるいは食べ物などを上の世代との性的関係の代償として得ている少女たちがいる。中には、そうしなければ買えない高級品を求めている少女たちもいる。流行の服、携帯電話、レストランでの食事、そしてヘアサロンに通うことなどである。これに伴って、友だちが自分よりも良い物を持っているという、ピア・プレッシャー peer pressureを与え、「シュガー・ダディー関係」"sugar daddy relationship"(いわゆる援助交際に近い、少女と成年男性の関係)が続いてしまう。 しかも、少女たちが食べ物や調理用品やその他の必需品を家族のために家に持って帰ってくることから、上の世代と性関係を持つことを勧める家族もいる。
 さらに、世代間の性関係の相手を父親の代わりかまたは助言者のように見る子さえいるというように、少女たちは自身が引き受けているリスクに気づいていない。
 しかも通報・相談することによって家族にもたらされる恥辱やネガティブな反応を恐れて、上の世代と性関係を持つことが問題だと思い始めた少女たちでさえ、法的機関に訴えることがない。
 一方、若ければ若いほどHIV感染の可能性が低くしかも"手なずけ"やすくなることから、男性たちが性関係の対象とする少女たちの年齢は若年化して続けている。
 世界的なNGO「セーブ・ザ・チルドレン Save the Children」は、上の世代の男性との性関係をなくすためには少女たちに説教するのではなく、男性からの誘惑を断ることへの支援と賞賛を与えることがより効果的だ、と主張する。
 他のNGOも経験・取り組みを踏まえて、少女たちが他の手段で収入を得ることができるよう支援することや、性に関する知識そしてリプロダクティブ・ライツを伝えることの重要性を訴えた。

News Source: Allafrica.com
Title: Girls Dating Older Men At Heightened Risk for HIV
(Katherine Broendel, Washington, DC)
URL: http://allafrica.com/stories/200406090408.html

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■□メールマガジンご案内
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○メールマガジン「グローバル・エイズ・アップデート」は、世界のHIV/AIDS問題の最新動向を網羅するメールマガジンとして、9月中旬より隔週刊にて発行予定です。本号は「創刊準備1号」で、「創刊準備2号」を8月末に発行する予定です。

○このメールマガジンは、購読者の皆さまに逐次お送りするほか、場合に応じて、HIV/AIDSや国際保健・医療関係のメーリングリスト、関係機関等に送付いたします。継続してお読みになりたい方は、以下の講読申込票をメールマガジン発行元(アフリカ日本協議会)までご送信下さい。

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○このメールマガジンの記事は、グローバル・エイズ問題や国際保健医療に関連するホームページを定期チェックして要約・記事化する研究員によって作成されています。あなたも、研究員になって記事を作ってみませんか。研究員になりたい方は、以下の研究員申込票に所定の事項をご記入の上、メールマガジン発行元(アフリカ日本協議会)までご送信下さい。研究員のお仕事の詳細を別途、ご連絡いたします。

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UP:20040902
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