エジプト日本科学技術大:予算不正疑惑の学長辞任
毎日新聞 2014年01月01日 04時30分(最終更新 01月01日 06時29分)
【カイロ秋山信一】日本とエジプトが共同運営するエジプト日本科学技術大学(アレクサンドリア県)のエジプト人学長が大学予算の不正使用をエジプト会計検査院に指摘された問題で、学長が大学に辞意を伝えたことが31日、関係者の話で分かった。大学は1月にも理事会を開き辞表を受理する見通しで、次期学長選出などの協議を始める。
関係者によると、学長に不満を抱く一部教職員がストライキをするなど大学運営が混乱したこともあり、12月28日付で辞表を提出したという。学長は毎日新聞の取材に不正疑惑を否定していた。
会計検査院は2011年以降、2度にわたって、高級家具の購入などがエジプト刑法で禁止された「公金の浪費」にあたると指摘した。高等教育省が検察に不正を告発していた。不正が指摘されたのはエジプトの国庫負担分だった。
エジプト:デモで衝突、11人死亡…収束の兆しなく
毎日新聞 2014年01月04日 11時55分
【カイロ秋山信一】エジプトの首都カイロなど主要都市で3日、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団などが軍主導の暫定政権に反対するデモがあり、保健省によると、治安部隊や政権支持派との衝突で少なくとも11人が死亡、52人が負傷した。モルシ氏が失脚した軍事クーデターから半年が経過したが、暫定政権と同胞団の対立に収束の兆しは見えない。同胞団などは、憲法修正を巡る国民投票が行われる14、15両日にも大規模なデモを呼びかけており、治安への懸念が高まっている。
エジプトでは昨年7月のクーデター以降、イスラム教の集団礼拝がある金曜日に大規模なデモが恒常化している。政府系紙アルアハラムによると、3日も正午の礼拝後に各地でデモが始まり、無許可のデモを取り締まろうとする治安部隊との衝突が起きた。デモ隊は投石や火炎瓶で治安部隊に反撃した。同胞団側は19人が死亡したと主張している。
暫定政権は昨年12月、北部マンスーラの警察施設で起きたテロ事件に関与したとして、同胞団を「テロ組織」に指定した。同胞団が呼びかけたデモに参加すれば禁錮5年を科せられる可能性がある。同胞団はテロへの関与を否定。国民投票のボイコットを表明するなど、暫定政権との対決姿勢を崩していない。
エジプト熱気球墜落:操縦士、遺族に謝罪 「突然、炎が」
毎日新聞 2014年01月05日 07時30分
エジプトで昨年2月、日本人4人を含む19人が死亡した熱気球墜落事故で、事故機を操縦していたモーメン・ムラード操縦士(29)がエジプト南部ルクソールの自宅で毎日新聞の取材に応じ、「炎が突然上がり、爆風で吹き飛ばされた」と事故時の状況を説明した。ムラード操縦士がメディアの直接取材に応じるのは初めて。「亡くなった乗客と遺族に対し、申し訳ない気持ちを伝えたい」と話した。【ルクソールで秋山信一】
ムラード操縦士によると、異変は約45分間の飛行を終え、地上約10メートルまで下降した時に起きた。着陸地点にサトウキビ畑があったため、体をひねって右後方のガスボンベの上に置いてあったロープを地上のスタッフに投げ、畑の外に気球を誘導するよう求めた。体を戻すと、視界に炎が広がり、左半身を中心に衣服が燃え上がった。
操縦士は、左右の客席のバスケット部分にかがんで着陸態勢をとっていた20人の乗客に「ジャンプ」と叫んで飛び降りるよう指示した。炎で何も見えず、手探りで足元にあった消火器を使おうとした。気球が浮上したため、乗客の一部が飛び降りたと感じたという。事故後、客を「置き去り」にして脱出したと報じられたが、ムラード操縦士は「爆風の衝撃でバスケットから投げ出され、地上に落ちた」と説明した。病院に搬送されて一命をとりとめたが、体の大部分にやけどを負った。
バーナーにガスを送るホースからガスが漏れていたことが検察当局の捜査で判明したが、飛行前の点検では異常はなかったという。原因は「見当が付かない」と話した。
ムラード操縦士は2006年4月に操縦免許を取得。1000時間以上の飛行経験があり、11年8月には操縦士のインストラクターの資格も得た。昨年4月に退院したが、通院と手術を繰り返している。鎮痛剤で痛みを抑えており、眠る前には事故当日のことを思い出すという。勤めていた気球運航会社から支援はなく、持ち家や車を売って治療費に充てている。
事故では、最初に飛び降りた英国人男性が助かったが、他の19人は死亡した。検察は業務上過失致死の疑いでムラード操縦士を捜査しているが、民間航空省が設置した事故調査委員会は、スペインの気球製造業者の製造者責任も含めて原因を調査しており、検察は委員会の結論を待って、最終的な判断を下す。
アラブ諸国、中ロと接近 米の影響力低下
2014/1/6 23:40
日本経済新聞 電子版
アラブ諸国が中国やロシアに接近し始めた。国内情勢が不安定なエジプトなどは企業への出資や援助拠出に熱心な中ロとの経済関係を拡充。米国とイランの対立緩和を機に、反イランのアラブ産油国とイスラエルが接触しているとの情報もある。米国の中東への影響力が低下するなか、新たな関係を模索する動きが出てきた。
「米国は武器支援を差し止めたり我々なりの民主化の進め方に干渉したりする。だからエジプトはロシアの方を向く」。昨年12月に来日したエジプト憲法改正委員会メンバーのタラウィー氏はこう打ち明けた。
ムスリム同胞団系のモルシ前大統領が軍のクーデターで解任された後、米政府は7月にF16戦闘機の引き渡しを凍結。暫定政権とモルシ支持派の衝突で生じた混迷を受け、10月には軍事支援の全面停止を決めた。
エジプトは11月、カイロでロシアと外相・国防相会談を開催。20億〜40億ドル(約2000億〜4100億円)の武器商談観測が流れた。協議に参加したファハミ・エジプト外相は「何も決まっていない」と発言したが、旧ソ連時代にアスワンハイダムの建設や軍事協力を進めた例を引き「米国も重要だが選択肢を増やしたい」と語る。
エジプトには中国企業の進出も相次ぐ。中国石油化工集団(シノペック)は昨年秋、米企業が握る西部油田権益の一部を取得。民営自動車大手の浙江吉利控股集団は若者向けの新たな車種の生産を計画している。
ロシアは中東地域への窓口だったシリアの内戦収拾のメドがたたず、中東地域での外交戦略を再構築しようとしている。中国も経済面での影響力を強めたい思惑がある。軍が暫定政権を主導するエジプトなど不安定な状況のアラブ側からみて「リスク許容度が高く民主化で注文もつけない中ロは継続的関係が期待できる」(外交関係者)。
アラビア半島のイエメンも11月の中国との首脳間合意を受け、発電所、港湾、製油所の建設など5億ドル規模の事業を計画している。中国側はイエメン軍に800万ドルの資金援助を公約した。
12月中旬、東京で開いた日本・アラブ経済フォーラムに出席したサイフ・ヨルダン計画相は、原発建設事業でロシア企業が優先交渉権を取得したと指摘。「事業費の49%拠出に同意したロシアの資金面の提案は意欲的だ」と高く評価した。
米国の中東政策を巡っては、イランと核開発協議で妥結し同国と接近したことにイスラエルが反発。来日した関係者は「イランと反目するペルシャ湾のアラブ産油国と情報交換のため第三国で接触し始めた」と明かす。
イスラエルが接触したのは、かつて経済代表部レベルの外交関係があったバーレーンやカタールとの説が出ている。(編集委員 中西俊裕)
エジプト:熱気球事故はガス漏れの可能性 調査委報告書
毎日新聞 2014年01月08日 10時34分
【カイロ秋山信一】エジプト南部ルクソールで昨年2月、熱気球が炎上、墜落し、日本人4人を含む19人が死亡した事故で、エジプト民間航空省の事故調査委員会は7日までに、ガス漏れが事故原因である可能性が高いとする報告書をまとめた。民間航空省の担当者が明らかにした。ガス漏れの原因が、点検・整備など人的ミスか、製造時の欠陥かには言及していない。事故調査委は、民間航空省と気球製造業者に再発防止策を提言したという。
民間航空省によると、報告書は、ガスボンベとバーナーをつなぐホースから漏れたガスに引火し、熱気球が炎上した可能性が高いと指摘した。男性操縦士(29)については、炎上の衝撃によって落下したと結論づけた。
検察当局は、業務上過失致死容疑で操縦士の捜査を続けており、訴追について近く最終判断する。操縦士は毎日新聞の取材に「事故前の点検で異常はなかった」と話していた。
エジプト気球墜落:ガス漏れが原因−−事故調
毎日新聞 2014年01月08日 東京夕刊
【カイロ秋山信一】エジプト南部ルクソールで昨年2月、熱気球が炎上、墜落し、日本人4人を含む19人が死亡した事故で、エジプト民間航空省の事故調査委員会は7日までに、ガス漏れが事故原因である可能性が高いとする報告書をまとめた。民間航空省の担当者が明らかにした。ガス漏れの原因が、点検・整備など人的ミスか、製造時の欠陥かには言及していない。事故調査委は、民間航空省と気球製造業者に再発防止策を提言したという。
民間航空省によると、報告書は、ガスボンベとバーナーをつなぐホースから漏れたガスに引火し、熱気球が炎上した可能性が高いと指摘した。男性操縦士(29)については、炎上の衝撃によって落下したと結論づけた。
エジプト、モルシ前大統領の裁判延期
nikkei.com
2014/1/8 22:48
【カイロ=押野真也】エジプト国営メディアは8日、同日に予定されていたモルシ前大統領に対する裁判が2月1日に延期されたと伝えた。天候不順で前大統領を空路で移送できないとの理由だが、前大統領の支持者によるデモなど、治安悪化を懸念した可能性もある。前大統領は2013年7月、軍のクーデターで解任され、デモ隊を扇動して死者を出した罪などに問われている。
(アジア・新興国NOW)エジプト株、デモ縮小で上昇基調
2013/11/14付
日本経済新聞 夕刊
エジプト株が上昇基調にある。イスラム原理主義組織のデモを治安当局が押さえ込んでいることを好感し、11月7日には年初来高値となる6415.82ポイントをつけた。低迷が続いていた観光株にも買いが入り、独裁のムバラク政権が崩壊した2011年2月以前の水準を回復した。
株価指数「EGX30」はデモが下火になった9月以降、ほぼ一本調子で上昇。足元では一服しているものの、「海外投資家の利益確定売りにすぎない」(米系投資会社)との見方が多く、当面は6500ポイントを回復するかどうかに注目が集まっている。
投資家の心理が改善している背景には、エジプトの外貨準備高と治安の改善が大きく影響している。一時枯渇しかけた外貨準備は、サウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国からの援助を受けて回復。10月末時点の外貨準備は186億ドル(約1兆8200億円)と、必要最低水準といわれる150億ドルを上回っている。
治安情勢では、東部のシナイ半島では治安当局の施設に対するテロ攻撃が相次いでいるものの、カイロなど主要都市では軍や警察が取り締まりを強化。夜間外出禁止令も緩和されるなど、6月以降続いた社会の混乱は改善に向かっているとの見方が多い。
ただ、今後も安定に向かうかは疑問視する見方もある。弾圧されている原理主義組織が再び過激な行動に出る可能性は捨てきれない。現在の暫定政権は14年春にも総選挙と大統領選挙を実施し、民政に移管する計画だが、新憲法の制定作業は難航している。
最近では暫定政権に批判的な米国に対し、反米感情が強まっている。閣僚などが米国を公然と批判することもあり、両国間の亀裂は深まっている。これまでの親米路線が大きく修正されれば、地域にとっての影響は大きく、米欧諸国からの投資にも暗い影を落としかねない。
(カイロ=押野真也)
アラブ、凍える春 民主化運動から3年 エジプトとシリア
asahi.com
2014年1月15日05時00分
チュニジアでベンアリ政権が倒れ、中東で「アラブの春」と呼ばれる民主化の動きが広がり始めて3年。選挙で選ばれたムルシ政権が軍のクーデターで倒れたエジプトでは14日、軍部が主導した憲法改正案の国民投票が始まった。シリアでは内戦が続く。「安定の回復」を名目に、強権的な支配を正当化する新たな論理が台頭しつつある。▼国際面=3年の歩み
■憲法問う朝、裁判所爆破 エジプト
「あれを見ろ。今必要なのは治安の回復なんだ」
エジプト・カイロ西部インババ地区。14日朝に始まった憲法改正案の国民投票のため投票所に並んだ人々が叫んだ。投票開始前、投票所からわずか数百メートルの裁判所の玄関付近が爆破された。この地区には、昨年7月のクーデターで失脚したムルシ前大統領の出身母体イスラム組織「ムスリム同胞団」の支持者らが多く住む。
2012年に選挙で選ばれたムルシ政権は、イスラム色を強めた憲法を同年12月の国民投票を経て発効させた。だが軍がクーデターで憲法の効力を停止。軍主導で憲法改正案が作られ、再び国民投票にかけられた。改正案には、軍の権限強化や、宗教政党の結成禁止などが盛り込まれた。クーデターそのものに反発する同胞団は14日、各地で投票に反対するデモを行った。
一方で、社会が混乱から抜け出せない状況に、多くの国民はいらだちを募らせる。投票所にいた男性(65)は「安定のために賛成票を入れる。前に進まなきゃいけない」と話した。15日までの投票で同胞団などが参加拒否を続ければ、改正案が承認される公算は大きい。そうなれば、政権移行プロセスが国民のお墨付きを得たかたちとなり、クーデターの立役者であるシーシ国防相兼副首相に大統領選出馬を求める声が一層強まるとの観測もある。
反ムバラク政権デモを主導したリベラル派の青年グループの結束は弱まっている。「4月6日運動」の幹部カマル氏(40)は「どう国を再生するかではなく、どう主張を実現するかで分裂してしまった」と振り返る。同運動の指導者アフマド・マヘル氏は同胞団と対立して一時はクーデターに賛同したものの、その後制定された「デモ規制法」違反に問われ、実刑判決を受けた。
(カイロ=金井和之)
■家に×印、焼き打ち宣告 シリア
アサド政権に退陣を求めるデモが内戦に発展したシリアでは、これまで12万人以上が死亡。首都ダマスカスでは、いたるところに家を失った人々の姿がある。
郊外ジャラマナ地区のアパートに家族13人で暮らすフセインさん(35)は南郊のムアダミヤから逃げてきた。1年半前の朝、家に×印を付けられた。「反体制派からの焼き払うという宣告だった」。その日のうちに逃げた。「仕事はない。蓄えも底をついた」と表情は暗い。
ムアダミヤはいま反体制派の支配下にある。食料が不足し、栄養失調で死ぬ子供も出ている。国連世界食糧計画(WFP)によると、国内避難民は650万人。政権軍と反体制派の戦闘に挟まれて食料危機が進む地域に250万人が暮らす。
北部アレッポからの避難民イサムさん(46)は「3年で全てが無になった」と嘆く。アレッポでは、政権軍がドラム缶に燃料や金属片を仕込んだ約1トンの「たる爆弾」を反体制派支配下の住宅地に投下。反体制派は「1カ月で700人が死んだ」と非難している。
一方、政権側は内戦を「テロとの戦い」と位置づける。実際に、アルカイダ系のイスラム過激派が勢力を伸ばし、政権軍や反体制組織・自由シリア軍と三つどもえの戦いを続ける。「アサド政権後」が見通せないことへの不安が広がり、欧米諸国によるアサド大統領の退陣を求める動きも鈍っている。
(ダマスカス=川上泰徳)
エジプト、国防相が大統領選に意欲 改憲承認は確実に
nikkei.com
2014/1/17 0:30
【カイロ=押野真也】エジプトで14、15日に実施した憲法改正案の是非を問う国民投票は、賛成多数で承認されることが確実になった。次の焦点は新憲法下での大統領選挙。軍トップのシシ国防相(59)が意欲を見せており、国内での人気の高さから出馬すれば勝利は堅いとされる。一方で軍政の継続だとして米欧を含め内外から反発が出る可能性もあり、軍内部には情勢を見極めるべきとの慎重論もある。新政権の姿が見えるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。
エジプト政府系メディアによると、16日正午(日本時間同日午後7時)の段階で国民投票の開票作業は27行政区のうち25区で終わった。一部混乱もあったが憲法改正案への賛成票は98%と承認は確実な情勢。18日以降に正式な結果が発表される見通しだ。
イスラム色の強いモルシ前政権を追放した暫定政権は憲法を停止中。国民投票での承認は現体制が本格政権に移行するための大きな一歩となる。憲法改正案は国民投票から90日以内に大統領選挙か議会選挙を実施すると規定。現時点では国のトップを決める大統領選を先行させるのではないかとの観測が強い。
民間には有力な大統領候補がなく、国民の間では混乱収拾を主導してきた軍とシシ国防相への待望論が高まっている。「安定の象徴である軍を率いており、国家再生に揺るぎない決意を持っていると国民がみているため」(アハラム政治戦略研究センターのエマド・ガッド研究員)。街中ではシシ国防相のポスターが目立ち、顔写真を印刷したTシャツやバッジなども人気だ。
シシ氏も国営メディアの取材に対して「国民が私を望むのであれば」という条件付きながら出馬の可能性に言及。「私が出馬するとすれば、国民の要求と軍の命令が必要だ」「民主的な近代国家を建設しなければならない」などと意欲を見せている。
ただ、憲法改正案は政教分離を掲げてイスラム政党の選挙への参加を禁じているほか、デモや集会の制限、国防相人事の決定権など軍の影響力を強めている。さらにシシ氏が大統領に就任すれば、軍政と距離を置いてきた米欧との関係改善が進まない可能性がある。散発的なテロを行っている国内のイスラム勢力も反発を強めそうだ。
情報畑出身のシシ氏も、経済など政権運営の手腕は未知数。軍には2011年2月のムバラク政権崩壊後に暫定統治を担い、経済低迷や治安に関する国民の批判にさらされた苦い経験もある。シシ氏や軍はこうしたリスクと、国内をひとまず安定させる効果の両方を考慮し、大統領選への態度を決めるとみられる。
エジプト経済、援助で小康保つ サウジなど湾岸諸国が手厚く
2014/1/17 0:30
日本経済新聞 電子版
【カイロ=押野真也】モルシ政権末期に混乱したエジプト経済は、小康状態を保っている。クーデター後に経済援助を減らした米欧に代わり、サウジアラビア、クウェートなどペルシャ湾岸諸国が総額120億ドル(約1兆2400億円)を支援したことが支えとなっている。
湾岸諸国は、イスラム原理主義的ではない政権が続くことを期待。サウジ政府はエジプトの安定を重視し「他国が援助を削減しても、それと同額を支援する用意がある」と援助の継続を約束している。一時枯渇しかけたエジプトの外貨準備高は、必要最低の水準といわれる150億ドルを安定的に上回っている。ガソリンや家庭用ガスを求める人々の長い行列は消え、外資系を含めた企業の活動も正常化。軍が市街地を警備することで一時より治安は安定した。
ただそれまでの情勢悪化で減っていた海外からの投資や観光客は取り戻せていない。世界銀行によるとエジプトへの直接投資額は2012年で約28億ドル(約2900億円)と、ムバラク政権時代から6割以上の落ち込み。経済成長率も一時の5%台から2%前後に低下している。
若者の高い失業率や経済格差の拡大、汚職のまん延など、根本的な経済改善も残っており、今後、本格政権が発足しても、経済状況を改善できなければ再び政情不安を招く可能性もある。
アフリカ出身「歴史つくる」 大相撲・大砂嵐(上)
nikkei.com
2014/1/18 7:00
カナダ、フランス、ドイツ、英国。世界各国から舞い込むインタビューの依頼に、大砂嵐金太郎(21)はほおをつねりたくなる心境だ。「こんな日が来るなんて」。ほんの2年半前までエジプトで見よう見まねで相撲を取っていた青年が、初のアフリカ出身力士として幕内のひのき舞台に。本当に想像もつかなかった。
■パワー生かし所要10場所で新入幕
昨年11月、初めて幕内に挑んだ九州場所では7勝8敗に終わったものの、2012年春場所の初土俵から所要10場所での新入幕は、外国出身者では史上最速。
「もうちょっとゆっくりでもよかった」と本人がいうほどのスピード出世は、並外れたパワーがあればこそだ。
いかにも経験不足という腰高な仕切り、外から振り回すような張り手は隙が多いものの、力でねじ伏せるような取り口で番付を駆け上がってきた。
本名はアブデルラフマン・シャーラン。少年時代はやんちゃな性格でケンカばかり。「エネルギーが有り余っていたから、遊びのつもりで殴りかかっていた」
15歳の時には25人を相手にたった1人で挑んだこともあり、「エジプト地図を体中に描いたみたいに傷だらけになっちゃった」。
■体重半分の相手に歯が立たず
「とにかく冒険好きで攻撃的だった」というシャーラン少年が、エジプトで相撲と出合ったのも15歳だ。
11歳で始めたボディービルで筋骨隆々、体重はすでに120キロ。通っていたジムの知人に誘われ、初めて土俵で向き合った相手の体重は60キロほど。
自信満々で臨んだが、「7番取って全部負けた。下手投げ、上手投げ、寄り切りが3回、立ち合いの変化が2回」。決まり手まで覚えているほどショックは大きかった。
帰宅後にインターネットで調べるうちにどんどん相撲に興味が湧いた。「パワーのスポーツだと思っていたけれど、パワーをどう機能させるかが大事なんだ」
横綱貴乃花が右膝の大けがを押して優勝決定戦で武蔵丸を下した映像を見て感動し、徐々に衝動が抑えきれなくなった。「すぐに日本に行って相撲が取りたい」
■車で片道4時間、カイロの道場通う日々
即断の理由は「昔から、将来は何になりたいかと聞かれるたびに『歴史をつくりたい』と答えていたから」。
柔道で有名な選手はエジプトにもいるけれど、アフリカからもイスラム圏からも力士は出ていない。ならば自分が入門すれば「歴史」の一部になれる--。ここから角界入りへ向けた努力の日々が始まった。
自宅から車で片道4時間かかるカイロの道場に通い、翌08年には世界ジュニア選手権無差別級で3位に。大会で出会った日本選手にプロ入りについて相談したが、英語が通じず断念。オランダ相撲連盟のコーチの仲立ちで来日を果たしたのは11年秋だった。
各部屋に手当たり次第に手紙を送り、稽古に参加したが色よい返事はもらえない。連日の疲労が蓄積し、最後に訪れた大嶽部屋では若手力士にも全く歯が立たなかったが、負けても負けても土俵に上がる姿が大嶽親方(元十両大竜)の目に留まった。
「強くなりたいという一生懸命さが違っていた。その熱意に打たれた」。いちずな思いが歴史を動かした。
(敬称略)
〔日本経済新聞夕刊1月14日掲載〕
稽古も生活も、ぐんぐん吸収 大相撲・大砂嵐(下)
2014/1/18 7:00
日本経済新聞 電子版
アフリカ初の力士となって歴史に名を残したい一心で2011年に来日したものの、当時の日本についての知識は「ジャッキー・チェンのイメージくらい」と皆無に近く、もちろん大相撲の稽古の厳しさについては知る由もなかった。
■あえて日本人以上に厳しく接する師匠
「これ以上たいへんなことはないと思っても、翌日はもっとたいへんだった」。エジプトではきちんと指導してくれるコーチがいなかったこともあり、一から基本をたたき込まれる稽古は過酷。先輩後輩の関係を重んじるなど、生活面で戸惑うことも少なくなかった。
それでも余計な知識がない分、吸収は早かった。「勝てなかった相手に一晩たったら勝てるようになったり。普段の生活でも周りになじもうと努力していた」と師匠の大嶽親方(元十両大竜)。
来日直後の部屋の九州場所宿舎では、命じられたトイレ掃除を毎日30分近くかけて念入りにこなした。師匠が「水がもったいないからもういいよ」とストップをかけたほどだ。
師匠は今もあえて大砂嵐には日本人力士以上に厳しく接する。門限は午後10時。しかも外出する際は必ず師匠の許可を得ることになっている。
昨年秋場所初日の前日の「ストレス発散のために秋葉原をぶらぶら歩きたい」という申し出も、即却下。幕下時代に他の部屋の力士から食事に誘われた際も、「土俵に上がったらみんな敵。情が湧いてしまってはいけない」と師匠は許さなかった。
■横綱への夢、文化の壁越え
こうした方針については師匠の方も「がんじがらめにするのが正解なのかはわからない」と手探り状態。
だが「遊びたいなら相撲をやめて好きにすればいい。横綱になるという夢があるのだから、そこに近づくためにどうしたらいいか考えなければ」。可能性を認めるが故のスパルタだ。
イスラム教徒であることについても「配慮はするけど特別扱いはしない」と言い渡している。豚肉を抜いたちゃんこを用意する一方で、日中の飲食ができないラマダン(断食月)の間も朝稽古には参加させた。本人も「大砂嵐に宗教は関係ないです」と言い切る。
相撲に取り組んでいるときは大砂嵐、イスラム教徒としての務めを果たすときは本名のアブデルラフマン・シャーラン。オンとオフを切り替えるように分けて考えているから、必勝祈願で神社に参拝することにも抵抗はない。全ては「横綱になりたい」という夢の実現のためだ。
■「美意識の壁」脂肪増には抵抗感
当面の課題は腰高の矯正と、体重を増やすこと。187センチ、156キロの体は筋肉の塊のようにたくましいが、「もっと肉をつけて重みを増さないと。しっかりした筋肉の上に脂肪のよろいがあってこそ土俵際で残せるんだから」と師匠は説く。
ところが本人は「今の体がベスト」と譲らない。もともと格好いい体形になりたいという理由でボディービルをやっていたくらいだから、脂肪を増やすことへの抵抗感は根強い。
「今のままでは上で通用しない。考え方も変えなければ」と師匠。文化、宗教の壁よりも、意外や高かった「美意識の壁」を乗り越えられるか。
(敬称略)
〔日本経済新聞夕刊1月15日掲載〕
ナイル.com(8):イスラム教の食肉文化
毎日新聞 2014年01月20日
「何で肉は食べないの?」。日本に留学していた頃、肉を避けてシーフードばかり食べる私にホームステイ先の家族が尋ねました。焼き肉店や牛丼店の前を通るたびに「食べてみたい」とも思っていました。ですが日本で一般に流通している肉を食べるわけにはいきません。イスラム教徒は「ハラール」という、アラー(神)の教えに従って処理された食肉しか食べてはいけないのです。
ハラールとはイスラム用語で「許された」または「合法の」という意味です。食肉の処理方法はコーラン(イスラム聖典)とハディース(預言者ムハンマドの言行録)に基づいています。コーランには「アラーの御名を唱えてない食物を食べてはならぬぞ」(岩波文庫・井筒俊彦訳「コーラン」)とあります。ムハンマドは「のどと2本の血管を切って、ナイフをよく研いで動物が苦しまないようにしなさい」との言葉を残しました。
具体的にはどういうことなのでしょうか。エジプトの首都カイロにあるバサーチン羊肉処理場で処理方法を見せてもらいました。
まず羊の頭を聖地メッカ(サウジアラビア)の方角に向けます。「ビスミッラー(アラーの御名において)」と唱えてから、鋭いナイフでのど元を素早く横に切ります。のどと食道、2本の血管(頸=けい=動脈・頸静脈)を一気に切ると、大量の出血があり、3秒ほどしてから数秒間、羊はけいれんしました。出血が止まるまで1分ほどのことでした。
ハラール肉の処理方法は、科学的にも合理的なようです。畜産研究家のアルハデミさん(61)によると、食肉を処理する際には、血液の循環、心臓の拍動、呼吸を通常通り保つ工夫が必要だとのことです。ハラール肉の処理方法を実験したところ、99%の血液が一瞬で体外に出て、欧米で一般的な電撃で気絶させてから処理する方法に比べても、血を早く抜き出せたそうです。処理に時間がかかると、血液が固まって抜き出すのが難しくなります。アルハデミさんは「血液は細菌や微生物が増殖しやすいので、早く抜き出したほうが安全な肉になる」と教えてくれました。
一方で、欧米の動物愛護団体からは、ハラール肉の処理方法が残酷だとの意見もあります。ドイツ・ハノーバー大学の研究チームは1978年、動物の脳から生じる電気活動を記録する「脳波図」を使った実験結果を発表しました。ハラール肉の処理方法は、電撃で気絶させた後に処理する方法に比べて、動物がほとんど痛みを感じなかったそうです。しかし、2009年のニュージーランド・マッセイ大学の実験では、正反対の結果が出ました。
本当のところはどちらなのでしょうか。実際に処理を見た限り、写真を撮るのが間に合わないほど、あっという間でした。エジプトには「早く決断してほしい」という意味で、「ささっと血管を切って、出血させなさい」ということわざもあります。
私はイスラム教徒として、ハラール肉の処理方法が最善なのだと思っています。日本から帰国した日、母に肉料理をたくさん作ってもらいました。チキン、牛焼き肉、ハトの揚げ物。大食いに挑戦しているように食べたことが一生忘れません。【ザイナブ・アジジ(カイロ支局スタッフ)】
エジプト:連続爆破テロ、6人死亡 アルカイダ系声明、デモ混乱の恐れ
毎日新聞 2014年01月25日 東京朝刊
【カイロ大治朋子】エジプトの首都カイロ中心部にある警察本部前などで24日、相次いで4件の爆弾テロがあり、少なくとも6人が死亡、およそ100人が負傷した。治安当局を狙った首都圏でのテロとしては、昨年7月の暫定政権発足以降、最大規模。エジプトは25日、ムバラク元大統領による長期独裁政権を崩壊させた「アラブの春」と呼ばれる反政府デモの開始から3年を迎える。暫定政権の支持者と反対派によるデモが全土で計画されており、混乱が拡大する可能性がある。
エジプト国営放送などによると、警察本部前での爆発は24日午前6時半ごろ発生。カイロ上空に黒煙が立ちのぼり、銃声が響いた。何者かが爆発物を車に載せ、警察本部前で自爆したとの情報がある。
国際テロ組織アルカイダ系でシナイ半島を拠点とするイスラム過激派組織「アンサール・バイト・マクディス(エルサレムの支持者)」は24日、「罪人の巣の一つを攻撃した」との犯行声明を発表。暫定政権のベブラウィ首相は同日、「テロ勢力による攻撃だ」と非難した。
また、ギザ市中心部ドキ地区の地下鉄べホース駅付近や同市中心部アルハラム通りのタルベイヤ警察署付近などでも爆発があった。同署近くには、観光地として有名なギザのピラミッドがある。
「エルサレムの支持者」は、昨年9月に起きたエジプト内相暗殺未遂事件の犯行を認めている。昨年12月24日には、北部の警察施設を攻撃し、100人以上が死傷した。
「エルサレムの支持者」はシナイ半島から、隣接するイスラエルへの攻撃を繰り返してきたが、昨年7月のエジプト軍事クーデター後、暫定政権への攻撃を開始した。クーデターで排除されたモルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団と連携しているとの情報もあり、暫定政権は同胞団も「テロ組織」と認定、取り締まりを強化している。
エジプト:デモ3年 安定と対話、願い交錯
毎日新聞 2014年01月25日 東京夕刊
【カイロ大治朋子】中東の民主化要求「アラブの春」の一環で、エジプトのムバラク元大統領を退陣に追い込んだ2011年1月の反政府デモ開始から25日で丸3年を迎えた。当時数万人が抗議活動を繰り広げた首都カイロのタハリール広場には軍が戦車などを配備し厳戒態勢を敷いている。昨年7月の軍事クーデター以降も混乱が続くエジプトでは、暫定政権を支持し早期安定化を求める市民と、「強権的な抑圧」を批判し対話を求める人々が対立している。
国営テレビなどによると、24日はカイロ中心部の警察本部などで計4件の連続爆弾テロが発生した。昨年7月以降に首都圏で起きたテロ事件としては最大規模で、少なくとも市民を含む6人が死亡、約100人が負傷した。さらに、カイロに隣接するギザ市などでは反政府デモも相次ぎ、AP通信などによると治安当局との衝突で14人が死亡。25日は政権支持派と反対派がそれぞれデモを予定しており、死傷者がさらに増える可能性がある。
24日夕、タハリール広場を訪れると、軍主導の暫定政権を率いるシシ国防相を称賛する人々が集まっていた。中心部は鉄格子で囲われ、軍や警察の装甲車が並ぶ。上空には治安当局のヘリコプターが旋回していた。
「私は明日も(暫定)政府を支援するためにここに来る。とにかく安定した安全な国が欲しい」。広場にいたムスタファ・アリさん(45)が語った。観光業を営んでいたが、治安の不安定化で客足が途絶え、最近、店を閉じた。現在はタクシー運転手で日銭を稼いでいるが、ムバラク元大統領時代の「安定」を懐かしくも思う。「不正は多かったが、生活は何とかできていた」
暫定政権は昨年11月、デモ活動には事前申請を求め、「公共の安全への脅威」と見なされる抗議運動は禁止できると定めた法律を制定した。これには「表現の自由の抑圧」「力ずくの封じ込め」との批判が高まっている。政府職員のソハ・セイレムさん(40)は、「このまま強硬策を続けると、デモが暴力的になりテロが拡大しかねない。反体制派を刑務所に入れるのではなく、話し合いをしてほしい」と訴えた。
エジプト、3月にも大統領選 暫定大統領が発表
asahi.com
2014年1月26日22時33分
エジプトのマンスール暫定大統領は26日、大統領選を議会選に先んじて行うと発表した。アラブ圏紙によると、3月中に投票の見通しで、昨年7月のクーデターを主導した軍のトップ、シーシ国防相の出馬が有力視されている。
また、エジプト保健省は同日、25日に起きたデモ隊と治安当局の衝突で49人が死亡したと発表した。ムバラク政権を退陣に追い込んだデモ蜂起から3周年を記念し、軍主導の暫定政権支持派と反対派の双方がデモ。治安当局は反対派を散弾銃などで制圧した。(カイロ=神田大介)
デモ隊と治安部隊が衝突、49人死亡…エジプト
【カイロ=久保健一】エジプト保健省は26日、デモ隊と治安部隊による25日の衝突で、少なくとも49人が死亡し、249人が負傷したと発表した。
首都カイロや近郊のギザ、北部アレクサンドリア、中部ミニヤ県で死者が出た。ただ、26日は大規模なデモや衝突の発生は伝えられていない。
エジプト暫定政府のマンスール大統領は26日、当初の政治行程表を変更し、大統領選を議会選に先立って実施すると発表した。
(2014年1月26日23時37分 読売新聞)
エジプトでデモ隊と治安部隊衝突、49人死亡
nikkei.com
2014/1/26 19:41
【カイロ=押野真也】エジプト保健省は26日、25日に同国各地で起きたデモ隊と治安部隊などとの衝突で49人が死亡したと発表した。2011年1月25日に反体制デモが全土に広がり、独裁政権を崩壊させたことから、同日は「革命記念日」とされる。現在の暫定政権に反対するイスラム原理主義組織や暫定政権支持派など各勢力がデモを実施。デモ隊同士の衝突のほか、警察施設を狙った爆破事件も起きた。
エジプト:続く混乱、増える死者 逮捕は1300人以上
毎日新聞 2014年01月26日 19時54分(最終更新 01月27日 16時52分)
【カイロ大治朋子】エジプトの首都カイロをはじめ各地で25日に起きたデモ隊と治安部隊による衝突に伴う死者は、26日までに49人となった。エジプト保健省が明らかにした。
昨年7月の軍事クーデターで排除されたモルシ前大統領の支持者や改革を求める若者らの抗議運動に対し、軍は「許可のないデモ」などとして催涙弾や放水で鎮圧、一部地域では実弾を使用した。24日に始まったデモや爆弾テロによる死者はこれで計69人に達し、1300人以上が逮捕されている。
アラブ諸国は民主化をあきらめるな
nikkei.com
2014/1/27付
熱狂が思い描いた未来だろうか。アラブ諸国に広がった民主化要求運動、いわゆる「アラブの春」が始まって3年。独裁政権が倒れた後も、各地で新しい国づくりへの苦闘が続く。混乱は長期化し、人々は疲れている。
だが、民主化をあきらめてはならない。法と秩序の確立に辛抱強く取り組まねばならない。国民の和解を促し、安定の実現に何ができるのか。国際社会も改めて考える必要がある。
行方を占うのが、アラブの大国であるエジプトだ。ムバラク政権の打倒を目指すデモが始まったのは、2011年1月25日。中心となったのは「パンと自由」の標語を掲げる若者たちだった。
その後、主役はめまぐるしく代わった。初めての自由選挙で大統領の座についたのは、組織力を持つイスラム勢力出身のモルシ氏だ。そのモルシ大統領は昨年7月、軍によるクーデターで追われた。
今月、モルシ政権下で制定された憲法の改正を問う国民投票があり、98%が賛成した。改正憲法は軍の権限強化を定める。ムバラク時代への揺り戻しともいえる。
クーデターに反発するイスラム勢力は投票をボイコットした。軍主導の暫定政府との衝突も続く。それでも、多くの賛成票を集めた国民投票の結果は、早期の安定を望む声を映しているのも事実だ。
暫定政府は今夏までに大統領選挙と議会選挙を予定する。民主選挙はアラブの春で多くの犠牲を払って手にした果実だ。イスラム勢力を含む、全政治勢力が参加し、期日通り実行することが重要だ。
国際社会は連携し、公正な選挙実施を迫る必要がある。日米欧はエジプトに多額の経済援助を続ける。確実な民政移行を援助継続の条件とすることも必要だろう。
チュニジアでも世俗勢力とイスラム勢力の対立が続き、憲法制定など民主化の手続きが遅れている。リビアやイエメンでは、国内に割拠する部族や宗教勢力が衝突を繰り返している。混迷から抜け出る道は対話以外にない。アラブの春でつかんだ「自由」を暴力で台無しにしてはならない。
「パン」、すなわち、生活水準の底上げも重要な課題だ。アラブの春の根底には、急増する人口と高い失業率がある。多くのアラブの国で30歳以下の若年層が人口の5割以上を占める。雇用を生む産業の育成や人材教育への協力が、政治的な安定にも欠かせない。
エジプト大統領選、3月にも 議会選より先行 衝突の死者49人に
asahi.com
2014年1月27日05時00分
エジプトのマンスール暫定大統領は26日、大統領選を議会選に先んじて行うと発表した。アラブ圏紙によると、3月中に投票の見通しで、昨年7月のクーデターを主導した軍のトップ、シーシ国防相の出馬が有力視されている。
また、エジプト保健省は同日、25日に起きたデモ隊と治安当局の衝突で49人が死亡したと発表した。ムバラク政権を退陣に追い込んだデモ蜂起から3周年を記念し、軍主導の暫定政権支持派と反対派の双方がデモ。治安当局は反対派を散弾銃などで制圧した。(カイロ=神田大介)
エジプト:シシ国防相 春の大統領選に立候補へ
毎日新聞 2014年01月27日 23時42分(最終更新 01月28日 00時17分)
【カイロ秋山信一】複数のエジプトメディアによると、シシ国防相(59)は27日、今春実施の大統領選に立候補する意向を固めた。シシ氏は昨年7月のクーデターを主導し、当時のモルシ大統領を追放した。世俗リベラル派を中心に人気は絶大で、当選が有力視される。ただ、モルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団は「反逆者」と批判。国民の愛憎半ばするシシ氏が大統領に就任した場合、国民融和はより困難になるとみられる。
27日に開かれた軍最高評議会で軍幹部らから出馬を求められた。シシ氏は「国民の支持と軍による負託」を立候補の条件に挙げていたが、1月中旬の国民投票で自身が推進した憲法改正が圧倒的多数で承認されたため、国民の支持も得られたと判断した模様だ。大統領選は4月までに実施される。
エジプトでは2011年の革命以前は4代軍出身の大統領が続いた。クーデター後は治安機関などが反政権運動を厳しく取り締まっており、シシ氏の出馬で「独裁政権時代への逆戻り」という批判も強まりそうだ。
エジプト:デモや爆弾テロ、死者は計69人に
毎日新聞 2014年01月27日 東京朝刊
【カイロ大治朋子】エジプトの首都カイロをはじめ各地で25日に起きたデモ隊と治安部隊による衝突に伴う死者は、26日までに49人となった。エジプト保健省が明らかにした。
昨年7月の軍事クーデターで排除されたモルシ前大統領の支持者や改革を求める若者らの抗議運動に対し、軍は「許可のないデモ」などとして催涙弾や放水で鎮圧、一部地域では実弾を使用した。24日に始まったデモや爆弾テロによる死者はこれで計69人に達し、1300人以上が逮捕されている。
エジプトのシーシ国防相、大統領選に出馬へ
asahi.com
2014年1月28日08時14分
エジプト軍最高評議会は27日、議長のシーシ国防相が、3月中に行われる見通しの大統領選に立候補することを承認した、と発表した。昨年7月のクーデターの立役者で安定を求める一部の国民から強く支持されており、最有力候補になるとみられている。
これに先立ち、陸軍元帥への昇進も発表された。大統領選への弾みにする狙いとみられる。シーシ氏は近くすべての職を辞し、正式に出馬を表明する見通しだ。
エジプトは2011年に民主化デモで独裁政権を打倒。イスラム穏健派「ムスリム同胞団」のムルシ氏が初の民選大統領となったが、同胞団偏重や経済失政批判を背景に軍がクーデターを起こし、追放した。シーシ氏は民政移管を担う暫定政権の第1副首相兼国防相に就いている。
シーシ氏は一部から高い支持を得ており、デモ蜂起3周年の25日には、首都カイロ中心部のタハリール広場や大統領府前に支持者が結集。顔写真ポスターを掲げて「シーシは私の大統領」と叫んだ。一方、この日にあった反政権デモは治安当局が散弾銃などで鎮圧し、49人が死亡した。(カイロ=神田大介)
エジプト軍、シシ国防相の大統領選出馬を承認
nikkei.com
2014/1/28 1:41
【カイロ=押野真也】エジプト軍の意思決定機関である軍最高評議会は27日、シシ国防相が次期大統領選挙に出馬することを承認した。エジプト国営メディアが同日報じた。エジプト国内では同氏を次期大統領に推す声が多いが、同氏は「軍の命令と国民の支持」があることを出馬の条件に掲げていた。今回の軍の承認で同氏の出馬はほぼ確実となった。
エジプトの大統領選挙は4月中旬までに実施される見込み。昨年7月3日に軍がクーデターを起こしてモルシ前大統領を追放して以降、軍トップのシシ国防相への期待が強まっていた。他に有力な大統領候補がおらず、同氏が立候補すれば当選は確実な情勢だ。
軍の承認に先立ち、マンスール暫定大統領は27日にシシ国防相を軍最高位の元帥に昇格させる大統領令を発令。大統領選挙への出馬に向けて権威付けを狙った措置とみられており、軍と暫定政権は「シシ大統領」の実現に向けた環境整備を進めている。
ただ、過去の独裁政権と同様に軍幹部が政権に就くことには国内でも異論がある。特に、モルシ前大統領の出身母体であるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」の反発は必至だ。現在の暫定政権は同胞団への弾圧を強め、対立が続く。シシ氏が立候補すれば同胞団は反発を強めそうだ。
エジプトは政治・社会不安だけでなく、経済低迷も続くなど課題が山積する。昨年7月のクーデター以降、軍は統治の前面に出ずに黒子に徹してきた。シシ氏が大統領に就任すれば国民の不満が直接軍に向けられるリスクもはらんでいる。
実際、2011年2月にムバラク政権が崩壊して以降、暫定統治を担った軍に対し国民の批判が向けられた経緯がある。ムバラク政権を崩壊させた大規模な民衆運動「アラブの春」では若者の失業や経済格差の拡大、汚職のまん延などが原動力となった。こうした問題は独裁崩壊後も解決しておらず、仮にシシ氏が大統領に就任しても大きな課題となる。
エジプト前大統領が出廷、裁判の不当性訴え
cnn.co.jp
2014.01.29 Wed posted at 11:52 JST
(CNN) 2011年の脱獄事件に関連して起訴されたエジプトのムルシ前大統領の公判が28日、首都カイロの裁判所で開かれた。ムルシ氏は防音ガラスの仕切り越しに、裁判手続きの不当性を訴えた。
弁護側は、ムルシ氏が弁護士や家族との面会も許されないことに怒りを募らせていると説明した。
国営メディアの報道によると、ムルシ氏は支持母体のムスリム同胞団のメンバー18人と共に、11年に刑務所から脱獄した罪で起訴された。脱獄にはパレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがかかわったと報じられている。
当時ムスリム同胞団は活動を禁止されていたが、11年2月のムバラク政権崩壊を受け、政治的勢力を強めていた。
ムルシ氏は12年に実施された同国初の民主選挙で大統領に就任。その1年後に事実上の軍事クーデターで失脚した。脱獄罪のほかにも、刑務所襲撃や兵士らの殺害、12年のデモに関連した殺人などの罪に問われている。
米国務省は、ムルシ氏の拘束は政治的な動機によるものだとして、エジプト軍に対し釈放を促している。
次回公判は2月22日に開かれる。
[FT]エジプト、高まるナショナリズム
nikkei.com
2014/1/29 21:12
(2014年1月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
エジプトでのムバラク政権打倒から3年が経過したが、同国は治安関係の諸機関への賛美と戦闘的なナショナリズムに乗っ取られてしまった。
シシ陸軍元帥(国防相)と彼が代表する軍を教祖のように崇拝する雰囲気が広がっているともいう。敵とみなした人たちに怒りをぶつけ、暴力行為に及ぶことも起きている。モルシ前大統領が率いたムスリム同胞団、弾圧を批判する政治家や人権活動家、西側諸国の記者、シリアやパレスチナ、リビア出身者らがその標的にされている。
企業も、イスラム主義者への支持といった根拠のない容疑で検察当局から呼び出されている。
エジプトは政治的に極端に分極化している。そのため人々は感情的になりやすい。エジプトの政治は勝者総取りのゲームのままだ。
現在の雰囲気の一部はムスリム同胞団とその同盟者たちの広範な失政にも起因する。
カイロにあるアメリカン大学のラシャ・アブドゥラ教授は「国民の間には同胞団は手の付けられないギャングだといった受け止め方をする人がいて、そこへ軍が救世主として現れた。彼らは救世主のために自由を放棄してもよいと思っている」と分析する。
2011年の蜂起で何百万人もの人たちの政治意識が高まったものの、彼らが国の指導者を生み出すことはなかった。指導者になろうとした人たちはすぐに非難の対象にされてしまった。
軍に対する尊敬はエジプト国民の政治意識に深く根付いている。ただ今の雰囲気は、国営報道機関とムバラク派系の民間報道機関が軍を支持する情報を流すことで高まっている。それが体制批判の声をかき消している。
「テレビを中心に何度も同じことを繰り返し聞かせられると、それを信じるようになってしまう」とアブドゥラ教授は語った。
By Borzou Daragahi
エジプト:「言論統制だ」記者ら刑事訴追に非難
毎日新聞 2014年02月03日 10時56分(最終更新 02月03日 12時55分)
【カイロ秋山信一】エジプトで、中東の衛星テレビ局「アルジャジーラ」の記者ら20人が、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団に関連して「虚偽のニュースを報じ、エジプトの評判をおとしめた」として刑事訴追されたことに、国際社会から「言論統制」との非難が強まっている。軍主導の暫定政権は同胞団寄りだとしてアルジャジーラを公然と非難してきた。容疑についてアルジャジーラは「根拠のない、ばかげた話だ」と反発している。
エジプト検察当局は1月下旬、豪州、英国、オランダ国籍の外国人4人を含む20人をテロ活動に加わった罪などで訴追した。検察側は、被告らが首都カイロにある高級ホテルを拠点に「捏造(ねつぞう)した映像をアルジャジーラや米CNNテレビを通じて流した」と指摘した。
アルジャジーラによると、豪国籍の記者は昨年12月29日に拘束された同局英語チャンネルのピーター・グレステ氏。英BBCなどでキャリアを重ね、2011年に優れた放送ジャーナリズムに贈られる米国のピーボディ賞を受賞した経歴もある。カイロ郊外の刑務所内からひそかに送ったとされる手紙では「エジプト人の同僚はテロリスト専用の劣悪な施設に収監され、けがの治療も認められていない」などと訴えた。
国際社会からは懸念の声が続出している。米国務省のサキ報道官は「自由や人権の保障が著しく軽視されている証拠だ」と懸念を表明。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も「独立した第三者による監視を排除しようという意図が見られる」と非難した。
エジプト情報省は外国メディア向けに「報道の自由は尊重している。犯罪を助長しない限り、犯罪者との接触も認められる」と反論する声明を発表。ただ「客観的でバランスのとれた報道」への期待も表明し、政権に批判的な外国メディアの姿勢を暗に批判した。さらに内務省は今後、インターネット上での監視を強化し、暴力をあおるような書き込みをした場合は逮捕すると警告した。
アルジャジーラは中東で最も人気のあるテレビ局の一つ。暫定政権から「同胞団寄り」と非難され、傘下のエジプト専門チャンネルは国内での活動を禁止されたが、現在も外国を拠点に放送を継続。独自に入手した同胞団のデモの映像などを放映している。
エジプト:記者ら訴追 国際社会「言論統制」と非難
毎日新聞 2014年02月03日 東京夕刊
【カイロ秋山信一】エジプトで、中東の衛星テレビ局「アルジャジーラ」の記者ら20人が、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団に関連して「虚偽のニュースを報じ、エジプトの評判をおとしめた」として刑事訴追されたことに、国際社会から「言論統制」との非難が強まっている。軍主導の暫定政権は同胞団寄りだとしてアルジャジーラを公然と非難してきた。容疑についてアルジャジーラは「根拠のない、ばかげた話だ」と反発している。
エジプト検察当局は1月下旬、豪州、英国、オランダ国籍の外国人4人を含む20人をテロ活動に加わった罪などで訴追した。検察側は、被告らが首都カイロにある高級ホテルを拠点に「捏造(ねつぞう)した映像をアルジャジーラや米CNNテレビを通じて流した」と指摘した。
アルジャジーラによると、豪国籍の記者は昨年12月29日に拘束された同局英語チャンネルのピーター・グレステ氏。英BBCなどでキャリアを重ね、2011年に優れた放送ジャーナリズムに贈られる米国のピーボディ賞を受賞した経歴もある。カイロ郊外の刑務所内からひそかに送ったとされる手紙では「エジプト人の同僚はテロリスト専用の劣悪な施設に収監され、けがの治療も認められていない」などと訴えた。
米国務省のサキ報道官は「自由や人権の保障が著しく軽視されている証拠だ」と懸念を表明。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も「独立した第三者による監視を排除しようという意図が見られる」と非難した。
エジプト情報省は外国メディア向けに「報道の自由は尊重している」と反論する声明を発表。ただ「客観的でバランスのとれた報道」への期待も表明し、政権に批判的な外国メディアの姿勢を暗に批判した。さらに内務省は今後、インターネット上での監視を強化し、暴力をあおるような書き込みをした場合は逮捕すると警告した。
アルジャジーラは中東で最も人気のあるテレビ局の一つ。暫定政権から「同胞団寄り」と非難され、傘下のエジプト専門チャンネルは国内での活動を禁止されたが、現在も外国を拠点に放送を継続している。
爆弾テロで収蔵品被害 エジプト・カイロのイスラム博物館
nikkei.com
2014/2/4 19:41
【カイロ=共同】7世紀から19世紀にかけてのイスラム世界の芸術品を集めたエジプト・カイロのイスラム芸術博物館の収蔵品が、1月下旬に近くで起きた自動車爆弾テロにより大きな被害を受けたことが、4日までに分かった。同国では治安の混乱に伴う文化遺産への被害が続いている。
爆弾テロは警察本部が標的だったが、道路を挟んで向かい側にあるイスラム芸術博物館も正面外壁が破損し、爆風で窓ガラスが吹き飛んだ。金属製の窓枠などが展示室に多数散乱し、展示物に被害が出た。
アリ考古相の発表によると、展示されていた1471点のうち164点が破損。このうち90点は修復できそうだが、主にガラスや陶磁器など74点は粉々に割れたため修復不能という。博物館はじゅうたん、陶磁器、宝石、木工細工、写本などを展示している。
AP通信によると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の高官が1月31日、現場を視察し「優れた博物館が大きく破壊されたのはショックだ」と語った。ユネスコは既に10万ドル(約1千万円)の修復予算を用意し、さらに追加支援も検討する。
爆弾テロでは、軍主導の暫定政権に反発する国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派「エルサレムの支援者」が犯行声明を出した。
エジプト、子どもの栄養失調が深刻 混乱長引き貧困拡大
asahi.com
2014年2月5日07時42分
「アラブの春」と呼ばれる民主化革命から政治の混乱が約3年続くエジプトで、貧困が拡大し、子どもの栄養失調が深刻化している。現地の国連機関は「非常事態」と警告する。
カイロ近郊・ギザの貧困地区で診療所に入ると、子連れの母親らで混み合っていた。青ざめた顔でぐったりとした少年(12)の母親は「栄養失調で血圧が下がり過ぎた」。別の母親(29)も4歳と1歳の子ども2人が栄養失調。「物価が上がり生活が苦しい」と打ち明けた。
世界銀行によると、エジプトでは4割以上が1日2ドル以下で暮らす。元々高い失業率は2011年の革命後にさらに悪化し、13年に13%を超えたとのデータもある。昨年7月のクーデター後には暫定政権への抗議デモが続き治安が悪化。観光客が激減し、経済不振に追い打ちをかけている。
国連児童基金(ユニセフ)エジプト事務所によると、同国で5歳未満の子どもの栄養失調率は、革命後に3割を超え、この半年でさらに高まったおそれがある。フィリップ・デュアメル代表は「親が栄養価が低い安価なものを子に与えるため、栄養失調が広がっている。子どもは声をあげないが、これは『沈黙の非常事態』だ」と話した。(カイロ=高橋友佳理)
エジプト、記者ら20人を訴追 国際社会から非難の声
cnn.co.jp
2014.02.06 Thu posted at 11:52 JST
(CNN) カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの記者や職員を含む20人をエジプト当局が刑事訴追したとされる問題で、アルジャジーラは5日、訴追された人々の身元が記載された警察の捜査書類が公開されたことを明らかにした。
欧米諸国や人権団体、報道関係者からは人権や報道の自由の侵害に当たるとして、エジプト当局に対し釈放を求める声が上がっている。
エジプトの国営メディアの報道によれば、当局は1月末、アルジャジーラの職員をふくむ20人について、テロ組織との共謀や、「国際社会にエジプトが内戦状態にあると信じさせるため虚偽の情報やうわさを放送した」といった罪で訴追した。
アルジャジーラの声明によれば、訴追された職員のうちオーストラリア人1人とエジプト人2人が、テロ組織に指定されたムスリム同胞団の関係者と違法な会合を持った容疑で昨年12月29日から身柄を拘束されている。
アルジャジーラ英語版のアンステイ主幹は、容疑について「不当で受け入れがたい」として起訴を取り下げるよう求めた。
アルジャジーラによれば、訴追されたスタッフには、英国人ジャーナリスト2人とカタール・ドーハで働くエジプト人プロデューサーや技術スタッフも含まれるという。だが同社とは関係のないオランダ人ジャーナリストをはじめ、訴追された20人のうち半数以上は同社の職員ではないという。
シシ国防相、出馬の意向 エジプト大統領選
nikkei.com
2014/2/6 11:05
ロイター通信によると、クウェート紙アッシヤーサは6日、エジプト軍トップ、シシ国防相が春にも実施されるエジプトの次期大統領選に出馬する意向を固めたと報じた。国民の間で支持が広がっており、当選が確実視されている。
同紙によると、シシ氏は「国民の要望をかなえるほか仕方ない」と述べた。軍人であるシシ氏が立候補する場合には辞職する必要があり、エジプトメディアによると、近く辞職し、正式に出馬表明するとみられる。
マンスール暫定大統領は既にシシ氏を大将から最高位の元帥に昇級させたほか、軍最高評議会が立候補を要請するなど、出馬表明に向けた地ならしが進んでいる。(カイロ=共同)
エジプト大統領選、シーシ国防相「出馬意向」 クウェート紙報道
asahi.com
2014年2月7日05時00分
クウェート紙シヤーサ(電子版)は6日、エジプトのシーシ国防相が同紙とのインタビューで大統領選に立候補する意向を示したと報じた。だが、エジプト軍の報道官は同日、「報道はシーシ氏の言葉を正確に反映していない」との声明を発表。決定はエジプト国民の前でのみ行われるとした。
同紙によると、シーシ氏はインタビューで、数カ月後に行われる大統領選について「(国民の)要求を拒否はしない」と述べ、立候補する意向を明らかにした。また、「自由投票でエジプト国民に信を問う」とも語り、民主的な手続きを踏むことを強調したという。
シーシ氏の出馬表明は秒読みと見られており、大統領選への準備は着々と進んでいる。1月中旬には、軍主催の集会で「私が大統領選に立候補するとしたら、それは国民の求めと軍からの委任による」と主張。同月27日には軍最高評議会が議長であるシーシ氏の立候補を承認し、併せて陸軍の最高ポストである元帥への昇任も発表した。一部の国民からは「出来レース」との批判もあり、出馬表明の打ち消し騒動は軍が国民の動向に神経をとがらせていることを浮き彫りにした。
シーシ氏が大統領選の最有力候補であることは間違いない。前回大統領選候補のアムル・ムーサ元アラブ連盟事務局長が「私はシーシ氏に一票を投じる」と述べるなど、有力者による支持表明も相次ぐ。街にはポスターがあふれ、政府系メディアがシーシ氏を支持するキャンペーンを行うなど、すでに選挙戦が始まっているかのような様相だ。
ただ、仮にシーシ氏が大統領に当選しても、経済や雇用に対する解決策を持たなければ批判は再び軍に向きかねない。一方、クーデターで追放されたムルシ前大統領の出身母体のムスリム同胞団は依然として全国で抗議デモを続けている。政権移行そのものを否定する同胞団は立候補に反発するとみられ、さらなる衝突が起きる可能性もある。
エジプトでは近く内閣改造が行われる見通しで、その際にシーシ氏は国防相からはずれ、軍の職も辞して「文民」として大統領選に出馬する見通し。大統領選の正式な日程も近日中に発表される。
(エルサレム=山尾有紀恵)
ナイル.com:(10)エジプトの「小林カツ代」さん
毎日新聞
2014年02月08日
料理研究家の小林カツ代さんの訃報に先日、接した。一介の主婦から売れっ子の料理人になり、知名度も高かった。人気番組「料理の鉄人」に出演して、鉄人を倒した姿は、おぼろげながら記憶にある。
私が暮らすエジプトでも今、小林さんの軌跡をたどろうとしている主婦がいる。カイロに住む2男2女の母親、ナグラ・マフムードさん(44)。昨年5月に開局したエジプト初の料理専門チャンネル「CBCソフラ」で、「アラーアブル(手の届く範囲に)」という番組を担当している。
番組で取り上げるのは、その名の通り、庶民が低価格で作れる料理だ。番組プロデューサーによると、エジプトの料理番組は、豪華な食材を使った高級料理を紹介するのが定番だった。一般の主婦が番組を見ていても、夫からは「見ても何の役にも立たない」と嫌みを言われるのがオチだったという。
そこで昨今の経済の低迷も踏まえて、中産階級をターゲットにした番組を考案。ナグラさんがオーディションで採用された。「近所のスーパーで買える食材を使ったシンプルな料理を心がけている」とナグラさん。番組は週5回。スタジオのキッチンも、一般家庭と同様の器具をそろえ、冷蔵庫にはナグラさんの家族写真を張って「庶民」を演出している。
5人家族で1食100エジプトポンド(約1500円)程度という想定は、本当の庶民には少し高いかもしれない。政府統計によると、エジプトの平均世帯収入は月約2000ポンド(約3万円)。貧富の差も大きく、約25%は国民平均所得の半分以下で暮らす貧困層だ。
それでも視聴者の視点に立った番組作りには共感を覚える。日本では当たり前のことだろうが、エジプトではこうしたサービス感覚がまだまだ足りないと思うからだ。
番組の評判は上々だ。CBCソフラは交流サイト・フェイスブック上で毎日の放映内容を紹介しているが、他の著名な料理人を抑えて、最も多く「いいね(共感を表す)」を獲得している。街中にあるCBCの看板広告にもナグラさんが起用され、近所でもファンからよく声をかけられるという。「このチャンスを待ち望んでいた」というナグラさんは、今日もテレビ越しに主婦の熱視線を浴びている。【カイロ秋山信一】
左派サバヒ氏、出馬表明 エジプト大統領選
asahi.com
2014年2月9日21時29分
4月中旬までに大統領選が行われるエジプトで、左派政治家のハムディン・サバヒ氏(59)が8日、支持者を前に演説し、出馬の意向を表明した。世俗・リベラル派の期待を受けた形で、最有力候補と目されるシーシ国防相の対抗馬として注目される。
サバヒ氏は「大統領選に参戦することを個人として決めた」と述べ、支持者らと相談した上で数日中にも正式に出馬を決定する考えを示した。
サバヒ氏はイスラム組織ムスリム同胞団出身のムルシ前大統領が当選した2012年の大統領選の第1回投票で、得票数3位と善戦した。ムバラク元大統領時代の腐敗やムルシ政権下での抑圧的な政策を批判しており、反ムバラク派や反同胞団派、さらには軍による支配に反発する層の票が見込まれる。
シーシ氏はメディアなどを通じて出馬をほのめかしているが、正式表明はしていない。(エルサレム=山尾有紀恵)
[FT]威圧的大衆主義に傾くエジプトに必要なもの
nikkei.com
2014/2/13 14:15
昨年7月の事実上の軍事クーデターに始まるエジプトの権力委譲がいよいよ終盤にさしかかった。先月、軍は大統領選出馬へのゴーサインとして、シシ国防相を「陸軍元帥」に昇格させた。同氏は二枚目俳優への憧れに似た賛美に包まれており、エジプトの新たなファラオ(古代の王)に選ばれたかのようだ。
これは「タハリール広場革命」の目指した結末ではない。3年前の2月、カイロ中心部タハリール広場に人々が集結し、軍はもはや国を掌握することができなくなったムバラク大統領の失脚を後押しした。新しい陸軍元帥が実際に大統領に当選したとしても、過去3年間の政治の大混乱に幕が引かれるわけではない。民衆の賛美はつかの間で、エジプトの若者の社会経済的・政治的な要求は永続するからだ。
■保身に徹する軍政権
イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」出身のモルシ前大統領は選挙で選ばれたが、派閥抗争も激しかった同政権を軍は1年でお払い箱にした。軍はもちろん民主主義へのロードマップを歩んでいることを強調するが、実は保身に徹している。ムバラク政権時代の治安優先国家という特質を復活させ、12月にはムスリム同胞団をテロ集団に指定して活動を禁止。刑務所はイスラム活動家だけでなく、タハリール広場での抗議を主導した世俗的な活動家でもあふれている。
悲しくなるほど、これはよくあるやり方であり、地元メディアを使って反論を封じ込める魔女狩りを扇動しているのだ。3年間混乱が続いた後では、安定を切望する国民の思いがシシ陸軍元帥の地滑り的勝利をもたらすだろう。しかし万一に備え、軍は議会選挙よりも大統領選の投票を先に行うことにした。さらに新憲法の成立を支援し、投票した38%のエジプト国民の賛成を取り付けた。新憲法はムスリム同胞団の導入したイスラム色を薄める一方、軍の政治的・経済的な独立性はしっかり盛り込んだ。2012年の大統領選でイスラム系有力候補だったアブルフトゥーフ氏は今週エジプトを「恐怖国家」と呼び、もはや権力を公然と争えないと批判した。
歴史的使命を痛感しているらしいシシ陸軍元帥が、エジプトの国益を第一に考えるとしても、同国に深く根ざした問題を果たして解決できるだろうか。
シシ氏の政治モデルはムバラク体制とは実際異なっている。権力のバランスを治安当局から軍へと移し、軍司令官が法務官の影響下に置かれることもなくなる。さらにムバラク氏とは異なり、シシ氏には純粋に支持する大衆がいる。ただ過去の記録が示唆するように、シシ氏は包括的な改革よりも威圧的な大衆主義を目指す傾向にあり、そうなればすべては水泡に帰する。変化に対応できる実務家でリベラル派のジアード・バハーエルディン副首相は政権を去るだろう。
■制度の貧困が破滅を招いた
ムバラク政権最後の10年間の構造的な経済の変化はその多くが適切に策定されたが、最後には縁故資本主義の温床と化し、改革そのものの信用を傷つけた。その時代に最もひどく暴利をむさぼった勢力の一部が、再びカイロに戻ってきている。エジプトの人々がまともな生活を送るために、国家が確かな情報に基づく議論や国民を代表する機関を最も必要としている時にだ。
さらにエジプトの「テロとの戦い」はイスラム主義者を地下に潜行させ、国民の約4分の1を犯罪者にした。その予言は自己達成しつつあり、多くのジハード(聖戦)戦士がエジプトに集結しつつある。
シシ氏はエジプトが抱える問題の原因というより、それを具現化した存在だ。問題とは同国では軍が第一の国家機関であり、主要な出世手段であるということだ。ここは制度の貧困が破滅を招いた地域だ。
エジプトにとって喫緊の課題は、社会的・政治的な勢力が国家再建の包括的モデルについて合意を形成することだ。同国にはびこる原罪は「勝者総取りの政治風土」なのだ。
By David Gardner
(2014年2月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
3600年前の木棺、エジプトで発見 良好な状態
nikkei.com
2014/2/14 11:45
【カイロ=共同】エジプト考古省は13日、南部ルクソールで約3600年前の古代エジプト高官のものとみられるミイラを収めた木棺が良好な状態で発掘されたと発表した。今後、身元などの調査を進める。
木棺は長さ約2メートル。赤や黄色の鳥の羽の絵や、来世への安らかな旅立ちを祈るとの象形文字が描かれ、当時とあまり変わらない色彩が保たれている。スペインの調査隊が発見した。
エジプトで3600年前の棺が出土、内部にミイラ
cnn.co.jp
2014.02.14 Fri posted at 16:09 JST
(CNN) エジプト南部のルクソールで3600年前のミイラが入った棺(ひつぎ)が発掘された。国営アルアハラム紙が13日に伝えた。
棺はスペインとエジプトの調査団がルクソールのナイル川西岸にある発掘現場で発見した。当局によると、彩色された人形の棺は第17王朝(紀元前1600年ごろ)のものとみられる。
アルアハラム紙が当局者の話として伝えたところでは、棺には職位が刻まれており、中のミイラは当時の高官とみられる。ミイラが誰なのかは特定できていない。
調査団は他にも2つの棺を発見したがどちらも空だったという。同紙によると、過去に盗掘の被害に遭ったとみられる。
プーチン大統領、エジプト大統領選で国防相支持表明
asahi.com
2014年2月14日17時22分
ロシアのプーチン大統領は13日、エジプトのシーシ国防相と会談。この春に行われるエジプト大統領選に立候補を予定するシーシ氏を支持する考えを伝えた。他国に先駆けてエジプトの新政権と密接な関係を築き、武器などの輸出拡大につなげる狙いとみられる。
プーチン氏はモスクワ郊外の大統領公邸で行われたシーシ氏との会談の冒頭で「あなたが大統領選への立候補を決めたことは、大変責任ある決定だ。私個人として、さらにロシア国民の名の下に成功をお祈りする」と述べた。シーシ氏は4月中旬までに行われるエジプト大統領選への立候補が確実視され、当選が有力と見られている。だが、他国の大統領選で特定の候補にここまで肩入れするのは異例だ。
シーシ氏はこれに先立ち、エジプトのファハミ外相と共にロシアのショイグ国防相、ラブロフ外相と「2プラス2」の形で会談を行った。
会談では、ロシアからエジプトへの武器輸出が話題になったと見られる。ラブロフ氏は会談後の会見で「軍事協力、軍事技術協力の発展を促す合意文書の作成を急ぐことで一致した」と述べた。ロシア紙「ベドモスチ」は、ロシア国防省筋の話として戦闘機やヘリコプター、対艦ミサイルシステムなど30億ドル(約3千億円)のエジプトへの輸出で基本合意したと伝えた。ロシア上院のマルゲロフ国際問題委員長は、ソ連崩壊後20年余りの空白を経て、ロシアが中東・北アフリカの国々と再び軍事協力を強めようとしていると指摘する。
一方、昨年7月のクーデターを主導し、民主的な選挙で選ばれたムルシ前大統領を追放したシーシ氏には、ロシアの後ろ盾をアピールして大統領選を優位に進めると同時に、対エジプト軍事支援を一部凍結している米国を牽制(けんせい)する狙いがある。オバマ米政権は当初「クーデター」と断定するのを避けていたが、8月以降、暫定政権によるムルシ派への弾圧が相次ぐと、軍事支援の一部凍結に踏み切った。
エジプト社会には、もともと、米国による多額の支援がエジプトの政策をゆがめてきたという潜在的な不満がある。国民の間では、米国に代わる新たな協力者として、冷戦時代に支援を受けていたロシアに期待する声が高まっている。シーシ氏は、こうした世論を大統領選の追い風に利用する考えだ。(モスクワ=駒木明義、エルサレム=山尾有紀恵)
ロシア、エジプトに急接近 米と関係悪化突く
nikkei.com
2014/2/14 23:35
【モスクワ=田中孝幸】ロシアがエジプトとの関係強化に乗り出している。プーチン大統領は13日、今春の大統領選で当選が確実視されるシシ国防相と会談。2回目の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)も開き、軍事分野での協力推進で一致した。昨年7月のクーデター後の米国とエジプトとの関係悪化を好機ととらえ、影響力拡大に躍起になっている。
「大統領選への立候補を決めたと聞いている。国民にとって大変責任ある決断であり、仕事の成功を祈る」。プーチン大統領は13日、シシ国防相とモスクワ郊外の公邸で会い、出馬への全面的な支持を表明した。
エジプト暫定政権の最高実力者として知られるシシ国防相の外遊は昨年の政変後、今回が初めて。プーチン大統領が外国の閣僚級との会談に応じるのも異例で、軍が主導するエジプト暫定政権とロシアとの関係強化を印象づけた。
エジプトはサダト政権時代の1970年代に軍事的に緊密だった当時のソ連との関係を見直し、対米関係の強化にかじを切った。カーター大統領の仲介でイスラエルとも平和条約を締結。米国から年13億ドル(約1300億円)の軍事援助を得てきた経緯がある。
しかし、昨年の軍事クーデターによる民主化の後退を懸念した米オバマ政権は、エジプトへの軍事支援の一部を凍結した。これを機に内政不干渉を掲げて民主・自由を重視する欧米の価値にとらわれない外交を展開するロシアは、中東での存在感向上に向けてエジプトと再接近。2プラス2も新設し、昨年11月にはカイロで初会合を開催していた。
ロシア側には米国などの働きかけで長年閉ざされてきたエジプトの兵器市場に食い込みたい思惑もある。ロシアメディアによると今回の2プラス2ではロシア産の最新鋭防空システムや戦闘機を含む20億ドル規模の武器輸出について協議。ロシアのラブロフ外相は記者会見で「軍事技術協力に弾みをつける諸文書の作成を急ぐことで合意した」と語った。
バス爆発、韓国人観光客ら3人死亡…エジプト
【カイロ=久保健一】エジプト国営テレビによると、同国東部タバで16日、外国人観光客を乗せた観光バス付近で爆発があり、韓国人観光客2人とエジプト人運転手の計3人が死亡、27人が負傷した。
バスには数か国の外国人観光客約50人が乗っていたという。カイロの日本大使館が日本人が乗っていなかったか確認を急いでいる。タバはシナイ半島の南部にあるリゾート地で、同半島は3年前のムバラク政権崩壊以降、イスラム武装勢力の活動が活発化している。
(2014年2月16日23時19分 読売新聞)
韓国人観光客のバスが爆発、死者も エジプト
cnn.co.jp
2014.02.17 Mon posted at 09:35 JST
(CNN) エジプト・シナイ半島のイスラエル国境に近いリゾート地タバで16日、韓国人観光客を乗せたバスが爆発した。国営メディアが保健当局者の話として伝えたところによると、エジプト人運転手1人を含む4人が死亡した。
バスは韓国からの観光客33人を乗せ、シナイ半島で聖カタリナ修道院を訪れた後、イスラエル側へ移動するため検問所の列に並んでいた。
エジプトのザアズウ観光相は、同国が「観光客の安全対策に全力を尽くしてきた」と強調し、犯人への怒りをあらわにした。
爆発はイスラエル側の監視カメラからも撮影され、同国のテレビ局が映像を公開した。
シナイ半島では近年、イスラム武装勢力が活動を活発化させている。昨年7月、イスラム穏健派のムルシ前大統領が軍による事実上のクーデターで追放されてから、兵士や軍施設への攻撃を繰り返してきた。今回新たに観光客を標的に加えた可能性がある。
エジプトで観光バス爆発 韓国人ら4人死亡 テロか
asahi.com
2014年2月17日11時45分
エジプト・シナイ半島東部のタバで16日、韓国人観光客らが乗った観光バスで爆発が起き、韓国人3人とエジプト人運転手の計4人が死亡、韓国人観光客15人が負傷した。エジプト国営中東通信が伝えた。観光客を狙ったテロとみられる。 エジプトでは昨年7月にイスラム系のムルシ政権が軍主導のクーデターで倒れた後、シナイ半島で軍や警察と過激派の衝突が続き、治安が悪化している。昨年11月には半島北西部で兵士を乗せた軍のバスに自爆攻撃があり、兵士12人が死亡した。クーデター後、観光バスが狙われて死傷者が出たのは初めて。
現地からの映像では、観光バスは前方が大破している。中東通信によると、バスは16日午後、半島南部のシナイ山にある世界遺産の聖カトリーヌ修道院を訪れた後、イスラエルに入るために国境地域に入ったところだった。
韓国外交省によると、一行は韓国中部・鎮川のキリスト教会関係者による「聖地巡礼団」31人で、バスには韓国人ガイドや運転手を含む計35人がいた。同省関係者によると、バスに乗っていた人の証言から、国境を越える手続きでバスが待機中、20代とみられる若い男2人がバスの中に爆弾を投げ込んだとみられる。ニュース専門局YTNは乗客に電話でインタビューし、「国境を越える手続きで、韓国人ガイドがバスを降りようとした瞬間、爆発した」とする証言を伝えた。
シナイ半島はイラク戦争の後、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織の拠点となっている。2004年にタバで、05年にはシャルムエルシェイクで連続爆発が起き、外国人観光客が多数犠牲になった。
エジプトではこのほか、1997年に南部ルクソールでイスラム過激派が観光客を襲撃し、日本人10人を含む62人が死亡した。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は「万全の措置」を指示し、現地に政府職員を派遣。韓国外交省は17日、「観光バスへの爆弾テロを強く糾弾する」との報道官声明を出した。(カイロ=川上泰徳、ソウル=中野晃)
観光バス爆破、計3人死亡 エジプト
nikkei.com
2014/2/17 9:44
【カイロ=共同】エジプト北東部シナイ半島のタバで16日、観光バスの爆破テロがあり、内務省は同日夜、死者は韓国人2人とエジプト人1人の計3人だったと明らかにした。内務省は当初、死者は計4人としていたが、修正した。13人としていた負傷者数も14人に修正した。
一方、犯行声明を出したイスラム過激派「エルサレムの支援者」は短文投稿サイト「ツイッター」で、外国人観光客に国外退避のための4日間の猶予を与えるとして「退避しなければ(観光客が再び)標的となる」と警告した。
ツアーの手配を行った観光業者や韓国外務省によると、バスには韓国中部のキリスト教会の信徒31人と韓国人ガイド、エジプト人運転手が乗っていた。
一行は、預言者モーゼが十戒を授かったとされるシナイ山のふもとにある世界遺産「聖カタリナ修道院」の観光を終え、タバに近いイスラエルのリゾート地エイラートに向かう途中だった。
シナイ半島では観光客の拉致事件がたびたび発生。日本外務省はタバを含む半島の大部分に、危険情報の「渡航延期勧告」を出している。
バス爆破テロ、韓国人ら3人死亡 エジプト
nikkei.com
2014/2/17 11:18
【カイロ=共同】エジプト北東部シナイ半島のタバで16日、観光バスを狙った爆破テロがあり、内務省によると、韓国人2人とエジプト人運転手1人の計3人が死亡、14人が負傷した。国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派「エルサレムの支援者」が短文投稿サイト、ツイッターを通じて声明を出し、爆破を認めた。
エジプトでは2011年のムバラク政権崩壊以降、シナイ半島を拠点とするイスラム過激派が活動を活発化させているが、外国人観光客の殺傷を狙ったとみられる事件は初めて。
「エルサレムの支援者」は外国人観光客に国外退避のため、4日間の猶予を与えるとする一方「退避しなければ(観光客が再び)標的となる」と警告した。
中東通信によると、エジプトのザアズーア観光相は16日の声明で、バス爆破を強く非難した。在エジプト日本大使館によると、日本人が巻き込まれたとの情報はない。
韓国外務省によると、バスには韓国中部のキリスト教会の信徒31人と韓国人ガイド、エジプト人運転手が乗っていた。
旧約聖書で預言者モーゼが十戒を授かったとされる同半島のシナイ山のふもとには、世界遺産にも登録された聖カタリナ修道院があり、タバに近いイスラエル南部のリゾート地エイラートとともに訪れるのが、キリスト教徒に人気という。
シナイ半島では、外国人を含む観光客の拉致事件がたびたび発生しており、日本外務省はタバを含む半島の大部分に危険情報の「渡航延期勧告」を出している。
エジプト:観光客標的テロ バス爆発で韓国人ら3人が死亡
毎日新聞 2014年02月17日 10時15分(最終更新 02月17日 13時36分)
◇シナイ半島拠点のイスラム過激派が犯行声明
【カイロ秋山信一】エジプト東部シナイ半島で16日、外国人観光客ら約30人が乗ったバスが爆発し、乗客の韓国人2人とエジプト人運転手の計3人が死亡、14人が負傷した。治安当局は爆弾テロとみて捜査を始めた。昨年7月の軍事クーデター後、エジプトではテロが増えているが、外国人観光客が標的になったのは初めて。シナイ半島拠点のイスラム過激派が犯行を認める声明を出した。
内務省によると、バスはイスラエルとの国境に近いシナイ半島南部タバを走行中に爆発した。衝撃でバスの窓ガラスは吹き飛び、前部が大破した。爆弾はバスか路上に仕掛けられていたとみられる。バスには韓国など複数の外国籍観光客が乗っており、シナイ半島の観光地・聖カトリーナ修道院からイスラエルに向かう途中だった。
イスラム過激派組織「アンサール・バイト・マクディス(エルサレムの支持者)」は16日、インターネット上に犯行声明を発表。「(暫定政権の)指導者や経済、観光、ガス施設への攻撃を続ける」と警告した。
この組織は軍事クーデター後、シナイ半島や首都カイロで頻発するテロ事件の多くで関与を認めている。従来は治安機関や軍を狙っていたが、観光客や経済施設が標的になれば、外国人観光客の減少は必至で、暫定政権には大打撃となる。
「報道にウソ」、アル・ジャジーラの記者拘束
【カイロ=溝田拓士】エジプトで、カタールの衛星テレビ「アル・ジャジーラ」のカイロ支局長や記者らが「テロ関与」などの容疑で拘束され、国際社会から非難の声が強まっている。
当局は20人を起訴し、カイロで20日から裁判が始まる予定だ。背景には、エジプト暫定政府と、モルシ前政権を支援していたカタールとの冷え切った外交関係も透けて見える。
捜査当局は昨年12月29日、テロ組織に関与した容疑や虚偽報道の容疑で、アル・ジャジーラのカイロ支局長や、リポーターでオーストラリア国籍のピーター・グレスト記者らを逮捕した。当局が今年1月29日に起訴したのは2人を含め、エジプト人16人、外国人4人。
記者らが関与したとされる「テロ組織」とは、昨年7月に軍に解任されたモルシ前大統領の出身母体の宗教組織「ムスリム同胞団」のこと。軍を後ろ盾とする暫定政府は昨年12月、同胞団をテロ組織に指定している。当局はアル・ジャジーラの報道について、「ウソの情報を報じ、国際社会に内戦であるかのような誤った印象を与えて国益を損ねた」などと主張している。
(2014年2月20日08時51分 読売新聞)
(@エジプト)貧困拡大、子どもを直撃
asahi.com
2014年2月21日00時03分
■特派員リポート 高橋友佳理(国際報道部員)
2013年11月にエジプトを訪れ、7月に軍主導のクーデターでムルシ前大統領のイスラム系政権が倒れてからの社会の変化を取材した。かつて留学で1年間過ごした首都カイロを回ると、貧困が拡大し、子どもを直撃していることが印象に残った。
カイロ近郊ギザ地区の比較的貧しい人が多く住む地区で病院に入ると、子連れの母親らで混み合っていた。青ざめた顔でぐったりとした少年(12)がいる。母親は「栄養失調で血圧が下がり過ぎて来た。今はほとんど食べることができなくなった」と言う。
シェリーンさん(29)は、4歳と1歳の子どもが2人とも栄養失調だ。「物価が上がり、生活は苦しい」と打ち明けた。
貧しい人たちが多く住むインババ地区の市場(スーク)を訪ねた。野菜を売る4児の母ハーフィザさん(27)に話を聞くと、「子どもたちには栄養のあるものをろくに食べさせることができない」と嘆いた。集まってきた子どもたちは、記者が取材のお礼にと持って行ったお菓子をつかみ取った。
同じ市場で買い物をする人たちに話を聞くと、みなが「物価が上がり、同じ金額で買える量が少なくなった」と言う。昨年に比べジャガイモは2倍以上、肉は1割ほど値段が上がったらしい。ブタンガスや洋服の価格も上がっており、下校中の女性高校生は「今年に入って新しい服を1着も買ってもらっていない」と口をとがらせた。
国連児童基金(ユニセフ)のエジプト事務所では、フィリップ・デュアメル代表がインタビューに応じ、力を込めて訴えた。「親が安く栄養価の低いものを子に食べさせることで慢性的な栄養失調が全土に広がっている。子どもは声を上げないが、これは『沈黙の非常事態』だ」。代表によると、エジプトの5歳未満の子どもの3分の1が、慢性的な栄養失調で、その数は経済状況の悪化に伴い増加傾向にある。08年に28・9%だったのが、11年の革命後は3割を超え、クーデターがあった昨年7月以降、さらに増えたとみられる。
エジプトではクーデター後、暫定政権に反対するデモが盛り上がった。治安当局がデモ隊を強制排除するなど取り締まりが激しくなり、治安は悪化。テロ事件も起きた。外国人観光客や投資が減ったことで、多くのエジプト人が職を失った。そこにインフレが低所得者層の家計を圧迫し、追い打ちをかけている。
今回、驚いたのは、カイロで車に乗っていると、渋滞で進まない車の脇で、物売りをする人の姿が目につくことだ。それも、子どもやお年寄りではなく、働きざかりの若者や壮年。男性たちが子ども用のおもちゃのだて眼鏡をかけたり、シャボン玉を吹かしたりしながら子どもを連れた家族が乗った車に近づく様子は物悲しげだった。
エジプトは長らく貧困に悩んできた国だ。学生だった私がカイロの大学に留学していた10年ほど前も、貧富の差は深刻で、道ばたで物売りをする子どもや障害者らを見かけることはよくあった。だが、働きざかりの若者や壮年の男性たちが物売りをする姿がこんなにも目立ったことは記憶にない。
これまで機能してきた社会のセーフティーネットに、クーデター後の不安定な社会状況が影を落としていることも気がかりだ。
エジプトでは、イスラム系の団体が奉仕活動を通じて貧困層の受け皿になってきた。だが、食材の配布や医療奉仕などの社会活動で主流だったイスラム組織のムスリム同胞団は、クーデター後の暫定政権下で非合法化された。ムバラク政権時代以上に厳しい締めつけを受けており、病院や保育園の活動を控えている。そのため社会のセーフティーネットをめぐる状況が変わり、子どもにも影響しているようだ。
ギザ地区のピラミッド通りにある保育園を訪ねてみた。
「公的社会協会」の看板が掛かった保育園は、父親のいない子どものためのもので、清潔で明るい雰囲気に包まれていた。篤志家からの寄付金で運営。週3回、4〜15歳の子どもに栄養のある食事を提供し、服などを与えているという。子どもたちは顔色がよく、こざっぱりとした身なりをしていた。
運営するザイナブ・アフィフィさん(59)に話を聞くと、定員は250人で、多くの希望者がおり、入園できるのは希望者の3割。公立学校を経由して選んでいるという。アフィフィさんは「入ってきたばかりの子どもの栄養状態は前より悪い」と明かした。
イスラム教の精神に基づいて聖典コーランの読み方などを教えるが、ムスリム同胞団との関係はないという。元々は、アフィフィさんが学生時代にキリスト教の慈善活動に接したことがきっかけだという。「同胞団とは関係ないが、神のために働いている。神に召されるまで活動を続ける」
クーデター後の活動は、困難に直面していた。
ムスリム同胞団系列のNGOは、資金難などでほとんどが活動を停止した。この保育園は同胞団系ではないがイスラム系であるため、ボランティアが来にくい雰囲気が生まれた。ボランティアは約100人から5人にまで減った。篤志家からの寄付も、人数、規模ともに減少。取締役会のメンバーが必要経費の6割を負担し、何とか運営を続けているという。アフィフィさんは「今活動をしているのは、うちのようなNGOと教会だけ。多くの子どもが路頭に迷っている。今後、活動が難しくなっても、最低週1回の食事は提供したい」と言う。この保育園では、学校に通わないストリートチルドレンは保護できないが、「数が増えているようで心配だ」と顔を曇らせた。
アフィフィさんやボランティアの女性たちは今、休む暇がないほどの激務だという。それでも、子どもたちのために働く喜びに満ちていた。今回、子どもの貧困というテーマでの取材を通じて、改めて階層社会における宗教の役割を認識した。社会の底辺にいる貧しい家族や子どもたちを支える、イスラム教やキリスト教の教えに基づいた慈善事業の存在は大きい。だからこそ、こうした人々が活動できなくなるときが、本当にこの社会の「底が抜ける」時なのだと思った。その日は案外、遠くないかもしれない。
◇
高橋友佳理(たかはし・ゆかり) 国際報道部員。学生時代にカイロ大学に1年留学。2005年入社。青森、奈良の各総局、成田支局をへて、2011年から現職。32歳。
エジプト・ベブラウィ暫定首相、テレビで辞任発表
asahi.com
2014年2月24日22時26分
エジプトのベブラウィ暫定首相は24日、国営テレビを通じて辞任を発表した。理由は明らかにしなかったが、公共バスや道路清掃などの公共労働者のストライキが頻発し、政権運営に行き詰まったと見られる。
ベブラウィ暫定首相は、昨年7月の軍によるクーデターでイスラム系のムルシ前大統領が排除された後に就任したマンスール暫定大統領に任命されていた。
ベブラウィ氏は辞任の会見で「内閣は6、7カ月間、困難な責任を担い、多くの分野で成功を収めたが全てで成功することは不可能だ」と指摘。さらに「いまエジプトは困難な状況にあり、誰もが自分たちの私的な利益を要求する時ではない」と訴えた。
エジプトでは23日から公共バスの運転手が賃上げや待遇改善を求めて全国でストに入り、24日から道路清掃労働者のストが始まり、政府批判が強まっていた。(カイロ=川上泰徳)
エジプト暫定内閣が総辞職
nikkei.com
2014/2/24 22:06
【カイロ=押野真也】エジプト暫定政権のベブラウィ首相は24日にテレビ演説し、同首相が率いる内閣が総辞職すると発表した。同国では4月中旬までに大統領選の実施を予定。国民の人気が高いシシ国防相が出馬するには、軍トップの地位である国防相を辞職する必要がある。内閣総辞職でシシ氏が出馬しやすい環境を整備する狙いがありそうだ。
エジプト:シシ国防相含む暫定内閣総辞職
毎日新聞 2014年02月24日 21時35分
エジプト暫定政権のベブラウィ首相は24日、国営テレビを通じて演説し、政権の実力者で軍トップのシシ国防相を含む内閣の総辞職を決めたと発表した。国営テレビによると、マンスール暫定大統領に既に辞表を提出した。
今春実施される次期大統領選に出馬するとみられているシシ氏は、立候補する場合、国防相や軍最高評議会議長など軍関係の職を辞任しなければならず、総辞職はシシ氏の大統領選出馬に向けた措置とみられる。
地元紙アルアハラムによると、ベブラウィ氏は24日の閣僚会合で総辞職を決めた。(共同)
エジプト暫定内閣が総辞職、近日中に新首相任命へ
cnn.co.jp
2014.02.25 Tue posted at 11:01 JST
(CNN) エジプトのべブラウィ首相率いる暫定内閣が24日、総辞職した。マンスール暫定大統領が近日中に新たな首相を任命し、組閣を命じる見通しだ。
国営ナイルテレビによると、べブラウィ氏が辞表を提出し、マンスール大統領がこれを受理した。大統領は、べブラウィ氏らによる在任中の「たゆまぬ努力」をたたえる声明を出した。
同国では4月に予定される大統領選を前に、医師や警官、郵便局員、交通機関職員、繊維工場の作業員らが相次いでストを起こすなど混乱が広がっている。
大統領選にはシーシ国防相が出馬を表明し、軍最高評議会もこれを支持している。有力な対立候補は登場していないため、当選の確率は高いとみられている。
エジプトで首相指名、数日以内に新内閣発足へ
【カイロ=溝田拓士】エジプトのマンスール暫定大統領は25日、ビブラーウィ内閣の総辞職を受けて、イブラヒム・ミフリブ前住宅相を首相に指名し、組閣を要請した。
ミフリブ氏はテレビを通じて、「治安維持に重点を置く」と述べ、数日以内に新内閣を発足させる意向を示した。
今春予定の次期大統領選にシシ前国防相が出馬の意欲を示しており、軍を後ろ盾とする暫定政府は、近く発表されるシシ氏出馬を見据えた体制固めに入った。
(2014年2月26日10時55分 読売新聞)
エジプト暫定大統領、住宅相を首相指名 組閣要請
nikkei.com
2014/2/26 10:57
【カイロ=押野真也】エジプト暫定政権のマンスール大統領は25日、前日にベブラウィ首相が辞職したことを受け、イブラヒム・メハレブ住宅相を新首相に指名し、組閣を要請した。25日に記者会見したメハレブ氏は今後数日以内に組閣作業を終える方針を示した。
新内閣では多くの閣僚が再任される見通し。25日の会見でメハレブ氏は「テロを根絶し、エジプトの治安を再生させる」と治安対策を優先させる方針を示した。ただ、メハレブ氏は2011年に崩壊したムバラク政権下で与党に属していたため、ムバラク政権に批判的な若者などからは反発も受けそうだ。
エジプトでは7月までに大統領選と総選挙を実施し、正式政府が発足する見通し。メハレブ首相が主導する新内閣は正式政府が発足するまでの暫定内閣にすぎず、長期的な政策は打ち出しにくいのが実情だ。
エジプト軍が「エイズ完治装置」を開発?
cnn.co.jp
2014.02.28 Fri posted at 11:51 JST
(CNN) エジプト陸軍がエイズとC型肝炎を完治できる装置を開発したと発表し、医学界から集中非難を浴びている。大統領顧問はこの発表について、同国のイメージを損ねる「科学スキャンダル」と言い切った。
発端は、がん治療検査センター所長を務めるイブラヒム・アブデルアティ少将が23日、「100%の確率でエイズに打ち勝った。C型肝炎にも打ち勝った」と発表したことだった。
同少将の研究チームによると、軍が発明した「完治装置」は患者の血液を取り出して病気を分解し、浄化した血液を患者に戻すというもの。わずか16時間で完治できると主張している。
この「奇跡の装置」は同国の厚生省も承認したとされ、発表会には軍トップのシシ氏も出席した。
これに対して専門家からは発表の直後から批判が噴出。科学担当の大統領顧問は25日の地元紙に、「軍の発明についての発表は、エジプトの科学者と科学のイメージを傷つけるものだ」とコメントした。
血液を採取せずにC型肝炎を検出できるとうたった装置を調べた肝臓専門医も、「科学に関する言及は何もなかった」と述べ、「学会では容認できない」「科学的事実を発表すべき場は論文や学会誌であり、記者会見ではない」とこきおろした。
だがエジプトでは、昨年ムルシ前大統領を失脚させた軍に対する熱狂的な支持者も多く、報道機関や議員からも軍を称賛する声が相次いでいる。話題の装置は6月から提供されると報じられ、国営メディアの記者は「医学界が長年解決できなかった危機を打開するものだ。歓迎するのが当然」と促した。
エジプト:庶民の味低価格で紹介 主婦、TVの人気者に
毎日新聞 2014年03月01日 09時43分(最終更新 03月01日 10時11分)
【カイロ秋山信一】エジプトで普通の主婦からテレビで売れっ子の料理人になった女性がいる。カイロに住む2男2女の母親、ナグラ・マフムードさん(44)。昨年5月に開局したエジプト初の料理専門チャンネル「CBCソフラ」で、「アラーアブル(手の届く範囲に)」という番組を担当している。
番組で取り上げるのは、その名の通り、庶民が低価格で作れる料理だ。番組プロデューサーによると、エジプトの料理番組は、豪華な食材を使った高級料理を紹介するのが定番。一般の主婦が番組を見ていても、夫から「見ても何の役にも立たない」と嫌みを言われるのがオチだったという。
そこで昨今の経済の低迷も踏まえて、中産階級をターゲットにした番組を考案。ナグラさんがオーディションで採用された。「近所のスーパーで買える食材を使ったシンプルな料理を心がけている」とナグラさん。番組は週5回。スタジオのキッチンも、一般家庭と同様の器具をそろえ、冷蔵庫にはナグラさんの家族写真を張って「庶民」を演出している。
5人家族で1食100エジプトポンド(約1500円)程度という想定は、本当の庶民には少し高いかもしれない。政府統計によると、エジプトの平均世帯収入は月約2000ポンド(約3万円)。貧富の差も大きく、約25%は国民平均所得の半分以下で暮らす貧困層だ。
それでも視聴者の視点に立った番組作りには共感を覚える。日本では当たり前のことだが、エジプトではこうしたサービス感覚がまだまだ足りないからだ。
番組の評判は上々だ。CBCソフラは交流サイト・フェイスブック上で毎日の放映内容を紹介しているが、他の著名な料理人を抑えて、最も多く「いいね(共感を表す)」を獲得している。街中にあるCBCの看板広告にもナグラさんが起用され、近所でもファンから声をかけられるという。「このチャンスを待ち望んでいた」というナグラさんは、今日もテレビ越しに主婦の熱視線を浴びている。
エジプト、メフレブ内閣発足 大統領選にらみ選挙管理
asahi.com
2014年3月2日21時28分
政治的な混乱が続くエジプトで1日夕、メフレブ新暫定首相が率いる新内閣がマンスール暫定大統領の前で宣誓し、発足した。前ベブラウィ首相が公共バスのストなどで経済政策の批判を浴び、突然辞任した後を受けたもの。次期大統領選への立候補が確実視されるシーシ国防相は、選挙日程が決まっていないことから留任した。
メフレブ新首相は前内閣の住宅相で、元建設会社代表。31閣僚のうちシーシ国防相と外務、内務、財務などの主要閣僚を含む20人が留任した。改正憲法に基づく大統領選挙法が近く公布され、4月中にも大統領選挙が実施される予定。新内閣は実質的には選挙管理内閣の役割を持つ。(カイロ=川上泰徳)
ハマスの活動を一時禁止 エジプト裁判所が決定
nikkei.com
2014/3/4 23:59
エジプトの裁判所は4日、同国と境界を接するパレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスによる国内での全ての活動を一時的に禁止すると決定した。中東通信などが報じた。
公判中のモルシ前大統領のスパイ罪などでハマスが関与したとされ、活動禁止は、これらの公判で判断が示されるまでの措置とした。
エジプト国内の拠点閉鎖や資産凍結のほか、幹部ら拘束の可能性もあり、ロイター通信によるとハマス報道官は決定を強く非難した。
ハマスは、エジプト暫定政権が非合法化したイスラム組織「ムスリム同胞団」が源流。暫定政権は、前大統領の出身母体である同胞団とハマスが連携して、最近のエジプト国内のテロ活動に関与していると主張している。(カイロ=共同)
ナイル.com:(12)結婚式の前夜祭「ヘンナ」
毎日新聞 2014年03月04日
結婚式は、人生において最も大切な日の一つです。女の子は幼いころから“その日”に思い焦がれるものです。しかしエジプトなどアラブ世界には、結婚式とは別にもう一つの「お楽しみ」があります。「ヘンナ」と呼ばれる結婚式の「前夜祭」です。
今年1月、結婚を翌日に控えた、いとこの自宅に、私や友人たちは招待されました。ヘンナは男女別々に行うため、集まったのは女性ばかりです。多くの出席者がイスラム教徒で、ヘジャブ(スカーフ)を着用し、肌の露出を抑えています。
「さあ。着替えましょう」。用意された食事を終えると、出席者は部屋を移動しました。ヘジャブを脱ぎ去り、パーティー向けに着替えるのです。化粧を入念に施し、胸や肩、手足を露出する人も多くいます。エジプト人は癖毛が多いですが、この日に向けてストレートパーマをあててきた友人も。普段はイスラム教に基づいて隠している「美」が解放される瞬間です。(注・連載3回目「ヘジャブの着用」参照)。同じく「ヘンナ」と呼ばれる草花などのペイントを手に施す女性もたくさんいました。
いとこの家の大部屋には、レンタルされた巨大なスピーカーが設置され、ダンスホールに様変わりしていました。午後5時ごろ、パーティーが始まりました。若者たちは部屋の中央で、明日の“新婦”を囲むように、激しく腰を振るベリーダンスなどに興じます。
イスラム教では飲酒は厳禁ですから、炭酸飲料やスイーツがパーティーのお供です。高齢の出席者は、部屋の両端に設置された椅子に腰掛け、おしゃべりを楽しみます。中には新婦の友人の中から、自分の息子の花嫁になるような女性がいないか、見定める人たちもいるそうです。祝宴は深夜まで続きました。
さて、女性たちが普段とは違う顔を見せるヘンナ。会場となる家からは、新婦の父親も閉め出されます。いとこのヘンナでも、私の叔父は外の喫茶店で時間をつぶし、何度も家族に「まだ終わらないのか」と電話をかけてきていました。
ヘンナでは普段は見せないイスラム教徒の女性の姿が(女性にだけ)見られます。用事があって家族に会いに来た親戚の男性は「本当にお前たちか」と普段との違いに驚いていたそうです。派手な衣装を着た姿が、家族以外の男性の目に触れるのを避けるため、写真はほとんど撮りません。今回も出席者の希望で、撮影禁止になりました。【イナス・タウフィーク(カイロ支局スタッフ)、訳・秋山信一】
エジプト:裁判所 モルシ氏公判中のハマスの活動を禁止
毎日新聞 2014年03月08日 11時13分
【カイロ秋山信一】エジプトの首都カイロの裁判所は4日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのエジプトでの活動を一時禁止する決定を出した。ハマスは、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の派生組織で、モルシ氏が追放された昨年7月の軍事クーデター以降、ガザと隣接する東部シナイ半島でエジプト軍との緊張が高まっている。
政府系紙アルアハラム(電子版)によると、モルシ氏は、ハマスなど外国勢力と共謀してテロを支援したとしてスパイ罪で起訴されている。裁判所は4日、スパイ事件の判決が出るまでの間、ハマスの活動を禁止すると決定。カイロにあるハマスの事務所の閉鎖も命じた。
ハマスはスパイ事件は「でっち上げだ」として関与を否定してきた。ロイター通信によると、ハマスのスポークスマンは「パレスチナの(対イスラエル)抵抗運動に反対する立場を反映している」とエジプトの裁判所の決定を非難した。
モルシ前大統領は、ハマスの活動を保護し、2012年11月のイスラエルによるガザ空爆では和平調停役を務めるなど影響力を行使してきた。だがモルシ氏を追放したエジプト軍は、ハマスがシナイ半島のイスラム過激派と連携していると非難。ハマスが物資搬入路として依存してきた境界の密輸トンネルを破壊するなど、双方の緊張が高まっている。
エジプト:アメンホテプ3世の娘の像発見
毎日新聞 2014年03月08日 13時45分
エジプト考古省は7日、南部ルクソールのナイル川西岸で、エジプトと欧州の合同調査隊が、古代エジプト第18王朝最盛期のファラオ(王)、アメンホテプ3世(紀元前14世紀ごろ)の娘の像を発見したと発表した。
像は石こう製で高さ170センチ、幅52センチ。既に知られている王座に座るアメンホテプ3世の高さ約14メートルの巨像の両脚の間から見つかった。かつらをかぶっているもようだが、顔部分は損傷して表情などは見えない。娘の名前が足付近に刻まれていた。(共同)
エジプト:ハマスの活動禁止 裁判所が決定
毎日新聞 2014年03月08日 東京夕刊
【カイロ秋山信一】エジプトの首都カイロの裁判所は4日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのエジプトでの活動を一時禁止する決定を出した。ハマスは、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の派生組織で、モルシ氏が追放された昨年7月の軍事クーデター以降、ガザと隣接する東部シナイ半島でエジプト軍との緊張が高まっている。
政府系紙アルアハラム(電子版)によると、モルシ氏は、ハマスなど外国勢力と共謀してテロを支援したとしてスパイ罪で起訴されている。
裁判所は4日、スパイ事件の判決が出るまでの間、ハマスの活動を禁止すると決定。カイロにあるハマスの事務所の閉鎖も命じた。
ハマスはスパイ事件は「でっち上げだ」として関与を否定してきた。ロイター通信によると、ハマスのスポークスマンは「パレスチナの(対イスラエル)抵抗運動に反対する立場を反映している」とエジプトの裁判所の決定を非難した。
モルシ前大統領は、ハマスの活動を保護し、2012年11月のイスラエルによるガザ空爆では和平調停役を務めるなど影響力を行使してきた。
だがモルシ氏を追放したエジプト軍は、ハマスがシナイ半島のイスラム過激派と連携していると非難。ハマスが物資搬入路として依存してきた境界の密輸トンネルを破壊するなど、双方の緊張が高まっている。
金曜デモ参加者、衝突で8人死亡 エジプト
asahi.com
2014年3月9日00時17分
政治の混乱が続くエジプトで7日の金曜礼拝後に始まった「反クーデター」のデモと治安部隊の衝突で、首都カイロなどでデモ参加者計8人が死亡した。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラが8日報じた。エジプト国営中東通信は7日夜、保健省の発表として3人死亡と報じていたが、その後、死者が増えたと見られる。
このうち7人はカイロ郊外のアルフマスカンでの衝突で死亡したとみられ、アルジャジーラは治安部隊が実弾を使用したと報じている。エジプトでは昨年7月の軍のクーデターでイスラム系の民選大統領が排除されて以来、抗議デモと治安部隊の衝突が続いている。
7日にはジュネーブの国連人権理事会で、日本を含む27カ国が共同声明を出し、エジプト政府が平和的なデモや集会を禁止し、取り締まりに殺傷力のある武器を使用していることに懸念を表明した。(カイロ=川上泰徳)
ファラオの娘イセト像を発見 エジプト南部
nikkei.com
2014/3/11 11:29
【カイロ=共同】エジプト考古省は11日までに、南部ルクソールのナイル川西岸で、エジプトと欧州の合同調査隊が、古代エジプト第18王朝最盛期のファラオ(王)、アメンホテプ3世(紀元前14世紀ごろ)の娘、イセトの像を発見したことを明らかにした。
像は石こう製で高さ170センチ、幅52センチ。既に知られている王座に座るアメンホテプ3世の高さ約14メートルの巨像の両脚の間から見つかった。かつらをかぶっているもようだが、顔部分は損傷して表情などは見えない。娘の名前が足付近に刻まれていた。
考古省によると、イセトの像はこれまで、他のきょうだいのものとセットで見つかっていたが、アメンホテプ3世とイセトだけが一緒に見つかったのは初めてという。
ナイル.com:(13)スープで食べるモロヘイヤ
毎日新聞 2014年03月11日
お母さんに「晩ご飯は何がいい?」と聞かれたら、私はよく「モロヘイヤスープが飲みたい」と答えます。ネバネバ野菜のモロヘイヤを使ったスープは、エジプトの代表的な家庭料理の一つです。古代エジプトのファラオ(王)の時代からエジプトに根づいていたとの説もあります。
モロヘイヤを巡って、二つの有名な言い伝えがあります。一つ目はイスラム教シーア派王朝・ファーティマ朝(909〜1171年)の第6代カリフ・ハーキムが、市民に対して食べるのを禁止したという話です。「自分が独占するため」とも「シーア派を弾圧したスンニ派の統治者の好物だったため」とも言われます。モロヘイヤは、アラビア語のモロケイヤ(「王様の」という意味)から転化した言葉だともいいます。
もう一つは、古代エジプトにさかのぼります。元々、モロヘイヤは有毒な植物だと思われていましたが、紀元前17世紀ごろに異民族ヒクソスがエジプトに侵入した際、エジプト人に食べさせて、無毒だと証明されたそうです。王が治療に使ったという説もあり、この時期から人気料理になったのかもしれません。
モロヘイヤはミネラルやビタミンが豊富で、栄養価の高い野菜として有名です。日本でも一時期ブームになったそうですが、調理法はだいぶ違うようです。日本に留学中、ホストファミリーはおひたしにしてくれましたが、エジプトではスープにするのがほとんどです。
作り方は簡単です。モロヘイヤの葉っぱをちぎって、半月状の刃がある「マハラタ」と呼ばれる特別な包丁で刻み、ウサギ肉などでだしをとったスープに混ぜて作ります。チキンスープも一般的で、海沿いではエビでだしをとったスープに入れる地域もあります。ご飯やパン、焼いた鶏肉と一緒に食べます。
知り合いの主婦たちに聞くと、週に1度は作る人が多いようです。モロヘイヤの値段は季節によりますが、1キロ3〜8エジプトポンド(約45〜120円)程度で比較的安価です。手軽に作れて、健康にも良い。エジプト人にはモロヘイヤスープが嫌いな人はほとんどいません。
カイロ支局の近くにあるエジプト家庭料理店「アル・アマナ」によると、モロヘイヤスープはエジプト人だけでなく外国人にも一番人気。モロヘイヤスープが売り切れていると、注文せずに帰るお客さんもいるそうです。
モロヘイヤは夏野菜ですが、今はハウス栽培などで、一年中作られています。カイロ郊外ギザ県の農業省担当者は「種まきから収穫まで2カ月しかかからず、1年に5回は収穫できます。特別な肥料も手間もかかりません」と話していました。
日本の皆さんも、エジプトにいらっしゃったら、ぜひモロヘイヤスープを味わってください(※作り方は連続写真で紹介しています)。【ザイナブ・アジジ(カイロ支局スタッフ)】
エジプト:初の女性党首「アラブも徐々に女性が政治に…」
毎日新聞 2014年03月14日 19時32分
エジプトで2月、キリスト教の一派コプト教徒のハーラ・シュクラッラー氏(59)が世俗主義の立憲党の党首に就任した。女性やコプト教徒が主要政党の党首に就くのは初めて。展望を聞いた。【聞き手・秋山信一】
◆立候補の経緯は。
−−昨秋ごろ、仲間から強く説得され決断した。党の意思決定の透明化、市民社会に根づいた活動の強化という方針が支持された。
◆コプト教徒の女性であることの影響は。
−−支持しない理由にならなかったという意味では画期的。エジプトは2011年の革命で宗教や性別を超え団結した。社会は違いにとらわれない方向に進んでいる。
◆今春の大統領選ではシシ国防相の当選が有力視される。
−−個人的には軍の政治介入は支持しない。シシ氏が立候補するなら国家機関と決別すべきだ。
◆国民への浸透度をどう高めるか。
−−(モルシ前大統領の出身組織)ムスリム同胞団は慈善活動で支持を広げたが、お金で票を買う手法は間違い。社会正義を実現しようと訴えていきたい。全国の党支部で、国民の要望を吸い上げる仕組みも強化する。他の世俗政党との連携も考えている。
◆女性大統領の誕生は、いつでしょう。
−−米国でさえ、ようやく黒人大統領が誕生したところ。ただアラブ世界でも徐々に女性が政治に参画する方向に変わってきている。
エジプト軍警察襲撃され、6人死亡 カイロ郊外
asahi.com
カイロ=川上泰徳2014年3月15日20時59分
カイロ北郊の軍警察検問所が15日未明、武装集団の襲撃を受け、兵士6人が銃撃で死亡した。国営中東通信などが伝えた。エジプト軍報道官は「ムスリム同胞団に属する武装グループの犯行」と述べ、昨年7月の軍クーデターで排除されたムルシ前大統領が属するイスラム組織を名指しした。同胞団はインターネットサイトで事件への関与を否定した。
襲撃は、軍警察兵士が未明の礼拝を終えた後に起きたという。カイロ郊外では13日にも軍のバスが武装グループに銃撃され、兵士が死亡した。(カイロ=川上泰徳)
エジプト:カイロ郊外 武装集団の検問所襲撃で6人死亡
毎日新聞 2014年03月15日 18時48分(最終更新 03月15日 20時58分)
【カイロ秋山信一】エジプトの首都カイロ郊外で15日早朝、武装集団が軍の検問所を襲撃し、軍兵士ら少なくとも6人が死亡した。武装集団は逃走した。犯行声明は出ていないが、軍主導の暫定政権に反発するイスラム過激派による犯行の可能性がある。昨年7月の軍事クーデター以降、イスラム過激派などによる軍や警察への攻撃が相次いでおり、死者は計約300人に上っている。
現場はカイロ中心部のタハリール広場から北約10キロの市街地。軍の声明によると、武装集団は銃などで武装し、イスラム教の夜明けの礼拝直後に検問所を襲った。現場近くから二つの爆発物が見つかり、軍が爆発前に処理した。
軍は、クーデターで追放されたモルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団が襲撃に関与したと非難したが、明確な証拠は示していない。同胞団は、軍や警察への襲撃には関与していないと主張している。
エジプト:初の女性党首 「社会正義の実現訴える」
毎日新聞 2014年03月15日 東京朝刊
エジプトで2月、キリスト教の一派コプト教徒のハーラ・シュクラッラー氏(59)が世俗主義の立憲党の党首に就任した。女性やコプト教徒が主要政党の党首に就くのは初めて。展望を聞いた。【聞き手・秋山信一】
−−立候補の経緯は。
◆昨秋ごろ、仲間から強く説得され決断した。党の意思決定の透明化、市民社会に根づいた活動の強化という方針が支持された。
−−コプト教徒の女性であることの影響は。
◆支持しない理由にならなかったという意味では画期的。エジプトは2011年の革命で宗教や性別を超え団結した。社会は違いにとらわれない方向に進んでいる。
−−今春の大統領選ではシシ国防相の当選が有力視される。
◆個人的には軍の政治介入は支持しない。シシ氏が立候補するなら国家機関と決別すべきだ。
−−国民への浸透度をどう高めるか。
◆(モルシ前大統領の出身組織)ムスリム同胞団は慈善活動で支持を広げたが、お金で票を買う手法は間違い。社会正義を実現しようと訴えていきたい。全国の党支部で、国民の要望を吸い上げる仕組みも強化する。
−−女性大統領の誕生は、いつでしょう。
◆米国でさえ、ようやく黒人大統領が誕生したところ。ただアラブ世界でも徐々に女性が政治に参画する方向に変わってきている。
エジプト:カイロで襲撃、6人死亡
毎日新聞 2014年03月16日 東京朝刊
エジプトの首都カイロ郊外で15日早朝、武装集団が軍の検問所を襲撃し、軍兵士ら少なくとも6人が死亡した。武装集団は逃走した。犯行声明は出ていないが、軍主導の暫定政権に反発するイスラム過激派による犯行の可能性がある。昨年7月の軍事クーデター以降、イスラム過激派などによる軍や警察への攻撃が相次いでおり、死者は計約300人に上っている。【カイロ】
同胞団支持者529人に死刑判決 エジプト、警官殺害で
asahi.com
カイロ=川上泰徳2014年3月24日20時53分
エジプト南部のメニア地方裁判所は24日、昨年8月に警察署を襲撃して副署長を殺害した容疑で、イスラム組織「ムスリム同胞団」の支持者529人に死刑判決を出した。国営中東通信などが伝えた。
エジプトでは昨年7月、同胞団系のムルシ前大統領が軍のクーデターで排除された後、全国で同胞団支持派による反クーデターデモが続いて数千人の逮捕者が出ている。今後、同様の司法判断が全国に波及する可能性もある。
判決によると、昨年8月、カイロ市内で同胞団系の反クーデターデモがあり、軍・治安部隊が鎮圧。同じ日に、メニア北部のマタイ警察署を襲撃した暴徒が副署長と警官2人を殺したという。
判決は被告人に対する弁護士の弁護もなく、いきなり言い渡されたという。クーデターに批判的なエジプトの独立裁判官グループは判決後、「被告人が弁護する基本的な権利も認められていない」として判決は無効とする声明を出した。
裁判所は死刑判決についてイスラム国家宗教指導者(ムフティ)に宗教見解を求める。最終判断は4月末とされるが、宗教指導者は判決を支持するのが一般的で、仮に反対しても裁判所の判決と判断が優先する。被告は控訴するとされる。(カイロ=川上泰徳)
エジプト前大統領派529人に死刑判決 警察官殺害の容疑などで
nikkei.com
2014/3/24 20:44
【カイロ=押野真也】エジプトの地方裁判所は24日、2013年7月の軍によるクーデターで失脚したモルシ前大統領の支持者529人の被告について、警察官殺害の容疑などで死刑判決を下した。審理は22日と24日の2回のみで、被告側に弁明の機会は与えられなかった。被告は上訴することができる。
被告の大半は前大統領が属したイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」のメンバーで、クーデターに抗議して警察施設を襲撃したとされる。この裁判とは別に、モルシ前大統領自身も、在任中に支持者によるデモを呼び掛けて死者が発生したとして「殺人扇動罪」などに問われ、審理が始まっている。
エジプト:同胞団529人に死刑判決…弁護側、控訴へ
毎日新聞 2014年03月24日 19時59分(最終更新 03月24日 20時13分)
【カイロ秋山信一】エジプト中部ミニヤの裁判所は24日、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の支持者529人に対して、警察署を襲撃して幹部を殺害したなどの罪で、死刑判決を言い渡した。弁護側は、初公判から2日後の「即決裁判」に抗議し、控訴する方針。昨年7月の軍事クーデター以降、軍主導の暫定政権は同胞団を弾圧しているが、これだけ多人数に死刑判決が出るのは極めて異例で、同胞団の反発は必至だ。
弁護人によると、被告らは13年8月14日、ミニヤの警察署や行政庁舎を襲撃して武器などを略奪、警察幹部1人を殺害し、市民にも発砲したとされる。
22日に初公判が開かれ、弁護側は「裁判官の構成が偏向している」として交代を要求したが、裁判所は拒否。実質的な審理を行わないまま、判決が言い渡された。
被告のうち拘束されているのは約150人で、残りは逃走中だという。この事件では、今回判決を受けた以外にも約500人が訴追されており、死刑判決を受ける可能性がある。弁護人は取材に「不当な裁判に衝撃を受けている」と話した。
エジプトでは昨年7月のクーデターでモルシ氏が大統領を解任された。治安部隊は8月14日、首都カイロで同胞団の座り込みの抗議集会を強制排除し、各地で少なくとも600人が死亡。同胞団の支持者らは反発し、各地で警察署などを襲撃した。
エジプト政府は昨年12月、同胞団を「テロ組織」に指定、非合法化した。
【3月24日 AFP】エジプトのルクソール(Luxor)で23日、エジプト第18王朝のファラオ、アメンホテプ3世(Amenhotep III)の新たな巨像2体が考古学者らにより公開された。2体の巨像は赤色珪岩でできている。
2体が公開された葬祭殿は、古代エジプト文明の政治・文化の全盛期だった3400年前頃のアメンホテプ3世の巨像「メムノンの巨像(Memnon colossi)」が有名だ。
「これまではメムノンの巨像2体が有名だったが、今日からはアメンホテプ3世の巨像4体として知られることになる」と保存プロジェクトを率いる独米の考古学者、Hourig Sourouzian氏は述べた。
新たな像のうち1体は、重量250トンで王は座った姿勢でひざの上に両手を置いている。像の高さは11.5メートルで、台座は高さ1.5メートルで幅3.6メートルだ。
アメンホテプ3世の右脚の脇には、妻であるティイ(Tiye)王妃が大きなかつらをつけ、体にぴったりとした衣をまとった姿でほぼ完全な姿で立っている。左脚の傍には母親で皇太后のMutemwyaの像があったが、今はなくなっている。
王座の両側は当時の状況を示唆する装飾が施されており、上エジプトと下エジプト(Upper and Lower Egypt)の統一を表す模様も見られるという。
2つ目の像は、アメンホテプ3世の直立像で、葬祭殿の北門に置かれている。その他、別の像の一部と見られる彫像物も同時に公開された。
アメンホテプ3世は母を摂政に12歳で王となった。紀元前1354年ごろに死亡し、アクエンアテン(Akhenaten)として知られる息子のアメンホテプ4世に引き継がれた。(c)AFP/Jay DESHMUKH, Riad Abou Awad
ファラオの巨像2体を復元 エジプト・ルクソール
cnn.co.jp
2014.03.25 Tue posted at 18:46 JST
(CNN) エジプト中部の古都ルクソールで古代エジプト王朝のファラオ(王)、アメンホテプ3世の立像2体が新たに復元され、このほど一般公開された。
立像は2体とも珪岩(けいがん)でできていて、一方の高さが11メートル、重さ250トンにも及ぶ大きさ。ルクソールにあるアメンホテプ3世の葬祭殿跡から破片の状態で発掘され、専門家のチームが復元に取り組んでいた。
葬祭殿跡の入り口には、同じ珪岩製で高さ16メートルにも及ぶアメンホテプ3世の座像2体も残っている。葬祭殿は紀元前1390〜1353年に建てられ、豪華な装飾が施されていたといわれるが、地震で構造が破壊され、発掘後は洪水やナイル川に建設されたアスワンハイダムの影響による塩害による影響を受けた。
エジプトでは2011年にムバラク政権が崩壊してから政情不安が続き、観光業界が深刻な打撃を受けている。
エジプト国防相が辞意、大統領選に出馬表明
cnn.co.jp
2014.03.27 Thu posted at 14:25 JST
(CNN) エジプトのシシ国防相(59)が26日のテレビ演説で辞意を表明し、年内に実施される見通しの大統領選に出馬すると発表した。
シシ氏は演説の中で、「何者も国民の意思に反して、あるいは国民に支持されることなく大統領にはなれない。国民が望まない大統領への投票を強いることは誰にもできない」と強調した。
この発表を受けてマンスール暫定大統領府は、ソブヒ軍参謀総長を中将から大将に昇格させたことを明らかにした。
国営アルアハラム紙によると、シシ氏は27日の閣議でマンスール暫定大統領に辞表を提出する見通し。
シシ氏は昨年の反政府デモ激化を受けて、ムスリム同胞団出身だった当時のムルシ大統領を失脚させた中心人物。2011年のムバラク政権崩壊後の混乱を収束できる指導者とみなす国民の間では高い人気を保っている。
一方、イスラム勢力は、選挙で選ばれた指導者をクーデターで倒し、反対派を武力で弾圧した首謀者としてシシ氏を非難している。
ムルシ政権崩壊後のエジプトでは混乱が続いており、26日にはカイロ大学で、ムスリム同胞団支持者529人に対する死刑判決に抗議するデモ隊と警官隊が衝突した。
アルアハラム紙は、この衝突で1人が死亡、8人が負傷したと伝えている。
エジプト国防相が大統領選に立候補表明 対立激化の恐れ
asahi.com
カイロ=川上泰徳2014年3月27日12時51分
エジプトのシーシ国防相(国軍総司令官)は26日夜、国営テレビで演説し、国防相を辞任して、4月以降に実施される大統領選挙に立候補すると発表した。昨年7月にイスラム組織「ムスリム同胞団」出身のムルシ前大統領をクーデターで排除した時の中心人物。同胞団はすでに非合法化されており、シーシ氏の当選は確実と見られる。
演説では「経済、政治、治安など困難に直面する国を救うため、45年間、兵士として着てきた制服を脱ぎ、立候補を決めた。国民の支持と協力が必要だ」と訴えた。
ただし、ムルシ氏を支持する同胞団支持者や「軍政反対」を求める若者たちのデモは続く。26日にもカイロ大学の学生デモ隊と治安部隊が衝突し、学生1人が死亡した。シーシ氏の立候補宣言で、政治的な対立がさらに激化しそうだ。
シーシ氏は59歳。軍情報部長として軍最高評議会メンバーとなり、2012年8月にムルシ政権で、国防相に任命された。昨年7月にムルシ政権への反対デモがカイロ中心部の広場を埋めると、「政治的混乱の収拾」を口実として、ムルシ氏を排除した。その後、暫定政府による憲法改正案の起草と、国民投票の実施などを示す行程表づくりを主導した。
憲法改正案は今年1月の国民投票で承認。新憲法に基づき、4月以降に大統領選と議会選挙が行われる。(カイロ=川上泰徳)
シシ国防相、エジプト大統領選出馬を正式表明
【カイロ=溝田拓士】エジプト軍のシシ国防相(59)は26日、国営テレビを通じた演説で、暫定政府の国防相職の辞意を表明した上で、「テロの恐怖からの解放のため戦い続ける」と述べ、今春予定の大統領選出馬を正式に表明した。
昨年7月にモルシ前大統領を解任したシシ氏は、国内に抱えるテロの脅威が経済停滞と高い若年層失業率の原因だと強調。「奇跡は起こせないが、勤勉と無私の精神で臨む」と語った。
大統領選挙日程は近く発表される見込み。候補予定者は数人いるが、シシ氏の当選が確実視されている。
一方、有力紙アル・アハラム(電子版)によると、司法当局は同日、前大統領派919人をテロ関与の罪などで起訴した。2日前に529人に対する死刑判決が下されたばかりで、カイロ近郊ギザでは26日、反発する前大統領派と治安部隊が衝突し、1人が死亡した。
(2014年3月27日10時51分 読売新聞)
エジプト国防相、大統領選に出馬表明「国家再建に尽力」
nikkei.com
2014/3/27 10:31
【カイロ=押野真也】エジプトのシシ国防相は26日夜(日本時間27日未明)にテレビ演説し、次期大統領選挙への出馬を表明した。シシ氏は「国家の再建に尽力する」と述べ、治安の安定や経済再生、社会福祉の充実などに取り組む姿勢を示した。大統領選の実施時期は未定だが、ほかに有力な候補はおらず、同氏の当選はほぼ確実とみられる。
同氏は演説で「きょうが軍服を着る最後の日」と述べ、大統領選への出馬について定めた法律の規定に従い、国防相を含むすべての軍籍を離脱する意向を表明した。
自身が大統領に就任すれば「(エジプト本来の姿である)偉大な国家を取り戻す」と述べた。女性の権利を保護するなど、「近代的で民主的な国家」を目指すとも言及した。
大統領選は4月中旬までに実施する予定だったが、選挙法の制定などが遅れ、実施時期は未定だ。現状では、社会主義者で小規模政党を率いるサバヒ氏が出馬表明しているのみ。シシ氏が出馬表明したことで、同氏が次期大統領に就任することはほぼ確実だ。
エジプト情勢を巡っては、2013年7月に軍がクーデターを起こしてイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」出身のモルシ大統領(当時)を解任し、拘束。現在は軍主導の暫定政権が統治している。
暫定政権はクーデターに反対する同胞団を徹底的に弾圧しており、これまでに同胞団幹部やメンバーなど2000人以上を逮捕。今月25日には十分な審理を経ずに同胞団メンバー529人に対して裁判所が死刑判決を下し、米国が人権を尊重するよう要求するなど、強権的な対応に内外から懸念の声が強まっている。
シシ氏はクーデターの中心的人物で、軍トップとして国内の混乱収拾を主導してきた。エジプトの軍事アカデミーを卒業した生粋の軍人で、英国と米国で学んだ経験がある。
エジプト:シシ国防相 大統領選へ出馬表明 同胞団と対立
毎日新聞 2014年03月27日 22時22分(最終更新 03月27日 23時37分)
【カイロ秋山信一】エジプト暫定政権のシシ国防相(59)は26日、国防相など軍職を辞任し、次期大統領選への立候補を正式に表明した。昨年7月の軍事クーデターを主導し、モルシ氏を大統領から解任したシシ氏の人気は高く、当選が確実視される。ただ、モルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団は、シシ氏を「裏切り者」と非難しており、軍と同胞団の対立が長期化するのは必至だ。
シシ氏は26日夜、国営テレビを通じて、軍服姿で演説し、「軍服は今日が最後だ。私に期待してくれる大勢の声には逆らえない」として大統領選出馬の意向を表明した。経済や治安の立て直しへの意欲を示し、「奇跡は起こせないが、全力を尽くす。国民にも努力してほしい」と呼びかけた。
憲法の規定で、軍人は大統領選に立候補できないため、軍職を離れた。後任の国防相にはソブヒ参謀総長が任命された。
大統領選は7月までに行われることが決まっており、選管当局は今月30日に日程を発表する。前回大統領選の第1回投票(2012年5月)で得票数3位だった左派政治家のサバヒ氏も立候補の意向を表明している。世論調査機関バシーラセンターの2〜3月の調査では、51%が「シシ氏に投票する」と回答。サバヒ氏(1%)を圧倒し、「未定」(45%)も上回った。
シシ氏は12年8月、当時のモルシ大統領から軍トップの国防相に任命された。反モルシ政権デモを受けて昨年7月にクーデターを主導し、モルシ氏を解任。直後に発足した暫定政権では国防相に留任し、事実上の指導者とみなされてきた。
暫定政権は同胞団を「テロ組織」に指定するなど弾圧を強めているが、モルシ氏の支持者らによる抗議活動は続いている。26日もカイロ大学などでデモがあり、治安部隊との衝突で1人が死亡、8人が負傷した。同胞団は、モルシ氏の支持者ら529人が警察幹部を殺害した罪で24日に死刑判決を受けたことに反発を強めている。
エジプト、混乱収拾急ぐ シシ国防相、大統領選に出馬
2014/3/28 1:00
日本経済新聞 電子版
【カイロ=押野真也】エジプトのシシ国防相が次期大統領選挙への出馬を表明した。2011年の独裁政権崩壊後、国内は混乱が続く。軍トップとして13年7月のクーデターを主導したシシ氏への国民の期待は高く、当選は確実とみられる。周辺国でもイスラエルなどで歓迎する声が多い。エジプト安定を求める内外の声を背にシシ氏は混乱収拾を急ぐ構えだが、一方で強権体制の復活への懸念も根強くある。
シシ氏は26日、暫定政権のマンスール大統領に国防相を辞任する意向を示し、承認されたもよう。後任の国防相には、軍の意思決定機関である軍最高評議会の指名によりソブヒ参謀総長(陸軍大将)が27日に就任した。選挙管理当局は大統領選の日程を発表していないが、4月下旬から5月上旬に実施する見通しだ。
国民の多数はシシ氏が大統領に就任することを望んでおり、当選は確実な情勢だ。カイロ・アメリカン大学のガマル・スルタン教授は「長期化する混乱を収拾するため、国民は強い指導者を求めている」と分析する。
シシ氏は26日の演説で治安と経済状況の改善が急務だと強調した。大統領当選後は「挙国一致」を演出するため、女性やイスラム主義者、国内では少数派のキリスト教徒などを取り込んで内閣を組織する見通しだ。
経済低迷が続けば再び反体制運動の拡大を招く可能性もある。経済閣僚には国際機関などの勤務経験がある実務者を中心に登用し、経済再建に着手するとみられる。
中東主要国の間でも、シシ氏の大統領選出馬を歓迎する声が多い。サウジアラビアのアルリヤド紙(27日付)はシシ氏の出馬表明を「(エジプトを安定に導く)正しい決断だ」などと評価した。
エジプトと戦火を交えたこともある隣国イスラエルでも「シシ氏は現在のエジプトを統治できる唯一の人物だ」(テルアビブ大学のウジ・ラビ教授)との見方が多い。周辺をアラブ諸国に囲まれるイスラエルにとって、エジプトとの平和条約の維持は死活問題だが、シシ氏は同条約を順守する見通し。
これまで軍主導の暫定政権は、モルシ前大統領が属したイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を弾圧し、令状なしの拘束や十分な審理を経ずに529人に死刑判決を下すなど強権姿勢が目立つ。シシ氏も、治安維持のためデモ規制と原理主義勢力への締め付けを続ける見通しだ。
暫定政権の動きには、国内の若者が抗議してデモを続けているほか、米国のケリー国務長官が懸念を表明している。米国はエジプトのクーデターを非難し軍事援助を一部凍結。両国関係は冷え込んでいる。イスラエルでは、米国の対エジプト政策への批判は強く「イスラエル政府は米国に、シシ氏を支援するよう強く働き掛けるべきだ」(ラビ教授)との声もある。
カイロでデモ隊と治安部隊が衝突 記者含む3人死亡
cnn.co.jp
2014.03.29 Sat posted at 09:51 JST
(CNN) エジプトのカイロ東部で28日、ムスリム同胞団を支持するデモ隊と治安部隊が衝突し、20代の女性ジャーナリストを含む3人が死亡した。エジプト内務省が明らかにした。
エジプトの独立系新聞「アル・ダストゥール」の女性記者マヤダ・アシュラフさんは銃で撃たれ致命傷を負った。アシュラフさんは20代で、昨年、大学を卒業したばかりだったという。エジプト国営中東通信(MENA)は、アシュラフさんはデモ隊と治安部隊の衝突を取材中に殺害されたとしている。
エジプトのニュースサイト「アフラム・オンライン」によると、デモ隊は失脚したムルシ前大統領の支持者たちで、エジプトのシシ国防相(59)が今週、大統領選出馬のため辞意を表明したことに対し抗議していたという。
ジャーナリストの権利保護を目的とする非営利組織、ジャーナリスト保護委員会のシェリフ・マンスール氏は28日、エジプト政府に対し、アシュラフさんの死について独立した公平な捜査を行うよう求めた。
エジプトでモルシ派デモ、5人死亡 治安部隊と衝突
nikkei.com
2014/3/29 10:57
【カイロ=共同】エジプト各地で28日、昨年のクーデターで追放されたモルシ前大統領の支持者が暫定政権への抗議デモを行い、治安部隊と衝突した。ロイター通信などによると、首都カイロ郊外の衝突で、取材中の地元紙女性記者を含む5人が死亡、全国で約20人が負傷した。
イスラム組織ムスリム同胞団が主導するモルシ派は、クーデターを率いたシシ前国防相が次期大統領選への出馬を発表したことに反発、金曜礼拝後に各地でデモを行っていた。暫定政権は同胞団をテロ組織に指定し、デモに対しては武力鎮圧と大量逮捕で臨んでいる。
エジプト:デモ隊と衝突、女性記者ら4人死亡
毎日新聞 2014年03月29日 10時33分(最終更新 03月29日 17時48分)
【カイロ秋山信一】エジプト各地で28日、軍主導の暫定政権に反対するモルシ前大統領の支持者らのデモがあり、政府系紙アルアハラム(電子版)によると、治安部隊との衝突で、取材中の地元紙の女性記者を含む4人が死亡した。デモ隊は、26日に次期大統領選への出馬を表明したシシ国防相への非難を強めており、抗議活動が収束する見通しはない。
アルアハラムによると、デモはイスラム教の金曜恒例の集団礼拝後、首都カイロや第2の都市アレクサンドリアなどで起きた。治安部隊は催涙ガスや散弾銃でデモ隊を攻撃し、100人以上を逮捕した。エジプトでは昨年11月に無許可のデモを禁止する法律が制定され、治安部隊はモルシ派のデモ隊への抑圧を強めている。
シシ氏は昨年7月のクーデターを主導し、モルシ氏を追放。世俗リベラル派を中心に支持率は高く、次期大統領就任が確実視されている。だがモルシ派からは「裏切り者」と非難されており、シシ派とモルシ派の対立が社会の不安定要因となっている。
サウジ、米の政策に不信感募る エジプト政変でも確執
2014/3/30 2:00
日本経済新聞 電子版
【ドバイ=久門武史】サウジアラビアは昨年来、イランやシリアなどを巡る米国の政策に不信を募らせている。サウジが重視する政策でオバマ政権は対応を変えておらず、28日の首脳会談は溝の深さを改めて示した格好になった。
両国間にすきま風が吹き始めたのは昨年9月、米国がシリアへの軍事介入を土壇場で見送ったころだ。3年以上にわたるシリア内戦でイランはアサド政権側についており、米国の非介入はサウジを失望させた。そもそも、イスラム教スンニ派のサウジはシーア派主体のイランを脅威とみなしており、米国のイラン接近は、容認しがたい。
サウジにとって米国は最大の貿易相手国で、油田開発や兵器輸入で密接な関係を築いてきた。だが、政治面でサウジは譲らない姿勢を強めている。
エジプトを巡ってはイスラム主義組織ムスリム同胞団を母体とする前政権の崩壊後、米国は軍事援助を一部凍結した。これに対し、サウジは同胞団の台頭を警戒、3月初旬に同胞団を支援するカタールから大使を召還し、さらにテロ組織に指定した。
オバマ氏訪問直前の動きに、アラビア語紙アッシャルクル・アウサトは「我々は自らの方法で対処するという国王のメッセージだ」とする分析を掲載した。
湾岸の親米産油国には、米国でのシェールオイル・ガスの生産拡大によって米政権の中東への関与が薄れるとの不安もある。サウジは自らの懸念を過小評価するかのような動きを重ねる米国にいら立つが、地域の安全保障で米軍に代わる存在はない。
サウジ側もこれ以上の関係悪化は望まないものの、米側の政策転換は望み薄。不信の解消にはなお時間がかかりそうだ。
★アフリカビジネスニュースより★
若者の起業家精神は北・中央アフリカで遅れている?
2014年3月30日 19:00
●若い起業家へ助成金
Anzisha賞は、15歳〜22歳までの若いアフリカの起業家に与えられる賞である。アフリカン・リーダーシップ・アカデミーがマスターカード財団と提携して主催しており、受賞者には75,000ドルの助成金が与えられる。
また、10,000ドルの追加助成金がシリコン・バレー・コミュニティー財団のアフリカ・グループのための寄贈として、再生可能エネルギー・イニシアチブに取り組んでいる若い起業家に与えられる。
●起業家育成のために
15-24歳アフリカ人口の55%が女性であるのに対して、賞への申し込みをしている女性は25%にしか満たない。Anzisha賞は、Forum for African Women Educationalistsアフリカ女性教育者のためのフォーラム(FAWE)団体と協力して女性の申し込みが増えるように努力をしている。
北アフリカの申し込みは、この地域でかなり多くの啓蒙活動をしているのに少ないのが現状である。2011年以降、33名の受賞者のうち北アフリカの若者は3名であり、この3名はエジプトの男性である。北アフリカからのアクセスを増やすため、今年はアラビア語とフランス語で公式文書を出すことになった。
ファイナリストは、南アフリカのヨハネスブルグで1週間の起業家育成プログラムに参加することができる。
http://www.anzishaprize.org/
エジプト大統領選、5月26、27日に
nikkei.com
2014/3/31 1:05
【カイロ=押野真也】エジプトの選挙管理委員会は30日、大統領選挙を5月26、27の両日に実施すると発表した。正式な結果発表は6月5日になる見通し。大統領選を巡っては、すでに出馬を表明しているシシ前国防相の当選が確実視されている。大統領選後、7月以降に総選挙を実施して正式政府を発足させ、現在の暫定政権から政治権限を移譲する計画だ。
エジプト大統領選、5月26〜27日に実施
cnn.co.jp
2014.03.31 Mon posted at 12:13 JST
(CNN) エジプトの大統領選挙が5月26〜27日に行われることになった。大統領選挙管理委員会の発表として同国のメディアが30日に伝えた。
大統領選には26日に国防相辞任を表明したアブデル・ファタフ・シシ氏(59)が出馬を表明している。
シシ氏は昨年の反政府デモ激化を受けて、ムスリム同胞団出身だった当時のムルシ大統領を失脚させた中心人物。2011年のムバラク政権崩壊後の混乱を収束できる指導者とみなす国民の間では高い人気を保っている。
一方、イスラム勢力は、選挙で選ばれた指導者をクーデターで倒して反対派を武力で弾圧した首謀者としてシシ氏を非難している。
ムルシ政権崩壊後のエジプトは混乱が続く。国営紙によれば、30日もシナイ半島で武装集団が治安部隊の車両に銃を乱射し、兵士1人が死亡、警察官3人が負傷した。
ナイル.com:(15)トルコ旋風
毎日新聞
2014年03月31日
エジプトの首都カイロで2013年4月以降、トルコ資本のスーパー「BIM」の出店ラッシュが起きている。月2回の安売り日には、開店前から長蛇の列ができるほど人気だ。店をのぞいてみると、手間をかけない商品陳列の方法や品目の絞り込みなどに、コスト削減策がうかがわれた。
3月19日、カイロ北部エルサヘル地区に、「BIM」の新店舗がオープンした。米5キロ=18・5エジプトポンド(約270円)、160グラム入りポテトチップス=3・95エジプトポンド(約58円)、おむつ12枚セット=9・95エジプトポンド(約145円)。周辺の小売店より1〜2割安い。家族と来ていた弁護士のムハンマド・カリムさん(38)は「安くて良い物がある。郊外の大型店よりは少し高いけど、近所で買い物を済ませられるのは利点だね」と満足げだった。
雑居ビルの1階にある店舗は、日本のコンビニエンスストアほどの大きさだ。商品は段ボール箱やケースに入ったまま積まれている。商品を補充する時もバックヤードから箱ごと持ってくるだけで、並べる手間がかからない。
商品の種類の少なさも特徴的だ。米、パスタ、調味料、ジュース、水、日用品などに絞り、それぞれ1〜2種類しか置いていない。日持ちしない生鮮食品は少ししかない。商品を選ぶ楽しみはないが、日常生活に最低限必要なものはそろっているという印象だ。
BIMは昨年4月にカイロに進出すると、昨年末までに35店舗をオープン。今年はさらに50店舗を増やす計画だ。モロッコでも既に175店舗を展開している。
アラブ諸国では近年、トルコ製の家具や衣料品、電化製品がシェアを拡大している。安価な日用雑貨は中国製が多いが、トルコ製品は「中国製より少し高いが、質が良い」というイメージがあるようだ。アラブ世界を長年にわたって席巻したオスマン帝国の滅亡から約1世紀を経て、今度はトルコブランドがアラブに旋風を起こしている。【カイロ秋山信一】
カイロ大学前の3カ所で爆発、警官1人死亡 エジプト
asahi.com
エルサレム=山尾有紀恵2014年4月2日23時21分
エジプトのカイロ大学前で2日、警察の詰め所など3カ所に仕掛けられた爆弾が相次いで爆発し、政府系紙アハラムによると警官1人が死亡し、少なくとも5人が負傷した。4発目の爆弾は不発処理されたという。周辺にいた学生15人が拘束された。
エジプトでは今年5月に大統領選が予定され、昨年7月の軍によるクーデターを主導したシーシ前国防相が出馬を表明している。一方で、クーデターで政権の座を追われたムルシ前大統領の支持者や軍政に反対する若者らのデモが続いている。国内の主要大学はこうしたデモ隊の拠点となっており、学生と治安部隊の衝突が頻発している。(エルサレム=山尾有紀恵)
エジプト・カイロ大学付近で連続爆発、警官6人が死傷
cnn.co.jp
2014.04.03 Thu posted at 13:04 JST
カイロ(CNN) エジプトの首都カイロにあるカイロ大学付近で2日、爆発が起き、警察幹部1人が死亡、警官5人が負傷した。同国内務省が発表した。
爆発は計3回起きた。最初の2回は工学部の近くで連続して起き、3回目は少し間を置いて正門近くで起きたという。
内務省の声明によれば、爆発物のうち2つは樹木に仕掛けられていた。内務省関係者はCNNに対し、爆発物は「手製」だったとみられると語った。政府系紙アハラムによれば、爆発により建物の一部が崩壊したという。
犯行声明は出ていないが、これまでもイスラム主義武装勢力が同様の事件を起こしている。
エジプトでは昨年7月に軍によるクーデターが起き、ムスリム同胞団出身だった当時のムルシ大統領が失脚。それ以来、治安部隊を標的にした攻撃が相次いでいる。
カイロ大学周辺でも近ごろ、警察とムスリム同胞団支持者との衝突が続いていた。
エジプトでは5月26〜27日に大統領選挙が予定されており、クーデターを主導したシーシ前国防相が出馬を表明している。
前国防相はクーデターを支持する層においては高い人気を誇り、混迷するエジプト情勢に終止符を打つ実力派と期待されている。だがイスラム主義を信奉する人々の間では「民選大統領を失脚させたクーデターの黒幕」との見方が強い。
エジプト:カイロで爆発、警察幹部ら死亡
毎日新聞 2014年04月03日 東京朝刊
エジプトの首都カイロ郊外ギザにあるカイロ大学近くで2日、3度の爆発があり、AP通信によると、警察幹部ら2人が死亡、7人が負傷した。犯行声明は出ていないが、治安当局を狙ったテロの可能性が高い。カイロ大では昨秋以降、昨年7月の軍事クーデターやシシ前国防相の大統領選出馬に反対するデモが連日あり、治安当局との衝突も頻発している。【カイロ】
エジプト:ムバラク独裁の象徴解体へ
毎日新聞 2014年04月05日 東京朝刊
【カイロ秋山信一】エジプト暫定政府は、2011年の民主化要求運動「アラブの春」で退任したムバラク元大統領(85)の与党・国民民主党の本部ビル(カイロ)を解体すると発表した。今後は隣接するエジプト考古学博物館の庭園に生まれ変わる。長年、独裁政権の象徴だったが、11年にデモ隊に放火され、現在は外壁が黒焦げの状態で残っている。
国民民主党はサダト政権下の1978年に創設された事実上の独裁政党。革命後の11年4月に解散命令が出た。本部ビルは、カイロ中心部のナイル河畔にあり、ムバラク政権に反対する数十万人のデモ隊が押し寄せたタハリール広場にも近い。「革命のシンボル」として保存を望む声もあったが、取り壊しが決まった。
「アラブの春」のデモに参加したカイロの公務員、エスラ・ムハンマドさん(38)は「国民民主党は嫌いだったので解体されるのはうれしい」と話した。
アルカイダ指導者の弟らを訴追 エジプト検察
nikkei.com
2014/4/7 10:07
【カイロ=共同】エジプト検察は6日、国内でテロ組織を設立し国家転覆を計画した罪で、国際テロ組織アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリ容疑者の弟で、拘束中のムハンマド・ザワヒリ容疑者ら計68人を訴追した。エジプト紙アルアハラムが報じた。
検察は被告らが、警察や軍のほか、キリスト教の一派である少数派コプト教徒の襲撃を計画、25人が関与を認めたとしている。68人のうち18人は逃走中という。
治安当局者は昨年8月、首都カイロ近郊ギザでムハンマド被告を拘束した。ムハンマド被告はエジプト北東部シナイ半島での治安部隊などへの襲撃事件に関与していると指摘された。
エジプトの民主化団体 軍主導政権復活に反対訴え
東京新聞
2014年4月7日 夕刊
【カイロ=中村禎一郎】二〇一一年に軍を基盤とするエジプト・ムバラク政権打倒のデモを呼び掛けた民主化グループ「四月六日運動」が六日、首都カイロのタハリール広場近くで、軍主導の強権政治の復活反対を訴えた。運動の拡大を恐れる当局は軍を投入し、デモの象徴となっている広場を封鎖した。
五月の大統領選には、当選が確実視されるシシ前軍最高評議会議長が出馬を表明。軍は民主化勢力の抑え込みを続けており、軍を基盤とする政権が復活する公算が大きい。
グループ幹部は活動に先立って会見し、「市民による民主主義を実現する」と主張。その後、約二千人が広場近くで旗を振りながら「エジプトに自由を」と声を上げた。当初は広場内をデモ行進する予定だったが「軍との衝突を避ける」として取りやめた。
ムバラク政権は一一年、デモをきっかけに崩壊。イスラム勢力のモルシ政権が誕生したが、軍の事実上のクーデターで翌年七月に倒れた。来月の大統領選ではモルシ氏の後任が決められる。
四月六日運動はインターネット交流サイト・フェイスブックを通じて結成され、〇八年の同日にゼネストを呼び掛けた。ムバラク政権打倒のデモでもフェイスブックで参加を訴えた。
ナイル.com:(16)アラブの「母の日」
毎日新聞
2014年04月09日
アラブ諸国では3月は「母の日」の季節です。いつもプレゼントを何にするのか迷うのですが、今年は母が携帯電話をなくしたばかりだったので、迷わず携帯電話にしました。機械が苦手な母にスマートフォンは無理なので、シンプルな機種を選びました。兄と一緒にプレゼントすると、母は「どうやって使うのか、早く教えてね」と大喜びでした。
日本の母の日は5月の第2日曜日ですが、エジプトなどアラブ諸国の大半では、3月21日です。きっかけは約70年前に書かれたエジプトの新聞のコラムだったというのが通説です。「中東で母の日を作りましょう」という呼びかけに、ある読者が「母親は春のような存在だから」と、立春の3月21日を提案して、採用されました。その後、アラブ世界に広がっていきました。
3月半ばになると、デパートやお花屋さんなどでは、母の日の宣伝や割引が始まります。テレビやラジオでは、母親をテーマにした映画や歌などが流れ、「お母さんに感謝しよう」というムードに包まれます。母親だけでなく、教師などお世話になっている女性にプレゼントを贈る人もいます。贈り物にはガラベーヤと呼ばれるロングワンピースや調理器具、家電などを選ぶ人が多くいます。
中には私の友人のハナーノさん(46)のように「子供には母の日を祝わなくていいとお願いしているの。母親は一日だけではなく、一年中尊敬されるべきものでしょ」という人もいますが、母の日のお祝いは一般的に定着しています。
アラブ世界だけでなく、どの社会にも、母親と子供は愛と尊敬をもって互いに接するという道徳観があると思います。イスラム教徒には、それに加えて母親を大事にすべき、もう一つの理由があります。聖典(コーラン)や預言者ムハンマドの言行録(ハディース)で、母親は最高に尊敬されるべきものと位置づけられているのです。
例えば「天国は母の足元にある」というハディースがあります。母親を大事にしている人に天国の門は開かれるという意味です。また次のような話も残っています。ある男が預言者に「私が最も深く付き合うべき者は誰ですか」と尋ねると、預言者は「あなたの母親です」と答えました。「その次は?」と尋ねる男に、預言者はさらに2度、「あなたの母親です」と答えました。そして4度目に「その次に父親です」と答えました。
ちなみに、エジプトでは6月21日が「父の日」とされていますが、お祝いの習慣は定着していません。理由は分かりませんが、父の日を知らない人さえ多いと思います。今年の母の日。プレゼントに喜ぶ母の前で、父は「何で父の日のお祝いがないんだ」と焼きもちを焼いていました。【ザイナブ・アジジ(カイロ支局スタッフ)】
イスラム聖地巡礼:/2 美しいモスクに嘆息
毎日新聞 2014年04月09日 東京夕刊
サウジアラビア西部メディナ。メッカと並ぶイスラム教の聖地には、世界中から巡礼者が集まっていた。おそろいのピンク色のスカーフを着用するトルコ人女性たち、白い衣装とマナーの良さが印象的なインドネシア人、団体行動をしないエジプト人。肌の色も国籍も違うが、礼拝時間を告げるアザーンの音が響くとモスク周辺に集まって礼拝を始めた。
2月4日、聖地への玄関口ヤンブー空港から砂漠の一本道をバスで4時間、私たち巡礼ツアーの一行はメディナに着いた。夕方の気温は約28度で過ごしやすい。オアシスなので街路樹もある。街の中心に、イスラム教の預言者ムハンマドが建てたモスク(イスラム礼拝所)があった。ライトアップされ、夕闇の中に浮き上がって見えた。「きれい」と思わず声が漏れた。
約40万平方メートル(東京ドーム8・5個分)の巨大な敷地には、86のゲートがあった。床や壁は清掃員が絶えず掃除し、大理石の床は鏡のように巡礼者の姿を映し出していた。
モスクの緑色のドームの下に、預言者の墓がある。女性には午前、午後、夜間に2時間ずつ礼拝の時間が割り当てられている。順番待ちをしている間、隣にいた女性に「なぜ女性の方が時間が短いんでしょうね」と聞くと、「マナーが悪いからよ」と意外な答えが返ってきた。墓の前で感情を抑えられない女性がいるのだという。
1時間並んで、ひつぎの前に来た。「アッサラーム・アライコム(平安あれの意味)」と預言者にあいさつした。騒がしく喜びを表す巡礼者もいたが、女性警官に「ここでは静かに」とたしなめられていた。
巡礼とは別に1日5回の礼拝はモスク周辺で行った。夜明け(現地では午前6時半)の礼拝に、何万もの人が起き出していた。エジプトでは普段、夜明けのお祈りはベッドの脇で済ませ、二度寝する人も多い。人波を目にして「これがあるべき姿だ」と感動した。【ザイナブ・アジジ(カイロ支局スタッフ)】=つづく
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■ことば
◇メディナ
サウジアラビア西部にあるオアシス都市。人口約118万人(2010年)。622年、イスラム教の預言者ムハンマドはメッカで迫害され、メディナに移り(聖遷)、根拠地とした。イスラム暦は聖遷の年から始まる。ムハンマドの埋葬地があり、メッカと並ぶ二聖都と称されている。
前国防相シーシ氏、立候補届け出 エジプト大統領選
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵
2014年4月15日09時08分
5月に大統領選が行われるエジプトで、立候補を表明していたシーシ前国防相(前軍総司令官)が14日、最高選挙委員会に正式に立候補を届け出た。
今年1月に改正された憲法によると、立候補には有権者2万5千人以上の推薦が必要。政府系紙アハラムによると、シーシ氏の代理人は20万人以上の推薦状を提出し、国民からの支持をアピールした。
シーシ氏は昨年7月のクーデターでイスラム組織ムスリム同胞団出身のムルシ前大統領を排除した中心人物。大統領選にはほかに、前回選挙にも出馬した左派系のサバーヒ氏が立候補を表明しているが、勢いはなく、シーシ氏の当選は確実とみられている。候補者登録は20日に締め切られ、5月26、27両日に投票が行われる予定。
一方、エジプトではムルシ氏支持派や軍政に反対する若者らの抗議デモも続いている。拠点の一つであるカイロ大学では14日、デモ隊が治安部隊と衝突し、学生1人が死亡した。(カイロ=山尾有紀恵)
ナイル.com:(17)人気者に落とし穴
毎日新聞
2014年04月18日
エジプトの人気テレビ司会者のバセミ・ユセフ氏が、地元紙に連載しているコラムで、ニュースサイトの記事を盗用したことが発覚した。言論の締め付けを強める軍主導の暫定政権にとって、風刺が持ち味のユセフ氏は目の上のたんこぶ。風刺の対象になってきたシシ前国防相の支持者らは、ここぞとばかりにユセフ氏に非難を浴びせている。
問題のコラムは、3月18日付のエジプト紙「シュルーク」に掲載された。ウクライナ情勢を論評し「ロシアのプーチン大統領は、非難するだけで戦うつもりがない米国を恐れていない」などと書いていた。
地元メディアによると、掲載日当日、コラムの構成が政治専門サイト「ポリティコ」の記事と酷似していることが外部の指摘で発覚。ユセフ氏は盗用を認め、「シュルーク」のホームページなどで「引用元を示すべきだった。テレビ番組の収録で忙しく、仕事の重圧もあった」と謝罪。コラムは打ち切りとなった。一方、盗用されたポリティコの記者は「彼は真剣に謝罪した。おかげで私の記事をたくさんの人が読んでくれた」とユーモアを交えて謝罪を受け入れた。
ただ批判精神が持ち味だったユセフ氏の失態に、シシ氏の支持者らから「泥棒と同じだ」「記者でもないのに無理して書くからだ」といった批判があふれ、ユセフ氏のファンからも失望の声が上がった。
ユセフ氏は医師だったが、2011年の「アラブの春」の後、社会風刺をインターネットの動画投稿サイトに掲載して人気者になった。モルシ前政権も、軍主導の暫定政権も、自らに批判的なメディアを締め付ける点は同じだ。ユセフ氏は「アラブの春」の成果である「言論の自由」を体現しており、私も期待していた。それだけにメディアに携わる者として致命的な今回の失態は残念だった。
ユセフ氏は昨年11月、シシ氏の支持者から反発を受け、ホスト役を務めるトーク番組が休止に追い込まれた。しかし今年2月に別のテレビ局でトーク番組を再開。今回の騒動後の放映では、新聞を読みながら「今度はどの記事を盗もうかな」とコメントし、自分の失態も風刺の対象にした。転んでもただでは起きない皮肉屋の面目躍如。しっかり反省し、活躍を続けてほしい。【カイロ秋山信一】
エジプト大統領選、左派政治家が立候補
nikkei.com
2014/4/19 20:33
【カイロ=共同】エジプトの左派系有力政治家ハムディン・サバヒ氏(59)が19日、5月に行われる大統領選への立候補を選挙管理委員会に届け出た。立候補を届けたのは、当選が確実視されるシシ前国防相に続いて2人目。
サバヒ氏は、昨年7月のクーデターで追放されたモルシ前大統領が当選した2012年の大統領選にも出馬し、3位と健闘した。今回の選挙では、エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)前事務局長が創設したリベラル派政党から支持を得ているが、シシ氏には大きく水をあけられている。
エジプト大統領選、前国防相ら2人の争い
nikkei.com
2014/4/21 10:29
【カイロ=共同】エジプトで5月26、27両日に行われる大統領選の立候補受け付けが20日に締め切られ、選挙管理委員会によると、届け出たのはアブデルファタフ・シシ前国防相(59)、左派系政治家のハムディン・サバヒ氏(59)の2人だけだった。
立候補資格の審査を経て5月2日に立候補者が確定する。イスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ前大統領を倒した昨年のクーデターを率いたシシ氏は、2011年の革命後の混乱収拾を望む有権者から広く支持されており、当選が確実視されている。
過半数票を獲得する候補がいなければ6月に決選投票が予定されていたが、立候補者が2人だったため5月の選挙で当選が決まる見通しとなった。
12年に行われた革命後初の大統領選は、イスラム系、リベラル派、軍出身者らさまざまな顔触れの13人の争いとなった。今回は政権による同胞団弾圧とシシ氏翼賛ムードの下で大きく様変わりした。
エジプト大統領選、一騎打ちに 前国防相と左派政治家
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵
2014年4月21日20時55分
5月末に行われるエジプト大統領選の候補者登録が20日に締め切られ、シーシ前国防相(59)と左派政治家のサバヒ氏(59)の2人が立候補を届け出た。資格審査を経て5月3日から選挙戦が始まるが、昨年7月の軍クーデターを主導したシーシ氏の当選が確実視されている。
シーシ氏は陸軍出身。軍情報部門トップを経て、イスラム系のムルシ前大統領に国防相に任命された。だが、クーデターでムルシ氏を排除。その後の暫定政権で第1副首相を兼務した。
サバヒ氏はジャーナリストなどを経て政界入りし、ムバラク政権打倒を目指す運動に参加。エジプト社会の経済格差や腐敗などの問題に取り組むとしている。
ムルシ氏の支持母体であるムスリム同胞団は、今回の大統領選には正当性がないとしてボイコットを決めている。(カイロ=山尾有紀恵)
エジプト大統領選:シシ前国防相が優位
毎日新聞 2014年04月21日 19時20分(最終更新 04月22日 05時42分)
【カイロ秋山信一】5月26、27日投票のエジプト大統領選挙は20日、立候補の届け出が締め切られ、シシ前国防相(59)と左派政治家のサバヒ氏(59)による一騎打ちの構図が決まった。世論調査ではシシ氏への支持が圧倒的で、当選は確実視される。ただ昨年7月のクーデターで追放されたモルシ前大統領の支持者や、強権支配の復活を懸念する若者グループは選挙を棄権する方針で、社会の分断が収まる見通しは立っていない。
「革命は続いている、軍事政権を倒せ」。首都カイロ中心部にあるジャーナリスト連盟本部の前で10日、記者や学生ら約200人がシュプレヒコールを上げた。デモに参加しただけで治安当局に拘束された民主活動家の写真を掲げた参加者は、即時釈放を求めた。「シシ政権が生まれれば、エジプトは2011年の革命前に戻ってしまう」。エジプト・ブリティッシュ大学3年のアフマド・アブゼイドさん(21)は危機感をあらわにした。
軍主導の暫定政権は昨年11月、デモ規制法を制定し、治安当局への事前届け出を義務づけた。モルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団のデモを抑圧するのが主眼だったが、11年の革命でムバラク政権打倒を主導したリベラル派の若者らも「言論の自由への挑戦だ」と批判。治安当局が、無届けのデモ参加者の拘束を始め、反感が強まった。
ただ大統領選でのシシ氏の優位は動かない。今年行われた複数の世論調査で、大統領選の投票先を決めた人の9割以上が「シシ氏に投票する」と回答。反モルシ派の多くは、国民に不人気だったモルシ氏を追放したシシ氏を英雄視している。クーデターに反発するイスラム過激派などによる爆弾テロが相次ぐ治安状況で、これ以上の混乱を避けるために「シシ氏でやむなし」との風潮もある。
シシ氏自身はクーデター後、「革命を後戻りさせるようなことはしない」などと述べ、強権支配復活の懸念を払拭(ふっしょく)しようとしてきた。サバヒ氏は「シシ氏の陣営には、汚職にまみれたムバラク政権時代の影がちらついている」とシシ氏をけん制している。
同胞団や若者グループは、今回の大統領選を「クーデターに基づく不当な選挙」と位置付けており、ボイコットする方針だ。前回大統領選で得票数3位だったサバヒ氏は、軍によるモルシ氏追放を支持した経緯があり、「反シシ票」を吸収しきれていない。
エジプト大統領選:選挙に至る過程で不正−−政党代表・アブルフトゥーハ氏
毎日新聞 2014年04月22日 東京朝刊
今回のエジプト大統領選について、2011年の革命後にムスリム同胞団から離脱し、現在は有力政党「強いエジプト党」を率いるアブドルメナム・アブルフトゥーハ氏(62)に聞いた。同氏は、12年5月の前回選挙に立候補し、得票数4位だった。【秋山信一】
−−なぜ立候補しなかったのか。
◆今回の選挙はショーだ。軍主導の暫定政権はクーデター以降、シシ氏の支持を広げる宣伝活動を行ってきた。選挙自体に不正がなくても、選挙に至る過程が不正だ。
−−シシ氏の評価は。
◆軍での経歴は立派だが、政治は素人だ。出馬表明ではエジプトに問題が山積していると述べ、国民に協力を呼びかけた。正直だと思うが、奇麗事なら誰でも言える。求められるのは実行力だ。
−−軍と同胞団の和解は可能か。
◆同胞団は80年以上の歴史を持ち、100万人の団員がいる。過去に何度も弾圧を経験し、生き延びる方法を心得ている。軍との対立はエジプトにとって致命的な痛手となるが、双方とも歩み寄るつもりがない。せめて大統領は中立であるべきだが「シシ大統領」ではそれさえ望めない。
−−エジプトの立て直しに必要なのは?
◆ナイル川の恵み、観光資源、中東一の人口など発展する要素がそろっている。だが行政が腐敗し、発展を妨げている。だからこそ民主主義の発展が必要なのだ。国民の代表が行政を監視する仕組みができれば、間違いなく豊かになる。
前国防相を「裁判にかける」 エジプト大統領選で発言か
asahi.com
カイロ=川上泰徳
2014年4月27日01時24分
エジプトのリベラル紙ヨムサバアは26日付朝刊で、5月末の大統領選挙に立候補の届け出をしている左派系のサバヒ氏が若者たちとの内輪の会合で、対立候補で、昨夏の軍事クーデターを主導したシーシ前国防相を「裁判にかける」と語ったとする音声テープを入手したと1面で報じた。
サバヒ氏はこの日、左派系の団体の会合で「過去の亡霊が戻るのを阻止する」と演説した。録音テープについては語らなかったが、当選が有力視されるシーシ氏への対決姿勢を強める動きと見られる。
ヨムサバア紙の編集長は25日夜、エジプト民放テレビに登場し、サバヒ氏が24日にカイロ市内で若者グループと行った会合で語った録音テープを入手したと語った。同紙がインターネットで公開したサバヒ氏とされる音声は、「(軍・治安部隊の武力行使で)死んだムスリム同胞団はテロ行為を働いてはいない。彼らは平和的だった。シーシ氏が犯罪者でないとしてもシーシ氏を裁判に問うつもりだ」と語っている。
サバヒ氏はムバラク政権時代から野党政治家として活動し、2011年のエジプト革命では左派、リベラル派の若者たちの支持を集めた。大統領選挙ではシーシ氏とともに立候補の届け出をしているが、サバヒ陣営はこれまで「シーシ氏は優れた国防相で、立候補を歓迎する」などと発言してきた。(カイロ=川上泰徳)
ナイル.com:(18)こんな大統領はいかが?
毎日新聞
2014年04月27日
今年上半期にアラブ諸国で予定されている四つの大統領選挙は、どれもいわく付きだ。レバノン人の漫画家、ハッサン・ブレイベルさん(51)の作品「大統領の座」を基に紹介してみたい。
四つ並んだ椅子は各国の大統領を表している。左から説明すると、自国を破壊させながら居座るのがシリア流(6月の選挙で3選確実のアサド大統領)、健康不安で車椅子に乗っていても当選してしまうのがアルジェリア流(4月17日の選挙で4選を果たしたブーテフリカ大統領)、軍事クーデターで先代を蹴り出した後に座るのがエジプト流(5月の選挙で当選が確実視されるシシ前国防相)。
そして一番右は、候補者の調整がつかず、国会議員の投票で選ぶ大統領を決められないレバノン流。18以上の宗教・宗派が混在し、対立を避けるために何事も合意を重んじるのがレバノン政界の流儀。大統領選任にも3分の2以上の得票が必要で、宗派、政党間の調整がなければ、選出は不可能だ。しかし、隣国シリアの内戦の影響で、イスラム教スンニ派(反シリア)とシーア派(親シリア)の争いが激化し、ここ2年ほどは合意に至るのが以前にも増して難しくなっている。
四つの椅子とも、先進国では、まずお目にかかれないスタイルで、波乱含みのアラブ政治を象徴している。作者のハッサンさんは「どの椅子も欲しくない。だめな大統領がいない分、レバノンがましなのかな」とため息をついていた。【カイロ秋山信一】
エジプトの警官殺害 新たに683人に死刑判決
asahi.com
カイロ=川上泰徳
2014年4月28日19時47分
エジプト南部のメニア地方裁判所は28日、昨年8月に警察署を襲撃して副署長を殺害した事件で、イスラム組織「ムスリム同胞団」の最高指導者バディウ団長ら683人に死刑判決を出した。3月に同裁判所が出した528人の死刑判決に続くもの。国営中東通信などが伝えた。
エジプトでは死刑判決は最終的な言い渡しの前に、イスラム国家宗教指導者の宗教見解を参考意見として聞くことになっている。3月の死刑判決についてはこの日、37人に死刑、491人に終身刑が言い渡された。弁護団は死刑、終身刑ともに控訴する方針という。新たな死刑判決についても宗教指導者の見解が出た後、最終的な判決が言い渡される。
エジプトの大量死刑判決には国際的人権組織のアムネスティ・インターナショナルが「エジプト司法の異様な偏向と欠陥を示している」と声明を出すなど国際的な批判が上がっている。
エジプトでは昨年7月に同胞団出身のムルシ前大統領が軍に排除されるクーデターがあり、昨年8月、カイロ市内で同胞団系の反クーデターデモを軍・治安部隊が武力鎮圧した。その日に、メニアでは鎮圧に抗議する暴徒が警察署を襲撃し、副署長が殺害された。
メニアの裁判所で訴追されているのは、この時の暴力事件で、バディウ団長は「暴力の扇動」に問われているという。アラビア語衛星テレビ「アルアラビア」によると、裁判長は3月の判決時と同様に弁護士の意見陳述を聞くことなく、判決を出したという。(カイロ=川上泰徳)
前大統領派683人死刑判決…エジプトの裁判所
The Yomiuri Shimbun
2014年04月28日 22時27分
【カイロ=久保健一】エジプト有力紙アル・アハラム(電子版)によると、同国中部ミニヤ県の裁判所は28日、イスラム主義組織「ムスリム同胞団」の指導者ムハンマド・バディア氏を含むモルシ前大統領派の683人に対する死刑判決を下した。
裁判所はまた、3月下旬、昨年8月に起きた同県内の警察署襲撃事件に関係したとして死刑判決を受けたモルシ氏派529人のうち、492人を終身刑に減刑した。
一方、同紙によると、エジプトの裁判所は28日、旧ムバラク政権を崩壊させた2011年初めの民衆デモに大きな役割を果たした若者グループ「4月6日運動」を非合法とする判決を下した。「違法に外国人と接触し、国家のイメージを損ねた」ためとしている。
2014年04月28日 22時27分
エジプト:同胞団指導者ら、新たに683人死刑判決
毎日新聞 2014年04月28日 19時51分
【カイロ秋山信一】エジプト中部ミニヤの裁判所は28日、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の最高指導者バディア氏や支持者ら計683人に対して、警察署などを襲撃して警察官ら2人を殺害したなどの罪で、死刑判決を言い渡した。弁護側は控訴する方針。一方、別の事件で3月に死刑を言い渡された529人のうち492人は終身刑に軽減され、37人の死刑は維持された。減刑の経緯は不明だが、国内外の批判に対する政治的配慮が働いた可能性もある。
弁護人によると、判決では683人の被告らは共謀し、2013年8月、ミニヤにある警察署や行政庁舎を襲撃し、警察官と市民の2人を殺害したとされる。バディア氏を含む約70人は当局に拘束されているが、他の被告らは逃亡している。バディア氏は他にも複数の事件で公判中だが、組織トップへの死刑判決に同胞団支持者らが反発するのは必至だ。
エジプトでは昨年7月の軍事クーデターでモルシ氏が大統領を解任された。軍主導の暫定政権は昨年12月に同胞団を「テロ組織」に指定し、弾圧している。来月の大統領選では、クーデターを主導したシシ前国防相の当選が確実視されている。
ワールド・トレジャー:特派員が選ぶ私の世界遺産 クフ王のピラミッド(エジプト・ギザ)
毎日新聞 2014年04月28日 東京夕刊
◇時を超え、頂に魅せられ
ピラミッドに魅せられ、最大規模の「クフ王のピラミッド」の頂を6度極めた男がいる。「現役では一番多いんじゃないかな。最初は27歳の時だった」。考古学省の次官、マンスール・ギレイクさん(54)が語り始めた。
1987年11月。首都カイロ郊外ギザにあるクフ王のピラミッドを4人の男が見上げていた。日差しは柔らかく、風もなく、絶好の登頂日和だった。「下を見ちゃだめだぞ。怖くて動けなくなる」。登頂歴1000回を超え、バタル(アラビア語で王者の意味)と呼ばれるガイドのヘフナウィ・アデルナビさん(当時64歳)の言葉に、マンスールさんと2人の米国人研究者がうなずいた。周辺の発掘のため、上から写真を撮影するのが目的だった。
高さ1〜2メートルの石段を道具を使わずに登っていく。丈夫な石を探り当て、手をかけては両腕の力で体を引き上げる。20分後、約200段を登り切ると、10メートル四方ほどの石畳がマンスールさんたちを出迎えた。眼下には美しい砂の模様が広がり、遠くにカイロの街を見渡せた。突然、手足が震えだした。「感動したのかと思ったけれど、すぐに恐怖だと分かった」と苦笑いする。約50度の傾斜の恐怖感は、想像以上だった。
頂上の石畳にはさまざまな言語で年代や名前が彫られていた。フランス語、英語に日本語も交じる。過去に観光や研究目的で登った人たちの落書きで、一番古い落書きは「1840年」に刻まれたものだった。
ギザに生まれたマンスールさんは幼い頃から遺跡に憧れていた。実家近くでドイツの発掘隊が遺跡を掘る様子を見て「自分もいつかは」と夢を抱いた。カイロ大学考古学部に在籍中、週2〜3回はピラミッドに足を運び、「ここで働く」と誓い、卒業後の84年に考古学省に入った。
入省4年目の初登頂以降、調査や補修作業のために登頂を重ねた。「比較的石段が低くて足をかけやすい南西から登り、丈夫な石が多い北東から下るのがコツ。下りで足場が崩れたら致命的だからね」と語る。
「雲の上の存在」と語るヘフナウィさんは2002年に亡くなった。60年代、当時の大統領に10分間で地上と頂上を往復する技を披露し、王者の称号と金時計を得た伝説を持っていた。今はマンスールさんが、師匠の技を引き継ぐ存在だ。
ただピラミッドは79年に世界遺産に登録され、正当な研究目的がないと登頂できなくなった。一方、違法登頂はたびたび起きる。4月上旬、妻とケンカをした男が頂上で夜を明かす騒ぎを起こした。90年代には女性の下着が掲げられたり、男が身を投げて自殺したりする事件も。03年に3年以下の禁錮刑が定められたが、年に数回は違法登頂がある。
マンスールさんが最後に登頂してから10年がたつ。「次」がある保証はないが、意欲は衰えていない。「人は時の流れには逆らえないが、ピラミッドは時を超越した存在。その頂に、また登ってみたいんだ」【秋山信一】
階段状や円すい形も
エジプトでは118基のピラミッドが確認されている。建造時期によって形状や石材が異なり、階段状や円すい形のものもある。紀元前26世紀に建設されたクフ王のピラミッドが最大で、2〜10トンの石灰岩を約230万個積み上げたと推定される。完成時の高さは146メートルだったが、頂上部が崩れ、現在は137メートルになっている。
入場料は年々値上げ
ギザの三大ピラミッド(クフ王、カフラー王、メンカウラー王)へは首都カイロ中心部から車で約1時間。ピラミッドやスフィンクスがある一帯の入場料は外国人80エジプトポンド(約1200円)、エジプト人2ポンド。クフ王のピラミッドに入るには外国人は追加で200ポンドかかる。2011年の革命後、観光客減少で入場料は年々上がっている。
ワールド・トレジャー:特派員が選ぶ私の世界遺産 クフ王のピラミッド(エジプト・ギザ)
ムスリム同胞団683人に死刑判決 エジプト
cnn.co.jp
2014.04.29 Tue posted at 11:43 JST
(CNN) エジプトの裁判所は、同国で禁止団体に指定されたイスラム組織「ムスリム同胞団」の指導者や支持者683人に対し死刑を言い渡した。国営テレビが28日に伝えた。
同胞団の支持者らは、昨年8月に中部のミンヤで起きた暴動に関与した罪で起訴された。今回死刑を言い渡された683人の中には、最高指導者のモハメド・バディア被告も含まれる。
当局は5月に選挙を控えてイスラム勢力に対する取り締まりを強化している。ムスリム同胞団は、昨年7月に失脚したムルシ大統領を支持して座り込みなどの抗議活動を行っていた。
今回の死刑判決は確定したわけではなく、同国の最高宗教機関が審理に当たる。
これとは別に、ムスリム同胞団支持者は先月にも529人に死刑判決が言い渡されており、裁判所は今回、このうち37人の死刑を支持。残りは終身刑に減刑された。被告には控訴も認められている。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長は大量の死刑判決が言い渡されたことについて、「公正な裁判の基本的基準を満たしていないことは明らかであり、長期的安定の展望を揺るがしかねない」と指摘。週内にもエジプト外相に懸念を伝える意向を表明した。
エジプト:新たに683人死刑判決 同胞団指導者らへ
毎日新聞 2014年04月29日 東京朝刊
【カイロ秋山信一】エジプト中部ミニヤの裁判所は28日、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の最高指導者バディア氏や支持者ら計683人に対して、警察署などを襲撃して警察官ら2人を殺害したなどの罪で、死刑判決を言い渡した。弁護側は控訴する方針。一方、別の事件で3月に死刑を言い渡された529人のうち492人は終身刑に軽減され、37人の死刑は維持された。減刑の経緯は不明だが、国内外の批判に対する政治的配慮が働いた可能性もある。
弁護人によると、判決では683人の被告らは共謀し、2013年8月、ミニヤにある警察署や行政庁舎を襲撃し、警察官と市民の2人を殺害したとされる。バディア氏を含む約70人は当局に拘束されているが、他の被告らは逃亡している。組織トップへの死刑判決に同胞団支持者らが反発するのは必至だ。
エジプトでは軍事クーデターでモルシ氏が大統領を解任された。暫定政権は昨年12月に同胞団を「テロ組織」に指定し、弾圧している。来月の大統領選では、クーデターを主導したシシ前国防相の当選が確実視されている。
ツタンカーメン王の墓、レプリカを一般公開 エジプト
cnn.co.jp
2014.05.02 Fri posted at 11:45 JST
(CNN) 古代エジプトのツタンカーメン王の墓を実物大で細部に至るまで精巧に再現したレプリカが完成し、南部ルクソール近郊でこのほど一般に公開された。
紀元前1327年に19歳で死去したとされるツタンカーメン王の墓は、ほぼ手つかずの状態で1922年に発見された。しかしその後何十年にもわたって大勢の観光客が詰めかけたため、呼気に含まれる湿気で壁画や壁が傷み、気温の変化で塗料がはがれ落ちたりひび割れが大きくなったりしていた。
レプリカは実物の損傷が進むのを防ぐ目的で、ルクソール近郊の「王家の谷」の入り口付近の地下に建設。69万ドル(約7000万円)の予算をかけ、スペインの保全チームが4年がかりで完成させた。
死後の世界へ旅立つ王を描いた壁画は、2009年に撮影された画像をもとに傷んだ状態のままで再現され、墓の内部の構造も、かつてミイラが眠っていた部屋の大理石も含め、樹脂を使って複製された。
実物の墓も現在は一般公開されているが、いずれ保全のために公開を中止する予定。
ツタンカーメン王のミイラは実物の墓の中でガラス容器に収められ、温度などの管理が行き届いた状態で保存されている。
エジプト大統領選挙 前国防相と左派系政治家の一騎打ち
asahi.com
カイロ=川上泰徳
2014年5月2日19時43分
エジプトの大統領選挙管理委員会は2日、立候補届け出をしたシーシ前国防相(59)と左派系政治家サバヒ氏(59)について、資格審査を経て正式に大統領候補として認定した。3日から選挙運動が始まり、26、27の両日に投票がある。
シーシ氏は昨年7月に、イスラム系のムルシ大統領(当時)を排除した軍クーデターを主導し、その後発足した暫定政権でも実質的な権力者と目され、当選確実のムードが広がる。サウジアラビアやアラブ首長国連邦など湾岸産油国の財政支援を背景に、経済の立て直しを求める富裕層の圧倒的な支持を集める。しかし、暫定政権による言論統制やデモ規制などに対する反発や、「軍政復活」を警戒する声も根強い。
一方のサバヒ氏はアラブ民族主義を唱えた故ナセル大統領の思想を受け継ぎ、ムバラク時代に計13回、逮捕された経験を持つ。2012年の大統領選挙第1回投票では全体の21%にあたる480万票を得て、第3位だった。特に「革命の継続」を求める若者や貧困層に支持を広げている。(カイロ=川上泰徳)
(時時刻刻)「エジプト再建」軍の影 復権へ前国防相支援 大統領選始まる
asahi.com
2014年5月4日05時00分
昨年のクーデターでイスラム系のムルシ政権が倒れたエジプトで3日、大統領選挙の選挙戦が始まった。投票日は26、27両日で、候補者は2人。軍はシーシ前国防相を切り札に3年前の「アラブの春」から続く混乱の幕引きを狙う。シーシ氏の当選が確実視されるなか、革命を主導した若者たちの勢いはない。
「偉大なるエジプト国民よ。二つの政権を倒したのは政治家でも軍でもなく、あなた方だ」。3月末、軍服姿で出馬を表明したアブドルファッターハ・シーシ前国防相(59)は低く穏やかな声で国民に語りかけた。治安を回復して国を立て直すため、ともに働こうとも呼びかけた。
「アラブの春」でムバラク政権が倒れた2011年の革命以降、治安の悪化はエジプト経済に打撃を与えた。警察を狙った爆弾テロが頻発。主要産業の観光は停滞が続いている。
ムバラク政権の腐敗した政治、ムスリム同胞団系ムルシ政権の失政により、国は混乱した。シーシ氏はそれを再び正しい道に戻し、繁栄を取り戻すのが自らの使命と位置づける。
シーシ氏の背後に控える軍は、表向き「革命の擁護者」として脇役を演じてきた。だが、昨年7月のクーデター後、軍主導の暫定政権は強権色を強めた。ムルシ派デモ隊の強制排除、デモ規制法の導入……。再び軍を柱とする旧体制の権力構造を回復するのが狙いとみられる。
治安回復や経済発展を望む経済界や富裕層などはシーシ氏を支持する。11年の革命に参加した大学生ハサン・アフマドさん(21)は「ムルシ政権は雇用創出など、私たちの要求を達成できなかった。国の統治には強い指導者が必要だ」と話した。(カイロ=山尾有紀恵)
■若者、革命の熱気薄まる
シーシ氏の対立候補として出馬したのが、若者層に支持されている左派リベラルの政治家ハムディン・サバヒ氏(59)だ。サバヒ氏は3日の演説で「腐敗した権力から、国民の権利を取り戻す。革命の志を実現する」と訴えた。
言葉の節々に「軍政回帰」への懸念をにじませながら、革命の原動力となった若者にアピール。「軍出身の大統領では公正な社会は望めない」と支持者でカイロ大3年のアフマド・サメフさん(22)は話した。
選挙公約では若者の雇用創出に重きを置く。エジプト政府の統計によると、11年第1四半期まで9%前後だった失業率は革命を境に上昇し、14年同期は13・4%。うち6割は20歳代だ。
ただ、若者たちに以前のような熱気はない。革命の「聖地」タハリール広場では横断幕などは撤去され、デモも起きていない。食堂店員のイブラヒム・セディクさん(30)は「みんな疲れた。選挙にもデモにも期待しない」。選挙戦が始まった3日、カイロでは目立った集会もなく、候補者のポスターも時々見かける程度だ。
革命を主導した若者グループ「4月6日運動」に対し、裁判所は4月末、「エジプトのイメージをゆがめた」として活動を全面禁止する判決を出した。サバヒ氏が若者の組織的な支援を受けられるかは不透明だ。
一方、ムルシ政権の母体となったムスリム同胞団は「大統領選に正当性はない」とボイコットを決めた。(カイロ=山西厚)
■特権化、民主化阻む存在 中東アフリカ総局長・川上泰徳
中東で「アラブの春」で生まれた民主化への期待がしぼんでいる。民主化が進まない最大の理由は、特権化した軍の存在だ。
アラブの軍事独裁体制は、エジプトで1952年に王制を打倒したナセル中佐(後の大統領)の革命で生まれ、アラブ民族主義のかけ声とともに周辺国に広がった。
アラブ世界の軍は軍事だけでなく、政治や経済など国の全般を担う存在と見なされる。それだけに、高級官僚や権力とつながる経済人ら特権的な富裕層と一体化している。結果的に、富の再分配や既得権の見直しなどの根本的な改革を実施しようとすると、富裕層とともに軍が抵抗勢力となる。
さらに中東の民主化を阻む要因として、サウジアラビアなど湾岸産油国の存在が挙げられる。
「アラブの春」の後、イスラム的な公正の実現を掲げるムスリム同胞団がアラブ各国の民主的な選挙で躍進。同胞団の影響が国内に波及して王制・首長制が倒れることを警戒する産油国は、同胞団出身のムルシ大統領を排除したクーデターを支持し、軍主導のエジプト暫定政権に財政支援を与えた。
さらにサウジを中心とする産油国はバーレーンにも軍を派遣し、シーア派住民の民主化要求デモを力で押さえ込んだ。特権化した軍主導体制と産油国の利害が一致し、同胞団の抑え込みと「アラブの春」の幕引きで連携ができあがっている形だ。
ナイル.com:(18)結婚の誓い
毎日新聞
2014年05月08日
新郎新婦が寄り添って、愛を誓う−−。結婚式というと、こうした光景を思い浮かべると思います。けれども、エジプトでは新婦は必ずしも結婚式に出る必要はありません。男性の証人2人の前で、男性の保護者による代理出席を希望すれば、式に出なくてもいいのです。今回は、エジプトのイスラム教徒の結婚式について紹介します。
イスラム教の結婚式は、大半がモスク(イスラム礼拝所)で執り行われますが、自宅で式を挙げる人もいます。新婦はウエディングドレス、新郎はスーツを着用する人が多いと思います。
1月に首都カイロのモスクで行われた私のいとこの結婚式では、新郎新婦の入場後、モスク内に設けられた壇上に6人が並びました。新郎、新婦、新婦の父、マゾーン(イスラム教の結婚をつかさどる公証人)、そして新郎新婦の親族から1人ずつ選ばれた男性の証人です。
結婚の誓いでは、マゾーンが見守る中、2人がハンカチの下で手を重ね合わせます。新郎と新婦、と思われるかもしれませんが、新郎と手を合わせるのは実は新婦の父です。新婦の父は「この結婚に娘を差し出します。彼女は処女です」と誓い、新郎が「受け入れます」と応じます。もちろんウソはいけないので、新婦が再婚の際は「処女ではない」と言わなくてはいけません。
その後、マゾーンが短いスピーチをして、幸せを祈り、新郎新婦が誓約書に署名して結婚が成立しました。モスクの外に出ると、女性たちはザガリート(巻き舌で高音を奏でるお祝いの風習)で2人を祝福しました。ブーケを投げるのと似た風習として、女性の参列者が新婦のひざをつねって「次は私、来週には結婚するわ」と誓うのも恒例です。
冒頭で書いたように、新婦がいない結婚式もあります。私の母も代理人に出席を頼み、アパートの部屋で誓約書が届くのを待っていたそうです。また9年前に結婚したジャーナリストのアブドルファタハ・ラマダンさん(34)の場合は、男女別々の式だったそうです。結婚式は、相手の女性の自宅で行われ、新郎新婦も含めた男女は式の最中も別々の部屋にいたそうです。結婚の誓約書はラマダンさんが署名した後、隣の部屋に運ばれて、彼女が署名しました。
イスラム教に男女別々に挙式するという慣習はありません。エジプト社会は保守的な風土が残っており、こうした結婚の形を望む人もいるようです。
国や宗教に関係なく、結婚式は人生で特別な日の一つです。皆さんもエジプトにいらした際は、ぜひ結婚式をのぞいてみてください。エジプト人は人なつっこいので、きっと歓迎してくれると思いますよ。【イナス・タウフィーク(カイロ支局スタッフ)、訳・秋山信一】
エジプト向け円借款、2年ぶり再開へ ナイル川にせき
2014/5/10 1:00
日本経済新聞 電子版
政府は低い金利で長期のお金を貸し出す「円借款」をエジプト向けに2年ぶりに再開する方針を固めた。ナイル川の流れを管理・調節するせきをつくり、エジプトの農業が生産性をより高められるよう支援する。新しい大統領を選ぶ選挙が3日から始まり、同国の政情不安が解消される可能性が出てきたためだ。
ナイル川は全長6600キロメートルと世界最長級で、エジプトの主要な水資源。せきはエジプト中部の一大農業地域、ダイリュート市につくり、農業用の灌漑(かんがい)用水を効率的に配分する。
6月にも資金の提供を表明する。事業費は約62億円で、そのうち円借款は約58億円の見込み。金利や貸出期間などの条件は協議して決める。
今回の円借款は、その資金で日本企業が事業をする「ひも付き」。日本企業の独自工法で、土砂で川を汚さないようにする。完成後のせきは川の流量を的確に管理する最新鋭の設備も備える。
エジプト向け円借款は、2012年3月に首都カイロの地下鉄をつくる事業で貸したのが最後。11年のアラブの春や、以来続く不安定な政治情勢の影響で、政府は円借款を一時的に止めていた。
エジプト大統領選の集会で爆発、警官ら4人負傷
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵2014年5月18日23時51分
エジプトの首都カイロ東部で17日、大統領選に立候補しているシーシ前国防相の支持者の集会に爆弾が投げ込まれ、警察官ら2人と市民2人が負傷した。政府系アハラム紙が伝えた。シーシ氏は集会に参加していなかったという。
昨年7月にクーデターが起きたエジプトでは26、27両日に大統領選の投票が行われる。ほかに左派政治家のハムディン・サバヒ氏が立候補しているが、シーシ氏の当選が確実視されている。イスラム組織ムスリム同胞団は、クーデターで失脚したムルシ前大統領の復職を求めるデモを続けており、選挙をボイコットする方針だ。(カイロ=山尾有紀恵)
揺れ動くエジプト:/上 「元帥」見えぬ選挙戦
毎日新聞 2014年05月18日 東京朝刊
エジプトで26、27両日に大統領選挙が行われる。国民的人気を誇り、当選が確実視されるのが、昨年7月の軍事クーデターを主導したシシ前国防相(59)だ。2011年の革命後に広がった民主化やイスラム主義の機運は軍の台頭でしぼみ、強権支配の復活も見え隠れする。選挙戦を通じて、揺れ動くエジプト社会を見つめた。
5月10日夕、カイロ国際スタジアム脇の広場で、シシ陣営が初めて選挙集会を開いた。「シシ、おおシシ。あなたこそ、私たちの大統領」。壇上で女性歌手がポップ調の賛歌を歌い、約3000人の支持者らがポスターを掲げて応えた。歴代大統領のナセル、サダト両氏とシシ氏の写真を並べた横断幕もあり、当選の前祝いのような雰囲気だった。モルシ前政権に抗議する大規模デモを受け、軍の政治介入に踏み切ったシシ氏は今も多くの国民から英雄視されている。
だがシシ氏は最後まで姿を見せなかった。公務員のハビハ・カマルさん(35)は「治安の問題があるから仕方ない」と残念そうに話す。出入り口には金属探知機が二重に設けられ、スーツ姿の警備員が目を光らせていた。
シシ氏は選挙運動開始日の2日以降、テレビ出演以外で公の場に姿を現していない。密室で外交団や有識者と会っているが、内容は明かされない。対立候補の左派政治家、サバヒ氏(59)が積極的に地方を遊説するのとは対照的だ。
シシ陣営が警戒するのはクーデターで追放されたモルシ前大統領支持者によるテロだ。シシ氏は5日放映のインタビューで、過去に二つの暗殺計画があったと明かした。詳細は不明だが、軍や警察を狙ったテロは首都カイロでも頻発しており、この1年で300人以上が殺害された。
選挙運動でシシ氏の顔が見えないのと同様、政策でも不透明な部分が多い。補助金の削減や公共事業の拡充などに言及するが、詳細は不明だ。財源についても「在外エジプト人に寄付を求める」などと根拠に乏しい説明をする。陣営幹部は地元メディアに「詳細を示せば議論が巻き起こる。今は議論している時間がない」と述べ、意図的に政策を伏せているとするが、国民不在の強権的なにおいもする。
それでもシシ氏優位は動かない。候補者が表に出ない異例の選挙戦も「シシ氏は特別」との意識から容認されている。5月上旬に行われた複数の世論調査では、支持率は軒並み5割を超え、サバヒ氏の倍以上だ。
今年1月には軍の最高位である元帥に昇進し、権威付けを図った。国防相退任時には姻戚関係にあるヘガジ氏をナンバー2の参謀長に昇格させ、軍内部の足場も固めた。
「今日が軍服を着る最後の日になる」。3月の出馬表明でシシ氏はそう宣言したが、スーツ姿に変わった今も「元帥」と呼ばれる。1973年の第4次中東戦争の緒戦で宿敵イスラエルを破り、シナイ半島奪還の契機を作った軍の人気は健在だ。その威光をシシ氏は最大限活用している。【カイロ秋山信一】
エジプト、モルシ派163人に禁錮刑
nikkei.com
2014/5/19 9:58
【カイロ=共同】エジプトの裁判所は18日、昨年8月に北部カフルエルシェイクで暴動を起こしたとして、昨年7月の軍事クーデターで追放されたモルシ前大統領の出身母体イスラム組織ムスリム同胞団の支持者ら126人に禁錮10年の実刑判決を言い渡した。
また、別の裁判所は同日、昨年12月に首都カイロ近郊ギザの地下鉄の駅を襲撃したとして、同胞団の支持者ら37人に禁錮15年を言い渡した。地元紙アルアハラム(電子版)などが報じた。
判決によると、カフルエルシェイクでは、被告らは暴力を呼び掛け、武器を所持、公共施設を破壊したとされる。
暫定政権は昨年8月、クーデターに抗議するためカイロで座り込みを続けていたモルシ派を強制排除。これを受けて、治安部隊とモルシ派の衝突が各地で相次ぎ、カフルエルシェイクでも暴動が起きた。
揺れ動くエジプト:/中 同胞団を徹底弾圧
毎日新聞 2014年05月19日 東京朝刊
「エジプトのムスリム同胞団は終わった。もはや居場所はない」。モルシ前大統領の出身母体の同胞団について、次期大統領就任が確実視されるシシ前国防相(59)は今月5日放映のテレビインタビューでこう断言した。昨年7月の軍事クーデター以降、軍主導の暫定政権が弾圧を続けた同胞団に「最後通告」を突きつけた。
軍と同胞団の因縁は、1950年代にさかのぼる。軍将校のナセル氏(後に大統領)は、同胞団と協力して王制を打倒したが、権力争いから弾圧に転じた。軍出身の歴代政権下で同胞団は抑圧され続けた。しかし、イスラム礼拝所(モスク)を拠点に慈善活動で社会に根を張って生き延びてきた。
だが、2011年の革命で力関係が変化する。同胞団は民主的選挙を通じて政権を握りモルシ氏が大統領に就いた。軍人事に介入し、さらに東部シナイ半島での過激派掃討作戦をやめさせ、対話による解決を提唱して軍の怒りを買った。軍幹部は「過激派との対話など不可能。治安を守るべき政府自体が、安全保障への脅威となっていった」と振り返る。
軍と同胞団−−。両者の緊張が昨年6月、頂点に達した。大規模な反政権デモの予定日を1週間後に控え、国防相だったシシ氏は軍の政治介入をちらつかせて、野党勢力との和解を要求。野党側は勢いづき、同胞団事務所への襲撃が相次いだ。3日後、国防省を同胞団ナンバー2のシャーテル氏が訪れた。
「これ以上、緊張が高まれば、過激派の動きは抑えられない」。シャーテル氏は軍が介入して衝突が激化すれば、イスラム過激派が同胞団に加勢すると示唆し、脅しをかけた。独演は45分間続いた。
「もうおしまいですか」。ひと呼吸置いたシシ氏は反撃に出た。「国を破滅させているのは誰か。軍に銃を向ければ、今後50年は生きられないようにするぞ」。シャーテル氏は沈黙し、会談は不調に終わった。1週間後、軍のクーデターでモルシ氏は解任された。
軍や治安当局は、シナイ半島での過激派掃討を強め、シャーテル氏ら同胞団幹部を軒並み逮捕した。昨年12月には同胞団を「テロ組織」に指定。治安部隊は平和的なデモであっても実弾を使用して抑圧する。シシ氏の脅迫は現実となった。
ただ同胞団は100万人規模の組織があるとされ、歴代軍事政権の弾圧をくぐり抜けて85年間以上も存続してきた。貧困層向けの病院や学校経営など慈善活動には国民の支持も根強い。軍と同胞団の和解を提唱するカイロ大学のハッサン・ナファ教授(政治学)は「軍も同胞団も、エジプトに欠かせない組織だ。対立が続けば、国が弱体化するだけだ」と警告する。【カイロ秋山信一】
[FT]エジプト、公約なき大統領選 民主化遠のく
nikkei.com
2014/5/20 7:00
エジプトのアブデルファタフ・シシ前国防相は、昨年7月のクーデターの際、一方的で秘密主義的な政策によって自壊した、モルシ前大統領とその背後にいるイスラム主義組織「ムスリム同胞団」による支配からエジプトを救った人物として国民に高く評価されており、来週に実施される大統領選挙での当選が確実視されている。だが、称賛を浴びているにもかかわらず、救国の英雄とされるシシ氏が実際にはどんな人物で、どのような政治信条の持ち主なのかは、今のところ不明だ。
その理由は、エジプト軍の要職にあったシシ氏が、8500万人の国民に素顔を見せてこなかったからではない。そもそも同氏が公の場に登場して選挙活動すらしてこなかったからである。これまでに2度、暗殺されかけたことを明らかにしているシシ氏は、警備の厳重な軍所有のホテルの奥で、国内各地から訪れる陳情団と面会し、特定のメディアだけを選んでインタビューに応じている。
シシ氏は国民を叱咤(しった)激励し、あいまいな約束をくり返し、ときおり威嚇口調になることはあっても、国民が投票の判断の基準にできる、具体的な公約は打ち出していない。そのため国民は、雇用創出やインフラ整備への投資から、教育、厚生、医療にいたる、国内の喫緊の重要課題が解決される可能性があるか判断がつかないのだ。シシ氏の選挙活動は、見かけのみで中身が乏しい。
■支持政党を持たないシシ氏
シシ元帥(1月に与えられた軍最高位。軍から出馬承認を取り付けるための措置で現在は軍を辞職している)がどんな人物なのか、エジプトの国民はほとんど何も知らない。エジプトで「アラブの春」の民主化運動が始まった当初、シシ氏は軍革命評議会の目だたないメンバーだった。この軍革命評議会は、2011年2月のホスニ・ムバラク元大統領の退陣から、その後1年あまりを経てモルシ氏が大統領に選出されるまで、国内情勢を監視した。昨年夏、軍がモルシ氏を解任して、ムバラク氏失脚の引き金となったときよりもさらに大規模なデモが続発するようになってから、ある人物が徐々に頭角を現してきた。軍服も平服もきりりと着こなすシシ元帥が、当初は国民の怒りを鎮めたが、同氏が国民に見せる表情はその後、次第に変化していった。
ムスリム同胞団を容赦なく弾圧し、非合法化したシシ氏は、最近になって数多くの同胞団支持者に死刑宣告を言い渡し、さらに多くの反政府勢力の魔女狩りを断行した。またメディアもシシ氏崇拝をあおりたて、同氏をガマル・アブデル・ナセルやアンワル・サダトなど、かつての辣腕軍人政治家になぞらえている。こうしたできごとはいずれも、この元司令官が公の場での発言を求められる、数少ないタイミングに起きている。そして今、国民に語りかけ始めたシシ氏の口調は、有無を言わさぬ断定的なものになりがちだ。
いま、大統領になる直前のシシ氏の支配は、ムバラク時代よりもさらに軍隊の力が強化された国防国家の復活を実現しつつある。支持政党を持たないシシ氏は、軍隊と、かつての後ろ盾であったムバラク氏の人脈を頼りに大統領当選を果たそうとしている。同氏は具体的な政策を掲げることを慎重に避け、依然として自分が万民の味方であることをアピールしようとしている。
■イスラム主義への懸念を利用
エジプトの同盟国、とりわけ去年の騒乱後に年間13億ドルの軍事支援の一部を凍結した米国に対して、シシ氏は自分が対テロ戦争に取り組んでいると主張し、自分を支持してくれなければ、(エジプト東部の)シナイ半島のような無法地帯はイスラムの聖戦主義者たちの牙城と化し、中東地域と世界にとっての脅威になるだろうと語っている。さらに同氏はムスリム同胞団の撲滅をめざすと主張し、そんなことをすればイスラム過激派を助長するのではないかという見方を一蹴している。
こうしたシシ氏の主張には戦術的なあざとさがある。米国とその同盟国が、シリアからシナイ半島に至る地域における国境を越えたイスラム聖戦主義の再燃を懸念し、狂信者を野放しにする独裁体制に終止符を打とうと懸命になっていることは疑いようがないからだ。
今月、地元のテレビ局や、20人のエジプト人ジャーナリスト、ロイター通信の取材に個別に応じたインタビューのなかで、シシ氏は明確なメッセージを発している。エジプトが立ち直れば、民主主義はエジプトにとって不可欠なものではなくなり、軍が経済のけん引役になる、というのだ。さらに同氏は、これまで自分に対する批判にはかなり寛容にしてきたが、今後はそうはいかないことも匂わせている。
シシ氏がこれからどのような政府を築き、どのような政策を実行しようとしているかはまだ分からない。新体制のもとで、軍は全力をあげて国の立て直しのけん引役としてのイメージを打ち出そうとするに違いない。だが、軍だけが実際に国を立て直す制度だとすると、エジプトがどのように再生できるかは見通しがつかない。「戦略上の目標は国家としてのエジプトを保持することだ」と、この元陸軍元帥は語っている。エジプトのジャーナリストたちに向かって、シシ氏は彼らの要求が非現実的であると述べ、「(民主化に)こだわっているかぎり、エジプトという国は確立できない」と付け加えた。
エジプト国民と国際社会は、警告を突きつけられている。
By David Gardner
(2014年5月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
エジプト大統領選、前国防相の当選確実
2014/5/20 23:54
日本経済新聞 電子版
【カイロ=押野真也】エジプトの大統領選挙まで残り1週間を切った。2人の立候補者のうちシシ前国防相(59)が圧倒的に優位な情勢で、当選は確実視されている。2011年以降の相次ぐ政変で経済の低迷が続き、国民は「安定」を重視。昨年のクーデターを主導した同氏に国家再建を託そうとしている。ただ、経済再生は容易でなく、低迷が長引けば再び混乱に陥る可能性もある。
26、27日の両日が投票日で、6月5日までに公式な開票結果が発表される。選挙戦はシシ氏と左派系政治家サバヒ氏(59)との一騎打ち。
複数の世論調査ではシシ氏への支持は圧倒的。同氏は昨年7月のクーデターを主導。イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」出身のモルシ大統領(当時)を解任した。モルシ政権への不満を強めた国民の多くはクーデターを支持、シシ氏を「強い指導者」と見なす。
軍は同胞団を「テロ組織」に指定し、徹底弾圧を続けている。独立系の調査機関が次期大統領の優先政策について有権者に尋ねたところ(複数回答)、最も多かった項目は「治安の改善」で60%。これに「就職」(40%)、「生活水準の向上」(25%)が続いた。汚職撲滅、法の支配などの「正義」は16%だった。
一部の若者組織はシシ氏が大統領に就けば再び強権国家になりかねないとして反発。だが国民の支持を集めていない。
もう一つの課題は経済再生。11年にムバラク政権が崩壊した後、治安悪化で国内総生産(GDP)の1割を占める観光業が衰退。13年の観光収入は59億ドル(約6000億円)と12年比で40%減少。直接投資は回復傾向だが、ムバラク政権崩壊前の水準に届いていない。
(エジプトの行方 大統領選を前に:1)シーシ氏、随所に軍人色 当選確実視
asahi.com
2014年5月20日05時00分
カイロ郊外の高級住宅街にあるシーシ前エジプト国防相(59)の選挙本部。検問が設けられ、銃を持った警備員がにらみをきかせる。選挙責任者のマフムード・カレム氏は、すでに軍人を退役したシーシ氏を「元帥」と呼んだ。「元帥は毎朝5時に起きる。毎日、様々な専門家や各界の代表者と会っている」
26、27両日の投票が迫ったエジプト大統領選挙。カイロの道路には、当選が確実視されるシーシ氏のポスターがずらりと並ぶ。
だが、2011年にムバラク政権を倒した革命の舞台となったタハリール広場では、ビルの上にシーシ氏の巨大な看板が立っているが、ポスターはない。逆にカイロ西部の貧困地帯ブラクダクルールには「貧困撲滅」を掲げる対立候補の左派政治家サバヒ氏(59)のポスターが目立つ。ここではクーデターでシーシ氏に排除されたムルシ前大統領の復職を求めるデモも続く。
サバヒ氏が連日地方遊説を続けるのに対し、シーシ氏が一般大衆を前に演説することはない。選挙綱領すら発表しない。だが、エジプトはすでに「シーシ新大統領」に向け動き出している。
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シーシ氏は5、6両日に放映されたテレビインタビューで「国の再建」に向けた構想を語った。言葉の随所に軍人的な発想がのぞく。
電力不足への対応を問われ、「不要時には電気を消し、冷房も一部屋だけにして必要ない時は消す」。貧困対策でも「国内2500万世帯が1個のパンを節約すれば、2500万個のパンができる」と節約を強調した。司会者が「できるのか」とさらに問うと、「私を妨害する者には法を適用する」と強気だった。
国民に忍耐と義務の履行を求める。命令に従って機能的に働く軍の利点を挙げ、「国全体が軍のようであればいい」とも述べた。
シーシ氏は、8カ所の新空港建設や23カ所の鉱山開発など大胆な構想を明らかにした。費用は1兆エジプトポンド(約14兆円)。財源として「850万人のエジプト人が海外にいる。国の再建のために1人月10ドルでも100ドルでも出資すべきだ」と分担を求めた。
ただ、開発の主導権を握るのは、出身母体の軍だ。軍は軍需産業だけでなく食品や衣料など民生品も製造し、生産力は名目GDPで3割を占めるとされる。シーシ氏は18日のテレビで「軍が開発プロジェクトを監督し、民間業者を指導していく」と語った。
シーシ氏は、軍の力を使って国を立て直そうとしているのだ。
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若者たちのデモでムバラク政権を倒したエジプト革命。その後も続いた混乱で、外貨をもたらす観光客は3分の2に減った。シーシ氏は「デモを行うのは無責任だ」と秩序の回復を求め、昨秋制定された「デモ規制法」を正当化した。
そのシーシ氏を支持するのは企業家や経済人ら富裕階層。彼らが期待するのは「革命の終結」だ。
シーシ氏の選挙運動に資金を出す開発会社社長のムハンマド・フセイン氏(32)は「彼にはビジネス感覚がある。彼が国防相になってから、軍のプロジェクトに民間業者を入れるようになった」と語る。
シーシ氏は大統領になっても「軍政」は否定する。ただ、退役少将で政治評論家のアーディル・スライマン氏(70)は「シーシ氏の立候補は軍の決定であり、軍が政府を仕切ることを意味する」と指摘する。「軍は民主主義とは無縁。上から政策の実施を求めるだけでは、市民社会からの反発が起こりかねない」(カイロ=川上泰徳、山尾有紀恵)
■ロシアとの接近、米懸念
報道や集会の自由、法の支配−−。米国務省のサキ報道官は8日、シーシ前国防相が大統領になる可能性が高いと記者会見で問われ、新政権に求める条件を次々とあげた。
米国の事実上の同盟国イスラエルと平和条約を結ぶエジプトは、米国の中東政策を左右する「重要な戦略的パートナー」(ケリー米国務長官)。ただ現時点では、昨年7月のクーデターを主導したシーシ氏の大統領就任を手放しで喜べない。
オバマ政権は、クーデター後の混乱で多数の市民に犠牲者が出たことを非難。昨年10月には年13億ドル(約1320億円)の軍事支援の一部を凍結、F16戦闘機や戦車などの引き渡しも停止した。
しかしその間、ロシアがエジプトに急接近。2月にはプーチン大統領がシーシ氏と会談し、支持を表明した。ロシア軍関係者が頻繁にカイロを訪問していると報じたイスラエル紙は、エジプトにはロシアの戦闘機ミグ35を購入する計画があると伝えた。
懸念を強めるオバマ政権は4月下旬、ヘーゲル国防長官がエジプトのソブヒ国防相に、凍結していたアパッチ攻撃ヘリ10機を引き渡すと述べるなど関係修復に乗り出している。(ワシントン=奥寺淳)
揺れ動くエジプト:/下 ムバラク派、復権も
毎日新聞 2014年05月20日 東京朝刊
2011年の革命で倒れたエジプトのムバラク独裁政権。デモ隊殺害に関与した罪に問われたムバラク元大統領(86)や側近の公判は今も続いている。だが昨年7月の軍事クーデター以降、訴追を免れた政権幹部の復権が進みつつある。
昨年12月16日、首都カイロにある国際会議場で、当時国防相だったシシ氏(59)に大統領選立候補を促す集会が開かれた。主催者名は「シシ氏を支持する国民運動」。だが全国から動員された約3000人の面前で、壇上に立った顔ぶれは革命前の実力者たちだった。
「強いエジプトを取り戻せるのはシシ氏だ」。ムバラク政権時代の与党・国民民主党(NDP)幹部、内務省幹部、イスラム指導者が次々とマイクを握りシシ氏を持ち上げた。
革命後、ムバラク政権を支えたエリート層は冷遇されてきた。長年敵対してきたイスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ氏が大統領に選ばれると、役得が大きい政府幹部や県知事は同胞団出身者に入れ替えられた。クーデターが起きると、今度は同胞団出身者が一掃され、ムバラク政権時代の省庁幹部や軍出身者らが要職に起用された。
集会の出席者には、富裕層の姿も目立った。ムバラク政権は言論を統制するなど独裁的だったが、規制緩和による投資促進策などを打ち出し、政権後期には年5%超の経済成長を実現、企業経営者や投資家らは「勝ち組」となった。だが失業対策や教育振興を怠ったことが若者の反発を招き、政権は崩壊。革命後に治安の混乱が続いたことで、観光業など経済が低迷し、富裕層も打撃を受けた。
エリート層や富裕層は、治安の安定や経済の回復をシシ氏に期待している。その裏には革命で失った「利権」を取り戻そうとする意図も見え隠れする。
ただ、大統領の親族や側近による汚職がはびこったムバラク政権に対する庶民の嫌悪感は、革命から3年以上がたった今も根強く、シシ氏も「旧体制に戻ることはない」と断言している。一方で、軍主導の暫定政権で2月に首相に就いたのは、NDP元幹部のメハレブ氏だった。行政や経済の立て直しには、経験豊富なムバラク時代の人材が欠かせない。
昨年6月の反モルシ政権デモを主導した若者組織「タマルド(反乱)」のリーダー格、アブドルアジズさん(28)は、デモ直後にクーデターに踏み切ったシシ氏を「尊敬している」としつつも、旧政権への回帰傾向に警戒感を示す。「革命の精神を選ぶのか、旧政権の残党を選ぶのか。それがシシ氏の試金石になる」【カイロ秋山信一】
ムバラク元大統領に禁固3年判決…公金横領罪
The Yomiuri Shimbun
2014年05月21日 20時32分
【カイロ=久保健一】エジプト・カイロの裁判所は21日、大統領在職時の公金横領罪に問われていたホスニ・ムバラク元大統領(86)に禁錮3年の判決を言い渡した。
元大統領に関し、現在進行中の3件の裁判のうちの一つで、大統領府の予算を、個人の別荘建設などに流用した罪などに問われた。
元大統領は、「アラブの春」と呼ばれた2011年1月の民衆デモの参加者殺害を命じた罪にも問われ、終身刑判決を受けた。だが、昨年1月に審理やり直しが決まり、その後、保釈されていた。
元大統領は11年2月に大統領を辞任した後、たびたび体調を崩して治療を受けており、ただちに収監されるかは不明だ。
今回の判決は、今月末の大統領選を前に、有力候補のシシ前国防相を事実上支持する暫定政府が、旧体制との決別を示す狙いもあると指摘されている。
2014年05月21日 20時32分
ナイル.com:(21)善意の木箱
毎日新聞
2014年05月21日
エジプトの若者たちが、貧しい人たちに食事を提供するユニークな取り組みを始めた。レストランやイスラム礼拝所モスク、コプト教会(キリスト教の一派)などの軒先に、食べ物を入れる善意の木箱を設置。支援したい人が「清潔な食べ物」を箱に入れ、必要な人が好きなだけ持って行くという仕組みだ。
「革命後は混乱続きで、職探しも難しく、生活に困っている人が増えている。政府任せにせず、自分たちでできることをしたかった」。「FHE(Fighting Hunger is Easy=飢餓に立ち向かうのは小難しいことではないという意味)」と名付けられた運動のカイロ地区担当者、リハム・サイードさん(25)はそう語る。
FHEは北部アレクサンドリアに住む男性が昨年12月に始めた。ゴミ捨て場から残飯をあさる人を見てショックを受けたのがきっかけだった。フェイスブックでFHEを知ったリハムさんは、アレクサンドリアの男性と連絡を取り、5月中旬からカイロで善意の木箱の設置を始めた。
カイロのショブラ地区に住む観光省職員、メンナ・マワドさん(25)も「私たち若い世代が、国を支えていかなくてはいけない」との気持ちから、運動に賛同した。5月中旬、自宅があるアパートの1階の住民の協力を得て、外壁に善意の木箱を設置した。
リハムさんによると、これまでにアレクサンドリアを中心に128個の木箱が設置された。サンドイッチや果物、お菓子を入れる人が多いという。衛生面について尋ねると、「設置する人が箱を清潔に保つ責任を負う。ただ食べ物は提供されてから約45分以内には誰かが持って行くので、暑い時期でも心配はしていない」という。メンナさんも仕事中は家族や近所の人に箱の管理を依頼している。
エジプトなどアラブ世界では、古くから「サビール」と呼ばれる共同井戸や公共給水所が存在した。現代では慈善家が街のあちこちに冷水器や給水器(これもサビールと呼ばれる)を設置。水道代や電気代は慈善家が負担し、道行く人が好きな時に好きなだけ飲めるようになっている。FHEの活動にも、こうした共助の精神が宿っているように感じる。
宗教の影響も大きい。エジプト人は時間などにずぼらな面があるが、こと宗教になるとまじめな人が多い。国民の9割を占めるイスラム教徒にはザカート(貧困者を助けるための寄付)が義務づけられているし、残り1割のコプト教徒にもザカートに似た寄付の慣習がある。ちなみにメンナさんはイスラム教徒で、協力してくれた1階の住民はコプト教徒だった。
ムバラク元大統領に禁錮3年、公金横領で エジプト
cnn.co.jp
2014.05.22 Thu posted at 14:27 JST
(CNN) エジプト首都カイロの裁判所は21日、2011年の反政府デモで辞任したムバラク元大統領に対し、公金横領の罪で禁錮3年の判決を言い渡した。
ムバラク被告の息子2人も同罪でそれぞれ禁錮4年の判決を受けた。
ムバラク被告ら3人は大統領宮殿の改築工事のための資金1800万ドル(約18億円)を着服したという。
被告らは無罪を主張していた。上訴するかは不明。
(エジプトの行方 大統領選を前に:2)司法、旧体制回帰強める
asahi.com
2014年5月22日05時00分
エジプト中部メニアの地方裁判所が3月と4月、衝撃的な判決を相次いで下した。昨年8月に警察官を殺したなどとし、イスラム組織「ムスリム同胞団」の最高指導者バディウ団長ら計1211人に死刑を言い渡したのだ。
9人の被告を担当したガマル・アブドゥルハミド弁護士によると、3月22日にあった1件目の初公判には120人が出廷したが、裁判長は被告の身元確認を51人で中断。弁護士に意見を述べる機会を与えず、2日後、出廷しなかった被告も含めた528人に死刑を言い渡した。
2件目は弁護士らが公判をボイコットする中で進み、4月28日の判決で683人を死刑とした。
「不穏当な司法判断が下った」。翌日、エジプトのファハミ外相との会談を終えたケリー米国務長官は懸念を表明した。
裁判官は軍高官や官僚とともに、ムバラク政権を支えた「特権階級」だ。ムバラク政権は市民を令状なしで拘束し、軍法会議で裁ける「非常事態令」で反体制派を弾圧。最高憲法裁判所はこうした動きを黙認してきた。司法省は2006年、司法改革を志す裁判官を懲戒しようとするなど、裁判官人事には政権の意向が反映した。
しかし、11年にムバラク政権は崩壊。12年の大統領選で当選した同胞団出身のムルシ氏は、すべての大統領令を司法判断の対象から除外し、司法の権限縮小を画策。さらに裁判官定員の25%をシンパの弁護士から登用することで司法の掌握を進めようとした。
これに対し、ムバラク時代に任命された顔ぶれのままの最高憲法裁は、同胞団系「自由公正党」が多数を占める人民議会(下院)の解散を命じるなど、同胞団への権力集中を危惧する軍と歩調を合わせた。
カイロの地裁は21日、ムバラク氏に対し、在職中の公金横領罪で懲役3年の判決を宣告した。しかし、反政権デモ参加者への発砲に関与したとされる殺人罪については、いったん終身刑を言い渡した後に最高裁が裁判の「やり直し」を決定。結論は先延ばしされたままだ。
ムルシ政権は昨年7月のクーデターで崩壊した。「ムルシ政権下で、司法は瀕死(ひんし)の状態に追い詰められた。クーデターこそ真の革命だ」。職能団体「裁判官クラブ」副会長のアブドラ・ファタヒ最高裁判事は語る。大統領選で軍出身のシーシ氏が当選すれば、司法は再び政権の「追認機関」となる恐れがある。(メニア=山西厚)
エジプト新体制、中東注視 UAEなど・イスラエル・トルコ
asahi.com
2014年5月22日05時00分
3年前の「アラブの春」から混乱が続くエジプトで、26、27両日に予定される大統領選。軍出身のシーシ前国防相(59)の当選が確実視される情勢に、中東各国はそれぞれの損得勘定を働かせる。経済や安全保障など、地域の関係に変化が出てきそうだ。
■巨額支援、同胞団を警戒 UAEなど
「この歴史的な事業がエジプト経済の大きな推進役になる」。今年3月、アラブ首長国連邦(UAE)の建設大手「アラブテック」のイスマイク最高経営責任者が向かい合ったのは、大統領選への出馬表明を控えたシーシ氏だった。
エジプト軍は今後5年間、総事業費400億ドル(約4・1兆円)をかけて国内17カ所に若者や低所得者向けの住宅100万戸をつくる大胆な公共事業を発表。随意契約で受注したのがアラブテックだ。
「これはUAEからエジプトへの支援です」。イスマイク氏は地元紙の取材でこう語り、完成した住宅を建設費より3〜4割安く販売する考えを示した。そこまでしてエジプトに寄り添って見せた裏には、大株主である首都アブダビ政府の強い意向がある。
サウジアラビアやUAEなど湾岸産油国は、ムスリム同胞団系のエジプト・ムルシ政権を転覆させた昨年7月のクーデター後、軍主導の暫定政権をなりふりかまわず支援した。サウジ、UAE、クウェートによる経済支援は、計120億ドル(約1・23兆円)に及ぶ。
背景にあるのは、湾岸各国が抱く同胞団への警戒心だ。同胞団は医療や教育、慈善活動を通じて国境を越えた市民のネットワークを持ち、エジプトでは「アラブの春」の民主化運動と選挙を経て政権についた。その影響が湾岸でも強まれば、王制・首長制で権力を一手に集める自らの安定が脅かされかねない。
一方で、急速な経済成長を背景に影響力の拡大をめざすカタールは、自国の衛星テレビ局アルジャジーラを通じてムバラク政権批判を繰り返し、まだ不安定だったムルシ政権には資金援助を続けた。
クーデター後もアルジャジーラは同胞団を擁護し続けており、サウジとUAE、バーレーンの3カ国は3月、駐カタール大使を召還してカタールに圧力をかけた。エジプトをめぐる利害の違いが、かつて一枚岩だった産油国に亀裂を生んでもいる。(ドバイ=渡辺淳基)
■安全保障・外交で協力期待 イスラエル
「ガザとシナイ半島はテロの巣窟になっている。エジプトと安全保障・外交の両面で協力を続けることは私たちの国益だ」。イスラエルのペレス大統領は3月の演説で、テロとの戦いにはエジプトとの協力が不可欠との考えを強調した。
エジプトはイスラエルにとって安全保障の要の一つだ。1979年に平和条約を締結してから、米国の巨額の軍事支援を背景に両国の安定した関係が続いた。
だが、2011年のエジプト革命でバランスが崩れた。親米のムバラク元大統領は、エジプト産天然ガスを相場より安価でイスラエルに売却した罪で起訴された。ムスリム同胞団政権下では、閣僚級以上の公式会談も開催されなかった。
それだけに、シーシ氏の登場に、イスラエルは期待を向ける。11年まで駐エジプト大使を務めたイツハク・レバノン氏は「彼は平和条約の重要性を深く理解している。イスラエルにとって、都合のいい大統領になる」と話す。(カイロ=山尾有紀恵)
■クーデター批判、関係決裂 トルコ
「エジプトで起きた軍事クーデターの裏にはイスラエルがいる」。トルコのエルドアン首相は、昨夏のエジプトでのクーデターを激しく批判した。
国会でのスカーフ着用などイスラム色を強めるエルドアン氏。イスラム教を中心に国造りを進めようとしたムルシ政権を「同志」と見て、トルコは官民一体で20億ドルの経済支援を実施しただけに、クーデターは許し難いものだったのだ。
自国の歴史もクーデターに対して過敏にさせる。トルコは1923年の建国以降、政権がイスラム色を強めるたびに軍に倒された。エルドアン氏が3期にわたる長期政権を築けたのは、軍を弱体化できたからだ。
度重なるトルコの批判に対し、エジプト暫定政権は昨年11月、駐エジプト・トルコ大使の国外退去を発表。トルコもエジプト大使を退去させたことで、関係は決裂した。トルコの輸出業界団体によれば、2014年度第1四半期の対エジプト輸出も、対前年比で20%近く落ち込んだ。
ただし、経済重視のエルドアン政権にとって、アフリカへのビジネスの中継拠点になっているエジプトとの関係は崩しにくいのが本音だ。「米国や湾岸諸国の動きを見ながら、近いうちにエジプトとの関係改善に取り組むはず」とイスタンブール文化大学のハサン・コニ教授は予測する。(イスタンブール=金井和之)
(エジプトの行方 大統領選を前に:3)さまよえる、革命の主役
asahi.com
2014年5月23日05時00分
ムバラク政権を倒したエジプト革命の「聖地」、カイロ中心部のタハリール広場。3年前の主役だったデモを行う若者たちの姿が消えて半年ほどが経つ。いま、大統領選で当選が確実視されるシーシ前国防相の巨大横断幕や看板が、広場を見下ろすように掲げられている。
「投票には行かない。自分の一票が重要だと思えないから」。会社員のアフマド・オスマンさん(24)はあきらめ顔で話した。3年前、ムバラク大統領の退陣を求め、広場から出発したデモ行進に参加。大統領府の前でムバラク氏の辞任表明を聞いた。
その後、ムスリム同胞団出身のムルシ氏が大統領に選ばれたが、シーシ氏が主導した昨年7月のクーデターで放逐された。翌月、治安部隊はムルシ支持派のデモ隊を強制排除。多くの死者が出た。「間違いを犯した同胞団を追い出したのは賛成だが、排除のやり方は間違っていた。警察国家になるのではないかと心配だ」と話す。
革命を主導した「4月6日運動」など複数の青年組織は17日、シーシ氏に投票しないよう呼びかけるキャンペーンを行うと発表した。「シーシが何をしたかを示す写真を張ったり、集会を開いたり、カフェで人々を説得したりしている」。メンバーの一人、ムハンマド・フアドさん(33)は話す。だが、混乱に疲れ切った世論はついてこない。
軍主導の暫定政権は昨年11月、デモや集会を開く際は警察の事前許可を義務づけるデモ規制法を導入。反発した多くの若者が逮捕された。4月6日運動もリーダーのアフマド・マヘルさん(33)を含む数十人以上が逮捕・拘束され、今年4月末には活動を禁止する裁判所の決定が下った。カリスマ的なリーダーを持たない若者たちの運動は分裂し、漂流する。
一方で、シーシ氏を歓迎する人もいる。3年前の革命に加わったアマル・アブドラさん(19)は「エジプトの尊厳を世界に示す、強い大統領になる。国も安定する」。シーシ氏の選挙事務所でボランティアをするムハンマド・アワドさん(27)は、「今は国を立て直す時。過去について語るのは無意味だ」と話した。
デモだけに没頭できない現実もある。エジプト中央統計局によると、人口約8500万人のうち30歳以下の人口は7割近く。失業率は13%に及び、その多くは若者が占める。コネがなければ就職できない状況も、革命前と何ら変わっていない。
(カイロ=山尾有紀恵)
(エジプトの行方 大統領選を前に:4)同胞団、逆風の中のデモ
asahi.com
2014年5月24日05時00分
「軍政打倒!」。午後10時半、首都カイロを貫くナイル川西岸でいきなり怒声が響く。200人ほどが通りに躍り出た。昨年7月のクーデターで排除されたムルシ前大統領の復職を求める、イスラム組織「ムスリム同胞団」の反軍政デモ。クーデターを主導し、大統領選での当選が確実視されるシーシ前国防相の横断幕に火を放ち、気勢を上げる。
同胞団は毎週金曜日の礼拝後、各県で1千人規模のデモを続ける。さらに毎夜、小規模なデモをゲリラ的に繰り返す。デモの調整役を担う弁護士(44)は、「警察との衝突を避けるため毎日場所を変え、見張りも置く」と打ち明けた。
同胞団は全国に貧困救済の草の根ネットワークを持つ。2011年のエジプト革命後の人民議会(下院)選挙では、同胞団系・自由公正党が1千万票を集め第1党に。12年の大統領選もムルシ氏が制し権力を握った。
しかし、イスラム色の強い憲法を起草したうえ、ガソリン不足や頻発する停電を改善させることができなかった。失政を問う国民の「反ムルシ」デモに乗じる形で軍が介入した。
クーデターで成立した暫定政権は、同胞団のバディウ団長ら指導部の大半を逮捕した。昨年末には同胞団を「テロ組織」に指定。逮捕者は延べ2万人を超えるという。シーシ氏はテレビのインタビューで「私が大統領になれば、同胞団は終わりだ」と言い切った。
シーシ氏を支持する軍高官や高級官僚、財界人ら旧ムバラク体制下で特権を享受してきた富裕層は、貧困層に支えられる同胞団を「政敵」とみなし、テロキャンペーンを後押しする。政権側と同胞団の政治的和解の話は繰り返し出てくるが、力で抑え込もうとする政権側と、ムルシ氏復権にこだわる同胞団の隔たりは埋まらない。弾圧とデモの連鎖が続く。
同胞団は貧困家庭に生活費などを贈る慈善運動を通じて民衆への支持を広げてきたが、活動の性格も変わった。最近はデモで死傷したり、逮捕されたりしたメンバーの家族の支援に重点が移っているという。
カイロ西部の貧困地域で慈善組織の運営に携わる大学職員(42)は「シーシが大統領になっても貧困や腐敗はなくならない。いずれ民衆は私たちと共に立ち上がる」と話すが、逆風の中で将来を見通せない。
(おわり)
(カイロ=川上泰徳)
エジプト:シシ前国防相、圧勝確実…26日から大統領選
毎日新聞 2014年05月24日 19時18分
【カイロ秋山信一】エジプトの大統領選が26、27両日に行われる。昨年7月の軍事クーデターを主導したシシ前国防相(59)と、前回大統領選で3位だった左派政治家のサバヒ氏(59)の一騎打ちの構図。先行して行われた在外投票や世論調査の結果から、シシ氏の圧勝が確実視されており、得票数をどこまで伸ばせるかが焦点となっている。
選挙戦最終日の23日、カイロで開かれたシシ陣営の選挙集会には約500人が集まり、「シシ、あなたを愛している」「テロと戦えるのはあなただけだ」と熱狂的なシュプレヒコールを上げた。周辺ではテロを警戒し、私服姿の警備要員が目を光らせた。公務員のサラ・サレームさん(32)は「サバヒ氏も悪くないが、治安や経済が悪い状況で、必要なのは軍出身の強い指導者だ」と話した。
シシ氏は、大規模な反モルシ政権デモを受けたクーデターで、イスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ前大統領を追放し、国民的人気を得た。当初は大統領選への出馬に否定的だったが、「国民と軍の要望に応えるため」として立候補した。
モルシ氏に同情的なイスラム過激派のテロを警戒し、街頭で活動しない異例の選挙戦を展開。23日も「(有権者の約75%に当たる)4000万人以上に投票してほしい」とビデオメッセージを出しただけだった。詳細な公約も発表せず、政策にも不透明さが漂う。
それでも15〜19日に実施された在外投票では約94・5%を得票し、サバヒ氏を圧倒。5月に行われた複数の世論調査でも50〜80%の支持を得ている。サバヒ氏は貧困者支援や再生可能エネルギーの導入などを掲げているが、シシ氏が主導したクーデターを支持した経緯もあり、モルシ派など反シシ票の受け皿になりきれていない。
同胞団などモルシ派は選挙のボイコットを表明。23日は各地でモルシ派のデモがあり、治安部隊との衝突で少なくとも3人が死亡した。軍は18万人を展開して、警察とともに投票所などを警備する。
ファラオの巨像2体を復元 エジプト・ルクソール
cnn.co.jp
2014.03.25 Tue posted at 18:46 JST
(CNN) エジプト中部の古都ルクソールで古代エジプト王朝のファラオ(王)、アメンホテプ3世の立像2体が新たに復元され、このほど一般公開された。
立像は2体とも珪岩(けいがん)でできていて、一方の高さが11メートル、重さ250トンにも及ぶ大きさ。ルクソールにあるアメンホテプ3世の葬祭殿跡から破片の状態で発掘され、専門家のチームが復元に取り組んでいた。
葬祭殿跡の入り口には、同じ珪岩製で高さ16メートルにも及ぶアメンホテプ3世の座像2体も残っている。葬祭殿は紀元前1390〜1353年に建てられ、豪華な装飾が施されていたといわれるが、地震で構造が破壊され、発掘後は洪水やナイル川に建設されたアスワンハイダムの影響による塩害による影響を受けた。
エジプトでは2011年にムバラク政権が崩壊してから政情不安が続き、観光業界が深刻な打撃を受けている。
エジプト大統領選、投票開始
nikkei.com
2014/5/26 19:03
【カイロ=押野真也】エジプト大統領選の投票が26日に始まった。投票日は26、27日の両日で、28日にも大勢が判明する見通し。選挙戦は2013年7月のクーデターを主導したシシ前国防相(59)と左派政治家、サバヒ氏(59)の一騎打ち。事前に実施した在外有権者による投票では、シシ氏の得票率は95%に達しており、シシ氏が圧勝するとの見方が大勢だ。
スフィンクス、中国に出現? 映画用、エジプトが反発
nikkei.com
2014/5/26 21:29
【北京=共同】26日付の中国紙、新京報によると、中国河北省にエジプトの有名な遺跡、スフィンクスを模した実物大の建造物が出現し、エジプト当局が反発している。建設した中国企業は「映画の撮影用」と説明し、撮影後に取り壊すことを明らかにした。
「スフィンクス」は河北省石家荘市の映画撮影村に建設され、中国のインターネット上で話題になった。エジプト当局は「エジプトには何の連絡もない。実物とは違う点もあり、遺跡への理解を損ない、観光業への影響もある」と強調。中国側による経緯の説明が必要だとして国連教育科学文化機関(ユネスコ)に訴えたという。
映画撮影村の責任者は「撮影が終わったらすぐに取り壊す。悪意はなかったし、金もうけ目的でもなかった」と釈明した。
エジプト大統領選、投票始まる 死者の報告も
cnn.co.jp
2014.05.27 Tue posted at 14:55 JST
(CNN) エジプト大統領選は26、27日の2日間にわたって投票が行われている。初日の投票は比較的平穏に進んだものの、有力候補の陣営関係者1人が何者かに射殺された。
メフレブ暫定首相は「国民の希望に沿って」27日を休日にすると発表した。投票率を上げるのが目的とみられる。
大統領選では昨年7月の軍事クーデターで排除されたムルシ前大統領の後任が選ばれる。クーデターを主導したシーシ前国防相と、左派のサバヒ氏が立候補している。
内務省の報道官によると、カイロ西郊の村では26日、シーシ氏の選挙戦にかかわっている男性(35)がタクシーから降りようとしたところを何者かに頭部を撃たれ死亡した。
男性はムルシ政権打倒につながるデモを組織した市民団体「反乱」のメンバーだった。同団体は、ムルシ氏の支持母体だったイスラム組織「ムスリム同胞団」と対立関係にある。内務当局高官はこの事件について、大統領選とは無関係との見方を示した。
ムスリム同胞団は選挙に反発し、シーシ氏を「(軍事独裁体制を敷いた)ムバラク元大統領の再来」と批判している。
内務省報道官によれば、カイロ近郊ギザの学校に設けられた投票所では26日、爆弾が見つかって処理された。
国営中東通信(MENA)は、ムスリム同胞団のメンバー7人が選挙妨害の疑いで逮捕されたり、シーシ氏の事務所に火炎瓶が投げつけられたりしたと伝えている。一方、サバヒ陣営も同日、各地で支持者への投票妨害や警察、軍の介入がみられたと発表した。
エジプト大統領選「シーシ一色」 熱気なくボイコットも
asahi.com
カイロ=山西厚、渡辺淳基2014年5月27日23時17分
エジプト大統領選挙の投票は26日に始まり、27日も朝から投票が続いた。昨夏の軍クーデターを主導したシーシ前国防相と左派政治家サバヒ氏の一騎打ちだが、すでに実質的な権力者のシーシ氏の当選が確実と見られ、選挙の熱気はない。若者には選挙ボイコットの動きも広がっている。
シーシ氏が生まれ育ったカイロ下町のガマレヤ地区はあちこちにシーシ氏の横断幕が出ている。観光客向けの宝飾店で働くムハンマド・アフマドさん(24)は「治安問題を解決し、公正な国にするという革命の目的のためにも、シーシのような強い男を選ばなくてはいけない」と語った。
各地の投票所で話を聞くと、ほとんどが「シーシ支持」だ。カイロ西部の貧しい地域のインババでは女性のサファ・ザグルールさん(50)はシーシ氏に経済の活性化を期待する。「24歳の次男は1年半前に兵役を終えたが、就職できないままだ」と訴えた。
同じ投票所で文部省勤務のイブラヒーム・ハサンさん(52)は「我々は2011年にムバラクを倒す革命を成し遂げた。しかし、混乱はたくさんだ。革命は終わりだ」と言い切った。
シーシ氏にとってはクーデターのイメージを取り除く選挙だが、問題は投票率だ。富裕層やコプト教が多い地区の投票所では初日には有権者列ができた。一方でムルシ前大統領の出身組織のムスリム同胞団の影響力が強い地区の投票者はまばらで、政治の分裂が選挙に影を落としている。
さらに初日に列ができた投票所でもお年寄りの姿が目立ち、11年の民衆革命で中心的役割を果たした若者たちの姿はまばらだ。若者組織「4月6日運動」も今回、「またムバラク時代に逆戻りしてしまう」と選挙ボイコットを呼びかけた。
初日に列ができていたギザ地区の住宅地では2日目は閑散とし、投票率の伸び悩みを示す。警備に当たる警官の1人は「朝からほとんど誰もこない。こんなに関心の低い選挙は初めてだ」と苦笑した。(カイロ=山西厚、渡辺淳基)
エジプト大統領選:投票2日目を急きょ「休日」
毎日新聞 2014年05月27日 21時49分
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙は27日、2日目の投票が行われた。軍主導の暫定政権は投票を促すため、急きょ27日を官公庁の閉庁日とし、民間企業にも休業するよう呼びかけた。軍出身のシシ前国防相(59)の当選が確実視されるが、反シシ派の多くが投票をボイコットしており、投票率や得票数がシシ氏への信任度を測る鍵になる。ただ、27日の有権者の出足は鈍く、投票率アップにつながるかは不透明だ。
選管は当初「投票日を休日にすれば、午前中は寝て、午後も自宅でくつろぐ人が多い。投票率を上げるために休日にはしない」と説明し、投票初日の26日も平日だった。ところが投票率が思うように伸びなかったとみられ、方針を転換した。
事前に行われた在外投票や世論調査では、シシ氏が対抗馬の左派政治家、サバヒ氏(59)を圧倒している。だがシシ氏による軍事クーデターで追放されたモルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団や、2011年の革命前と同じ「軍人大統領」による統治に反発する若者グループは、投票をボイコットしている。
シシ氏は選挙戦中、「(有権者の約75%に当たる)4000万人以上に投票してほしい」と発言。「シシ政権」の正統性を国内外にアピールするため、得票数を伸ばしたい考えを示していた。投票は27日夜(日本時間28日未明)に締め切られ、即日開票によって28日にも大勢が判明する見通しだ。
クローズアップ2014:エジプト大統領選開始 シシ氏、見えぬ経済政策
毎日新聞 2014年05月27日 東京朝刊
エジプトで26日、2日間にわたる大統領選挙の投票が始まった。昨年7月の軍事クーデターで当時のモルシ大統領を追放したシシ前国防相とジャーナリストのサバヒ氏の一騎打ちで、シシ氏の圧勝が確実だ。治安や経済の立て直しへの期待が大きいが、2011年の民主化要求運動「アラブの春」まで続いた軍出身の大統領が再び誕生する可能性が高く、強権支配復活を警戒する声も強い。外交面では米国との関係改善を図り、周辺国との関係も大きく転換しそうだ。【カイロ秋山信一】
26日朝、投票所が設けられた首都カイロ中心部の学校前には、約200人が列を作った。周辺の道路は封鎖され、身元確認が行われた。校門付近や校舎3階には土のうが積まれ、銃を持った軍兵士が警戒に当たる。各地で投票が始まったが、混乱は伝えられていない。シシ氏に投票した高校教師のワリード・アブドルマセルさん(38)は「混乱期には強い指導者が必要だ。まず治安、そして経済を改善してほしい」と話した。
「課題は多いが、2年間真剣に取り組めば、国民が望む発展を遂げられる」。シシ氏は選挙期間中、地元メディアを通じて、国民に「2年の猶予」を求めてきた。モルシ前政権は経済を立て直せず、発足後1年で大規模な反政権デモを招いた。圧倒的支持を誇るシシ氏も経済再生に手間取れば立場が危うくなるため、予防線を張ったとみられる。
過去数年の混乱の根底には、若者の失業や物価高など経済状況への不満がある。2011年にムバラク独裁政権を崩壊させた「アラブの春」も、民主化と並び経済の改善を求めたものだった。
しかし、その後の経済はさらに悪化した。イスラム組織ムスリム同胞団中心のモルシ政権下では、強権的支配に反対する世俗リベラル派のデモが頻発。クーデターで国防相のシシ氏が実権を握ると、今度は同胞団のデモが活発化した。
相次ぐデモで治安は悪化し、主要産業の観光や海外からの投資は低迷。13年第4四半期の失業率は13・4%と過去5年で最悪となり、食品の物価も「アラブの春」後に4割上昇した。カイロの英語教師、メルバト・ムスタファさん(63)は「革命前は給料で家族を養えたが、今は物価が上がり、生活必需品を賄うのにも苦労する」と話す。
混乱を回避するため、シシ氏は雇用対策と最低賃金の見直しを優先課題に挙げる。ただ詳細な公約は「反対意見が出た場合、議論に応じる準備ができていない」(選対幹部)との理由で公表が見送られ、政策には不透明な部分が多い。
◇強権支配復活の恐れ
シシ氏がクーデター後に主導した暫定政権では、「アラブの春」で崩壊した同じ軍出身のムバラク元大統領による独裁時代を思い出させるような非民主的な手法が目立っている。
「もはや同胞団の居場所はない」。シシ氏は選挙戦中、こう断言した。同胞団はムバラク政権時代、政治活動を禁じられていた。「アラブの春」で政治の表舞台に登場したが、暫定政権下で再び弾圧を受けている。昨年12月には「テロ組織」に指定された。英BBCによると、クーデター以降、同胞団幹部ら1万6000人以上が逮捕されている。
その反発から、同胞団に同情的なイスラム過激派による軍・警察へのテロが増え、300人以上が殺害された。今月17日にはシシ派の選挙集会に爆弾が投げ込まれ、4人が負傷した。シシ氏本人は安全を懸念し、公の場での選挙活動を控えており、候補者が露出しない異例の選挙戦を展開した。
言論統制への懸念も強い。ムバラク政権がデモを規制したように暫定政権も昨年11月、無許可デモを禁ずる法律を施行した。
「革命を続け、軍政を倒せ」。カイロ中心部で4月、デモ規制に反対する約200人規模の集会があった。しかし、デモ行進の計画は、近くに軍や治安部隊の装甲車約20台が展開したため、断念した。同胞団だけでなく、「アラブの春」を主導した若者グループのデモも摘発される。大学生のアフマド・アブゼイドさん(21)は「革命時に要求した言論の自由がまだ実現していない」と怒りをあらわにした。
シシ氏は政権運営を円滑に進めるため、ムバラク政権の基盤だった保守・エリート層を登用するとの見方が有力だ。ムバラク政権の汚職体質は今も毛嫌いされており、シシ氏は「旧体制には戻ることはない」と説明する。だが地元シンクタンク・アハラム政治戦略研究所のヨスリ・エズバウィ氏は「新政権には経験豊富な人材が必要だ。汚職の悪評があるような人物を除き、ムバラク政権を支えた官僚や学者も起用される」と分析する。
◇関係改善へ米に秋波
「テロと戦うためには米国の支援が必要だ」。シシ氏は14日、ロイター通信とのインタビューで、東部シナイ半島でのイスラム過激派掃討作戦を念頭に、年13億ドル(約1300億円)に上る米国の軍事支援の全面再開に期待感を表した。
エジプトは1979年に長年敵対した隣国イスラエルと平和条約を締結。見返りとして、親イスラエルの米国から巨額の軍事支援を受けてきた。だが、選挙を経て発足したモルシ政権が昨年7月、シシ氏の軍事クーデターで倒れると、米国は「アラブの春」以降の民主化を支援してきた立場から、軍事支援を一部凍結。エジプトはロシアと兵器購入契約を結ぶなど米国へのけん制を強めた。
ただエジプトと米国はお互いに、本音では関係悪化を望んでいない。物流の要衝であるスエズ運河を抱え、イスラエルやパレスチナ自治区ガザと隣接するエジプトとの同盟は、米国の中東戦略の柱の一つだ。過激派対策でもエジプトとの協力は重要だ。米国は4月、戦闘用ヘリの供与再開を決定し、関係改善に歩みを進めた。
エジプトも軍事予算の約4分の1を占める米国の軍事支援を重視している。ファハミ外相も4月の訪米時に「米国との関係は結婚のようなものだ」とまで述べた。
周辺国との関係は、モルシ前政権から大きく方針転換しそうだ。サウジアラビアは前政権の主体だったムスリム同胞団を「反王制組織」と警戒しており、同胞団を抑圧するシシ氏の立場を支持している。また前政権はシリア反体制派を積極的に支援していたが、シシ氏は「対話による解決が重要だ」と述べ、中立的な立場に軌道修正している。一方、前政権と親密だったカタールやトルコ、ガザを実効支配するイスラム過激派組織ハマスなどとは緊張関係が続いている。
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◇「アラブの春」以降のエジプトの動静
2011年2月 「アラブの春」でムバラク政権崩壊
12年6月 モルシ氏が大統領選挙で当選
13年7月 軍事クーデターでモルシ氏失脚
14年1月 国民投票で新憲法承認
14年5月 大統領選挙
14年夏 人民議会(国会)選挙
質問なるほドリ:軍出身のシシ氏、なぜ人気なの?=回答・秋山信一
毎日新聞 2014年05月27日 東京朝刊
◇モルシ前大統領倒し英雄に
なるほドリ エジプトで大統領選挙(だいとうりょうせんきょ)が始まったんだってね。2011年の「アラブの春」で軍出身(ぐんしゅっしん)の大統領を失脚させたのに、また軍出身者が大統領になりそうなんだって?
記者 軍出身のシシ氏(59)と、ジャーナリストのサバヒ氏(59)が立候補しています。2人とも「経済(けいざい)や治安(ちあん)を改善する」と国民に訴えていますが、当選(とうせん)が確実視されているのはシシ氏です。
Q シシ氏はなぜ人気があるの?
A シシ氏が有名になったのは昨年7月です。当時、就任(しゅうにん)から1年を迎えたモルシ大統領に反対する人たちが、大規模なデモを行っていました。経済や治安が良くならず、不満がたまっていたのです。モルシ氏が、出身組織であるムスリム同胞団(どうほうだん)以外の意見に、あまり耳を貸さなかったことも一因でした。軍トップの国防相(こくぼうしょう)だったシシ氏は軍事クーデターを起こし、モルシ氏を失脚させたので、反モルシ派の英雄(えいゆう)になったのです。
Q でも、モルシ氏の出身組織の同胞団や支持者は怒ったんじゃないの?
A 今も怒りは収まっておらず、同胞団の若者たちが大学などで毎週デモを行っています。同胞団は、シシ氏が実権を握る現在の政府から「テロ組織」と決めつけられています。
Q じゃあ、同胞団はサバヒ氏に投票するのかな。
A 同胞団はサバヒ氏を反モルシ派だとして支持していません。モルシ派は「モルシ氏が今も大統領だ」と主張し、選挙をボイコットしています。
Q 「アラブの春」があったのに、国が良くなったように思えないね。
A 独裁政治(どくさいせいじ)が終わり、国民は自由に政治の話ができるようになりました。でも選挙で当選した政治家(せいじか)は権力争(けんりょくあらそ)いばかりして、協力して国を良くする方向に進みませんでした。仕事(しごと)や収入(しゅうにゅう)が増えるという国民の期待は裏切(うらぎ)られました。多くの国民が今の状況を「混乱(こんらん)」と表現します。シシ氏は軍や警察の力で反対派を抑え、安定を取り戻そうとしています。シシ氏への期待は大きいのですが、「アラブの春」以前に逆戻(ぎゃくもど)りしているようにも感じます。(カイロ支局)
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エジプト大統領選、投票を1日延長 両候補は反発
cnn.co.jp
2014.05.28 Wed posted at 11:14 JST
(CNN) エジプト選管は27日、26日から同日にかけて行われた大統領選の投票を、28日まで延長すると発表した。投票率を上げるのが目的とみられるが、2人の候補者はいずれもこの決定を非難している。
国営中東通信(MENA)は、選管が登録地から離れた場所に住んでいる有権者に帰省の時間を与えるため、投票の1日延長を決めたと伝えた。
現時点で投票率についての発表はないが、国内メディアの報道によれば低調が懸念されている。CNN取材班が訪れたり通過したりしたカイロ近郊の投票所にも、順番待ちの列はなかった。
大統領選では昨年7月の軍事クーデターで排除されたムルシ前大統領の後任が選ばれる。クーデターを主導したシーシ前国防相と、左派のサバヒ氏の一騎打ちとなっている。
サバヒ陣営の幹部は選管の決定に対し、「妥当な理由もなく投票期間を延長することは不正投票につながる」と強く抗議。選管が聞き入れなければ、サバヒ氏は選挙戦からの撤退を検討すると警告した。
シーシ陣営も決定を非難しているが、両候補の声が果たして影響力を持つのかどうかは明らかでない。
メフレブ暫定首相は26日深夜、27日を国民の休日にすると宣言していた。これも投票率の向上を図る措置だったとみられる。
エジプト大統領選、投票期間を延長 投票率アップに躍起
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵2014年5月28日11時36分
大統領選の投票が行われているエジプトの中央選挙管理委員会は27日、同日に終了する予定だった投票を1日延長し、28日午後9時までとすることを発表した。国営中東通信などが伝えた。「できる限り多くの人に投票の機会を与えるため」としている。
大統領選は昨年7月のクーデターを主導したシーシ前国防相の当選が確実視されている。半ば結果が決まった選挙に国民の関心は低く、カイロ市内の多くの投票所は人影がまばらだ。当局は国民の総意を強調するため、高投票率を狙う。政府系メディアなどで大々的に投票を呼びかけるキャンペーンを行い、27日を急きょ国民の休日にするなど投票率アップに躍起になっているが、功を奏していない模様だ。
クーデターで排除されたムルシ前大統領の出身母体のイスラム組織ムスリム同胞団は選挙のボイコットを呼びかけているが、27日までに大きな混乱は起きていない。(カイロ=山尾有紀恵)
中国に偽スフィンクス…怒るエジプト、ユネスコに提訴か
asahi.com
北京=倉重奈苗2014年5月28日18時18分
中国・河北省でエジプトの古代遺跡スフィンクスの模造品の建造が進み、エジプトが「文化遺産の侮辱だ」とユネスコへの提訴を決めたと報じられ、中国国内で話題を呼んでいる。思わぬ騒ぎに中国側は「テレビの撮影用ですぐ撤去する」と釈明。外交問題化を避けようと懸命だ。
国営新華社通信(電子版)などによると、「偽スフィンクス」は中国の娯楽投資会社が、河北省石家荘市の郊外で2013年2月から2年計画で建造を進めている。今年5月に同通信などのメディアが写真を公開。インターネット上では突如出現した「スフィンクス」に関心が集まり、記念写真を撮った観光客たちの投稿が相次いだ。
エジプト当局は、世界遺産の保護などを定めた「世界遺産条約6条に違反している」と指摘、ユネスコに提訴する方針を決めたという。エジプト暫定政権の関係者は中国メディアの取材に「雑な造りで本物には及ばないが、遺産への損害にあたるとユネスコ側に申し入れた」と説明した。
エジプト側の抗議に対し、中国政府は「テレビドラマの撮影用で、撮影が終われば撤去する」と話しているという。
一方、人民日報のサイト・人民網は28日、石家荘市に建造中の美術学校がハリウッド映画「ハリーポッター」に登場する魔法の学校にそっくりで関心を呼んでいると伝えた。(北京=倉重奈苗)
エジプト大統領選、投票日を1日延長
nikkei.com
2014/5/28 1:27
エジプト大統領選挙の選挙管理当局は27日、投票日を1日延長し、28日までとすることを決めた。エジプトのメディアが伝えたもので、投票率が伸び悩んでいることが背景にありそうだ。大勢が判明するのは29日になる見通し。当初予定では26、27両日が投票日だった。(カイロ支局)
エジプト大統領選、投票率てこ入れに躍起
nikkei.com
2014/5/28 23:19
26日に始まったエジプト大統領選の投票率が伸び悩み、暫定政権が危機感をあらわにしている。シシ前国防相の勝利が確実視されているものの、投票率が低迷すれば正統性に疑問が生じかねないためだ。政権は急きょ投票日を1日延長することや投票しない有権者に罰金を科すなど、異例の措置を講じている。
当初計画の投票日は26、27の両日。選挙管理当局は27日夕(日本時間同日深夜)に投票日を1日延ばし28日までにすると発表した。これに先立つ26日夜、暫定政権は27日を政府機関の公休日と決めた。いずれも有権者に投票を促す措置だ。
現地メディアによると投票2日目の27日の半ばで投票率は30〜40%にとどまるとみられる。
シシ前国防相は2013年7月のクーデターを主導。追放されたモルシ前大統領が当選した12年6月の前回大統領選の投票率は52%だった。暫定政権はこれを目安にしているもようだ。前回の投票率を下回れば、幅広い国民の審判を受けていないとして、新大統領の正統性が揺らぎかねない。クーデターに強く反発するイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」は投票のボイコットを呼びかけている。投票率が伸び悩めば同胞団を勢いづかせかねないという危機感も政権側は抱いている。
実際に投票率が伸びない主な理由は、シシ氏の圧勝が予想され、政治に関心が薄い若者層などが投票所に足を運んでいないことのようだ。同胞団は27日、インターネットのサイトで自らのボイコット戦略が成功しているとの声明を発表。シシ氏の当選が確定した場合、対決姿勢を強めそうだ。(カイロ=押野真也)
エジプト:大統領選 異例の投票1日延長 低投票率危惧か
毎日新聞 2014年05月28日 10時48分(最終更新 05月28日 11時08分)
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙委員会は27日、2日間の予定だった投票を1日延長し、28日も実施すると発表した。シシ前国防相(59)の当選が確実視されているが、投票率が低調に終われば、シシ氏への信任度に疑問符が付きかねない。投票延長という異例の措置をとった背景には、シシ氏の得票数を伸ばしたい軍主導の暫定政権の配慮があるとみられる。
投票は26日に始まったが、初日の投票が低調だったことを踏まえ、暫定政権は急きょ27日を休日にした。さらに「選挙法の規定により、正当な理由がなく棄権した場合、500エジプトポンド(約7000円)の罰金を科す」として投票を促したが、有権者の出足は鈍かった。選挙委は「投票延長はしない」と再三説明していたが、最終的に延長に踏み切った。
政府系紙アルアハラム(電子版)によると、シシ氏と左派政治家のサバヒ氏の両陣営は選挙委に不服を申し立てたが、選挙委は「多くの国民の要望だ」として却下した。ただ実際にはシシ陣営の意をくんだとの見方が強い。暫定政権や選挙委の幹部は「中立」を標ぼうしているが、シシ氏の息がかかったメンバーが大半を占めている。
シシ氏は選挙戦中、「少なくとも(有権者の約75%にあたる)4000万人に投票してほしい」と述べていた。昨年7月の軍事クーデターでイスラム組織ムスリム同胞団のモルシ前大統領を追放した直後、「政治には関わらない」と宣言しながら、今年3月に「国民の要望に応えるためだ」と一転して出馬に踏み切った経緯がある。今回の選挙で投票率や得票数を伸ばせなければ、自身の翻意を正当化できないという事情がある。
モルシ氏とムバラク政権時代の首相経験者が競り合った2012年の前回選挙(決選投票)でも投票率は約52%にとどまった。今回はシシ氏の圧勝が確実視されており、選挙戦への関心は高くない。政治学者のサイード・サデク氏は「前回は、同胞団と国民民主党(ムバラク政権時代の与党)の残党という2大集票マシンが、有権者に金銭や食料品を配って投票を促進した。だが同胞団は弾圧され、国民民主党も組織が崩壊した。シシ氏やサバヒ氏には手駒になる政治組織がなく、投票率が低くなるのは仕方がない」と分析している。
エジプト大統領選:投票率低調で1日延長
毎日新聞 2014年05月28日 19時22分
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙は28日、3日目の投票が行われた。当初は2日間の予定だったが、投票率が低調だったため、選挙委員会が1日延長を決めた。ただ28日も有権者の出足は鈍い。当選が確実視されるシシ前国防相(59)は、圧倒的支持を国内外にアピールしたい思惑があったが、投票率が伸びなければ、信任度に疑問が残る結果になりそうだ。
28日朝、カイロ中心部の投票所では、選挙委職員や警察官が菓子や紅茶を手に世間話を楽しんでいた。初日にあった有権者の列はなく30分間で投票したのは1人だった。
選挙委によると、27日までの投票率は約37%で、モルシ前大統領が当選した2012年の前回選挙の第1回投票(約46%)や決選投票(約52%)を下回った。昨年7月の軍事クーデターでモルシ氏を追放したシシ氏は、前回を上回る約75%を目標に掲げていた。
シシ陣営は27日、「有権者に負担をかける」と投票延長に抗議した。だが、シシ氏は「国民の要望に応える」として出馬に踏み切った経緯があり、得票数を伸ばしたいのが本音だ。選挙委はシシ氏に協力的なベテラン判事で構成されており、シシ陣営に配慮したとの見方が強い。一方、対立候補のサバヒ氏(59)の陣営は「選挙の正当性を損なう行為だ」と反発している。
有権者からは冷めた声も聞かれる。会社員のアフマド・ムスタファさん(35)は「支持したい候補者がいない。白紙投票しようとも思ったが、不正に書き加えられそうなので投票しない」と話した。
エジプト大統領選:投票1日延長 シシ陣営への配慮か
毎日新聞 2014年05月28日 東京夕刊
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙委員会は27日、2日間の予定だった投票を1日延長し、28日も実施すると発表した。シシ前国防相(59)の当選が確実視されているが、投票率が低調に終われば、シシ氏への信任度に疑問符が付きかねない。投票延長という異例の措置をとった背景には、シシ氏の得票数を伸ばしたい軍主導の暫定政権の配慮があるとみられる。
投票は26日に始まったが、初日の投票が低調だったことを踏まえ、暫定政権は急きょ27日を休日にした。さらに「選挙法の規定により、正当な理由がなく棄権した場合、500エジプトポンド(約7000円)の罰金を科す」として投票を促したが、有権者の出足は鈍かった。選挙委は「投票延長はしない」と再三説明していたが、最終的に延長に踏み切った。
政府系紙アルアハラム(電子版)によると、シシ氏と左派政治家のサバヒ氏の両陣営は選挙委に不服を申し立てたが、選挙委は「多くの国民の要望だ」として却下した。ただ実際にはシシ陣営の意をくんだとの見方が強い。暫定政権や選挙委の幹部は「中立」を標ぼうしているが、シシ氏の息がかかったメンバーが大半を占めている。
シシ氏は選挙戦中、「少なくとも(有権者の約75%にあたる)4000万人に投票してほしい」と述べていた。昨年7月の軍事クーデターでイスラム組織ムスリム同胞団のモルシ前大統領を追放した直後、「政治には関わらない」と宣言しながら、今年3月に「国民の要望に応えるためだ」と一転して出馬に踏み切った経緯がある。今回の選挙で投票率や得票数を伸ばせなければ自身の翻意を正当化できないという事情がある。
モルシ氏とムバラク政権時代の首相経験者が競り合った2012年の前回選挙(決選投票)でも投票率は約52%にとどまった。今回はシシ氏の圧勝が確実視されており、選挙戦への関心は高くない。政治学者のサイード・サデク氏は「前回は、同胞団と国民民主党(ムバラク政権時代の与党)の残党という2大集票マシンが、有権者に金銭や食料品を配って投票を促進した。だが同胞団は弾圧され、国民民主党も組織が崩壊した。シシ氏やサバヒ氏には手駒になる政治組織がなく、投票率が低くなるのは仕方がない」と分析している。
エジプト大統領選:投票2日目、急きょ「休日」 投票率上がらず
毎日新聞 2014年05月28日 東京朝刊
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙は27日、2日目の投票が行われた。軍主導の暫定政権は投票を促すため、急きょ27日を官公庁の閉庁日とし、民間企業にも休業するよう呼びかけた。軍出身のシシ前国防相(59)の当選が確実視されるが、反シシ派の多くが投票をボイコットしており、投票率や得票数がシシ氏への信任度を測る鍵になる。ただ、27日の有権者の出足は鈍く、投票率アップにつながるかは不透明だ。
選管は当初「投票日を休日にすれば、午前中は寝て、午後も自宅でくつろぐ人が多い。投票率を上げるために休日にはしない」と説明し、投票初日の26日も平日だった。ところが投票率が思うように伸びなかったとみられ、方針を転換した。
シシ氏による軍事クーデターで追放されたモルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団や、2011年の革命前と同じ「軍人大統領」による統治に反発する若者グループは、投票をボイコットしている。
シシ氏は選挙戦中、「(有権者の約75%に当たる)4000万人以上に投票してほしい」と発言。「シシ政権」の正統性を国内外にアピールするため、得票数を伸ばしたい考えを示していた。
エジプト大統領選、シーシ前国防相圧勝へ 投票率は低調
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵2014年5月29日10時18分
エジプト大統領選の投票が28日夜に終了し、開票が始まった。政府系紙アハラム(電子版)は29日未明までの開票の結果、シーシ前国防相が94%以上の得票で圧勝の見通しだと報じた。だが、投票率は40%台で、シーシ氏が目指した「国民総意による選出」の形にはなりそうにない。
昨年7月のクーデターを主導したシーシ氏は、政権の中枢を担ってきた軍の全面的な後押しを受けた。経済界も、2011年のエジプト革命以来の混乱で低迷する経済の立て直しを期待し、シーシ氏の選挙運動に協力。投票した有権者の多くも、安定回復に期待を寄せたとみられる。
だが、結果が見えていた選挙に国民全般の関心は低く、投票率は44%前後と報じられている。投票率アップを目指してきた当局は、27日の投票終了直前に急きょ投票期間を1日延長。投票に行かない人に罰金を科すこともちらつかせ、政府系メディアを通じて投票を呼びかけたが、28日もカイロ市内の投票所を訪れる人はまばらだった。クーデターで排除されたムルシ前大統領が当選した前回大統領選の決選投票は、投票率は51・9%だった。
対立候補の左派政治家サバヒ氏は28日、いくつかの投票所で陣営の代表者が投票所への入場を拒否されるなどの妨害を受け、投票の不正も確認されたとして「選挙の方法が民主的ではない」と非難する声明を発表した。
公式結果は6月5日に発表される予定で、同月中に新政権が発足する見通し。ムルシ氏の出身母体のイスラム組織ムスリム同胞団や軍政に反対する若者組織は投票のボイコットを呼びかけていたが、大きな混乱は起きなかった。(カイロ=山尾有紀恵)
エジプト大統領、シシ氏の当選確実に…現地報道
The Yomiuri Shimbun
2014年05月29日 11時24分
【カイロ=溝田拓士】エジプト大統領選は28日夜(日本時間29日未明)に投票が締め切られ、即日開票が始まった。
有力紙アル・アハラム(電子版)などは、元軍トップのアブドルファタハ・シシ前国防相(59)が得票率約94%で、圧勝が確実との開票速報を伝えた。2013年7月の事実上のクーデターを主導したシシ氏に、国民は国内安定化や経済再建に対する期待を寄せた形だ。
大統領選には、左派系民主活動家のハムディン・サバヒ氏(59)も出馬したが、事実上のシシ氏の信任投票とみられていた。
11年の民主化運動「アラブの春」ではムバラク独裁政権が打倒されたものの、その後の政治的な混乱や治安悪化への不満が国内で高まり、シシ氏に対する支持が広がっていた。
2014年05月29日 11時24分
シーシ氏圧勝へ 投票率は40%台 エジプト大統領選
asahi.com
2014年5月29日16時30分
エジプト大統領選の投票が28日夜に終了し、開票が始まった。政府系紙アハラム(電子版)は29日未明までの開票の結果、シーシ前国防相が94%以上の得票で圧勝の見通しだと報じた。だが、投票率は40%台で、シーシ氏が目指した「国民総意による選出」の形にはなりそうにない。
昨年7月のクーデターを主導したシーシ氏は、政権の中枢を担ってきた軍の全面的な後押しを受けた。経済界も、2011年のエジプト革命以来の混乱で低迷する経済の立て直しを期待し、シーシ氏の選挙運動に協力。投票した有権者の多くも、安定回復に期待を寄せたとみられる。
だが、結果が見えていた選挙に国民全般の関心は低く、投票率は44%前後と報じられている。投票率アップを目指してきた当局は、27日の投票終了直前に急きょ投票期間を1日延長。投票に行かない人に罰金を科すこともちらつかせ、政府系メディアを通じて投票を呼びかけたが、28日もカイロ市内の投票所を訪れる人はまばらだった。クーデターで排除されたムルシ前大統領が当選した前回大統領選の決選投票は、投票率は51・9%だった。
対立候補の左派政治家サバヒ氏は28日、いくつかの投票所で陣営の代表者が投票所への入場を拒否されるなどの妨害を受けたとして「選挙の方法が民主的ではない」と非難する声明を発表した。
公式結果は6月5日に発表される予定で、同月中に新政権が発足する見通し。(カイロ=山尾有紀恵)
エジプト大統領選、シシ前国防相が当選確実に
nikkei.com
2014/5/29 10:13 (2014/5/29 13:48更新)
【カイロ=押野真也】エジプトで26〜28日に実施した大統領選挙は開票作業に入り、シシ前国防相が当選を確実にした。現地メディアが29日未明(日本時間同日午前)に報じた。クーデターを主導した軍出身者の大統領就任に反対論もあるが、多くの国民は同氏の指導力に期待を寄せた格好だ。
投票率は45%程度で、シシ氏は有効投票数の9割以上を得たもよう。シシ氏は6月中に大統領に就任する見通し。今後、議会選を実施して正式政府を発足させ、現在の暫定政権から政治権限を移譲する。シシ氏は治安の回復に全力を挙げるとみられる。
エジプトは相次ぐ政変で治安が悪化し、主力の観光業が打撃を受けた。海外からの直接投資も低迷し、経済再建は容易でない。経済低迷が長引けば国民の不満が高まりかねないほか、対立するイスラム勢力が新政権への批判を強め、再び国内が不安定になる可能性もある。
投票率はモルシ氏が大統領に選ばれた2012年6月の前回選挙の水準(52%)を下回ったもようだ。暫定政権は投票日を延長したほか、27日を急きょ政府機関の公休日とするなどの対策を講じたが、効果は限られた。
投票率が前回を下回ったことで、モルシ前大統領よりも幅広い国民の審判を受けていないとの批判が起きかねない。モルシ前大統領の支持母体、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」はシシ氏には大統領としての正統性がないとの批判を展開する可能性がある。
エジプトの議会は解散しており、現在は事実上軍が主導する暫定政権が行政権と立法権を持つ。憲法では、大統領選後90日以内に議会選を実施すると規定している。議会選を経て正式政府が発足した後、現在の暫定政権から立法権を議会に、行政権を正式政府に移譲する計画だ。
エジプト大統領選:延長 有権者の出足鈍く 投票率は低調
毎日新聞 2014年05月29日 東京朝刊
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙は28日、3日目の投票が行われた。当初は2日間の予定だったが、投票率が低調だったため、選挙委員会が1日延長を決めた。ただ28日も有権者の出足は鈍い。当選が確実視されるシシ前国防相(59)は、圧倒的支持を国内外にアピールしたい思惑があったが、投票率が伸びなければ、信任度に疑問が残る結果になりそうだ。
28日朝、カイロ中心部の投票所では、選挙委職員や警察官が菓子や紅茶を手に世間話を楽しんでいた。初日にあった有権者の列はなく30分間で投票したのは1人だった。選挙委によると、27日までの投票率は約37%で、モルシ前大統領が当選した2012年の前回選挙の第1回投票(約46%)や決選投票(約52%)を下回った。昨年7月の軍事クーデターでモルシ氏を追放したシシ氏は、前回を上回る約75%を目標に掲げていた。
有権者からは冷めた声も聞かれる。会社員のアフマド・ムスタファさん(35)は「支持したい候補者がいない。白紙投票しようとも思ったが、不正に書き加えられそうなので投票しない」と話した。
エジプト:大統領選 シシ前国防相が得票率96%超で当確
毎日新聞 2014年05月29日 11時51分(最終更新 05月29日 12時07分)
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙は28日夜(日本時間29日未明)、即日開票が始まり、政府系紙アルアハラム(電子版)によると、シシ前国防相(59)の当選が確実となった。2011年の民主化要求運動「アラブの春」まで約60年間続いた「軍人大統領」による統治が復活する。シシ氏の得票率は9割を超え、軍を率いた指導力への期待の大きさを裏付けた。ただ反シシ派が選挙をボイコットするなどしたため、投票率は低く強権支配復活への懸念が強いこともにじんだ。
アルアハラムによると、開票率約9割の時点で、シシ氏の得票率は96%を超え、全27県で対抗馬の左派政治家、サバヒ氏(59)を圧倒。得票数は2200万票を超え、12年の前回選挙の決選投票でモルシ前大統領(62)が獲得した約1323万票を大きく上回った。
投票率は当初予定の2日間を終えた時点で約37%だった。選挙委は急きょ投票を1日延長し、地元メディアによると、暫定投票率は約44%に達した。しかし、前回の第1回投票(約46%)や決選投票(約52%)を下回る見通しだ。
シシ氏の圧勝は選挙前から確実視され、事実上の信任投票の色合いが濃かった。シシ氏は選挙戦中「4000万人以上に投票してほしい」と語っていた。だがシシ氏が主導した昨年7月の軍事クーデターで失脚したモルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団や、11年の革命を主導し、軍出身者による強権支配復活を懸念する若者グループなど、反シシ派の多くが投票をボイコットし、シシ氏の思惑は外れた。
大統領の任期は4年。シシ氏は治安や経済の改善に意欲を見せ、幅広い政治勢力を結集した政府の樹立を目指す考えも示している。ただ政権公約は明らかにせず、政策の詳細は不明だ。「同胞団に居場所はない」と述べるなど反対勢力には抑圧を強めるとみられる。
シシ氏は軍情報局長などを経て、12年8月に当時のモルシ大統領から軍トップの国防相に任命された。昨年7月、大規模な反モルシ政権デモを受けて、クーデターを決行。当初は大統領選への出馬を否定していたが、「国民と軍の要望に応えるためだ」として立候補した。モルシ氏はデモ隊殺害を教唆した罪などで起訴され、公判を受けている。
エジプト:大統領選で「強い指導者」待望 多くの若者棄権
毎日新聞 2014年05月29日 12時10分
【カイロ秋山信一】エジプトの大統領選でシシ前国防相(59)の当選が確実となり、シシ氏に投票した有権者からは「強い指導者」の待望論が聞かれた。ただ、軍出身のムバラク大統領を倒した2011年の民主化要求運動「アラブの春」の主役だった若者の多くが棄権し、ムバラク時代のような強権支配復活への懸念も強まっている。
投票が行われた26〜28日、夏を迎えた首都カイロの最高気温は40度に迫った。投票所は「軍一色」に染められていた。反シシ派によるテロを警戒するため、小銃を持つ軍兵士が常駐し、上空を軍のヘリコプターが旋回した。近くの路上で軍を称賛するロック調の曲が大音量でかけられ、対抗馬のサバヒ氏(59)陣営が「選挙違反だ」と抗議する一幕もあった。シシ氏に投票した無職のラミ・ロジディさん(66)は「治安と経済を立て直してほしい」と語った。
ただシシ氏が「白紙委任」されたわけではない。「アラブの春」で倒れたムバラク独裁政権時代へ逆戻りするのを懸念する声もある。不用品回収業のムスタファ・サイードさん(37)は「ムバラク政権のように金持ちを優遇すれば、再び反政権デモが起きる」と警告した。
投票所では中高年の姿が目立ち、若者の多くが投票を棄権した。大学生の女性(20)は「シシ氏の勝利は確実で投票しても意味がない。革命前のように自由がなくならないか心配だ」と話した。
サバヒ氏に投票したカイロ大学3年の男性(21)は「シシ氏は『政治的野心はない』と言っていたのに立候補した。約束を破る人間を信用できない」と断じた。カイロ大では、シシ氏に追放されたモルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団系のデモ隊と治安部隊の衝突が頻発している。男性は「催涙ガスが校舎内に入ってくる中で講義を受ける。そんな状況で、将来への希望は持てない」と首を振った。
エジプト:大統領選は低投票率 同胞団は影響力維持
毎日新聞 2014年05月29日 22時41分(最終更新 05月30日 03時33分)
【カイロ秋山信一】エジプト大統領選挙は29日、暫定集計が終わり、シシ前国防相(59)の当選が確実になった。地元メディアによると、得票率は96%を超えたが、投票率は45〜47%にとどまる見込みだ。
モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団が投票をボイコットしたことが影響した。同胞団は同日、「多くの国民が棄権し、クーデター政権に恥をかかせた」との声明を発表。同胞団が一定の影響力を維持していることが浮き彫りになった形で今後、対立が続きそうだ。
「神に感謝します。エジプト国民は私の期待に応えてくれた」。地元メディアによると、シシ氏は開票速報を見ながら、陣営幹部にこう語った。国防相だったシシ氏は昨年7月、大規模な反モルシ政権デモを受けて、モルシ氏を追放し、国民的な人気を得た。2012年の前回選挙で約480万票を集めた左派政治家のサバヒ氏(59)も太刀打ちできず、約75万票しか得られなかった。
ただ、有権者の4割を超える2300万票以上を得た圧勝劇は、シナリオ通りだったとは言えない。シシ氏は「(有権者の約75%にあたる)4000万人以上に投票してほしい」と語っていたが、慈善活動を通じて貧困層に根を張る同胞団のボイコットで投票率は伸び悩んだ。モルシ氏が勝利した前回選挙の決選投票(約52%)に及ばない見通しだ。
「前回選挙で示した民意は、軍事クーデターでゴミのように捨てられた。シシを信任するだけの選挙には参加しない」。同胞団員の男性(20)は、そう吐き捨てるように言った。シシ氏が実権を握っていた暫定政権は同胞団幹部ら1万6000人以上を逮捕し、弾圧した。男性は貧困層に衣類や食品を提供する活動に携わってきたが、資金提供役だった実業家の団員の資産が暫定政権に没収され活動は停止に追い込まれたという。
エジプト大統領選、シーシ前国防相が圧勝 出口調査
cnn.co.jp
2014.05.30 Fri posted at 10:46 JST
(CNN) エジプト大統領選の投票が28日夜に終了し、開票が始まり、シーシ前国防相が圧勝する見通しとなった。
エジプト世論調査センターと地元テレビ局が行った出口調査によれば、シーシ前国防相の得票率が95.3%に達したのに対し、左派のサバヒ候補の得票率は4.7%にとどまった。
エジプトのニュースサイト「アフラム・オンライン」によると、最終的な開票結果は6月2日までに発表される。
投票は26日に始まったが国民の反応は鈍く、投票率を上げるために当局は27日までの予定だった投票を28日まで延長した。アフラム・オンラインによれば、最終的に2500万人が投票したという。
次期大統領の正統性を支えるには高い投票率が重要だというのがエジプトの政官界やメディアにおける共通した見方だ。2012年の大統領選挙の投票率は、第1回投票で46%、決選投票では51.8%だった。
取り残された「革命の主役」たち エジプト大統領選
asahi.com
カイロ=渡辺淳基2014年5月30日01時08分
シーシ前国防相の当選が確実となったエジプトで、取り残された民意がある。2011年にムバラク政権を崩壊させた若者たちの声だ。暫定政権が言論規制を強化するなか、政治や選挙への反発を形にできずにいる。
3年前の革命の中心地となったカイロのタハリール広場。29日朝、数十人の群衆が国旗を掲げてシーシ氏の当選確実を祝っていた。だが、周囲では人や車が先を急ぎ、一団に冷ややかな目を向ける人もいる。
看護学生のラマダン・アラファトさん(22)は、仲間とともにタハリール広場を訪れていた。革命の舞台だった広場の様子を見たくなったからだという。選挙ではシーシ氏、サバヒ氏の両方に「×」印をつけ、無効票を投じた。「結果がわかっている選挙。無意味だと思った」
ムバラク政権を倒した民衆革命に参加したのは、失業した父の様子をみて、政治が腐敗したままでは経済も良くならないと感じたからだ。しかし、状況は変わらない。「この国は今も不公平なまま。シーシ氏がそれを改善できるのかどうか」と話した。
昨年7月のクーデター後に成立した暫定政権は、ムルシ前政権を支えたムスリム同胞団の関係者だけでなく、軍政に批判的な若者グループのメンバーも次々に逮捕した。昨秋にはデモ活動を事実上禁じる「デモ規制法」を導入した。
「暫定政権は『治安の回復』という言葉を利用して、反対勢力を政治から排除した」。3年前の革命で中心的な役割を果たした若者グループ「4月6日運動」の幹部ムハンマド・カマルさん(36)は話す。今回は選挙のボイコットを呼びかけた。自由のない選挙の正当性を高める結果になると考えたからだ。
政治が腐敗し、コネがなければ豊かになれない。若者たちの現実への不満が3年前の革命につながった。カマルさんは「今回のような不公平な選挙がまかり通れば、国はまたムバラク時代に逆戻りしてしまう」と語った。(カイロ=渡辺淳基)
投票率の低迷は市民の不服従の結果だ エジプト大統領選
asahi.com
中東アフリカ総局長・川上泰徳2014年5月30日01時33分
〈解説〉エジプト大統領選挙でシーシ前国防相の当選が確実となったが、投票率は低迷し、社会の分裂ぶりが改めて明らかになった。軍をバックに富裕層と経済界に支えられたシーシ氏が強権的手法で経済の安定を打ち出しても、政治の安定は見込めない、という警告と考えなければならない。
今回の選挙は、昨年7月の軍事クーデターを率いて実質的な権力者となったシーシ氏にとって、みそぎの意味があった。しかし、国民の支持を集めきれず、逆に反発を受けた。特に、1)自由を求める若者たち2)社会的公正を求めるイスラム勢力−−という「アラブの春」で政治を動かしてきた二つの勢力が、投票をボイコットした。
若者勢力は昨年、イスラム色の強いムルシ政権の政権運営と経済政策の失敗に反発し、クーデターの要因となる大規模なデモを起こした。
イスラム勢力の中心はクーデターで排除されたムルシ前大統領の出身組織「ムスリム同胞団」だ。貧富の差の是正や腐敗との戦いを掲げ、ムバラク政権がデモで倒れた2011年の革命後の議会選挙で第1党になった。チュニジアやリビア、イエメンでも民衆革命後の主要な政治勢力として台頭した。
しかし、クーデターで成立したエジプト暫定政権は、若者勢力の動きを「デモ規制法」で抑えにかかった。さらに、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など湾岸諸国の財政支援を得て、同胞団を徹底的に弾圧した。若者たちや同胞団のデモが自国に波及し、王制・首長制が倒れることを恐れる湾岸諸国は、「アラブの春」を終わらせ、民主化の進展を阻止しようとしている。
シーシ氏は選挙期間中に受けたテレビのインタビューでサウジの支援に特別の感謝を示し、当選したら最初の訪問国がサウジになると明言した。それだけサウジがエジプトにかかわっていることを示す。
しかし、人口9千万の半分以上を占める若者たちと、人口の4割を占める貧困層とつながる同胞団を排除して、どのような政治が可能だろうか。
エジプト暫定政権は投票が始まってから、棄権すれば罰金を科すと脅しをかけた。今回の選挙の低調さは、人々の関心の低さではなく、市民の不服従の結果ではないのか。
シーシ氏は湾岸諸国の財政支援を背景とした「開発と安定」を掲げて支持を呼びかけたが、結果は「自由と公正」を求める「アラブの春」がなお続いていることを実感させた。今後、発足するシーシ体制での波乱を予測させるものといえよう。(中東アフリカ総局長・川上泰徳)
エジプト安定手探り 次期大統領にシシ前国防相
nikkei.com
2014/5/30 0:59日本経済新聞 電子版
【カイロ=押野真也】エジプトの大統領選で、国軍を率いてきたシシ前国防相が圧勝した。「アラブの春」と呼ばれる民主化運動によって2011年に崩壊したムバラク政権以来、国民は再び軍出身の指導者を選んだ。政治の長引く混乱で経済は低迷しており、治安の改善が急務だ。新大統領は国際的な信用回復という重い課題も抱える。
6月中旬にも正式に大統領に就く見通しのシシ氏は、昨年7月に主導した事実上のクーデターで当時のモルシ大統領を解任し、大規模なデモを押さえ込んだ。市街地で衝突や銃撃戦が繰り広げられた状況は改善した。
政府系紙アハラムの集計によると、29日時点でシシ氏の得票率は約97%に達した。ただ投票率は47%と低く、国民のあらゆる層から支持を吸収したと言い難い面もある。実際、各地の投票所は閑散としていた。モルシ氏の支持母体でイスラム組織のムスリム同胞団や強権支配の復活を懸念する若者のグループらは投票をボイコットした。
クーデター後に発足した暫定政権の下で令状なしの身柄拘束や十分な審理を経ない裁判、記者の拘束など当局の強権的な姿勢が目立つが、反体制運動は広がっていない。カイロ・アメリカン大学のガマル・スルタン教授は「多くの国民は生活に困窮し、民主主義など価値観を巡る争いに費やす余裕はない」と語る。
エジプトでは治安の悪化が響き、主力の観光業が低迷。海外からの直接投資は足元でピーク時の約3分の1にとどまる。
生命線は経済援助だ。エジプトから混乱が及ぶのを危ぶむサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの支援で、外貨準備高も安定した水準にある。シシ氏は援助頼みについて「できるだけ早く終えるべきだ」と経済の自立を目指す構えを示す。それには国内の情勢安定と、投資や観光の回復が欠かせない。
対米依存の路線は転換点にさしかかってきた。クーデター後、援助を厚くした湾岸産油国とは対照的に米国は政変を非難し、年13億〜15億ドルの軍事援助を一部凍結した。シシ氏は米紙に「エジプトに背を向けた米国を忘れない」と強調した。
昨年11月にエジプトはロシアとの外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を初めて開いた。ロシア製の兵器売却などを巡り調整を続けている。ファハミ外相は「中国との(軍事的な)連携も強化したい」と表明した。シシ氏は「米国との(同盟)関係は重要」としつつも、米国と中ロの力関係の変化を計算している。
イスラエルとの関係も外交上の焦点だ。シシ氏は1979年に結んだイスラエルとの平和条約を維持する方針。一方でエジプトが米国の影響下から離れることはイスラエルの不安をかきたてる。テルアビブ大学のウジ・ラビ教授は「米国はエジプトが不安定な現状を直視し、シシ氏への支援を表明すべきだ」と話す。
エジプト大統領選 シーシ前国防相の当選を発表
asahi.com
カイロ=川上泰徳2014年6月4日02時22分
エジプトの大統領選挙委員会は3日夕、5月下旬にあった大統領選でシーシ前国防相(59)が97%の得票で当選したと正式に発表した。対立候補の左派政治家サバヒ氏(59)は3%の得票。投票率は47%だった。
シーシ氏は昨年7月にムルシ前大統領を排除した軍事クーデターを主導したが、経済や治安の安定を求める経済人ら富裕層の支持を得て、選挙前から当選が確実視されていた。
一方、ムルシ氏の出身組織ムスリム同胞団の支持者や、2011年にムバラク政権を倒した若者組織は、シーシ氏当選による「軍政復帰」を警戒。選挙のボイコットを訴えていた。(カイロ=川上泰徳)
エジプト大統領選、シーシ氏が正式に当選
cnn.co.jp
2014.06.04 Wed posted at 10:14 JST
(CNN) エジプト選管は3日、先月末に実施した大統領選でシーシ前国防相が当選したと正式に発表した。
シーシ氏の得票率は96%を超え、唯一の対立候補だった左派のサバヒ氏は3.9%にとどまった。
首都カイロの中心部のタハリール広場には数千人が集まって、シーシ氏の当選を祝った。花火が打ち上げられ、露店には国旗やシーシ氏の顔を描いた風船が並んだ。周辺には軍や治安要員が立ち、歌ったり踊ったりする市民らを見守った。
シーシ氏は、昨年7月にムルシ前大統領を追放したクーデターを、軍トップとして主導した人物だ。
サバヒ氏は敗北を認める一方、選挙自体に信頼性がないと主張。「発表された結果はエジプト国民の知性に対する侮辱だ」と批判した。国営ニュースサイト「アフラム・オンライン」は先週、サバヒ陣営のメンバーが襲撃されたり拘束されたりする一方で、シーシ氏の関係者は投票所内への立ち入りを認められたと伝えていた。
エジプト軍政復活 大統領選シシ氏圧勝確定
東京新聞
2014年6月4日 夕刊
【カイロ=中村禎一郎】エジプトの選挙管理委員会は三日、大統領選の最終開票結果として、シシ前軍最高評議会議長(59)が二千三百七十八万票余を獲得したと発表した。シシ氏の得票率は96・9%に達し、左派系候補の元国会議員サバヒ氏(59)を大差で破り当選した。二〇一一年に崩壊したムバラク政権以来三年ぶりに本格的な軍政が復活する。
発表によると、投票率は前回の52%を下回る47・5%だった。シシ氏は地元テレビを通じて「幸せだ。市民に感謝したい」と表明した。サバヒ氏は七十五万票余、3・1%の得票にとどまった。
カイロ中心部にはシシ氏の支持者らが集まり、タハリール広場を埋め尽くした。午後八時すぎにシシ氏の当選が知らされると、支持者らは歓声を上げ、シシ氏の写真を掲げたり国旗を振ったりして喜んだ。
広場を訪れた衣服店勤務のカリーンさん(18)は「給料が安くて結婚もできない。いい仕事を見つけたい。シシ氏は、まず治安を回復し、次に経済を立て直してほしい」と話していた。
シシ氏の当選、正式発表…エジプト大統領選
The Yomiuri Shimbun
2014年06月04日 10時42分
【カイロ=溝田拓士】エジプトの選挙委員会は3日、大統領選(5月26〜28日)でシシ前国防相(59)が、得票率96・91%で当選したと正式に発表した。シシ氏は8日に最高憲法裁で就任式を行う。
シシ氏は発表後に放映された短いテレビ演説で「国民の継続的な努力と決断力を望む。今は働く時だ」と訴え、3年前のムバラク独裁崩壊以降、悪化している治安と経済の再建に向けて国民の協力を求めた。
投票率は2012年の前回選の約52%(決選投票時)を下回る47・5%だった。
2014年06月04日 10時42分
エジプト大統領選:当選のシシ氏「未来のため汗を流す時」
毎日新聞 2014年06月04日 10時32分(最終更新 06月04日 10時43分)
【カイロ秋山信一】5月下旬に実施されたエジプト大統領選挙の公式結果が3日発表され、シシ前国防相(59)が当選した。シシ氏は同日夜、国営テレビを通じて演説を行い、「未来のために汗を流す時だ。安定と発展を実現しよう」と国民に呼びかけた。ただ投票率は47.45%にとどまり、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団や若者層を中心にシシ氏への反感が根強いことも浮き彫りになった。
シシ氏は演説で「エジプト国民は(2011年の『アラブの春』で要求した)自由や社会正義を得るにふさわしい。希望を実現するためには協力して国造りをしなければならない」と述べ、新政権への協力を求めた。
公式結果によると、シシ氏は約2378万票を獲得し、得票率は96.9%。得票数は全有権者数の約46%に上った。対抗馬の左派政治家、サバヒ氏(59)は約75万票だった。投票率は投票日が延長された3日目に約10%上乗せされて47.45%となり、前回の第1回投票(約46%)をわずかに上回った。ただ「(有権者の75%にあたる)4000万人以上に投票してほしい」と語っていたシシ氏の思惑は外れた。就任宣誓式は7日にも開かれる。
一方、昨年7月の軍事クーデター以降、シシ氏を支援してきたサウジアラビアは3日、エジプトへの財政支援を協議する支援国会合を近く開催すると発表。外貨不足が深刻なエジプトを支援し、新政権の安定につなげる狙いがあるとみられる。
ナイル.com:(22)ドタバタ劇の裏に
毎日新聞
2014年06月04日
5月下旬に行われたエジプト大統領選挙は、大方の予想通り、シシ前国防相(59)の圧勝で幕を閉じた。選挙戦としては全く面白味がなかったが、投票日を延長するなど投票率アップを狙う選挙委員会(委員はベテラン裁判官)のドタバタ劇にはあきれさせられた。ただその裏には、単なる笑い話ではすまない事情もあるような気がする。
最初に疑問が湧いたのは5月21日、在外投票の結果が発表された時だった。国内の投票は5月26、27両日の予定だ。その前に在外投票の結果を発表してしまっていいのか。
選挙委は5月14日の時点では「在外投票の結果は、国内の開票が終わるまでは公表しない」と説明していた。公表すれば、どういった形であれ、国内の投票に影響を及ぼすのは確実だ。「シシは勝ちそうだから、もう投票に行かなくていいか」とか、「(対立候補の)サバヒは票が少なくて可哀そうだから、入れてやるか」とか。
ところが5月21日の会見で、一転してシシ、サバヒ両候補の得票数を投票所(※外国にある141カ所のエジプト大使館、領事館)ごとに発表したのだ。結果はもちろんシシ氏の圧勝。「(司法の最高権威である)最高憲法裁判所の判断で、候補者の得票数を発表することにした。ただ、これは公式な開票結果ではない」と不可解な説明をして、質疑を受け付けずに会見を打ち切った。
さらに驚いたのは、取材で意見を聞いた大学教授、法学者、ジャーナリストの3人が一様に「特に問題はない」という反応だったことだ。シンクタンクの研究者だけが批判的だった。
選挙委はその後、国内の投票も当初予定より1日延長した。また投票2日目の27日は「投票を促すためだ」として急きょ休日にしてしまった。これにも伏線があって、事前の会見では「休日にすると、エジプト人は朝は寝て、昼も(暑いので)自宅でのんびりして、投票に行かなくなる」と、投票日を休日にしないことを明言していたが、投票率をなんとかアップさせようと前言を翻した。
実はベテラン裁判官たちは、シシ氏に大きな「借り」がある。モルシ前政権は、裁判官の定年を引き下げて、革命前からいるベテランを追い出し、同胞団系の若手に入れ替えようとしていた。それを阻止したのが、シシ氏が主導した昨年7月の軍事クーデターだった。在外投票でシシ氏が圧勝したことをいち早く発表したのも、シシ氏への信任度を示すために投票率アップに躍起になったのも、この借りを返したい気持ちからだったのかもしれない。【カイロ秋山信一】
エジプト大統領選 シーシ氏当選、97%得票
asahi.com
カイロ=川上泰徳2014年6月4日22時31分
エジプトの大統領選挙委員会は3日夕、5月下旬にあった大統領選でシーシ前国防相(59)が97%の得票で当選したと正式に発表した。対立候補の左派政治家サバヒ氏(59)は3%の得票。投票率は47%だった。
発表の後、シーシ氏はテレビを通じて「いまは仕事をする時だ。仕事によって、エジプトによりよい明日をもたらし、安定を取り戻す」と訴えた。
シーシ氏は昨年7月にムルシ前大統領を排除した軍事クーデターを主導したが、経済や治安の安定を求める経済人ら富裕層の支持を得て、選挙前から当選が確実視されていた。
一方、ムルシ氏の出身組織ムスリム同胞団の支持者や、2011年にムバラク政権を倒した若者組織は、シーシ氏当選による「軍政復帰」を警戒。選挙のボイコットを訴えていた。
昨夏以来、エジプトに財政支援をしてきたサウジアラビアのアブドラ国王は3日夕、シーシ氏の大統領当選の発表を受けて、「エジプトにとって歴史的な日」と祝福する電報を送った、とサウジ通信が伝えた。その中でアブドラ国王は「混沌(こんとん)を終わらせる時だ」と訴えた。(カイロ=川上泰徳)
エジプト、国内にはびこるセクハラ処罰の新法承認 史上初
cnn.co.jp
2014.06.07 Sat posted at 14:57 JST
(CNN) エジプトのマンスール暫定大統領は7日までに、性的な嫌がらせ行為を処罰する新たな法案を承認した。同国でこの種の法律は初めて。国内にまん延するとされるセクシュアルハラスメントに歯止めを掛けるのが狙い。
大統領府の声明によると、違反者には最大で禁錮5年と最高5万エジプトポンド(約71万6000円)の罰金を科す。最新の通信機器の利用など含め、性的もしくはみだらな方法で接近することを違法行為と規定。
悪質な要因が見られなかった場合の違反行為には少なくとも6カ月の禁錮刑が下される。性的行為の提供を得る意図が明らかな場合の嫌がらせに対しては最少で1年の禁錮刑を想定。社会や職業などでの地位の権限を悪用して被害を強いた場合の最少の禁錮刑は2年となる。
国連が2013年に発表した報告書によると、エジプトでは女性の99.3%が何らかのセクハラ被害を受けていることが判明していた。
同国のセクハラ対策団体の幹部は、今回の新法を歓迎しながらも、嫌がらせ行為の目撃者の保護、罰則を命じる司法の決定権や集団暴行の防止策などの面でまだ不備や懸念があると指摘。当局が新法の効力を実際に駆使するのかを見極めるには時間が必要と述べた。
エジプトでは先月、大統領選が行われ、シーシ前国防相が当選した。マンスール氏は昨年7月、軍部のクーデターでムルシ前大統領が追われた後、暫定大統領に就任していた。
エジプト新大統領に祝意 イスラエル首相と大統領
hikkei.com
2014/6/7 0:13
【エルサレム=共同】イスラエルのネタニヤフ首相は6日、エジプト大統領選で当選したシシ前国防相に電話で祝意を伝え、1979年に結んだ両国の平和条約を維持していくことの重要性などを訴えた。ロイター通信が報じた。
またイスラエルのペレス大統領も同日、シシ氏の当選を祝福した。
ムルシ前大統領の支持者10人に死刑判決 エジプト
cnn.co.jp
2014.06.08 Sun posted at 11:10 JST
(CNN) エジプトの首都カイロの刑事裁判所は7日、昨年失脚したムルシ前大統領の支持者10人に死刑の判決を言い渡した。国営ニュースサイト「アフラム・オンライン」が伝えた。
同サイトによれば、10人は暴力を扇動した罪と主要道路の交通を妨害した罪に問われた。全員が未拘束で、裁判では被告不在のまま有罪判決が下された。最終判断は同国のイスラム法最高権威者、大ムフティに委ねられる。
この裁判ではほかに、前大統領の出身母体だったイスラム組織「ムスリム同胞団」のバディウ団長ら38人も起訴されている。次回の公判は7月5日に開かれる。
同国では今年4月、バディウ団長やムスリム同胞団の支持者ら683人に対し、別の罪で死刑が言い渡されていた。3月にも同組織の支持者529人が死刑判決を受けたが、その後の審理で37人の死刑だけが支持され、残る被告は減刑となった。
大量の死刑判決には国際社会から非難が集中。国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「公正な裁判の基本的基準を満たしていないことは明らかだ」と批判していた。
アフラム・オンラインによると、昨年8月にムルシ前大統領の支持者37人が刑務所への移送中、催涙ガスなどによる窒息で死亡したとされる事件では同日、警察官4人を有罪とした一審判決が控訴審で覆された。
エジプト新大統領が就任 「国民の利益守る」と宣誓
hikkei.com
2014/6/8 23:47
【カイロ共同】2011年の革命でムバラク政権が崩壊した後、混乱が続くエジプトで8日、5月の大統領選で圧勝した前国防相アブデルファタフ・シシ氏(59)が首都カイロの最高憲法裁判所で宣誓し、新大統領に就任した。
スーツにネクタイ姿で就任式に臨んだシシ氏は「国民の利益を守ることをアラー(神)に誓う」と宣誓書を読み上げた。その後「テロと暴力を拒絶する」「国民が革命の恩恵を受ける時が来た」と演説し、治安と経済の回復が重要課題だと強調した。
シシ氏は国防相・軍司令官だった昨年7月、イスラム組織出身のモルシ大統領(当時)に対するクーデターを主導。革命後の混乱を収拾する「強い指導者」として期待を集め、大統領選では得票率約97%で左派系政治家に圧勝した。
シシ氏は、自由や民主化よりも治安の安定を重視すると言明。就任式には、これまで暫定統治に当たってきたマンスール暫定大統領も出席した。
ムバラク氏まで軍出身の大統領が4代続いたエジプトは、再び軍出身者が率いる強権体制に回帰することになった。
社説:エジプト大統領 国民和解に汗を流せ
毎日新聞 2014年06月08日 02時30分
「未来のために汗を流す時だ。安定と発展を実現しよう」。エジプト大統領選で当選したシシ前国防相は、国営テレビを通じて力強く国民に訴えた。とはいえ晴れやかな船出とは言いがたい。昨年7月、民選大統領をクーデターで倒した中心人物が権力を握るわけで、欧米などに警戒感が強いのも無理はなかろう。
エジプトでは1952年の革命以来、ナセル、サダト、ムバラクら軍出身の大統領が続いた。ムバラク政権が2011年の「民衆革命」で倒され、翌年6月にイスラム主義のムスリム同胞団を支持基盤とするモルシ政権が誕生したものの、わずか1年で政権は倒れてしまった。
紆余(うよ)曲折はあっても結局、軍が実権を握る構図は、転がっても同じ姿で止まる「起き上がりこぼし」を見るようだ。それだけ軍がエジプト社会に根を張り、「重心」ともなっているのだろう。その是非はともあれ、混乱期に民衆が切実に安定を求め、伝統的な「軍人大統領」に望みを託したのなら、その選択を尊重しないわけにはいかない。
だが、8日の就任にあたり注文したいことは少なくない。まず投票率の低さだ。エジプト当局は投票率を上げるため2日間の投票を急きょ1日延ばしたものの、約47%にとどまった。モルシ氏が当選した前回は、低いといわれても約52%だった。
また、シシ氏の得票率は約97%という、民主国家では考えられない高率だ。同時期に行われた独裁国家シリアの大統領選でさえアサド大統領の得票率は88%台で、シシ氏の得票率をはるかに下回っている。
こうした現実を踏まえ、シシ氏は従来の「軍人政治」と一線を画した民主政治をめざしてほしい。投票しなかった人々の思いを軽く見るべきではあるまい。エジプトを揺るがした民衆決起は今後も起きうる。中東革新を求める横断的な機運(「アラブの春」)も消えてはいない。
モルシ政権が失敗した経済対策に加え治安回復が急務だ。新政権発足を機に米国は対エジプト関係を徐々に正常化し、日本との経済協力も強まりそうだ。こうした点は明るい材料だが、強権政治に陥れば外国の支援は一転、遠ざかることになるだろう。
モルシ政権崩壊後、暫定政権は同胞団をテロ組織と認定して大量逮捕に踏み切り、今年3、4月に計1200人もの同胞団員らに死刑判決が出された。だが、1920年代から活動してきた同胞団を力で抑えつけることはできまい。同胞団との歩み寄りなしに安定は難しい。
エジプトの安定は中東ひいては国際社会の安定に直結する。国民和解に「汗を流す」かどうか。それが新政権の試金石といえよう。
エジプト:シシ大統領が就任 課題山積、困難な船出
毎日新聞 2014年06月09日 11時00分(最終更新 06月09日 13時20分)
【カイロ秋山信一】5月下旬に行われたエジプト大統領選挙で当選したシシ前国防相(59)が8日、首都カイロの最高憲法裁判所で開かれた就任宣誓式に臨み、正式に大統領に就任した。任期は4年。シシ氏は就任後の演説で「テロと戦い、治安を回復することが最優先課題だ」と述べた。ただ、シシ氏が主導した軍事クーデターへの反発は根強く、経済関係の課題も山積しており、新政権の船出は困難が予想される。
シシ氏は演説で、モルシ前大統領を追放した昨年7月のクーデターを2011年の革命に続く「第二の革命」と位置づけ、「国民が二つの革命の果実を収穫する時が来た」と強調。治安の改善、経済の活性化、貧困者支援、女性の地位向上などに取り組む考えを示した。
大統領選でシシ氏は約97%の得票率で圧勝したが、投票率は50%に及ばなかった。モルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団は、シシ政権の正統性を否定し、抗議デモを継続する構えだ。また、東部シナイ半島を拠点とするイスラム過激派組織「アンサール・バイト・マクディス(エルサレムの支持者)」は、シシ氏の暗殺を予告する声明を発表している。
エジプト大統領選:シシ大統領就任 「治安回復優先」
毎日新聞 2014年06月09日 東京夕刊
【カイロ秋山信一】5月下旬に行われたエジプト大統領選挙で当選したシシ前国防相(59)が8日、首都カイロの最高憲法裁判所で開かれた就任宣誓式に臨み、正式に大統領に就任した。任期は4年。シシ氏は就任後の演説で「テロと戦い、治安を回復することが最優先課題だ」と述べた。ただ、シシ氏が主導した軍事クーデターへの反発は根強く、経済関係の課題も山積しており、新政権の船出は困難が予想される。
シシ氏は演説で、モルシ前大統領を追放した昨年7月のクーデターを2011年の革命に続く「第二の革命」と位置づけ、「国民が二つの革命の果実を収穫する時が来た」と強調。治安の改善、経済の活性化、貧困者支援、女性の地位向上などに取り組む考えを示した。
大統領選でシシ氏は約97%の得票率で圧勝したが、投票率は50%に及ばなかった。モルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団は、シシ政権の正統性を否定し、抗議デモを継続する構えだ。また、東部シナイ半島を拠点とするイスラム過激派組織「アンサール・バイト・マクディス(エルサレムの支持者)」は、シシ氏の暗殺を予告する声明を発表している。
シーシ氏、エジプト新大統領に就任
cnn.co.jp
2014.06.09 Mon posted at 16:55 JST
(CNN) エジプト大統領選で勝利を収めたシーシ氏は8日、首都カイロの最高憲法裁判所で宣誓を行い、大統領に就任した。シーシ氏は就任演説で、重要な変化の中にあるエジプトを導くと約束した。
シーシ氏は、現大統領から次期大統領へと文書に署名する形で権力移行が民主的に行われたのはエジプトの長い歴史の中でも初めてのことだと指摘。マンスール暫定大統領からの権限移行をたたえた。
シーシ氏は先月行われた大統領選で96%の得票を得て勝利していた。
ホワイトハウス(米大統領府)は、米国政府が両国間で共有する多くの利益や戦略的パートナーシップを前進させるために、シーシ氏と共に働くことを楽しみにしているとの談話を発表していた。
「平和的な権力継承」…エジプトで大統領就任式
The Yomiuri Shimbun
2014年06月09日 10時26分
【カイロ=溝田拓士】エジプト・カイロの最高憲法裁判所で8日、アブドルファタハ・シシ氏(59)が大統領として宣誓し、第6代大統領に就任した。
シシ氏は、テレビ中継された就任式での演説で、「エジプト史上初めての平和的な権力継承だ」と述べ、自ら主導した昨年7月のモルシ前大統領解任と、選挙を経た就任の正統性を改めて強調した。
2014年06月09日 10時26分
エジプト、治安・経済改善が課題 シシ大統領就任
hikkei.com
2014/6/9 12:31
エジプトの大統領選挙で勝利したシシ前国防相は8日、カイロの最高憲法裁判所で宣誓式に臨み、新大統領に就任した。今後、首相を指名して組閣作業が始まり、今月中に新政権が誕生する見通し。エジプトは2011年の「アラブの春」でムバラク政権が倒れて以来政治混乱が続いている。悪化した治安や経済の改善が大きな課題となる。
宣誓式後、カイロ郊外の大統領府で開いた就任式には、ペルシャ湾岸諸国や欧米など約40の国や地域から代表団が参加。シシ氏は演説で、参加国に謝意を述べた上で、「とりわけ(対エジプト援助を続ける)サウジアラビアのアブドラ国王に感謝する」と述べた。
シシ氏は13年7月、モルシ前大統領を失脚させたクーデターを国防相として主導した。米欧が援助を凍結するなか、サウジは資金や石油を供給するなどの援助を続けている。海外からの投資や観光客が低迷する中、当面の経済運営はサウジの経済援助に依存せざるを得ず、同国に配慮したとみられる。
シシ氏は演説で、国家再建に向けて自身の意気込みを語った。国民に対しては「より懸命に働く時だ」と述べ、奮起を促した。
シシ氏は出身母体である軍を称賛する一方、国家再建に向けた国民の忍耐や努力が不足しているとの認識を繰り返し表明してきた。軍出身者による強権支配への懸念がくすぶっている。
シシ氏は今後、富裕層に対する課税強化や補助金の削減など、国民に負担を強いる政策を打ち出す可能性が高い。選挙管理当局によれば、大統領選でのシシ氏の得票率は97%に達する。国民の不満をどこまで抑えられるかが焦点となる。
(カイロ=押野真也)
シシ氏、エジプト第6代大統領に就任
The Yomiuri Shimbun
2014年06月10日 00時13分
【カイロ=溝田拓士】エジプトの首都カイロの最高憲法裁判所で8日、アブドルファタハ・シシ氏(59)が大統領として宣誓し、第6代大統領に就任した。
シシ氏はテレビ中継された演説で、民衆蜂起「アラブの春」以降続く混乱の沈静化と国家の再建に触れ、「治安回復に向けたテロ対策が最優先課題だ」と語った。
大統領府は就任式に中東・アフリカ各国首脳や、国交断交中ながら対話を模索するイランからも外務次官を招待し、3年間で失墜した地域大国としての威信回復へ意欲を見せた。一方でシリア、イスラエルのほか、モルシ前政権と懇意だったカタール、トルコは招かず、対立関係を鮮明にした。
2014年06月10日 00時13分
エジプト大統領、現首相に組閣要請
hikkei.com
2014/6/10 0:21
【カイロ=押野真也】8日に就任したエジプトのシシ大統領は9日、現職のメハレブ首相を次期首相に指名し、組閣を要請した。メハレブ氏は数日で組閣作業を終え、新政権が発足する見込みだ。メハレブ氏は2月に暫定政権の首相に就いた。2011年に崩壊したムバラク政権下で国営企業の幹部を務め、与党の党員でもあったメハレブ氏の起用には、独裁政権に批判的な勢力から異論もある。
祝賀ムードの広場で女性暴行が続発、7人逮捕 エジプト
cnn.co.jp
2014.06.10 Tue posted at 12:54 JST
(CNN) エジプトのシーシ新大統領が就任した8日、祝賀ムードに沸く首都カイロ中心部のタハリール広場で女性への集団暴行が相次いだ。警察は9日、7人の男を性的嫌がらせの容疑で逮捕した。
同国で女性に対する性暴力を監視している活動団体は、携帯電話のカメラで現場を撮影したとされる約2分間のビデオを公開した。群衆に囲まれ、着衣を脱がされて血だらけになった女性を、警官らが救助する場面だ。女性は警察の車両に向かう途中で地面に倒れ込み、警官に運ばれていった。
同団体によると、タハリール広場ではこの日、同様の暴行が5件発生し、被害者の女性5人のうち4人は病院での治療を必要とするけがを負った。内務省によると、救助に当たった警官数人も群衆からの暴力で負傷した。
女性2人が警察に届けを出し、この情報を基に容疑者7人が逮捕された。1件の暴行をとらえたビデオがインターネットの動画共有サイト「ユーチューブ」に掲載され、捜査にも活用されているという。
相次ぐ暴行についてのニュースを広場から実況中継していた地元民間テレビ局のキャスターが、現場周辺の群衆を「喜んでいるようですね」と表現して非難を浴び、9日に「誤解を招いた」と謝罪した。
シーシ大統領は、昨年7月にムルシ元大統領を追放したクーデターを、軍トップとして主導した人物だ。活動家らは、軍主導の体制下で女性への暴力という問題が軽視されていると主張する。
これに対して政府系の女性団体は、タハリール広場での暴行は新政権を傷つけるために仕組まれたとの見方を示し、当局に「首謀者」の検挙を求めている。
国連が女性差別撤廃に向けて昨年まとめた報告書によると、エジプトの女性のうち99.3%はなんらかの形で性的嫌がらせを受けた経験があり、82%余りが路上で危険を感じている。
同国では、性的嫌がらせ行為を処罰の対象とする初の法律が、先週成立したばかり。違反者には最大で禁錮5年と最高5万エジプトポンド(約71万6000円)の罰金を科すことになった。
エジプト:セクハラに罰則…女性は疑問視「道徳観が…」
毎日新聞 2014年06月12日 10時32分(最終更新 06月12日 10時58分)
【カイロ秋山信一】女性の多くがセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)を受けたことがあるとされるエジプトで今月、セクハラに対する罰則を盛り込んだ改正刑法が施行された。ひわいな言動が幅広くセクハラと規定され、違反者には禁錮刑や罰金刑が科せられる。就任直後のシシ大統領もセクハラ根絶に意欲を見せているが、女性の間では「セクハラは取り締まりきれないほど多い」と懐疑的な見方も多い。
改正刑法では、言葉や動作で性的なことを示唆する言動をセクハラと規定。違反者には6カ月以上の禁錮刑と3000〜5000エジプトポンド(約4万3000〜7万2000円)の罰金刑が科せられる。職場や教育機関で優位な立場を悪用した場合には、2〜5年の禁錮刑と2万〜5万ポンドの罰金刑が設けられた。政府統計によると、エジプトの平均月給は約3000ポンドで、それ以上の罰金額となる。
ところが、法施行直後の今月8日、カイロのタハリール広場で、シシ大統領の就任を祝っていた女性が、人混みの中で集団暴行される事件が発生し、法律の実効性に疑問符が付いた。シシ氏は11日に入院中の女性を見舞って「セクハラは国の大きな問題。このようなことは二度と起こさない」と述べ、警察に対策強化を指示した。
国連機関・UNウィメンなどの調査(2013年公表)では、10〜35歳のエジプト人女性の99.3%がセクハラを経験していたことが判明。約半数が11年の革命後にセクハラが増えたと回答した。団体職員のイマーン・ナビルさん(27)は「バスに乗る時は2席分の料金を払って、隣に誰も座らせないようにしている。法律を作っても、道徳観が変わらなければセクハラはなくならない」と話した。
エジプト:シシ大統領がサイクリング 肥満問題をアピール
毎日新聞 2014年06月14日 10時49分(最終更新 06月14日 11時37分)
【カイロ秋山信一】今月8日に就任したエジプトのシシ大統領(59)が13日、首都カイロ郊外で、青年・スポーツ省主催のサイクリングイベントに参加した。スポーツ好きで知られるシシ氏は、屈強な警備要員に囲まれながら、軍士官学校生らと18.7キロを走行。肥満が社会問題となっているお国柄を意識してか、「もっと健康に気を使って」とアピールした。
大統領府によると、イベントには軍士官学校生や大学生ら約2000人が参加した。走行距離は、エジプト人の通勤通学の平均距離に設定された。通勤通学にはバスやタクシーを利用する人が多いが、シシ氏は「自転車ならガソリン代も交通費もかからず、(ガソリン補助金の支出を減らして)国にも貢献できる」などと力説した。
保健省の2012年の調査では、15〜65歳の6割以上が肥満、約4割が高血圧で、72%が「運動を全くしない」と回答した。公園など運動に適した公共施設が少なく、カイロでは深刻な大気汚染も屋外での運動をためらわせる要因となっている。
ムバラク元大統領が左足骨折 軟禁下の軍病院で転倒
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵2014年6月20日01時45分
2011年のエジプト革命で退陣に追い込まれ、反政権デモ隊を殺害した罪で公判中のムバラク元大統領(86)が19日、軟禁下に置かれているカイロ市内の軍病院の自室でトイレに行く際に転倒し、左足の大腿(だいたい)部を骨折した。同国のヨウム・サビウ紙(電子版)などが伝えた。
ムバラク氏は昨年8月に保釈が認められ、カイロ近郊の拘置所を出て同市南部の軍病院に入った。5月には汚職の罪で禁錮3年を言い渡された。7月にもデモ隊殺害についての公判が予定されているが、けがのため延期される可能性がある。(カイロ=山尾有紀恵)
ムスリム同胞団指導者ら183人に死刑判決 エジプト
asahi.com
カイロ=山尾有紀恵2014年6月21日22時58分
エジプト南部メニアの裁判所は21日、警察署襲撃事件で4月に死刑判決を受けた683人のうち、イスラム組織「ムスリム同胞団」の最高指導者バディウ団長ら183人に改めて死刑を言い渡した。イスラム国家宗教指導者の見解を受けた判決。政府系アハラム紙などが伝えた。
4人は終身刑、496人は無罪となった。弁護団は死刑、終身刑について控訴するとみられる。
警察署の襲撃事件は昨年8月に起き、副署長が殺害された。バディウ氏は19日にも、カイロ西部ギザの裁判所で、昨年8月にギザのモスク前で10人が死亡した衝突を扇動したとして死刑判決を受けた。
メニアの裁判所は、今年3月に別の警察署の襲撃事件で528人に死刑判決を出したが、この件については4月の公判で37人に死刑、491人に終身刑が言い渡されている。
エジプトでは昨年7月に軍クーデターがあり、同胞団出身のムルシ元大統領が排除された。同8月にはムルシ氏支持派の反クーデターデモを治安部隊が強制排除し、900人以上が死亡した。クーデターを主導したシーシ氏は今月初旬、大統領に就任した。(カイロ=山尾有紀恵)
エジプト:183人に死刑判決 同胞団指導者ら
毎日新聞 2014年06月21日 20時14分
【カイロ秋山信一】エジプト中部ミニヤの裁判所は21日、行政庁舎などを襲撃して警察官ら2人を殺害したとして、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の最高指導者バディア氏や支持者ら183人に死刑判決を言い渡した。政府系紙アルアハラム(電子版)が報じた。4月に683人に死刑判断が下されたが、4人は終身刑、496人は無罪となった。大ムフティ(最高イスラム法官)の意見を受けた判断とみられる。被告側は控訴する見通し。
被告らの弁護人によると、バディア氏らは共謀し、昨年8月14日、ミニヤの行政庁舎や警察署を襲撃し、警察官と市民の2人を殺害した罪に問われた。
ミニヤでは、同じ裁判官が担当した同様の事件でも、同胞団支持者ら37人に死刑判決が言い渡されている。
エジプト、同胞団指導者ら183人に死刑判決
nikkei.com
2014/6/22 1:37
エジプトの裁判所は21日、警官殺害や警察署襲撃などの罪に問われたイスラム組織ムスリム同胞団のメンバーら683被告のうち、同胞団指導者を含む183人に死刑判決を下した。496人は無罪、4人は終身刑にした。中東通信などが伝えた。
裁判所は4月、683被告に死刑を言い渡し、その後、最高イスラム法官に意見を求めていた。十分な審理なしの死刑言い渡しに対して、批判の声が上がっていた。
死刑判決を受けた中には、昨年のクーデターで倒れたモルシ政権を支持する同胞団のバディア最高指導者が含まれている。(カイロ=共同)
米国務長官がエジプト訪問 シシ大統領と会談へ
nikkei.com
2014/6/22 23:23
【カイロ=共同】ケリー米国務長官は22日、エジプトの首都カイロを訪問した。シシ大統領と会談する予定。中東通信などが報じた。シシ氏が8日に大統領に就任して以降、ケリー氏のエジプト訪問は初めて。
両国関係は昨年7月にモルシ政権がクーデターで倒されて以降冷え込んでいた。ケリー氏はイラク情勢への対応を協議するため、22日から中東、欧州歴訪を開始。エジプト訪問は、シシ氏が5月の選挙で当選したことを受けた、関係修復へ向けた一歩となる。
米国務長官、エジプト大統領らと会談 イラク情勢など協議
nikkei.com
2014/6/22 23:53
【ワシントン=吉野直也】ケリー米国務長官は22日、エジプトの首都カイロを訪れ、8日に就任したシシ大統領やシュクリ外相と会談した。エジプトとの関係改善のほか、イラク情勢やシリア内戦など「地域の深刻な情勢」を巡り協議した。
ケリー氏はシュクリ氏と臨んだ記者会見で、イラクに対して挙国一致態勢の確立を促す方針に改めて言及した。一方で「指導層を選ぶのはイラク国民だ」と語り、オバマ政権が特定の勢力や人物に肩入れするのを避ける構えも示した。
米国とエジプトの関係は、昨年7月にモルシ政権がクーデターで倒されて以来冷え込んでいた。今回のケリー氏の訪問を機に修復を目指す。ケリー氏はイラクの隣国ヨルダンなど中東や欧州の諸国も歴訪する。
サウジ国王:エジプト大統領と会談 際立つ蜜月ぶり
毎日新聞 2014年06月22日 18時58分
【カイロ秋山信一】サウジアラビアのアブドラ国王は20日、エジプトの首都カイロを訪問し、シシ大統領と会談した。国営中東通信が報じた。90歳近い高齢のアブドラ国王が、国外で首脳会談に臨むのは極めて異例で、両者の蜜月ぶりが際立った。アブドラ国王には、シリアやイラク、リビアなどアラブ諸国の政情が不安定化する中、発足したばかりのシシ政権への支持を明確にし、地域大国エジプトの安定を図りたい思惑があるとみられる。
AP通信によると、アブドラ国王は療養先のモロッコからの帰路、カイロ空港に立ち寄り、機内でシシ氏と会談した。サウジ政府は、5月の大統領選挙でシシ氏が当選した直後、エジプト支援国会合を開くと発表。今回の会談は、支援国会合に関する協議が主目的だとみられる。
サウジは、中東各国に根を張るイスラム組織ムスリム同胞団の反王制的な思想を警戒し、同胞団中心のモルシ前政権とは距離を置いていた。シシ氏が昨年7月の軍事クーデターでモルシ氏を追放すると、いち早く支持を表明し、数十億ドル規模の巨額の財政支援も行った。シシ氏も選挙戦中から「当選後、最初に訪れる国はサウジだ」と明言していた。
エジプト裁判所、183人に死刑判決
cnn.co.jp
2014.06.23 Mon posted at 17:43 JST
(CNN) エジプト中部ミニア県の刑事裁判所は21日、昨年起きた警察署襲撃に関する裁判で、4月に死刑判決を受けた被告のうち183人に対して改めて死刑判決を言い渡した。
死刑判決を受けた被告の中には、ムルシ前大統領の支持母体「ムスリム同胞団」の最高指導者、モハメド・バディア被告も含まれる。
国営通信によると、裁判所は4月に死刑判決を受けた683人のうち183人を死刑、4人を終身刑とし、残る496人には無罪を言い渡したという。
被告の弁護人も183人が死刑判決を受けたと確認した。被告は今後上訴できる。
バディア被告らムスリム同胞団幹部は、他の襲撃事件でも死刑判決を受けている。
米国務長官がエジプト大統領と会談 支援凍結を解除
asahi.com
カイロ=金井和之2014年6月23日09時51分
米国のケリー国務長官は22日、エジプトを急きょ訪れ、今月就任したばかりのシーシ大統領、シュクリ外相と相次いで会談した。
ケリー氏は米国が懸念していた言論や集会の自由などの制限についてシーシ氏らと協議。エジプト側に民主化の推進を促した。これに伴い、米国が凍結していた軍事支援の一部について、ケリー氏は会談後の会見で「アパッチ(攻撃ヘリコプター)は来る。とても近いうちに」と語った。
AFP通信などによれば、米政府関係者は同日、昨年10月から凍結されていたエジプト向け支援の約5億7千万ドル(約580億円)を、10日前に解除したことを明らかにしたという。支援には同ヘリコプター10機が含まれており、ケリー氏の発言は、支援の凍結解除を裏付けたと言える。
また、ケリー氏は会見で、イラクで攻勢を強める「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」について、「イラクだけでなく、地域全体の脅威」と強調した。一方で、「指導者を選ぶのはイラク国民」として、米国は特定の勢力に肩入れしないとの立場を示した。(カイロ=金井和之)
中東のテレビ記者らに禁錮刑 エジプトの裁判所
nikkei.com
2014/6/23 22:29
【カイロ=共同】エジプトの裁判所は23日、虚偽の報道によりイスラム組織ムスリム同胞団を支援したなどとして、中東の衛星テレビ、アルジャジーラの記者ら3被告に禁錮7〜10年の判決を言い渡した。地元紙アルアハラム(電子版)などが報じた。
アルジャジーラはモルシ前政権寄りとされ、モルシ前大統領が追放された昨年7月の軍事クーデターを批判的に報道。エジプト暫定政権は、モルシ氏の出身母体である同胞団をテロ組織に指定するとともに、言論統制を強めていた。
被告のうち1人はオーストラリア人の記者だった。3人は今年1月、暴力を扇動した罪などで起訴された。
イラク過激派の資金遮断呼びかけ…米・エジプト
The Yomiuri Shimbun
2014年06月23日 12時55分
【カイロ=久保健一】ケリー米国務長官は22日、エジプト・カイロを訪問し、同国のシシ大統領、シュクリ外相とそれぞれ会談した。
ケリー氏は会談後の記者会見で、イラクで勢力を拡大しているイスラム過激派組織「イラク・シリアのイスラム国」(ISIS)について、「イラクだけでなく、(中東)地域全体への脅威だ」と指摘。中東諸国に対し、「違法な福祉団体や裏ルート」を通じ、「避難民支援を装った資金」がISISに流れないように協力を呼びかけた。
ケリー氏は国名を挙げなかったが、イラクのマリキ首相は、サウジアラビアなど湾岸アラブ諸国から資金が流入しているとみている。
2014年06月23日 12時55分
米国務長官:対エジプト軍事援助凍結の大幅緩和を発表
毎日新聞 2014年06月23日 19時54分
【カイロ秋山信一】ケリー米国務長官は22日、エジプトの首都カイロを訪問し、今月8日に就任したシシ大統領やシュクリ外相と会談した。ケリー氏は会談後の記者会見で、昨年7月の軍事クーデター後に実施された対エジプト軍事援助凍結が大幅に緩和されたと発表。人権問題への懸念を示しつつも、「最も重要なのは協調関係を確認したことだ」と述べ、クーデター後に冷え込んだ両国関係の改善に意欲を示した。
ケリー氏は、シュクリ外相との共同記者会見で、東部シナイ半島などでのイスラム過激派掃討作戦への支援として、アパッチ攻撃ヘリコプター10機が近く供与されるとの見通しを示した。国務省高官によると、シシ政権発足後に5億7500万ドル(約585億円)分の軍事援助凍結が解除されたという。
ただ米政府は、年間13億ドルに上る軍事援助の全面再開には「民主化に向けたさらなる取り組みが必要」(国務省高官)との立場だ。
ケリー氏も会談で、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団の支持者ら200人以上が死刑判決を受けた問題や、同胞団の取材をしていた中東のテレビ局アルジャジーラの記者が拘束された問題を列挙し、表現や集会の自由が侵害されているとの懸念を伝えた。ケリー氏によると、シシ大統領は人権問題や司法制度について再評価することを約束したという。
「世界終末の疫病」でキリスト教が拡大? エジプト
cnn.co.jp
2014.06.24 Tue posted at 11:43 JST
(CNN) エジプトのルクソールにある墓地の遺跡から、3世紀半ばに大流行した疫病で死亡した人の人骨が発掘された。当時この疫病は世界の終末をもたらすと考えられ、結果的にキリスト教の布教を助ける要因になったという。
人骨は古代都市テーベの遺跡を発掘していたイタリアの考古学調査団が発見した。この当時、感染防止のための殺菌処理に使われていた石灰で厚く覆われており、付近からは遺体を火葬した跡や、石灰の生成に使った窯も見つかった。
この時代は「キプリアヌスの疫病」と呼ばれる感染症が大流行したことで知られる。北アフリカ沿岸の都市カルタゴで司教を務めたキプリアヌスの記述によれば、この疫病にかかると「絶え間ない嘔吐(おうと)に腸は震え、目には感染した血液の炎が燃え、場合によっては足あるいは手足の一部が腐って落ちる」とされ、多くは失明したり聴覚障害が残った。
ローマだけで1日に推定5000人がこの疫病のために死亡し、当時のローマ皇帝ホスティリアヌスとクラウディウス2世も犠牲になったほか、エジプトのアレクサンドリアでは人口の3分の2が死滅したと見る研究者もいる。
天然痘だったと思われるこの疫病の流行は、世界の終末を告げる予兆と考えられた。しかしキプリアヌスは、キリスト教徒は恐れを抱く必要はないと記述。人々の間には患者の姿や死者を火葬する光景に地獄のイメージが重なって世界終末への恐怖心が広がり、死後に地獄に落ちたくないとの思いから、キリスト教の信者が増えたとみられている。
エジプト、テレビ記者らに懲役刑 言論弾圧と国際的非難
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カイロ=川上泰徳2014年6月24日00時45分
カイロの刑事裁判所は23日、「虚偽の報道で国の安全を危うくした」などとして起訴された中東・カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」のジャーナリスト3人に対し、懲役7年から10年の判決を言い渡した。3人は起訴内容を否定しており、控訴する見通し。
判決は、オーストラリア人のピーター・グレスト記者とアデル・ファハミ支局長に懲役7年、バヘル・ムハンマド記者に懲役10年。3人は昨年12月、滞在先のホテルで逮捕され、拘束が続いている。「エジプトは内戦状態」という報道が「虚偽の報道」とされ、「テロ組織に関与している」として起訴された。訴追は「言論弾圧」として国際的な非難を受けている。ピレイ国連人権高等弁務官は23日、声明で、判決に「衝撃を受けた」と述べ、懸念を表明した。
バヘル・ムハンマド記者は、かつて朝日新聞中東アフリカ総局で助手として勤務した経験がある。
エジプトでは昨年7月の軍によるクーデター以来、当局が言論弾圧を強め、これまでに政府の姿勢を批判したジャーナリスト約20人を刑事裁判にかけている。
22日にエジプトを訪問したケリー米国務長官は記者会見し、シーシ新大統領との会談で「言論の自由や報道の自由」の実現を求めたことを明らかにした。(カイロ=川上泰徳)
アルジャジーラ記者に懲役刑、国連事務総長「深く懸念」
asahi.com
ニューヨーク=春日芳晃、ジュネーブ=松尾一郎2014年6月24日11時48分
中東カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」の記者3人が、エジプト情勢をめぐり「虚偽報道」をしたなどとしてカイロの刑事裁判所で懲役刑の判決を受けた問題で、国連の潘基文(パンギムン)事務総長は23日、「深く懸念する」との声明を発表した。ピレイ国連人権高等弁務官も同日、判決を非難する声明を発表。同判決を「言論弾圧」とする国際的な非難が広がっている。
潘氏は「(裁判の)手続きは公正な裁判の水準を満たしていなかったように見える」と指摘。ピレイ氏は「ジャーナリストたちが告発された容疑は、国家の一体性と社会の平安の阻害、誤った報道の拡散、テロ組織に関与とあまりにも幅広くあいまい。『表現の自由』に(弾圧の)狙いを定めている」と非難した。
3人の記者は「エジプトは内戦状態」という報道が「虚偽の報道」とされ、昨年12月に逮捕された。判決内容はピーター・グレスト記者とアデル・ファハミ支局長に懲役7年、バヘル・ムハンマド記者に懲役10年。ムハンマド記者はカイロにある朝日新聞中東アフリカ総局で助手として勤務した経験がある。(ニューヨーク=春日芳晃、ジュネーブ=松尾一郎)
[FT]米欧は横暴なシシ政権に圧力を(社説)
nikkei.com
2014/6/24 15:00
エジプト軍の総司令官だったシシ氏は1年近く前、クーデターで権力を掌握した。同氏は独裁政権の確立を目指しており、以前のムラバク政権と同様、残虐で人権を尊重しない政治を進めようとしている。
中東の混乱が続くなか、多くの西側諸国はシシ政権の不正に目をつぶってきた。その不正には数百人の政敵に対する死刑宣告が含まれる。だが、カタール政府がコントロールする放送局、アルジャズィーラのジャーナリスト3人の投獄によって、シシ政権の不正は別の側面から注目されることになった。
実績のあるオーストラリア人特派員ピーター・グレスト氏と、ほかの2人のエジプト生まれの同僚は昨日、カイロの裁判所において刑務所で7年をすごすように命じられた。その理由は、間違ったニュースを流し、すでに非合法化されたイスラム原理主義組織のムスリム同胞団を支持したためだ。多くのアナリストは、この判決が、ムスリム同胞団の指導者であるムハンマド・モルシ氏を支援するカタールの支配層に対する報復だと指摘する。モルシ氏は昨年のクーデターで追放された。
■拘束のジャーナリスト、見あたらない犯罪の証拠
判決を受けた3人が罪を犯したという証拠は見あたらない。例えば、グレスト氏はイスラム教徒でなく、逮捕前にはアラブ世界での経験がほとんどない。この裁判はでっち上げだ。この3人が問われたのは「ジャーナリズムの罪」だけだった。
この3人の窮地はシシ政権の横暴によってもたらされた一例だ。エジプト軍の将軍たちはムスリム同胞団を恐れ、イスラムの政治勢力との和解を拒否する。クーデター後、1000人を超えるイスラム教徒が殺害され、1万6000人が身柄を拘束された。
こうした弾圧は、シシ氏に対する西側の姿勢について疑問を生じさせた。先週末、ケリー米国務長官はエジプトに赴き、両国の「長いパートナーシップ」の修復に努めていた。ケリー氏によると、米国はクーデター後に中断したエジプトへの軍事援助を間もなく再開する。
中東における米外交は喫緊の課題に直面している。ジハード(聖戦)を叫ぶイスラム武装勢力の脅威が中東で急速に広がっており、米国はシシ氏をイスラム過激派との戦いにおいて頼れる仲間だと考えている。米国は国際テロ組織アルカイダの民兵を多く育ててきたシナイ半島の安定を確保するためにエジプトの協力を必要としているのだ。
それでも米国と同盟国はエジプトへの対応を考え直すべきだ。シシ氏には、ムスリム同胞団や世俗的なリベラル勢力からの異議をはねつける硬直的な姿勢を改めるように促さなければいけない。シシ氏のやり方では、ムスリム同胞団を地下に潜らせるだけだ。これでは、政府の弾圧には暴力が唯一の有効な対抗手段だと主張するイスラム過激派を伸ばすだけだ。
西側諸国はシシ氏と、湾岸諸国の支援者に強い姿勢で臨むべきだ。米国は、シシ政権による反政府勢力への対応を見てから、エジプトへの軍事援助を実施すべきだ。キャメロン英首相は、ムスリム同胞団がもたらす安全保障上のリスクに関する調査を実施するという決定を見直す必要がある。これは湾岸諸国を懐柔するための宣伝効果を持つだけで、シシ氏に、西側が同氏のムスリム同胞団への弾圧を認めているという誤ったメッセージを送る危険性があるからだ。
エジプトは2011年の革命からいまにいたるまで混乱を続けている。だが、西側は、エジプトが強い指導者のもとにまとまればすべてがうまくいくと考えてはいけない。エジプト政府が市民への責任を果たし、寛容な社会を作らなければ安定しない。まずは権威主義を強めるエジプト政府により無実の罪に問われた人たちをすべて解放することが必要だ。
(2014年6月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
記者の目:エジプト新大統領にシシ氏=秋山信一(カイロ支局)
毎日新聞 2014年06月24日 東京朝刊
◇無言の反発にも謙虚に
エジプトで今月8日、シシ前国防相(59)が大統領に就任した。2011年の民主化要求運動「アラブの春」でムバラク政権が崩壊して以来、3年半ぶりに軍出身の大統領が誕生したのは、革命後の混乱収束を望む民意の表れだ。ただ、5月の大統領選挙の投票率は50%に及ばず、軍の力を背景に自由や人権が制限される時代に戻ることへの根強い懸念がにじんだ。
気がかりなのは、シシ氏がこうした懸念に耳を貸そうとしていないことだ。独善的な姿勢は、民心の離反を招いたモルシ前政権と重なる。混乱期にこそ必要な協調の姿勢がなければ、きついしっぺ返しが待っているはずだ。
アラブの春で、民衆は「パン、自由、社会正義」を求めた。衣食住を保障し、自由を拡大して汚職や不正を廃絶してほしい。そんな庶民の願いが革命の原動力だった。だが革命後に経済はさらに悪化し、不正は放置された。「何をしてもいい」と自由の意味をはき違える人も多かった。
昨年1月にカイロに赴任して以来、そうしたエジプトの混乱を実感している。公道に駐車しているのに、チンピラから「駐車料金」をせびられる。衣料品店が車道や公共広場で営業し、往来を妨げる。その不正を警察は黙認する。
◇治安の混乱で経済悪化の一途
治安の混乱で、主要産業の観光も低迷している。今春、クフ王のピラミッドやアブシンベル神殿を訪れた時、他に観光客を見かけなかった。日々の暮らしでみると、900ミリリットル入りの牛乳は、1年半で7・5エジプトポンド(約110円)から10ポンドに値上がりした。自宅の家賃は今年5%上がり、停電が頻発する。
12年の前回選挙で、初めて民主的に選ばれたイスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ前大統領は当初、柔軟な政治姿勢をうかがわせ、期待が高まった。決選投票では、独裁政権時代の首相だった対抗馬を嫌うリベラル派の支援も受けた。それが当選後、リベラル派など同胞団と対立する勢力との対話を拒絶し、反政権デモを引き起こした。
モルシ氏を追放した昨年7月のクーデターは、失望した多くの国民に歓迎され、主導したシシ氏は救世主とあがめられた。ところが、シシ氏も反対派には厳しく対応した。
軍が主導する治安部隊は、モルシ氏の復権を求める同胞団のデモ隊に容赦なく実弾を浴びせた。1000人以上が死亡し、取材する私も何度も身の危険を感じた。さらに、無許可デモを禁じるデモ規制法が施行され、秘密警察が言論を監視する。政府はフェイスブックやツイッターでも、監視強化を打ち出した。リベラル派のある記者は警察の知人から「盗聴の対象になっている」と告げられた。
加えて、軍に反発するイスラム過激派のテロという脅威も生まれている。自宅近くで昨夏以降、真偽不明のものも含め何度も爆弾騒ぎが起きた。公立学校は昨年度下半期、治安悪化を理由に約1カ月間しか授業がなかった。
◇自由に言えない雰囲気に覆われ
混乱の中で家族と暮らす住民の一人として、私も安定を望む。シシ氏に投票した教師のワリード・アブドルマセルさん(38)が「混乱収束のために強い指導者が必要だ」と話す気持ちを理解できる。
しかし、シシ氏への信任投票といえる選挙で過半数が棄権した事実は、国民の無言の反発の強さを示している。投票日を1日延長しても投票率は47・45%にとどまり、「(有権者の75%にあたる)4000万人以上に投票してほしい」というシシ氏の思惑は完全に外れた。同胞団への弾圧や言論規制が独裁政権時代を想起させ、同胞団だけでなく、革命を主導した若者たちの支持も失ったようだ。
就任時の演説で、自由や人権を尊重する姿勢を示したシシ氏。一方で、「デモは警察の負担を増やすだけだ」といった言動からは、反対派を力ずくで抑え込もうという意図を感じる。革命前のような「自由にモノが言えない」雰囲気が社会を覆いつつある。
エジプト国民は、革命で自由の息吹を経験した。今さらながらの強硬策が容認されるかはもはや疑問だ。昨秋、登校中に同胞団のデモに参加していると勘違いされ、治安部隊に拘束された中学2年のスハンダさん(14)を取材した。彼女は治安部隊の強引な取り締まりに怒り、釈放後は反シシ派のデモに参加している。「不当に逮捕されたり、殺害されたりした人の名誉を取り戻したい」と語る。
社会の安定のため、自由や人権さえ抑圧してもいいというのは、権力者に都合の良い解釈に過ぎない。シシ氏には支持者以外の声にも耳を傾ける謙虚さが求められる。
エジプト首都3カ所で爆発、4人負傷
cnn.co.jp
2014.06.25 Wed posted at 20:19 JST
(CNN) エジプト国営メディアによると、首都カイロ市内で25日、爆発が相次ぎ、少なくとも4人が負傷した。
国営ニュースサイト「アルアハラム」(電子版)が内務省報道官の話として伝えたところによると、同日早朝のラッシュアワーに2つの地下鉄駅で爆発が起きた。
一方の駅では即席爆弾、もう一方ではごみ箱の中の音響爆弾が爆発したという。地下鉄駅は厳戒態勢が敷かれ、完全に閉鎖された。
また、市東部の裁判所付近でも爆発が起きた。犯行声明は出ていない。
同国ではイスラム組織出身のムルシ前大統領が昨年の軍事クーデターで排除されて以来、武装勢力が攻勢を強めている。先月もカイロの地下鉄駅付近などで爆弾テロが続発した。
エジプトの地下鉄で連続爆発 3人負傷
nikkei.com
2014/6/25 20:52
【カイロ=共同】エジプトの首都カイロにある4つの地下鉄の駅で25日、手製の爆発物が相次いで爆発し、当局者によると、計3人が負傷した。このうち1人は重傷という。中東通信が報じた。
治安当局は負傷者の1人が事件に関与したとみて捜査している。昨年のクーデターで追放されたモルシ元大統領の支持者とみられ、かばんの中からほかの爆発物が見つかったという。
シシ大統領が8日に就任して以来、連続爆発事件は初めて。クーデター後、北東部シナイ半島を拠点とするイスラム過激派がテロ事件を繰り返していたが、最近は治安当局に抑え込まれている。
エジプト:5件の爆発、8人負傷 カイロの地下鉄などで
毎日新聞 2014年06月25日 21時19分
【カイロ秋山信一】エジプトの首都カイロで25日、地下鉄の駅構内などで少なくとも5件の爆発があり、ロイター通信によると、8人が負傷した。治安当局は連続テロとみて調べている。今月8日にシシ大統領が就任してから、首都で市民を標的にしたテロが起きたのは初めて。シシ氏がモルシ前大統領を追放した軍事クーデターから7月3日で1年を迎えるのを前に、治安への懸念が高まっている。
ロイターなどによると、25日朝の通勤時間帯に、カイロ中心部の地下鉄2駅で爆発があり、一時運行が休止された。さらに運行再開後に別の駅でも爆発があった。カイロ北部の裁判所前でも2件の爆発が起きた。これとは別の2駅で爆発があったとの情報がある。
爆発はいずれも小規模で、治安当局は手製の簡易爆弾が使用されたとみている。
エジプトではクーデター後、モルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団に同情的なイスラム過激派などによるテロが頻発している。大半は軍や警察が標的で、市民を狙った無差別テロは異例だ。同胞団は、クーデターから1年を迎えるのを機に、シシ政権への抗議活動に参加するよう市民に呼びかけている。
エジプト首都の地下鉄で連続爆発 6人が負傷
asahi.com
エルサレム=山尾有紀恵2014年6月26日11時20分
エジプトの首都カイロの地下鉄4駅で25日朝、相次いで爆発があり、6人が負傷した。政府系アハラム紙(電子版)が伝えた。今月初旬のシーシ大統領の就任後、連続爆発事件は初めて。
爆発物はいずれも簡素なもので、ゴミ箱などに仕掛けられていた。負傷者の1人は爆発物を所持しており、事件に関与した疑いがある。
昨年7月のクーデター以降、カイロやシナイ半島、エジプト北部では、警察などを狙った爆発事件が相次いでいる。ムルシ元大統領の出身母体のイスラム組織ムスリム同胞団は、クーデター1周年を前に再結集を呼びかけており、衝突が再燃する可能性がある。(エルサレム=山尾有紀恵)
ナイル.com:(24)ファラオのように赤子を祝う
毎日新聞
2014年06月27日
赤ちゃんを授かった時の幸福感は、人生におけるハイライトの一つです。エジプトでも赤ちゃんが生まれると、家族や周りの人たちが盛大にお祝いします。特に生後7日目を祝う「スブア」は、ファラオの時代から続くと言われる伝統の儀式です。
スブアは自宅やレストランなどで開かれ、親族や友人が集まります。主役である赤ちゃんはなんと、ふるいの上に乗せられます。母親は赤ちゃんの上を7回またぎ、水に七つの種を入れます。これは赤ちゃんが善良に育ち、富にも恵まれるとの願いが込められていると言われています。
赤ちゃんの祖母や出席者らは、赤ちゃんをふるいごと、ゆっくりと揺らします。周りの人は金属製の打楽器を鳴らして、赤ちゃんの注意をひきます。そして「お母さん、お父さんの言うことをよく聞いてね。この悪いおばさんの言うことは聞いちゃだめよ」などと優しく語りかけます。赤ちゃんは生後7日目に耳が聞こえ始めるという言い伝えがあります。だから最初に大切なことを伝えるのです。
スブアではお客さんにお菓子を配るのも恒例です。知人のモウニラ・カマルさん(62)が出産した時は、ポップコーンやアメを箱詰めして配ったそうです。「産後の疲労がひどかったから、母や姉妹に手伝ってもらった。アバヤ(ワンピース風の女性服)を新調したのを覚えているわ」と話していました。
イスラム教徒には、赤ちゃんの誕生を祝う「アキカ」と呼ばれる行事もあります。親族や友人で集まるのは同じですが、エジプトでは、スープにひたしたアエーシ(ピタパン)の上にご飯を盛り、さらに羊肉とニンニクを利かせたトマトソースを乗せた「ファッタ」を食べるのが一般的です。友人のイブラヒムさん(29)の場合は、スブアとアキカを一緒にしたようなパーティーを開きました。イスラム指導者に相談して、羊を1匹分用意したそうです。
スブアでは、お客さんからたくさんの贈り物をもらいます。金のアクセサリーや現金、育児用品が一般的です。お返しはもちろん、赤ちゃんのとびきりの笑顔です。【イナス・タウフィーク(カイロ支局スタッフ)、訳・秋山信一】