序章 アフリカ農村社会と公共圏の概念/児玉由佳
第1章 エチオピア農村社会における公共圏の形成 ―市民社会/共同体の二元論をこえて―/松村圭一郎
第2章 アフリカ農村の生産者組織と市民社会−ガーナの事例から−/高根務
第3章 東アフリカ農村における森林資源管理と生計安全保障―タンザニアとケニアの参加型制度の事例分析―/上田元
第4章 ザンビアの農村における土地の共同保有にみる公共圏と土地法の改正/大山修一
第5章 ルワンダの農村社会と民衆司法―アブンジを中心に−/武内進一
補章1 新しい公共圏の創生と消費の共同体―タンザニア・マテンゴ社会におけるセングの再創造をめぐって―/杉村和彦
首都アジスアベバに住む人々が故郷の地に道路や学校を作るために立ち上げたグラゲ道路建設協会、アジスアベバの人々の多くが参加する様々な葬儀講の活動を、引き裂かれた社会をつなぎとめる努力、構成員とそうではない人との間の線引きに常に揺らぎを抱え込む共同体のあり方という視点から読み解いた興味深い本です。
エチオピアを知るための50章
西さんによる「病と共存する社会をのぞむ エチオピアのHIV/AIDS予防運動」を読むと、西さんらが「リスクと公共性研究会」に寄せる思いを感じることができます。
全盲の人類学者・廣瀬浩二郎さんの発案をもとに実施された民族学博物館の触文化展は興味をそそります。何年か前、やはり全盲である社会学者の石川准さんが、たまたま博物館で触ることのできる展示に出会った際の感動を語っていたことを思い出しました。
内藤順子さんの『「途上国」の相手に教える チリにおける開発援助の現場から』は、「圧倒的に優位にある存在による援助の持つ暴力性」を鮮明にえがきだしています。
亀井さんの「異文化理解の姿勢を教室で教える ろう者の文化を学ぶワークショップ」は、彼と連れ合いの秋山さんの共著である「手話で行こう」にえがかれた講義保障要求運動の成果なのでしょう。
■はじめる
アクションから見えるフィールドワーカーの姿[亀井伸孝・武田丈]
Action1
■ふみだす
1 遠い世界にふみだす[西崎伸子]
2 身近なフィールドにふみだす[三宅加奈子]
Action2
■まきこまれる
1 暴力問題にまきこまれる[飯嶋秀治]
2 政治論争にまきこまれる[丸山淳子]
Action3
■分かちあう
1 調査対象者と分かちあう[中川加奈子]
2 研究成果を分かちあう[服部志帆]
Action4
■教える
1 「途上国」の相手に教える[内藤順子]
2 異文化理解の姿勢を教室で教える[亀井伸孝]
Action5
■創る
1 ユニバーサル・ミュージアムを創る[広瀬浩二郎]
2 移住者たちと博物館展示を創る[城田愛]
Action6
■手伝う
1 教育プロジェクトを手伝う[吉野太郎]
2 日常生活を手伝う[黒崎龍悟]
Action7
■のぞむ
1 病と共存する社会をのぞむ[西真如]
2 多言語社会のゆくえをのぞむ[米田信子]
Action8
■行き来する
フィールドとホームを行き来する[武田丈]
■おわる
フィールドとホームの急接近の時代に[飯嶋秀治・吉野太郎]
〔Column〕
1 手話の世界に飛びこんだ頃[亀井伸孝]
2 「真実」を受けとめる[有薗真代]
3 映画にされた調査者の告白[寺尾智史]
4 フィールドセンスの教え方[西崎伸子]
5 美味しいフィールドワーク[武田丈]
6 調査者に期待されること[白石壮一郎]
7 「文化」か、それとも「自由」か[白石壮一郎]
8 異質なものを結びつける[西真如]
人びとは、富をいかに分け与え、「自分のもの」として独占しているのか? エチオピアの農村社会を舞台に、「所有」という装置が、いかに生成・維持されているのか、緻密に描き出す。「私的所有」という命題へ人類学から挑戦する、気鋭の力作。
ジュンヌ・アフリーク誌は、Ecobankの調査部長であるEdward George氏と会い、アフリカのコーヒー事情について彼の意見を聞いた。彼によれば、アフリカ産コーヒーはこの数年間、脇役に追いやられていたが、今後はそれらがしっかり移植されたニッチ市場での資本化が期待できるようになってきた、としている。
国際コーヒー機関(OIC)によれば、アフリカの主要なコーヒー生産国は、いずれも年間の生産量が拡大して晴れ間。何が世界市場における過去数十年かの後退局面を反転させる動きとなったのか。アフリカでも、数カ国が長年に亘り、世界の主要なコーヒー生産国に数えられてきた。しかし、これはもう過去の話である(下図参照?)。現在では、ベトナムやブラジルはロブスタ種で、コロンビアとブラジルはアラビカ種で、それぞれ世界市場における主要な生産国となっている。
限定的な供給力
アフリカでのコーヒー生産は増大してはいるが、未だ世界市場に比べるとその拡大ペースは緩やかである。たとえ生産量や輸出量の統計数字が局部的に上向いたとしても、アフリカの生産国が量的な支配力を持つことは難しい。それらの国々が、競合するアジアや南米の国々の生産量や生産コストで太刀打ちできるとは思われない。唯一対抗できるとすれば、ニッチな流通経路といくつかのアフリカ独自の品種に特化することによってであろう。例えば、エチオピアで最も古くからあるコーヒー品種のひとつであるイルガチェフェ(Yirgacheffe)は、ほとんどすべてがサウジアラビアに輸出される。もう一つの生産国ウガンダでは、生産量の多いロブスタ種が、アフリカ向けにはスーダン、エジプト、欧州向けにはイタリア、ドイツ、ベルギー、スペインなどの輸出市場に向けられる。
ロブスタ種を追って
品質が劣るためインスタントコーヒーによく使われるロブスタ種だが、コートジボワールのそれは、地中海の周辺国、即ちマグレブ諸国や欧州向けに輸出される。しかし、輸出の水準ではコーヒー産業は、できることは限られている。まずは国内消費量を増やすことを通して独自の市場への接近を模索しなければならない。特に潜在力の大きい西アフリカで。
他の多くのアフリカの国々のアラビカ種やロブスタ種の生産量は僅かである。これらの国は、ケニアとタンザニアが輸出市場で成功しつつあるように、高級品に注力する戦略が有効であろう。この事例がそのことを顕著に示す。カメルーンのロブスタ種の年間生産量は50万袋と、ベトナムの2,900万袋と比べると大変少ない。しかし、同国の貯蔵庫を訪れた折に、その豆がどこに売られるかと聞いたところ、「ネスレ」ということであった。しかも、ココア豆ではなく、コーヒー豆である。どういうことかといえば、チョコレートに赤っぽい色や風味を与える豆であればスイスの多国籍企業でも買ってくれるということだ。このようなニッチ戦略こそアフリカのコーヒー豆は取るべきであると思われる。【参考訳作成:大竹秀明、AJF】
【参考訳】
エチオピア政府は、穀物テフに関する特許権を持つオランダ企業に対して国際仲裁裁判所で告訴の手続きをするため、検察当局に権限を委任した。
ゲタフン・メクリア科学技術大臣(Getahun Mekuria、工学博士)は、火曜日に連邦議会で科学技術省の9ヶ月間の業績報告を行った際、オランダ企業のHealth and Performance Food International (HPFI)社との長年の論争を解決する努力は実を結んでいない旨を国会議員に伝えた。
ゲタフン大臣によると、エチオピアは、同社が5カ国で登録済みの穀物テフに関する特許権を取り消すよう裁判を求めている。
「過去9ヶ月間、エチオピアの穀物テフの特許権を取り戻すため、あらゆる面で努力が重ねられてきた。しかしながら、科学技術省としては、エチオピアが特許権を取得するためには裁判所を通して正義を勝ち取る他に方法がないと決断するに至った。」
ゲタフン氏によると、残念ながら交渉の結果、政府は本案件を国際裁判所に持ち込むことを検察当局に許可せざるを得なかった。彼はまた、裁判に必要な書類や証拠は検察当局に提出済みであると付け加えた。
以下、略。関心を持ったら、saito@ajf.gr.jpへ連絡下さい。
Attorney General to sue Dutch company over teff patent
世界で最も小さな種子の一つが、エチオピアとオランダ企業との論争の真っ只中にあり、ヨーロッパでも注目を集めている。テフ粉はエチオピアで3千年以上もの間栽培され、国民食の基本となっているインジェラと呼ばれるガレットに使用されている穀物だが、欧州特許庁(EPO)によると、わずか11年前にジャン・ロースジェン(Jans Roosjen)という人物によってオランダで《発明》されたものである。
2007年にこの人物の持つ企業、Health and Performance Food International(HPFI)社に付与されたこの特許は、テフ粉製造の工程及び《非伝統的》な全ての副製品を対象とするもので、これによりエチオピアはヨーロッパ5カ国への輸出ができない状況となっている。
オランダ、ドイツ、イタリア、英国、オーストリアで認められたこの特許により、アディスアベバは相当な経済的利益をもたらしうる市場にアクセスできずにいる。しかしエチオピアは、この地域固有の種子管理の権限を取り戻そうとしており、5月15日にはアディスアベバの検察庁長官が、複数の法的手続きを始めるための許可を政府から取得した。
この問題はとても重要である。なぜなら、世界市場が2020年までに30億ユーロに達する可能性があると言われる《グルテンフリー》製品市場への関心が、ヨーロッパや米国で高い現状を考慮すると、食物繊維やミネラルが豊富で元々グルテンを含まないこの種子の輸出ポテンシャルは高いだからだ。
以下、略。関心を持ったら、saito@ajf.gr.jpへ連絡下さい。
En Ethiopie, la guerre du teff aura bien lieu