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Grainアニュアルレポート 食料と金融危機最中の農地に卑劣な手口


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アフリカの食料・農業問題/アフリカアフリカ Africa 2015

Grainアニュアルレポート 食料と金融危機最中の農地に卑劣な手口

2008年10月 グレイン

現在の食料危機と金融危機との間の相乗作用によって、新たな「土地の買占め」が世界的規模で始まった。一方では、食料不安にかられた輸入頼みの政府たちが、自国民を食べさせるために自国自身の食料を国外生産で確保するよう外国の広大な農地を召し上げている。他方では、農業加工食品会社や金融危機の悪化の背景の中で、収益に飢えた民間の投資家たちが大型で新しい収入源を外国農地への投資の中に見出している。このため、肥沃な農地は次第に私有化され集約化が進んでいる。この動きが牽制されなくてもよいとしたならば、この地球規模での土地にまつわる卑劣な手口は、小規模農業経営と世界中の少なからぬ地域の農村存続手段に不吉な警鐘を鳴らすことになる恐れがあろう。

はじめに

土地の買占めはこの数世紀以来から存在する。クリストファー・コロンブスのアメリカ「発見」がきっかけとなった原住民地域社会の追い立て、あるいはニュージーランドのマオリ族や南アフリカのズールー族の占有地を無理やり取り上げた白人移住者に思いを致すだけで十分である。これは、例えば、中国やペルーで現在でもそのまま残っている暴力的なやり方である。バリックゴールド社のような鉱山会社が南米の高原に進出したときや、ドール社やサンミゲル社のような農産物加工会社がフィリッピンの農家の土地権利を略奪したときのように、報道が土地に関する争いのことを繰り返さない日は殆どない。多くの国において、民間投資家が自然公園あるいは保護地域として管理されることになっている膨大な面積を獲得している。そして良く注意して見ると、気候変動に対する対応として促進されているバイオ燃料なる新しい産業が、これらの土地の住民を駆逐した上で、興されるらしいことが分かる。

しかし、今、現在は、さらに特別なことが起きている。最近の15カ月に始まった世界の2つの大危機(世界的な食料危機と食料危機がその一部をなす、さらに広範な金融危機)の相乗作用によって食料生産を外部化するために土地を買収するという気になる傾向が生じたのである。2タイプの土地の買占めを活発化させている2つの並行する戦略が存在する。しかし、これらの出発点は異なるとしても、恐らくはこれらの手法は最終的には1本に絞られる。

第1の手法とは食料確保の手法である。食料輸入に依存すると同時に、マーケットがタイトにあるのを心配するいくつかの国は、自由になる流動資産があるにもかかわらず、他国の農業経営を支配して自らの国の食料生産を外部化しようとしている。彼らは、これを、これまでよりも確実な安全性で自国民の食料確保を安価に行うための長期的な革新的戦略と考えている。サウジアラビア、日本、中国、インド、韓国、リビア、エジプトはこの部類に入る。これらの国の多くの上級幹部たちは2008年3月以来、ウガンダ、ブラジル、カンボジア、スーダンならびにパキスタンといった国の肥沃な農地を求めてある種の外交的宝探しに奔走している。世界食糧計画が5〜600万の避難民を食べさせようとしているダルフールで実際に長引いた危機のことを考えれば、外国政府がスーダンで農地を買って自国市民のために食料品を輸出することは、ばかげているように思われるかもしれない。10万世帯、すなわち50万人が現実に食料不足にあるカンボジアも同様のことが言えよう。だが、これが、今日、起きていることなのである。「食料不安」にかられた政府連中は、農業の機会が限定されていることやマーケットを信用できないことを確信して、現在、よそに自国自身の食料生産のための土地を買っている。その一方の他方の極みでは、この自国の農地利用に同意を与えるよう強く求められた相手政府連中は、この新しいタイプの外国投資の申し出に気前よくしかも好意的に歓迎しているのである。

第2の手法とは金融にかかわる手法である。現在の金融崩壊の上に立って、金融と農産加工のセクターのすべてのタイプの参加当事者(サラリーマン退職年金運用投資会社、資金の回転スピードを求めるキャピタル投資ファンド、今は完全に崩壊してデリバティブマーケットを見放した投機ファンド、新たな成長戦略を求める穀物商人)は、食料と同時にバイオ燃料の生産のため、また、新しい収益源を確保するために、矛先を変えて土地に向けている。土地所有は、それ自体が多くのこれら多国籍企業にとって従来の投資とは異なる。実際、土地は、多数の国々が一様に外国の手には所有させない、政治上の紛争のリスクを代表するものである。また、土地は、豚肉や金のように翌日にその日の価値が決まるものではない。その恩恵にあずかるためには、投資家たちは土地の生産能力を向上させなくてはならないだけでなく、農業経営を現実に確実な運用をしながら時には手を汚さなくてもならない。しかし、食料と金融の両危機がつながりをもつことにより農地は新たな戦略的資産に変質したのである。世界中の多くの場所で、食料価格が上がっているのに土地の価格は安いのである。また、食料危機の「ソリューション」の多くは、我々が利用する土地から多くの食物を取り出すことを提案している。つまり、水源に近いより良い土壌の支配権をできるだけ早く獲得すれば明らかにお金を稼げるのである。

これらの2つの手法は、両方の場合とも支配権を持つのは民間セクターであるので合流する。食料安全保障の力関係では、公共政策のプログラムを通じた作戦を担うのは政府である。金融収益の力関係では、そのビジネスを行うのはいつものように投資家でしかない。しかし、行き過ぎを放置してはならない。たとえ、これが「食料安全保障」の大義のために土地の買占め契約に関する取引を商談して締結するのが公職の幹部であっても、途中で引き継いで実施を担当するのは民間セクターであることは確実に察しが付く。また、考えつく手法がどのようなものであっても、取引は両方とも同じ方向に向かう。つまり、これは、外国民間企業が地域住民のためでなくよその住民のために食料を生産するための農地に関する新しい支配形態を獲得するのである。一体誰が植民地主義は過去のことだと言ったのだろうか?

食料安全保障を求める国々

サウジアラビアや中国が世界中で農地を買収しつつあり、ソマリアやカザフスタンでも同様であると新聞が報道したとき、大部分の人々は食料安全保障に関連した土地買占めのうわさを聞いた。しかし、その他にも多くの国がかかわっている。さらに詳しい分析によって食料安全保障を動機とした土地買占めに関する衝撃的なリストが明らかとなった。アジアでは、中国、インド、日本、マレーシア、韓国、さらに、アフリカではエジプト、リビア、そして中東では、バーレーン、ヨルダン、クウェート、カタール、サウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦である。付録に土地を求める国々がどこで、どんな理由で、いくらの金額でといった詳細記述を付録にのせてある。

これらの国々のそれぞれの状況は確かに非常にまちまちではある。中国は食料の際立った自給能力を欲しいままにしている。とにかくこの国の人口は膨大であり、その農地は工業発展とともに消滅しており、その水資源はかなりひっ迫しているため、中国共産党は長期間にわたる将来について考えなくてはならない。農民が世界の40%にもかかわらず農地は世界全体のたった9%にすぎないので、食料安全保障が中国政府の政治懸案事項の重要な位置を占めているのは驚くべきことではない。そして中国には、1兆8000億USドルの外貨準備を使えば、その相応しい外国での食料確保に投資するための十分なお金が手元にある。南東アジアでは多くの農業の経営者や戦士たちによってこのことが知られている通り、北京は食料危機が勃発する2007年までにその農業生産の1部外部化を徐々に始めたのである。中国の新しい地政学的な外交と政府の外国投資の積極的な戦略のおかげで、技術、教育そして中国のインフラの開発資金と交換に友好国の農地へのアクセスを中国企業に与えるための30程度の農業協力協定がこの近年の間に締結された。これはアジアに限らずアフリカ全土でも極めて多様でかつ複雑なすべての一連のプロジェクトにわたって進行している。カザフスタンからクイーンズランドまで、モザンビークからフィリッピンまで、土地を借りるかまたは買い、大規模な農業経営を創り出し、農業家や研究者そして普及員を連れてくると同時に、栽培作業まで行う予定である中国企業ともども、連続的でかつよく知られる手法が進行中である。中国の外国での農業活動の大部分は、コメ、大豆そしてトウモロコシの栽培だけでなく、サトウキビ、モロコシのようなエネルギー関連の栽培にも向けられている。外国でのコメ製品は、大抵は輸入される中国種子から栽培されるハイブリッドコメであるとともに、中国の農業家や研究者は熱意をもってアフリカ人其の他に「中国流」のコメの栽培を教えている。いずれにしても、例えばアフリカの中国農業経営施設で働くために雇われた地域の農業労働者は、コメが自国自体の人々それとも中国人を食べさせるのに役立つのかどうかも知らないことが多い。多くの土地協定の秘密の側面が与えられると、大部分の人々はコメが中国人を養うのに役に立つのだと推測すると同時に、身動きが取れなるほど深刻な憤りにかられる。

基本的には、土地買占めの中国の戦略は、真剣な取り組みである。つまり、政府が中期にわたる国の食料の調達のためにリスクを分散するとともに、その選択を最適化するという取り組みである。実際には、その農地と水源の喪失により中国にのしかかるプレッシャーが強すぎた結果「中国は外国に行くという以外の選択をしなかったのである」と農業科学の中国学士院のある専門家は評する。実は、中国の外国投資の世界戦略の中で食料は、エネルギーと鉱物原料とともにますます大きな位置を占め始めている。2008年9月1日、農業大臣は食料生産の外部化に関する中央政府の方針を提案するまでになっていた。プロジェクトは公のものではないが、どの地点で、どの位の期間で、政府がこのような協定を金融的に準備するかをはっきりと示している。この間に、民間セクターがますます重要な役割を果たす必要性を示す多数の要因が明らかになった。7月の討議の後、少なくとも当面の間、政策手段を待機させ始めた。「極めて急ぎ過ぎる」省のある代表者は説明した。「これらの投資がどのように進展するかを待って様子を見ていく必要がある。」

湾岸諸国(バーレーン、クウェート、オーマン、カタール、サウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦)は全く違った現実に直面している。砂漠の中に建設されている国々である限り、栽培や牧畜のために自由にできる土地と水源が少ししかない。しかし、彼らは膨大な石油とお金を所有しており、このことが彼らに外国による食料獲得のために強いプレッサーで臨む姿勢を与えている。現在の食料危機により湾岸国にとって今までにない強い影響が残った。彼らは彼らの食料源を外国(特にヨーロッパ)に頼っていながら、彼らの外貨が米ドルと連動している(ついこの去年からはクウェートを除く)ため、世界市場に連動して同時に起こる、食料価格の上昇と米ドルの下落は、「余計なインフレーション」の負担の重い輸入となった。最近5年間の彼らの食料輸入の請求書は80億ドルから200億ドルへと変化して急増している。その上、自国の住民は、移民労働者から広く構成されていて、彼らが低い給料で、自国を建設してもらっていて、病院にも労力を提供してもらっているので、湾岸政治指導者は、必然的に農産必需品を手軽な価格で供給しなくてはならない。結局は、彼らは社会的時限爆弾の上に座していることになり、偉そうに不動産を貸し与えながら来るべき20年間は豊かさが続くことを期待しているのである。

食料危機が勃発してアジア米の配送が阻止されたとき、湾岸国幹部たちは素早い計算をすると同時に分かりやすい結論に至った。サウジアラビア人は、逼迫した水不足となったとしても、手順全体が明らかに彼らの管理下であるものとすると、今から2016年までは、彼らの食料の基本をなす小麦の生産を止めて、よそで栽培して運んでくるのが賢明であろうと決断したのである。その人口の80%の大部分がコメを消費するアジア移民労働者からなるアラブ首長国連邦は、パニック状態となったのである。湾岸協力審議会(CCG)の庇護のもと、彼らはその食料生産外部化の集団戦略を練るためバーレーンおよびその他の湾岸国と一緒に連合したのである。彼らの考えは、特にイスラム兄弟国家と協定締結して、彼らが資本と石油契約を提供するのと引き換えに、自分達の大企業が農地にアクセス権をもつと同時にその生産物を自国に再輸出できる保証をとるのである。距離の点から最も狙われた国はスーダンとパキスタンで、次いで、ある一部の東南アジアの国々(ビルマ、カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリッピン、タイ、そしてベトナム)、チュニジア、カザフスタン、ウガンダ、ウクライナ、ジョージア、ブラジル、、、であるが、いまだそのリストは完成していない。

湾岸諸国の政策転換の重大性を軽くみてはならない。2008年の3月から8月にかけて、個別にあるいは企業連合体で、CCGの国々は数百万ヘクタールの農地についてリース契約を締結するとともに、収穫は2009年から始まるようである。CCGの幹部は2008年10月と2009年1月には重要な会合を予定していて、その間に彼らは公式の政策を最終決定する。湾岸国戦略から見える構成要素はそれ自体非難すべきものではない(囲み記事1内参照)けれども、食料と農業に関する国連組織(FAO)のような世界機関は、関心を抱くとともに、この問題周辺の広報管理に直接的に関与することが必要と判断している。「アラブ諸国がこの投資を行うことに対する不都合のことは分からない。」とFAO事務局長のジャックディウフは言ったが、土地は「政治的な熱いじゃがいも」であるとも言った。彼は、「タイミングの悪い露呈」が湾岸国の策略を生み出す結果になるのを避けるため、今現在湾岸国のポストにある、FAOの人材を複数派遣した。

囲み記事1
湾岸諸国の買占め戦略の特徴

たとえ、中国と湾岸諸国が最大の参加当事者であるとしても、他の国々も今年以降新しい勢いを伴って農地を外国で見つけるべく積極的に熱中するだろう。例えば、日本と韓国はその政府が自国民を食べさせるために自給するよりも輸入に頼る選択をした豊かな二国である。両国ともおよそ食料の6割を外国から得ている。(韓国の場合は、コメを除くと9割を超える数字となる。)2008年初め、韓国政府は生産のための土地の取得をしやすくするための国家計画が策定されたと発表し、その主役演者に民間セクターを指名した。いずれにしても、韓国の農産物加工企業は、すでに日用食料品を生産して自国に再輸出するためモンゴルと東部ロシアで土地を買収しつつある。韓国政府はこの間、スーダン、アルゼンチン、そして東南アジアで別の選択肢を検討している。他方、日本は、政府が自由貿易協定の二国間投資条約と開発協力協定をめぐる政策大綱を匠に操っているけれども、食品輸入を進めるのは完全に民間セクターに任せているようである(以降を参照)。これは受け手の役割の問題ではない。歴代日本政府は、家内経営が支配するとともに大企業が土地の所有権を持たない日本農業を再構築しようとするすべての圧力に抵抗してきた。今では中国やブラジルのように日本の企業が国内農地を買収するので、圧力がさらに強くなってくる可能性がある。

インドもまた土地買占めのビールスに感染している。企業の取締役会とニューデリーあるいはプーナ政府部局を見ると、インド農業はすっかり混乱している。国は、土壌の肥沃度の低下と長期的な水の調達の生産コスト(彼らの主たる優先事項)に関連する大きな問題を抱えており、これらの問題のうち一部しか引き合いに出さない。その上、土地のアクセスのための闘いは、特に特別な経済地帯(経済特区)で一般化した社会的抵抗のため信じられないほどに複雑になった。食料危機によって以前より活動的になると同時に、恐らくは置いてきぼりにされたくないため、1公的企業の国営貿易会社(STC)といった一部の農産物加工企業オーナーたちは、国の食料の一部を外国で生産する必要性を、現在では理解している。彼らは、麦とコメは国内で生産を継続することが安くつくと考えているが、外部生産品として、中でも特に、油性品、野菜品ならびに綿を選んでいる。新戦略では、ビルマでのやり方が既に実施されていて、インドが国内生産を補うために毎年1500万トンを輸入するレンズ豆のうち四分の一の400万トンがビルマから供給されている。インドの商人や加工業者は今ではビルマから買い続けるよりも、国に参入してレンズ豆を現地において彼ら自ら栽培することを願っている。これにより彼らにとって安価になるだけでなく、彼らが手順全体についてより大きな支配権を獲得する。政府の肝いりで、もっぱらインドへの輸出に充てられているこの栽培をインド企業が行うためにビルマ農地のリース権を獲得している。インド政府はビルマ軍事政権に港湾インフラ近代化のために特別な新規資金を提供すると同時に、二国間の政治的困難を取り払うよう調整した二国間自由貿易と投資協定を締結するための圧力を粘り強く働きかけている。しかし、これはそれだけに留まらない。インドの社長連中はインドネシアにヤシのプランテーションも取得すると同時に、インドに輸出するマメ科の植物と大豆を栽培するための土地を探して、次は、ウルグアイ、パラグアイ、そしてブラジルに飛んでいる。そうこうするうち、国の中央銀行のインド準備銀行は、外国に農地を取得するために必要なローンをSTCのようなインド民間企業と合意できるようインド法律の修正を急ごうとしている。この種の可能性は、以前には全く考えられなかったので、この点に関する規定が存在していなかったのである。

「フィリピンはコメ不足に直面するかも知れないが、バナナ、パイナップル、小麦、野菜、ならびにその他の農産品目や鳥禽類製品のように、ある一定の食料製品についてアラブ首長国連邦の蓄えの強化もできるかもしれない。」(フィリピン政府中東農業担当大使館員、ギルへリコー)

これは、彼らに都合の良い新たな農地を求めてあちらこちらの国々を渡り歩く投資家と大使たちとともに、「モノポリー」の巨大なゲームを思わせる。しかし、本当のところ、農地を求めて接近されたアフリカとアジアの政府連中は、喜んでこれらの提案を受け入れるのである。結局、このことは、彼らにとって、田舎にインフラを建設したり、貯蔵や輸送の施設を近代化したり、農業経営を再編すると同時に、諸活動を工業化するための外国からくる自由になる資金を意味するのである。これらの協定には遺伝子の研究と改良のプログラムの量的な契約も含まれる。実は、「農業に投資を」というスローガンは、世界の食料危機の解決を担うほぼすべての公的機関と専門家の集会の掛け声になるほどになっているので、恐らくは意図しなくても、爆発的な土地買占めがこの前後関係の中に組み込まれているのである。しかしながら、ウィンウィン協定を吹き込んでまわる講演会の背後にはこれらの契約の本当の目的が農業開発なんかではなく、田園開発となればさらにそれどころでなくて、せいぜい農産加工産業の開発だけにすぎないことが完全に明らかにされなくてはならない。この土地の買占めの動きの底流にある矛盾した方向を捉えることができるのはこの点が理解されて初めてできるのである。

カンボジアの第1首相のフンセン氏がカタールとクウェートが、自分たちのコメを生産できるようカンボジアの稲作地の貸与を公式に発表したのは数ヶ月前である。関連する面積は詳しくは分かっていないが、政府がほぼ6億USドルを為替で獲得するのだから結構広いはずである。しかしながら、同時に、世界食糧計画はカンボジアの田舎にはびこる飢餓を緩和するため3,500万ドル相当の食料援助を差し向け始めるはずであった。フィリピンは、2008年3月以来、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ならびにバーレーンからくる自らの食料ニーズのために土地の取得を望む多くの使節団を歓迎しているが、フィリピン人口の一部は、十分には食べれないという状況が1ヵ所といわず襲っていたのである。初期段階であらゆる論争を封じるためであるかのように、グロリアマカパガルアロヨ大統領は、その政府の対アラブ新産業政策の枠組み内で、アラブ首長国連邦(EAU、そこには多数のフィリピン労働者がフィリピン経済を支えるために働いている)との土地買占めに関する協定の署名を通過させるのに成功した。このように、EAUプロジェクトは、その本当の顔、つまり、外国の富に利して、恐らくは非常に熱望される肥沃な農地の悪用という面を見せないで、国の新たな産業の構築のために政府により融資される1つのプログラムの不可欠な部分をなしているように見える。一部の農地の専用権と引き換えにビルマに送られるさまざまな資金も尚一層問題である。ビルマはASEAN地域の経済共同体のメンバーであるとともに、ASEAN自体がオーストラリアやニュージーランドそして欧州共同体のような豊かな経済との自由貿易協定に実際に署名しているので、この地域の社会動向によっては、ビルマの抑圧的軍事体制に対するこのようなカムフラージュされたサポートは、ますます懸念される。土地の買占め協定類が示す特色はまさに同じである。ウガンダでは、カイロに向けられる小麦とトウモロコシの生産のための土地貸与がウガンダの84万ヘクタール(ウガンダ全面積の2.2%の)農地に広がることをエジプト企業に明らかにした、政府とエジプトの農業大臣の間の討議に関するロイターを通じた発表が、最近、一般大衆の激しい抗議に見舞われた。政府担当責任者は協定を否定したけれども、ウガンダ国会はこの問題を調査するために臨時国会を召集した。不幸にして、外国への食料生産に向けられるこれらの多くの土地の買占めについての、正確な情報(ヘクタール数、該当金額、詳細な最終結末、関連した状況)の入手は困難である。政府連は、起きていることを民衆が知るようになって敵対する政治的な反応が現れるのを心配しているのは間違いない。

民間投資家にとっての新たな魅力の柱

各国政府が恐らくは食料保障に力点を置いた戦略を展開するものとすると、民間セクターには非常に多様な対象、すなわち、金稼ぎの対象がある。食料危機とさらに全般的な金融危機との間で進展しているシナジー効果によって、民間投資家にとり改めて魅力となった土地の支配力が変化したのである。カーギル社がブラジルのマトグロッソ州の大豆ソラマメの粉砕工場に投資するかも知れない、農産加工品セクターのこれまでの国際的な活動のことを話すのはやめておこう。ここで問題は農地自体の支配に関する新たな利益である。この背景には2者の主たる参加当事者、食品加工産業と金融セクターが存在する。

「来るべき10年から15年の間の不況に対する最良の安全保障策は農地への投資である。」とは、2008年7月の「インサイトインベストメント」社の選択責任者のReza Vishkai氏の言である。

食品加工産業界では、外国での農業利権の獲得に恐らくは最も多くかかわっているのは日本とアラブの商社と加工会であるのが実態である。日本企業については、この戦略は国内内部成長の範囲にとどまっている。(囲み記事2内を参照にこと)このため、食料安全保障の名目で門戸を開けている政府連中を通じて与えられるチャンスに便乗してサーフィンをしているのが中東企業である。

囲み記事2
日本により買占めされた土地

 大手5商社、三菱、伊藤忠、三井、丸紅ならびに住友が日本の農産物加工マーケットを支配している。彼らは買付、加工、輸送、国際貿易そして小売販売を仲介する。彼らは日本国内マーケットニーズに最優先に応えることにこだわる。しかし、このマーケットは老化して、後退しているので、成長を外に求める必要があった。
 日本の農産物加工会社は外国に行く(新しいマーケットを捕捉するため)とともに、上流(製造サイド)では丸紅と三井、そして最も規模の小さい三菱でも、アーチャーダニエルミッドランド(ADM)社やブンゲ社と対等に世界最大穀物商社の1角に追い付くことを狙っている(知っての通り、カーギル社はあまりにもはるか先を行きすぎている)。彼らは新しい巨大な施設を購入すると同時に、欧州と米国そしてラテンアメリカでの活動を構築している。丸紅は最近、8ヶ所の穀物貯蔵施設と2ヵ所の倉庫を、4800万米ドルで米国に購入した。このように、マーケットが短絡すると同時に、大豆やトウモロコシを米国生産者から直接購入する可能性がある。これらの企業にとって、今は、ADM社やブンゲ社そしてカーギル社がまだそれほどまでに強くなっていない中国市場に拠点をつくることが戦略的な現実的優先事項なのである。
 しかし、倉庫とコンテナの管理は日本の食料品貿易の輝かしい評判のほどのことはもうない。彼らの戦略はさらに上流の方向にも向かおうとしている。複数の筋によると、日本企業は食料品と家畜飼料の生産のために1200万ヘクタールの農地を既に外国に有しているという。一部は中国に存在し、そこでは2006年にアサヒ、伊藤忠と住友が数百ヘクタールの農地を、中国ならびに韓国のマーケット向けバイオ食品の生産のために借用し始めた。2007年には、アサヒはこの当初プロジェクトを改めて規模拡大すると同時に、中国で最初の日本乳業の経営に乗り出した。少し遅れて、2008年9月には、せいぜい大惨事便乗資本主義にすぎないが、アサヒはその最初の液体牛乳製品の値段を5割も値上げして投入した故に、メラミン入りの牛乳の悲劇のことをかえって無駄にせず利用したのである。同時に、伊藤忠は、農地の取得に突破口となる可能性のある中国最大の農産物貿易加工企業のコフコ社との合弁を形成するため別の方法をとった。日本企業は同様にしてブラジル側とも詰めている。2007年末、三井は、今では4割を所持するマルチグレインSA社への資本参加を通じて大豆ソラマメの生産用に10万ヘクタールのブラジル農地(日本の栽培耕地の2%に相当)を購入した。

現在、困難を抱えた金融セクターは、花形を占めているセクターである。政権の座にある多くの人々にとって、世界食料危機により、直面する、気候変動、土壌破壊、水資源喪失そしてモノカルチャの収量停滞のどの側面も、我が惑星の将来の食料資源にのしかかるほどの途方もない脅威である世界的な問題であることが赤裸々となった。これはとりもなおさず、緊張したマーケット、価格の高騰、そしてより多くの農地の獲得に向けた圧力を予見することになる。同時に、負債額のすさまじい金額を賭して、そして失った金融セクターは、今は避難地帯を求めている。これらのすべての要因によって農地は利益を挙げるための恐るべき新型の遊園地に仕立てられている。食物は当然生産しなくてはならないし、価格は高騰したままであり、安い土地は自由になるのだから、投資は儲かることになろう、というのが常套句である。その結果は?2008年は、1年中、投資会社、資金投資ファンド、投機ファンドそしてその他同様の類の一隊が、これらの投資手法をすべて用意すると同時に、この手順の成功を可能にするように、政府連中に土地法制を変更するよう「説得する」世界銀行とその国際金融会社または欧州復興開発銀行(BRED)のような機関からの貴重な援助を利用して世界中で農地を掴み取りしたのである(囲み記事3参照)。このため、土地の値段は上昇し始めただけでなく、これによりまた先を急ぐ行動があおられている。

「ここで、狡猾なのは、収獲を刈り取って満足するのではなくお金を刈り取って満足する点にある。」と、2008年9月に黒土農業の設立者であるMikhail Orlov,とカーライルインベスコ社の資本投資会社の元部長は言う。

今年の農地取得に関する民間セクターの殺到は目がくらむほどであった。例えば、ドイツ銀行とゴールドマンサックスは、家畜飼育の中国セクターをチェックしている最中である。あらゆる配慮がウォール街に向けて神経質に向いていたときは、これらの2社は最大規模の豚小屋の一部、鳥禽類経営、そして中国の肉類加工工場に、またさらに、農地にさえも投資していた。世界最大級の資金運用管理会社の一つであるニューヨークのブラックロック社は、その口座に1兆5千億米ドルをかかえて、2億ドルの膨大な農業投機ファンドの形を整えたばかりであり、そのうちの3千万ドルは世界中の農地の買収に充てられる予定である。最近、米国財務省による金融救済を得るため待ち行列に滑り込んだばかりのモルガンスタンレー社は、最近、ウクライナで4万ヘクタールの農地を買収した。それでもこの買収は所有権を獲得したロシア投資会社のルネッサンスキャピタル社のウクライナの土地の30万ヘクタールに比べれば見劣りのする数字である。実際、ウクライナから南ロシアまで拡がる非常に肥沃な地域では、競争は激しい。スウェーデンの投資グループの「黒土農業」は、ロシア黒土地帯の33万1千ヘクタールの農地の支配権を獲得した。別のスウェーデンの投資会社のアルプコアグロ社は、この同じ地域で12万8千ヘクタールについての権利を獲得した。英国投資会社のランドコム社は10万ヘクタールの農地をウクライナで買収すると同時に、これから2011年までに35万ヘクタールに数字を上げることに同意している。これらの土地獲得のすべては、世界マーケットを満たす、つまりは払える人々のための穀物、油そして肉の生産の役に立つはずである。

この新しい投資の傾向が生じる速さと短さは驚くべきものである。対象とされる国々は次のようなものである。すなわち、マラウイ、セネガル、ナイジェリア、ウクライナ、ロシア、ジョージア、カザフスタン、ウズベキスタン、ブラジル、パラグアイ、そしてオーストラリアである。これらの国々は、すべて、肥沃な農地、比較的入手しやすい水、そして農業生産性向上のある程度確かな可能性を提供する国として特定されている。投資家が語る投資の見通しは、欧州で10〜40%と予想されると同時に、これがアフリカでは400%にも達し、年間収益率で平均して10年である(もちろん彼らは生産性を確保すると同時に、商業化のためのインフラを建設しなくてはならず、何もしないわけにはいかないけれども)。そこにあって、特にここで目新しいことは、これらの金融グループが土地の有効な所有権を獲得する点、ならびにこれらの進展のすべては金融マーケットが崩壊し始めていた頃のたった数ヶ月の間に仲介されている点にある。これらの点がこれらの国での農業の将来について意味するところは極めて計り知れない。

囲み記事3
土地政策の混乱
 多数の国が、食料危機と金融危機ならびに農地に関して生ずる圧力に対処するため、その法律、政策ならびに土地所有権に関する運用を現在変更している。中国は人民の名目でのいずれにしても国の所有であるその土地の利用権を農民にもっと手軽に、取引できるよう大改革を進めている。この改革では個人農家にその土地に関する権利を売却するかまたは貸与すると同時に、ローンのための保証としてこれらの土地の権利証を利用することが可能となる。多くは、このことにより、中国の農地経営の大規模なリストラクチャリングが促進され、多数の小規模農地(これは最近まで安全衛生の問題の発生源であったと公正さを欠く非難がなされている)から企業によるその権利強化の可能性がもっと容易になる少数の大規模経営に移行するものと予想する。カザフスタン政府はその農地を外国投資家の目に魅力的にするよう努力する中で、土地利用に関する分割と権利永久化の政策を実施した。ウクライナはやがてすぐに外国への農地売却禁止を解くものと予想されている。大部分の土地が政府に帰属するスーダンは無料ではないにしても非常に低い費用での99年のリース契約に合意する。

ブラジルは別の手法にかかわりつつある。バイオ燃料にのぼせあがった直後に続いた食料危機は、ブラジル農地買収について多数の外国投資家の関心を呼んだので、国会はこの進展過程の透明性の導入のための法律を考えている。この法律は、その資本への外国関与の金額を明らかにすると同時に、外国資本のかかわる買収について特別な登録を行うことを、土地を買収するブラジルの経営者に義務付けることになろう(1971年来、外国企業はブラジルのパートナーの仲介をつうじるか、あるいは国内に拠点を置かない限りブラジルの土地を買収できない。しかし、この法律は、殆ど適用されてなかった。)。たとえ、一部の投資家がこの手段が実質的に投機家に対抗することを目的としていることに思案を装っても、この法律は強力な支持を得ると同時に、今から2008年末までには採択されることになろう。パラグアイは、同様な政策転換を計画している。2008年10月には、政府は、遠い昔から存在する外国への国有農地の買収を禁ずる法律の適用を開始することを発表した。これに対して、パキスタンでは、外国投資家に、「会社農場」の(産業農場)部類に入る事業の所有と同時に経営を許す明確な規則があるが、国の労働権利はこの事例に適用されない。実際にはこの点の修正を考えるものと思われる。

背景には、世界銀行やなかでもBERDが外国投資家の外国農地への投資に対しより多くの奨励策からの恩恵が受けられるよう、これらの政府に土地所有権の政策や運用を修正するよう積極的にアドバイスしていることがある。世界銀行の幹部によると、土地法制の修正は、アフリカの食料危機に対処するために銀行により実施される12億USドルの「パッケージ」の対象の一部をなしている。BREDは、潜在的に大量の穀物の輸出者、すなわち、ロシア、ウクライナ、ルーマニア、ブルガリアそしてカザフサスタンにとっての特別な関心をもって、欧州および中央アジアにおける食料危機に呼応して土地政策の改革の糸を引いている。

これらのすべては何を意味するのか

この土地買い占めブームは少なくとも1つのことを示している。すなわち、政府連中はマーケットでの信頼を失ったことである。この信頼は、国々が、供給や需要に関する法によってではなく、むしろ投機により引き起こされた人為的不足の状況に突然落ち込んだ時点の世界的食料危機によって、すでに揺らいでいる。なかでも土地の買い占め国である湾岸諸国の、(a)外国の農地の直接的な所有権あるいは支配権を通じた彼らの食料品調達の安全保証、(b)食品日用品の輸入請求書の20%から25%もの削減のためにできる限り商社その他の仲介の排除、に関する意図については全く明白である。さらに、彼らは、イスラマバードやバンコックのような首都にわざわざ出向いた上で、これらの政府に、自分らの農場に関してだけはコメの輸出に関する禁止を解除するよう頼まなくてはならなかったこれらすべてにより、過去4世紀にわたる西洋的アドバイスによりあれほど自慢されたマーケットの開放と自由貿易が全く軽視されていることが鮮明となっている。

もう1つの基本的な問題は、労働者、農民、そして地域社会が、食品の地域生産のための農地へのアクセス権を失わざるを得なくなってきている点である。ごく単純に取引されることが、食料主権がよりどころとしなくてはならない基礎である。これらのプロジェクトに関与する政府、投資家として開発機関は、雇用が創造される点や日用食料品の1部が生産国に残る点を評価させるだろう。しかし、この点はその必要に応じて土地を労働し利用する住民にとっては土地や可能性の代わりにはならない。実は、はっきりさせるべき点は、土地の買い占めという現在の現象につながる本当の問題とは、国民の農地について外国に支配権を与えることの疑問だけにあるわけではない。これはリストラである。何故なら、実際は、小規模経営のこれらの土地あるいは森林が、場合に応じて、遠くの大規模なマーケットに連動する大規模な農業不動産に変化するからである。農家は、仕事の有無に関係なく、もう全く、本当の農民には戻れないだろう。この点が恐らくは最も重大な結末であろう。

自由にすることが重要であるという第3のメッセージは、農業への投資は良いことであるという点と、外国でのこれらの農業合意を仕切ることが南ー南協力関係と呼ぶに相応しいとされることが良いことであるという点から出てくる。我々は農業により多く投資するニーズを実際に有している。南ー南団結と協力的経済の建設は、帝国主義(西洋から、あるいは南からの)の手が届かずに、これを行うのに良い方法であるかもしれない。しかし、どのような農業なのか?そして、どのようなタイプの経済なのか?これらの投資を誰が支配するのか?また、これから誰が恩恵を受けるのか?日用食料品だけにかぎらず、他国に向かったり、支払可能な他の消費者に向かう、あるいは単純に外国のエリート達に向かう、迂回された外国でのこれらの農業活動から生まれる利益も見る、実に現実的なリスクが存在する。これらの活動は必ずしも、世界から食料危機を最小限ですらも減らすとは限らない。おまけにもうこれらの活動は地域社会に必ずしも「発展」をもたらすとは限らないだろう。そして、我々は、外国へのこれらの農業投資の多くは、2国間投資条約とよりグローバルな自由貿易協定によって促進されることにより、将来の問題の解決が一層難しくなる点を忘れてはならない。たとえ、湾岸国のプロジェクトを開発するイデオロギーが中国資本主義のイデオロギーよりも多少人間的であった(これらの投資が酔いしれるようなお目当てのイデオロギーと地勢学どっぷりの)としても、それは、けむに巻かれたにすぎない。結局、これらの取引に跨って、インドがビルマの軍事独裁体制を支えるがごとく、湾岸諸国はハルトウーム体制を支えるのである。北京は、外国で栽培する場合、その自前の労働者と自前の技術をもってやってきて、もともとの多様な生態系を入れ替えてしまうと同時に、地域組合を妨害してしまう。また、必要とされる投資と南ー南政策があったとしても、これが本当は誰に資するのかを知る問題が疑わしいだけでなく回答もないのである。

また、土地改革に関してはどうか?他国の住民に送られる日用食料品を生産できるように、他国やあるいは民間投資家に対してどのように譲歩して農地を与えるかを考えることは困難であって、これは我々を反対の方向に導くと同時に、本当の農業改革と現地住民の権利に味方する数多くの運動の闘争に打撃を与えるという別のことを行う可能性があろう。この点は、狙われる多数の国々自体が、日用食料品の正味の輸入国であって、極めて深刻な土地紛争を経験している場合には特に現実味がある。パキスタンでは、パンジャフ州の食料生産の一部を外部化することを目的とするカタールからの提案承認の事例において、移動させられる予定の2万5千の村の運命につき農民運動が既に意見を出して警告している。エジプトでは、ケナ地区の小農たちがが、日本向け日用食料品生産のため日本の農産総合商社の神戸物産と最近、合意された1600ヘクタールを取り戻すために、万全の準備を整えた上で戦った。インドネシアでは、闘士たちが、1600万ヘクタールがリヤド向けのコメの生産のため15企業連合に引き渡される、メラウケ地区でサウジ人のために計画されているコメ栽培用地が、このプロジェクトにかかわる現地パプア住民の拒否権に出くわして迂回するのを待ち望んでいる。農地の支配を極めて容易くすると同時に、外国投資家の投資欲を満足させるために、食料危機に歪められた解決策によって、世界銀行その他により与えられたしつこい奨励策が取られている以上、紛争が爆発的に起こることになる可能性があろう。

無視されかねないもう1つの大問題は、これらの取引が輸出に向かう農業の再強化に貢献することになる点である。この方向性が大部分の対象国には極めて不適当であることは明らかである。2007年〜2008年の食料危機により、特にアジアやアフリカの人々ほどひどい目に会ったとするならば、最近の数十年間で展開されてきた大きな努力は、内部マーケットではなくむしろ外部マーケットのための食料品生産のために行われてきたということになる。大部分の人々の現実の給料や収入はこの数十年の間に上がらなかったのだからこそ、世界の人々は皆が世界マーケットでその食品を買えるようにするのは不可能なことである。これらの土地取得の大部分が産業的大規模経営(ラオスにせよ、パキスタンにせよあるいはナイジェリアにせよ)の実施を目的にしている限り、これらによって問題は悪化する。一部の取引により、その地域、あるいは国内マーケットの地域社会のために生産された食料の一部が確保されているのは真実である。一部では病院や学校の建設といったような社会的プログラムすらも計画されている。しかしながら、これらの計画は、貧困と環境破壊を生むと同時に、生態系の多様性の喪失、農薬による公害、そして遺伝子組み換え作物による栽培物の汚染で悪化させた農業の産業モデルを支えるのに都合が良いのである。簡単な調査だけでは不十分であっても、一連のあらゆる統計的データによって、豊かさと貧困、この状況から生ずる栄養の十分なものと飢餓に苦しむものとの間に溝が広がっていることが証拠だてられよう。

最後に、あらゆる点うち最も明快な疑問は、自分の農地の支配権を自分の国から他の国々や外国投資家連中に許諾した場合、長期的には一体何が起こるのだろうかという点にある。(翻訳・山本義行)

原文"SEIZED! The 2008 land grab for food and finacial security" についてはhttp://www.grain.org/landgrab/を参照。
英語、仏語、スペイン語、インドネシア語、アラビア語のレポートが収録されています。



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