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アフリカの食料・農業問題 2008年1月〜3月


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アフリカの食料・農業問題/アフリカアフリカ Africa 2015


おかねおくれ


作成:斉藤龍一郎
 *(特活)アフリカ日本協議会事務局長

アフリカ日本協議会(AJF)2010
HIV/AIDS 2010
グローバル・エイズ・アップデイト
Gender in Africa
アフリカの子ども
アフリカ障害者の10年
アフリカ開発会議(TICAD)
気候変動とアフリカ
アフリカと中国
アフリカとスポーツ
アフリカの食料・農業問題
アフリカの石油、資源
アフリカの保健・医療
アフリカのICT
ケニア共和国 Republic of Kenya 大統領選挙と騒乱
ソマリア海賊対策と自衛隊派遣問題
バイオ燃料問題

アルジェリア民主人民共和国アンゴラ共和国ウガンダ共和国エジプト・アラブ共和国エチオピア連邦民主共和国エリトリア国ガーナ共和国カーボヴェルデ共和国ガボン共和国カメルーン共和国ガンビア共和国ギニア共和国ギニアビサウ共和国ケニア共和国コートジボワール共和国コモロ連合コンゴ共和国コンゴ民主共和国サハラ・アラブ民主共和国サントメ・プリンシペ民主共和国ザンビア共和国シエラレオネ共和国ジンバブエ共和国スーダン共和国スペイン領カナリア諸島スワジランド王国セーシェル共和国赤道ギニア共和国セネガル共和国ソマリア民主共和国タンザニア連合共和国チャド共和国チュニジア共和国中央アフリカ共和国トーゴ共和国ナイジェリア連邦共和国ナミビア共和国ニジェール共和国ブルキナファソブルンジ共和国ベナン共和国ボツワナ共和国マダガスカル共和国マラウイ共和国マリ共和国南アフリカ共和国南スーダン共和国モーリシャス共和国モーリタニア・イスラム共和国モザンビーク共和国モルディブ共和国モロッコ王国リビア(旧 大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国)リベリア共和国ルワンダ共和国レソト王国
※外務省ウェブサイトを基に、国名を表記しています。


◆AFRICA BIODIVERSITY NETWORK AJF訳 アフリカのアグロ燃料

○2007年までのニュース・情報  アフリカの食料・農業問題 〜2007年
○2008年4月〜6月のニュース・情報  アフリカの食料・農業問題 2008年4月〜6月
○最新のニュース・情報  アフリカの食料・農業問題

◆2008/01/05 外務省 タンザニア連合共和国に対する無償資金協力(「食糧援助」及び「貧困削減戦略支援無償」)に関する書簡の交換について
◆2008/01/06 JANJAN インド:気候変動は深刻な安全保障上の脅威と報告書(全訳記事)
◆2008/01/10 外務省 コンゴ民主共和国に対するノン・プロジェクト無償資金協力(セクター・プログラム無償資金協力)及び食糧援助に関する書簡の交換について
◆2008/01/11 asahi.com ジンバブエのサザ
◆2008/01/23 外務省 「市民シンポジウム:アフリカの食と農を知る」の開催について
◆2008/01/23 京都新聞 食料問題から世界の貧困学ぶ
◆2008/01/25 那覇経済新聞 マチグヮーの小さなカフェがネットショップ開設−ケニア産豆も販売
◆2008/01/26 AJF/FAO/横浜市 市民シンポジウム:アフリカの食と農を知る @横浜
◆2008/01/28 JANJAN 鳥インフルエンザ啓蒙活動が成果(全訳記事)
◆2008/01/31 外務省 カーボヴェルデ共和国に対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/02/05 外務省 ギニア共和国に対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/02/09 MSN産経ニュース カカオ産地の子どもに愛を バレンタイン商戦に新風
◆2008/02/09 AFP BB News 気温上昇でコーヒー農園が消える?  ウガンダで高まる懸念
◆2008/02/10 yomiuri.co.jp アフリカ農業支援で政府、ゲイツ氏らと連携
◆2008/02/10 JANJAN EU:必要エネルギーの10%をバイオ燃料に(全訳記事)
◆2008/02/16 カナロコ アフリカの文化・食テーマにイベント/5月の開発会議控え
◆2008/02/18 AFP BB News アフリカがしょうゆ販売の有力市場に、キッコーマンCEO
◆2008/02/20 MSN産経ニュース 温暖化で6億人が栄養不足 アフリカで2060年までに
◆2008/02/21 BioFach ニュルンベルグ:オーガニック・アフリカに参加しよう ドイツ、2008年2月21(木)〜24日(日)
◆2008/02/22 外務省 ブルキナファソに対する無償資金協力(「食糧援助」及び一般プロジェクト無償資金協力「マラリア対策計画」)に関する書簡の交換について
◆2008/02/22 外務省 マリ国に対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/02/26 中日新聞 アフリカなどに支援米 市役所で発送式 休耕田を利用し栽培
◆2008/02/26 JANJAN アフリカ、南アジア、気候変動で飢饉の可能性も(全訳記事)
◆2008/02/26 外務省 国連世界食糧計画(WFP)を通じたブルンジ共和国に対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/02/27 外務省 ガーナ共和国に対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/02/29 外務省 ニジェール共和国に対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/03/01 JANJAN ウガンダ:“アフリカ緑の革命”の実態あらわに
◆2008/03/03 グリーンピース 捕鯨支持の値段交渉セミナー?
◆2008/03/04 時事ドットコム 2008/03/04-22:24 途上国に250億円の食糧供与=過去最大規模の人道援助−欧州委
◆2008/03/04 NIKKEI NET EU、過去最大の食糧援助・途上国に250億円
◆2008/03/04 外務省 エチオピアに対する無償資金協力(食糧援助)について
◆2008/03/05 AJF食料安全保障研究会公開セミナー アフリカ農業とバイオ燃料問題 @東京
◆2008/03/10 NIKKEI NET 双日、製紙原料をアフリカ南部で調達・植林地確保やチップ製造
◆2008/03/10 nr.nikkeibp.co.jp 「食」を輸入に頼る危うさ
◆2008/03/13 外務省 人間の安全保障基金による「アフリカン・ミレニアム・ビレッジ(AMV)第2フェーズ」への支援について
◆2008/03/14 外務省 ザンビアに対する無償資金協力(貧困農民支援)に関する書簡の交換について
◆2008/03/14 外務省 ウガンダ共和国及びブルキナファソに対する国連食糧農業機関(FAO)を通じた無償資金協力(貧困農民支援)に関する書簡の交換について
◆2008/03/14 外務省 マラウイ共和国に対する国連世界食糧計画(WFP)を通じた無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換について
◆2008/03/28 jp.reuters.com 英フィナンシャル・タイムズ紙ヘッドライン(28日付)
◆2008/03/29 AJFアフリカひろばvol.26 アフリカの昆虫食〜シロアリを巧みに利用する〜 @東京

【参考図書】
生物資源から考える21世紀の農学 第7巻 生物資源問題と世界
野田公夫編 京都大学学術出版会 3200円+税160円 A5版 241p 2007年9月 [amazon]

第3章 タンザニア農村における貧困問題と農家経済経営 辻村英之


チョコレートの真実
キャロル・オフ著 北村陽子翻訳  英治出版 ¥1,890 B6判 384p 2007年9月 [amazon]

現代アフリカ農村―変化を読む地域研究の試み
島田周平著 古今書院 ¥3,675 B6判 182p 2007年9月 [amazon]

アフリカ可能性を生きる農民―環境-国家-村の比較生態研究
島田周平著 京都大学学術出版会 ¥3,780 四六判 270p 2007年2月 [amazon]

開発フロンティアの民族誌―東アフリカ・灌漑計画のなかに生きる人びと
石井洋子著 御茶の水書房 ¥5,040 A5版 310ページ  2007年2月 [amazon]

サブサハラ・アフリカで最も成功したと言われてきた国家的潅漑計画の歴史と、1990年代末から始まった新しい動きを伝える。


アフリカ昆虫学への招待
日高敏隆監修 日本ICIPE協会編 京都大学学術出版会 ¥3,150 A5版 285ページ 2007年4月 [amazon]

ケニアにある国際昆虫生理生態学センター(ICIPE)、ナイジェリアにある国際熱帯農業研究所(IITA)等でアフリカの昆虫研究に従事した日本人研究者が、人びとの健康や農業に関わる昆虫研究の課題を紹介する。



 
 
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アフリカがしょうゆ販売の有力市場に、キッコーマンCEO

* 2008年02月18日 08:59 発信地:東京

【2月18日 AFP】米国でのしょうゆ販売シェア60%を占めているキッコーマン(Kikkoman)の代表取締役会長兼CEOの茂木 友三郎(Yuzaburo Mogi)氏は13日、アフリカでの事業拡大の可能性を示した。

茂木CEOは南米とアフリカ市場における莫大な可能性を指摘。特に南アフリカは、米国と同じく肉の消費量が多いため有望だと述べた。東欧やロシアを中心にした欧州でも、しょうゆの市場は急速に成長しているという。同社製のしょうゆが現地価格の5倍以上もする中国でも、所得の上昇に伴い、今後20年で大幅な増益が見込まれるという。

2006年度のキッコーマンの営業利益220億円の約半分は海外事業によるものが占めた。同社は和食文化を海外に広めることに力を注いでおり、茂木CEOは和食の海外普及活動を行っている特定非営利活動法人「日本食レストラン海外普及推進機構(Organisation to Promote Japanese Restaurants Abroad、JRO)」の長を務めている。JROは農林水産省の支援により設立され、海外で「真の和食」を認定するキャンペーンを行っている組織。

茂木CEOは、変貌を遂げつつある和食に寛容な姿勢を示しており、和食をより幅広いものとしてとらえようとしている。たとえば、米国で人気のアボカドとカニの海苔巻き「カリフォルニアロール」は和食の1つだとしている。

ただ、海外で和食の事業を展開するには技術的な問題があるという。海外の和食レストランでは生魚の扱い方に詳しい料理人がいない場合があり、そうした店ですしや刺身を出すのは非常に危険だと指摘している。(c)AFP



 
 
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温暖化で6億人が栄養不足 アフリカで2060年までに

2008.2.20 21:41

地球温暖化の影響で乾燥化が進み、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸で2060年までに、25%もの農業収入が失われ、260億ドル(約2兆8000億円)の損失となる可能性があることが、国連開発計画(UNDP)の調査で分かった。来日したUNDP政策専門家のアミー・ゲイ氏が20日明らかにした。

2080年までに、さらに6億人が深刻な栄養不足に直面。水面上昇は2100年までに15−95センチに達し、アフリカ大陸の沿岸地域に居住する住民約7000万人が80年までに水害などの危険にさらされるという。

ゲイ氏は21日に開かれる早稲田大主催のアフリカ支援に関する国際会議で調査結果を発表する予定。

ゲイ氏はアフリカの貧しい住民が先進国の温室効果ガス排出の犠牲になっていると指摘。「日本をはじめとした各国が(風力や太陽光など)再生可能エネルギーによる発電施設を供与するなど、アフリカの開発により大きな貢献をしてほしい」と訴えた。

UNDPによると、農業はアフリカ諸国の国内総生産(GDP)合計の21%を占めている。温暖化による影響で乾燥・半乾燥地帯は90年までに60万−90万平方キロにまで達し、水不足に苦しめられると警告している。(共同)



 
 
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ニュルンベルグ:オーガニック・アフリカに参加しよう

ドイツ、2008年2月21(木)〜24日(日)

◇アフリカを体験

アフリカ・パビリオンに来場された方々は、アフリカ特有のデザイン、色彩、音、味を楽しむことができます。パビリオン中央のアフリカ村広場には、来場者たちの憩いの場が設けられ、アフリカのコーヒー、紅茶、フルーツ、ワイン、スナック、その他新しい趣向を凝らした飲み物が提供されます。

◇22日(金):レセプション

22日(金)、アフリカ・パビリオンではレセプションが開催されます!アフリカの生産者たちや流通業者たちとの出会いを楽しみながら、おいしいスナックや飲み物をご堪能ください!

◇23日(土):シンポジウム

展示に加え、23日にはアフリカのオーガニック農業の現状を明らかにするシンポジウムが終日開催されます。オーガニック農業が小農におよぼす影響、政府や民間企業、開発協力者らがオーガニック農業推進のために実施している施策など、商業と発展のための機会(そして課題)に関する話が予定されています。政策立案者や世論の発信者たちによるレベルの高いパネル・ディスカッションでは、オーガニック農業がミレニアム開発目標達成を支援する可能性について議論されることになっています。

◇オーガニック・アフリカに参加しよう

国あるいは地域のスタンドでは、輸出業者、国内オーガニック活動団体、輸出促進機関などがサハラ砂漠以南の国々の特産品を紹介しています。パビリオンは様々な輸入業者や販売促進機関、コンサルタント会社、NGOや認証機関の活動やサービスを紹介する場にもなっています。また、世界中からやってきた参加者が、オーガニック関連ビジネスについての情報交換や交流する場ともなります。

◇背景

1960年代初頭から、ヨーロッパ、日本、アメリカで、オーガニック製品に対する市場が成長してきました。オーガニック市場は、1998年の130億ドルから2005年には330億ドルにまで成長しています。この成長は、これらの発展した国々の消費者の中で高まる環境や健康への懸念によるものです。その結果、ここ10年間で、アフリカでも認証を受けたオーガニック食品や飲料が輸出されるようになり、急速な成長が見られました。アフリカのオーガニック産品の大部分は、小農によるものです。オーガニックはビジネスチャンスを約束するだけのものではなく、生産性を高め、またあまりに多くのアフリカ人たちが直面している食料安全保障の緊急の問題に取り組む手段として、各国のNGO、農民組合、開発機関が次第にオーガニック技術を取り入れるようになっています。以下の課題に対するイニシアチブにオーガニック農業は用いられています。

BioFachは世界最大のオーガニック商業見本市です。アフリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、南米、北アメリカ各国から多くの出展者やバイヤーたちが大きなビジネスチャンスを得ようとこぞってやってきます。長年にわたってBioFachは流通者、輸出業者、研究者、国の活動団体、コンサルタント、NGO、政策立案者、開発協力者などを含む、これらオーガニックに関わる人々の出会いの場ともなってきました。BioFach 2008では、多くの組織が力をあわせてアフリカにより大きな役割を与えることになるだろう。

参照:http://www.organicafrica2008.com/



 
 
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「食」を輸入に頼る危うさ

2008年3月10日

文=田中 栄、馬渡 晃

食材高騰の原因は食料自給率39%にあった

ここ数十年間、一貫して下がり続けてきた日本の食料自給率は、2006年度には台風などの天候不順もあり、ついに39%にまで低下した。これは先進国中、最も低い水準である。

下のグラフを見てほしい。米国やフランスなどの農業大国は、自給率は100%以上。自国でまかなう以上の農産物を作り、それをさかんに輸出している。ドイツは、100%を切っているが、それでも自給率は上昇している。かつては日本より自給率が低かった英国ですら、1970年代に日本を逆転し、現在は7割程度を維持している。日本の39%という数字がいかに特別なものであるか、これで分かるだろう。

日本の食生活は、まさしく輸入に依存しているのである。

背景にあるのは「食の欧米化」だ。

ここ数十年で日本人の食生活は劇的に変化した。たとえば国民一人当たりのコメの年間消費量は1965年度の111.7kgから2006年度には約半分の61.0kgにまで大きく減少した。逆に肉類は、同じ期間に9.2kgから28.0kgへと激増している。

肉の消費量は40年で3倍

植物油やバターなどの油脂類も、消費量は約3倍になった。おそらくこれほど短期間のうちに食生活のありようがガラリと変わった事例は人類の歴史においても希(まれ)だろう。

これまで「食の欧米化」は「日本も欧米並みの豊かな食生活ができるようになった」と、好意的に解釈されることが多かった。その価値基準や栄養学的な見地からの判断は様々であるが、それを良しとしてきたことが今日の食料自給率低下の背景になっていることは間違いないだろう。

しかし、日本と欧米諸国の「豊かな食生活」は意味が違う。欧米では食料は「自給自足」が原則であり、国内で高い農業生産能力を持った上でこれらの食生活が成り立っている。一方、日本は、生産能力が無いまま、欧米的な食生活に移行した。その結果、食料の多くは輸入に頼らざるを得なくなる。自給率が低下するのは当然である。

そしてつい最近まで自給率低下に危機感を抱く人は少なかった。多くの人は「工業製品で稼いだ外貨で買えばいい」と考えていた。極めて大きなリスクを抱えたままだったのである。

ちなみにここで食料自給率の計算方法を説明しておこう。食料自給率には様々な指標があるが、世間で取りざたされている39%という数値は、「熱量ベース総合自給率」と呼ばれるもの。熱量が生命維持のために必須であることから、様々な食料を、それが生み出す熱量に換算して計算している。計算式は、下記の通りだ。

簡単に言うと、分子が国産食料、分母が輸入と国産を合わせた数値。分母は、日本人1日が1日に割り当てられている熱量と解釈することもできる。06年の数字は2548kcal。05年に比べて25kcal減っており、ここ数年は若干ではあるが減少傾向にある。

さて、ここで「摂取熱量」ではなく、「供給熱量」という言葉を使っていることに注目したい。供給熱量とは文字通り、消費者に供給された熱量であり、実際にそれをすべて消費者が摂取したわけではない。調理段階のロスや食べ残し、そして傷んでそのまま捨てられた食料もこのデータに入ってくる。

輸入飼料のマジック

このため、こうしたムダを減らすだけでも、分母を小さくすることができ、分子が変わらなくても、自給率を上げることができる。

また分子の国産熱量についても、ちょっとしたカラクリがある。例えば、肉類は、日本国内で生産したものであっても、輸入のエサを使っていると「国産」とみなされない。養鶏場や養豚場では、輸入飼料が当たり前となっている現状では、これも自給率を下げる要因となる。

実際、国内で生産した肉類を国産として計算すると、自給率は67%程度になるが、輸入飼料で育った分を差し引くと、17%程度にまで下がる。

食料自給率低下で最も直接的に危惧されることは、国際紛争などで食料輸入が途絶えたら、たちまち食料不足になってしまうことだ。最悪このような事態になったときは、どうなるか?

実は政府が試算をしている。それによれば、現在の農地に加え、耕作をやめている休耕地や、ゴルフ場などを農地に転用してフル活用したとして、純国産で準備できるのは1人1日当たり2000kcal。これは昭和20年代後半のレベルで、現在の8割の水準になるという。

それよりももっと現実的な問題がある。それは日本が食料に関してはあくまで「買い手」であるがゆえに「売り手」の意向に従わざるを得ないことだ。

例えば、昨年から小麦の価格が大幅に上がっている。国際相場は昨年1年でほぼ倍になった。パスタ類が相次いで値上げされていることで実感されている方も多いだろう。

小麦高騰の背景に輸出規制

直接の原因は、主要な輸出国であるオーストラリアが2年連続で干ばつになったこと。だがこれを受けて、輸出国が次々と小麦の輸出規制に踏み切っていることは見逃せない。インドは全面的な禁輸に踏み切り、ロシアは新たに「輸出税」を導入した。中国も輸出優遇税制を撤廃し、輸入促進に舵を切り始めている。

最大の輸出国である米国ではこうした動きは出ていないが、各国の輸出規制で世界的に需給が逼迫したことが小麦価格の高騰をあおった側面は否定しきれない。

日本の小麦の供給熱量自給率は13%程度であり、輸入の半分以上を米国に頼っている。高くてもそれを買う以外ない。日本の都合で「小麦の生産量を増やして値段を下げてくれ」と言うことができないのである。トウモロコシや大豆も状況は同じだ。

将来を見渡すと、こうした状況がさらに悪化する要因は少なくない。

1つは世界的な人口増加。1987年に50億人だった世界の人口はおよそ20年後の06年に67億人に増加した。国連は2050年に約90億人になると予測している。そのペースはまさに「爆発的」といえるものだ。

中国、インドの脅威

中国やインドなどBRICsと呼ばれる新興国の経済成長も大きな影響を与え始めている。経済的に豊かな層が現れたことで、食生活も豊かになっており、自国で賄いきれない分を確保するために輸入を拡大している。

中国は90年代初めまでは穀物の自給率が100%だったが、94年から輸入国に転じ、いまや世界最大の食料輸入大国になった。これまでは当然のように日本に入ってきていた食料についても、「買い負け」によってこれらの諸国に持っていかれるケースが既に見られるようになっている。

自給率が低いということは、国民が生きていくために絶対に必要な生命線を特定の輸入相手国に握られているということ。そして激しさを増す買い手間の競争でも勝ち続けなくては、現状の食生活を維持できないということだ。日本の「食」は、脆弱で非常に危ういシステムの元で提供し、消費されているのである。

著者紹介

田中 栄(たなか・さかえ)

アクアビット代表取締役チーフ・ビジネスプランナー。早稲田大学卒業後、CSK、マイクロソフトを経て、2003年アクアビットを設立。環境の変化や技術の進化から、新たなビジネスを創造する「未来予測」を得意とする。

馬渡 晃(まわたり・あきら) ティップトップマーケティング代表取締役、経営コンサルタント。早稲田大学卒業後、CSK、日本LCAを経て、2006年ティップトップマーケティング設立。著書に『球場のビールはなぜ800円でも売れるのか』。

【日経レストラン編集部からのお知らせ】 この連載のベースとなる「未来予測レポート 食の未来編」が4月中旬に発行の予定です。世界の食料事情はどうなるのか、日本の食事情はどう変化していくのか、食ビジネスの将来は? 270ページにわたる調査レポートとDVD、年表などで明らかにします。詳細は、特設サイトでご覧ください。



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