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僅かな貸付が貧しい人の可能性を拡げる


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Gender in Africa
アフリカ Africa 2015


おかねおくれ


作成:斉藤龍一郎
 *(特活)アフリカ日本協議会事務局長

僅かな貸付が貧しい人の可能性を拡げる

アフリカのマイクロファイナンス組織に多くの財源が集まる

Mary Kimani 著(翻訳・AJF)

マイクロファイナンスは、経済成長に役立っているのだろうか?この質問を投げかけると、ケニアのEquity Bank会長James Mwangiさんは、肯定的な回答をする。アフリカリニューアルに対し、それが例え僅かな貸付であっても、そのおかげで「零細企業から中小企業へと発展させた家族達がいました」と語る。

マイクロファイナンスとは、担保や借入履歴が無いため通常の銀行からは融資を受けられない、低所得層の人々をターゲットにした貸付である。これは新しいものではない。1970年代から、貧しい人々、とりわけ女性やインフォーマルセクターで働く人々に対して、彼らが必要最低限の生活を送る事が出来るよう、また事業を始めたりそれを拡大したり出来るよう、様々なNGOが小額の貸付を行っている。

しかし、世界中から益々多くの個人投資家や投資機関が、このセクターに対して、より多額の資金を投入するようになったと、世界銀行の提携組織であり、貧困層への貸付を拡大するために各国政府と協力する HYPERLINK "http://www.cgap.org/" CGAP (Consultative Group for Assisting the Poorest) は報告している。

従来のマイクロファイナンスの貸付は、20ドルから300ドル程度の金額であり、NGOによるものであった。これらのNGOのほとんどは金融機関としての登録は無く、貸付に関しては一般的にドナーからの寄付金に頼っていた。このためNGOは、ドナーのポリシー変更やプロジェクト選定に関する厳しいルールに左右されがちであった。

幅広い階層に対してマイクロクレジットを行った最初の民間組織である、バングラデシュのグラミン銀行は、新しいモデルを構築した。グラミン銀行は、膨大な数の貧困層に貸付をする一方で、利益をあげる事も出来ると証明した。同様に、貧困層の人々が、企業家精神や債務支払能力を持ちうる事も立証したのである。

この20年の間に、マイクロファイナンスは単なる貸付の域を超えた。CGAPによれば、マイクロファイナンスとは今日では「貧困層を対象としたリテール銀行」を意味するのであり、保険やその他サービス、また携帯バンキングと言った新たなサービスをも提供している。

貸付の要求はかくして驚異的に増え、貸付枠から供給できる金額をはるかに上回った。ドイツ銀行による2007年度の調査では、世界中のマイクロファイナンスに440億米ドルの投資が行われているのに対し、その要求は実際、約2500億米ドルに上るとの事である。ますます不安定になる世界金融市場に依存しない新たな金融市場を探し求める投資家達にとって、マイクロファイナンスは魅力的なオルタナティブとなったのである。この動向は、より高額な貸付を可能にしただけでなく、より広範囲に渡る貸付や金融サービスを、貧困層とりわけ女性達に提供する事を可能にした。(関連記事「アフリカ女性の銀行活用が広がる」参照)

信用保証

ニューヨークに設立された非営利の貸付団体であるShared InterestのDonna Katzinさんは、信用保証がこのセクターにおける最大の成功のひとつだったと説明する。スイスの団体 RAFAD (Recherches et Applications de Financements Alternatifs au Developpement) は、1980年代から商業銀行がマイクロファイナンスの組織やプロジェクトに対して行う貸付に対して保証をしており、Shared Interestは、RAFADが切り開いた道に続いたのである。

これらの信用保証を行うことで、RAFADとShared Interestは、担保や借入履歴の無い個人やグループに対して貸付を行う際、商業銀行が引き受けねばならないリスクと言うものを驚くほど軽減させた。借り手が債務不履行に陥った際にRAFADやShared Interestがその損失の一部をカバーする、この保証と言う名の約束は、銀行が貸付に同意するだけでなく、通常は行わないような多額の貸付を行うのを可能にした。20年の間に、RAFADとその国際信用保証会社は、2億1200万ドルの貸付に対して、5300万ドルの保証を供給した。この資金は世界中に26万人の雇用を創出し、約100万人の人々に利益をもたらした。

Shared InterestはRAFADと共に南アフリカ共和国で業務を展開している。1994年から国際信用保証会社Thembaniに1140万ドルを投資している。この投資は利子にして約2%のリターンを得ている。

非営利団体として、Shared Interestは低利率を維持しているが、民間の貸し手は往々にしてより多くの利益を求める。商業銀行へのアクセスが限られている地域においては、既存の唯一の貸付元である高利貸しが通常要求する法外な利率と比べると、20%から30%の利率であっても、多くの貧しい借り手にとっては割安なのである。マイクロファイナンスへの投資家はかくして、他の従来の投資がもたらす収益よりも、より多くの収益を得る事が出来るのである。

拡大するセクター

この潜在的可能性に惹かれて、アメリカの民間マイクロファイナンス投資会社であるMicro Vestのような民間企業は、ガーナのマイクロクレジット組織であるSanapi Aba Trustに対し100万ドルの投資を行った。同様に、2001年に設立されたAfriCap Microfinance Fundは、とりわけガーナ、ケニア、セネガル、マダガスカル、マラウィ、モザンビーク、ナイジェリアとシエラレオネと言った国々の12のマイクロファイナンス組織に投資した。約5000万米ドルの資産を有するAfriCapは、マイクロファイナンス専門の、アフリカ初のエクイティファンドである。

結果は目覚しいものだった。AfriCapとHelios Internationalによる、それぞれ12%と25%の所有権株と引き換えに行った、ケニアのEquity Bankへの資金投入は、それまで小さなマイクロファイナンス組織であったEquity Bankを、第一線の商業銀行へと変貌させたのである。この銀行は今日では、2500万人の低〜中所得層ケニア人を顧客に持つ。更にウガンダでこの分野における最大の組織であるUganda Microfinanceを買収した。その受益者は中小企業であった。

2004年にEquity Bankは、アフリカのマイクロファイナンス組織としては初めての株式を公開した。2006年までに1億600万以上の貸付を主に女性を対象に拡張した。投資家はかなりの収益を得る事が出来た。「資産に対して7%のリターンを計上し、200%の成長率を達成しました」と、Mwangiさんは強調する。

Mwangiさんは、アフリカのマイクロファイナンスセクターに対する関心と投資の増加は、主に「投資のチャンスが他の地域で減退した」事による結果だと考える。また同様に「アフリカは峠を越えたという認識も広がったのでしょう。人々はアフリカの可能性を見抜き、アフリカ大陸の成長を利用しようと、戦略的に位置を定めたのです」と語る。

希望を産むパートナーシップ

利益を得る事と、貧困層が金融サービスを利用できるよう支援する事、このふたつの目的を掲げて、 民間企業は、マイクロファイナンスに共同投資するために、より一層、ドナー組織との連携を深めている。このパートナーシップは、開発への融資を優先するという、世界各国の首脳や政府によるモンテレー合意の精神に合致するものである。これら首脳はマイクロファイナンスの重要性を理解し「民間セクターの金融改革と官民パートナーシップ」を助長する事に積極的にコミットした。また、こういったパートナーシップは、農村部住民や女性といった、国の金融機関がこれまでないがしろにしていた人々に手を広げる力を増強するだろうとの希望を表明している。CGAPの予想によると、このふたつの市場は世界中のマイクロファイナンスの利用者のうち、3分の2を占めているのである。

GroFin Africa Fundは、この官民パートナーシップのひとつである。およそ1億5000万ドルの資本を有するGroFinは、アフリカ開発基金、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)、Deutsche Bank Foundation Americas、 Skoll、SyngentaとShell Foundationその他を集合させたコンソーシアムである。この集合体は、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ガーナ、ナイジェリアと南アフリカ共和国の約500の中小企業に対しての直接投資を計画している。

GroFinの職員はまた、これらの中小企業が、より安定した収益性のある営業活動を行えるよう、技術支援も提供している。融資に、ビジネスのアドバイスを組み合わせる事は意図的な戦略だったと、GroFinの東アフリカ地域投資マネージャーKenneth Onyandoさんは2007年に述べている。「アフリカの中小企業は必要な資金を得るために非常に苦労していますが、それは銀行から、投資するにはリスクが高過ぎると見なされているからです」と語る。「融資をビジネス成長の支援と結びつける事で、私達はこの問題に対して実現可能な解決策を提供しています。そして中小企業に希望を与え、投資家にリターンを与えているのです」

ケニアのBusiness Partners International (BPI)も、同様のコンソーシアムである。国際金融公社(IFC)、欧州投資銀行(EIB)、東アフリカ投資銀行、ケニアのプライベートエクイティファンドであるTran Century とCDC groupから構成されている。2006年2月には、BPIは1億4100万ドルの資金を準備し、顧客に対し5万ドルから50万ドルの貸付を行った。リスクを軽減するため、可能な場合には担保が入れられた。しかし、借入を希望する人が担保を入れる事が出来ない場合には「企業の発展可能性」に基づいて融資の決定がなされた、とBPIの投資主任であるSally Gitongaさんはローカルメディアに語っている。

時代に遅れて

アフリカのマイクロファイナンス・セクターに参入する民間企業やドナーによるコミットメントが大きく増加しているにも関わらず「アフリカのマイクロファイナンスは、南アジアやラテンアメリカと比べると少なくとも5年は遅れている」と、Micro VestのアナリストであるSasidhar Thumuluriさんは、投資の出版物で述べている。彼曰く最大のネックは「お粗末なインフラ、脆弱な組織、金融及び人的資源の欠落である」

しかし彼はこうも付け加える。「民主主義機構が設立され、有能なプロフェッショナル達が移民先から帰国し、そしてガバナンスが向上している、こういった肯定的な変化が見られるガーナのような国は、より多くの投資家を惹きつけている」

Katzinさんは、Shared Interestのようなイニシアチブが成功するためには、「十分な資本を持ち、国際的な貸し手とやっていけるだけの、公的な銀行システムが必要」だと言う。また彼女は「規制によって好ましい環境が得られない地域」では成功は困難であると、アフリカリニューアルに語る。

もうひとつの懸案事項は、借り手の返済不履行である。Katzinさんは、顧客が困難を抱えている時には、顧客が少しでもよい収益を出し、投資家のリスクを減らすためにも、技術支援は欠かせないと断言する。この技術支援を提供する事で、Shared Interestは貸付に対する返済不履行を3.2%にとどめている。

また、投資家の資金を更に保護する目的で、Shared Interestは損失を吸収するための積立金を設けている。「リスクを避けているのではありません、リスクを管理しているのです。もし借入を返却出来ないのなら、私達はこの積立金から埋め合わせをします。これまでに、ただの一人の投資家も元金を失った事はありません」とKatzinさんは言う。

借入出来ない程の貧しさ

全ての人が貸付に向いているとは言えない事を、Katzinさんは認めている。あまりに貧しいため、貸付をする事で、助けるどころか逆に、負債と貧困の泥沼にますます陥らせてしまうケースもある。こういった人々は極度に脆弱であるため、ドナーは補助金の形で支援を続けて行かねばならない。「貧困状態があまりにも根深いため、貸付のシステムが薦められない国もあります。こういった国では、違った形態の資本に手を伸ばす前に、その人々が自立できるよう、まずは補助金が必要なのです」と彼女は説明する。

Mwangiさんも同じ意見である。「まずは、家族が生活費を払えるように支援せねばなりません。そうすれば次に、子供達はより多くの時間を学校で過ごすようになり、家族の健康状態が改善していくでしょう。まさにそこからようやく、家族は貯金をしたり、またより多くの消費活動をしたり出来るようになるのです」

家族が貯金を出来るような状態になれば、事業の創業や業務拡張のために貸付を利用するなど、マイクロファイナンスは、彼らがより高い目標に到達する手助けになるとMwangiさんは信じている。「そしてそこから経済発展が始まるのです」

※ もし引用される場合は、以下のページを参照の上、訳文等をチェックした上で引用してください。
http://www.un.org/africarenewal/magazine/january-2009/small-loans-widen-horizons-poor
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