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デンマークにおける優生手術について




★ 以下,花村春樹訳・著『「ノーマリゼーションの父」N・E・バンク−ミケル
セン』(19940915,ミネルヴァ書房,231p.,1800円)より引用

Neils Erik Bank-Mikkelsen
(ニルス・エルス・バンク−ミケルセン)

19190329  誕生
1959〜1964 優生保護手術問題に関する委員
1971〜1975 精神病者と精神薄弱者の婚姻の権利に関する法務省諮問委員
19900920  没

「今世紀初めにアルフレッド・ビネー博士とテオドール・シモン博士によって知能
測定法が編み出されたことは,知的障害者を理解し処遇する上で画期的な出来事で
した。知能テストが改善されたおかげで,非常に多くの人びとがボーダーラインに
いることが明らかになりました。知能障害についての調査を通じて,一般の人びと
の中にもいわゆる知的障害者がいることが判明しました。同時に,他の調査では準
正常値の者が一貫して増加傾(p.152)向をたどっている事実が明らかになりました。
その結果,この問題の優生学的側面に人びとの関心が集まるようになりました。
 第二次世界大戦が始まるまでの時期は,知的障害の九割までを遺伝によるものだ
と考えるのが一般的傾向でした。この恐ろしいことにどう対処すべきか,その対応
策は幾つか考えられました。生活の隔離,避妊手術,婚姻制限法の制定,一般の人
たちあるいは結婚しようとしている人たちを対象とする優生教育などです。生活隔
離には大規模施設が良い手段になりました。幾つかの国では,避妊手術や婚姻制限
を定めた法律を制定しました。
 一九二〇年代末から一九五〇年代までデンマークでは,ほとんどの場合,避妊手
術が,知的障害者が施設を出るときの一つの条件でした。しかしどれほど多くの人
に避妊手術を実施しても,知的障害者の数は減少しなかったのです。ここで,ヒッ
トラー時代のドイツで行われたことを忘れてはなりません。ドイツ系アーリア人の
改良という目的で知的障害者がガス室に送られ,殺されました。これは,優生学を
根拠としている対応が行き着く結論です。(p.153)」

International Conference on Social Welfare to those for Mentally Handicapped
Persons(1984年11月,マドリッド)での講演
Man as a Vulnerable Being - and as a Subject of Lights - Social Serviceより
=「知的障害者,人権,そしてソーシャルサービス」,花村[1994:141-164]

「Q.障害者の性生活は,ノーマリゼーションの視点からどのように考えるのでし
ょうか?
 あちらこちらの国に講演に行ってノーマリゼーションの話をする機会がありまし
た。その反応は,かなりの数の国で受け入れられているよう思います。しかし,話
が性生活や結婚の話になると,とたんに扉が閉ざされているように感じたものです。
それは,障害者も結婚して良いのか,子どもを生んで良いのか,また性生活を持っ
て良いのかという質問を受けるからです。この点が,それらの国では,問題とされ
るようです。
 お話したように,デンマークでは,かつては障害者に優生手術を強制的に実施し
ました。しかし現在は,本人が意志を表明できる場合は本人の,そうでない場合に
は保護者の同意あるいは希望がなければ手術はできません。
 人間として生活しているかぎり,成人になれば,結婚することも,性生活をもつ
ことも当然のことです。障害者だからといって,それが否定されてよいとは考えま
せん。ただ,周囲の人たちは,それなりの配慮をすることは必要です。

「ノーマリゼーションの発展と課題」(1990年8月24日,日欧文化交流学院で行な
われた講義,引用は講義の後の質疑応答),花村[1994:184-199]

REV: 20161025
デンマーク  ◇優生学 (eugenics)
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