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『月刊ちいきとうそう』1989-12 反原発と母性と障害者

19891201 ロシナンテ社,90p.

last update:20130727


■『月刊ちいきとうそう』1989-12 19891201
 特集=反原発と母性と障害者――反原発運動の連帯を深める
 ロシナンテ社,90p. \618

■内容

 今号の特集は、反原発と母性と障害者です。反原発運動のものの考え方を、人と人とのつながり方を深めようとの狙いで企画しました。問題の提起者は、「障害者」とフェミニストです。(比重は前者にかかりすぎたかも知れません)

■目次

【特集】反原発と母性と障害者
大討論会 反原発思想を問い直す/大阪市立大学自主講座 12
「あたり前」はあたり前か?/堤愛子 32
拝啓 厚生省様――反原発運動の中の優生思想/'88高松行動参加者 大本光子+合田仁志 36
共生への回路/先天性四肢障害児父母の会 浜憲一 42
なくすのは障害者よりも差別だ/森脇正 46
「母性」強調の落し穴/'82優生保護改悪阻止全国連絡会 石塚友子 50
【各地から】大阪府・山梨県・和歌山県
障害者は欠けている者ではない/梅田和子+松井洋子 54
加害者にならないために/金井恭子 60
なんやかんや言っても学校から逃げられません!/大前泰彦 62

記事映画『阿賀に生きる』製作にご協力を/小出昌敏 64

【連載】
ドヂル伝記6 世界へ脱出/高橋幸子 66
診察メモ159 方向づけ/橋本行生 73
続・たった一人の革命11/ふくおひろし 76
牧野クンのお話し9/牧野正和 81
紙つぶて――天皇制との闘い/加藤敦美 8

■引用

◆ 堤愛子 1989

「昨年七月に、雑誌『クリティーク』(青弓社)に「ミュータントの危惧」、今年三月には単行本『女たちの反原発』(労働教育センター)に「ありのままの生命を否定する反原発に反対」と題する私の文章が掲載された。どちらも「放射能の影響で障害者が生まれるから原発に反対」という、反原発運動の一部の根強い声に対するこだわりを書いたもので、前者では、スリーマイル島の巨大タンポポを「お化け」と言って恐怖の対象とするのではなく、汚染された土地に育まれた、生命のたくましさの象徴として見てほしいと訴え、後者では、前者の読者からの「障害児が生まれてもいいと言ってしまったら、放射能の恐さって何なの」という提起に対する私の考え---つまり、障害者は常に一定の割合で生まれてくる、放射能の恐ろしさは、そのような確立が極端にふえたり減ったりして、生態系のバランスがくずれてしまうことであり、決して障害者が生まれてくることそれ自体ではないと書いた。
 これら二つの文章を発表してから、平均月一回くらいの割で、「反原発運動と優生思想」のテーマで、各地の大学や市民運動、障害者団体などに問題提起者として呼ばれ、話合いをするようになった。それだけこの問題に対する関心が広がってきているのだろうと嬉しくなる。これらの話し合いを通して出てきた意見や私の思い、最近考えていることなどを書いてみたい。」(p.32)

 「原発や放射能の恐さについて、「女たちの反原発」では「生態系のバランスがくずれること」と抽象的なことを書いたが、最近の私は「自分の健康がそこなわれること」と考えている。そういうとすぐに、
「ほら、やっぱり障害者でない方が、いいんじゃないの」という声が聞こえてきそうだ。
 しかし、「障害」と「健康」は、はたして対立する概念なのだろうか。
 ときどき私は、「お大事に」とあいさつされて、とまどうことがある。「私、いま身体も銚子もいいし、精神的にも安定しているんだけど」と、思わず言いたくなる。たとえ「障害」や「病気」をもっていても、その人なりの安定した「健康な状態」というのがあるはずだ。集団で見た場合も、幼児、老人、男、女、「障害」をもつ人、「病気」の人、いろいろな人がいてこそその集団が「健康な社会」なのだといえよう。」(p.34-5)

◆ 先天性四肢障害児父母の会 浜憲一 1989

 「私たち「先天性四肢障害児父母の会」は、先天異常の原因究明を会活動の柱の一つとしてきた。障害者の団体がみずから原因究明に取り組むのは、おそらくきわめてユニークであろう。1975年の発足当時は、あたかもサリドマイド・ショックの消えやらぬ頃であった事情もあり、「わが子の障害の原因を知りたい」という願いは、会員の多くに格別に強かったようである。
 ……しかし、原因究明を熱心に進めようとする姿勢の中には、わが子の障害をみずから差別する心、優生的発想がはらまれているのではないか、といった自己批判がこの間浮上するに至っている。
 ……障害者の団体たる私たち「父母の会」は、その活動の中に――とりわけ、反公害の立場に立った原因究明活動の中に、内なる差別意識が巣食っていたことを、厳然たる現実として率直にこれを受けとめておかければならないと思う。
 そして、ここでの主題、すなわち反原発運動にはらまれる障害者差別、優生思想、あるいは反原発運動と障害者解放運動との矛盾、相克こそは、会内部の矛盾のより直接的な表現に他ならない。」(p.42-3)
 
※ 継続前誌: 月刊地域闘争 継続後誌: 月刊むすぶ : 自治・ひと・くらし / ロシナンテ社


*作成:堀 智久
UP: 20110406 REV: 20130727
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