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アフリカ難民80万人分の食糧配給を削減、拠出金不足で 国連
AFPBB News
2014年07月02日 13:39 発信地:ジュネーブ/スイス
【7月2日 AFP】国連(UN)の世界食糧計画(World Food Programme、WFP)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は1日、アフリカの難民およそ80万人に対する食糧配給量を削減したことを明らかにした。各国政府による任意の拠出金の不足が理由で、多くの難民が飢餓の危険にさらされる可能性があると警告している。
WFPとUNHCRが共同で発表した声明によると、食糧配給量の削減は最大60%で、「子どもたちを中心に、すでに受け入れ難い水準にある急性栄養不良や成長阻害、貧血症の状況が一層悪化する危険がある」。両機関の代表はスイス・ジュネーブ(Geneva)で同日、各国政府に対しさらなる支援金の拠出を呼び掛けた。
WFPは資金不足により、支援を実施しているアフリカの22か国の難民約240万人の3分の1にあたる約80万人分の食糧配給量を削減した。さらに、その80万人のうちの半数以上は、配給量が少なくとも50%減らされる。
アフリカ全域で従来どおりの配給量を提供し、その後の削減を防ぐためには、WFPは年末までに1億8600万ドル(約190億円)、UNHCRは3900万ドル(約40億円)が必要だという。
配給量を削減された難民たちは、食糧の確保に必死だ。働き口を探すために子供は学校をやめたり、幼い娘を嫁がせたりする家庭も増えている。
このほか声明は、少女を含め女性たちが食糧を買うお金を稼ぐために行う「生存のためのセックス(Survival sex)」と呼ばれる売春行為を、深刻化する問題の1つとして指摘している。(c)AFP/Nina LARSON
太陽光ランプで無電化村を救え
cnn.co.jp
2014.07.07 Mon posted at 17:56 JST
ニューヨーク(CNNMoney) アジアやアフリカでは15億人近い人々が送電網から外れ、深刻な電力不足のなかで生活を送っている。灯油ランプが唯一の光源となることも多いが、有毒ガスを発生したり、火事になったりするなどの危険を伴う。
こうした状況を変えるべくグリーンライト・プラネット社を立ち上げたのが、パトリック・ウォルシュ氏だ。
米シカゴに本拠を構える同社は、冒頭のような無電化村に向けて、太陽光を電源とするランプを製造している。2009年の創業以来、180万個のランプを売った。ランプの値段は11〜40米ドル(約1100〜4000円)で、現地の人々の約2週間分の収入にあたる。
同社は需要急増の追い風を受けてこのほど黒字化。13年には2000万ドル(約20億円)の収益を上げた。今年のランプ販売数は400万個に及ぶと予想、16年までに1600万世帯に行き渡ることを目指している。
同社で特筆すべきなのは、農村部に廉価で安全なランプを普及させるという明確な社会的使命を背負いながらも、あくまで企業としての利益追求を目指していることだ。
ウォルシュ氏は「慈善事業で配布するのではなく、消費者がお金を払って私たちの製品を買うのだから、その製品には真の付加価値がついてこなければならないし、市場の厳しい要求を満たす必要もある」と自社のビジネスモデルを説明する。
社会的使命を帯びたエネルギー会社、という着想を同氏が最初に得たのは05年、インドで国境なき技師団の一員として働いていた時だった。灯油ランプの危険性を直接に目の当たりにしたのも、この時のことだ。
数年後、米イリノイ大学に戻った同氏は、同級生とチームを組んで60万ドル(約6000万円)のベンチャー資金を調達、グリーンライト・プラネット社を立ち上げる。09年には太陽光ランプを1万個売るまでに成長。その後も順調に業績を拡大させた。
もっとも、同社が革命的だったのは製品だけではない。現地の人を販売員として活用するというユニークな流通モデルを作り上げ、成功させたのも画期的だった。多数の商品を扱う小売店を通すのではなく、ランプを真に必要とする家庭に主体的に売り込んでいこう、という判断だった。
手数料の一部が現地販売員の手に渡り、貴重な副収入源となることもあって、販売網は拡大の一途をたどった。
販売員も11年の600人から現在の6000人にまで増員、インド国内5州において月4万個を販売している。目下、東アフリカでも似たような販売路の導入が計画されている。
太陽光ランプには4種類のモデルがあり、いずれも中国製。作りはいたって簡単だ。モデルによって直径4.5〜6インチ(約11〜15センチ)の大きさのものがあり、スタンドに取り付けるか、頭上から釣り下げて使う。3段階調光で、丸一日充電すれば24時間から30時間にわたって照明が持続する。
高価格モデルの2種は、電話の充電器として使うこともできる。
南アジアや東アフリカのような地域にも携帯電話が普及しつつあるが、無電化村では充電しにくいのが難点。同社の海外展開を担当するラディカ・サッカー氏によると、現状、数日ごとに遠距離を歩いていき、業者にお金を払って充電しなければならない。
同氏は「ちょっとした時間に自分で充電できるようになれば、情報へのアクセスという意味で、大きな意味を持つだろう」と話す。
第1回 えっ、アフリカで米づくり? しかも畑で?
File3 アフリカの稲作指導 坪井達史
日経ビジネスオンライン
中川 明紀
2014年7月7日(月)
世界最後のフロンティア市場。
アフリカ大陸を指す言葉である。ヨーロッパ各国の植民地から独立したアフリカ諸国は、内戦に陥る国も多く、ながらく社会基盤が脆弱であった。しかし、近年は紛争の数も減り、復興の兆しが見えつつある。実際、2001年から2011年までのアフリカの実質GDP成長率は年平均で4.6%。世界の平均は3.7%であり、めざましい経済発展がうかがえる。
その背景には近海などの石油や天然ガス、レアメタルといった資源開発や、生活水準の向上による市場の拡大などがあり、欧米から中国やインドの新興国まで、世界中がアフリカを新たな投資先として注目している。これが世界最後のフロンティア市場と呼ばれる所以だ。
アフリカを救う米「ネリカ」
それは農業も同じ。アフリカには食用穀物の栽培に適した未耕作地が約4億5000万ヘクタールあるという。これは世界全体の未耕作地のおよそ半分にあたる。しかも、耕作地は農業技術やインフラの整備が未発達なため、トウモロコシなど穀物の面積当たりの収量は欧米の6分の1程度(サハラ砂漠以南)しかない。つまり、農業開発の余地が非常に大きい土地なのだ。
2050年に世界人口は90億人を超えると予測される。その増加率が最も高いのがアフリカで、現在約9億2600万人の人口は2050年には倍以上の約22億人に達する可能性があるといわれている。しかも国連の報告によると、アフリカの飢餓人口は過去20年間で1億7500万人(1990〜1992年)から2億3900万人(2010〜2012年)と、世界で唯一増加している。そこにはいまだ政情の不安定な国の影響もあるが、多くの国が自国で食料をまかなえず、米や小麦などの穀物を輸入に頼っていることも一因と考えられる。
もし、アフリカの農業生産が向上して未耕作地の開発が進み、自給率が上がれば、いまの飢餓を解決に導くばかりか、懸念されている将来の食料危機問題に貢献するひとつの手段となるのではないだろうか。
では、実際にどのように開拓していくべきなのか。すでに世界では、アメリカが中心となってルワンダで大規模な農地開拓を行なっていたり、中国の企業がモザンビークなどで大農園を造成したりするなど、アフリカへの農業投資を始めている。日本もまた、ブラジルとともにモザンビークで大規模な農地開発「プロサバンナ」を行っているが、それとは別にアフリカの食料事情を改善するために普及に努めている穀物がある。
「ネリカ」と呼ばれる米だ。
「ネリカは2003年から本格的な栽培が開始された米の新品種です。“New Rice for Africa”の頭文字を取ったものであり、そこには“アフリカの食を豊かにする新しい米になるように”という願いが込められています」
そう話すのは、JICA(国際協力機構)のコメ振興プロジェクト専門家である坪井達史さん。ネリカにいち早く着目し、ウガンダを拠点にしてアフリカ諸国で稲作の技術を指導している。2009年にはニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた、「ミスターネリカ」の異名を持つ、ネリカ栽培の第一人者だ。
アフリカで米を栽培するというのは、少し意外だった。しかし、近年、アフリカでは生活形態の変化から都市部を中心に米の需要が急速に伸びているという。実際、1990年頃には約800万トンだった米の消費量は、2008年には1400万トンに増えている。それでも需要に追いつかず、約700万トンをアジアから輸入しているほどだ。
実は日本人より米を食べる
「もともとアフリカにも米の在来種があり、昔から米が食べられてきました。いまでもギニアなど西アフリカでは消費が多く、1人当たり年間70〜80キロほど食べています(日本は2012年で約56.4キロ)」
アフリカ人の主食はトウモロコシやキャッサバ、バナナなどだが、米も受け入れられる土台があったということだ。実は、アジアで米の生産性向上に成功した「緑の革命」と同時期の1960年代、アフリカにも中国や台湾から水田の技術が伝えられている。しかしこのときは、アジアとは気候条件が違ううえ、政情不安が激化したこともあって、米の生産が定着するまでにはいたらなかった。そのため、需要が供給に追いつかないのである。
「現在、アフリカの稲作面積は1000万ヘクタールと世界の稲作面積の6%しかなく、生産量の2680万トンは世界の3.7%でしかありません。でもネリカにはいままで普及を妨げていたさまざまな問題をクリアできるポテンシャルがあるのです」
ネリカはアフリカイネのグラベリマ種とアジアイネのサティバ種という2つの陸稲を交配させてつくったイネの品種。イネには本来、水田で栽培する「水稲」と、畑で栽培する「陸稲」がある。アジアに比べて降雨量が少なく乾燥しているアフリカでは、水稲より陸稲のほうが栽培しやすい。だが、陸稲は水稲に比べて単位面積当たりの収量が少なく、地力の低下も起こしやすい。そこで、乾燥や病害虫に強いアフリカ在来種のグラベリマ種に、面積当たりの収量が多いサティバ種を掛け合わせた。それがネリカなのである。
低コストで生育が早い陸稲
ネリカはこうしてつくられた品種の総称であり、改良が重ねられて、現在は水稲が60種、陸稲は18種が登録されている。ただ、おもに利用されているのは陸稲種だ。これはアフリカの風土に適していることに加えて、栽培コストや技術面も関係している。もし灌漑水田をつくるとしたら、土地を平らにして水路を引き、場合によってはダムも必要になってくるため、1ヘクタール当たり1万〜1万5000ドルのコストがかかる。しかし、陸稲は畑に種を蒔けばよく、灌漑設備も必要ない。傾斜地でも栽培することができるため、栽培可能な面積を広げやすいのだ。
「砂漠地帯でも適度な水源があればつくれますし、逆に低湿地でも可能です。陸稲より水稲のほうが収量が高いことからしても、イネは水があったほうが育ちがいい。エチオピアにある青ナイル川の源流、タナ湖の周辺の土地は雨季になると水がたまってしまうため、その期間は農家はなにも作ることができませんでした。トウモロコシなどは植えても腐ってしまいますからね。でも、いまは一面にイネが植えられています。その土地の気候風土に合わせてネリカの品種を使い分けています」
また、栽培が簡単で生育日数が短いのも特徴だ。「極端なことを言えば、種を蒔いて水をやりさえすれば、ある程度の収量が見込めます。日本の一般的な水稲は5月頃に田植えをして10月頃に収穫しますが、ネリカは種を蒔いてから4カ月弱で収穫できます。また、在来種の陸稲と比べても1カ月以上短いんですよ」と坪井さんは言う。しかも、畑に植えるのでトウモロコシやコーヒーなど他の作物の間で栽培することもできる。
なにより、一番のメリットは単位面積当たりの収量ポテンシャルが高いことだ。
「一般的に、陸稲は水稲に比べて穂は大きく籾の数も多いですが、穂数が少なく実が入っている籾の割合が低いという問題があります。でもネリカは従来の陸稲よりさらに穂が大きくたくさんの籾をつけます。実際、従来のアフリカの陸稲は1ヘクタール当たりの収量が1.5トン未満でしたが、ネリカは降雨が十分であれば1ヘクタール当たり3〜5トンの収量ポテンシャルがあります。日本の水田が1ヘクタール当たり約5〜6トンですから、同等近くの収量が期待できるのです」
生産量倍増を目指すCARD
ネリカはアフリカの農業事情にぴったりなスーパーライスなのだ。そう言うと、坪井さんは「味を重視した品種ではないので、日本人からしたらスーパーライスとは言えないかもしれませんけどね」と笑うが、実際、ネリカの栽培はアフリカの多くの国々から注目されている。
2008年5月、横浜で第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)が開かれた。日本政府主導のもとで、国連や世界銀行、アフリカ連合委員会などが共同開催している、アフリカの開発をテーマとした国際会議だ。1993年から5年ごとに開かれ、このときはアフリカ53カ国(当時)のうち、51カ国の首脳が集結した。そこで、「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition of African Rice Development)」が設立された。
「CARDは、アフリカ諸国で稲作を普及させて食料自給率を上げ、さらには米をお金に変える仕組みをつくっていこう、という取り組みです。JICAが中心となって、2008年から2018年の間に、アフリカでの米の生産量を1400万トンから2800万トンに増やすことを目標に支援を行っています。その要となっているのが、ネリカなのです」
CARDに参加したのは23カ国。2つのグループに分けたうち、ウガンダやケニア、タンザニアなど先に取り組みを開始した12カ国は、2007年に1196万トンだった米の総生産量が2010年には1564万トンと30%の増産に成功している。
「奥地に住む農家が食べているものまで統計が取れないので正確な数字はわかりませんが、私の感覚からすると現在は2000万トンはいっているのではないでしょうか。かなりのスピードで普及していると思いますよ」
アフリカで広く受け入れられつつあるネリカ。坪井さんの取り組みと栽培の現状、またネリカがアフリカにもたらす利点ついて、もう少し詳しく聞いていこう。
第2回 なぜアフリカに米づくりを伝授するのか
File3 アフリカの稲作指導 坪井達史
日経ビジネスオンライン
中川 明紀
2014年7月8日(火)
アフリカの風土に適していて生産性が高いことから、アフリカ諸国で注目されている「ネリカ」。普及に努め、「ミスターネリカ」と呼ばれる坪井さんが、この米と出会ったのはいまから20年以上も前のことだ。
JICAの専門家としてアジアで稲作の技術支援を行っていた坪井さんは、1992年に西アフリカのコートジボワールに赴任した。当時、西アフリカに日本人の稲作専門家は1人もおらず、稲作普及の必要性を感じてのことだった。
「当時は稲作といえば水稲でした。援助に入る国はどこも、アフリカに水田をつくって稲作技術を教えていた。でも、灌漑設備が必要なうえ、苗床で苗を育ててから田植えと工程も多いため、アジアのように稲作文化が浸透していないアフリカで、一から教えるのは難しいことでした」
しかし、陸稲は水稲と比べると格段に収量が落ちる。そこに、革命をもたらしたのが西アフリカ・シエラレオネ出身の研究者、モンティ・ジョーンズ博士の研究だ。
「コートジボワールに赴任して、同国の西アフリカ稲開発協会(現・アフリカ稲センター)に挨拶に行ったところ、そこで研究していたジョーンズ博士が開発は無理だろうと言われていたアフリカ種のイネとアジア種のイネの交配に成功したと、3粒の種籾を見せてくれたのです。そのとき、これは運命だと思いました」
まずはウガンダから
それから3年後、坪井さんは品種として固定したネリカの種籾をジョーンズ博士から分けてもらって、試験栽培を始めた。フィリピンの国際稲研究所で学んだ経験のある坪井さんは陸稲についても知識を持っていて、ネリカが実用化すればアフリカの稲作が変わると確信したという。
1995年には日本作物学会の会長などを歴任した東京大学の教授(当時)の石井龍一氏の注目するところとなり、日本がネリカの支援を提唱して、西アフリカ諸国で品種の選定が始まった。そして2003年、JICAの農村開発部長(当時)の西牧隆壯氏が支援を決断して、同年の第3回アフリカ開発会議(TICAD III)で日本がネリカ普及支援を表明、坪井さんが参加するにいたった。
「2004年にウガンダに正式に赴任し、さっそくネリカの普及プログラムをスタートしました。なぜウガンダかというと、前年から東・南部アフリカ諸国を中心に調査をした結果、ネリカの栽培に最も適した国だったからです。まずウガンダでネリカの生産技術を広め、そこからアフリカ全土に普及させていこうと思いました」
ウガンダは赤道直下に位置するものの、海抜平均1100メートルという高地にあるため、1年を通して平均気温が23度と気候が穏やかで、降雨量も年間1200ミリと適度にある。ナイル川の最上流域にあたり、アフリカ最大の湖・ビクトリア湖にも面しているので、水が豊かで土地も肥沃だ。さらに、1986年のムセベニ政権発足後は政情も安定していて、サハラ以南の国の中では経済成長率が高い。
こうして、坪井さんはネリカの技術支援を始めた。とはいえ、たった1人でのスタートであり、自身もネリカを本格的に栽培するのは初めてのこと。ネリカには陸稲も水稲もあり、改良がなされて品種は増えている。その中で、ウガンダの土壌に適した品種はどれか、いつ蒔くのが最も適しているのかなど、栽培技術を模索しながら教えていった。
「倍返し」で普及図る
「教え方にも工夫が必要でした。ウガンダは陸稲作の未経験者がほとんどで、栽培技術もないため、口で説明するだけでは伝わりません。幸い気候が安定しているので、時期を考えずに栽培することができます。そこで、いくつかの畑に少しずつ時期をずらして栽培し、種蒔きから収穫までの流れが一度で見られるようにしました。また、種を蒔く深さは3〜4センチを奨励していますが、種蒔きの方法や雑草の処理によって生育状態に差が出ることを、写真を見せて説明します。そうやって一つひとつ教えていくのです」
こうして研修を受けた農家に、坪井さんは1キロのネリカの種籾を渡している。もちろん、自分の畑でネリカを栽培してもらうためだが、そのときに行っているのが「倍返しシステム」だ。
「イネのよいところは籾、つまり食べる部分がそのまま種になることです。研修を終えた参加者に、1キロの種籾を200平方メートルの畑に蒔くように教えます。そうすれば約50キロの種籾が収穫できます。これは1ヘクタールの畑で栽培できる量です。そのなかから利息をつけて2キロの種籾を返してもらうのです」
といっても、坪井さんのもとに返すわけではない。自分の周囲の農家に渡して、栽培してもらう。そうすることで、技術と栽培面積を同時に広げていくのだという。
「欧米諸国はトウモロコシのハイブリッド種を推奨して高収量によって生産量を増やす援助を行っていますが、トウモロコシは収穫した実を種子にすると遺伝的に分離するので、ハイブリッド種の栽培を継続するためには毎回種子を買わなければいけません。でも、イネの種籾は劣化しない。日本のコシヒカリなんて60年くらい前に植えられた品種を繰り返し使っているんです。小規模農家が圧倒的に多いウガンダで我々が普及するのには限界がありますから、その特性はぜひとも生かさねばなりません」
“倍返し”がどこまで行われているかを確認する術はない。しかし、ウガンダのネリカの作付面積は順調に増えていて、プロジェクトが始まった2004年に8000ヘクタールほどだった耕作面積は、2008年には約5万3000ヘクタールにまで広がり、現在は7万ヘクタールほどと推定される。
「ウガンダに赴任した2004年頃は、ライスがあるレストランは少なかった。でも、いまはほとんどのレストランでライスが食べられますよ」
米は換金性が高い
これほどの広がりを見せている背景には、米が換金性の高い作物だということもある。通常、米の国際価格は1トン当たりおよそ400ドル。しかし、ウガンダに輸入される米には75%の関税がかけられるため、1トン当たり1000ドル以上になるという。レストランの例でもわかるように米の需要が増えているウガンダでは、輸入米にひっぱられて国産米の価格も上がる。
「アジアではまず自分たちの食べる分をキープして余った米を売ります。我々としては日常的に米を食べてもらいたいのですが、ウガンダでは米がまだ贅沢品であり、毎日食べる習慣が根付いていないので、ほとんど売ってしまう。それでも結婚式やお祭りのときにしか食べられなかった米が、週に1〜2回食べられるようになり、現金も手に入る。彼らにしては万々歳なのです」
以前は現金を持っていなくても、自分たちの食べるものをつくり、余った分を売って塩や砂糖、油などに変えるくらいで生活は成り立った。しかし、経済成長が著しい今は、農村部の人間も携帯電話を持つ時代。1エーカー(0.4ヘクタール)のネリカで得られる収入は400〜500ドルであり、この金で薬や自転車を買い、子どもを学校に通わせる。より豊かな生活を求めて米をつくる農家が増えているのだ。
「実は、ウガンダの低地では小規模な水稲栽培の普及も行っています。2010年には日本の無償資金協力で稲研究・研修センターが設立されました。また、2011年からはネリカと水稲栽培の2つを柱とした『コメ振興プロジェクト』を実施しています。ウガンダの人たちが稲作を始めるときは陸稲でいいですが、さらに収量を上げようとしたり、安定的・持続的にしようとしたりする場合にはやはり水稲が必要になってきますから」
2008年まで坪井さんが1人でやっていたネリカの普及は、活動の拡大にともなって現在はほかに6名の日本の専門家が従事している。さらに、ウガンダ国内にいる15名ほどのJICAの青年海外協力隊員も、コミュニティー開発の一環としてネリカの栽培を現地の人たちに教える。「それだけ広げる価値のあるプロジェクト」なのだと坪井さんは言う。
エチオピア、スーダン、ジプチへ
「ウガンダでの成果が評価され、それまでほとんど稲作をしていなかったエチオピアから約300名が、スーダンからも200名が研修を受けに訪れ、学んだことを持ち帰って祖国で普及に努めています。ジブチは耕地面積がほとんどありませんが、近隣国に土地を借りて米をつくるといって研究者や政府の高官が研修にきました。CARD(アフリカ稲作振興のための共同体)への参加の有無と関係なく、アフリカ諸国の関心の高さが伺えます」
水稲の輸出国であるエジプトは今後起こり得る水不足に備え、また、石油採掘の恩恵で主食の99%を輸入に頼っているギニアも、石油が枯渇したときのことを考えて関心を寄せているという。坪井さんがネリカの研修を行った国は15カ国以上。どの国も食料不足に対して危機感を持っているのだ。
米はウガンダの人たちの生活に変化をもたらし、アフリカの多くの国で注目を集めている。今後、ネリカがアフリカの食料自給率を高め、2050年に予測される食料危機問題に貢献するためには何が必要なのだろうか。
中東・アフリカで水事業 三菱商事など300億円出資
2014/7/8 2:06
日本経済新聞 電子版
三菱商事と三菱重工業は国際協力銀行と組み、世界26カ国で水事業を展開する中東の大手メティート(本社ドバイ)に資本参加する。出資総額は300億円弱で、三菱商事と三菱重工が4割弱の議決権を持つ筆頭株主となる。メティートは需要増が見込まれる新興国に強い。資本参加で新興国市場を開拓し、「水メジャー」と呼ばれる仏ヴェオリアなどを追い上げる。
資本参加に向け三菱商事が6割、三菱重工が4割を出資して特定目的会社(SPC)を設立。SPCが現地投資ファンドなどからメティートの普通株式38.4%を買い取る。取得額は明らかにしていないが200億円弱とみられる。国際協力銀は、メティートが新たに発行する最大9200万ドル(約92億円)の優先株を引き受ける。メティートは調達資金を今後のプロジェクトに充てる。
水事業の海外展開は、政府が後押しするインフラ輸出の重要項目の一つ。日本企業は部材や機器など個別分野では高い競争力があるものの、事業の上流から下流までを一体的に手掛ける事業者は少ない。
三菱商事はフィリピンやオーストラリアで水事業会社に資本参加しているが、今後は中東やアフリカ、アジアなどで需要が急拡大すると判断。広域展開するメティートに経営参画し、水事業を本格展開する。三菱重工も海水淡水化装置の輸出拡大につなげる。
世界の水事業は2012年に50兆円だったが、20年には70兆円に膨らむとの予測がある。国際協力銀も、建設から管理・運営までを一体的に展開するメティートとの連携は、日本勢の競争力向上につながるとして出資を決めた。
国連、同性婚者への待遇を異性婚者と平等に
asahi.com
ニューヨーク=春日芳晃2014年7月8日10時31分
国連は7日、同性婚をしている事務局職員に対し、異性婚の場合とほぼ同じ待遇を保障すると発表した。職員が結婚した国で同性婚が法的に認められていれば、異性婚とほぼ同じ条件で、健康保険制度などを適用する。
この日の定例記者会見でハク次席報道官が発表した。ハク氏によると、潘基文(パンギムン)事務総長が全ての事務局職員(約4万3千人)に今回の待遇改善を通知。潘氏は「人権尊重は国連の使命の中核。私は全職員のさらなる平等な待遇を支持する」とし、同性愛者への嫌悪や差別を拒絶するよう職員に呼びかけた。
国連や職員団体によると、これまでは、職員が国籍を持つ国が法的に同性婚を認めていない場合、その職員が同性婚をしても、配偶者が健康保険に加入できず、配偶者としてのビザも取れないなどの差別があった。
今回の待遇改善を受けて、ゲイやレズビアンの職員の待遇改善を求めてきた職員団体「UN−GLOBE」は「長く放置されてきた課題の歴史的達成であり、完全な平等への一歩だ」とする声明を出した。(ニューヨーク=春日芳晃)
第3回 アフリカの「緑の革命」に本当に必要なもの
File3 アフリカの稲作指導 坪井達史
日経ビジネスオンライン
中川 明紀
2050年、ネリカが不足するアフリカの食料を補う穀物となるためには、坪井さんは生産性を上げる必要があると語る。そして、それを実現するにはいくつかの課題があるという。
「第一に機械化です。生産性を制限してしまう要因のひとつは労働力ですが、アフリカの農業はほとんどが人力によるもの。ネリカにしても、赴任当初は脱穀機もないから収穫した稲穂を叩いて籾を落としていたんです。でも終わった穂を見ると、籾がたくさん残っている。これではいくら穂の籾数が多くても意味がありません」
そこで坪井さんは、首都・カンパラにある町工場のメカニシャンに、足踏みタイプとエンジン付きタイプの脱穀機の製造を研修したうえで、10台ずつ購入。農村に置くようにした。さらに、ネリカの種を求めてきた他の援助団体にも脱穀機の購入を勧め、普及に努めたという。「その町工場は製造依頼が増えて、すごく大きくなりました」と坪井さんは笑う。
機械化をいかに進めるか
また、陸稲が新たに栽培された村には精米所がなく、人びとは収穫後に重さが100キロ程度ある籾袋を自転車に乗せ、精米所がある町までその自転車を押して歩かなければならなかった。そこで、トラックに精米機を載せて村々をまわる「移動精米所」をつくった。今後は耕耘機を導入していきたいという。
「1992年に初めてアフリカにきたとき、まったく耕耘機を見かけませんでした。みんな鍬で畑を耕しているんです。日本では私が小学生の頃に耕耘機が登場し、10年も経たないうちにほとんどの農家に普及しました。それから20年以上が過ぎ、耕耘機が世の中に存在しているにもかかわらず、アフリカにはなかった。さらに22年が経ちましたが、いまだ状況は変わっていません」
耕耘機の導入は耕地面積の拡大を促進するが、いっぽうで単位面積当たりの収量も上げる必要がある。ネリカは1ヘクタール当たり3〜5トンの収量ポテンシャルがあるのだが、現在、ウガンダの収量は2〜2.5トンほど。ネリカが持つ最大の特徴が活かされていないわけだが、それでも在来種よりは多く収穫できるので、農家は満足してしまっているそうだ。
「アフリカの人は働かないから生産性があがらない。そう言ってしまえば終わりですが、彼らは怠け者なのではなく、知識が足りないだけ。技術を教えてメリットを理解させれば、収量は上がります。では、そうした技術を誰が伝えていくのか。後継者が問題としてあげられます」
ウガンダにも日本の大学でマスターを取った研究者が何人かいる。しかし、マスターやドクターを取った人の多くは品種開発や試験場で農業技術の研究をする。それも大事なことではあるが、農業は現場で作物を育て、収穫しなければ意味がない。そのためには現場に出て技術を教える人が必要であり、そうした人々が増えることを坪井さんは望む。
知識と技術の伝承を
「たとえば、収量が低い農家があるとします。彼らは肥料がないからだと言いますが、畑に行けばたいていは技術的な問題だとわかります。現地の人たちは知識がないので収量が低いなら肥料を増やせばいいと安易に考えますが、畑を見ると雑草を抜かずにいたり、種蒔きの方法が悪かったり。正しい方法を教えてあげれば解決することがほとんどです」
雑草が生えれば当然、土壌の養分が取られて稲の生育は悪くなる。しかし、彼らはそのことを知らない。幸い、ネリカに大打撃を与えるような害虫がまだいないこともあり、種を蒔いて水を与えればある程度は育つので問題ないと除草を怠る。ただ、除草をしない畑と除草を徹底した畑では収量が5倍以上違う。
種蒔きにおいても先に述べたように推奨する深度は3〜4センチ。芽が出て収穫できれば彼らとしては問題がないので深さなど考えないが、4センチだと発芽率は75%あるが、6センチにすると30%まで落ちてしまう。
「間違った栽培法に気づき、正してあげるためには、私たちは実践のもとで最適な栽培法を研究し、彼らと一緒に汗を流して教えなければならない。アフリカに必要なのは現場で指揮を執れる人間なのです」
加えて、そうした指導者のもとで技術を身に付けていくためには、現地の人たち自身の教育も大事になってくる。先の耕耘機にしても、アフリカ人の多くは手に入れたらメンテナンスもせず、無理な使い方をしてすぐに壊してしまう。教育を受けておらず、情報に触れる機会も少ないため、機械にどのような手入れが必要かを知らないからだ。
日本に限らず、アフリカの稲作にはさまざまな国や企業が投資・支援を行っているが、坪井さんのように現地の人と同じ目線で問題点を捉えているところは少ない。たとえば、サウジアラビアの企業は、2008年の穀物価格の暴騰に危機を覚え、エチオピアに1万ヘクタールの水田をつくるプロジェクトをすすめているが、現地の人の雇用条件の劣悪さが問題となっている。
利益にとらわれないから見える
また、中国はアフリカの研究者にハイブリッドライスの研修を行っている。確かに収量は多いのだが、この米の籾は種として使うことができず、農家は毎回新たに中国から種籾を購入しなければならない。支援ではあるが、中国側もメリットがある仕組みだ。
「ガボンという国に行ったときに、韓国のODA(政府開発援助)実施機関であるKOICAからもらった耕耘機や田植え機がありました。ただ、ガボンには水田がないんです。聞けば韓国で研修を受け、箱苗をつくっているところだと言うので見せてもらったら、なんと腐っていました。ガボンは気温が30度以上あるのに、15度にもならない4月の韓国と同じ作り方をしているのですから当然です。現場で教える必要性を改めて感じましたね」
たいていの国や企業の支援は何らかの私益や国益が絡んでいるもの。しかし、坪井さんが携わっている日本のODAは、将来を見越してアフリカと良好な関係性を築くなどといった目的はあるものの、直接的な利益を生まないため、外側からみれば少々特殊なものに見えるらしい。
「少なくともこれまでウガンダでかかわってきたプロジェクトは、国際協力を目的としたJICAによる技術援助です。時々、他国の人から聞かれるんです。ネリカが普及したら日本はそれを買うのかって。それで、日本は米が余っているんだよと答えると理解ができないようです。利益がないことをなぜやるのか、ビジネスじゃないのかって。現地の人にも最初は警戒されましたね」
日本人はお人好しなんですよ、と坪井さんは笑うが、ネリカ普及の課題も、利益に捉われないからこそクリアに見えてくるのではないだろうか。こうしてアフリカのことを考え、ネリカを広めるために奔走する坪井さんだが、巨大なネリカ畑をつくるような大規模開発を望んでいるわけではない。
「これから食料危機がくると想定しても、アフリカ諸国の自給率を高めるためには、農業の大規模開発を図るよりも、小さな面積でいいからネリカのような作物をできるだけたくさんの人に広めることだと思います」
現地の知恵を無視しない
その理由は町のレストランにあるという。ウガンダでレストランに行くとまず、主食を何にするかを聞かれる。ライス、マトケ(調理用のバナナ)、ポショ(トウモロコシの練り物)、スイートポテト、キャッサバと、客はたくさんある主食の中から好きなものを2〜3種類選ぶ。次は上にかけるソースだ。牛、鶏、ヤギなどの煮込みからどれにするかを決める。
このレストランのメニューがウガンダの農業そのものを表している。つまり、各農家がこれらの食材をすべて栽培、飼育しているのだ。ひとつの畑にトウモロコシもキャッサバもネリカも植えられている。アボカドの木もあって、その周りをヤギがうろうろしている。これは決して悪いことではなく、支援する側が壊してはいけないのだという。
「これがアジアの農家だったら全面で主食である米をつくるべきでしょう。でも、アフリカではトウモロコシやキャッサバを食べている中に、ニューカマーとして米が入ってきた。栽培するにしても、ひとつの畑に多種類の作物を一緒に植えている。ネリカも教えてもいないのにコーヒーやバナナの木の間に植えるんです。でも、そこには何らかの知恵があります。それを無視してはいけません」
坪井さん自身は、飼料としての利用が多いトウモロコシや、穀物ではないキャッサバよりも、自分たちと同じように米を食べてほしいと思っている。しかし、ネリカはイネなので干ばつに弱い。坪井さんが携わっている10年のうちでも2回、ひどい干ばつで収量がゼロだったことがある。心配して農家の様子を見にいった坪井さんは、彼らにこう言われたという。「ネリカはだめだった。でも、平気なんだ。畑にはトウモロコシもキャッサバもマトケもあるからね」
選択肢が自立を促す
「栽培法を教えたら、あとは農家の選択次第なんです。我々はいくつかのオプションを用意してあげるだけで強制してはいけない。それが自立を促すんです。だから、私はできるだけたくさんの農家にネリカを知ってほしいと思って活動しています。そうすることで選択肢が増えて飢饉にも陥りにくく、安定した食料が得られるようになるはずですから」
大人たちの中にはやっぱりいつも食べているマトケやトウモロコシがいい、という人もいる。しかし、物心ついた頃から米を食べている子どもたちは、米のほうが好きだという。彼らが成長するにつれて、だんだんと米が主食となっていくかもしれない。でもいまは他の作物と一緒に食べながら、時代の流れとともに変わっていけばいい。
「その頃に私はこの世にいないでしょう。でも、我々の蒔いた種が2050年、2100年に結実していれば、そんな幸せなことはありません」
かつてのアジアやブラジルの「緑の革命」は世界に多大なる食料供給をもたらした。しかし、無理な開発によって多くの在来種が絶滅し、環境破壊が起きたとも言われている。2050年の食料危機にアフリカの農地開発は必要不可欠であろう。ただ、相手に寄り添う心がともなっていなければ、本当の開発とはいえない。“ミスターネリカ”の地道な活動がそれを示している。 おわり
名古屋議定書、10月発効 生物資源利用に国際ルール
asahi.com
小林哲=ワシントン、神田明美2014年7月15日13時44分
2010年に日本で採択された生物多様性条約の「名古屋議定書」について、条約事務局(カナダ・モントリオール)は14日、批准国の数が発効の条件となる50カ国に達した、と発表した。規定に従い、10月12日に発効する。
名古屋議定書は、動植物や微生物などの遺伝資源を使って医薬品や食品などを開発した場合、利益を資源の提供国と利用国で公平に配分する手続きを明確化したもの。途上国への資金援助が狙いだ。名古屋市で開催された第10回締約国会議で採択された。
条約事務局によると、先週以降、ベラルーシやペルー、スイスなど12カ国が批准し、批准国が51カ国・地域に達した。今年5月に欧州連合(EU)が批准したことを受けて、EU加盟国などの批准が一気に加速した。
今年10月に韓国で開催される第12回締約国会議の期間中に、議定書の具体的な運用などを話し合う。
日本は、第10回会議の議長国として議定書を取りまとめたが、批准できないまま議定書が発効することになった。環境省などが批准に向けた国内ルール作りを進めているが、産業界などとの調整に時間がかかっているためだ。
石原伸晃環境相は15日の会見で「できる限り早い締結と、来年には国内措置の実施を目指すのが、日本の責任」と話した。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「名古屋議定書は、持続可能で公平な生物資源の利用に欠かせない」とした上で、「批准国を称賛したい」との声明を発表した。(小林哲=ワシントン、神田明美)
名古屋議定書、10月に発効へ 生物利用ルール
nikkei.com
2014/7/15 12:44
海外から入手した生物を利用して開発した薬などから得られる利益を、生物の提供国に適切に分配するルールを定めた名古屋議定書が10月12日に発効することになった。締結国数が発効要件の50カ国に達し、生物多様性条約事務局(カナダ)が15日発表した。
日本は国内の対応措置についての議論が遅れており、締結の時期は未定。名古屋議定書は2010年に名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択されたが、議長国として採択に導いた日本抜きで始動となる。
石原伸晃環境相は閣議後の記者会見で「COP10議長国の日本の責任は非常に重要だ。国内措置について関係省庁で検討を積み上げており、できる限り早期の締結と、来年の国内措置の実施を目指す」と述べた。
議定書への対応が想定されるのは主に、遺伝資源と呼ばれる、有用な動植物や微生物を他の国から入手して活用することがある製薬、バイオ産業、種苗、食品業界や学術研究の分野。環境省によると、議定書が発効しても、未締結の日本は議定書の法的義務には縛られない。〔共同〕
地中海渡る難民急増…シリア内戦など逃れ
The Yomiuri Shimbun
2014年07月21日 16時59分
【ローマ=青木佐知子】シリア内戦などを逃れ、地中海を渡って南欧を目指す難民が急増している。
イタリア内務省によると、6月末までの半年間に同国に上陸した難民は約6万人。中東の民衆蜂起「アラブの春」で難民があふれた2011年の年間約6万3000人に早くも迫る勢いだ。
伊当局は19日、地中海の島国マルタ沖で漂流していた船から約400人の難民を救出した。船内から19人が遺体で見つかった。エンジンの煙による一酸化炭素中毒などが原因とみられる。
船体が小さかったり老朽化したりしているため漂流する難民船が後を絶たず、イタリア海軍などが救出活動を行っている。19日までの3日間だけで約4000人が救出された。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、死者も今年1〜5月で170人と推計されている。
2014年07月21日 16時59分
乳幼児の肥満増加、25年に世界で7000万人 WHO報告書
nikkei.com
2014/7/23 21:23
【ジュネーブ=共同】世界保健機関(WHO)は23日までに、過体重または肥満の乳幼児(0〜5歳)が世界的に増加傾向にあり、2012年の4400万人から25年には約1.6倍の7千万人に達する可能性があるとの報告書を発表、対策を急ぐよう各国に促した。
1990年は3100万人だった。発展途上国での増加が目立ち、アフリカでは90〜12年に400万人から1千万人へ2.5倍に増えた。幼児期に肥満になればその後も肥満のままの傾向が強く、糖尿病や心臓疾患などを若いうちに発症するリスクを高めるという。
WHOの小児肥満撲滅委員会のグラックマン委員長は「子供の肥満は深刻な健康問題にもかかわらず、これまで十分な注意が払われてこなかった」と話している。
新興国や発展途上国の経済成長などに伴い、肥満は成人も含め世界的に大きな問題となっており、WHOも対策強化に乗り出している。グラックマン氏によると、貧困に苦しむサハラ砂漠以南のアフリカ諸国でも肥満が深刻化。一つの国に栄養不足と肥満という正反対の問題が共存している状況という。