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スイス


last update: 20131027


◆200008
スイス、安楽死の合法化めざす
読売新聞ニュース速報

 スイス議会に今秋、安楽死を事実上、合法化する法案が提出される。スイスではすでに、医師らによる末期患者の致死薬処方が容認されており、昨年一年間だけで、少なくとも百二十人が安楽死を推進する団体から致死薬を得て自殺した。法案は、死を望む末期患者に医師らが致死薬を注射することなども認めようというもので、安楽死推進派は、仮に議会で法案が否決された場合、国民投票にかけ、国民の意見を問う構えだ。(ジュネーブ 大内 佐紀)
 スイス刑法一一四条は、本人の依頼に基づく殺人に対し、三年以下の禁固に処すとしている。第一党・社会民主党のフランコ・カバリ議員は、「病気の末期症状に苦しんでいる者が自らの殺人を依頼した場合、加害者を当局が訴追したり、刑罰を科すことはできない」との条項を同条に追加し、安楽死を事実上、合法化する修正案を九月に再開する議会に提案する予定だ。
 がん治療を専門とする医師だったカバリ議員は、「医大を卒業したばかりのころは、学校で教わった通り、安楽死には反対だった。しかし、末期患者と接する中、人間として耐えられない痛みがあり、苦しむ人の望みをかなえる道があってしかるべきだと考えるようになった」と振り返る。
 スイスでは、安楽死を推進する団体が複数ある。このうち、一九八二年に設立された「エグジット」の会員は約六万人。会員が〈1〉治療の見込みのない重い病気にかかっている〈2〉死にたいとの本人の明確かつ継続的な意思がある――などの条件を満たし、自殺を望んだ場合、所属の医師やボランティアが必要な致死薬を提供してきた。
[2000-08-16-00:27]

 

●毎日2000年1月23日(日) 8時27分
<特報・ロマ誘拐>スイスの団体 民族せん滅目的に子ども千人(毎日新聞)
 【ベルン22日福原直樹】スイス政府の支援を受けた青少年福祉団体が1973年までの47年間、「民族せん滅」を目的に国内のロマ(ジプシー)の子供約千人を誘拐した問題の全容が22日、明らかになった。スイス政府保管の文書や被害者の証言によると、誘拐には各自治体や地方警察が加わり、成人するまで施設などに強制収容し、暴行や性的虐待も行われていた。今後被害者がさらに増える可能性は高く、スイス政府は大規模なロマ誘拐の実態究明に乗り出した。
 この団体は「プロ・ユーベンテューテ(青少年のために」(1912年設立)。スイス政府の報告書(196ページ)や毎日新聞が入手した内部文書によると、同団体は26
年、「ロマの子供を両親から引き離し、ロマ民族と文化をせん滅する」(政府報告書)ため、組織に「浮浪児救済」部局を設置した。背景には「ロマは劣等民族で犯罪者、という当時の常識」(同)や優生学思想などの影響があった。
 誘拐された子供は、生後数カ月〜10歳代前半が対象で、地方警察などがロマの自宅などから連れ去った。判明しただけで26〜59年で416人、59〜72年で124人。このほか、4〜5人の兄弟が一緒に誘拐されるなど約80例が確認されており、被害者は計1000人に及ぶ模様だ。
 団体幹部には歴代の大臣経験者など有力政治家が就任。団体の趣旨に賛同したスイス政府は資金援助を行い、その助成金が活動経費の4分の1に達する時期もあった。第2次大戦後の59年になっても団体は「スイスのロマ(の存在)は(将来)単なる思い出になる」と、「民族せん滅」を宣言していた。
 報告書などによると、誘拐後、大半の子供には担当の精神科医が付き、「頭が悪い」などと一方的に判断され、国内の精神病院やスイス人家庭に預けられた。病院では「治療」として冷水風呂に入れられたり、電気ショックを受けたとの証言がある。無実の罪で刑務所に送られた例も多く、所内では何週間もパンと水しか与えられなかった、という。
 団体は73年、担当部局を解体した。スイス政府は90年代に被害者への補償を開始し、98年にやっと団体の資料を元に報告書をまとめた。だが、いまだに各州に誘拐の膨大な資料が残っており、スイス政府は調査を本格化させる方針だ。
 田口晃・北大教授(スイス現代史)の話 人権侵害も甚だしい、ひどい話だ。だが多民族国家・スイスは、国民統合や同化推進に神経質だった歴史的背景があるほか、当時の優生学思想の影響も無視できない。スイス政府の報告書は、これらに冷静な反省を加えた点で評価できる。
ことば・ロマ インド北西部が出身とされる少数民族で、国境を越えて移動する文化風習を持つ。14世紀以降は北上して移動範囲を西欧まで拡大したが、一方で定住も進んだ。欧州では「ジプシー」などと呼ばれたが、差別的な意味が含まれ、現在は主に「ロマ」と呼ぶ。第二次世界大戦中、ナチスの人種撲滅政策の対象になり、推定50万人の犠牲者が出た。欧州など全世界で推定700万〜800万人のロマがいると言われる。
[毎日新聞1月23日] ( 2000-01-23-02:01)


市野川 容孝 1994b 「生殖技術に関するドイツ,オーストリア,スイスの対応──政策過程の比較社会学』,『Studies 生命・人間・社会』2:55-115


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