一流選手育てたい」 日本人がアフリカで指導
2007年8月27日 06時28分
アフリカの陸上選手が経済的な問題などから国外流出するケースが目立っている。北東部の小国・ジブチも例外ではなく、競技レベルが低下。そんな中、青年海外協力隊から派遣された日本人コーチ渡辺森彦さん(24)が「将来は一流選手を」と奮闘している。
ジブチからは男子800メートルのマハムッド・ファラー選手(18)と女子100メートルのファティア・アリ選手(19)が世界選手権に出場。しかしともに参加標準記録を突破しておらず、幅広い参加国を求めるための「特別枠」だ。
フランスの旧植民地で日本の四国程度の面積に、約80万人が生活する。かつてはフランスの援助もあり、ソウル五輪の男子マラソンでは銅メダルを獲得。しかし1990年代に有望選手やコーチが次々と国を去った。
現在は国内のクラブチームすべてがボランティアで構成され、継続的に指導するコーチの確保すら難しい状況という。
体育教師を目指していた渡辺さんはジブチが指導者を探しているのを知り、「陸上王国のエチオピアやケニアに近く潜在能力の高い選手がいるはず。自分が育てたい」との思いで、昨年6月に見知らぬ土地へ足を踏み入れた。
(共同)
米国防長官、アフガニスタンを電撃訪問
カブール(CNN) ゲーツ米国防長官は3日、訪問先の東アフリカ・ジブチから、予告なしにアフガニスタン入りした。ゲーツ長官のアフガン訪問は就任以来3度目。
ゲーツ長官は4日、首都カブールで駐留米軍の司令官らと意見を交換する。その後パキスタン国境に近いコストの前線作戦基地に空路移動し、現地の米軍関係者らと会い、アフガニスタンのカルザイ大統領やワルダク国防相と記者会見する。
コストはイスラム教スンニ派とシーア派の衝突が度々発生している地点であり、その位置や多宗教社会である点が戦略面で重要とみられている。米国防省の統計によると、昨年までは事件の発生頻度が1週間に1度だったが、このところ1カ月1回まで低減している。
武器なき戦い ジブチの米軍獣医チーム
2007.12.28 16:10
【ジブチ(東アフリカ)=USA TODAY(ジュリアン・ペケット)】ラルフ・ビューラン2等曹長は炎熱のアフリカの太陽の下で狙いを定め、迅速かつ正確にうたなければならない。といっても銃ではなく、ヤギに対するワクチン。ビューラン曹長は、ジブチに派遣された米軍の獣医チームの一員なのだ。
アフリカ東岸のジブチは、米マサチューセッツ州ほどの面積しか持たない小さなイスラム国家。2001年、アフガニスタンのタリバン政権を転覆させた米軍は、テロリストたちがジブチに逃亡すると読んで2000人の兵を送り込んだ。しかし、テロリストは姿を見せず、軍の使命は変更された。
現在、「アフリカの角」と名付けられた現地の共同統合機動部隊は米大使館、米国際開発局などと共同歩調をとっている。部隊の使命は井戸掘り、学校建設、子供や家畜へのワクチン接種など。そのため、獣医や井戸掘りの専門家など目的に応じた多彩な人材が集められている。
こうした奉仕活動に対し、イスラム教徒を秘密裏に拘束、暴力を加えたことを挙げて米軍を批判する声が一部にある。また、石油などの天然資源を狙った戦略との指摘もある。
だが、米国は貧困と暴力、無秩序が過激派を醸成するとして、現地の生活水準向上に焦点を当てているようだ。原住民の1人で米軍の活動を監視しているモハメド・バッソマさんは「われわれは家畜とともに生活している。家畜が病気になれば、われわれも病気になるのだ」とワクチン接種に感謝している。
(c) 2007, USA TODAY International. Distributed by Tribune Media Services International.
今晩の話題 (2008年1月8日 夕刊 1面)
「各国の新年」
「セィンナットゥ ワナーグサン」(ソマリ語)。「ホンゲラ ムワカ ムピャ」(スワヒリ語)。われわれにはなじみの薄い言葉だが、それぞれ、ジブチ共和国とタンザニアでの「あけましておめでとう」という意味だ。
JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊の県出身メンバーが寄せた世界の正月の特集(三日付朝刊)で紹介したあいさつの一部だ。
各国の習慣で、面白い、と思ったのは日本と同じようにお年玉があることだ。バングラデシュやタンザニアなどでは子どもたちの楽しみになっているらしい。
新年の縁起の担ぎ方もそれぞれだ。特集では紹介できなかったが、ブラジルで日本語教師として頑張っている大城工さんによると「七つの波」というものがあるそうだ。
元旦の午前零時を回った後、海岸の波打ち際で波を七つ跳び越えると、良い一年を迎えることができるという。大城さんは「これがブラジルの一般的な新年の迎え方です」と伝えている。「でも、ビーチにいなかったらどうなるのだろう」と、つい考えてしまったが、お祭り好きといわれるお国柄を表す習慣と言えそうだ。
特集は、世界は近いようで広いとも感じさせてくれるエピソードにあふれている。
その中で、各国で同じなのは正月は家族や親せき、友人が集い、食卓を囲みながらにぎやかに過ごすという点だ。新たなスタートに当たって、まず自分たちの足元のきずなを確認するというのは万国共通のようだ。(金城雅貴)
サッカー用品をアフリカへ 「81FC刈谷」の子どもらが箱詰め
2008年1月16日
愛・地球博でフレンドシップの交流相手国だったアフリカ・ジブチ共和国にサッカー用品を送るため、刈谷市内のサッカーチームの子どもたちが使わなくなったユニホーム約200枚を集めた。すでに箱詰め作業は終え、同市が提供した新品のボールやユニホームなどと合わせて3月中旬に到着するよう発送する。
ジブチでは、サッカーやバスケットボールが盛ん。刈谷市はスポーツ振興で海外協力を求めていることを知り、サッカー用品を提供することにした。市内のサッカーチーム「81FC刈谷」が協力し、所属する約150人の子どもたちが中心になって使わなくなったシャツやパンツを集めた。
同市民ボランティア活動支援センターで箱詰め作業があり、少年サッカーチームの選手や市職員ら十数人で輸送専用段ボール箱に集めたユニホームや新品のボールなどを収めた。参加した東刈谷小学校の池幹人君(9つ)は「(ジブチの子どもたちに)サッカーやスポーツを頑張ってほしい」と話していた。市からは84人分のユニホームやボール220個などが提供された。現地で刈谷の名前を冠した大会も開かれる予定で、大会用トロフィーも送る。
(吉田幸雄)
【安全保障読本】普通の国・フランスと異常な国・日本
2008.2.28 18:47
海上自衛隊の補給艦が、インド洋で対テロ阻止活動中の各国海軍に対する補給活動を4カ月ぶりに再開した。海自が不在の間、中東・インド洋におけるフランスの動きには目を見張った。仏軍はインド洋において対テロ活動を実施し、空母も4回派遣。アフガニスタンでは1000人規模の陸上兵力を展開し、空軍も兵員を輸送している。イラク攻撃に反対しながら、フランスの国際社会への影響力はむしろ強まっている。影響力を断ち、自ら「失われた4カ月」をつくった日本とは対照をなす。自衛隊は、空母や海兵隊を保有する仏軍のように遠征型ではないが、規模はほぼ同じだ。この際立った「対照」は、外交と軍事が一体となり国益を追求する「普通の国」と、それをしない「異常な国」の差である。
フランスは表向き国連重視の立場から、米軍中心のイラク攻撃に反対したが、イラクにおける自国のエネルギー権益を守るためだったとされる。民主党も国連決議がない、海自のインド洋派遣は憲法違反だと反対したが、政権奪取に向けた政略でもあった。ただし、国家が「国益」で行動することは当然だが、外交・安全保障に関する限り、政党は「党益」で行動していいはずがない。
もっとも、イラク攻撃に反対した仏政府でさえ、海自の補給活動を、日本国憲法が尊ぶ「国連憲章に十分沿っている」と明言する。そればかりか、仏海軍は昨年11月、インド洋に面するソマリアに対し食糧援助を続ける国連世界食糧計画(WFP)の支援船を、海賊の襲撃から護(まも)るべく哨戒を始めた。ソマリア沖では、昨年初めからこの時点まで22件の襲撃が発生、内2件が支援船に対しであったのだ。ソマリアの隣には仏領だったジブチがあり、仏陸空軍が国防の一端をになう。仏権益保護が派遣目的だとしても国連重視の姿勢は貫かれた。
「普通の国」は集団的自衛権も行使できる。サルコジ仏大統領は1月、最大500人常駐の仏陸海空軍基地をアラブ首長国連邦(UAE)に設ける合意文書に署名した。仏軍のペルシャ湾岸常駐は初めてで、原油輸送の要衝ホルムズ海峡をにらむことになる。石油市場への影響力を手に入れたと、言い換えてもよい。
「普通の国」にとり派兵は難しくはない。軍事行動は「軍隊を何の目的で使うか」が刷り込まれた、平時の軍法で相当部分をカバーできるからだ。事態ごとに特別措置法を制定する「異常な国」とは対応力が違う。自民党などで協議されている恒久法が制定されれば、特措法による対応より派兵は迅速になろう。しかし、自衛隊の行動を、軍法にあらかじめ定めた軍事行動ではなく、行政事務と解しているために、恒久法が必要になる。恒久法もまた「異常な国」の証左なのだ。
常駐要請はUAEの側からだった。背景には、イランへの湾岸諸国の懸念がある。特にUAEは、イランとペルシャ湾の3島を巡り領有権を争う。湾岸ではイラクを除くと、米軍がバーレーンやカタール、サウジアラビアなど5カ国に2000人以上を常駐、英軍もバーレーン、カタール、オマーンに空軍を投入している。米英軍がイランと戦えば「仏軍もほぼ自動的に巻き込まれる」(仏フィガロ紙)可能性は否定できない。米国はイラン攻撃に際し、フランスとの合意形成が不可欠となったのだ。
仏軍常駐でUAEは、仏製兵器の導入に、より積極的になるだろう。UAE軍は既に、ルクレール戦車をフランスとほぼ同数の約400両、ミラージュ戦闘機も約70機保有。仏制式小銃も装備する。米国と、フランスを筆頭とする欧州製兵器の、UAEでのシェア逆転すら観測されている。
両国は原子力発電開発協定まで結んだ。脱石油後を模索する中東へ、日本など先進各国が売り込みを激化させる中、軍常駐は有力な援護射撃となったようだ。小勢でも、海外の戦略拠点に軍旗を揚げることはかくも大きな国益をもたらす。
ところで先月、UAEは仏ルーブル美術館分館建設に向けた調印式を行った。「普通の国」は外交・軍事ばかりか、文化まで国益のために動員している。「異常な国」には、到底まねできない外交力である。
ソマリア海賊:ジブチ、海自支援表明
ソマリア沖海賊対策を検討する与党プロジェクトチーム(PT)の中谷元・元防衛庁長官らは11日、日本政府が海自艦やP3C哨戒機の拠点として想定しているジブチでゲレ大統領と会談、大統領は「(港など)すべての施設を日本に使ってもらいたい」と述べ、日本の海賊対策への支援を約束した。
今後、ジブチが日本に対して港や航空機のための格納庫などの施設を提供することを前提に、両政府間の実務者レベルの協議が始まる。【共同】
毎日新聞 2009年2月12日 東京夕刊
海賊対策:外務省がジブチに連絡事務所設置へ
外務省は13日、海賊対策のため海上自衛隊の護衛艦が派遣される東アフリカ・ソマリア沖に近いジブチに、連絡事務所を設置することを決めた。外務省職員数人を17日から派遣し、常駐態勢で自衛隊とジブチ政府との連携・調整などにあてる。無政府状態のソマリアと隣国ジブチには日本の在外公館がないため、連絡事務所を設置することになった。
毎日新聞 2009年3月13日 19時36分
海賊対策、ジブチ駐留で協定 政府、月内にも締結
政府はアフリカ・ソマリア沖での海賊対策で自衛隊の拠点となるジブチと、自衛隊員の同国駐留に関する地位協定を月内にも締結する方針を固めた。すでに派遣した護衛艦に加え、4月以降にもP3C哨戒機を追加投入するのに備えた措置。自衛隊の海外派遣での地位協定は、イラク復興支援に際してクウェート政府と結んだ例に続いて2つ目となる。
政府は13日に現行法に基づいて海上警備行動を発令し、海上自衛隊の護衛艦2隻を14日にソマリア沖に出港させた。これに加えて4月以降にP3C哨戒機を投入。護衛艦とP3Cによる上空からの警備とあわせ、同海域で日本の船舶を海賊行為から守れるようにする。(20日 07:00)
ジブチ外相:海賊対策、日本の協力求める
海賊対策でソマリア沖へ派遣された海上自衛隊護衛艦の寄港地となるアフリカ東北部ジブチのユスフ外相は4日、東京都内で毎日新聞と単独会見し「海賊行為はソマリアで政治が崩壊した後、表面に出た“症状”だ」として、根本解決には、ソマリア政府や経済の再建と治安回復に日本政府の協力が必要と訴えた。
外相は「ソマリアで職を失った人々が生計を立てるために海賊になっている」と指摘。海賊被害による船舶の保険料高騰が原因で、貿易中継地・ジブチ港の08年の貨物取扱量が前年比で半減したことをあげ「(海賊は)ジブチと、周辺のアフリカ諸国の経済に深刻な打撃を与えている」と述べた。自衛隊の活動について「国連安保理常任理事国入りを目指す日本が、世界の平和と安全保障にかかわる絶好の機会」と歓迎した。【花岡洋二】
毎日新聞 2009年4月4日 22時31分(最終更新 4月5日 1時36分)
ソマリア海賊:海自派遣 中曽根外相、ジブチ外相と地位協定署名
中曽根弘文外相は3日、アフリカ・ジブチのユスフ外相と外務省で会談し、海賊対策としてソマリア沖に派遣した海上自衛隊員の法的地位を確保するための地位協定に署名した。
活動中の護衛艦2隻が寄港するほか、海賊対処法案の成立を待って5月にも派遣する予定のP3C哨戒機がジブチに拠点を置くために協定が必要とされる。
会談ではジブチへの食糧援助など約18億円の無償資金協力も決めた。【犬飼直幸】
毎日新聞 2009年4月4日 東京朝刊
政府、ジブチの海上警備支援 資金協力など検討
政府はアフリカ・ソマリア沖での海賊対策で自衛隊の拠点となるジブチの海上警備能力の強化を支援する方針を固めた。同国の要請を受け、今月中旬にも現地に調査団を派遣して資金協力や技術支援など具体策の検討に着手する。アデン湾内での海賊の活動は同国経済に悪影響をもたらしており、日本の支援を受けて海上警備能力を高め、海賊対策に参画する狙いだ。
これに関連して中曽根弘文外相は3日、ジブチのユスフ外相と外務省内で会談し、自衛隊員らの同国駐留に関する地位協定に署名した。政府はすでに派遣した海上自衛隊の護衛艦2隻に加え、近くP3C哨戒機も追加投入する方針。自衛隊員や海上保安官のジブチ国内での法的地位を確保して、海賊対策で同国に入国した際に円滑な活動ができるようにした。(07:00)
海賊対策:ソマリア派遣艦がジブチ入港
【ジブチ(アフリカ東部)和田浩明】東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で派遣中の海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の2隻が6日午前7時45分(日本時間同日午後1時45分)、活動拠点の一つジブチ港に補給のため入港した。
派遣部隊は、海自の「特別警備隊」を含む自衛官約400人と海上保安官8人で構成。日本関係の自動車専用船など計10隻をアデン湾で護衛する3回の初任務を終えたばかり。
3日夜(日本時間4日未明)には、護衛対象である日本船舶外であるシンガポール船籍の依頼で、海賊らしき船を追い払う場面があった。
派遣部隊はジブチ政府の歓迎を受け、隊員らと面会したゲレ大統領は「大国日本の海賊対策への参加は、世界の平和への貢献になる」と語った。
ジブチは紅海に面する人口約80万人の国。
× ×
一方、防衛省海上幕僚監部は6日、派遣部隊が3日夜にシンガポール船籍のタンカーからの依頼で、不審船を追い払う際の映像を公開した。「さざなみ」が不審船4隻に5〜6キロ程度まで接近し、サーチライトを照射。遠方まで音声が届く特殊なスピーカーで警告し追い払う様子を映している。【本多健】
毎日新聞 2009年4月6日 21時14分(最終更新 4月6日 21時20分)
護衛艦「さざなみ」がジブチに寄港
【ジブチ=加藤賢治】アフリカ・ソマリア沖で海賊対策にあたる海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が6日、燃料や食料の補給のためジブチに寄港した。
「さみだれ」は5日に入港しており、3月30日に日本関係船団の警護を開始した2隻が沿岸国に寄港したのは初めて。指揮を執る五島浩司・第8護衛隊司令(50)は記者団に、「すべての船から感謝のメールが届き、船員の励みになっている」と述べた。
2隻はこれまでに、アデン湾のオマーン・サラーラ沖―ジブチ沖間の東西約900キロの海域で3回、計10隻を警護。今月4日、近くを航行中のタンカーから、不審船4隻に追われているとの無線連絡を受け、「さざなみ」を現場に急行させたが、五島司令は、遭難船舶の救助義務を定めた船員法14条を根拠に、「特に支障はなかったと思う」と述べた。
五島司令の表敬訪問を受けたジブチのゲレ大統領は、「日本は古い友人。出来る限りのことをしたい」と海自支援を約束した。
護衛艦2隻は、7日にジブチ港を出港、活動を再開する。ジブチなど沿岸国には2〜3週間に一度、燃料や物資補給のため寄港する。
(2009年4月6日21時31分 読売新聞)
海賊対策のEU旗艦公開 ジブチ、一部報道陣に
2009.4.6 08:41
ソマリア沖海賊対策に参加する各国が艦船の拠点を置いているアフリカ東部ジブチのジブチ港で5日、欧州連合(EU)の対海賊作戦「アトランタ作戦」の旗艦の内部が一部報道陣に公開された。
公開されたのはEUの各国軍からなる艦隊の旗艦、ギリシャのフリゲート艦「プサラ」。ギリシャ海軍関係者が艦橋や艦載ヘリコプターなどについて記者らに説明した。
昨年12月にアトランタ作戦が開始されて以降、ギリシャ出身のパパイオアノ准将が司令官として、ソマリア沖周辺に展開するEU艦隊をプサラから指揮してきた。
プサラは6日、約4カ月の旗艦任務を終了、スペインのフリゲート艦に引き継ぎ、パパイオアノ准将は司令官最終日となる5日「ソマリア近海で昨年12月以降、拘束された海賊56人のうち、約半分はアトランタ作戦の手柄だ。作戦は成功している」と手応えをのぞかせた。(共同)
ジブチ:「希望がない」肩落とす母親――ソマリア難民
東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で海上自衛隊派遣部隊が補給などの主要拠点とするジブチ。そこには、海賊を生んだソマリア内戦から逃れた難民ら9000人以上が暮らすキャンプがある。「故郷に戻りたい。でも、危険過ぎて……」。過酷な日々を送る難民たちの苦悩は、ソマリア安定の必要性を浮き彫りにしている。【アリアデ難民キャンプ(ジブチ南部)で和田浩明】
◇食料も水も不足――キャンプ
午前中なのに気温は既に38度。周囲には、酷暑に焼き固められたような赤茶けた岩山が立ちはだかる。ジブチの首都から南に車で約2時間半のアリアデ難民キャンプ。「食べ物も、薬も足りない。なんとかならないの」。ネイモ・シーク・アブドラヒさん(35)は沈痛な面持ちで訴えた。足元には、息子のアブデル君(6)がうずくまる。神経の病気で普通の食物がうまく飲み込めないという。
夫のイブラヒム・モハメド・オマーンさん(47)も国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)ジブチ支所の保護官、ハッサン・サイード・モハメドさん(44)に窮状を訴える。
キャンプはUNHCRとジブチ政府の難民支援機関ONARSが運営する。ソマリアや同国北部で独立を宣言したソマリランド、エチオピア、エリトリアの難民9158人(3月1日時点)が暮らす。6割超がソマリア中、南部出身だ。
子供7人を抱えるネイモさん一家は、ソマリア暫定政府軍と武装勢力の戦闘に巻き込まれかけ08年9月に首都モガディシオ近郊の自宅を離れ、徒歩やヒッチハイクなどで10月にジブチにたどり着いた。キャンプでの暮らしも容易ではない。1人あたり1日2100キロカロリーに当たる小麦粉や豆類、砂糖などが毎月1度配給されるが、他の必要品購入のため一部を売らざるを得ず食料は不足しがちだ。
灯油の配給を埋め合わせるため、枯れ木探しが必要だ。飲料水の供給も不十分で、不衛生な浅い井戸の水を使う人も多い。UNHCRのハッサン保護官は「下痢や感染症にかかる人もいる」と話す。多くの人は木の枠組みをプラスチックシートや毛布で覆った手作りテントで暮らす。
キャンプには、日本の国際医療救援団体「AMDA」が診療所を運営、小学校や職業訓練施設もある。最近、ようやくテレビが見られるようにはなった。「ここには安定はあるが、希望がない」。ネイモさんは肩を落とした。
UNHCRジブチ支所のシャナ・カニンダ上級保護官によると、ジブチに逃れる難民は一時より減少したものの、今も週15人程度いる。「モガディシオの状況が改善しない限り、難民はもっと増える」と警告する。
毎日新聞 2009年4月12日 東京朝刊
邦人乗ったヨット襲撃 紅海で海賊、全員無事
2009.4.29 10:14
イエメン沖の紅海で26日、日本人5人を含む7人を乗せたトルコのヨット「アリバ3」(クリス・エドワード船長、全長23メートル)が、海賊の襲撃を受けたことが28日、分かった。アリバ3は海賊の船を振り切り、28日夕、ジブチに入港。7人ともけがはなく無事という。
共同通信の電話取材に応じた乗員のテレビ番組制作会社社長、山下雅之さん(48)=東京都杉並区=によると、襲撃されたのは26日午前11時(日本時間午後5時)ごろ。アデン湾に近いイエメン領ハニッシュ諸島で、強風と高波を避け島陰に入ろうとしたところ、砂浜にいた漁船のような船から発砲を受けた。
この船が近づいてきたため沖へ全速力で逃げたが、仲間とみられる船も加わり6隻以上から約30分間にわたり銃撃を受けながら追跡された。(共同)
海賊対策:P3C、厚木基地を出発…36人乗せジブチへ
東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策に派遣される海上自衛隊のP3C哨戒機2機が28日、特別編成された航空部隊員36人を乗せ、拠点となるジブチに向け、海自厚木基地(神奈川県)を出発した。月内にも現地に到着し、3月に派遣された護衛艦と連携、6月上旬にも日本関係船舶の護衛任務に入る。
北朝鮮の不審船や中国の艦艇を監視するP3Cが、実際の任務で海外派遣されるのは初めて。北村誠吾・副防衛相の訓示後、留守家族や日本船主協会の関係者ら約700人が見送った。隊長を務める福島博1等海佐は「海賊の保持している武器もしっかり把握し、国民の負託に応えたい」と抱負を語った。
防衛省は周辺の航行船舶に対する情報提供や各国の哨戒機部隊との連携も検討している。【本多健】
毎日新聞 2009年5月28日 10時58分(最終更新 5月28日 12時09分)
ソマリア海賊:海自P3C到着 海賊対策、活動拠点ジブチに
【ジブチ共同】ソマリア沖の海賊対策で、自衛隊法の海上警備行動に基づき船舶の警護に当たる海上自衛隊のP3C哨戒機2機が、航空部隊の隊員36人を乗せ31日午前(日本時間同日午後)、ソマリアの隣国で活動拠点となるジブチの空港に到着した。P3Cが実際の任務で海外に派遣されたのは初めて。
訓練をした上で、ソマリア沖アデン湾上空からの警戒活動を6月中旬までに開始する。収集した不審船情報は、3月から日本関連の船を同湾で護衛している海自護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」のほか、日本関連船や外国軍にも提供。自衛隊による海と空からの警戒態勢が整う。
派遣された航空部隊の指揮官、福島博司令は到着後、「機上から広大なアデン湾を見て、P3Cの高い哨戒能力が求められていると感じた。国民の負託に応えるよう、懸命に活動したい」と語った。
2機は海自厚木航空基地(神奈川県)所属。派遣部隊は海自隊員約100人と、ジブチの空港で機体の警備に当たる陸自隊員約50人からなる。
防衛省は5月18日、部隊の受け入れ準備などでまず先遣隊約40人を派遣、同28日にP3Cが出発した。他の隊員はチャーター機などで既に現地入りしている。
現在、上空からの海賊船の警戒は護衛艦の搭載ヘリコプターが行っているが、海自は「早期発見による抑止と排除」を重視。飛行可能時間や航続距離が長いP3Cを派遣した。
毎日新聞 2009年6月1日 東京朝刊
ソマリア海賊:海保航空機をジブチに派遣
東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で、海上保安官が海賊を拘束して日本に移送するケースが発生しうることから、海上保安庁は今月、ソマリアの隣国・ジブチに海保の航空機を飛行させ、手続きなどの確認をする。岩崎貞二長官が17日の会見で明らかにした。航空機は22〜26日、羽田航空基地からインド経由でジブチを往復する。
また、岩崎長官は、北朝鮮制裁決議を受け公海上での船舶検査を可能にする特別措置法案について「いわゆる平時での検査になるので(実施主体が)海保もありうる」と述べた。【石原聖】
毎日新聞 2009年6月18日 東京朝刊
更新2009年07月30日 10:37米国東部時間
ジブチに自前施設建設 海賊対策で政府
政府は30日、ソマリア沖の海賊対策にあたる自衛隊が拠点とするアフリカ東部ジブチにP3C哨戒機の駐機場や隊員宿舎など自前の施設を建設する方針を固めた。これまでは民間や米軍の施設を借りていたが、本格的な態勢をとることで国際貢献に取り組む姿勢をアピールする狙いもある。
海賊対策で派遣しているP3C哨戒機や護衛艦の活動根拠は、自衛隊法に基づく海上警備行動から6月に成立した海賊対処法に切り替えられた。政府筋は「活動本格化に向け米軍からも独自施設を求められており、来年には完成させたい」としている。
現在、ジブチに駐留している陸上、海上自衛隊員約150人はジブチ空港近くの米軍宿舎に居住。P3C2機の駐機場やけん引車やトラックなどを収める格納庫はアラブ首長国連邦(UAE)の首都ドバイに本拠を置く空港管理会社から借りている。政府筋によると、空港周辺に駐機場、宿舎を建設する方向で空港管理会社と協議を進めている。(共同)
海賊対策の海自部隊、防衛副大臣が視察へ
榛葉賀津也防衛副大臣は7日から14日までの日程でタイ、ジブチ、バーレーンを訪問する。
ジブチでは、アフリカのソマリア沖で海賊対策にあたっている海上自衛隊の部隊を視察、バーレーンでは国際会議に出席する。
当初は北沢防衛相が中東訪問を検討していたが、日程調整がつかず断念した。
(2009年12月5日22時24分 読売新聞)
デモ、クウェートやジブチも…バーレーン軍発砲
【エルサレム=加藤賢治、マナマ=佐藤昌宏】北アフリカと中東の反体制デモや衝突は18日、新たにジブチやクウェートでも発生し、域内で拡大を続けている。
バーレーンの首都マナマ中心部の「真珠広場」付近では18日夕、デモをしようとしていたイスラム教シーア派の群衆数百人に軍が発砲し、シーア派側によると、少なくとも45人が負傷した。
シーア派は、軍が実弾を使用したとして、負傷者のレントゲンや、摘出された弾丸の写真をインターネットで公開。スンニ派主導の体制に反発を強めるシーア派を中心とするデモ隊は、真珠広場を15日に占拠したが、17日未明に治安部隊が強制排除していた。
一方、AP通信によると、リビアでは反体制派が北東部の都市ベイダを支配下に置き、軍の滑走路を破壊したほか、体制側の民兵2人を広場で処刑した。軍や体制派民兵がベイダの包囲を始めたとの情報もある。
(2011年2月19日14時00分 読売新聞)
反政府デモ:クウェートやジブチに波及
【カイロ伊藤智永】東アフリカ・ジブチの首都ジブチで18日、ゲレ大統領(63)の辞任を求める数千人のデモが起きた。反政府デモが続くイエメンの対岸に位置し、中東の動きが波及したとみられる。与党連合が議会全議席を独占し、大統領が3選に向けて昨年、憲法を改正したため、野党連合が「3選反対」を掲げて呼び掛けた。
一方、ロイター通信によると、中東の産油国クウェートの東部ジャハラで18日、無国籍の遊牧民系住民1000人以上が選挙権の付与などを求めるデモを起こした。アラブ諸国での民主化デモに触発された可能性がある。
毎日新聞 2011年2月19日 東京夕刊
民主化デモ、中東全域に サウジやモロッコも
2011/2/20 19:30 (2011/2/20 22:44更新)
【ドバイ=松尾博文】エジプトのムバラク大統領辞任から21日で10日、反政府デモが中東全域に広がった。エジプト政変に共鳴する形で各地で次々と火の手があがり、うねりは大西洋岸からペルシャ湾岸に及んだ。各国の事情を背景に要求には濃淡があるが、政権側の対応次第では体制が一気に揺らぐ可能性もある。“同時多発”デモは世界有数の資源地帯である中東の流動化につながり、世界経済の不安定化を招く危険を秘めている。
リビアやバーレーンのデモが激しさを増した19日、東アフリカの小国ジブチでもゲレ大統領の辞任を要求するデモ隊と治安部隊が衝突、少なくとも1人が死亡した。18日夜、モロッコ北部のタンジールでも群衆が警察署を襲撃。20日には首都ラバトで約2千人が集まり、国王の権限縮小などを訴えた。
1月14日のチュニジア政変を発端とする混乱は、2月11日のエジプト政変を経て大西洋岸から東アフリカ、ペルシャ湾岸まで広大な地域に広がった。
潤沢な石油収入で国民生活の底上げを急ぐ湾岸産油国も例外ではない。世界最大の産油国サウジアラビアでも17日にイスラム教シーア派住民による小規模なデモが起きたとされる。
各国で抑え込まれていた不満が、エジプト政変を受けて一斉に噴き出した。抗議行動は域内で互いに刺激し合いながら相乗的に拡大、収束を難しくしている。
ただ、要求の内容や事態の深刻度は各国間で大きな差が存在する。首都トリポリと騒乱が続く第2の都市ベンガジの間の歴史的な“東西格差”が背景にあるリビアや、少数派のスンニ派支配層が多数派のシーア派を統治するバーレーンでは政権打倒を目指す過激な主張が台頭している。
一方、オマーンやサウジのデモは政府を批判するスローガンはなく、エジプトのような国民運動に発展する可能性は低い。
バーレーンでは20日もデモ隊が首都マナマにある広場の占拠を続けた。ロイター通信によると、バーレーン政府は19日夜、サルマン皇太子が野党勢力と対話を始めたと発表。主要労組は20日、平和的なデモ実施の要求が聞き入れられたとしてストライキを中止するなど事態の打開を探る動きもある。
ただ、チュニジア政変も最初は物価上昇や失業に抗議するデモが政府の弾圧を受けて全土に拡大した。中東諸国はいずれも急増する若年層の高い失業率や物価高に直面する。独裁的な指導者が長期政権を維持する国も多い。政府の対応次第で状況は一変する可能性がある。
湾岸諸国でのデモ、対応協議へ 米統合参謀本部議長が歴訪
2011/2/21 10:06
【ドバイ=太田順尚】米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長は20日、中東の湾岸諸国歴訪を開始し、最初の訪問国であるサウジアラビアの首都リヤドを訪れた。バーレーンで民主化要求デモが拡大し、世界最大の産油地帯で米国の中東戦略上の最重要地域である湾岸諸国の安定を揺るがしかねない情勢になっており、関係国と対応策を協議するとみられる。
議長はリヤドで記者団に「(中東全域への)デモ拡大の速度に衝撃を受けている」と述べ、中東の不安定化に危機感を表明。湾岸諸国歴訪はデモ表面化前から予定されていたが、政府や軍高官と会談し「現在起きていることについて協議し、理解する」ことが最優先事項に変わったとした。
デモ隊が首都広場を占拠するバーレーンは、米海軍第5艦隊が司令部を置き、安定的な原油輸送路を確保する戦略上の要。混乱を沈静化できず、サウジやクウェートに飛び火したデモも拡大すれば、親米湾岸諸国の安定が揺らぎ、イランをにらんだ米国の中東戦略は大きな打撃を受ける。
議長は湾岸諸国への「支持を改めて約束する」とした上で、政府と反政府勢力の平和的な歩み寄りが「絶対的に不可欠」と強調。サウジに続き訪問するカタールやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェートでも、デモの波及や拡大阻止に先手を打つよう求めるとともに、強硬手段の自制に理解を求めるとみられる。
議長は湾岸歴訪後、デモが波及した北アフリカのジブチも訪問する予定。同国はソマリアと隣接し、紅海やアデン湾を挟んでイエメンと向き合う要衝にあり、米アフリカ軍が基地を置いている。
スーダン大統領を拘束せず ICC加盟国のジブチ
2011/5/9 9:53
【ナイロビ=共同】ジブチからの報道によると、ダルフール紛争をめぐる戦争犯罪などで国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領が7日、ジブチを訪問した。ジブチはICC加盟国でバシル氏を拘束する義務を負っているが、入国しても拘束しない方針を表明している。
ジブチで先月行われた大統領選で現職のゲレ氏が3選。バシル大統領は8日、ゲレ氏の就任式典に出席した。
バシル氏のICC加盟国訪問は昨年のチャド、ケニアに続き3カ国目。アフリカ連合(AU)はバシル氏への逮捕状に反対を表明、協力拒否を打ち出している。
ジブチでは2月、チュニジアやエジプトの政変を受け、ゲレ氏の3選出馬に反対する反政府デモが起きた。
東アフリカ、過去60年で最悪の干ばつ 飢饉がせまる
2011年06月29日 14:10 発信地:ジュネーブ/スイス
【6月29日 AFP】東アフリカは「アフリカの角」を中心に過去60年で最悪の干ばつに見舞われており、約1000万人が何らかの影響を受けているとする報告書を、国連人道問題調整事務所(UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs、OCHA)が28日発表した。一部地域は飢饉(ききん)の瀬戸際にあるという。
報告書によると、雨季に雨が少なかったことに加えて食料価格が高騰したため、ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、ウガンダなどでは深刻な食糧不足に陥っている。
食料価格は現在も上昇を続けており、ケニアの一部地域では穀物価格が過去5年間の平均を最大80%も上回り、エチオピアでは消費者物価指数が約41%も跳ね上がった。
家畜のウシやヒツジが死ぬ確率も平年より高くなっており、一部地域では死亡率が60%に達している。その結果、栄養不良の割合も増え続けている。
■難民増加にも拍車をかける
干ばつに関連した避難民の数も増加しつつある。内戦が続いているソマリアでは、干ばつが引き金となり、今年に入って月に平均1万5000人がケニアやエチオピアなどの隣国に避難している。
一方でジブチやエチオピアも干ばつの影響を受けているため、難民の流入はこれらの国々の食糧事情をさらに悪化させることになりかねないという。
OCHAは、こうした状況にかんがみ、食糧援助を増やすよう支援国に求めている。(c)AFP/Hui Min Neo
2011年7月7日23時28分
ジブチに自衛隊初の海外拠点オープン 海賊対策で
部隊の看板が小川勝也防衛副大臣から活動中の航空隊の司令に授与された=7日午前8時40分ごろ、ジブチの自衛隊新活動拠点の格納庫内、渡辺写す
ソマリア沖・アデン湾での海賊対策のため、自衛隊がアフリカ東部のジブチに開設した哨戒機の拠点施設の開所記念式が7日、開かれた。派遣の長期化を見越して駐機場や格納庫、隊舎などの施設を約47億円かけて整備。自衛隊にとって初めての本格的な海外拠点となる。
式典に出席した小川勝也・防衛副大臣は「自衛隊の海外任務の歴史の中でも画期的な意義を持つ。我々はよりいっそう海賊対策に励む決意を表明しなければならない」と述べた。
式典には、ジブチのディレイタ首相のほか、海賊対策に共同であたっている米軍、仏軍の司令官ら計約350人が参加した。
ジブチの自衛隊海外拠点で開所式…海賊対策強化
【ジブチ=田尾茂樹】ソマリア沖アデン湾での海賊対策を強化するため、日本政府が東アフリカ、ジブチに設置した自衛隊の活動拠点の開所式が7日、首都ジブチ市で開かれた。
P3C哨戒機の整備用格納庫も保有する、自衛隊にとっては事実上初めての本格的な海外駐留基地で、将来は、中東・アフリカでの国際平和協力活動の拠点としての役割も期待される。
新たな拠点はジブチ空港の北側に位置し、司令部庁舎、隊員宿舎、食堂、体育館、浴場なども持つ。建設費は約47億円。2009年から、護衛艦2隻による民間船舶警護とP3Cでの上空からの警戒監視を周辺で行ってきた自衛隊は、これまで空港南側の米軍基地の一部を間借りしていた。これで長期間の活動が可能となる。
(2011年7月7日23時55分 読売新聞)
政府、海賊対処拠点 ジブチに防衛駐在官 アフリカの角、情報キャッチ
産経新聞 7月2日(月)7時55分配信
■海自活動 1年延長方針
アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動を行う海上自衛隊の拠点があるジブチの日本大使館に、政府が防衛駐在官1人を派遣する方針を固めたことが1日分かった。海賊対処法に基づく海自の活動は24日に期限が切れるが、政府は1年間延長する方針。活動の長期化を見据え、ジブチに拠点を置く各国駐在武官(防衛駐在官に相当)の「情報サークル」に加わることで、中国が資源活動を活発化させるアフリカや、政情が不安定化する中東の情報収集体制を強化する狙いがある。(峯匡孝、杉本康士)
在ジブチ日本大使館には4月から、防衛省職員が外務省に出向して2等書記官として駐在。ジブチ空港に隣接する自衛隊拠点にも自衛隊の連絡調整官2人が配置されている。ただ、2等書記官は大使館警備担当、連絡調整官も地元政府との調整に当たっており、情報収集業務は行っていない。
軍事関連情報の収集・共有は各国駐在武官同士で行うのが通例で、ジブチに基地を置く米国やフランス、駐在武官を派遣している中国、ロシアが活発な活動を展開。日本は、アフリカではエジプトとスーダンに1人ずつ防衛駐在官を置いているが、アフリカ、中東の火薬庫とされる「アフリカの角」のジブチ、ソマリア周辺地域に関する情報収集活動は手薄だった。
防衛省幹部は「アフリカでは地下資源を求める中国がすでに深く入り込んでいる。ジブチに駐在官を派遣することで、日本のアフリカへの関与強化につながる」と指摘する。
政府は自民党政権下の平成21年3月、自衛隊法に基づく海上警備行動で護衛艦2隻をソマリア沖・アデン湾に派遣し、同年6月からはP3C哨戒機2機を加えた。同月の海賊対処法成立を受け、海上警備行動から活動根拠を切り替え、海賊船から民間船舶を警護する活動を継続している。
野党時代の民主党は自衛隊派遣の国会事前承認や海上保安庁主体の活動にすることなどを求めて同法に反対していたが、政権交代後は一転して容認。昨年6月には派遣の長期化を見据え、間借りしていた在ジブチ米軍基地「キャンプ・レモニエ」に、自衛隊史上、海外で初となる本格的な活動拠点を整備した。現在、海自隊員を中心に約580人が派遣されている。
海自が海賊対処活動を行うアデン湾は紅海の入り口に位置し、欧州、中東、アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)の死活的な要所。23年の全世界の海賊発生件数439件の54%に当たる237件がアデン湾で起きており、日本船主協会など経済界から海自の活動への期待が強い。海賊対処に加え、国際テロの動向や周辺諸国の軍事情勢を探る上でも、アフリカの角での自衛隊のプレゼンスが不可欠となっている。
asahi.com 2013年05月30日17時02分
自衛隊「基地」がある国 アフリカ東部・ジブチ
【ジブチ市=牧野愛博】アフリカに世界各国の軍隊が集結する場所がある。ソマリアの海賊対策で有名になったジブチだ。日本も米仏と並んで拠点を構える。首都ジブチ市郊外の搭乗口が二つしかない国際空港の周囲には、巨大な軍事基地が広がり、各国の軍用機が頻繁に離着陸する。
■賃料頼み、各国の軍を歓迎
ジブチ最大の基地は兵士だけで3千人が駐屯しているとされる米軍のレモニエ基地だ。発電機や淡水化装置を備えるほか、F15戦闘機や無人偵察機プレデターなどの装備を多数保有する。イエメンやソマリアなど、政情が不安定な周辺地域に対する情報収集から人質救出までを行っているとされる。
「対テロリズムと地域の安全保障」
在ジブチの米大使館報道官は、レモニエ基地の任務として、海賊対処に加え、この2点を挙げた。ジブチの外交筋は「米軍がアフリカをにらむ唯一の拠点がジブチ」と語る。周辺地域には国際テロ組織アルカイダの拠点があり、戦略的な要衝としてジブチを位置づけているのは間違いない。
米軍に次ぐ規模を誇るのが旧宗主国フランス。フランスはジブチを防衛する義務を負う条約を結んでいる。海賊対処活動を行うドイツやスペインは仏軍基地を間借りして、軍用機などを置いている。
資源に乏しく、失業率55%にも上る同国にとって、海外の軍隊の駐留による賃料収入は大きな魅力だ。米ワシントン・ポスト紙によれば、米軍はレモニエ基地の賃料として毎年3800万ドル(約39億円)をジブチ政府に支払っている。
ジブチのフハネ国防相は「自衛隊の戦後初の海外拠点が我が国にできたことは非常に光栄だ。政府はすべての支援を行っている」と語る。
フハネ氏は、自衛隊の活動によりソマリア海賊の活動が減少している点を高く評価。「自衛隊の長期間の駐留を歓迎する。この地域は世界にとって非常に重要な場所だ」ともアピールする。
さらに、国連平和維持活動(PKO)の教育や訓練などをジブチ軍に対し提供するよう、自衛隊に求めていく意向を明らかにした。ジブチの士官学校に自衛隊関係者を招請し、士官教育などを受けさせたい考えも強調した。
自衛隊の駐屯を契機に日本は昨年、ジブチに大使館を開いた。拠点の賃料や雇用創出も評価されており、日本人観光客の増加の期待もジブチ側にはある。
ジブチ市内には、自衛隊員が「後に続く仲間のために」と、自前で作った日本語メニューを置くレストランもある。4月、自衛隊と現地学校との交流を報じた国営テレビ局のヤーヒア局長は「日本は我々に何も求めていない」と評価する。ジブチ在住の日本人の一人はこうも語る。「港湾利権などを狙っている中国への嫌悪感の裏返しですよ」
■引けない日本、軽くない負担
米軍基地の北側には、2011年6月から活動を始めた日本の自衛隊の拠点があり、海陸両自衛隊員は約190人が派遣されている。アデン湾で民間商船の護衛に当たる海上自衛隊の護衛艦2隻もジブチに拠点を置く。
日本はソマリア海賊対策を求めた08年の国連安全保障理事会決議の要請を受け、09年から商船の護衛任務などを始めた。1年ごとに活動期限を更新しているため「拠点」とされるが、自衛隊関係者は「戦後初の海外基地」と呼ぶ。
「邦人保護やPKO活動、情報収集活動の拠点にできる」。元防衛庁長官の中谷元・自民党副幹事長は、ジブチの自衛隊拠点を海賊対処以外にも活用するべきだと主張する。
同党の国防部会などは17日、政府の新たな防衛計画の大綱への提言案として「海外拠点の活用」を掲げた。中谷氏や国防部会の念頭にあるのは、今年1月に北アフリカ・アルジェリアで日本人も犠牲になった人質事件だ。
実際、テロリズムの拡散が懸念されるアフリカが、PKOの主戦場との見方が国際的に強い。自衛隊が現在もPKOで活動しているのは南スーダンだけ。自衛隊が国際的に開かれた組織として発展していくため、ジブチでの活動は重要になるとの指摘もある。
現在、アデン湾で任務に就いている護衛艦の「ゆうだち」「はまぎり」は、同じ海域に派遣されている中国軍艦と、問題なく海賊情報の交換を行っている。日本政府関係者の一人は「尖閣諸島でぶつかるなか、こうした信頼醸成の機会は重要だ」と語る。
ただ、課題も抱えている。在ジブチの米国大使館報道官は、自衛隊の海賊対処活動を高く評価し、必要な情報交換も行っているとする一方、「自衛隊の活動は独立したものだ」と指摘する。実際、ジブチの自衛隊と米軍との情報交換は、海賊対処活動や文化交流などに限られている。
軍の世界には「ニード・トゥ・ノウ」という言葉がある。必要以上には教えない、教えれば相互に不利益をもたらす、という意味だ。自衛隊現地調整所の加藤雅巳所長も「米軍は、自衛隊の負担になると考えてもいるようだ」と語る。
フランス軍も同様に自衛隊とは海賊対処活動以外での情報交換はないという。
尖閣諸島などで日本周辺の防衛態勢の強化が叫ばれるなか、護衛艦2隻とP3C哨戒機2機を派遣してきた海上自衛隊にかかる負担も重い。自衛隊の護衛艦は48隻。うち、ジブチ派遣に耐えられる大型の艦船は22隻に限られる。交代を含むと、常に4隻が派遣に対応していることになる。
ソマリア周辺の海賊発生件数は11年の237件から12年75件と大幅に減ったが、「怖い警官のいる場所を避けているだけ」(日本政府関係者)。国家破綻(はたん)し海賊の温床となったソマリアの再建に時間がかかるのは確実で、自衛隊は「引くに引けない」(同)状況に陥っている。
ジブチの海外拠点が継続できるかどうかは、日本政府が近隣外交に努力し、自衛隊の負担をどれだけ減らせるかにかかっている。
◇
〈ジブチ〉 アデン湾から紅海に至る海峡のアフリカ大陸側の要衝に位置し、面積は2万3200平方キロと四国の約1・3倍。人口は約92万人。周囲をエリトリア、エチオピア、ソマリアに囲まれ、海峡を挟んで対岸にイエメンがある。
ソマリア系イッサ族とエチオピア系アファール族が多数を占め、ほとんどがイスラム教徒。アラビア語とフランス語が話されている。目立った産業はなく、鉄道収入や中継貿易などで収益を上げている。
安倍首相 中東アフリカ訪問へ
NHK
8月20日 4時0分
安倍総理大臣は今月24日から中東3か国とアフリカのジブチを訪問し、原油などの安定供給に向けて、中東各国との関係強化を確認したいとしているほか、ソマリア沖の海賊対策のために派遣されている海上自衛隊などの活動拠点を視察することにしています。
安倍総理大臣は、今月24日から6日間の日程で、バーレーンとクウェート、それにカタールの中東3か国とアフリカのジブチを訪問することにしています。
このうち、中東3か国では、円安などの影響で燃料の調達コストが上昇するなか、原油や天然ガスの安定供給に向け、関係の強化を確認したい考えで、外務・防衛当局間の安全保障対話の創設を巡っても意見を交わす見通しです。
安倍総理大臣が中東諸国を訪れるのは、去年12月の就任以来2回目です。
また、安倍総理大臣は、アフリカのジブチではソマリア沖の海賊対策のために派遣されている海上自衛隊などの部隊の活動拠点を視察し、隊員を激励することにしています。
日本は原油のおよそ8割を中東地域から輸入しており、安倍総理大臣としては、テロ対策や海上輸送の安全確保に積極的に貢献していく姿勢をアピールするねらいがあるものとみられます。
首相、中東・アフリカ歴訪に出発 資源確保へ関係強化
nikkei.com
2013/8/24 10:51
安倍晋三首相は24日午前、バーレーン、クウェート、カタールの中東3カ国と東アフリカのジブチを訪問するため、政府専用機で羽田空港を出発した。中東には約50の企業や団体などの幹部が同行し、経済外交を推進。日本がエネルギー資源を依存する湾岸地域と連携を強化する。
出発に先立ち、首相は羽田空港で記者団に「日本にとって中東は死活的な地域だ。石油やエネルギーだけでなく、包括的に関係を強化したい」と強調。「成長著しい湾岸諸国でトップセールスをしたい」と語った。
首相の中東訪問は昨年12月の第2次安倍内閣発足以降、2回目。日本の首相がバーレーンとジブチを訪れるのは初めてとなる。
ペルシャ湾岸の6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)議長国のバーレーン首脳らとの会談では、日本とGCCの閣僚会合を開催することで合意する見通し。中東3カ国とは個別に外務・防衛当局の対話創設を確認する。ジブチではソマリア沖の海賊対策のため派遣している海上自衛隊の活動拠点を視察する。29日に帰国する。
「交通の要衝」ジブチ共和国の今
西田 一平太
日経ビジネスオンライン
2013年12月12日(木)
アフリカの角地域では、南スーダン以外でも自衛隊が活躍している(関連記事「ニーハオ、アンニョン、そしてこんにちは」)。インド洋につながるアデン湾で海賊対処活動を行う統合任務部隊だ。海上自衛隊を中心として、陸上自衛隊と海上保安庁とで構成されている。この部隊が航空拠点を置くのがジブチ共和国である。今年の8月に安倍晋三首相が訪問したことで、日本でもその存在が知られるようになった。しかし、どのような国なのか、ご存じの読者は少ないだろう。
そこで今回は、近年アフリカの角の要所として注目されるジブチの現状をお伝えしたい。次回は、アメリカやフランス、そして欧州連合(EU)などがなぜジブチを重要視しているのか、自衛隊の活動紹介を交えながらお伝えする。
ジブチは小さな国だ。国土の面積は2万3000平方キロメートルで四国をひと回り大きくした程度。アフリカ54カ国の中で、小さい方から数えて3番目だ(セーシェルなどの島嶼国を除く)。国土の大半は砂漠で、作物の耕作には適していない。伝統的な生活スタイルは遊牧だが、現在は80万人の人口の3分の2が首都ジブチ市に集中している。
産業と呼べるものは限られている。アデン湾を航行する艦船の燃料や物資補給、そして隣国エチオピアと欧米などとの貿易を中継するための港湾・役務サービスくらいしかない。エチオピアは地域大国であるが海へのアクセスがない。主要産物であるコーヒーの輸出と、軍事物資を含む工業製品・石油・食糧の輸入をジブチに依存している。ほかには駐留する外国軍がもたらす用地使用料や調達・消費などの関連収入。それに外国軍が雇用するジブチ人の所得から得られる税収がある程度だ。奥地で算出される岩塩を除いて、天然資源はほとんどない。
このように概観すると、経済が発展する可能性はほとんどないように見える。しかし、GDP(国内総生産)は年率4.5%程度の成長を続けている。中継貿易の増加と、海外からの投資が牽引役だ。ジブチの長期開発戦略に呼応して、中国やドバイが港湾施設をはじめとするインフラの拡張建設に投資する。隣国ソマリアへと続く荒れ果てた幹線道路をトルコが整備するなど、地域経済の活性化に向けたプロジェクトも進展している。20年近くも内戦状態が続いたソマリアにも安定化の兆しが見え始めた。
ジブチが国際社会の関心を集めるようになったのは、いわゆるソマリア海賊が商船を襲撃する事件が多発するようになった2000年代中ごろからだ。紅海からアデン湾、インド洋へと繋がる航路の確保は、欧州の貿易にとって重要な意味を持つ。1869年にスエズ運河が開通したことを契機に、フランスやイギリス、イタリアがこの地域で植民地の獲得競争を繰り広げた。仏領となったジブチはこの航路に面している。
現在、アデン湾周辺はイスラム過激派が潜伏する不安定な地域である。ジブチの東隣は内戦が終結したばかりのソマリアだ。ソマリアの南部には今年9月にケニアでテロ事件を引き起したイスラム過激派が潜伏する。西隣のエリトリアとは領土紛争を抱えている。国境付近では今も軍事的な緊張状態が続く。
アデン湾をはさんでわずか30キロ先の対岸にあるイエメンは国内が分裂していて治安が乱れている。テロ組織の温床と化している。
政情が安定しているジブチは、紅海からインド洋へ到る地域で唯一の安定した補給港だ。船舶の航行の安全を確保するために拠点とできるのは、ここしかない。外国人が市内を1人で歩いても危険を感じない有難い存在だ。
アフリカの角で唯一安定
世界銀行は、ジブチ国民の4割以上が貧困層に属し、生産年齢人口の約6割が定期雇用されていないと推計している。ジブチとアラビア半島との間は、歴史的に多くの人が往来し、国境を越えた人の移動が常態化しており、イスラム過激派が入り込んでもおかしくないと思うのが普通だろう。
それでもジブチの治安が安定しているのはなぜか。複数の外国の政府関係者によると、統治の実態が独裁制に近いがゆえに政情が安定しているという。ジブチは大統領制を取る共和国だ。形式上、有権者による選挙によって大統領が選出されるが実態は異なる。安定と経済成長が第一の政策課題であるこの国において、国民の自由や権利の優先度は低い。
ジブチは独立する際に、フランスと防衛協定を結んだ。ジブチ国内に仏軍が駐留しているのはこのためだ。また、米軍の存在感は圧倒的だ。彼らはジブチを防衛する責任を負っているわけではないが、アフリカの角地域での対テロ作戦などを展開している。これら外国軍の駐留が、対立するエリトリアからの攻撃を抑止している。
途上国における民主化の必要性を声高に主張するアメリカやEUも、ジブチについては控えめだ。筆者が面会した米軍関係者は「我々が活動するに当たって、触れることのできない国内要因がある」と漏らす。当面の間、外国勢力がアデン湾周辺でジブチ以外に活動拠点とできる場所はない。自らの活動に制限を課せられることを避けるためにも、人権など統治の問題や政府内での不透明な意思決定についてジブチを批判することはできないのだ。
小さな国の大きな野望
こうして国際社会を味方につけたジブチが目論むのは、さらなる投資を得て地域の一大通商ハブとなることだ。ジブチ政府の要人は「ジブチは戦略的要衝であることをてこにして、海外から投資を集めることができる」と胸を張る。シンガポールやドバイのように、地域の中心としてヒト・モノ・カネ・情報が集まるようになるのだという。
まずは東アフリカ沿岸部とアラビア半島をつなぐ物流の拠点となることを狙う。地域の主要港としての地位を確立するには、港湾施設やコンテナ積み替え機能の拡張が必須だ。ジブチの港湾特区公社(DPFZA)の資料によると、現在は21個のプロジェクトが行われている。各国の軍艦も寄港するジブチ港の拡充、コンテナターミナルの第2期工事、経済特区の振興、オイルターミナルの拡張などだ。費用は3年間で総額44億ドルに上る。これによると資金はほぼ調達できている。ドバイ資本の港湾メジャーDP World社などが資金や運営面で支援している。また、政治的・経済的に緊密な関係にあるエチオピアとの間では、道路や鉄道の輸送力を強化し経済統合を進めている。
ジブチはさらに、経済成長の活路を地熱発電所の開発と観光業に見出そうとしている。ジブチは、映画「猿の惑星」のロケ地となった特異な地形を観光の目玉として保有している。
これを後押しするのが第1回で取り上げた中国だ。中国は、経済成長が期待されるアフリカへの新たな玄関口としてジブチを強力に後押ししている。港湾施設の拡張や地熱発電所の建設を支援しているだけではない。ジブチ‐エチオピア間の756キロにわたる鉄道建設工事も、中国中鉄(CREC)や中国土木工程集団有限公司(CCECC)などの中国企業が行っている。この鉄道は将来、内陸国である南スーダンの首都ジュバまで延伸する計画だという。中国は併せて、南スーダンが産出する原油をジブチに導くパイプラインを建設する構想も持っている。
ライバルはエリトリア
ジブチがどれほど投資に値するのか。ケニアのナイロビで会ったアフリカの角地域の政治問題に詳しい専門家は懐疑的な見方を示した。この地域におけるジブチの比較優位性は、安定した治安と欧米に開かれていることに尽きる。しかし隣国エリトリアがミャンマーのように開国路線に舵を切ったらどうなるのだろうか。エリトリアは現在、ソマリアのイスラム過激派を支援していることが疑われ、国連から制裁措置を受けている。経済的に厳しい状況にあり、エリトリア政府は打開策を模索している。
エリトリア開国論が台頭する理由として、地下資源が有望視されていることも挙げられる。金・銅・亜鉛の埋蔵が既に確認されている。また、石油・ガスを埋蔵している可能性もある。エリトリア政府は外資によるこれらの開発を望んでおり、欧州・中国の企業が参入し始めた。
この地域で活動する先進国にとってもエリトリアの不安定要因が低減することは望ましい。ジブチ以外の選択肢ができることで、軍用地に関するジブチとの借用権交渉がしやすくなるメリットもあるかもしれない。その場合、今の延長上でジブチの発展を考えることはできない。
ジブチは過去20年間にわたってソマリアからの難民を受け入れてきた。ソマリア国境近くの砂漠地帯にある国内最大のアリアデ難民キャンプには、およそ2万人が生活する。日々、出入りがあるためキャンプ内にいる難民の正確な数は把握できていないのが実情だ−−同キャンプの管理を担う国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の担当者はこう漏らす。食糧を配布する時に確認する登録証の発行数で、かろうじて全体数が把握できる程度なのだという。広大なキャンプに垣根は設けられておらず、出入りは自由だ。なかには定住している人もいる。
難民の申請をしている男女数人に次の質問をぶつけてみた。ソマリアは安定化に向かっているのではないか? 故郷へは戻らないのか? 彼らによると故郷であるソマリアの南部にはいまだに過激派が残留していて危険なのだという。そして彼らは「(仕事の口がある)サウジアラビアに行く」と口々に言う。中には「アメリカに行く」という人もいた。どういうことなのか。
東アフリカとアラビア半島は古来、アデン湾を挟んで交易が盛んであった。旧約聖書にも登場する「シバの女王」で描かれている通りである。対岸のイエメンまで最短距離で30キロしか離れていないジブチは、今も東アフリカからアラビア半島への人の移動ルート上にある。対岸へ渡る人の数は毎日200人を下らないという。アフリカの民にとってアラビアは今も夢の土地なのだ。
また数は少ないが、アメリカもソマリア難民を受け入れている。キャンプに来る人たちは、口伝えにそれを知っている。このため、たとえ長期の難民生活となろうとも、チャンスを窺うのだ。
ソマリア安定後も滞在を続ける2万人の難民
このため、ジブチに滞在するソマリアからの難民は「移民」の意図を持った人の移動であり、紛争を逃れてきた純粋な「難民」ではないとの指摘もある。ジブチ政府も、ソマリア難民の多くは海を渡ってアラビア半島に向かう「トランジット」であることを理解している。このためジブチ市の外であれば、人の移動について強く規制はしていない。当然、灼熱の砂漠や洋上で命を落とす人も多い。人身売買の対象とされている人もいるが、ジブチ政府は関知しない。
筆者は「治安上、ジブチ政府は越境者を厳しく取り締まっているはずだ」と予想していた。だが、この点については見事に見当が外れた。寛容なのではない。管理しきれないのだ。ジブチは伝統的な人の移動ルート上にある。国境管理の手段は幹線道路沿いの簡単な検問所しかない。
グローバルに難民問題に取り組むUNHCRにとって、緊急事態にないジブチの難民キャンプの優先順位は低い。現在、国際スタッフ8人と現地スタッフ32人で2万人のキャンプを運営している。予算は現行の水準を維持するのが精一杯だ。1991年に設立したキャンプの老朽化は著しいが、修繕することもままならない。
難民を受け入れる地元への支援も限られている。キャンプが所在するアリサビエ州の知事は、UNHCRが十分な支援−−地元民への給水や食料配給−−を行っていないと苛立ちを隠さなかった。同知事は「予算を州に回せばより良い支援ができる」と主張するが、それでは事業の透明性が担保されない恐れがある。
新たに登録された難民は、登録証とシェルター(テント)、基本的な生活用品一式(毛布・マラリアネット・簡単な調理器具)を受け取り、居住を開始する。キャンプ内には給水所と診療所があり、摂取カロリー量を満たすだけの食糧が配布される。子どもたちのための小中学校もあり、難民キャンプ生まれの先生が難民の子どもたちを教えていた。子どもたちの知的好奇心は旺盛で、その目は輝いていた。
しかし、ジブチに滞在する限り、彼らが能力を活用する場はない。ソマリアにも戻らず、アラビアにも渡らない世代が青年期に達した時、彼らは不満のはけ口を何に求めるのだろうか。生きる糧を得るために、イスラム過激派や犯罪組織に導かれる若者も出てくるに違いない。
ジブチは、不安定なアデン湾周辺地域にある唯一の安定した国だ。現在は地域の海賊対策活動の拠点として、また東アフリカにおける物流のハブとして成長を続けている。しかし、その安定が永続的である保証はない。ジブチが夢みる経済成長はいつまで続くのだろうか。教育・産業・保健衛生・人権など、社会経済的には不均衡な側面が目立つ。これらは改善されるのだろうか。
ジブチに集う欧米と日本の自衛隊
西田 一平太
日経ビジネスオンライン
2013年12月19日(木)
ジブチには自衛隊のほかにも、対テロ戦争の拠点を置くアメリカ、旧宗主国としてインド洋へのアクセスを保ちたいフランスが軍事拠点を置く。また、日本と同じく海賊への対処のため欧州連合(EU)も展開している。今回は、これらの国・機関がアフリカの角にどのように関与しているのかを概観する。
6月後半にジブチに到着して早々、とんだ事件に遭遇した。ジブチには巨大な米レモニエ基地がある。軍人のほか民間企業からの出向者など、米軍関係者の総数は4000人を超える。このほかに同基地では、食堂や清掃など基地運営に関わる各種サービスを提供するため現地従業員が働いている。その数は1000人強と言われる。彼らの雇用調整が一挙に政治問題化したのだ。
その背景はアメリカの財政難にあった。米国防省は今年6月、サービス契約業者を変更するとともに、予算を従来の7000万ドル(約71億円)から半減させた。新たに受注した米企業は合理化のため現地従業員全員を一旦解雇し、新たに600人を再雇用する決定を下した。ジブチにおいて政府に次ぐ雇用主による大リストラである。
これがジブチ政府の逆鱗に触れた。ジブチは常に高失業率に悩まされてきた。国民の約6割は職がない。雇用の悪化は政府批判を招き、犯罪など国内の不安定化につながる恐れがある。当然、解雇は容認できない。レモニエ基地の正門前では元従業員が座り込み、その現場にゲレ大統領自らが立ち寄るというパフォーマンスまで行って猛烈に抗議した。当時、米国大使は海外に出ていて不在。ジブチの米軍関係者も事情を把握していなかった。ジブチ政府から抗議を受けて慌てて対処している様子が訪問者である私たちにも伝わってきた。
国家元首まで巻き込んだ労使闘争はおよそ2カ月間続いた末、元の従業員1000人強が職場復帰することで収束した。米軍の活動への影響は限定的だったが、仮に政治的に対立した場合、ジブチ政府が米軍の活動に一定の制限が課したとしてもおかしくはなかった。
「アフガニスタンやイラクとは違う」。これらの国で活動した経験を持つ複数の米軍関係者から耳にした言葉だ。米国はジブチと戦争して勝ったわけではない。あくまでホスト国として、その主権と意向を尊重しなくてはならない。この労働争議の一件は、海外に設けた米国の軍事拠点が政治的にはぜい弱であることを示している。同じくジブチに自衛隊拠点を置く日本にとっても、受入先となる地元との関係の重要性を再確認した事件であったに違いない。
対テロ・民生支援活動を行う米軍
レモニエ基地はアメリカにとって、アフリカにおける唯一の軍事基地だ。面積は500エーカー(約202ヘクタール)。ジブチにある自衛隊の拠点の20倍弱に及ぶ。その威容は、ジブチのアンブリ国際空港に立つと分かる。3500メートルの滑走路を持つ同空港施設の片側1面がすべて米軍基地なのだ。
実は、この基地の活動目的は海賊対処ではない。海賊対処はバーレーンに拠点を置く米中央軍が管轄している。レモニエ基地が担っているのはアフリカの角地域を安定化させる任務だ。主に、テロリスト攻撃作戦、各国軍のキャパシティビルディング支援、そして民生支援活動を行っている。
まず、アフリカ大陸・アラビア半島におけるイスラム過激派の活動を抑えることだ。レモニエ基地は、そのための最重要拠点である。ソマリア南部やイエメンで無人機を使ってイスラム過激派の探索・攻撃を行っている。
これを補完する目的で「キャパビル支援」として、アフリカ諸国がイスラム過激派に対する防衛能力を強化するための各種訓練を提供したり、作戦運用を指導したりしている。ジブチを拠点にウガンダ・ケニアなどアフリカの角各地で行っている。これらの国はアフリカ連合(AU)がソマリアに派遣する多国籍治安維持部隊「ソマリア治安機構及びアフリカ連合ソマリア・ミッション」(AMISOM)の主要な兵力貢献国である。
一方、米軍が自国に入ってくることに警戒感を覚える地元住民は多い。米軍もそれを自覚しており、地元住民の対米感情に配慮した活動を展開している。それが、軍隊の能力を活用した民生支援活動だ。例えばジブチでは、地元住民のために井戸を掘削したり、養鶏場などの施設を設置したりしている。形態としては開発援助に近いが、軍に援助の知見は乏しい。このため米軍は、援助機関である米国国際開発庁(USAID)から協力を得ながら活動を展開している。
この活動の隠れた目的は、現地住民とのネットワークの構築と情報収集だ。アフリカの角には遊牧民族が多い。人々が常に、国境をまたいで移動している。この動きに紛れて移動するテロリストや武器類の移動を監視するためである。情報を収集するだけでなく、地元住民に対して危険情報を提供するなどして信頼関係を構築している。民生支援はテロとの戦いの重要な要素として位置づけられる。
ジブチには自衛隊がいる。自衛隊の主たる任務は海賊対処なので、ジブチに駐留する米軍と活動面での直接的な協力関係はない。しかし、双方が日米の協力を重要視している。両国関係者は情報を共有するなど常に意思疎通を図っている。実は自衛隊は2011年に自前の拠点を作るまで、レモニエ基地に“間借り”していた。今も滑走路を挟んで“お向かい”に拠点を構える間柄だ。
昨年からは両国の隊員が総出で行う「クリーン大作戦」を実施している。レモニエ基地と自衛隊施設を結ぶ幹線道路沿いを清掃するのだ。これは自衛隊の発案だったそうだ。駐ジブチ米国大使が「地元との関係において高く評価されている活動だ」と教えてくれた。
日本は今年1月、日本国大使館をジブチに正式に設置した。今後は地域の安定化に向けた日米間の外交的な協力なども期待される。
旧宗主国として権益保護を図る仏軍
フランスはジブチの旧宗主国である。1977年にジブチが独立した時に両国は防衛協定を結んだ。フランスはジブチの防衛に責任を負う一方、ジブチに駐留する権利を得た。その存在は、ジブチが対立する隣国エリトリアに対する抑止的役割を担っている。一方、フランスにはアフリカの角地域に持つ各種の権益を守る狙いがある。自国民や通商の保護、船舶補給港の確保、インド洋への軍事・経済的なアクセスの確保などだ。
アフリカ大陸に居住する仏国民は少なく見積もっても24万人とされる。仏政府はアフリカの国々で内戦や騒乱が発生した時に備えて、滞在する自国民を速やかに退避させるための基本原則(ドクトリン)を確立している。ジブチの基地でも複数年に1度は民間人も交えて大規模な演習を行っている。
フランスはさらに、ジブチの砂漠地帯に広大な仏軍訓練場を有している。アメリカ軍が2003年にイラクに侵攻する際、事前の演習に使用した訓練場だ。仏軍はここでジブチやウガンダなど東アフリカ諸国の軍事能力を強化するための訓練を提供している。
ソマリア海賊への対応は、ジブチに駐留する仏軍にとっても付随的任務だ。面会した仏軍幹部によると、EUが洋上で実施する警戒活動に仏海軍の艦船を参加させているにすぎない。ジブチの仏軍基地は、EUの洋上哨戒作戦に航空機を派遣するドイツ軍とスペイン軍に活動拠点として提供している程度だ。
仏軍はここ数年、アフリカでの規模を縮小してきた。しかし、マリでのイスラム過激派の台頭を受けて、多国間での安全保障協力とアフリカを重視する姿勢を強化すると明らかにした。財政的に厳しいことに加え、アフリカの安定に関心を寄せる国が増えてきたことが背景にある。そのせいかもしれないが、筆者が面会した仏軍幹部は「ジブチの自衛隊とさらなる協力を進めるべきだ」と語っていた。
EUは文武両面から海賊対処にアプローチ
ジブチに拠点を持つ外国勢で最も積極的に海賊対処に関わっているのはEUだ。EUの支援というと、人道支援や教育・職業訓練・衛生などの開発援助がまず頭に浮かぶ。確かにEUはこうした援助をアフリカの角の各地で実施している。しかし、これに加えてEUは近年、外交・安全保障・開発の各政策手段を横断的に捉えた包括的なアプローチを採用している。
例えばEUは「アフリカの角地域における戦略的フレームワーク」という指針を設け、これに向けて文民機関と軍事部門が協同している。海賊はソマリア内戦の結果であり問題の根源ではない。本当に海賊問題を解消しようとするならば、洋上での予防と排除措置に加え、ソマリアの安定が必要だ。内戦が終結した現在、ソマリア政府による治安の掌握と法による統治、そして若者の受け皿となる産業育成と雇用創出が求められる。併せて、アフリカの角地域の各国が海賊に自ら対処できるように、国境・沿岸管理の能力を高める必要がある。
この幅広い課題に対応するため文民機関は、ジブチ・ソマリア・セーシェル・ケニアなど周辺沿岸国の沿岸警備能力を高めるための訓練や各国の海事機関が情報を共有できるよう支援している。軍事部門は、アデン湾からインド洋にかけて軍艦による海賊対処活動とソマリア政府軍の強化訓練を担う。EUはまた、アフリカ連合やその下部にあるアフリカの角の地域経済共同体を、資金とマンパワーの両面で支えている。これらを共通の政策指針に基づいて行っているのがEUの特徴だ。
EUの関係者と話していて分かったのは、彼らが、アデン湾における航行の安全が欧州にとって死活的な問題と認識していることだ。その理由は2つある。第1は経済的なもの。地中海からスエズ運河を抜け、紅海、アデン湾、インド洋へとつながるルートが、欧州からアジア・東アフリカの市場へと向かう最短ルートになる。第2は安全保障面。アラビア半島と東アフリカの間では、イスラム過激派が頻繁に移動し、武器の取引が行われている。アデン湾周辺での組織的犯罪が欧州の安全に影響する。ジブチで面会した欧州のあるベテラン外交官は、東アフリカとイエメンの安定は欧州にとって、国家安全保障に直結する問題であると認めた。
では、日本はどうなのだろう。ジブチに派遣されている自衛隊の正式名称は「日本国派遣航空隊」だ。その名が示す通り、海上自衛隊の哨戒機2機が交互に海賊に対する警戒・監視活動を行っている。日本政府によると、その活動は外国勢による哨戒活動全体の60%にも及ぶという。得られた情報は航行する船舶や海賊対処に参加する各国軍・機関に提供する。その貢献度は高い。
政府は今後、ジブチの拠点を、海賊対処に加えて、在外邦人保護などの拠点として利用する案を検討する。この時に併せて考慮すべきは、この拠点を今後どう確保していくかであろう。レモニエ基地で起きた雇用問題の例から分かるように、ジブチ政府から土地を借りている以上、立場は微妙なのだ。地元との関係強化をより実際的に考える必要がある。
地元との信頼関係をより積極的に構築するには、学校など近隣の公的施設の修繕や災害時の支援など自衛隊の能力を使ったさらなる貢献が効果を発揮する(自衛隊は今も、4カ月ごとに部隊が入れ替わる度に小学校訪問や文化交流活動などを行っている)。また、防衛省が東南アジアで行っているように、地雷処理や車輌整備に関する教育訓練をジブチ軍に対して提供できるかもしれない。こうした活動は独自の情報ルートを開拓したり、現地事情に精通したりすることにつながり、ひいては部隊の安全確保にもつながる。
海賊発生件数の減少と自衛隊派遣のこれから
これまで年間200件を越えていたアデン湾での海賊発生件数は、昨年は80件にも至らなかった。ソマリアが安定してきたのに加えて、各国による海賊対処活動や関係者間での海賊情報の共有が功を奏した。また、民間船舶が乗組員の訓練や、防護設備・外部との通信手段を強化したことも挙げられる。なかでも、襲撃された時に実力で海賊を排除する武装警備要員を乗船させるようにしたことが抑止として効果的だったと言われる。
日本政府は7月、海賊対処活動を1年間延長すると閣議決定した。また安倍晋三首相は、民間船舶を護衛している2隻の護衛艦のうち1隻を、この12月からアメリカが主導する多国籍の海賊対処活動に回すと表明した。この海域を安定させるべく継続して関与するという明確なメッセージだ。国際社会が警戒を怠れば、海賊はすぐにでも戻ってくる。決して、関与を弱められる状態にはない。
日本の今後を世界が注目
ジブチは、自衛隊が初めて海外に設けた拠点だ。そこは、各国がそれぞれの思惑に基づいて活動を展開する新たなホットスポットになっている。米仏EUだけではない。イタリアも先般、ジブチに新たな拠点を設立したようだ。中国が経済だけでなく安全保障面でのプレゼンスを示すという噂も現地では絶えない。湾岸諸国やトルコもアフリカの角地域の安定化を見込んで、多額の投資と援助を注ぎ込んでいる。
安倍政権は「積極的平和主義」を掲げている。国連の平和維持活動(PKO)への人的貢献に制限がある日本の現状を考えると、ジブチにおける自衛隊の海賊対処活動は重要だ。これは、日本が責任ある国として世界の平和と安定のために積極的に関与している実態を内外に示すものだからである。
日本がこの拠点を今後どのように生かしていくか、世界が注目している。
防衛相、ジブチ国防相と会談 自衛隊への支援に謝意
nikkei.com
2014/5/9 19:47
アフリカ訪問中の小野寺五典防衛相は9日(日本時間同)、ジブチのフファネ国防相と会談した。自衛隊がジブチを拠点に、ソマリア沖で海賊対策を展開していることについて「日ごろからの支援に感謝する」と伝えた。同時に「ジブチは日本の海上交通路(シーレーン)にとって重要だ」と述べ、自衛隊の継続的な活動に理解を求めた。
フファネ氏は「自衛隊の活動、各国の協力で海賊の件数も減っており、実を結んでいる」と強調。今後の自衛隊への支援について「協力は惜しまない」と語った。
会談後、防衛相は記者団に、今後のジブチでの自衛隊の活動のあり方について「(テロなどに対応した)邦人輸送も検討していく」と語った。
この後、防衛相は護衛艦2隻で商船の護衛などにあたる約400人の水上部隊、P3C哨戒機で上空から警戒監視などを担う約190人の航空隊をそれぞれ現地で視察し、「今後もこの地域で海賊対策を確実に実施することが必要だ」などと訓示した。(ジブチ=田島如生)
ジブチで爆発、13人死傷
nikkei.com
2014/5/25 18:51
【ナイロビ=共同】アフリカ東部ジブチの首都ジブチで24日、レストランに何者かが投げ込んだ手りゅう弾が爆発し、2人が死亡、外国人を含む11人が負傷した。ロイター通信などが伝えた。
ジブチにはソマリア沖のアデン湾で海賊対策に当たる海上自衛隊の拠点がある。日本の外務省によると、日本人が被害に遭ったとの情報は入っていない。犯人は不明。
ジブチはソマリアに展開中のアフリカ連合(AU)の平和維持活動(PKO)部隊に派兵。同様にAU部隊に参加するケニアでは、ソマリアのイスラム過激派によるテロ事件が相次いでいる。
このレストランは外国人に人気があったという。
ジブチで爆発、18人死傷 自爆テロか
nikkei.com
2014/5/25 22:16
【ナイロビ=共同】アフリカ東部ジブチの首都ジブチのレストランで24日、爆発があり、3人が死亡、外国人を含む15人が負傷した。フランス公共ラジオなどが伝えた。死者にはソマリア出身の男女が含まれ、ジブチ内務省はこの2人による自爆テロだったとみている。
現地の日本大使館によると、レストランから約5キロの距離にソマリア沖のアデン湾で海賊対策に当たる海上自衛隊の拠点がある。日本人が被害に遭ったとの情報は入っていない。
ジブチはソマリアに展開中のアフリカ連合(AU)の平和維持活動(PKO)部隊に派兵。同様にAU部隊に参加するケニアでは、ソマリアのイスラム過激派によるテロ事件が相次いでいる。
このレストランは外国人に人気があったという。
海自滞在のジブチで爆発、イスラム過激派テロか
The Yomiuri Shimbun
2014年05月25日 22時48分
【カイロ=久保健一】AFP通信によると、ジブチの首都ジブチ中心部のカフェの前で24日夜、爆発が2回あり、店の従業員2人が死亡、約10人が負傷した。
犯行声明は出ていないが、イスラム過激派による爆破テロの可能性がある。ジブチには、ソマリア沖などでの海賊対策を行う多国籍部隊に参加する海上自衛隊の要員約190人が滞在しているが、日本人が事件に巻き込まれたとの情報はない。
2014年05月25日 22時48分
ジブチで自爆テロ 3人死亡、仏人ら15人負傷
asahi.com
アブジャ=杉山正2014年5月26日02時00分
アフリカ東部ジブチのレストランで24日、自爆テロがあり、容疑者とみられる男女2人を含む3人が死亡し、フランス人やオランダの兵士ら15人が負傷した。
AFP通信によると、自爆したとみられる男女はソマリア系らしい。レストランは外国人に人気で、爆発当時も混み合っていたという。
ジブチは、ソマリアに軍を派遣し、イスラム武装勢力シャバブの掃討作戦に参加している。また、ジブチには、ソマリア沖の海賊対策に当たる欧米各国の軍や、日本の海上自衛隊の拠点がある。(アブジャ=杉山正)
鹿児島)海賊対策、110人ソマリアへ 海自鹿屋基地
asahi.com
周防原孝司2014年6月10日03時00分
アフリカ東部ソマリア沖のアデン湾で海賊対策にあたる自衛隊の第16次派遣海賊対処行動航空隊の本隊約110人が9日、鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地から活動拠点となるジブチに向けて出発した。
今回派遣されるのは、海自第1航空群(鹿屋市)と陸自中央即応連隊(宇都宮市)の隊員を中心とした約190人。約4カ月間、海賊の監視警戒にあたる。
出発を前に武田良太防衛副大臣は「国際社会からも大きな期待が寄せられている。信念と誇りをもって任務を完遂してほしい」と訓示。派遣隊員は、家族約150人や約300人の同僚らの見送りを受けて出発した。(続きあり)
広島)ソマリア沖海賊対策 陸自先遣隊の見送り式
asahi.com
南宏美2014年12月17日03時00分
アフリカ・ソマリア沖の海賊対策のため、ジブチに先遣隊として派遣される陸上自衛隊員を見送る行事が16日、海田町の海田市駐屯地であった。
派遣されるのは陸自第13旅団に所属する隊員5人。支援隊第3次要員の先遣隊として、21日に出国。来年2月上旬までに到着する残り約65人の受け入れ態勢を整える。第13旅団によると、支援隊は来年8月ごろまで活動し、P3C哨戒機などが駐機する活動拠点の警備などを担当するという。
見送り行事では河井繁樹・副旅団長が「任務を完遂し、全員が無事に帰還するように」と激励。先遣隊の堺正志・1等陸尉は報道陣に「日本が国際社会の期待に応えることができる重要な活動。任務を遂行し、活動を支えたい」と話した。(南宏美)
海賊対策の海域、中谷防衛相視察 ソマリア沖「日本経済の生命線」
asahi.com
2015年1月19日05時00分
中谷元・防衛相は18日、アフリカ東部のジブチを訪れ、同国の国防相と会談した。終了後、中谷氏は哨戒機P3Cに乗り、ソマリア沖で海上自衛隊が海賊対策に当たる海域を上空から視察した。
視察に先立ち、中谷氏は「日本の経済活動にとって(ソマリア沖は)生命線であり、日本の商船の安全を考えると、引き続きこの活動は必要だ」と同行記者団に語った。
海自が派遣された2009年には、襲撃や乗っ取りなど年間218件の海賊事案が発生。だが、近年は年10件程度に減少しているという。(ジブチ)
ジブチ、長期駐留にらむ 自衛隊、国外活動に足場
asahi.com
2015年1月19日05時00分
<解説> 防衛省が、自衛隊がジブチに置く拠点を海賊対策に限らず多目的に使えるようにしようとする計画を検討していた。国外での活動をもっぱらとする事実上の「海外基地」だ。戦争に巻き込まれたり、加担したりする危険性が増さないか。これから本格化する安全保障法制論議では、開かれた議論が求められている。▼1面参照
自衛隊は1992年の国連平和維持活動(PKO)協力法の成立以降、海外での活動を本格化させてきた。2004年には、イラク復興支援特別措置法に基づいて、戦闘が続いていたイラクへ陸自部隊を派遣。拠点には「サマワ宿営地」の看板が掲げられた。
PKOやイラク派遣で置かれた従来の海外拠点は、道路や学校の整備といった限定的な派遣目的に沿った暫定的なものだった。サマワ宿営地も06年に役目を終え、派遣の根拠になったイラク特措法も09年に期限が切れた。
ジブチの拠点も09年の海賊対処法に基づくもので、そもそも派遣が終われば撤収する予定だった。しかし、13年夏に安倍晋三首相が自ら拠点を訪問。ジブチを重要な拠点として今後も維持し、海賊対処以外にも使う方針へと転換した。
ジブチ拠点の多目的化は、海外派遣のたびに目的を絞った新たな法律を作るのをやめ、自衛隊の海外での活動の法的な制約を減らして幅広い任務を担わせようという、現在の安保法制の論議と同じ発想が根底にある。防衛省幹部は「投資して拠点強化するのだから10年、20年単位での駐留が前提だ」と言う。
当面は海賊対処に目的は限定され続ける。ただ、安保法制が転換すれば、部隊の運用は変わる。海外拠点の目的や使い方も、だ。たとえば、大規模テロの邦人救出で、特殊部隊を海外拠点から投入するような作戦は認められるのか−−。法制論議では、国民にとってのわかりやすさも必要だ。
(ジブチ=福井悠介)
■<考論>既成事実化、意図見える
愛敬浩二・名古屋大教授(憲法学)の話 目的も期間も限定的との説明で設けた海外拠点を多機能の半恒久的基地にするもので、憲法上問題だ。自衛隊の海外活動が野放図に広がり、軍事行動に巻き込まれる可能性もあるのに、これまでの活動の延長のようにして既成事実化を図ろうとする政府の意図が見える。かつての自衛隊の海外活動では、憲法や従来の政府解釈との整合性が細かく説明されてきたが、安倍政権は自衛隊の制約を極力外そうとしている。政府は国民に活動内容を丁寧に説明し、国会は厳しく監視する必要がある。
■<考論>拠点拡大、国益に資する
志方俊之・帝京大教授(安全保障)の話 アフリカや中東での日本船籍の活動は活発化しており、邦人保護や救出の態勢を整える必要性は増している。拠点の拡大は意義があり、国益に大いに資すると評価できる。自衛隊活動が広がれば、同盟国の国民の救出活動にもかかわることができ、国際貢献にもなる。かつて民主党政権はインド洋での多国籍軍への給油支援を中止し、国益を損ねた。お金だけでなく、汗を流さなければ国際的にも評価されない。ただ、戦闘行為にはかかわらないという前提は崩してはならない。
(聞き手・石川智也)
自衛隊、ジブチの拠点強化 防衛省、有事にも使用検討
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福井悠介、三輪さち子2015年1月19日07時32分
アフリカ東部のジブチに海賊対策で設けた自衛隊拠点について、防衛省が中東有事での哨戒機派遣や緊急時の邦人救出など、多目的に使えるよう施設の強化を検討していることが防衛省関係者への取材でわかった。長期間の使用が前提で、中東・アフリカの活動拠点として新たに位置付ける。安全保障法制の審議と並行して検討を進め、2016年度予算に施設建設などに向けた必要経費を計上することを目標にする。
事実上の「海外基地」(防衛省関係者)で、安倍政権下で進む安保法制の転換によって自衛隊の海外任務が拡大することを見越した動きだ。
拠点は、ジブチ国際空港に隣接する12ヘクタールをジブチ政府から賃借。約47億円かけて司令部庁舎や隊舎、P3C哨戒機3機分の駐機場と1機分の格納庫などを建設し、11年6月に開設した。
海賊対処法に基づいて、哨戒機2機を運用する航空機部隊を中心にした海自の約110人と拠点警備に当たる陸自の約70人を4カ月交代で派遣。ソマリア沖・アデン湾を航行する客船や商船を海賊から守る派遣目的に沿って使われている。
防衛省や自衛隊の複数の幹部によると、検討中の計画では、海賊対策以外にも、災害派遣や国連平和維持活動(PKO)のほか、有事やテロなどの際に自衛隊部隊を送り込んだり、物資を輸送したりするアフリカ・中東の拠点として活用する。自衛隊法など安保法制を改正するなかで、多目的化する内容を定める。
あらかじめ配備した陸自の軽装甲機動車を使って陸路で邦人を救出する▽駐機スペースを拡大して政府専用機や輸送機で邦人を輸送する▽海賊対策として常駐させている哨戒機を中東有事の際に警戒監視のために現地に送る−−といった案が浮上しているという。
ジブチには、仏軍基地やアフリカ唯一の米軍基地があり、北大西洋条約機構(NATO)諸国も駐留する。防衛省は、15年度予算案に調査検討費として3千万円を計上。米英仏の各国軍の海外基地の活用法と、施設整備や維持の費用について調べる。
防衛省幹部は「積極的平和主義に基づけば、自衛隊が海外に唯一持つ拠点を生かす方策を考えるのは当然だ。米国やNATOとの連携、テロ情報の共有といった観点からも拠点の多目的化は有益だ」と説明する。(福井悠介、三輪さち子)
◇
〈ジブチ〉 正式名称はジブチ共和国。2万3200平方キロメートル(四国の約1・3倍に相当)に約90万人が暮らす。人口の94%がイスラム教徒。1977年にフランスから独立した後、内戦が断続していたが、2001年に終結した。サウジアラビアを中心とするアラブ穏健派との関係が深い。首都はジブチ。
ソマリア海賊船、上空1千mからの見分け方 P3C同乗
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ジブチ=三輪さち子2015年1月21日07時59分
ソマリア沖やアデン湾で商船を襲う海賊を取り締まるため、海上自衛隊は哨戒機P3Cで上空からも監視をしている。海自の活動拠点のあるジブチを訪問した中谷元・防衛相に18日に同行し、P3Cに試乗した。1千メートル上空からどうやって海賊船を見つけ出すのか、そのノウハウを間近に見た。
「民航機とは違って乗り心地は悪いですから、気分が悪くなったら言ってください」。搭乗前にこう説明を受けた。
P3Cは11人乗りの飛行機。離陸すると一気に約1千メートルの高さまで上がった。コックピットに座る2人のパイロットのうち、1人は若い女性だ。前方の窓からは、広大な海が広がっていた。
パイロットのすぐ後ろでせわしなく窓をのぞき込む男性がいた。「武器員」と呼ばれる彼が不審な船を捜すキーマンだ。肉眼で見たり、高い倍率でもぶれずに見えるスタビライザー付き双眼鏡をのぞいたりしている。怪しい船を見つけると、専用の窓から400ミリ望遠レンズのカメラで撮影する。積み荷を解析するためだ。
試乗中、漁船を発見。肉眼でもわかる大きさだ。
私も自分のカメラで撮影してみた。なかなか難しい。飛行機が漁船の上を回り込む瞬間にタイミングを合わせなければならない。数十秒の間にシャッターを押せたのは20回だった。しかし、真上から撮らなければ、何を積んでいるのか解析できない。私の写真は船体を斜めから撮ったものがほとんどだった。
飛行機が旋回し、もう一度チャンスが回ってきた。目の前の窓に海面が広がり、自分が落ちていくような気持ちになる。目が回る気がした。
撮った画像はP3Cの機内のシステムで解析する。機内で写真を拡大して、モニターで分析できる。はしごを積んでいないか、武器を積んでいないかなどをチェックする。怪しい場合は近くにいる艦艇に連絡をする。日本の自衛隊だけでなく米国、韓国、中国軍などの場合も多い。
海上にいる護衛艦でも周辺を監視しているが、水平線までしか見えない。上空からならばもっと広い範囲を監視することができる。中谷氏は「同じ海賊対処の目的では、中国とも韓国とも協力できているんですね」と感想を漏らした。
海賊は商船を襲撃したり、人質を取って身代金を要求したりと悪質だ。自衛隊が海賊対処に派遣された当初の2009年は年間200件以上あった海賊事件は今は年間10件程度まで減った。
約1時間で飛行は終わった。ジブチを拠点とするP3Cの飛行回数は、2014年11月末現在で約1200回。他国艦艇への情報提供は1万回を超える。(ジブチ=三輪さち子)
ジブチの自衛隊:海賊対策はいま/上 期限なき海外派遣 イスラム過激派の台頭で長期化
毎日新聞 2015年02月25日 東京夕刊
日本から約1万2000キロ離れたアフリカ東部のジブチ。コンクリート壁と鉄条網を巡らせた施設のゲート前で重さ20キロの防弾チョッキを着た陸上自衛隊員が自動小銃を構えて周囲を監視していた。
施設の名称は「派遣海賊対処行動部隊活動拠点」。12ヘクタール(東京ドーム2・5個分)の敷地に格納庫と箱形の宿舎が並び、隊員約180人が配置されている。2011年6月、首都ジブチ市のジブチ国際空港の端の土地を同国から借りて開設した。
ソマリア沖・アデン湾に出没する海賊から商船などを護衛するため、政府は09年、P3C哨戒機2機と護衛艦2隻をジブチに派遣した。当初は空港近くの米軍レモニエ基地を宿舎などとして間借りし、その後自前の施設を造った。ジブチは比較的治安が良く、米国のほか旧宗主国のフランスが駐留していることが、拠点に選んだ理由だ。
海賊の発生件数は11年の237件をピークに減少し、昨年は11件だった。海賊対策の任務の重要性は小さくなりつつあるようにみえる。だが政府は毎年7月に派遣期間の延長を閣議決定しており、撤収の見通しはない。防衛省は「(隣国の)ソマリアの政情不安など海賊発生の原因は解決していない」と説明。イスラム過激派が台頭する周辺国の状況を理由に派遣を長期化させる意図が浮かぶ。
1991年のペルシャ湾への掃海艇派遣以来、自衛隊の海外派遣は国連平和維持活動(PKO)などを除き個別の法律で行われてきた。アフガニスタン戦争に絡んで01年11月〜10年1月にインド洋で給油活動を行った際はテロ対策特別措置法、イラク戦争で04年1月〜09年2月に輸送支援などを実施した時にはイラク復興特別措置法を制定した。いずれも時限立法だ。
安倍政権は現在、海外派遣を個別の時限立法でなく恒久法で行うことを目指している。ジブチの海賊対処拠点は、それを先取りするかのように事実上の「期限なき海外派遣拠点」となっている。
長引く派遣に危険はないのか。元防衛官僚で内閣官房副長官補も務めた柳沢協二さんは「中東、アフリカ地域に自衛隊がいることで、米から『テロとの戦い』への協力を求められ、それが後方支援であっても日本がテロのターゲットにされる恐れは十分ある」と指摘する。
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ジブチを拠点とする自衛隊の海賊対処活動が始まって6年。安倍政権が安全保障政策の転換を進めるなか、その活動現場も変容している。ジブチ拠点の現状を報告する。【斎藤良太】
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■ことば
◇海賊対処活動
アフリカ東部のソマリア沖・アデン湾で、船舶が海賊に襲われ乗員の身代金を要求される事件が続発し、欧米各国が警備のため艦艇を派遣。日本は2009年3月に護衛艦2隻など自衛隊を派遣した。当初は日本の船舶だけを護衛対象にしたが、同年7月に海賊対処法が施行され、他国船舶の護衛と警察権の範囲での武器使用が可能になった。
ジブチの自衛隊:海賊対策はいま/上 期限なき海外派遣 イスラム過激派の台頭で長期化
ジブチの自衛隊:海賊対策はいま/中 忍び寄るテロの脅威
毎日新聞 2015年02月26日 東京夕刊
海上自衛隊のP3C哨戒機は、ジブチの海賊対処拠点を離陸すると、ソマリア沖・アデン湾の上空を飛行した。搭乗員が船舶を見つけると1000メートルまで高度を下げ、デジタルカメラで撮影する。武器を積んでいないかや、海賊に占拠されていないかを画像で調べる。記者は今年1月21日に同乗した。
撮影した画像はパソコンの画面に拡大し、国籍や船名を識別する。日本近海では識別を容易にするため高度150メートルまで降下する。ここでは自動小銃やロケット砲で海賊の攻撃を受けたときに備え、一定以上の高度を保つ。
識別した情報は警備中の他国の艦艇や航行中の商船に無線などで提供する。哨戒ヘリを搭載する護衛艦2隻も派遣。米豪などとの共同警備活動にも参加している。
自衛隊のジブチへの派遣目的は、アデン湾での海賊に対する警備だ。しかし周辺国ではイスラム過激派のテロへの懸念が深刻化している。隣国ソマリアでは「アルシャバブ」、イエメンでは「アラビア半島のアルカイダ」が勢力をもつ。
ジブチ沿岸警備隊のワイス・ボゴール司令官は「この海域で行われるドラッグや武器の取引に、過激派が関与している可能性がある」と指摘する。アデン湾に展開する米国や欧州諸国の艦艇は、過激派とつながりの深い密入国や密輸の取り締まりに乗り出している。自衛隊の拠点に隣接する米軍レモニエ基地はアフリカでただ一つの米軍基地。ここから無人機などでイスラム過激派の活動を監視している。
昨年5月にはジブチ市のレストランで「アルシャバブ」の自爆テロ事件が発生。トルコ人が死亡し、フランス人らが負傷した。自衛隊のジブチ拠点はイスラム過激派やテロの脅威と隣り合わせにある。派遣海賊対処行動支援隊司令の飯塚祥平1等海佐(48)は「危険は十分承知して活動している」と言う。
元海上自衛官の小原凡司・東京財団研究員は「海賊対処に活動を限定されたままでは過激派が絡んだ事象に対応できない。想定外の事態にも対応できる法整備が必要な段階にきている」と指摘する。
1月18日、中谷元防衛相がジブチ拠点を視察した。中谷氏は報道陣に「各国はテロ対策に懸命に取り組んでいる。日本も積極的に関われるよう検討する必要がある」と話し、ジブチ拠点の任務をテロ対策にも広げようとの意向をにじませた。【斎藤良太】
ジブチの自衛隊:海賊対策はいま/下 容易でない「地位向上」
毎日新聞 2015年02月27日 東京夕刊
自衛隊拠点の視察のためジブチを訪れた中谷元防衛相は1月18日、首都ジブチ市内の「パレ・ド・プープル(国民会館)」で同国のハッサン国防相と会談した。建物には「非常口」を意味する中国語の「安全出口」という表示があり、中国の経済援助で建てられたことがわかる。開発援助や企業進出でアフリカでの存在感を強める中国。ジブチも例外ではない。
外務省によると、経済協力開発機構(OECD)加盟国がジブチに対し2010年に経済協力を行った実績額は、フランス(4622万ドル)▽日本(3798万ドル)▽米国(1329万ドル)の順で日本は2位だ。
OECDに加盟していない中国の経済援助の実態は不明だが、中国政府の統計によると、13年に中国の企業などがジブチで受注したインフラ工事の金額は3億8712万ドル。中国の建設大手「中国鉄建」傘下の「中国土木工程集団」は、ジブチの港湾・鉄道のほか建設中の新空港の建設に参画する。1月19日に開かれた新空港の起工式には、ジブチのゲレ大統領が出席した。「まさか起工式に大統領が出席するとは思わなかった」。在日本ジブチ大使館員の目には、大統領の出席が中国に対するジブチ政府の配慮の表れに映る。
日本の経済協力は無償資金協力や専門家派遣などが中心で、大規模インフラの整備などには関与していないという。
中国軍は現在、ジブチに駐留していないが、近くのアデン湾の海賊対策には艦艇を派遣している。「今後、中国軍がジブチに進出する可能性はある」と日本政府関係者は話す。
日本は11年に国連安全保障理事会常任理事国入りを目指し、ドイツ、インドなどと安保理改革の決議案を作成した。提出断念に追い込まれたのは、中国がアフリカ諸国を切り崩したことが原因だとされている。外務省関係者は「日本の常任理事国入りにはアフリカの支持拡大が不可欠。そのためには日本の顔が見える支援が何よりも重要だ。ジブチ拠点を日本の強みにしたい」と意気込む。
日本の経済協力や自衛隊派遣は、アフリカにおける日本の存在感にどれだけの影響を及ぼしているのか。ジブチ政府高官は取材に対し、こう話した。「ジブチの発展には、日本だけでなく、中国を含めたあらゆる国の支援が必要だ」。その言葉からは、支援国の中での特別な存在感はうかがえない。むしろ「地位向上」が容易でないことを示している。【斎藤良太】
空爆逃れてイエメン脱出、「地獄の航海」経てアフリカへ
cnn.co.jp
2015.04.10 Fri posted at 15:03 JST
ジブチ(CNN) 孫娘をひざに乗せた女性は、その頬の涙をスカーフでぬぐっていた。まだ生後数カ月。空爆が始まった夜、イエメン南西部ビリム島のモスクで夜通し孫娘の耳をふさごうとし続けた。爆音が鳴り響くたび、孫娘は泣き叫んだ。
イエメンでサウジアラビアが空爆を開始して以来、何千人もの市民らが激しい爆撃を逃れ、海を渡って対岸のアフリカ東部ジブチに避難している。
アミナ・アリ・カシムさんはミサイルが着弾する直前に自宅から避難して、最悪の事態は免れた。「近所の人が夫に『すぐに避難を』と叫び、私たちは夢中で逃げた。家を離れた直後、すぐ近くに1発目のミサイルが、続いて2発目が落ちた。地上の物は全部燃えた」と振り返る。
日が昇るとほかの3家族と共に、一家でビリム島を出港。25人を詰め込んだ小舟は、バブ・エル・マンデブ海峡を渡って対岸のジブチを目指した。
原油タンカーや貨物船が頻繁に往来する同海峡は今、イエメンからの難民を乗せた粗末な漁船が押し寄せる。
カシムさんの息子のモハメドさんはこの航海を、「地獄に飛び込んだようなもの」だったと形容する。「女性たちは激しい吐き気に見舞われた。あまりに悲惨な光景だった」
5時間かかってようやくジブチ北部に到着した。政府はオボックに仮設避難所を設置しており、今後さらに数千人の難民が押し寄せると国連は予想する。
カシムさん一家は間もなく、郊外にあるビニールテントに移らなければならないという。イエメンに残してきた2人の娘とは連絡が取れず、耐えられないほどの不安が募る。ひざの上の孫娘に目をやって、「もう泣き止むことができないのかと思った。その恐怖は一生付いて回るかもしれない」とつぶやいた。
米国が危機感、アフリカの小国に中国が軍事基地設置
軍事的要衝の地「ジブチ」に日本を見習い拠点を確保
Japan Business Press
2015.7.30(木) 北村 淳
オバマ米大統領がケニアとエチオピアを訪問した。アメリカのメディアでは初訪問ということで何かと話題が尽きないようである。
一方、軍事関係者の間では、エチオピアと国境を接するジブチと中国の関係が関心の的となっている。というのは、これまで親米路線を売り物にしてきたジブチのゲレ大統領が、中国に対してジブチ国内に軍事拠点を設置することを認めたからである。
“基地依存国家”のジブチ
ジブチ(ジブチ共和国)は、マンダブ海峡に面する軍事的要衝の地である。マンダブ海峡はジブチとイエメンを両岸とし、最も狭い地点の幅はおよそ29キロメートルという狭い海峡である。紅海とアデン湾を結ぶこの海峡には、2海里(およそ3.7キロメートル)幅の航路帯が往復それぞれ1本ずつ設定されており、地中海〜スエズ運河〜紅海〜アデン湾〜アラビア海〜インド洋を航行する船舶・艦艇にとってのチョークポイントとなっている。
このような軍事的要衝のジブチには、フランス軍、アメリカ軍、それに自衛隊の基地が設置されている。ジブチ経済にとって、アメリカ、フランスそれに日本から得ている基地使用料やそれらの基地での雇用が生み出している収入は2014年度には16億ドルであった。そのためジブチは“基地依存国家”と呼ばれている。
これら3カ国の基地は、いずれもジブチの首都ジブチ市にあるジブチ国際空港に隣接して設置されている。旧宗主国であったフランスは、ジブチとの条約に基づいてジブチ防衛のための兵力およそ2000名と戦闘機やヘリコプターなどを駐留させている。
キャンプレモニアと呼ばれるアメリカ軍基地は国際空港よりも広大であり、アフリカ大陸にただ1つ設置されているアメリカ軍基地である。アメリカ軍将兵や民間軍事会社関係者などおよそ4500名の米軍関係者がキャンプレモニアに滞在しており、この地域における情報活動や特殊作戦、それに東アフリカ諸国軍に対する軍事訓練の拠点となっている。
唯一の自衛隊海外基地であるジブチ自衛隊基地には、2機の海上自衛隊P-3哨戒機が派遣されている。そして、それらの哨戒機を運用する海自航空部隊と、司令部の運営や基地の警備などに当たる支援部隊(海自・陸自)とから構成される海賊対処部隊が、2011年以来常駐している。この海賊対処部隊は、2008年以来、国際社会が協力して実施しているソマリア沖海賊鎮圧活動に参加している自衛隊部隊の1つである。
ソマリア沖の海賊に対処する多国籍海軍
2005年頃からソマリア沖では海賊が横行し始め、2006年にはアメリカ海軍駆逐艦まで海賊に襲撃された。2007年には日本関係のタンカーを含む多くの大型船が海賊に乗っ取られ、その猛威は納まるところを知らなかった。
2008年4月にフランスの豪華ヨットまで海賊に襲われると、国際社会が協力してソマリア沖海賊を鎮圧しようという機運が盛り上がった。そして同年6月、国連安保理で国連加盟国が武力を行使してソマリア沖の海賊を鎮圧するという内容の安保理決議1816号が採択された。
ヨーロッパ連合(EU)は国連決議を実施するため、2008年12月からアタランタ作戦を開始。ソマリアEU海軍部隊を結成してソマリア沖に各国軍艦を派遣し、海賊鎮圧を実施している。また、中東地域で対テロ戦争を継続中のアメリカが主導する多国籍軍の海上部隊である多国籍軍合同海上部隊(CMF)は、2009年1月に海賊対処専門の第151合同任務部隊(CTF-151)を編成し、ソマリア沖海賊の鎮圧活動を強化した。
ソマリアEU海軍部隊やCTF-151以外にも、自衛隊、中国海軍、ロシア海軍、韓国海軍などをはじめとする各国の海軍が国連安保理決議1816号に基づくソマリア沖海賊鎮圧活動に艦艇などを送り込んでおり、時として相互に協力し合い、商船や航路帯の保護、海賊の鎮圧や捕縛、それに海難救助活動などを実施している。
高く評価されている海自の海賊対処活動
ジブチ基地を本拠地にしている海自航空部隊は、2011年7月にジブチ自衛隊基地が開設される以前の2009年5月から、ジブチのアメリカ軍基地に間借りする形で現在と同じジブチ国際空港を拠点に活動を開始していた。また、それに先立つ2009年3月からは、2隻の海上自衛隊護衛艦をアデン湾に派遣し、海賊対処活動を開始していた。
これらの海上自衛隊による海賊対処活動は、2008年に採択された国連安保理決議1816号に基づく国際協力活動として、また国内法的には海上警備行動の発令を受けて始められた(なお、日本の特異な国内法の制約により、海自艦艇には海上保安官も乗り込んでいる)。
そして、自衛隊の海上部隊と航空部隊の活動が開始された後の2009年6月には、「海賊対処法」(海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律)が成立し、それ以降はこの法律に基づいて自衛隊部隊が派遣されている。
こうしてすでに6年以上にもわたって日本が展開させている海自P-3哨戒機による空からの警戒監視活動は、自衛隊艦艇のみならずCTF-151をはじめとする各国艦艇の海賊対処活動にとって極めて重要な監視情報を提供し続けており、日本のプレゼンスを大きく示している。
2013年12月からは海上自衛隊海賊対処部隊も直接CTF-151の作戦に艦艇を編入させて作戦行動を実施しており、2014年2月からは海自P-3哨戒機もCTF-151の作戦に参加し始めた。これにより、アメリカが主導する多国籍海軍と一体化して情報の相互共有も図られ、日本による国際海賊対処活動は極めて効果的となった。
そして2015年5月からは、CMFの海賊対処活動を統括するCTF-151司令官を海上自衛隊の伊藤弘海将補が勤めており、ソマリア沖国際海賊鎮圧活動において、日本の影響力がますます高まった。
海賊対処で存在感を高める中国海軍
ソマリア沖周辺海域の海上航路帯における海賊の横行に対して、日本同様に関心が高かった中国も、日本に先立つ2009年1月からソマリア沖に軍艦を派遣し、アデン湾での海賊対処活動を開始した。駆逐艦あるいはフリゲート2隻と補給艦1隻から構成される人民解放軍海賊対処派遣隊の活動は現在も続けられている。
アメリカ海軍関係者たちによると「中国の海賊対処艦隊がアデン湾に派遣され始めた当時には、日本やアメリカなどの海軍に比べて様々な分野において中国海軍の練度は確かに低かった。しかし、数年間にわたる海賊対処活動を経験するにつれて、中国海軍の練度は目に見えて向上し、現在は先進海軍に比べても引けをとらないレベルに達している」という。
また、2011年3月に発生したリビア内戦に際して、中国政府は3万5000名にものぼる在リビア中国人をリビアから撤収させるために大量のチャーター機を送り込んだ。同時に、アデン湾に展開していた海軍部隊をリビアに急行させて、わずか数日間で3万5000名全員を国外に避難させることに成功した。この事例では、中国海軍の実力向上を国際海軍サークルに見せつけることとなった。
このように、ソマリア沖国際海賊鎮圧活動において、中国海軍も海上自衛隊と同じく、大きな存在感を示しているのである。
中国軍基地の出現を危惧する米軍
中国は、海賊対処活動による海軍のプレゼンスを示す努力と平行して、アフリカ諸国に対する膨大な額に上る経済的支援やインフラ整備活動を強力に推進している。そして、これまでアメリカに頼りきってきたジブチのゲレ大統領とアメリカの関係がぐらついているのを奇貨として、ジブチに対して急接近を開始した。
オバマ大統領によるアメリカ国防費大削減に伴い、ジブチのアメリカ軍基地でも雇用削減が打ち出されたため、ジブチの人々の雇用確保問題に発展してしまった。また、1999年以降大統領の地位を占め続けているゲレ大統領は独裁色を強めているとして、オバマ政権は批判を強めている。そのため、アメリカとジブチとの関係はギクシャクしだしているのだ。
そこに目をつけたのが中国である。これまでのようにアメリカ軍基地を最大のテナントとしていることに不安を覚えはじめたゲレ大統領に対して、海賊対処活動の継続強化に必要な中国海軍の拠点をジブチに設置する話を持ちかけた。アメリカ軍以上の基地テナント料収入、様々な大規模建設プロジェクト、大型の人民解放軍基地での雇用などが見込めるため、ゲレ大統領は中国による基地設置を承認した。
人民解放軍ジブチ基地は、ジブチ市と海を隔てて近接しているオボックに建設される予定である。オボックには小規模な港と空港があるため、中国が南シナ海での人工島建設で示した海底掘削や埋め立て技術を投入すれば、たちどころにオボックに本格的な港湾施設が誕生してしまい、人民解放軍はインド洋の西端に本格的な拠点を手に入れることになると米軍関係者たちは分析している。
また、軍港とともに航空施設も整備することは確実であると考えられている。最近になって人民解放軍が開発を進めている海洋哨戒機をジブチ航空基地に持ち込む可能性も視野に入れなければならない。なんといっても、海上自衛隊が2機の哨戒機をジブチに派遣していることが海賊対処活動に大きく役立っていることは各国海軍が認めているのであるから、自衛隊を見習って中国海軍が哨戒機を派遣することに国際社会が異を唱える道理はないのである。
哨戒機派遣だけでない。人民解放軍ジブチ基地には、中国西部新疆ウイグル自治区南部の航空基地から中国空軍のイリューシン76戦略輸送機がノンストップで到着可能である。人民解放軍が、積載量40トンの大型輸送機で本国との補給を実施できる位置に本格的軍事拠点を開設することは、ジブチのアメリカ軍に対して人民解放軍が優勢な立場を占めかねないと、アメリカ軍関係戦略家たちは大いなる危惧を抱いている。
米国が危機感、アフリカの小国に中国が軍事基地設置 軍事的要衝の地「ジブチ」に日本を見習い拠点を確保
中国海軍、ジブチに軍事拠点建設へ
AFP BB News
2015年12月05日 13:27 発信地:ヨハネスブルク/南アフリカ
【12月5日 AFP】ジブチのマハムド・アリ・ユスフ(Mahmoud Ali Yussef)外相は4日、同国に中国海軍初の軍事拠点が建設されることを明らかにした。これにより、中国は国際安全保障の面で存在感をさらに増すとみられる。
ジブチは、「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれるアフリカ北東部で戦略上重要な場所とみられており、既に米軍やフランス軍、日本の自衛隊の拠点がある。
南アフリカのヨハネスブルク(Johannesburg)で開幕したアフリカの首脳らが出席した会議でユスフ外相はAFPの取材に対し、「交渉は終了し、中国の海軍基地がジブチに建設されることになった」とし、さらに、「基地建設は海賊対策のためだ…とりわけ、世界中の国々にとっても非常に重要な(ジブチ沖の)海峡を通過する中国の船舶の安全を確保するためだ」と述べた。
またユスフ外相は「ここ数年はソマリアが不安定で、この地域は海賊やテロリストにとって避難場所となってきた」と語った。
今年5月、ジブチのイスマイル・オマル・ゲレ(Ismail Omar Guelleh)大統領はAFPの取材に対して、軍事基地建設について中国と話し合いを進めていることを明らかにしていた。
ゲレ大統領は、ヨハネスブルクでの首脳会議で中国の習近平(Xi Jinping)国家主席と会談した。中国はその首脳会議で、アフリカに対する支援や融資として600億ドル(約7兆4000億円)の拠出を発表している。(c)AFP
ジブチの自衛隊拠点 首相「PKOに活用」 活動拡大を念頭
東京新聞
2016年1月13日 朝刊
衆院予算委員会は十二日、安倍晋三首相と全閣僚が出席し、二〇一五年度補正予算案に関する二日間の基本的質疑を終えた。首相はソマリア沖の海賊対策のため、アフリカ東部のジブチに置く自衛隊の活動拠点について「今後も国際平和協力活動を実施する方針であり、日本から遠く離れた地域での活動を実施する観点から、ジブチの拠点を一層活用する方策を検討している」と述べた。海賊対処に加え、国連平和維持活動(PKO)の拠点として活用していく考えを示した。
政府は二〇一三年末にまとめた防衛計画の大綱で、国際平和協力活動のためにジブチにある自衛隊の活動拠点の活用を検討する方針を策定した。中谷元・防衛相は十二日の答弁で、ジブチの拠点から南スーダンのPKO派遣部隊に、物資を輸送した実績があることも明らかにした。同じような活動を拡大することが念頭にあるとみられる。
ソマリア沖での海賊事件は自衛隊派遣当初の〇九年は発生件数が二百件台だったが、一五年はゼロ。首相は自衛隊の警戒活動を中止すれば「海賊事案が起きることが十分に推測される」として、海賊対策は続ける考えを示した。共産党の笠井亮氏の質問に答えた。
首相は十七日告示・二十四日投開票の沖縄県宜野湾(ぎのわん)市長選で、米軍普天間(ふてんま)飛行場の移設問題が争点となっていることについて「安全保障に関わることは国全体で決めることで、一地域の選挙で決定するものではない」と述べた。改憲については「来るべき選挙でも政権構想に示すことになる」と述べ、夏の参院選で自民党の公約にした上で、争点とする考えを示した。
消費税率を10%に引き上げる際に導入する軽減税率の財源については、首相は税収が当初の見積もりより増える上振れ分の活用を検討する考えを示した。
麻生太郎財務相は宅配など定期購読の新聞を軽減税率の適用対象とする理由として、日常生活の情報媒体として全国の読者に幅広く読まれている点を挙げた。
中国初の海外軍事基地がジブチで着工、軍拡に懸念の声−中国メディア
Record China
配信日時:2016年2月6日(土) 11時50分
2016年2月5日、新華網は記事「中国初の海外軍事基地が間もなく着工、日米とお隣さんに」を掲載した。
アフリカ北東部のジブチでまもなく中国人民解放軍初の海外軍事基地の建設が始まる。海賊対策、人道的救援が目的だと説明されているが、中国の軍事拡張を懸念する声も上がっている。一方、ジブチのイスマイル・オマル・ゲレ大統領は「中国には他国同様、自分たちの権益を守る権利がある」と擁護する。
ジブチはアデン湾に位置する戦略的要衝の位置にある。「アフリカの角」と呼ばれるゆえんだ。アデン湾に面し、ソマリア海賊対策の拠点でもある。中国以外に米国、日本、フランスが同国に海外基地を擁している。
(翻訳・編集/増田聡太郎)
【栃木】
ジブチ派遣隊員が県庁で帰国報告 福田知事がねぎらう
東京新聞
2016年2月22日
アフリカ・ジブチ共和国での海賊対処行動の支援隊として、陸上自衛隊宇都宮駐屯地(宇都宮市)から派遣された中央即応連隊の隊員ら約五十人が県庁を訪れ、福田富一知事に帰国報告をした。
宇都宮駐屯地からのジブチ派遣は通算九回目。今回の派遣は総勢七十人で、期間は昨年八月四日〜二月十三日。海上自衛隊の活動拠点の警備や現地基地の管理と警護に携わった。
県庁一階ロビーで開かれた報告会で、派遣警備隊の水関(みずせき)謙作隊長(35)が「多くの激励で任務を完遂できた。引き続き、県の代表としてまい進したい」と語ると、福田知事は「県民を代表して感謝したい」と述べた。
水関隊長は「最高気温が五〇度に達するなど厳しい気候が一番大変だったが、この経験を次の任務につなげたい」と話した。 (藤原哲也)
2016.2.28 16:46
中国がジブチに「海外初」の基地 海軍の補給拠点、欧米警戒 北アフリカや中東にらみ即応可能に
産経ニュース
中国は28日までにアフリカ東部ジブチで、中国海軍の「補給拠点」建設を始めた。中国がアフリカで影響力を強める中、人民解放軍の海外における初の「基地」として、欧米諸国は警戒感を高めている。
27日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、完成すれば、中国軍は北アフリカや中東、東南アジアでの緊急事態に即応できるようになるとの軍事専門家の見方を伝えた。
中国国防省の呉謙報道官は25日の記者会見で、ジブチ政府と設置をめぐる協定を結び「基礎工事が既に始まった」と確認。主な用途は、ソマリア沖アデン湾で海賊対策に当たる部隊の休息や、燃料や食料の補給と説明した。
中国は近年、ジブチの港湾、空港、鉄道整備への投資などを通じて同国と関係を強化。昨年11月に軍事拠点設置に向けた協議を進めていることを明らかにしていた。
ジブチには米軍がサハラ砂漠以南のアフリカで唯一の基地を置いているほか、旧宗主国フランスの基地、自衛隊の海外拠点もある。(共同)
ジブチ=エチオピアとの燃料製品パイプラインが6月に建設着工へ
リムマーケットニュース
2016/02/29 08:00
本特集記事(2015年11月18日付)で、ジブチ(首都:ジブチ)とエチオピア(首都:アジスアベバ)が、ディーゼルやガソリンなどの燃料を輸送するパイプライン(HOAP)の建設に関連し、その枠組み協定に調印したことを伝えた。このほど、本格的な工事が6月にスタートすることが明らかとなった。
2月12日付のサイト『スーダン・タイムズ』などによると、米国とジブチの各政府関係者との協議で、今年6月からHOAP建設工事の開始が明らかになったという。米投資企業のブラックストーンと南アフリカの石油・天然ガス企業であるMOGが折半出資で合弁企業(JV)を設立し、建設費用は15億5,000万ドルを見込む。完工は2018年を予定。ジブチのダメージョ港とエチオピア中央部のアワシュを結ぶパイプラインは全長550キロメートルで、輸送能力は日量24万バレル(原油換算)になる見通しだ。
一方、建設着工に関連し、政治的な不安定さが危惧されているのも事実だ。イスラム教スンニ派のサウジアラビアが1月3日、イランとの外交断絶に踏み切ると、スンニ派のバーレーンやスーダンのほか、人口約90万で、その9割をスンニ派が占めるジブチもサウジに同調し、イスラム教シーア派のイランとの外交関係を断ち切った。
結果として、欧米などによる経済制裁の解除を受けて、欧州への原油輸出が始まったイランにとって、輸送航路の大動脈であるホルムズ海峡と並びバブ・エル・マンデブ海峡の航行が脅かされるとの懸念が広がっている。バブ・エル・マンデブ海峡の幅は、わずか約18マイル(30キロメートル)だ。ペルシャ湾からスエズ運河とスエズ−地中海(SUMED)パイプラインを経由するルートで、「アフリカの角」と呼ばれるソマリア半島とアラビア半島との間のチョークポイント(海上輸送路の渋滞地点)である。
米エネルギー情報局(EIA)によると、ホルムズ海峡ではここ数年、同海峡を通過した原油・石油製品が日量1,700万バレルとほぼ横ばいで推移しているのに対し、バブ・エル・マンデブ海峡を通過した原油・石油製品は、2009年の日量約290万バレルから13年には同380万バレルとなり、年を追うごとに増加傾向にあるとしている
ジブチ=エチオピアとの燃料製品パイプラインが6月に建設着工へ
自衛隊機はジブチ待機 防衛相、南スーダン情勢で
nikkei.com
2016/7/14 19:27
【ニューデリー=共同】中谷元・防衛相は14日午前(日本時間同日午後)、南スーダンの在留邦人の退避を支援するために近隣国ジブチに到着した航空自衛隊のC130輸送機について、当面ジブチに待機させる考えを示した。訪問先のインド・ニューデリーのホテルで記者団の質問に答えた。
C130輸送機に関し「政府としては在留邦人の安全確保を最優先するとの認識の下、対応に万全を期す考えだ。外務省などの依頼があれば、すぐに輸送ができるように待機している」と述べた。南スーダン情勢については「比較的落ち着いているが、引き続き緊張感を持ち、情勢を注視する」とした。
稲田防衛相、15日にジブチ訪問
nikkei.com
2016/8/14 20:34
【ドーハ=秋山裕之】稲田朋美防衛相は15日、自衛隊がソマリア沖アデン湾での海賊対処活動の拠点とするジブチを訪れる。14日は経由地のカタールで、中東の国際テロ情勢や、南スーダンで陸上自衛隊が参加する国連平和維持活動(PKO)の状況などについて報告を受けた。
終戦記念日の15日は日本を不在にするため、例年欠かしていなかった靖国神社の参拝は見送る。16日に帰国する。
自衛隊の国際貢献、戦略的運用必要に 防衛相が海賊対処視察
2016/8/16 0:46
日本経済新聞 電子版
【ジブチ=秋山裕之】稲田朋美防衛相が15日、自衛隊の海賊対処活動の拠点であるジブチを視察した。自衛隊の活動範囲を広げる安全保障関連法の制定を踏まえ、防衛相は自衛隊の積極活用に意欲を示す。しかし、日本周辺では中国や北朝鮮が挑発行為をエスカレートさせ、自衛隊の警戒監視への負担は増加。自衛隊の余力が限られる中、戦略的な運用が重要になっている。
「海賊対処という非常に重要な役割を担っており、今後一層の活用のあり方についてもしっかりと検討したい」。防衛相は15日、ジブチの自衛隊拠点での任務を視察後、記者団に強調した。
自衛隊はこれまでイラク復興支援やインド洋での補給活動などの国際貢献を担ってきたが、現在は海賊対処と南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)のみ。安保法制定を踏まえ、こうした国際貢献をどう広げるかは今後の課題だ。
防衛相は同日のジブチ大統領府でのゲレ大統領との会談で自衛隊による海賊対処活動を継続する考えを表明。さらに10月からは陸上自衛隊約10人をジブチに派遣し、同国軍に重機の使い方を教えるなど、能力構築を支援する方針も伝達した。
集団的自衛権の行使を可能にする安保法は、海賊対処をはじめとした国際貢献の分野も任務を広げた。国際社会の平和と安定を脅かす場合を「国際平和共同対処事態」と定義し、自衛隊が他国軍に武器弾薬を提供するなどの後方支援をできるようにした。海賊発生件数が減少傾向にある中、中東やアフリカではテロ対策のニーズも高い。
ただ、防衛相の意欲とは裏腹に、自衛隊を国際貢献の新たな任務に派遣する余地は少ない。海洋進出を急ぐ中国海軍の挑発行動に備え、南西諸島での警戒監視に護衛艦を派遣。さらに今月8日からは北朝鮮のミサイル対応で自衛隊に破壊措置命令を常時出した状態にした。海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦が展開し、日本周辺では事実上の「二正面作戦」を強いられている。
PKOでも離れた場所で襲われた国連職員らを助ける「駆けつけ警護」や、他国軍との宿営地の共同防衛などが可能になった。政府は11月から南スーダンに派遣される部隊での任務付与を検討するが、現地の治安状況は悪化。どの程度任務を広げられるかは不透明だ。実際、危険度が高い巡回や検問といった「安全確保業務」は当面、実施しない。