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アフリカのアグロ燃料

アフリカアフリカ Africa 2014


おかねおくれ


作成:斉藤龍一郎
 *(特活)アフリカ日本協議会事務局長

アフリカ開発会議(TICAD)
気候変動とアフリカ
アフリカの食料・農業問題

アフリカン・バイオダイバーシティー・ネットワーク(ABN)が昨年7月に出した報告書を日本語に訳したものです。

目次



アフリカのアグロ燃料

序章


アフリカは、人口増加に伴って増え続ける様々な需要と、文化および自然がもたらした広大な遺産の保存を調和する試みの岐路に立っている。強力な外圧が、貧困緩和の名のもとに、土地、知識そして生物多様性の私有化・企業化を推し進めながら、大陸をそれ自身から出てくる解決策から引き離そうとし続けている。アグロ燃料の推進は「解決策」と呼ばれる最新のものであり、アフリカがエネルギー安全保障開発と農村部の貧困緩和をする機会として大規模に宣伝されている。

アフリカ・バイオダイバーシティー・ネットワーク(ABN)は1月、次のような行動計画を決定した。まず、ケニアでこの新しい開発を調査し、その開発が生物多様性と生活に及ぼす影響――すでに起こっているもの、及びこれから起こりうるもの――を分析し、そしてそれに対応する戦略を開発する、というものである。

第1段階として、ABNは、大規模なアグロ燃料を推進する新しい開発がアフリカの農民と地方コミュニティーの環境と生活に及ぼすであろうインパクトをはっきりさせる為に、ABNの4人のパートナーによるアフリカの4カ国(ベナン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア)での調査を支援した。同時にアフリカでのABNのパートナーの一つであるGRAINもアフリカに於けるアグロ燃料の影響に関する研究と分析を行った。本書はこれらの異なるパートナーによる作業をまとめたものであり、この問題に関する今後の研究はこれらの知見に基づいて行われる。4カ国の調査は、この出版物のために簡略にまとめられている。本書の最後に読者は、いくつかのABNパートナーによる、EUバイオ燃料ターゲットに対する応答――我々が抱く多くの懸念を表明し、北に住む人々に彼らの燃料要求が南の食料安全保障に及ぼす影響に関して考えるよう促すもの――を目にすることができる。


バイオ燃料 vs アグロ燃料

適切な用語を使うことは非常に重要である。言葉は真実を覆うことができるし、我々がよくバイオテクノロジーや遺伝子工学で見かけるように、よい技術とよくない技術を一括りにすることができる。バイオ燃料には、例えば木材、糞、バガスなどのような伝統的な生物資源利用も含まれる。しかしながら、燃料のために作物を大規模に育てるプロセスから「アグロ燃料」と呼ぶことにする。これは、ラテンアメリカの社会運動が、このような破壊的なプロセスを指して「燃料のための農業」と呼んだ例にならったものである。

アグロ燃料 なぜ問題なのか?

新しい大規模なアグロ燃料プロジェクトが、アフリカ中へ雨後のタケノコのように広がっている。アフリカは、バイオ燃料輸出が開発、経済そして環境に寄与すると、言われ続けている。そこにはこれらの新しい開発に対する高いレベルでの熱気が存在している。アフリカ諸国の政府は、アグロ燃料イニシアチブによってヨーロッパが渇望する燃料を提供することにより国を貧困から救い上げることを望み、また同時にアフリカ自身のエネルギー安全保障を改善することを期待しているのである。

しかしながら、アグロ燃料は、解決できる以上の問題をもたらす可能性があるとの警告がいくつもなされている。パームオイル生産がインドネシアの熱帯雨林を破壊に導き、大豆とサトウキビ生産がブラジルでアマゾンの伐採を引き起こし、さらには「エタノール効果[補足説明:「エタノール製造業者による新規需要」]」により世界の穀物価格が急上昇していることを、我々は目の当たりにしてきた。同時にGM(遺伝子組み換え)企業は、アグロ燃料がGM作物の商業化に今のところ最も抵抗してきた大陸への入り口になることを確実にするように自らの位置を定めようとしている。

さらに、アグロ燃料による実際のエネルギーと炭素削減に関していくつもの重大な問題が存在する。いくつかの研究は、アグロ燃料生産には最終製品に含まれるエネルギーよりも多くのエネルギー(農業、加工、運輸)が使われることを指摘している。他の研究は、バイオ燃料プランテーションのための森林伐採と泥炭地火災によって、バイオディーゼルは、同量の化石燃料よりも、1ガロン当たり数倍もの二酸化炭素を発生させていると指摘している。

アフリカが、その領土、生物多様性、そして地方コミュニティーを乗っ取るバイオ燃料プランテーションに向けたさまざまな計画に突き進む前に、ABNは、アグロ燃料開発のために、大陸が支払うべき社会経済・環境コスト研究を進めなければならないという切迫した必要性を感じた。

最初の調査から、長期的にはコストが非常に高すぎるため、気候変動のインパクトもあいまって、アフリカは疲弊し、結果として貧困をさらに深める可能性が高いことが明らかである。短期的には、農民はすでに自身の土地から追われ、貴重な土地と森林は輸出向けアグロ燃料の大量生産の為に明け渡されている。その影響がアフリカのコミュニティーに対して破壊的なインパクトを及ぼすだけでなく、長期的にはアフリカ自身のエネルギー安全保障に影響を及ぼすことは疑う余地もない。アフリカの最も貴重な資源である生物多様性、 土地、そして人びとは、燃料に飢えるEU、アメリカ、中国やインドなどの国々に搾取されているのだ。

生物多様性と生活は気候変動に比して重要性が低いと考えられるべきではなく、むしろどのような気候変動戦略の成功にも欠かすことができない要因とみなされなければならない、というのがABNの立場である。

世界のバイオ燃料開発はアフリカ大陸に巨大な影響を及ぼすだろう。最も影響を受けるアフリカの地方コミュニティーからの声がこの課題に関する議論の際に聞かれることは絶対に必要である。

今日では、アフリカが求めている解決策はすでに先住文化と知識システムの内にあるということが、すでに広く受け入れられている。ABNは、アフリカの問題に対するアフリカの解決策を発掘し、実行し、そして大陸の生物多様性とコミュニティーの権利問題に関する連帯をめざすネットワークである。

我々は、これらの文書によって提示された証拠が、思考を刺激し、アフリカの人々だけでなく、新しい植民地化の動きに抵抗し、エネルギー危機と気候変動に対するアフリカに最も適していて、結果的に地球にも最も良い解決策を見つけようとする北にいる友人たちをも助けることを望んでいる。

関連資料:

GRAINが今年6月に発行した「Seeding(幼木)」はアグロ燃料(バイオ燃料)を特集しており、掘り下げた分析を掲載している。
英語 http://www.grain.org/go/agrofuels
フランス語 http://www.grain.org/go/agrocarburants
スペイン語 http://www.grain.oft/go/agrocombustibles

Seedlingのこの号で、GRAINはアグロ燃料に関する10のソースをリストアップしている。

Ten best resources on agrofuels
GRAIN

アグロ燃料に関する最近の記事、論文、その他の資料の量は驚くほどである。下記にはこのSeedlingを準備する際に特に役だったものをリストアップしている。

1)Worldwatch Institute
「運搬のためのバイオ燃料:21世紀のエネルギーと持続可能な農業の希望と世界的な可能性」,2007
http://tinyurl.com/27fdjz
ドイツ政府のためにWorldwatch Instituteにより編集されたこの論文の第一部は、アグロ燃料の最近の状況に関して良い概略を提供している。アグロ燃料を生産する国家、異なる原材料、異なる技術などをリストしている。この論文は、我々が正しい経済、社会、環境問題とみなすものをハイライトしているが、提起している政策は論文の分析から見ると不十分である。

2)Corporate Europe Observatory(CEO)
「EUアグロ燃料政策の問題点:企業利権に支配された政策」ブリーフィング・ペーパー2007年6月
http://tinyurl.com/2decyx
EU内で、企業がどのようにアグロ燃料政策のためのアジェンダを策定しているのかに関する興味深い分析であり、関連人名録、ヨーロッパでアジェンダ策定に従事している企業、彼らのEC(ヨーロッパ委員会)との直接のつながりそして彼らのロビー活動能力をハイライトしている。

3) Biofuelwatch et al.
「アグロ燃料−9つの鍵となる地域での真偽の確認に向けて」2007年4月
http://tinyurl.com/ypzxwu
9つの鍵となる分野でのアグロ燃料の影響をハイライトした良い論文である。その中には、気候変動問題、GMOの生物多様性、食料安全保障、そして地方開発の議論が含まれる。科学的証拠により信用性がある。

4) C.Ford Runge and Benjamin Senauer
「どのようにバイオ燃料が貧困者を飢えさせるか」Foreign Affairs、2007年3-6月
http://tinyurl.com3c6dlt
アグロ燃料の食料安全保障への影響を論じ、特にアメリカの政策の役割とその影響に焦点をあてている

5) FBOMS
「アグロビジネスとバイオ燃料:爆発する混合物」リオデジャネイロ、2006年
http://tinyurl.com/2fd3ds
ブラジルフォーラムのNGOと環境と開発に関する社会運動による良い著作。ブラジルのアグロ燃料プランテーションによる破壊的な影響に注目

6) World Rainforest Movement (WRM) Bulletin, 122,2006年11月、バイオ燃料 に関する特別問題
http://tinyurl.com/2nb4y9
アグロ燃料プランテーションの影響に関する異なる記事の編集。カメルーン、コロンビア、インドネシア、そしてマレーシアなど世界の異なる地域からの異なる問題に焦点をあてる。

7) Garten Rothkopf
「アメリカのグリーン・エネルギーに関する青写真」 Inter-American Development Bank,2007年
http://www.iadb.org/biofuels/
Inter-American Development Bankの視点による大規模な青写真研究。アグロ燃料に関して非常に好感触であるが、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカの異なる国々による投資状況に関する良い情報がある

8) Miguel Altieri and Elisabeth Bravo
「アメリカでの作物ベースバイオ燃料生産によるエコロジカルな社会的悲劇」2007年4月
http://www.foodfirst.org/node/1662
良い資料であり、南北アメリカのアグロ燃料のインパクトを分析。汚染と主要なアグロ燃料作物の土地浸食に関する良いデータがある。

9) David Noble
「企業気候クーデター」ZNet,2007年5月8日
http://tinyurl.com/yrs8jv
企業キャンペーンに関する非常によい分析であり、この企業キャンペーンは彼によると「地球温暖化に関する恐怖を、企業の影響力に対する攻撃に結びつかないように安全に導かれた親企業的アジェンダ」を持っている。しかしながらNobleは、Alexander Cockburnと同じく、この企業キャンペーンは人為による地球温暖化の恐怖を誇張したと主張している。この主張は、ZNetウェブ上での議論の中でGeorge Monbionや他のメンバーにより、批判されている。
http://www.zmag.org/debatesglobalwarming.html

10)Grist Magazine
"Fill'er Up"2006年12月4日
http://tinyurl.com/2r6k5m
ブログをやっているTom Philpottにより編集された特別なオンライン雑誌アメリカに焦点を当てながら、アグロ燃料を後押しする企業ロビー活動と、エタノール議論に関する大まかな背景に関する素晴らしい考察を提供する。

Websites:
1)http://www.biofuelwatch.org.uk
Biofuelwatchは近年アグロ燃料問題に関してもっとも情報を集めている活発なサイトである。彼らの「ソース」選択は今後の良い読書材料を提供する。また彼らは定期購読可能なサーバーのリストも運営している。

2)http://biopact.com
企業アグロ燃料宣伝ウェブサイトであり、ヨーロッパとアフリカの関係に焦点を当てている。

3)http://ethablog.blogspot.com/
ビジネスの観点からブラジルのエタノール産業に関するニュースや分析を提供する英語のブログ。また、ローカルな情報の便利な翻訳も提供している。




The African Biodiversity Network (ABN)

African Biodiversity Networkは、持続可能な生物多様性のマネージメントと、コミュニティーの権利の保護に関してアフリカを中心とした解決策を開発する為に作られたインフォーマルなネットワークである。ABNは伝統的な知識、農業と生物多様性に関連する権利、政策と法律に注目する。そのネットワークはアフリカとその経験を共有する地域において社会と環境問題に対する文化中心アプローチの先駆となり、これらの問題に対して大陸全土において統合されたアフリカの声を作り、手法を共同開発している。ABNはまた、同じような考えを持つ人々との国際的な連帯を育んでいる。

African Biodiversity Network (ABN)は以下のことを目指している。
・現場で、生物多様性の問題に従事している、あるいは関心のあるアフリカ人の活発で情報に基づくネットワークの拡大と確立。
・生物多様性とコミュニティーの権利を保護し、持続可能でエコロジカルな実践を行う為に、アフリカの地域と国家のキャパシティーを大きくする。
・アフリカ市民社会と政府が、生物多様性と地元の生活を守り向上させるような行動をとるように作用を促す。

Contact:
ABN Co-ordinator and Community
Ecological Governance Co-ordinator:
Mr. G athuru M b uru , Institute for
Culture and Ecology (ICE), Tel: + 254-722
250 550, g a thurum@yahoo.com
Cultural Biodiversity Co-ordinator:
Mr. Million Belay , Melca Mahiber, Ethiopia,
TEL : + 251-11-663-87-59
melca@ethionet.et
Seed Security and Genetic Engineering Coordinator:
Mr. G e bre m edhineB irega, Tel: +251
911 940616/+251 116 668759,
gbirega@gmail.com
ABN Network Administrator:
Mr Simon M i tambo , ABN Secretariat
(Kenya), Tel: + 254-722 250 550, mobile
+254 733 523 800 / +254 67 22338,
smitambo@yahoo.com




ケーススタディ:ウガンダ


このレポートは、Climate and Development InitiativesのTimothy Byakolaがウガンダにおけるアグロ燃料問題に関して行った調査の要約である。詳細については以下にコンタクトされたい。
acs@starcom.co.ug

ウガンダ政府は、国内で立ち上がっている一連のアグロ燃料イニシアティブをおおむね支持している。現在アグロ燃料イニシアティブが対象としている作物、また計画は幅広く、NGOが主導する現在の食料生産と平行してのヤトロファ栽培による家庭で必要とするエネルギーをまかなおうとするものから、現在のサトウキビ生産を地域の電力需要に必要な規模に拡大しようという計画、そしてまた全く新たに森林や農地を巨大なアグロ燃料プランテーションに転化しようというイニシアティブまである。

政策をめぐる状況

現在のところ、アグロ燃料生産にあたって従うべき法規制はない。エネルギー政策は、輸入石油依存の減少を意図するところから、バイオ燃料増産という目的をおおむね支持している。

ウガンダにおけるアグロ燃料生産の拡大は、未だ初期の段階である。政府は、目標を定め、アグロ燃料生産のために土地を転用することで生じうるリスクを特定するか、あるいはそうしたリスクを最小限にとどめるための戦略を策定すべき段階にある。しかし、いくつもの民間企業がすでにアグロ燃料生産計画を実行に移しつつある。大きな問題は、地域のエネルギー需要に対応することと輸出用生産とのさまざまな組み合わせの可能性に対する規模と影響が全く明らかにされていないことである。

ウガンダにおいては、アグロ燃料に好意的な雰囲気を醸し出すことで輸出に焦点をあてた海外の企業がバイオ燃料生産の方向性を支配しそうだ、とは認識されてはいない。国際市場での石油価格の上昇がウガンダにおいて液体バイオ燃料の値段を決定することになり、貧困者の手に届かない価格になることが予想される。ウガンダ人の大多数はあいもかわらずエネルギー供給問題に直面することになるだけでなく、食料に関する不安もさらに増大しそうである。

アグロ燃料イニシアティブ

ウガンダでは、バイオマスを燃料に使おうというイニシアティブがいくつか提唱されている。それらの中でもっとも廃棄物や及ぼす影響が少ない有望なものは、作物残滓をガス化しそのまま燃焼するものである。

しかし、アグロ燃料すなわち液体バイオ燃料が、まだ開発途上にあるにもかかわらず、最も注目を浴びている。いくつかのウガンダ人所有の企業は、ヤトロファ、ヒマそしてヒマワリからバイオディーゼルを生産することを望んでいる。

米国に本拠を置くDSK株式会社がウガンダでのバイオディーゼル生産を表明しているものの、まだ事業を開始してはいない。

生物多様性

これまでのところ、最も注目されているアグロ燃料開発計画は、ウガンダの主要な熱帯雨林であるマビラ森林保護区の三分の一をサトウキビ栽培に転用し電力とエタノールを生産しようと言うものである。このイニシアティブが実施されると、ナイル川およびビクトリア湖の主要な涵養林のうち7,100ヘクタールが伐採されることになる。

このイニシアティブは、東アフリカに展開するインド人企業のウガンダ法人であるウガンダ砂糖会社(Sugar Company of Uganda Ltd; SCOUL)によって推進されていた。ムセベニ大統領がこのイニシアティブを強力に後押しした。当初、大統領は環境問題を無視し、強い反対にもかかわらずこの計画を推進しようと試みた。

マビラの周囲のコミュニティでは、多くの人々がマビラ森林で生活の糧を得てきた。Najjembe村の長であるKyobe Kaasoによると、人々は、マビラ森林から、薬草、放牧地、女性たちの手芸品の材料、木材、薪そしてきのこを得ている。在住するガンダ人たちは、森林にある特定の樹木を伝統的な信仰の対象としている。コミュニティは、森林伐採が人々の権利を奪い、生活に影響を及ぼすことを恐れている。

7,100ヘクタールの森林伐採は流域の涵養能力を減少させ、この地域から湖や川に流入する水量を減少させることになる。マビラ森林は、ナイル川に流入する二つの川の水源であり、ビクトリア湖の保護林であり、また主要な工業地域の汚染を緩和している。マビラ森林は数百万トンの二酸化炭素(処理能力)に相当し、ウガンダ森林局(Uganda's National Forest Authority; NFA)によれば、マビラ森林伐採計画は、樹木312種、鳥類287種、そして蝶類199種を危機に追い込む。2006年に実施された調査の中で、ウガンダ森林局はマビラ森林伐採計画が希少なサルや鳥類を絶滅させるかもしれないと警告した。マビラおよび周囲の森林でのみ発見されている9種類の生物、Tit Hylia bird、蝶6種、蛾1種、マラリア治療に使われる灌木1種が絶滅する危険性があるのだ。

世界銀行の専門家たちは、上ナイルおよびビクトリア湖の低水位が生活、農業、降雨、発電に重大な影響を与えると警告している。森林伐採による土壌流出、干ばつ、洪水、地滑りなどがもたらす経済的影響はまだ推計されていないが、ウガンダの人々と経済にさらに大きな重荷を負わせることになるだろう。

森林保護区観光客の62%が、マビラ森林を訪れている。観光はウガンダの第二の外貨獲得源である。マビラ森林のエコシステムおよび生物多様性の経済的価値は1,400万米ドルと見積もられている。7,100ヘクタールの森林伐採により3,905,000トンの炭素が大気中に放出されると推計されている。また、森林伐採により徐々に温暖化が進むとも考えられる。

マビラ森林は、ウガンダ国民の良識と自尊心を包括するものの一つであり、伐採計画を推進しようとした政府は大きな国民による反発を受けた。2007年4月の大衆デモから暴動が発生し、数人が死亡し複数のキャンペーン指導者が逮捕された。

国内外からの継続した大衆的な圧力によって、内閣と政策当局者たちはこの森林伐採計画を見直さざるをえなくなった。マビラ森林の将来はまだ不確定である。しかし現時点では、巨大な大衆的圧力が貴重な生物多様性の高い環境をバイオ燃料を求める破壊的な圧力から守ってきたと言える。

一方、カランガラ島、ブガラ島ではここまでうまくはいかなかった。2007年の大衆的キャンペーンによって、ウガンダ政府は、ビクトリア湖に浮かぶ二つの島でパームオイル・プランテーションへ転用するために熱帯雨林を伐採するというBIDCO会社の計画を中断させた。この政策転換がなされるまでに、二つの島の6,000ヘクタールを超える自然林が伐採されてしまった。ブガラ島には、環境保全活動家たちが環境にとって重要だと言う希少な植物、サルそして鳥類が存在している。

食料安全保障

全ての砂糖企業が生産拡大のための土地を求めている。MushigaとKlunneが行ったマシンディ地区でのサトウキビ生産地拡大に関する調査によると、森林及び農地がサトウキビ生産地に転用されていた(Mushiga 2001)。

たとえばKadekulu村、Nyabyeya地区のJoyce Bakegakeは6エーカーを耕作し、森林保護区から薪を集めることができていた。この森林がサトウキビ生産地に転用されたため、彼女の家族も他の人々も耕地と薪を失った(Mushiga 2001)。サトウキビ生産拡大が計画通り進めば、多くの農民がJoyceと同じような問題に直面することになる。

ウガンダでは、もう一つのアグロ燃料開発も浮上している。パームオイル、トウモロコシ、大豆、ヒマワリから製造されるバイオディーゼルである。農産物を燃料生産に使うことは食料不足を招きかねない。とくにウガンダでは、前述の作物が主として食物として消費されているからである。

大規模生産者たちが、通常であれば食料生産に最適だと考えられる豊穣な土地を取り上げることがよくある。たいていの場合、農民への補償はごく限られており、その結果、農民たちは土地を持てなくなってしまう。アグロ燃料原料作物の生産が食料生産よりも利益につながると広く考えられるようになると、農民たちも大企業も食料作物ではなくアグロ燃料原料作物を増やせというプレッシャーを受けることになる。

結論

概観すると、ウガンダにおけるアグロ燃料、食料安全保障、生物多様性にかかわる将来像は固まってはいない。ムセベニ大統領が、当初マビラ森林保護区開発が引き起こす環境問題に無関心であったことから、政府はバイオ燃料政策と関連するものとして社会経済的問題、環境問題を考慮しているとは思われない。けれども、マビラ森林およびカランガラ島、ブガラ島問題でウガンダは国際社会から厳しい視線を向けられたことから、政府もたぶん教訓を得たことだろう。



ケーススタディ:ベナン


これはベナンのアグロ燃料の状況に関して、ネイチャートロピカル(Nature-Tropicale)のDoussou Bodjrenou が行った調査の概略である。

ベナンでは新しいアグロ燃料の開発に関する議論は、ほぼ初めから明らかに輸出向けの生産と利益の最大化を求めるものであった。個々の開発計画、開発対象となっている土地、政府と海外企業の交渉に関する情報は入手するのが難しくなっている。しかし、全ての兆候が何百万ヘクタールもの森林と農地が輸出のためのアグロ燃料生産地へ転換されるであろうことは、あらゆる兆候が示している。そしてその動きが、ベナンの人々、ベナンの食糧生産、ベナンの環境に与える影響に対する、不安の声や議論は聞こえてこない。

政府の政策

ベナンでのアグリ燃料産業の開発プランは政府の強い支持を受けていて、さらに経済開発のための政府農業回復プログラム(Agricultural Revival Programme)の重要な部分を構成している。

サトウキビはすでにアルコール製造工業に使われてきた。そしてベナンの小規模農民もすでにキャッサバ、綿実、ピーナッツの一家による収穫から生産されるバイオ燃料製造に寄与してきた。それらは現在の食品製造システムに統合されている。ベナン政府は、世界のバイオ燃料市場に参入するために、家内工業や小規模工場から、それらの作物を原料とする大規模アグロ燃料生産へと拡大する計画を立てている。

こうした開発が食料生産、土地の安全、生物多様性につながる環境へ及ぼす影響をほとんど考慮していないことは明白である。実際、それらすべての計画、目標、取引きの内容に拘わらず、これらの開発は実質的に規制を受けることなく進められている。

アグロ燃料イニシアティブ

ベナンの農業回復プログラムによって、大規模なヤシ油およびヤトロファ、ピーナッツからのバイオディーゼル製造、サトウキビ、キャッサバや他の作物からのバイオエタノール製造が拡大することになる。

最近、大統領がドイツを訪問した際、ベナンからの派遣団はマレーシア、中国、サウジアラビアのさまざまな投資家たちと会い、アグロ燃料分野の開発に関して議論した。さらにベナンはアグロ燃料に関してブラジルと協定を結び、その結果、相互に調査団を派遣しまた意見交換を行っている。
南アフリカとマレーシアから、いくつかの企業グループがベナンを訪問してバイオ燃料増産の可能性を検討している。彼らは、ベナン南部の30万〜40万ヘクタールの湿地帯をオイルパーム生産地に転換することを提案している。

現在、ベナン国内の多くの企業も作物から油を生産している。しかし1970年代に建てられた多くの工場は荒廃に陥っている。現在、インド資本のベナン企業がキャッサバとサトウキビからエタノールを製造する新しいいくつかの工場を設けることを提案している。

いくつかのNGOも、輸出向けバイオ燃料用ヤトロファ生産の促進に関心を持っている。これらのスキームがアフリカでの貧困を終わらせると主張しているのだ。アフリカ文化ブカチューヌプロジェクト(Africa Culture's Bukatunu Project)は小規模農場主に焦点を当てており、さらに(米国の)アフリカ成長機会法(AGOA)[簡単な注があるといい]によって提供された機会を前提としている。AGOAは米国により制定された、米国とアフリカの間の貿易自由化を求める法律だが、論議を呼ぶものだ。"再植民地化運動"と呼ぶ人たちもいる。

アグロ燃料に向け資金を提供している国内NGOは、2012年までに24万ヘクタールのヤトロファ生産を計画している。

生物多様性への影響

オイルパームは西アフリカの湿地帯に自生する植物である。政府は、ベナン南部のOueme、Plateau、Atlantic、Mono、Couffo、Zouで、オイルパーム・プランテーションのために30万〜40万ヘクタールの土地を見つけようとしている。

ベナン政府は、バイオ燃料のために生態系を破壊しよとしていることを、公然とは認めてはいない。しかし、小規模農場主にも大規模工場にも、アグロ燃料生産のために何百、何千ヘクタールもの土地を見つけるように促進しており、生産拡大が残された湿地、神聖かつ公共の森林、休閑地、そして生物多様性に恵まれたベナン南部の生態系に侵入していくのは明らかである。

食料安全保障と暮らし

オイルパーム増産の大多数が見込まれているベナン南部では、わずか国土の7.7%の土地に国内人口の50%がいる。このことは、ベナンの主要な農地をめぐりアグロ燃料と食料生産が競合することを示している。

ベナン政府とIMFのベナン・リストラクチャリング・プログラムの策定チームよって実施される農業回復戦略は、食料作物とアグロ燃料の両方のために、耕作地の大きな拡大を求めている。食料作物の多くはアグロ燃料生産にも使われることになる。製造企業がこれらのイニシアティブのために土地を得ることも支援の対象とされる。どこから、そしてだれからこの土地を調達するのか、政策は明らかにしていないが、小規模農場主が企業と利害がぶつかるところから締め出されることになりそうだ。

ベナンの増産計画、特に綿花ほかの輸出作物の増産計画は、予言された通りのパターンを踏んできた。企業の代理人が、有利な成果と良い売り値を約束しながら、文字を知らない小農に新しい作物を導入するよう説得してきた。種と化学製品を掛け払いで購入できると説得され、農場主は企業への借金を抱えることになった。

けれども、作物が実を結んだ後の現実は違っていた。企業は以前の約束より低い割合しか払わず、最初の投入の費用を返済するため、農民は同じ企業に借金を抱えることになる。アグロ燃料に関しては違うパターンがあり得ると考える理由はどこにもない。

ベナン北部、バニコアラ(Banikoara)地区の農民たちは、換金作物である綿花、ピーナッツのために食料作物栽培をやめた。今日、食料不足が広がっている。かつては自給できていたところで、今はWFPとカトリック・リリーフ・サービス(Catholic Relief Services)が人々に食料を供給している。

ベナンの人口増加率を見ると、特に都市化が進んだ地域では、食料供給を維持するために、食料作物、特に根茎作物の増産が必要なことは明らかである。しかし、バイオ燃料生産のために、農民は食料作物のための土地を減らそうとしており、その結果、食料不足が起きるだろう。ほとんどの住民の購買力はとても低く、備蓄の減少による食料の値上がりは、質の悪い食料の輸入と分配、食料援助への従属そしておそらく遺伝子組換作物導入という結果に至るだろう。

単一作物栽培が地域社会を惑わす

輸出向けアグロ燃料の大規模生産のために、樹木、サトウキビ、トウモロコシ、ヤシほかの作物の大規模な単一栽培農園が必要とされる。こうした農園が、世界中でこれまで地方からの人口流出と森林伐採の第一の原因となってきた。

すでにベナン南部にはいくつかのヤシの単一栽培農園が存在する。しかし、地域のコミュニティが試みたヤシ製品販売の複雑さと難しさを見ると、これらの農園は、未来の開発に対しての警告にとどめておくべきである。ヤシ販売に関して政府と協力している地域の協同組織は腐敗と紛争の歴史によって苦しめられてきた。こうした状況の中に、民間企業が、コミュニティからもっと高い値段で油を直接購入すると申し出て参入してきた。しかし、コミュニティが方針を変え、製品を企業に与えた時、企業はきちんと支払わなかった。ベナンのヤシ油コミュニティは困難に直面したが、政府からの同情や手助けはない。

輸出による利益の最大限化

ベナンはアフリカのいくつかの国とは異なり、バイオ燃料に関する議論が国のエネルギー安全保障の必要に応じるという考えにほとんど触れていない。代わりに、政府は、バイオ燃料が、国有企業、民間企業双方にとって利益を最大にするものであることを明らかにしている。しかし、それらの利益がベナンの農村の貧困者に降りてくることはありそうもない。
対象とされている土地の広がりは莫大である。しかしながら農業回復計画において計画されている新しい土地のどのくらいが、アグロ燃料にあてられるのかを知ることは簡単ではない。の期限である2011年までに、300万ヘクタールの新しい土地を見出すことが予定されている。

ベナンにおけるバイオ燃料生産計画の規模を見れば、ベナンの人々の食料安全保障、土地に関する権利、生態環境を脅かす巨大な圧力がかかることに疑いの余地はない。すでに輸出向け綿花生産に焦点をあてたことによってもたらされた搾取と貧困に苦しむ国において、アグロ燃料に向けた大規模な土地転用は、ベナンの農村の貧困者が直面する諸問題を悪化させるだけである。




ケーススタディ:タンザニア


これはタンザニアのEnvirocareのAbdallah Mkindeeが行った調査の概要である。

タンザニアでは国内エネルギー需要に対応するバイオ燃料生産の可能性が大きな話題になっており、アグロ燃料作物、特にサトウキビ生産の可能性がある地域が選定されまた見積もりもなされている。しかし研究者たちは、バイオ燃料を使って農村部の貧困者へエネルギーを届けるという政府の狙いと、それを行うために貧困者を利用する土地から立ち退かせるという政策との間の矛盾を指摘している。

いくつかのNGOは農民コミュニティ、特に女性たちと共同で、ヤトロファを生産し、加工して主として石けんおよび油脂として利用するという一貫した取り組みを行っている。こうした取り組みが推進されているわけではない。バイオ燃料生産は大規模単一栽培生産モデルを目指している。

国内使用向け生産なのか輸出向け生産なのかという点で、政策が論議されている。いくつかの海外資本企業が、欧州エネルギー・イニシアティブ(EU Energy Initiative; EUEI)、世界銀行、米国国際開発庁(USAID)、英国国際開発省(DFID)といった国際開発機関からの支援を受けて、タンザニアでのアグロ燃料開発に投資している。国内エネルギー需要に対応するという話の多くは、タンザニアでアグロ燃料開発が課題とされることで、儲かる国際市場に焦点をあてた大規模プロジェクトへのドアを開くためのものであることは明らかだ。

輸出向けアグロ燃料生産は、タンザニアの人々にとって重大なことを暗示しており、ヤトロファのような作物を小規模食料生産に組み合わせることを認めるものではない。輸出向け生産は、効率、規模の経済、利益の最大化を求め、しばしば農民たちに圧力をかけようとする。土地利用と所有のたいへん大きな変化が日程にあがっており、それは燃料が食料に代わって育てられること、そして小農が巨大な民間プランテーションのために彼らの土地から追い出されることを意味している。

近年、干ばつの発生の増加によって、タンザニアでも気候変動が感じられるようになってきた。政府はこうした状況に対応して、食料援助の受入を増やすことを強いられている。タンザニアのNGOは、なぜ政府は最も灌漑された豊穣な地域での農業生産の増加に照準を当てず、食料生産のためではなく輸出用アグロ燃料生産のために貴重な水資源を求めるのかと自問している。

アグロ燃料政策

現時点では、タンザニアでのアグロ燃料に関する方針および生産を統括する政策も法律もない。エネルギー・鉱物省が主導して、2006年の4月、タンザニアにおける運輸用液体バイオ燃料研究をもとに、この部門の発展を促進しバイオ燃料の利用を奨励する法制定を行うためのバイオ燃料特別委員会が設立された。

特別委員会の目的には、バイオ燃料政策と法律の草案作成、生産地の選定、国内および海外の投資家へインセンティブ設定、減価償却や免税のような財政措置のオプションの案作りも含まれている。また、研究開発の促進、デモンストレーション施設の設置、植物油のみで走行するフレックス車両の販売促進も目的とされている。

10%エタノール(E10)および20%バイオディーゼル(B20)という運輸用混合バイオ燃料について、量的目標に設定することは可能である。計画された目標によれば、2010年までに10%エタノール用に2,670万リットルのエタノールが、20%バイオディーゼル用に13,800万リットルのバイオディーゼルが必要となる。

アグロ燃料イニシアティブ

いくつかの海外投資家は、特にサトウキビとオイル・パーム生産地として降雨量が多く河川へのアクセスが便利な最も肥沃な地域に狙いをつけている。

サトウキビからのエタノール生産は、政府の優先事項の上位に位置しており、バイオ燃料特別委員会は、アグロ燃料投資を誘致することのできる、Ruipa,、Ikongo、Mahurungu-Mtwara,、Usangu平野、Malagarasi,、Kilosa,、Babati、Hanangなどいくつかの大きな地域の選定をおこなってきた。

土地、暮らし、食料安全保障、生物多様性、水への脅威

スウェーデンの会社が、タンザニアで40万ヘクタールの土地のサトウキビ・プランテーションへの転用認定を予定している。これまでに選定された土地の1つは、インド洋に注ぎ込むWami川の大きな流れが作る沖積デルタ平原の中の広大なWami Basinである。このエリアは、水への良いアクセスがあり、現在は数千の小規模農民によって稲作が行われている。計画された農園は進められると、少なくとも1,000の稲作農民が立ち退きを迫られることになる。

こちらも新鮮な水へのアクセスのあるKigomaでは、マレーシア人とインドネシア人の投資家が、プランテーションと契約栽培による8,000ヘクタールのオイル・パーム栽培を含む、オイル・パーム・バイオディーゼルプロジェクトを計画している。オイル・パーム栽培は大きな投資を必要とし、また樹木は30年以上生きることを特筆しておかなければならない。オイル・パームの植え付け・栽培契約をする農民は、将来長年にわたって自身の土地の利用放棄を強いられるかもしれない。

イギリスのディーワンオイル(D1 Oils)の子会社である、タンザニアのディーワンオイル株式会社(D1 Oils Ltd)はバイオディーゼル向けヤトロファ、ひまわり栽培に大規模な投資をしている。会社は、契約栽培を活用し、タンザニアの全ての地区にバイオディーゼル処理施設を持つことを計画している。

ドイツの投資企業プロコン(PROKON)は、タンザニアの南西Mpanda地区で10,000ヘクタールのヤトロファ契約栽培を開始した。今年、最初の収穫が期待されており、作物を処理する製油工場もMpandaで計画されている。製造されたバイオディーゼルはタンザニアとドイツの両国の市場へ供給されることになる。

オランダ企業、ディリジェントエナジーシステム(Diligent Energy Systems)はタンザニアとコロンビアに活動範囲を広げている。ディリジェントは、農民にヤトロファ栽培に関するコンサルタントサービスを提供し、Bapati、Engaruka、Chalinze、PanganiとSingidaにヤトロファ集荷拠点を持っている。ディリジェントはHandeniでヤトロファ生産のための大きな土地を受け取ることになっている。Handeniのb農民たちは現在、トウモロコシと豆を含むさまざまな食料作物を育てている。

英国に拠点を置く多国籍企業、サンバイオフュエル(Sun biofuels)はLindi地区で、18,000ヘクタールのヤトロファ植え付けを計画している。現在キャッサバ、米、トウモロコシを育てている農民はヤトロファウトへの転作を推奨されるであろう。

その他、米英の投資家グループ、マレーシア投資家グループおよび米に拠点を置くベンチャーファンドが現在、オイル・パーム生産のために、10万ヘクタール以上の土地を探している。

投資家を魅了するために、タンザニア政府は国内のたくさんの肥沃な地区を分析・紹介してきた。それらの地区は水への最良のアクセスを持っているところであり、大体は農民がすでに食料を育てている場所である。

Ruipaでは、サトウキビ生産の可能性を認められた土地への投資が、1,000を越える稲作農民に立ち退きを迫ることになる。IkongoとMahurungu-Mtwaraでは、サトウキビ栽培が、小規模な米とトウモロコシ生産農民を強制退去させるだろう。

同様にサトウキビ生産の可能性を認められているUsangu Plainsでは、政府はすでに小規模農民の利害よりも大規模投資家受け入れに積極的である。最近、数千の米生産農民が、大規模プランテーションへの道を作るために、彼らの土地から強制退去させられた。そのプランテーションは、周囲の共同体の水へのアクセスを遮断し、水をめぐる争いが始まった。強制退去させられた農民は現在、生活および生産のための手だてをほとんど持たない惨めな状況で生活していると、いくつもの報告が伝えている。
稲作地帯であるKilosa、トウモロコシと小麦の産地であるBabati/Hanangも、サトウキビ栽培契約プログラムの候補地とされている。

バイオディーゼル生産を促進するタンザニアのNGO、フェリサ(FELISA)はすでにKigoma地区でオイル・パームを育てている。フェリサは、政府の投資可能性調査を支援し、60,000ヘクタールのバイオディーゼル生産適地を認定してきた。その結果、農民が強制退去を迫られる可能性がある。しかし、フェリサは、土地は政府所有のものであり、彼らの計画は正しいと主張している。このことから、土地の保有権を持たない多くのタンザニア農民達の不安定さがよくわかる。

Malagarasiは、タンザニア西部Kigoma地区の、コンゴに近い広大な地域である。そこはチンパンジーを含む多様な生物と豊かな森林が広がる地域である。Malagarasiは長年、インフラストラクチャー、農業への投資がほとんどされないまま放置されてきた。不幸なことに、生物多様性にとって最適な多くの降雨と高い気温は、オイル・パームとサトウキビ生産ため開発にとっても理想の状態でもある。

まとめ

タンザニア政府は、明確に急拡大をめざすアグロ燃料イニシアティブに積極的であり、広大な土地をサトウキビ、オイル・パーム、ヤトロファへと転用しつつある。すでに小規模農民によって食物生産のために使われている土地であるにもかかわらず、水への最良のアクセスのある最も肥沃な土地が狙われている。

国内エネルギー消費のためのバイオ燃料生産という話は、海外市場を狙った国際投資家の意志によって明らかに根拠を失っている。海外市場では、世界の原油価格高騰がアグロ燃料の値上がりも決めるている。さらにアグロ燃料の国内使用につながるタンザニアでのインフラストラクチャーへの投資は予定されていない。

タンザニアの多くの稲作地域は、アグロ燃料の犠牲になり、トウモロコシ、小麦、豆、キャッサバ産地も同様である。政府は、農民たちを暮らしと食物生産の手段から強制的に排除することについて、ほとんど不安を持っていないように見える。食物生産には必須の、特に気候変動の時には必要性の高いタンザニアの水資源もまた、燃料生産のために転用されるであろう。その結果、水をめぐる紛争が頻発することになるだろう。

干ばつ発生頻度増加に伴うタンザニアの恒常的な食料援助依存に加え、食料生産に代えて輸出用燃料を生産するという政策は、数年のうちに貧困と食料不足を深刻化させることになる。






ケーススタディ:ザンビア


元Pelum-ZambiaのClement Chjipokoloにより依頼され、コンサルタント、Matongo Mundiaにより行われた研究の要約である。詳細に関しては chipokoloc@lycos.coomを参照下さい。

ザンビアにおけるバイオ燃料産業の開発はまだ初期段階にあり、同地域の他の国々と同様に、ザンビア政府はそのバイオ燃料生産に関する支援と推進の意志を表している。バイオ燃料産業のために、政府はこれから政策や法制度を策定しなければならない。いくつかの民間バイオ燃料企業がザンビアのNGOを通じて活動しており、NGOの多くは今の所バイオ燃料開発を通じたエネルギー安全保障の向上戦略に対して協力的である。

大陸のその他の地域においてと同様に、ザンビアのバイオ燃料開発推進力の大半は、エネルギー安全保障と、社会と経済の開発を達成する話に基づくものである。しかしながら、ザンビアのバイオ燃料開発への投資と狙いは、国内市場を目的としているのか、はたまた輸出を目的としているのかが、明確でないと思われる。D1 Oilsなどの企業が、本当は輸出市場へのバイオ燃料生産に集中することを目論んでいながら、柔軟な法制度への道を開くために国内的エネルギー戦略としてバイオ燃料生産を推進している様に思える。

バイオ燃料生産が究極的には輸出市場を目的とし、ザンビア人へ利益をもたらすことへ失敗する可能性は、ザンビアがバイオ燃料精製施設を持っておらず、D1 Oilsがそれを南アフリカのDurbanに建設している事実に裏付けられる。ザンビアで新しく大規模な精製施設が近々作られなければ、バイオ燃料はほぼ確実に外国において精製されることとなる。一度製品が国を離れると、ヨーロッパの消費者の巨大な購買力が確実に勝るだろう。

政府の政策

2007年1月、レヴィー・ムワナワサ(Levy Mwanawasa)大統領により立ち上げられた第五次国家開発計画(FNDP)は、エネルギーをザンビアの社会的経済的開発の主要な要因と特定した。この計画は、バイオ燃料利用促進を通じてバイオ燃料産業の発展を促進することも目的としている。バイオ燃料セクターはザンビアにおいて比較的に新しく、これまでのところ民間セクターにより支持されている。

ザンビアのバイオ燃料協会(BAZ)は産業が繁栄するためのインセンティヴとして、全消費者に対する最小限度のバイオ燃料混合と、産業の発展のために資本解除を行うインセンティヴへの準備などに関する政府へのロビー活動を行っている。

アグロ燃料イニシアティヴ

最適な植物として、ヤトロファを使用したバイオディーゼルと灯油を生産することを第一の目標とするだろう。バイオエタノールに関して最適な原料作物は、サトウキビ、サトウモロコシとキャッサバである。

関わっている大企業の中には、D1 OilsとMarli Investmentsがある。2005年にMarli Investmentsはザンビアのアグロ燃料計画に対して160億米ドルを投資する計画があることを表明した。

D1 Oilsはバイオディーゼル材料としてヤトロファにのみ興味を示しており、既に農民と契約を結び始めると同時に、国内南部でNGOと提携して動いている。D1 OilsはChongwe地区のShikebata chiefdomにおいて、45000クタールの土地を所有し、耕作している。その他の進行中のプロジェクトとしては、北部地方Kasamaで15000ヘクタール、北西地区Solweziで600ヘクタールがある。その他のD1がザンビアで取りかかっているヤトロファ開発は、Ntambo chiefdomのLumwana地域と、北西地区のMumena chiefdom、東地区のMpezeni chiefdomコミュニティー、北地区のHope Development Institute、そして南地区のNkumbulaコミュニティーなどがある。

多くのプロジェクトは、契約栽培方式で行われており、D1 Africaが種や全ての必要なものを提供している。2006年5月現在、D1 Africaは4900ヘクタールのヤトロファを栽培していた。

契約栽培スキーム(out grower scheme)

「このヤトロファは私に綿花を思い起こさせる。何年も前、Dunavantがここに来たとき、もし我々が綿花を植えたならば、たくさんのお金が払われると約束された。我々は綿花でより多くのお金を稼ぐために、トウモロコシの栽培をやめた。しかし売るときが来たにも関わらず、ほんの少ししか支払われなかった。我々は伝統的な作物であるトウモロコシ栽培を怠ったため、飢えた。」(Josam Ndaabona、小規模農民、Choma)。

D1 OilsとMarli Investmentsはザンビアにおけるバイオ燃料生産を推進する主要な企業である。契約栽培スキームによってバイオ燃料を生産しようと考えている。

契約栽培に関するMarli Investmentsの契約を見ると、ローンシステムに基づいて、農民に市場を保障することなく、農民から企業への生産管理を転移する取り決めになっていることがわかる。この30年契約では、Marli Investmentsが農民に種と化学肥料を買う資金を貸与している一方で、メンバーシップの義務化、法定負担および控除だけでなく、運営費、出張費、権利使用料といった追加的費用を徴収している。農民はこれら全てを支払うことを求められ、さらには木が枯れてしまった時には、自分たちの費用で代わりの木を用意しなくてはならない。Marliは種とサービスの値段両方を決定することができ、また商品を買い戻す際の値段も決定できる。契約栽培者は他社への販売を禁止され、また家族のほかの人がヤトロファを他社に売るために栽培することも禁止されている。

この取り決めは農民がとりうる選択肢とコントロールを制限し、農民達にMarli Investmentの融資条件どおりの取引を強要している。また農民がこの30年契約を解約する権利に関しても疑問がある。Marli Investmentsのヤトロファの木々が植えられた土地を誰が所有するかに関しても明確ではない。

食料作物の商品作物に対する利点は、作物を購入しようとする企業が安い価格を提示したとしても、自分たちの消費分として作物の多くを取っておくことができることである。同様に、食料作物は購入を希望するどんな人にも売ることができる。契約栽培している商品作物の場合、契約している企業にしか売ることができない。もしいかなる理由にせよ、農民が商品作物から十分な収入を得ることができなかったとしたら、彼らは食べ物を購入することができなくなる。その結果、農家が食料不足に陥ることになる。

ザンビアの契約栽培スキームは、農民に不利益をもたらしてきた歴史がある。正義、開発と平和のためのカトリック・センター(Catholic Centre for Justice Development and Peace; CCJDP)によると、2006年の契約栽培スキーム計画に関する研究で、計画に深刻な弱点が存在することが明らかとされた。研究は、タバコや綿花栽培を行っている農民の大半にとって、契約栽培スキーム計画が貧困を永続させ、ある場合には貧困状態を悪化させることがあると結論付けた。(CCJDP, 2006)

土地に関する権利

ザンビアのアグロ燃料生産への転用可能な土地に関して深刻な問題があり、またその影響が農民、食料生産、森林地帯、先住民に及ぼす影響に問題がある。

1995年の土地法によって、慣習的土地保有が借地権へと転換され、多くの投資家が既にこの規定を利用して投資目的のために土地を自分のものとしている。ザンビア政府は市場指向土地政策を導入したいことをほのめかし、新しい土地政策草案もこの戦略の方向性をとっている。

これは慣習による保有地を利用している小作人と小規模農民にとって深刻な事態を引き起こす可能性がある。慣習による保有地にいる農民は、アグロ燃料生産へ転換するために土地の私有化をしようとする企業の活動により、危機にさらされることとなる。

ザンビアのバイオ燃料協会によると、目標設定ための予測では、2015年までにバイオ燃料にあてられる土地が184,420ヘクタールに上るとされている。

しかしながら、投資家はやりたい放題にできているわけではないことも示されている。2007年5月21日、The Post紙は、ムワナワサ大統領が以下を行ったことを明らかにした:
「政府はヤトロファなどの植物からバイオ燃料を生産する議論に注目してきた。大統領は、多くの人々から土地を奪い先住民に移動を強いる可能性があるため、Mpikaである投資家が求めた1万ヘクタールの土地申請を認めなかった、と語った。」

食料生産

ヤトロファに集中する契約栽培スキームが食料作物を栽培する農民の数を減少させるのではないかとの恐れに加えて、エタノール生産も食料作物から資源を転移させる可能性がある。エネルギーと水開発省は、バイオ燃料生産におけるサトウキビとサトウモロコシの可能性に関して会議を行った。トウモロコシ、キャッサバ、そしてサツマイモも同じくバイオ燃料生産に使用されるかもしれない主要食料作物である。

アグロ燃料作物と食料の両方にとって最も重要な要素である土地と労働は、弾力性のない資源である。アグロ燃料作物の導入は、小中規模農家が食料生産に使う土地と労働を削減あるいは転用することを意味する。そしてこれはアグロ燃料産業が究極的に、家計と国家食料安全保障の両方に影響を与えることを意味する。

一つ確かなことは、ヤトロファと食料作物が土地をめぐって競合することである。D1 Oilsは、小規模農家が企業のための作物を栽培するよう働きかけを行っている。これは、土地は農民に所属するが、作物はそうではないことを意味する。作物を所有する企業に、農民が土地に対する裁量権を奪われてしまうことになるのは必然である。ヤトロファは30から50年の間生産可能であると言われており、混作可能な最初の3年をのぞけば、ヤトロファが栽培されている土地はヤトロファ栽培のみに利用されなければならず、よってバイオ燃料企業の下に管理されることとなる。

その他の暗示としては、少なくともD1 Oilと契約している農家にとっては、主要な、耕作可能な農地がヤトロファを栽培するために使用されることがある。この作物がどこで栽培されるべきか否かに関する差別は存在しない。

生物多様性

ザンビアの陸塊の66%は、森林地帯や森林などであり、中には川の源流湖(貯水地域)、森林保護地区や自然保護区などの特別に重要な地域もある。ザンビアの森林地帯の26%しか、アグロ燃料のための作物などの今後の農業生産性のために利用できない。しかも、これ以上森林を農業のために切り開かなくても、ザンビアは既に高いレベルでの森林伐採を体験している。

最近の声明によると、産銅地区の大臣であるMwansa Mbulakulimaは法的保護を失った(de-gazzeted)保護森林が、投資家に与えられることをほのめかしている(The Post,2007年5月4日)。この森林贈与がバイオ燃料生産に向かうかもしくは他の産業に明け渡されるかどうかは公ではない。しかしながら、これは森林伐採を導くバイオ燃料生産が、地元や国家の統治機関から多くの障害を受けないことを示唆している。



新たなアフリカ争奪戦


GRAIN

大規模な土地と安い労働力を持つアフリカ。そこはアグロ燃料の開発者の明らかな標的である。とあるヨーロッパアグロ燃料ロビーグループが強調しようとしたように、グリーンOPEC(Green Opec)と呼ばれているアフリカの15か国だけで、インドよりも大きいアグロ燃料作物生産適地が広がっている。そしてすでに大陸の数百万ヘクタールの休閑地(Fallow)と呼ばれている土地が、アグロ燃料生産に向けた調査の対象となり、候補地とされている。

企業やエネルギーに飢えた国々は、ヨーロッパが最初に植民地を拡大するため土地へ殺到したことを思い起こさせる勢いで、アグロ燃料作物生産のためにアフリカにお金を注いでいる。海外からの侵入に、アフリカ政府とビジネスのエリート達も参入している。脇に追いやられたいくつかのグループは、これらの動きが人々の生活に引き起こす荒廃を指摘している。しかし、世界のエネルギーと環境危機からアフリカが資金を得る重要な機会だという騒ぎの中で彼らの声を聞くのは難しい。

アグロ燃料に関する限り、アフリカへの道は外交官たちによって整えられている。可能であればどこでも、海外の政治家たちはアグロ燃料交渉のために大陸を練り歩いている。もちろん、ヨーロッパ、日本、アメリカは、アフリカ諸国との多国間あるいは二国間の援助、貿易と投資をめぐる交渉にアグロ燃料に関する項目を入れることに熱心である。一方、新規成長諸国と呼ばれている国々も、アフリカ大陸で慌ただしい動きを見せている。ブラジルは、国営石油会社ペトロブラス(Petrobras)を通じて、セネガルからナイジェリア、モザンピークからアンゴラまでの一連のアフリカの国々との間で、エタノール輸入と技術交換に関する交渉の道を切り開いた。インドは最近、西アフリカバイオ燃料ファンドへの25,000万USドルの資金拠出を確約した。そして中国は、ナイジェリアから国内のエタノール蒸留施設への長期的なキャッサバ供給経路を固めた。これに加え、イギリス、ブラジルがモザンピークとの間で結んだ協力関係のようないくつかの三国間協定もある。

この政府関係者間の握手の全てに関わっているのは、石油およびアグロ燃料の両方のエネルギー供給へ安定したアクセスを確実にすることである。石油もアグロ燃料問題も当然のことながら、企業によって管理されることになる。そしてこの方向に物事は急速に動いている。いくつもの企業がすでにアグロ燃料の供給原料生産のための土地を取得しており、すでにあるアグロ燃料工場とプランテーションは拡張されつつある。例えば、2007年初め、タンザニア政府はアグロ燃料作物生産の調査のために11の外国企業と交渉していることを明らかにした。

この海外投資の突風の中には、勝ち組と同じように負け組もいる。(アグロ燃料)宣伝車に飛び乗ろうとしている何人かアフリカの地元企業家達は、うまくいかせるために苦闘している。ガーナの企業、バイオディーゼル・ワン(Biodiesel One)は最近、12万ヘクタールのジャトロファ生産計画を中止しなければならなくなり、労働者たちをレイオフした。事業継続のための財政支援を得ることができなかったからである。別のガーナ資本のバイオディーゼル会社、アヌアノン・インダストリアルバイオプロダクト(Anuanom Industrial BioProducts)も似たような財政問題に直面しており、海外の投資者と提携するための取り組みによって、会社はほとんど破綻してしまった。両社は、資金拠出をするよう政府に強く働きかけた。2006年12月、政府は国内中央部での大規模なヤトロファ耕作に対して200万USドルの財政支援を行うことを公約をした。そのうちの30万USドル超が、直接アヌアノンに届くようにもした。さらに政府は、この地域で舗装された道を建設する計画を発表し、地元のチーフたち、土地所有者たちにプロジェクトへ土地を提供するよう呼びかけた。アヌアノンのオーナー、ガーナ人実業家オヌア・アモア(Onua Amoah))は、2008年の大統領選候補者カワベナ・フリンポン−ボアテンおよび地方エリートたちと協力して、プランテーションのための土地を獲得してきた。

国内企業に多くの需要を保証された市場を与えるため、国有石油交易会社ボスト(BOST)が、ガーナで生産されている全てのバイオディーゼルを購入すると申し出たとも報告もされている。しかし将来的な利益の可能性が、海外の投資家達を国内に呼び寄せている。イギリスに基盤を置くディーワンオイル(D1 Oil)は完全子会社を設立した。イスラエルの投資家達は中央地域でのバイオディーゼル工場建設を追求している。カナダに基盤を置くエーワンバイオフュエル(A1Biofuels)と、西アフリカのサヘル地方に大規模ヤトロファプランテーション用地を準備しているニジェールのサヘルバイオフュエルデベロップメントカンパニー(Sahel Biofuels Development Company)は共同で、ガーナに年間25,000万リットルの製造能力のあるバイオディーゼル精製所建設計画を明らかにした。

地域により深刻な社会的影響を及ぼすのは、東ケープ政府が計画している、300万ヘクタールの「有効利用されていない」肥沃なコミュニティの土地を、アグロ燃料投資向けに転用しようという動きである。その中には、ドイツの投資家による、70,000ヘクタールの菜の花(Canora)栽培も含まれている。地元の農民共同体はこの土地を、放牧地を含めいくつかの目的で使っており、生活の大きな糧としている。南アフリカは地域共同体の土地を没収する、あるいは人びとをより貧しくするやり方で土地利用再構築を行ってきた長い歴史を持っている。土地を取り上げ、輸出用作物を栽培しようというこの新しい案も、不幸なことに、かつての繰り返しにすぎない。



【事例1】 いくつかの企業投資の例


ヴィスカントエナジー(Viscount Energy)、中国 ナイジェリアのエボニ(Ebonyi)州政府との8,000万USドルのキャッサバとサトウキビ両方を扱ったエタノール工場の建設の合意メモ

21センチュリーエナジー(21st Century Energy)アメリカ コートジボアールで、サトウキビ、トウモロコシ、サトウモロコシからのエタノール生産に今後5年間13,000万USドルを投資。将来は、綿実油およびカシューナッツ残留物からのバイオディーゼル製造を計画

バイオネナジーインターナショナル(Bioenergy International)スイス ケニアで、93,000ヘクタールのジャトロファプランテーションおよびバイオディーゼル精製所そして発電施設建設を計画

サンバイオフュエル(Sun BIofuels)イギリス タンザニア調査センター(TIC)と共同で、ジャトロファ生産用に18,000ヘクタールの優良農地を獲得

アルコグループ(Alco Group)ベルギー 2001年にアフリカで最も大きいエタノール醸造業者である南アフリカのNCPアルコールを買収

マグインダストリーズ(MagIndustries)カナダ コンゴ共和国で68,000ヘクタールのユーカリ・プランテーションを取得し、ポワンノワール(Pointe-Noire)近くに年産50万トンの木材チップ製造工場を建設。木材チップはバイオマス用にヨーロッパへ送られる。

オーランティア(Aurantia)スペイン コンゴ共和国で、オイルパームプランテーションおよび多分4つのバイオディーゼル精製所に投資

ダグリス(Dagris)フランス ブルキナファソで、綿実油からのバイオディーゼル生産開発へ、地元のオイル加工業者SNシーテック(SN Citec)を通して投資

ソカパルムおよびソクフィナル(SOCAPALM and Socfinal)ベルギー カメルーンで、30,000ヘクタールオイルパームプランテーション拡張を計画。しかし、森林に暮らすいくつものコミュニティが抵抗している。



【事例2】 ナイジェリア−新しい商品をめぐる同じ物語


アグロ燃料に多くを投資しているのは、世界のエネルギー企業だけではない。多くの異業種企業が参入し、さらに利益を求めてアグロ燃料ブームを創り出している。ナイジェリアは、異業種参入を無批判に受け入れ、企業の戦略に調和する政策を採用してきたが、国の本当の需要を満たすことはなにもしていない。

もし、政府が本当に国内エネルギー需要に関心を持っているのであれば、石油産業を再構築していただろう。ナイジェリアはアフリカで最大の石油生産国である。そして石油から政府歳入の95%を得ている。しかし、多国籍石油企業が支配しているので、ナイジェリアの製油所は国内需要を満たすに十分な精製石油を生産しておらず、その結果、燃料の70%を輸入している。この問題に取り組む代わりに、国のエネルギー安全保障を向上させるという口実の下に、政府はアグロ燃料を推進している。しかし、エネルギー安全保障が達成されるという可能性はない。

ナイジェリアは、国内エタノール製造業者が対応できるようになる前であっても、10%のエタノール混合政策を施行しはじめることができるように、技術的専門的知識と交換でブラジルからエタノール輸入するという交渉にしがみついている。サトウキビ生産拡大(約40万ヘクタールに及ぶと見積もられている)に最も重要な地区はニジェール川とベヌエ川沿いにあり、灌漑が可能である。キャッサバも産業の大きな発展に寄与するものと見られている。何年もの間、企業に軽視されてきたが、主要な原料作物してとして注目されるようになり、澱粉分の増加などよりアグロ燃料原料に適する遺伝子組み換え品種開発への相当額の投資が始まった。エネルギー安全保障に寄与する以上に、バイオ燃料は食料安全保障に関する新しい問題を創り出してしまうだろう。というのは、アグロ燃料生産が進行すると、主要な食料品、キャッサバそしてオイルパームの値段がほぼ確実に上がるからだ。



【事例3】ウガンダにおける大衆的な抗議行動


Timothy Byakola

国内での激しい反対を受けて、2007年5月末、ウガンダ政府は、ビクトリア湖に浮かぶ島の数千ヘクタールの熱帯雨林をオイルパーム・プランテーションへ転用するという計画を破棄せざるをえなくなった。その数日前、ムセベニ大統領は、ウガンダに残された熱帯雨林のかなりの部分をアジア系ウガンダ人サトウキビ業者に与えるという交渉を中断した。この決定は、交渉が明らかにされたことに対して4月にカンパラで起きた大規模な抗議行動の後でなされた。この抗議行動は、残念なことに人種暴動へと暴走してしまい、7軒のアジア系ウガンダ人の店舗が略奪されてしまった。また2人の行動参加者が殺され、アジア系ウガンダ人が1人、投石を受けて亡くなった。

この紛争は、急激に失われつつあるウガンダの自然をエネルギー創出のために使用するのか否かをめぐる沸き立つような紛争の幕開けとなった。1962年にウガンダが独立した時、国土の20%は森林であった。今日森林は7%まで減少している。ムセベニ大統領はアグロ燃料を強く支持して、「ウガンダはたいへん遅れているが、自然資源や一次産品に恵まれている。遅れているのは、産業がないからである」と主張している。また政府は、工業開発が重大な環境問題を引き起こすとは考えていない。政府への批判に対して、Jessica Eriyo環境大臣は、「貧しいウガンダ人は、農業や薪のために森林を伐採して、サトウキビ・プロジェクトで失われる森林の5倍以上のスピードで破壊している」と語った。

しかし多くのウガンダ人は同意していない。ウガンダのような国では、農村部に住む貧しい人々にとって環境こそが残された資産なのである。実際、農村での生活と水場、森林、湿地など主要な生態系の健全さとの間には非常にこみいった関係がある。しかし民間資本(多くは政治家と密接な関係がある)は、ウガンダの工業化という題目の下で、環境という資産を急いで食いつぶそうとしている。市民たちは政府によって打ち倒されたように感じ、今、自身の生活の糧を守るために立ち上がっている。

問題の二つの森林地域を見てみよう。サトウキビ・プランテーションが計画されていたマビラ森林は、32,000ヘクタールの広さがあり、数百種類の樹木、希少なサル、そして貴重なTit-hylia鳥の生息域である。加えてこの森林はナイル川の二つの支流の流域にある。このように広範な地域の森林伐採は地域の降雨量を左右しかねない。オイルパーム・プランテーションが計画されていた、ビクトリア湖内のブグラ島も、希少な樹木やサル、鳥の生息域である。2006年11月、政府森林局の5人の上級幹部が、この島にある保存林がアジア系ウガンダ人所有の石油会社Bidcoへ売却されることに抗議して退職した。Bidcoはすでに4,000ヘクタールのオイルパーム・プランテーションを開設し、さらに2,500ヘクタールの開発を求めている。

投資家たちは、アグロ燃料産業を大きく発展させることがウガンダ国内に悪影響を及ぼしているエネルギー問題解決につながると政府を説得してきた。エネルギーが大きく不足しているために多くの企業が倒産に追い込まれてきたのである。しかし、計画されているアグロ燃料が、国内需要を満たすために使われるという証拠はほとんど全くない。ウガンダ国民はアグロ燃料を活用するための技術を持たず、政府も投資家たちもこの流行の新エネルギーのために国内市場を整備しようという努力をほとんどしていない。単に、国内市場は投資家たちにとって重要ではないのだと、思わざるを得ない。バイオ燃料政策草案は、政府がバイオ燃料増産のために行うべき支援には多くのことばを費やしているが、奇妙なことに国内市場をどのように整備していくのかにほとんど触れていない。ということはアグロ燃料は輸出向けのものである、ということではないか。

投資家たちの本当の狙いは土地の取得にあり、アグロ燃料開発はある意味その煙幕に過ぎないと思わせる材料もある。立ち上がってほんの数年のアグロ燃料産業は、ほとんど規制を受けていない。アグロ燃料めぐる混乱の中で、投資家たちはほんの名目的な価格で広大な土地を取得しつつある。エネルギー省のある職員はオフレコのブリーフィングで、「すべてはnight-flyersに幻惑されているだけかもしれない。右手は左手がやっていることを知らないのだから。」と語った。一体何が起きているのか政府が理解した時には、ウガンダの貴重な天然資源のかなりの部分が破壊されてしまっていることになるのだろう。

Timothy ByakolaはウガンダのNGO「Climate and Development Initiatives」のために活動している。E-mail: acs@starcom.co.ug, timbyakola@yahoo.com



【事例4】南アフリカにとっての目覚ましコール


立ち上がったばかりのアグロ燃料産業も南ア政府も今年、すぐにでも成功するという夢からたたき起こされ、夢に過ぎなかったことを思い知らされることになった。アグロ燃料製造業者は、市場に出回っているトウモロコシだけに頼ってはアグロ燃料製造が不可能であり、農場主とアグロ燃料向けのトウモロコシ栽培契約を結ばなければならないことを知った。政府が、当初の抗弁にもかかわらず、バイオ燃料が実際に国内の食料安全保障に影響を及ぼすことを認識することも求められている。

書類上では、南アの(アグロ燃料)イニシアティブはうまくいきそうであった。南アにはトウモロコシとサトウキビの余剰在庫があり、これらを主原料に食料安全保障に影響を及ぼすことなくエタノールを生産できるものとされていた。さらに、このイニシアティブによって55,000が新たに雇用されることになり地域経済にも好影響をあたえるものとされていた。ということで、アグロ燃料は、南ア政府の成長促進イニシアティブ(ASGI-SA)の優先分野の一つとされた。Industrial Development CorporationおよびCentral Energy Fundは5つのバイオ燃料プロジェクトに43,700万ドルを投資する計画を発表した。南アフリカトウモロコシ商業農業者組合は、米国の農業者の成功に続けと主要なトウモロコシ産地に8つのエタノール・プラントを建設することをにぎにぎしく発表した新興企業Ethanol Africaに投資した。
けれども、当初からこの新規起業の成功に懐疑的なアナリストたちもいた。彼らは以下を指摘した。

懐疑的アナリストが予想した以上に早く、これらの懸念が現実のものになった。今年、南アのトウモロコシ生産は、期待された豊作ではなく不作であった。ほんの6ヶ月で、「エタノール効果」(エタノール製造業者による新規需要)と南部アフリカの干ばつが結びついて、バイオ燃料政策で予測された4倍の割合でトウモロコシ相場は急上昇した。トウモロコシは南アの主要な食料なので、貧しい人々はたいへん困っている。こうした事態の常として、勝ち組もいる。一部の商業農業者たちは、低収量を補って余りある高価格の恩恵を受けている。

このケースから、たとえアフリカ諸国の政府がアグロ燃料は食料安全保障を脅かすことはないと明言したとしても、規制なき市場では食料向けと燃料向けとの競合が避けられないことを、明確にした。企業は土地を所有することであるいはアグロ燃料向けの契約栽培を農業者たちと結ぶことで原料を確保することができる。しかし、アグロ燃料産業が食料安全保障に影響を及ぼさないようにすることは、政府にとってたいへんむずかしい課題である。

現時点では、自由州北部のボタヴィルに建設されることになっている最初のエタノール・プラント建設は進んでいない。これは明らかに、10億ランド(7.1ランド=1ドル)の資金が集まっていないからである。政府がアグロ燃料産業に助成するのを、投資家たちは待っている、とEthanol Africaは主張している。農業者への助成はなく、(アグロ燃料生産の)社会および環境へ負のインパクトが間違いなく予想されているにもかかわらず、なぜアグロ燃料産業に競争に有利な条件が与えられなければならないのか、という明確な問いが、政府に対して発せられている。すでに1,400万ランドを投資した農業者たちであっても、再考しているに違いない。彼らはエタノール相場が原油相場に直接関係していること、そしてエタノール市場を成り立たせるほどいつも高いとは限らないことを学んでいる。


農民ではなく、燃料のための土地

アフリカには、一連のNGO主導、小規模バイオ燃料プロジェクトがあり、その一部はかなりの歴史を持っている。そうしたプロジェクトは、おおむね国内市場向けの燃料と石けんの両方を生産している。アグロ燃料の擁護者たちは、こうした感じの良いイニシアティブについて話したがるが、現在のアグロ燃料ブームは小規模農業とほとんど関係ない。

ケープタウンでのアグロ燃料に関する会議で、イギリスのGreenergy会長、Andrew Owensは、「南部アフリカはバイオ燃料の中東になる潜在力を持っている」と発言した。しかし、これを実現するためには、各国政府は南部アフリカ全域でアグロ燃料政策を統一し、産業の競争力増加につながる規模の経済を実現するために共同で仕事をすることが必要と、彼は付け加えた。同じ会議で、SABiodieselの経営責任者は、アグロ燃料を「副産物として生産すること」を拒否し、免税と大規模生産を主張した。

結果として、アフリカにおいてアグロ燃料へ投資された資金は、多国籍企業ネットワークにしっかりと統合された大規模プランテーションに集中する。そして、他のアグリビジネスの部門と同様に、企業のアグロ燃料作物による利益は、それらのプランテーションが最も肥沃な土地にあり、主要な交通路に近い時、最も良く保証される。しかし、現在のところ何百万という小農民がそれらの土地を占有しており、アグロ燃料ラッシュの最大の障害物になっている。アグロ燃料が検討事項に上がる度に農民たちへ土地から離れろというプレッシャーが激しくなることは、明らかになってきた。

タンザニアでは、首相がアグロ燃料を最優先しており、スウェーデンの投資家が国内有数の湿地であるWami Basinで、エタノール向けサトウキビを植え付けるために40万ヘクタールを探すのに便宜をはかっている。このプロジェクトは、必然的に地元の小規模稲作農民を立ち退かせることになる。リベリアでは、イギリスの会社、Equatorial Biofuelsが、⇒Liberian Forest Products(LFP)を取得した。LFPは、リベリアでの事業認可と、オイルパーム耕作用に70万ヘクタール以上の土地利用許可を持つ会社である。土地需要が高いエチオピアでは、アグロ燃料会社に、適切な環境への影響の査定がないまま大規模に導入されている外来作物であるヤトロファを栽培用として、百万ヘクタールを越える土地が認可された。

南アフリカ開発共同体(SADC)のアグロ燃料実証性研究は、規格に影響を与えるとして、小規模プロジェクトを行わないよう警告している。加えて、南部アフリカ全域でアグロ燃料関連法と種子規格の統一、低金利ローンの導入、「新しい土地の開放」のための自由貿易促進施策を推奨している。アグロビジネスとバイオテクノロジー会社は、アグロ燃料熱を利用して、広い範囲で貿易および農業規制枠組みを彼らの利害に都合のよいように変革させようとしているようだ。

たとえ国内アグロ燃料市場が企業に支配されたとしても、貧しい農民が少しの利益を得る余地はまだあるだろうと、しばしば論じられる。特にヤトロファは限界的な状況でも育つので、貧しい農民にも適した作物になるだろうと主張されている。しかし、そんなことはとてもありえない。真実は、アフリカでのアグロ燃料ブームは農村開発や貧しい農民の生活水準向上に関係ないということである。それどころか、政府の役人達に強硬な交渉をしかけ、法的保護、助成金、そして免税のロビー活動をおこない、希少な沃土と水の権利を取得し、農民が彼らの土地で安い労働者になることを強い、大規模プランテーションに新しい作物を導入し、裏口から遺伝子組換作物を導入し、人々と生物多様性に基礎をおく生態系を押しのけ、さらにはこれまで以上にアフリカを国際市場に従属させることによる、海外企業による土地収奪の問題である。空前の規模での土地強奪がアフリカで進行中なのだ。



【事例5】 エチオピア−燃料のための場所確保そして飢饉の誘発


アグロ燃料産業はエチオピアでとても活発である。そして政府は海外投資を引きつけるためにあらゆることをおこなっている。最も一般的な作物はヤトロファであり、ヒマの種と少しのコーヒーの栽培地区でのオイルパームがそれに続く。これら全てはバイオディーゼル製造に使用されることになっている。エタノール産業を育成しようという進行中の動きもあり、モロコシ、トウモロコシとひまわりの新しい品種も導入されようとしている。アグロ燃料企業は、これらは海外食料援助への依存を減少させ、地方共同体の食料安全保障の強化につながる、と主張している。人口が増加し、国民の85%が土地に暮らしを頼っているという中で、土地への需要は非常に高い。保障された土地への権利を持っている家族はごく限られている。そのことは、海外の企業がしごく簡単に土地を得ることができる理由の一つである

ドイツの会社、フローラエコパワー(Flora Ecopower)は、オロミヤ州(Oromia Regional State)に67,100百万ビル(7,700万米ドル)を投資しており、さらにバイオディーゼル生産のために東Hararghe地区のFadisとMiks 区域に13,000ヘクタールを越える土地購入の交渉を進めている。この戦略のカギは生産連鎖の全てを制御することであり、さらに地域の農民協会と、5年間、700人の農民がそれぞれ2ヘクタールの土地を提供するという協定を結んだ。報道の報告によれば、農民は彼らの地区への投資を歓迎しており、土地を手放すことは気にしていない。しかしながら、生産が始まり、森林が切り開かれたあとで、許可された土地のうちの12,000ヘクタール(87%)が、バビル・ゾウ保護区(BabileElephant Sanctuary) の境界線の中であることが判明した。さまざまな環境団体が抗議を行い、土地分配は非合法であり、環境への影響査定が行われなかったと指摘した。引き続く実態調査でそのことが確認され、さらにこの地域の共同体は、開発および森林伐採がゾウにもたらした負の影響に苦しんでいることも明らかにされた。この状況はだんだんと政治的な問題になってきている。なのに、連邦もOromia地方政府も、希少な絶滅に瀕しているゾウに優しい、この生命維持に必要な生態系へのダメージを回復するために早急な対策を計画していないようである。

他の会社、サンバイオフュエル(Sun Biofuels)はBenshangul Gumuz州(Regional State)政府と8万ヘクタールの土地賃貸協定にサインした。さらに東アフリカ全体への投資に先だって、エチオピアでの存在を強化するためのプログラムの一環として、エチオピアのナショナルバイオディーゼルコーポレーション(National Biodiesel Corporation)の80%を購入した。国全体のバイオ燃料プログラムを定めるエチオピアのバイオ燃料戦略起草を支援したという報告もある。同社は土地調査を実施しており、政府と共同で、アグロ燃料生産に充てるべき地域選定を行う計画をもっている。

現在ではエチオピアで活動する海外アグロ燃料企業が多数ある。公式には、196,000ヘクタールの土地が認可されている。しかし、交渉中の土地も入れると、合計は11,500万ヘクタールにも膨れ上がる。エチオピアは1,720万ヘクタールをヤトロファに適した土地と認定した。その内のBorena、BaleとArsi地域にある1,700万ヘクタールは非常に適していると見られている。それらの地域は年900〜1300mの降雨がある所である。

企業 本拠国 土地使用の認可と交渉(ヘクタール)
Sun Biofuels イギリス 80,000 Benishangul−Gumuz
5,000 SNNP 拡張計画とともに
200,000 Tigray
40,000 Amhara
Becco Biofuels アメリカ 35,000 Amaro Kelo
Hovev Agriculture Ltd イスラエル 40,000の認可と400,000へ拡大
Flora Ecopower ドイツ 13,700 East Hararghe 200,000へ拡大
The National Biodiesel Corporation ドイツ アメリカ 90,000 ヤトロファと製油 プランテーション
LHB イスラエル 100,000 Oromia ヤトロファ

エチオピア政府のアグロ燃料戦略は、地方の人々が定住していない低地を放牧、作物栽培、林産物の収集のために活用していることを、明らかに認識しており、地方の人々が彼らの伝統的な土地利用権にアクセスすることが否定されるべきではないことを主張している。また、400万を越える人々が食料不足に苦しんでいることを踏まえて、食料安全保障の重要さを強調し、彼らの福祉がアグロ燃料産業によって損なわれてはならないとも明言している。しかし、現実には、それがすでに起こっている。人口増加に伴い土地需要が高まっており、農民は目標を達成しようと奮闘しているにもかかわらず、今ではヨーロッパへの輸出用エネルギー生産のために広大な面積の土地が、海外企業に認可されようとしている。


アフリカのエネルギー安全保障を向上させるためのアグロ燃料?

もしアフリカの小農民にアグロ燃料がもたらすとされる利益が、既に幻想であることを証明しているのならば、大陸のエネルギー安全保障への貢献はどうなのだろうか?高価な化石燃料への依存を軽減することで、アグロ燃料生産がアフリカの国々の経済に貢献するというのは、本当だろうか?

問題は、アグロ燃料が既に国際的な商品として定義され、世界市場で取引されていることであり、その様な商品は多国籍企業と協力している地元のエリートらにより管理され、買う余裕のある人々にのみアクセスが限定されていることである。石油が典型的な例である。アフリカのいくつかの部分に存在する巨大な油田が、当該の国々にエネルギー安全保障をもたらさなかったし、また当該国の人口の大半に何ら利益をもたらさなかったことは既に広く知れ渡っている。ナイジェリアの例をみてみよう。ナイジェリアは主要な石油輸出国であるが、特に薪などのバイオマスは未だ国家の家庭内のエネルギー必要量の91%を満たしている。ナイジェリアは未だに貧しい国であり、1日1ドル以下で生活する人々が人口の71%にものぼり、しかも石油生産地帯であるニジェールデルタに住んでいる人々はその中でも最も貧しい。ナイジェリアは現在、アグロ燃料生産のために広大なキャッサバ・プランテーションの拡大を計画している。しかしながら、石油の場合と同様に、アグロ燃料によって国家のエネルギー安全保障も人民の福祉も向上しそうにない。アグロ燃料ブームは、特にアグロ燃料のためのキャッサバとサトウキビの輸出を通じて、輸出収益を増加させたいとの政府の欲望に煽られたものだ。

現在エネルギー需要を満たすアグロ燃料の可能性に関して熱心に議論している、アフリカの非産油国でも同じであることはほぼ間違いない。これらの国々において、石油輸入は稼ぎを無にする費用であり、輸出収益の約50%を消費している。の成長率は、世界の石油価格の上昇に大きく影響される。これらの国々は今、アグロ燃料を生産することによって自前の燃料を手に入れることができるようになるため、変動する石油価格による被害を軽減することができると考えている。しかし、そうはならない。現実には、石油や他の国際的商品全てと同様に、アグロ燃料の価格は市場によって決められることになる。原産国はほとんど価格管理をすることができない、とくにバリューチェーン全体の所有権が国際的企業の手中に握られていると、どうにもならない。アグロ燃料生産は、地域の人々に安い燃料を保証するものではない。

原則として、アフリカではさまざまな再生可能エネルギーに大きな可能性が存在しているが、各国政府はこの分野に関する適切な政策を作成することができず、投資をひきつけるためにほとんど何もしていない。バイオマスが既に、平均してエネルギー消費の59%を担っており(多くのサハラ以南アフリカ諸国ではもっと割合が高い)、そのほとんどが薪であるが、牛糞やその他の地元で入手可能な資源も消費されている。これらのエネルギー消費の多くは現在、持続可能ではなく、人口増加と共にバイオマス需要は高まるにつれ、エネルギー使用の効率化および代替エネルギー導入に関する国家的投資が最優先と見られることもあり得る。しかし現実には、アフリカにおける再生可能エネルギーに関する政府支出は一貫して減少傾向にある。例えばエチオピアは、1990年代に石油開発投資を4倍に、電気への投資を3倍にしたが、代替エネルギーへの支出は投資全体の1%から0.1%へと減少している。

アフリカの多くの国で状況は同じであり、しかも悪化する傾向にある。処理済の木材チップの形態でバイオマスを輸出する新規事業が既に進行中であり、アグロ燃料作物の第二世代と一緒に、その地域は木材をベースとしたセルロース性バイオ燃料の生産を始めようとしている。これらのイニシアティブは木材と木炭の価格を上昇させ、森林への人々のアクセスを制限し、アフリカの痩せた土壌のさらなる劣化へと導くだろう。

アフリカは又、アグロ燃料の誇大宣伝により引き起こされる、食料価格の上昇という、もう一つの開発から深刻に痛手を負うことになる大陸でもある。何種類かの世界の主要食物の価格は、各国が土地を食料作物から燃料作物へと転換するとともに、既に上昇を始めている。FAOの予測では、その多くがアフリカに位置する低所得の食料不足の国々の穀物輸入額が、「エタノール効果」の直接の影響で、今期に約4分の1増加する。



抵抗が増大している


人々はアグロ燃料ブームが彼らの生計にとってどのような影響をもたらすかを自覚し始め、抵抗が増大している。ガーナ北部の農民は、主に気まぐれな市場に縛り付けられる恐怖、利用法を限定する毒性等の理由により、アグロ燃料としてのヤトロファを拒絶した。南アフリカで、市民社会は東ケープ(Eastern Cape)に位置する民族的、コミュニティー的所有の土地をアグロ燃料のために使用しようという政府の提案に反対した。アナリストはトウモロコシからのエタノール生産は実用的でなく、耕作地の不足は南アフリカにとって重大問題であると警告している。ウガンダでは、政府がアグロ燃料としてのサトウキビを植えるためにマビラ(Mabira)森林を伐採する許可をEast African Indiansが所有する企業に与えたことにより、市民の不安が噴出し、政府は現在許可を引っ込めている。African Biodiversity Networkは、イギリスの広大なエネルギー必要性を満たすために、アフリカの土地、森林、そして食料を犠牲にするバイオ燃料にターゲットを設定したイギリスを痛烈に批判してきた。

まとめると、アグロ燃料は様々な理由でアフリカの人々の大半の生活を向上させない。第一に、貧しい者は単純にエネルギーを買うだけの余力がないため、木材、木炭や糞に頼らざるを得ない。第二に、農村居住者にとって、持続可能で食料を確保する農業システムと森林システムを、外国所有の産業プランテーションに置き換え、そのプロセスが安く重要で無い労働となることに何等意味を見出すことができない。第三に、アフリカの豊かさの象徴とも言える土地の私有化は、アフリカの国々自身の将来を決定する機会を奪ってしまう。




公的協議活動、エネルギー運輸総局―新法制度と再生可能エネルギーの普及に関する
バイオ燃料問題でのヨーロッパ委員会に対するレスポンス


2007年6月

EUのバイオ燃料ターゲットに対するアフリカの反応


本書はアフリカ非政府組織によるレスポンスである。我々はヨーロッパ委員会の再生可能エネルギーの普及に関するバイオ燃料問題の公的協議活動がもたらす結果における重要な利害関係者である。

我々の組織はアフリカにおける農業、生物多様性、食料安全保障、生計、気候変動、伝統文化と先住民の権利に関心が有る。EU法のターゲットは、我々が代表する、地方で先住的なコミュニティーであり、典型的に彼らの生活に劇的に影響を及ぼす問題に関する議論に参加することの出来ないコミュニティーに影響する可能性が高い。

よって、我々の立場を考慮し、彼らにふさわしいと我々が真実ように、我々のコメントを考慮し真剣に受け止めてくださった、ヨーロッパ委員会、エネルギー運輸総局、そしてその他の利害関係者に感謝する。


EUのターゲットに見合うアフリカのバイオ燃料


我々は、EUのバイオ燃料ターゲットが暗示する者に関して大きな関心を持っている。我々の関心とは、EUのためのバイオ燃料ターゲットを増やすことにより(利用可能な土地が限られている中)、これらのターゲットは輸入と見合う必要がある。これらの輸入されたバイオ燃料は、その大部分がアフリカから来ることとなる。

EUのバイオ燃料の必要に合致するために、求められているバイオ燃料作物の規模を提供するための土地の議論は、土地利用制作に大いに影響し、ネガティヴな社会・経済・環境的影響をもたらす可能性が高い。

多数のバイオ燃料イニシアチブが既にアフリカの国々において拡大し、拡散しており、これは単なる大きなトレンドの始まりに過ぎないと述べている。近年のバイオ燃料開発は、多くの国々のうち南ア、ザンビア、ウガンダ、タンザニア、ベナン、エチオピア、ケニア、そしてガーナなどの国々を含む。


南ア


これらの国々のうちで地方コミュニティーや食料安全保障に関する影響に関して何等議論がなされてきていない。これの例外は、バイオ燃料戦略が、菜種油、メイズ、そしてソヤの産業プランテーションわずかな収入のために彼らの土地を明け渡すよう強制された地方農業コミュニティーの部族的・コミュニティー的土地の「土地取り合戦」に反対する農民組織、地方コミュニティーそしてNGOにより強い反応を引き起こした南アである。(末尾の資料「Rural communities express dismay: "Land grabs fuelled by biofuels stategy"を参照されたし」


ウガンダ


ウガンダの天然森林であるMabira Forest Reserveをサトウキビプランテーションの拡大のためにdegazetteする(法的保護の解除)プロセスは、数人の死をもたらした公的蜂起を引き起こした。これらの開発は実入りのよいバイオエタノール市場に参入したいと考えるサトウキビ企業から来ている。

マビラ森林はナイル川に貢献する2つの川の分水界であり、ヴィクトリア湖を守り、主要な産業地域の汚染を吸収する重要な役割を果たしている。森林は数百万トンの二酸化炭素を吸収し、ウガンダのNational Forest Authority(NFA)によると、マビラ森林を伐採する計画は312種類の木、287種類の鳥類、199種類の蝶を脅威にさらすことになる。マビラと近隣森林のみで見つけられる9種類のものは、絶滅の危機にある。

世界銀行の専門家らは、森林伐採がナイル川上流とヴィクトリア湖の水位を低下させると警告している。これは生計、農業、降雨、そして電力生産に劇的な結果をもたらすこととなる。森林伐採により起こりうる可能性の有る土地浸食、旱魃、洪水、そして地滑りは、まだ経済価値では図ることが出来ないが、ウガンダの人民と経済が抱えることのできる重荷を遥かに越えるものとなるだろう。

ウガンダのKalangala島での今後のバイオ燃料開発は、バイオディーゼルのためのパームオイル・プランテーションを行うために広大な熱帯雨林の伐採へと導いている。


ベナン


ベナンにおいて、政府のパームオイル・プランテーションのために広大な湿地帯を開発する計画は進行中である。Wetlands Internationalによると、パームオイル・プランテーションのためのマレーシアやインドネシアにおける南東アジア泥炭地(South East Asian Peatlands)の破壊や焼畑は、世界の二酸化炭素排出量の8%にあたる。

ベナン政府は、家族単位や小規模生産から、国際的バイオ燃料市場に参入するために、綿実、サトウキビ、マニオク、ソルガム、メイズ、ソヤそしてハマビシ(ground nuts)からの大規模なバイオ燃料生産への規模の拡大を計画している。しかしながら、政府とアクターはこの戦略により引き起こされる社会経済・環境的な影響を考慮することに失敗しており、例えばその影響とは、農民が彼らの土地と食料作物との増加する競争にどのように順応するかなどである。


タンザニア


タンザニアにおいて、バイオ燃料耕作のために多数の広大な土地を用意する計画は、小規模米農家を強制退去させる、Wami川流域のサトウキビプランテーションを含んでいる。


疑問1「バイオ燃料の持続可能なシステムはどのようにデザインされるべきか?」


求められている規模における、満足の行く持続可能なバイオ燃料システムは存在しない。事実上、EUのエネルギー要求に提供できるだけの現在の消費率を賄う十分な土地が存在しない。先進国と途上国両方の政策立案者は、持続可能でもエネルギー消費でもないと分かっている持続可能なバイオ燃料を作ろうとするよりは、風力や対応電力などの本質的に持続可能な解決策を模索するべきである。「持続可能なバイオ燃料」に関する国際的に同意された定義は存在しておらず、もし存在していたとしても、どのような認定法も非合法な境界線と貿易として議論される可能性がある。

しかしながら、「持続可能なバイオ燃料」は、真に持続可能であることができるのは、限られた量だけであると定義されるに至っている。プロジェクトの目的を達成するために、バイオ燃料生産は、増加する目標を達成するために十分なバイオ燃料を提供することに伴う土地利用と食糧供給への必然的な変化により、潜在的に非持続可能となる。

アフリカの文脈において、我々は真に「持続可能なバイオ燃料」は、どのような土地と食糧作物とも競合・強制退去することがなく、現存の農業実践の中に組み込むことのできる作物を伴うものであると信じている。我々の観点からいえば、そのように持続可能なバイオ燃料は、貧しい人々のエネルギー要求に見合うための家族、地元や国内的利用により生産されるものである。我々にとって、輸出のための大規模なバイオ燃料作物の生産は、我々の農業を追いやり、それにより持続可能であることが出来ないのである。

EUのバイオ燃料の需要を満たすために、求められている規模のバイオ燃料作物を提供するための土地に関する対話は、土地利用政策へ大きく影響しそうであり、そして社会経済・環境的に否定的な影響を有している。

アフリカに対する教訓?


バイオ燃料はエネルギーの効率が良くなく、地元の農民の利益とはならない。

2005年にIVリーグ・コーネル大学でPimentelとPatzekにより行われた研究は、生成されたエタノールやバイオディーゼルよりも、トウモロコシ、大豆、ひまわり等の植物を燃料に変える方が、エネルギーを使うことを発表した。「液体燃料に変わって植物のバイオマスを利用することに何等エネルギー上の利益は存在しない」とコーネル大学のエコロジーと農業教授であるPimentelは述べた。後これらの戦略は持続可能ではない」。バイオ燃料は自滅的な戦略であり、数値によると:「トウモロコシ穀粒を使用したエタノール生産は、生成されたエタノール燃料よりも、29%も多くの化石燃料を必要とする。スイッチグラス[注があるといい]を使用したエタノール清算は精製されたエタノール燃料よりも50%も多く化石燃料を要する。木材バイオマスを使用するエタノール清算は、精製されたエタノール燃料よりも57%も多く化石燃料を必要とする。大豆を使用したバイオディーゼル生産は、生成されたバイオディーゼル燃料よりも27%も多く化石燃料を必要とする(1ヘクタールごとの大豆油のエネルギー生産は、とうもろこしからのエタノール生産よりもずっと低い事を記しておく)。ひまわりを使用したバイオディーゼル生産は、生成されたバイオディーゼル燃料よりも118%も多くの化石燃料を必要とする」。Pimentelは、アメリカ政府がエネルギーバランス純益や利益を提供せず、再生可能なエネルギーソースでも、経済的な燃料でもないにも関わらず、年間30億ドルもエタノール生産を補助するために費やしていると概説する。補助金の大半は農民にではなく、巨大なエタノール生産企業に与えられている。
「とうもろこし、スイッチグラス、木材を使用したエタノール生産;大豆とひまわりを使用したバイオディーゼル生産」David Pimentel and Tad W. Patzek Natural Resources research、第14巻、1号、2005年5月、65-76頁。


バイオ燃料と良い炭素吸収源の破壊と多くの土地が持続可能になるための必要


2007年4月4日にGuardianで発行されたMacKinnonの記事の中で、彼はバイオ燃料に関連する災害に関して宣言している。彼は「その数値は悪事を証明する。15年の内で、インドネシアとマレーシアの98%の熱帯雨林が消滅する」と述べている。彼は熱帯雨林が、十分な炭素吸収源を代償に、パームオイル生産を促進するために森林が切り倒されていると説明する。彼はWillie Smitsを引用し、「目を凝らして見ると、パームオイル・プランテーションの許可を企業が得ている地域は、高保護森林である。」Smitsは、熱帯森林の減少を地図に記録する人工衛星、SarVisionを設置した。「彼らが本当にしている事は、材木を盗んでいることであり、何故なら植える前に一掃できるからである。しかし材木のみが彼らの欲しいものである;新しく植える意図などなく奇襲をかける。これは彼らの陰謀である。「ドイツの圧力団体Wetlands Internationalからの研究者らは、新しいパームオイル・プランテーションのために作られたスペースの半分に相当するほどの土地が、ピートを水抜きし、燃やして一掃され、大気中に大量の二酸化炭素を放出していることを発見した。

Kalimantan中央の水浸しのピートは、膨大な炭素を蓄積する広大な有機スポンジの役割を果たしている。しかし、プランテーションのために水抜きされると共に、また材木を取り除くために切り開かれた道により、その蓄えていた炭素を放出した。インドネシア単独で、ピーとは年間600mトンものカーボンを放出している。更に悪いことに、一掃を早めるしばしばために放火されており、朦朧として東南アジアの大半を覆った巨大な森林火災に二酸化炭素を加えている。予測によると、インドネシアの炎は年間1,400mの二酸化炭素を引き起こし、もし両方の要因が考慮されるならば、世界で26番目から一気に自身を第3番目に大きな二酸化炭素の生産者として押し上げている。

「パームオイル:未来のバイオ燃料が現在の生態系災害を引き起こしている」Ian MacKinnon、Kalimantanにおいて、2007年4月4日、水曜日。

もしイギリスが効果的な方法で、世界的な気候変動の緩和に真剣ならが、国家として責任の有る排出量を考慮すべきであり、特に外国においてバイオ燃料の利用を直接推進することである。イギリスはバイオ燃料の開発も使用もやめるべきであり、または本当に変化をもたらしたいならばその目標に排出量を含むべきである。


疑問2:「どのようにして土地利用の総合的な影響を監視するべきか?」


我々が考慮しなければならないのは、土地への影響に伴うリスクである。我々が監視しようがしなかろうが、土地への影響は存在する。よって、我々はもし土地を守ることに真剣ならば、バイオ燃料(持続可能であってもなくても)の開発を推進するべきではない。

大規模なバイオ燃料開発は世界の他地域でも貴重な教訓も持っている:ソヤとサトウキビプランテーションのためのブラジルのアマゾンとPantanalの破壊;その恐るべき状態は、時々ブラジルに多く存在するサトウキビプランテーション;パームオイルのためのインドネシアの熱帯雨林の破壊;飢餓と蜂起を導いたアメリカのエタノール消費によるメキシコの穀物価格の上昇等の奴隷行為と比較することができる。我々は、アフリカでも同様の開発を予期するに正当な理由があると信じている。

気候変動問題は深刻であり、アフリカにいる私たちがそれを最もよく知っている。我々は産業による活動と、EUの運送が必要であることに賛成する。しかしながら、我々はバイオ燃料の大規模な宣伝が、アフリカの社会経済・環境に影響を及ぼすことを考慮して頂きたい。

去年イギリス政府により出されたSternレポートは、森林伐採により25%の世界的二酸化炭素排出が来ていることを明らかにした。これにより、森林伐採を促進するどのようなバイオ燃料計画も、気候変動の環境解決策として、まかり通ることを許してはならない。森林は水の循環と気候を、地域的にも世界的にも維持している。森林は世界の多様な生物の住みかであり、また世界中の何千もの伝統文化や生計の基準点である。

アフリカ人の生物多様性と生計は、気候変動解決策の要因としての消耗品として考慮されるべきではない。ここで記しているアフリカや世界のその他の地域での事例は、成長し加速するトレンドのほんの始まりに過ぎないかもしれない。これらのトレンドはアフリカのコミュニティーに対して育てている作物を変え、荒野や森林地域が犠牲になっている間、土地、食料、森林へのアクセスに深刻な圧力をもたらすだろう。もしアフリカによるEUの広大なエネルギー要求を達成しようと試みるならば、これらの影響は巨大となるだろう。

我々は土地利用に変化が無いことを目指していることを確認する必要がある。事実上、現在大気中に有るGHGs余分を吸収する最も良い方法は、最高の炭素吸収源―既に存在する先住森林機能である。最高の炭素吸収源はバイオ燃料プランテーションのために破壊されて来ている。「持続可能性」は単に炭素だけの話ではない。生物多様性と生計の問題はこれらの美論の中心でもあり、妥協は許されない。

政府は森林の重要性を強調し続け、古い森林と生物多様性の保護を奨励するべきである。我々は二酸化炭素の排出にのみ注目するのではなく、緩和への努力が既に悪化している状況を更に悪くしないよう確認しなければならない。地球は既に二酸化炭素を保持し吸収する最高の天然吸収源を所有している。それらの破壊は決して完全な最大容量ににまで復元することができない。事実上、研究によると生物多様性と古い森林の価値は気候変動の緩和にとって極めて重大で、本質的であり、バイオ燃料の開発によって危機に晒されてはいけない。


古い森林


SCIENCEの中で2006年12月に行われたZhou et alによる研究は、森林の成長(少なくとも100歳)により、一般に信じられ、予測されているよりも多くの炭素が貯蔵される事を概説した。事実上、中国の南部に位置する400年森林が、1979年から2003年の間に有機炭素の集中を土の中の上部20センチから約1.4%から2.35%に増加させたことが明らかにされた。

「原生林は土の中に炭素を貯蔵できる」G.Zhou, et al、サイエンス、2006年12月1日、Vol.314,No.5804、1417頁。


生物多様性


Tilmanにより行われた研究は、高い生物多様性と、地球上の生態系システムにおける炭素生産量とバイオマスに関して安定性と生産性の両方の関連性を確かめた。生物多様性の重要性は、保存の問題であり、そしてまたより良い炭素吸収源の問題でもある。


Tilman, D. & Dowing, J. A. Nature 367, 363-365 (1994).
Tilman, D., Wedfin, D. & Knops, J. Nature 379, 718-720 (1996)

Natureからの研究は「現実世界における植物の生物多様性の損失が二酸化炭素を修正する生態系システムの能力の低減を意味する限りにおいては、我々は多様性の損失が、人為改変二酸化炭素を吸収する教会的生態系システムの能力を減少させるかもしれない事を仮説として結論付ける。」http://www.wrm.org.uy/bulletin/39/research1.html

バイオ燃料と生物多様性が互いにどのように競合し会うかを研究は明らかにしている。我々は、我々が所有する吸収源と生態系システムを維持することを確認し、気候変動状況を悪化させないよう勤めなければならない。実際に、他の様々な報告は「バイオ燃料は生物多様性にとって悪報である」としている。
http://gristmill.grist.org/story/2006/6/12/103838/376 2006年6月12日
そしてバイオ燃料政策はごくわずかな炭素の削減をもたらす
http://www.edie.net/news/news_story.asp?id=11549 2006年6月7日


生物多様性、巨大森林、そして気候変動の間のダイナミックな関係性


「英国王立協会の議事録(Proceedings of the Royal Society)がよりよい気候変動緩和の鍵となるが、既に生じている変化への影響に耐えうるためには、森林は大規模な保全が必要となることを明らかにした。研究の提案は、生物多様性の利点と同様可能な気候を強調する事により、森林保全プログラムを推進することが有益であるとしている。この研究は生物多様性、巨大森林、そして気候変動の間のダイナミックな関係性と、互いにあるフィードバックを強調している。

「多様性のホットスポットにおける気候と保全に関する森林のフィードバックの規模の一致」Thomas J. Webb, Kevin J. Gaston, Lee Hannah and F. Ian Woodward 英国王立協会(The Royal Society)2005年11月16日


疑問3:第二世代バイオ燃料はどのようにして推し進められるべきか?


もし第二世代バイオ燃料がGMOを伴うならば、我々は厳しく注意を行使することを勧める。例えば、イギリス政府がGM作物を「持続可能である」と考えることを許可しているらしい。それは大変受け入れがたい主張である。我々は、自身を「持続可能」であると呼ぶいかなる作物も、GMを含むことが出来ないと感じる。

南アの例外を除いて、どのアフリカの国々もGM作物を購入したことがない。これはアフリカの農民と政府が特定の化学薬品によってのみ機能する特徴的な種と作物による影響と、GM人工授粉と地元作物の汚染への高リスクに深刻な懸念を示しているためである。長年の間、アフリカはGM作物を受け入れるようにとの強い国際的圧力に直面しながらGMに縛られてこなかった。残念ながら、バイオ燃料はアフリカの農民と環境の利益に優先して、GM作物を我々の大陸に入り込ませる入口を提供するかもしれない。

我々はまた、GMが急速に突然変異し、DNAを交換し再生産する能力、そして汚染の難しさから、GM微生物をバイオ燃料生産に使用することに警戒する。


疑問4:10%のバイオ燃料割り当てを達成するために、今後どのような活動が必要なのか?


バイオ燃料(アグロ燃料)消費と生産は止められなければならず、推進されてはいけない。環境とその住民へのリスクが大きすぎる。農作物からバイオ燃料を生産し、消費することにより、我々は気候変動の緩和に対して否定的に貢献している。我々は目的がグリーンで持続可能なことである限り、バイオ燃料を推進も容認も出来ない。生産するよりももっと多くのエネルギーを利用し、森林と生物多様な生態系システムなどの炭素吸収源を明け渡し破壊するリスクを負い、そして生産国に大きなカオスを生じさせる。

もし我々が、既にこれらの事をバイオ燃料開発の過程で経験してきた国々から教訓を得ることができるのならば、海外からの新しいエネルギー原料の開発は地球の機構に修復不可能な損害をもたらすだろうと認識する必要がある。EUのバイオ燃料を育てるために他国を利用することは、実際の利用者が西側諸国であるである場合に単位当りの排出量を増加させるだろう。この状況を阻止する最も良い方法は、産業の開発を止めることである。もし出来なければ、途上国は食料競争と排出量増加の二重の重荷を負うこととなる(彼ら自身のものでないにも関わらず)。

記事や研究は:「バイオ燃料に対する高まる要求」が食料不足に繋がることを、2007年4月19日のTelegraphで明らかにしてきている。「The Scotsman」、「the Globalist」そして「Euractiv」を含む他の様々なソースも自身の食料ソースに関心を持っている。BBCによると、アメリカは食料と燃料の間の同様の競合を体験しているhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/business/6481029/stm。もし先進国の人々が食料を買おうともがいた所、幾つかの国々は我々のエネルギー需要に食いつこうと技術的に「飢えている」途上国にお願いすることは完全に道理を弁えていない要求である。

我々が提案することは、持続可能な農業実践、バイオ燃料生産者となる恐れのある国々において生物多様性と森林保全である。彼らが最も良い吸収源(古い森林や生物多様性)のうちのいくつかを振舞っていることに気付く必要がある。もし我々の挑戦が効果的に気候変動を緩和しているのならば、フィールドに存在する最も「カーボンニュートラル」とされてきた生物多様性と伝統的手法を保全し、風力やソーラーパワーなどの再生可能なエネルギーソースに投資することを残す最良の方法で行わなければならない。


Summary and Conclusion






*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p1/2004t.htm

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