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報告書概要:エタノールとバイオ・ディーゼル ブラジルの矛盾の輸出

アフリカアフリカ Africa 2014

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報告書概要:エタノールとバイオ・ディーゼル ブラジルの矛盾の輸出

セルジオ・シュレジンガー『ブラジルの国際協力と投資−エタノールおよびバイオ燃料の国際化』部分訳(随時翻訳中:2012/09/17版)
ポルトガル語版 Cooperacao e Investimentos Internacionais do Brasil: a internacionalizacao do etanol e do biodiesel
英語版 Brazilian national cooperation and investments: the internatiolization of ethanol and biodiesel

エタノールの原料であるサトウキビの世界最大の生産者、そしてバイオ・ディーゼルの生産に必要とされる大豆の世界第二の生産者であるブラジルを、他の国々のプランテーションに投資させる理由はなにか。FASE1(Federacao de Orgaos para Assise ncia Social e Educacional:社会・教育扶助のための組織連合)の「環境正義と権利」部門のために『ブラジルの国際協力と投資−タノールとバイオ燃料の国際化』を執筆したセルジオ・シュレジンガー(Seregio Shlesinger)によれば、ブラジル政府が他国においてエタノールやバイオ燃料を生産する動機は、「燃料生産国によって新たなカルテルが構築されるという仮説を無効にすること、そしてブラジル産品の代替品を輸入国に対して保証し、エタノールとバイオ燃料が国際的な消費財であるという認識を広める」目的があるという。

しかし、驚くべきことに、複数の資料がアフリカでのエタノールの生産において利益を得る可能性のあるブラジル企業がいかに少数であるかを示している。シュレジンガーによれば、大部分の関係企業はブラジルでも操業する多国籍企業である。つまり、アフリカにおけるエタノール生産へ参加する企業は、必ずしもブラジル支社である必要はないのだという。結論から言えば、ブラジルは「南」の他の国へこれらの企業の関心を誘導する役割を担っているようなものだ。

本報告書は、ラテンアメリカおよびアフリカ地域におけるこれらの燃料生産に関して国際協力と投資という役割に関心を示す(ブラジル)連邦政府とペトロブラス・バイオ燃料(Petrobras Biocmbostiveis)の行動、ブラジルの意図と戦略の見取り図を提示している。

アフリカ諸国という選択は、無償もしくは申し訳程度の金額で賃借される土地の入手可能性や、単一作物栽培のための土地の占有の障害となるような法整備に反映されるように、社会組織の未整備と関連している。筆者にとってモザンビークに対する投資は象徴的な事例である。ブラジルはモザンビークにセラードの2/3以上を占める広大な土地の農業モデルを輸出するだけではなく、飢餓の解消と小農支援という公共政策を輸出するのである。本報告書は、ブラジルのセラードにおける単一作物栽培によって引き起こされたことが、アフリカのサバンナにおいて再び引き起こされることに言及して「社会・環境的な結末はブラジルで十分に知られている」と省察する。


セルジオ・シュレジンガー『ブラジルの国際協力と投資−エタノールおよびバイオ燃料の国際化』
FASE,リオデジャネイロ,2012年8月27日

目次

序文
イントロダクション
連邦政府の役割
 バイオ燃料分野での協力の前進のためのブラジル・アメリカ合衆国間の合意に関する覚書
 アフリカにおける三角協力(ブラジル、EU)
 ブラジルと西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)との合意に関する覚書
 ブラジルと途上国との間での合意に関する覚書
 Pro-Renova-再生エネルギー分野における新興国支援組織化プログラム
 インド、ブラジル、南アフリカ(IBSA)の対話
 その他の合意
バイオ燃料に関わるペトロブラスの行動
関連企業
 エタノール企業
 大豆企業
進行中の国際プロジェクト
 エタノール
 大豆
主な動向
結論
参考資料

序文

「南」の諸国、特にラテンアメリカとアフリカにおける国際協力と投資においてブラジルの役割は重みを増しつつある。その事実は、ブラジルの傾向、動機、矛盾、そして戦略をめぐって既に膨大な議論を引き起こしてきた。国際協力に関する数多くの合意に達していたのと同時に、ブラジルはブラジル企業の国際化を模索していた。まさにこの点が農作物由来の燃料分野における特徴である。

 ブラジルにおいて、特にエタノールや大豆といった農作物由来の燃料を生産するために大規模に単一作物栽培を行った結果引き起こされた社会問題や環境問題は、周知の事実である。今まさに他の国々でそれらの問題が再生産されようとしている。こうした問題関心にもとづき、以下ではイニシアチブ、プロジェクト、国、当事者の見取り図を提示していく。この見取り図は、ブラジルの経験に見られた動向と矛盾を分析し、そしてブラジルの国際協力と投資の方向性について批判と論争と反響の可能性に満ちた道を示す一助となるだろう。

イントロダクション

ブラジルは近年、石油に代わる農作物由来の燃料生産のための二つの大規模なプロジェクトを展開してきた。それはサトウキビを原材料とし、ガソリンの代わるエタノールと、現在のところ主に大豆油から生産され、燃料油となるバイオ・ディーゼルである。

ブラジルはサトウキビでは世界第1位、大豆では世界第2位の生産国である。ブラジルの気候条件と土地の入手可能性(訳注:換言すれば気候変動による不作と土地の入手不可能性)は、国内市場への供給を目的とするだけでなく、政府と企業をこれらの作物生産の加速的な拡大に向かわせている。今後数十年、世界のバイオ燃料市場の絶対的なリーダーシップをとることが昨今のブラジルの行動の延長線上にある目的である。先進国の石油価格高騰や代替化石燃料計画はこの潮流をさらに加速させている。

増産に新たな耕作地が必要であるエタノールとは対照的に、バイオ・ディーゼル生産は追加の耕作地域を占有する必要がなく、ここ数年で拡大可能である。バイオ・ディーゼルの90%を占める主な成分は植物油や動物性の油である。その一方で、主要な家畜飼料は、大豆の搾りかすである。大豆油の場合はこの過程で副産物となりうる。ブラジルが輸出している3分の2は大豆のまま出荷されている。このように、大豆生産の規模を維持しながらも、植物油を増産することが可能である。

ブラジル政府の戦略は他国や他地域における、バイオ・ディーゼルやエタノール生産を奨励することである。それとともに、燃料生産国によって新たなカルテルが構築されるという仮説を切り崩し、ブラジル産品の代替品を輸入国に対して保証し、エタノールとバイオ燃料が国際的な消費財であるという認識を広めることである。

バイオ燃料ペトロブラス社はこのプロセスに主体的に参加している。政府の財政機関であるBNDESは、ブラジル企業の国際化の過程で、優先分野にバイオ燃料分野を含めている。エンブラパ(ブラジル農牧研究公社)はすでに海外に多数の事務所を設けているが、それらの事務所は生産的な利害を共にする諸国に対して技術供与を目的としている。つまり、原料生産の潜在的な可能性がある国との国際的な合意や、資金調達計画や土地提供といったいくつかの側面においてイニシアチブは既にとられているのである。

連邦政府の役割(翻訳中)
 バイオ燃料分野での協力の前進のためのブラジル・アメリカ合衆国間の合意に関する覚書
 アフリカにおける三角協力(ブラジル、EU)
 ブラジルと西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)との合意に関する覚書
 ブラジルと途上国との間での合意に関する覚書
 Pro-Renova-再生エネルギー分野における新興国支援組織化プログラム
 インド、ブラジル、南アフリカ(IBSA)の対話
 その他の合意

バイオ燃料に関わるペトロブラスの行動(未翻訳)

関連企業(未翻訳)
 エタノール企業
 大豆企業

進行中の国際プロジェクト(翻訳中)
 エタノール:アンゴラ/モザンビーク/ガーナ/ジンバブウェ/キューバ/スーダン/セネガル
 大豆:モザンビーク/スーダン

主な動向

 本報告書で示した情報は、他国におけるバイオ燃料生産に投資を行うブラジル政府の政策の関心が現在、アフリカ大陸にあることを明らかにしている。

 同様に、アフリカにおけるブラジルのイニシアチブは、ブラジルの広範な外交政策の一部であることは明白である。ブラジルを世界的なバイオ燃料の生産の指導的立場に置くことの目的は、(エタノールやバイオ・ディーゼルを消費財とするうえで原動力のような必要条件としてアフリカ諸国をパートナーして利用し)過渡期にある国際システムの新たな指導的立場をめぐる論争の中心に自らを位置づけるというブラジル政府の戦略に組み込むことである。ブラジルは世界的な議題のカギとなるテーマにおいて際立った存在として信任を得ようとしている。

 ブラジル政府のこうした動きの恩恵を受けられる可能性のあるブラジル企業は、コンサルタントのGV Agro、工場の調達分野のDedini、エタノール生産のOdebrecht-ETHと少数である。つまり、このバイオ燃料投資の拡大のプロセスで関連する企業の大半は、ブラジルでも操業している多国籍企業となる。これらの多国籍企業は、サトウキビ栽培分野で存在感を増すだけでなく、農業生産物の流通、投入財、生産および加工に必要となる農業機械の調達を支配している。

 そうした多国籍の企業の開発計画への参加が、必ずしもブラジル支社を通じて行われるわけではないということは特筆すべき点である。こうした活動は本社との合意のもと、企業の判断に基づいて行われるのであり、同様のことはブラジルにおいて外資系企業によって生産されているフレックス燃料(flex-fuel、エタノール)自動車市場についても言える。これらの自動車の市場は限られているため、ブラジル支社を通じて生産され、輸出される。ブラジルのような高度な技術を伴うアグリビジネスのモデルの輸出は、技術面への投資は少なく、脱工業化のプロセスに続くものであり、それ以外の道はない。

 現状は以下のように説明することができるだろう。主要な合意において重要な存在はアメリカ合衆国政府である。北米資本はアグリビジネスにかかわるグローバル企業の中で支配的である。一方、ヨーロッパ諸国や日本は、アグリビジネスに関わる当該国の産業の利害を反映する他に、石油への依存度を軽減するためにバイオ燃料を他国に導入する独自の短期・中期的計画を考慮している。

 ブラジル政府は、バイオ燃料の潜在的な消費者が、OPECの現状を繰り返すように、生産国の独占あるいは寡占に依存する可能性を認めないだろうといことを十分に認識している。また、ブラジル政府は、燃料輸入国が適正な価格を維持しながら自国の将来の需要を満たすために、アフリカやラテンアメリカといった他地域におけるバイオ燃料の世界的な生産を勢いづけることも理解している。

 アフリカ諸国という選択への偏向の理由は、 政府の指導者と当事者であるアグリビジネス関連企業の多様な証言に現れている。当事者がアフリカ諸国を選ぶのは、ブラジルにおいて広く認識されている社会・環境的な結末という経験にもとづいて、アフリカにおける無償もしくは申し訳程度の金額で賃借される土地の入手可能性や、単一作物栽培のための土地の占有の障害となるような法整備といった社会組織の未整備と関連している。

 ブラジルは独自のものではない生産モデルを輸出しはじめた。ブラジルにおける大豆の単一作物栽培は、同じ投入財と農業機械を使用し、生産物の流通に関してもその大半はアメリカ企業の手中にある北米モデルに従ったものである。サトウキビ部門は伝統的にブラジル企業が支配的であったが、エネルギー、石油そして食料産業の多国籍企業の参入によって非ブラジル化が急速に進行している。こうした現状については、当該分野での多国籍企業の世界的な拡大に対するブラジルの承認の一段階として注視するべきだろう。 

 さらに 前述の企業活動の拡大の対象となっている地域が、アフリカのサバンナの事例に見られるように、セラードと同じような特徴を持っているといいうことは特筆に値する。ブラジルのセラードは、現在、大豆−その地域が国の主要生産地である−の生産拡大によってブラジルで最も危機に晒されているバイオーム(生物・植物群系)である。それと同時に、これまで見てきたようにセラードはサトウキビの拡大が予想され、サトウキビの栽培のための区画整備政策の対象となっている地域は、そのバイオームの広がる地域と重なっている。

 ブラジルの事例では、アグリビジネス業界は追加的な森林伐採を引き起こさずに生産を拡大することが可能であると主張する。アフリカのサバンナに関して、この種の危惧はいまだに表面化していないように思われる。

「無償の土地があり、環境的障壁もなく、中国への海上輸送費が大幅に安上がりなモザンビークは、アフリカの真ん中にあるマット・グロッソ(ブラジル中部マット・グロッソ州、州名は「深い森」を意味する)だ。」
マット・グロッソ綿花生産者組合長カルロス・エルネスト・オウガスチン(Carlos Ernest Augustin)

結論

 バイオ燃料を生産するための大規模な単一栽培モデルを輸出すると同時に、ブラジルは食料安全保障および食料生産の分野における公共政策を輸出している。それはブラジルの外交活動に大きな矛盾を生み出し、ブラジル社会で起きていた家族経営の農業と海外市場に目を向けている産業としての農業の間の歴史的な紛争を国外で再生産することを意味している。

 本報告書のために集められた情報は、ブラジルの国際協力・開発計画が、ブラジル企業の国際化を支援するために海外投資を誘導する公的機関や銀行の国際的な業務と結びついていることを示している。したがって、現時点ではブラジルの国際協力の傾向は、援助の路線としてはあたかも南南協力のようであり、企業の利益を支援するような外交を展開しているが、南北協力の過ちを繰り返しているのである。

 これらのブラジルの国際協力は、国内外における国際化のプロセスに拍車をかけている。アフリカにおけるブラジルによる国際協力の核心部分において、ブラジルは多国籍企業の利益を広める代理人となっていることは明白である。アフリカにおける国際協力のための合意についての覚書にはブラジル、アメリカ合衆国、EUが関係している。アンゴラにおけるエタノールへの投資は特恵関税によってヨーロッパへの輸出を予定している。熱帯地域に関する国際協力もそうした動きの具体例である。

 本報告書で示した見取り図は、バイオ燃料生産のための大規模な単一作物栽培モデルの「輸出」のみならず、食料安全保障、貧困問題の解決、小農支援といった分野の公共政策のプログラムの「輸出」がモザンビークに集中していることを指摘している。この観点から、モザンビークはブラジルの国際協力と投資の矛盾の象徴である。本報告書で提示してきた見取り図は今後も引き続き、モザンビークに関して二国間あるいは三角協力といった合意のための覚書、合意、開発計画、政策決定機関、民間企業について詳細な検討を行うための指南書の役割を果たすだろう。

 モザンビークにおけるブラジルの国際協力と投資に対するこうした視角は、一方では、土地に対する権利の侵害、ブラジルのバイオ燃料企業の存在によって引き起こされる社会と環境をめぐる紛争を批判・告発することを目的とし、他方ではブラジルの存在がモザンビーク社会と共に歩むべき方向性に影響を及ぼし、議論することを目指している。一つの事例が、40年前に遡る、ブラジルのセラードにおいて大豆栽培を拡大したセラード開発のための日伯協力である。Procederの事例は、セラードで起きたような深刻な環境問題や社会的紛争を再生産する可能性のあるProsavanaの導入に際した参照事例となるだろう。Prosavanaの導入の当初から、我々の目的はブラジルのセラードの経験を基に、Prosavanaの問題の所在を明らかにし、疑問を投げかけることである。さらにはブラジルで引き起こされた惨事をモザンビークで再び引き起こさないために、ブラジルの開発計画の定式化に影響を及ぼすことを目的としている。

 ブラジルの国際協力と投資に関する決定過程をめぐる批判、論争、反響はブラジル国内における情報の収集と分析のための主導性を必要としている。同じくブラジルとアフリカの市民社会組織の連携が必要である。それには次の取り組みが含まれるべきだろう。

 ブラジルの国際協力と投資は、透明性と社会の民主的な規範の中にある公共政策と言うには程遠い。本研究と読者の継続は本来の公共政策に貢献することを目的としている。それは同時に、ブラジルと世界の社会的かつ環境的正義を守る社会勢力がどのような国際協力と投資が望ましいと考えるのかという提案になるだろう。

参考資料(未翻訳)

【モザンビーク研究・網中昭世】



UP:2012
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