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「障害者の機会均等化に関する基準規則」(199312)


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■ 「障害者の機会均等化に関する基準規則」(199312)

  長瀬:96/04/24 13:55
題名:STANDARD RULES 1


 国連総会は1993年12月に「障害者の
機会均等化に関する基準規則」を採択しま
した。これは、1981年の国際障害者年、
1983年からの国連障害者の10年の最大
の成果の一つです。そして、現在の国際的な
障害政策の最重要文書です。障害差別撤廃条
約としての提案が、拘束力のある条約ではな
く、基準として採択されました。

 障害者にとっての平等の概念の成熟が進む
なか、将来的には必ず、障害差別撤廃条約も
しくは障害者の権利条約が実現されるでしょ
う。その際にも、この規則はたたき台になる
ことはまちがいありません。

 社会が障害者に対して築いている障壁を指
摘し、その障壁を取り除く必要性を明確にし
ています。

 以下、序文と前文をまず、紹介します。

 翻訳と原文(英語)が障害者関係の民間組
織(NGO)の連合体である日本障害者協議
会から出ています。関心のある方は以下にご
連絡下さい。

 173東京都板橋区小茂根1ー1ー7
 電話 03ー5995ー4501
 ファックス 03ー5995ー4502

(長文注意)

(転載を大歓迎します)

========================================
障害者の機会均等化に関する基準規則

序文

 背景と現在のニーズ

1、障害を持つ人は世界の全ての地域、全て
の社会の全ての階層にいる。世界の障害を持
つ人の数は多く、増え続けている。

2、障害の原因と結果は世界中で異なってい
る。この違いは社会経済環境の違いの結果で
あり、国民への福利対策が国ごとに異なって
いる結果である。

3、現在の障害政策は過去200年間にわた
る進展の帰結である。多くの点で各時代ごと
の国民全般の生活状態、社会経済政策を反映
している。しかし、障害分野では障害を持つ
人の生活状況に特に影響を与える特別の環境
もあった。無知、放置、迷信、恐怖が障害の
歴史を通じて障害を持つ人の発展を遅らせ、
障害を持つ人を孤立させてきた社会的要素で
ある。

4、障害政策は施設での基本的ケアに始まり
、障害を持つ子どもの教育と成人後に障害を
持った人のリハビリテーションへと長い年月
をかけて発展してきた。教育とリハビリテー
ションを通じて、障害を持つ人は障害政策の
さらなる発展に一層積極的になり、その推進
役となった。障害を持つ人・その家族・擁護
者の組織が結成され、障害を持つ人の状況の
改善を主張した。第2次世界大戦後に、統合
とノーマライゼーションの概念が導入された
。これは障害を持つ人の能力に関する意識向
上を反映していた。

5、1960年代末にかけて、障害を持つ人
の組織は数カ国で障害の新たな概念を形成し
始めた。この新たな概念は障害を持つ個人が
経験する制約と、障害を持つ人の環境の設計
と構造並びに国民全般の態度とに密接な関係
があることを示した。同時に途上国の問題が
一層注目を浴びるようになった。途上国の一
部では障害を持つ人のパーセンテージは非常
に高いと推計され、障害を持つ人はほとんど
の場合極端に貧しかった。

   過去の国際的行動

6、障害を持つ人の権利は長期にわたり国際
連合や他の国際機関の関心の的であった。国
際障害者年(1981年)の最も重要な成果
は、総会が決議37/52で採択した「障害
者に関する世界行動計画」だった。国際障害
者年と障害者に関する世界行動計画はこの分
野での進歩に向けて強力な刺激となった。両
者は障害を持つ人が他の市民と同様の機会と
、経済・社会開発の成果としての生活状況の
向上を等しく分かちあう権利を強調した。こ
こにおいて初めて、ハンディキャップは障害
を持つ人とその環境の機能として定義づけら
れた。

7、「国連障害者の十年中間年での世界行動
計画実施評価世界専門家会議」は1987年
にストックホルムで開催された。会議では将
来の行動の重点を示すために指導的な役割を
果たす思想の確立が提案された。この思想の
基礎は障害を持つ人の権利の認知であるべき
である。

8、この結果、同会議は総会が、十年の終わ
りまでに加盟国により批准される、障害を持
つ人への差別撤廃国際条約を起草するための
特別会議を開催するよう勧告した。

9、条約大綱案がイタリアによって準備され
、第42会期に提出された。条約案に関する
説明がさらにスウェーデンによって総会の第
44会期に行われた。しかし、どちらの場合
にもこのような条約の適切さに関する合意形
成は不可能だった。多くの代表の意見では、
既存の人権文書が他の人間と同様の権利を障
害を持つ人にも保障しているようだった。

基準規則に向けて

10、総会の審議に従って、1990年の第
1会期において経済社会理事会はついに別の
種類の国際的政策文書の策定に専念すること
で合意した。同理事会は決議1990/26
により、障害児、障害青年、障害成人の機会
均等化に関する基準規則を策定するための、
国連専門機関や他の国際機関、非政府機関、
特に障害を持つ人自身の組織と密接に協力す
る、任意拠出により資金がまかなわれ、政府
専門家からなり、参加が自由な臨時作業部会
の設置を、社会開発委員会がその32会期で
検討する権限を与えた。同理事会は社会開発
委員会が基準規則の文面を1993年には検
討のために完成させ、第48会期総会に提出
するよう要請した。

11、引き続いた第45会期総会第3委員会
での議論は障害者の機会均等化に関する基準
規則策定への新たな提案に広範な支持がある
ことを示した。

12、第32会期社会開発委員会では基準規
則の提案が多数の代表の支持を得て、議論は
臨時作業部会の設置を決定する決議32/2
の採択へと結び付いた。これは経済社会理事
会決議1990/26に従うものである。
  障害者の機会均等化に関する基準規則の

 目的と内容

13、本文書に含まれる障害者の機会均等化
に関する基準規則は国連障害者の十年(19
83年ー1992年)に得られた経験に基づ
いて策定されている。「世界人権規約」、「
経済的、社会的、および文化的権利に関する
国際規約」、「市民的および政治的権利に関
する国際規約」、「児童の権利条約」、「女
子差別撤廃条約」並びに「障害者に関する世
界行動計画」からなる国際人権章典は本規則
の政治的、精神的基盤である。

14、この規則には強制力はないが、国際法
の規則を遵守する意図で多数の政府により適
用されれば国際的慣習規則となり得る。規則
は機会均等化実現に向けて行動を起こすとい
う政府の精神的、政治的な決意を示す。責任
、行動、協力の重要な原則が述べられている
。生活の質並びに完全参加と平等の達成のた
めに決定的に重要な分野が指摘されている。
これらの規則は政策形成と行動のための手段
を障害を持つ人とその組織に提供する。規則
は各国、国連、他の国際機関の間での技術経
済協力への基礎を提供する。

15、本規則の目的は障害を持つ少女・少年
・女性・男性が、他の市民と同様に、自分の
属する社会の市民としての権利と義務を果た
すよう保障することにある。障害を持つ人が
その権利と自由を行使するのを妨げ、障害を
持つ人が各自の社会の活動に完全に参加する
のを困難にしている障壁が世界の全ての社会
に未だに存在している。政府の責任はこのよ
うな障壁を取り除くことである。障害を持つ
人とその組織はこの過程において協力者とし
て積極的な役割を果たすべきである。障害者
の機会均等化は人的資源を動員しようとする
多方面にわたる世界的な努力に対する貴重な
貢献である。特別な関心が女性、児童、高齢
者、貧困層、移民労働者、二重・重複の障害
を持つ人、先住民、少数民族といった集団に
向けられる必要があるかもしれない。これに
加えて、注目を要する特別なニーズがある障
害を持つ多数の難民がいる。

障害政策の基本的概念

16、以下の概念がこの文書を通じて現れる
。これらは障害者に関する世界行動計画の概
念に基本的に基づいて築かれている。国連障
害者の十年期に起こった発展を反映している
場合もある。

 障害とハンディキャップ

17、「障害」(disability)は世界の全て
の国の全ての人口で起きている数多くの異な
る機能的制約を要約した言葉である。人は身
体的・知的・感覚的な損傷(impairment)、
医学的状態、精神病により障害を持つかもし
れない。こういった損傷、状態、病気の性格
は永続的な場合も一時的な場合もある。

18
、ハンディキャップとは、他のメンバーと平
等なレベルで地域社会の生活に参加する機会
が欠如もしくは制約されていることである。
ハンディキャップという言葉は障害を持つ人
と環境の出会いを示す。環境並びに情報、コ
ミュニケーション、教育など社会が組織して
いる活動の欠点に焦点を当てるのが、この用
語の目的である。こういった環境と活動が障
害を持つ人の平等な条件での参加を妨げてい
る。

19、障害とハンディキャップという二つの
用語のこの使い方は近代障害史の視点から見
られるべきである。1970年代には当時の
用語法に対する強い反発が障害を持つ人の組
織の代表と障害分野の専門職者からあった。
障害とハンディキャップは不明確で、混乱を
もたらす形でしばしば使われ、政策形成と政
治的行動に不十分な役割しか果たさなかった
。用語法は社会環境の不完全さと欠陥を無視
した医学的・診断的手法を反映していた。

20、1980年に世界保健機構(WHO)
が、一層正確であると同時に相対主義的アプ
ローチを提案する損傷、障害、ハンディキャ
ップ国際分類(ICIDH)を策定した。この分
類は損傷、障害、ハンディキャップの明確な
区別を行っている。ICIDHはリハビリテーシ
ョン、教育、統計、政策、立法、人口学、社
会学、経済学、文化人類学などの分野で幅広
く利用されている。ICIDHにはそのハンディ
キャップの定義においてあまりに医学的で個
人中心であり、社会の状況や期待と個人の能
力との相互作用を適切に明らかにしていない
という一部の利用者からの批判がある。こう
いった懸念やICIDH発表以来12年間に利用
者から表明されてきた他の懸念はきたるICID
Hの改訂で取り上げられる。

21、世界行動計画実施に関する経験と国連
障害者の十年期間に起こった全般的議論に基
づき、障害問題と用語法に関する知識の深ま
りと理解の広がりがあった。現在の用語法は
、個人のニーズ(リハビリテーションや補助
具等)と社会の欠点(参加への種々の障壁)
両方に取り組む必要性を認識している。

予防

22、予防が意味するのは身体的・知的・精
神医学的もしくは感覚的損傷の発生の予防(
1次予防)もしくは永続的な機能制約や障害
の予防(2次予防)である。予防にはプライ
マリーヘルスケア、産前産後の児童ケア、栄
養教育、伝染病の予防接種運動、風土病対策
、安全基準、労働による障害や疾病を防ぐた
めの職場の調整、武力紛争や環境汚染から生
じる障害の予防など多くの活動が含まれる。

リハビリテーション

23、リハビリテーションは障害を持つ人が
その身体面・感覚面・知能面・精神医学面か
つ、または社会機能面で最善のレベルに達し
、そのレベルを維持できるようすることを目
指す過程であり、障害を持つ人がその人生を
一層自立させるための手段を提供する。リハ
ビリテーションには機能を提供、かつ、また
は回復させるための措置や、失われたり欠如
している機能や機能面の制約を補う措置も含
まれる。リハビリテーションの過程には初期
の医療は含まれない。リハビリテーションに
は基礎的で一般的なリハビリテーションから
、例えば職業リハビリテーションのような目
的指向型の活動までが含まれる。

機会均等化

24、機会均等化が意味するのは、社会の仕
組みと、サービスや活動、情報、文書といっ
た環境を、全員に、特に障害を持つ人に利用
できるようにする過程である。

25、平等な権利の原則とは、各個人全員の
ニーズは等しく重要であり、そのニーズが社
会の設計の基礎とされなければならず、全て
の個人に参加への平等な機会を保障するよう
に全資源は利用されなければならないことで
ある。

26、障害を持つ人は社会の一員であり、各
自の地域社会に留まる権利を持ち、教育、保
健、就労、社会サービスの通常の体系内で必
要な支援を受けねばならない。

27、障害を持つ人は平等な権利を獲得する
に従い、平等な義務をも持たなければならな
い。こういった権利が達成されるに従い、社
会は障害を持つ人への期待を高めねばならな
い。機会均等化の過程として社会の一員とし
ての障害を持つ人が完全な責任を負うよう支
援する措置が取られねばならない。

  前文

 この機構(国連)と個別や共同の行動で協
力し、一層高い生活水準、完全雇用並びに経
済的及び社会的進歩及び発展の条件を促進す
るという加盟国が国連憲章のもとで行った誓
約を心に留め、
 憲章に謳われている人権と基本的自由、社
会正義と人間の尊厳及び価値の誓約を再確認
し、
 「世界人権宣言」、「経済的・社会的及び
文化的権利に関する国際規約」、「市民的お
よび政治的権利に関する国際的規約」が定め
た人権に関する国際的基準を特に思い起こし

 これらの政策文書に含まれる権利は全ての
個人に無差別平等に保障されるとをこれらの
政策文書が宣言していることに留意し、
 障害に基づく差別を禁じ、障害を持つ児童
の権利を保障する特別の措置を求める「児童
の権利条約」と、障害に関する保護的措置を
数点含む「すべての移住労働者とその家族の
権利の保護に関する国際条約」の条項を思い
起こし、
 障害を持つ少女と女性の権利を保障する「
女子差別撤廃条約」の条項をも思い起こし、
 「障害者の権利宣言」、「精神薄弱者の権
利宣言」、「社会の進歩と開発に関する宣言
」、「精神病者の保護と精神保健ケアの改善
の原則」や総会で採択された関連政策文書に
関心を払い、
 国際労働機関によって採択された関連する
条約や勧告、特に障害を持つ人に対する差別
のない雇用への参加に関する条約や勧告にも
関心を払い、
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)、特に
その「万人のための教育宣言」、世界保健機
関、国連児童基金(ユニセフ)、他の関連す
る機関の勧告と成果を心に留め、
 環境を保護するという加盟国の決意に関心
を払い、
 武力紛争が引き起こした荒廃を心に留め、
武器の製造に貴重な資源を費やしているのを
悲しみ、
 「障害者に関する世界行動計画」とその「
機会均等化」の定義が示しているのは、現実
的で具体的なこれらの国際的政策文書や勧告
の内容を実現しようとする国際社会の真剣な
願望であることを認識し、
 世界行動計画を実現するという国連障害者
の十年(1983年ー1992年)の目的が
現在も有効であり、継続的な活動の必要が緊
急にあることを認め、
 世界行動計画が途上国でも工業国でも同様
に重要な概念に基づいていることを思い起こ
し、
 障害を持つ人が人権と参加を完全かつ平等
に享受するための努力が強化されねばならな
い必要を確信し、
 障害を持つ人、その親/保護者/擁護者/
その組織が障害を持つ人の市民的・政治的・
経済的・社会的・文化的権利に影響する全て
の施策の立案と実施において政府の積極的な
協力者でなければならないことを再び強調し

 経済社会理事会の決議1990/26に従
うとともに、世界行動計画が詳細に列挙して
いる、障害を持つ人が他者と同じ平等を獲得
するために必要な施策を加盟国自身の基礎と
して、
 加盟国は「障害者の機会均等化に関する基
準規則」を以下の目的で採択した。
(a)障害分野での全ての行動は障害を持つ
人の状態と特別なニーズに関する適切な知識
と経験を前提とすることを強調する。
(b)社会組織の全ての側面が全員に開かれ
る過程こそが社会・経済開発の基本的な目標
であることを強調する。
(c)障害分野の社会政策の重要な側面の大
要を述べる。その中には技術・経済協力の奨
励も適切な場合には含まれる。
(d)技術・経済レベルでの大幅な違い、平
等な機会を実現する過程では文化的文脈の鋭
敏な理解が反映されなければならない事実、
障害を持つ人のきわめて重要な役割を念頭に
置き、平等な機会を実現するために必要な政
治的意思決定過程へのモデルを提供する。(
e)政府、国連システム機関、他の政府間機
関、障害を持つ人の組織間の緊密な協力のた
めの国家的仕組みを提案する。
(f)障害を持つ人の機会均等化を政府が実
現するために努力する過程をモニターする効
果的な仕組みを提案する。


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