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非正規雇用

Irregular Employment (English Page)労働

last update: 20110118


○生存学創成拠点関係者による文章[PDFデータあり]
 ◇橋口 昌治 2008/03/31 「偽装雇用の実態と抵抗」『Core Ethics』第4号,pp.277-290 [PDF]

■本

◆NHK取材班  19910920 『ヒト不足社会――誰が日本を支えるのか』,日本放送出版協会,235p. ISBN-10:4140087943 ISBN-13:9784140087947  \1200 [amazon][kinokuniya] ※ w0114 n04 (新規)
◆塚田 広人 編  20050401 『雇用構造の変化と政労使の課題――日本・韓国・中国』,成文堂,253p. ISBN-10: 4792341922 ISBN-13:978-4792341923 \5250 [amazon](新規)
厚生労働省  20060815 『労働経済白書』323p ISBN-10:4175430016 ISBN-13: 9784175430015 \2500 [amazon][kinokuniya] ※ w0114
◆雨宮 処凛 20070328 『生きさせろ!――難民化する若者たち』,太田出 版,p.284 ISBN-10:4778310470 ISBN-13: 978-4778310479 1300+税 [amazon][boople]
◆「しんぶん赤旗」日曜版取材チーム 20070501 『ワーキングプアと偽装請負――職場ルポ―非正規雇用を追って』日本共産党中央委員会出版局
◆阿部 真大 20070510 『働きすぎる若者たち――「自分探し」の果てに』,日本放送出版協会,204p. ISBN-10:4140882212 ISBN-13: 978-4140882214 700+税 [amazon][boople]
◆風間 直樹 20070510 『雇用融解――これが新しい「日本型雇用」なのか』東洋経済新報社
◆本田由紀 編 20070518 『若者の労働と生活世界――彼らはどんな現実を生きているか』,大月書店,365p. ISBN-10: 4272350250 ISBN-13: 978-4272350254 2520 [amazon][boople] ※ b w01
◆小林 美希 20070520 『ルポ 正社員になりたい――娘・息子の悲惨な職場』影書房
◆朝日新聞特別報道チーム 20070530 『偽装請負――格差社会の労働現場』朝日新聞社
◆脇田 滋 20071030 『労働法を考える――この国で人間を取り戻すために』,新日本出版社,238p.ISBN-10: 440605071X ISBN-13: 978-4406050715 \1680 [amazon][kinokuniya]※ w01 w0114 w0107
◆設楽 清嗣・高井 晃・関根 秀一郎ほか 20071114 『ワーキングプアの大逆襲――労働争議最前線からの「格差“使い捨て”社会」の処方箋!』,洋泉社,188p. 952+税 ISBN-10: 4862482023 ISBN-13:978-4862482020 [amazon]
◆佐藤 博樹・小泉 静子 20071115  『不安定雇用という虚像――パート・フリーター・派遣の実像』,勁草書房,171p. ISBN-10:4326653310 ISBN-13: 978-4326653317 2000+税 [amazon]

■論文

□岩崎 俊夫 19891000 「パート・アルバイト女性就業者増大の背景に関する一考察--(付)「札幌市における働く女性の意識調査」(1988年10月)集計結果」『開発論集』(通号 44),113-141
□禿 あや美 200110 「電機産業のパートタイマーをめぐる労使関係――A社の定時社員制度を中心に」『大原社会問題研究所雑誌』No.515,pp.1-17
 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/515/515-1.pdf
□西野 史子 20031000 「若年失業・若年非正規雇用の増大と政策」『一橋論叢』130(4),379-394
□林 祐司 20051008 「正社員登用の運用と展望 「京都府内企業の若年者人材の採用動向等調査」を題材に」社会政策学会第111回大会
 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/sssp/111taikai/hayashi.pdf
□金井 郁 20060300 「企業別組合におけるパート組合員と意思決定過程への関与――正規組合員との比較から」『大原社会問題研究所雑誌』(通号 568),39-55
□金 英 20060604 「日本のパートタイム労働と家族責任に対する社会的排除――大手スーパー企業の改正パート制度に係るジェンダー分析」
 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/sssp/112taikai/F2-2Kim.pdf
□西野 史子 20060331 「パートの基幹労働力化と正社員の労働――「均等処遇」のジレンマ」『社会学評論』56(4),847-863
□梨 昌 200902 「労働者派遣法の原点へ帰れ」『大原社会問題研究所雑誌』No.604,pp.1-8
 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/604/604-01.pdf
□伍賀 一道 200902 「派遣労働は働き方・働かせ方をどのように変えたか」『大原社会問題研究所雑誌』No.604,pp.9-24
 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/604/604-02.pdf
□濱口 桂一郎 200902 「EU労働者派遣指令と日本の労働者派遣法」『大原社会問題研究所雑誌』No.604,pp.25-35
 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/604/604-03.pdf
□岡村 美保子 200910 「労働者派遣法改正問題」『レファレンス』No.705
 http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200910_705/070506.pdf

■メモ

◆働いている人の地位と労働問題

     /無業者(家事をしている者、通学をしている者、その他) *家事労働、ニート
15歳以上
     \有業者―雇われていない人(=自営業者/個人請負contract-based worker) *偽装雇用
        雇われている人(=雇用者)
          会社などの役員(使用する者)executive employee *名ばかり管理職
          役員以外の雇用者(使用される者)non-executive employee
             直接雇用direct hire
               正規雇用・正社員(直接雇用、労働契約の期間の定めがない、フルタイムなど)
                 regular staff (direct hire, permanent, full-time) *周辺的正社員
          ↓---非正規雇用irregular worker---
               パート、アルバイト、契約社員、嘱託
               (part-timer, arveit, freeter(job-hopping),contract employee)
               (直接雇用、有期雇用、パートタイムdirect hire,fixed-term employment, part-time)
                *フルタイムパート/正社員並みに働くフリーター
             間接雇用indirect hire
              (派遣労働〔常用型、登録型〕派遣、請負)
              (dispatched worker〔regular employee, registered employee〕)
              *偽装請負、日雇派遣just-in-time employee, day worker

●「労働者」の定義
◇労働基準法第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
◇労働組合法第3条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

●「就業構造基本調査」の定義
・正規の職員・従業員・・・・・一般職員又は正社員などと呼ばれている者
・パート・・・・・就業の時間や日数に関係なく,勤め先で「パートタイマー」又はそれらに近い名称で呼ばれている者
・アルバイト・・就業の時間や日数に関係なく,勤め先で「アルバイト」又はそれらに近い名称で呼ばれている者
・労働者派遣事業所の派遣社員・・・労働者派遣法に基づく労働者派遣事業所に雇用され,そこから派遣されて働いている者

●いくつかの境界事例
 フルタイムパート(正社員並みの時間働くパートタイマー)
  full-time part-timer
 偽装請負(請負などの非雇用契約を偽装した違法派遣)
  indirect hire disguised as contract agreement
 偽装雇用(偽装個人請負による実質雇用)
   → ◇橋口 昌治 2008/03/31 「偽装雇用の実態と抵抗」[PDF]
  disguised employment
 紹介予定派遣(労働者派遣と職業紹介が重複)
  Temp to Perm
 短期業務請負(労働者派遣と業務請負と職業紹介が重複。日雇派遣またはスポット派遣)
  On-call worker
 派遣労働者で直接雇用義務が発生したのち、有期雇用で直接雇用され雇い止めになる
  ←松下プラズマディスプレイ偽装請負事件訴訟 大阪高裁判決

●管理監督者(いわゆる「管理職」)の定義
 いわゆる「管理監督者」は、労働時間、休憩および休日に関する規定の適用の除外を認められており(労働基準法第41条)、労基法上の時間外割増・休日割増賃金の支払いは不要である。しかし、必ずしも「管理職」=「管理監督者」ではない。
□経営方針の決定に参画し、または労務管理上の指揮権限を有しているか
□出退勤について厳格な規制を受けず、勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか
□職務の重要性に見合う十分な役付手当等が支給されているか
□賞与について一般労働者に比べて優遇措置が講じられているか
■厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」 [PDF]

◆非正規労働の戦後史 History of irregular workers after WWU

●戦後改革における直接雇用の原則の確立と労働者供給事業の禁止、その例外の拡大
「労働者供給事業を行ってはならない」(職業安定法Employment Security Law 44条)
 →社外工制度(the Subcontract System職業安定法施行規則第4条改定(1952)/間)
  主に造船業(shipbuilding industry)や鉄鋼業(iron and steel industry)
 →臨時工制度(the Temporary Workers System トヨタ自工が56年に導入/直・間)
  主に自動車産業(automobile industry)や電気機械器具製造業(electronics industry)
 →寄せ場(yoseba)や飯場における手配師(labor shark)などによる労働力供給
  主に建設業(construction industry)や港湾運送業(harbor transport business)
 →パートタイム労働者(主婦パート。75年から92年まで女性の労働力率上昇/直)
  60年代は主に製造業、オイルショック以降はサービス業(service industry)が増加
 →フリーアルバイター(アルバイト労働をする若者/直)
80年代、外食産業(chain restaurant industry)などサービス産業拡大とともに増加
 →派遣労働者(60年代、マンパワージャパンの進出。86年、労働者派遣法施行/間)
 →業務請負(偽装請負/間)
 →日雇派遣(99年の派遣法改正/間)

◆労働市場の状態(単位 千人 Thousand persons)

 「就業構造基本調査」より
 http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2007/index.htm
*「雇用者」は「会社などの役員」を除いた数

●1987年
 総数97337 有業者/無業者(60502/36836) 自営業主/家族従業者/雇用者(9071/5255/46153)
□雇用者(43064)―正規雇用(34565)
        \非正規雇用(8498)―間接雇用―派遣(87)
                 \直接雇用―パート(4677)・アルバイト(1886)
                       \契約社員(−)・嘱託(730)・その他(1118)

●1992年
 総数102938 有業者/無業者(65756/37182) 自営業主/家族従業者/雇用者(8442/4712/52575)
□雇用者(48605)―正規雇用(38062)
        \非正規雇用(10532)―間接雇用―派遣(163)
                  \直接雇用―パート(5967)・アルバイト(2514)
                       \契約社員(−)・嘱託(880)・その他(1008)

●1997年
 総数106653 有業者/無業者(67003/39650) 自営業主/家族従業者/雇用者(7931/4052/54997)
□雇用者(51147)―正規雇用(38542)
        \非正規雇用(12590)―間接雇用―派遣(257)
                  \直接雇用―パート(6998)・アルバイト(3344)
                       \契約社員(−)・嘱託(966)・その他(1025)

●2002年
 総数109174 有業者/無業者(65009/44165) 自営業主/家族従業者/雇用者(7040/3114/54732)
□雇用者(50837)―正規雇用(34557)
        \非正規雇用(16204)―間接雇用―派遣(720)
                  \直接雇用―パート(7824)・アルバイト(4237)
                       \契約社員・嘱託(2477)・その他(946)

●2007年
 総数110301 有業者/無業者(65977/44324) 自営業主/家族従業者/雇用者(6675/1875/57274)
□雇用者(53263)―正規雇用(34324)
        \非正規雇用(18896)―間接雇用―派遣(1607)
                  \直接雇用―パート(8855)・アルバイト(4080)
                       \契約社員(2254)・嘱託(1058)・その他(1042)

◆雇用形態別雇用者数の推移(単位 万人、%)


役員を除く雇用者
Employed person
正規の職員・従業員
Regular staff
非正規の職員・従業員
Irregular worker
1985
3999
3343(83.6)
655(16.4)
1990
4369
3488(79.8)
881(20.2)
1995
4780
3779(79.1)
1001(20.9)
2000
4903
3630(74.0)
1273(26.0)
2005
4923
3333(67.7)
1591(32.3)
2006
5002
3340(66.8)
1663(33.2)
2007
5120
3393(66.3)
1726(33.7)
2008
5108
3371(66.0)
1737(34.0)
2009
5086
3386(66.6)
1699(33.4)
2010
5071
3363(66.3)
1708(33.7)
*『平成22年版 労働経済白書』p.23の表より
 [PDF]

◆女性に注目した雇用形態別雇用者数の推移(単位 万人、%)


役員を除く雇用者
Employed person
正規の職員・従業員
Regular staff
非正規の職員・従業員
Irregular worker
1985
1463
994(67.9)
470(32.1)
1990
1695
1050(61.9)
646(38.1)
1995
1904
1159(60.9)
745(39.1)
2000
2011
1077(53.6)
934(46.4)
2005
2143
1018(47.5)
1125(52.5)
2006
2194
1036(47.2)
1159(52.8)
2007
2234
1039(46.5)
1194(53.5)
2008
2242
1040(46.4)
1202(53.6)
2009
2242
1046(46.7)
1196(53.3)
*『平成21年版 働く女性の実情』「付表20-1 雇用形態別役員を除く雇用者数の推移」より
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/09.html

■ニュース

◆「雇い止めは解雇権乱用」元講師が河合塾提訴
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091129/trl0911290200000-n1.htm
(産経新聞 2009年11月29日)
 大手予備校の河合塾で数学の非常勤講師をしていた男性(53)が、契約を更新されず、“雇い止め”にあったのは解雇権の乱用にあたるとして、地位確認を求める訴訟を大阪地裁に起こしていたことが28日、分かった。非常勤が大半を占める予備校講師は、直接雇用でなく業務委託や請負とされる例が目立っており、行政が是正を指導したケースもある。原告側代理人は「判決次第では契約形態の見直しが業界に広がる可能性がある」と指摘している。
 訴状によると、男性は非常勤講師として約20年にわたり大阪校などで数学を担当。通常授業や講習、模試の作成に携わっていたが、同僚との交際を巡るトラブルから昨年5月に出勤停止処分を受け、翌6月に契約解除を通告された。
 男性側は、「河合塾は労働法の適用を免れるため建前上、請負などと称して雇用しており、偽装請負に当たる」と違法性を主張。毎年契約を更新してきたことから、常勤の専任講師と変わらない事実上の労働契約があったとしている。  これに対し河合塾は、答弁書などで「生徒数や受験傾向が変動する予備校事業は特殊であり、弾力的な契約が必要」と反論。各講師は指揮命令を受けず創意工夫で授業を行うため、請負契約は正当とし、「仮に雇い止めとしても、裁量が広く認められるべきで違法ではない」と主張している。
 男性は訴訟に先立ち労働審判を申し立て、大阪地裁は5月、河合塾に解決金100万円を支払うよう命じたが、復職が認められなかったため男性が不服を申し立て、訴訟に移行した。
 河合塾をめぐっては、福岡高裁が5月、福岡校の元非常勤講師による地位確認訴訟で、雇い止めは認めなかったものの、「強硬に契約解除を迫った態度は理不尽」として慰謝料350万円の支払いを命じた。これを受ける形で福岡中央労働基準監督署は11月、河合塾に雇用形態の是正を指導した。
 河合塾法務部によると、来年度に是正指導に沿った制度改正を行う予定だが、今回の訴訟については「講師として好ましくない行動を男性がとったことが争点で、契約の性質が論じられるべきではないと考えている」としている。

◆奨学金滞納 不安定な雇用形態
 http://www.nhk.or.jp/news/k10014077612000.html
(NHK 2009年11月29日)
大学を卒業したあと、奨学金の返済を滞っている人の多くが、返済をしている人に比べて収入が低いうえ、アルバイトなどの不安定な雇用形態で仕事をしていることが、奨学金を貸し出している団体の調査でわかりました。
この調査は、国の事業として奨学金を貸し出している「日本学生支援機構」が行ったもので、調査票を送ったおよそ13万人のうち、奨学金の返済が6か月以上滞っている7200人余りと奨学金を返済している3800人余りから回答を得ました。それによりますと、返済が滞っている人では、年収300万円未満の「低所得者」の割合が84%に上っています。返済している人ではその割合が36%にとどまっているのに比べると、「低所得者」の比率がきわめて高くなっています。また、返済が滞っている人の雇用形態は、アルバイトが36%、正社員が31%、無職が16%となっており、返済している人の68%が正社員であるのに比べると、不安定な雇用形態で仕事をしていることが判ります。奨学金をめぐっては、厳しい雇用情勢の中、返済に行き詰まる人が年々増えていると指摘されており日本学生支援機構は「返済を猶予する制度もあるので、経済的に苦しい人は利用して欲しい」と話しています。

◆非正規労働者の失職24万7000人、前回から2500人増加
 http://wol.nikkeibp.co.jp/article/news/20091127/105020/
(nikkei WOMAN ONLINE 2009年11月27日)
 企業の「雇い止め」などで、2008年10月以降に失職したか、2009年12月末までに失職する非正規労働者は合計24万7000人になると、厚生労働省が11月27日に報告した。10月の前回報告から約2500人増えた。11、12月合計の失職者は前回報告より約1400人多く、約2400人になる見通しだ。ただし過去の月に比べると、新たな失職者の数は少ない。
 全国の労働局とハローワークが11月18日までに把握した失職者の数をまとめた。月別にみると10月以降、新たな失職者の数は毎月、前月の半分になり、急速に少なくなる。9月は約7000人だったが、10月は約3500人、11月は約1700人、12月は800人程度にとどまる見通し。ピークの 2008年12月には約4万9000人、2009年3月は約4万7000人が失職したことを考えれば、大幅に減っている。
 失職者を雇用形態でみると、派遣社員が約14万4000人(58%)で最も多いが、全体に占める割合は減っている。以下は契約社員が約5万 6000人(23%)、請負が約1万9000人(8%)と続く。都道府県別では愛知県の約4万1000人(17%)が最も多く、東京都と長野県がそれぞれ約1万1000人(4%)でこれに次ぐ。
 また2008年10月―2009年12月に失職する正社員をみると、100人以上が失職する事業所の合計で約5万4000人。前回から約3000人増えた。

◆労災認定:アルバイトに「過労」 コンビニ残業160時間−−42歳、統合失調症
 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091127dde001040057000c.html
(毎日新聞 2009年11月27日)
月160時間を超える残業をしていた神奈川県在住の元コンビニエンスストアのアルバイト男性(42)が、過重労働が原因で統合失調症を発症したとして労働災害が認定されたことが分かった。長時間・過重労働などを原因とする過労死、過労自殺の労災認定は、増加傾向にあるが、アルバイトなど非正規雇用労働者の過労労災認定は珍しい。長時間労働が正社員だけではなく、非正規まで広がっていることを浮き彫りにした。
男性や労災申請を支援した神奈川労災職業病センターによると、男性は神奈川県内の「サークルKサンクス」で1998年からアルバイトしていた。次第に労働時間が長くなり、もうろうとして働いているところを家族が見つけ、07年11月に仕事を辞めさせた。
申告を受けた労基署は、05年の3月や10月などに月間160時間を超える残業をしている事実をレシートの記録などから確認、「恒常的な長時間労働があり、精神的負荷が強くかかった」ことを原因に統合失調症を発症したとして業務上の災害と認定した。認定は今年9月。
認定では、男性は05年12月以前に発症したとされ、発症から2年近く症状を抱えたまま働いていたことになる。 男性の労働時間を記録したメモによると、この間、月に350〜529時間働いていた。ほとんど、店に寝泊まりして働く状態で、賃金は30万円の固定給与だったという。
男性は現在、リハビリを兼ねて働いている。同センターの川本浩之さんは「不安定な雇用の中で常軌を逸した働かされ方をしている。非正規にまで広がった長時間労働を改めていく必要がある」と話している。
長時間・過重労働を巡る労災に関しては、うつ病など精神障害の労災で、08年度は927件(うち自殺148件)の申請のうち、30〜39歳が303件、20〜29歳が224件と20〜39歳で5割を超えている。08年度は労災認定件数が過去最多だった。
サークルKサンクス広報部は「労災の認定を受けたことは承知しているが、詳しい内容は把握しておらずコメントできない」と話している。【東海林智】

◆派遣労働者 過去最多399万人
 
(読売新聞 2009年11月26日)
2008年度中に派遣労働者として働いた人は延べ約399万人で、過去最高となったことが厚生労働省が集計した速報値でわかった。前年度に比べて4・6%増えたが、増加幅は縮小した。同省では、日雇い派遣大手「グッドウィル」が08年7月末に廃業したことに加え、昨年秋以降の不況も影響したと分析している。 労働者派遣法に基づき、08年度に事業報告書が提出された派遣会社6万6424事業所の状況をまとめた。08年度の派遣労働者数は延べ398万9006人。07年度は延べ381万2353人で、前年度より18・7%増だった。 また、08年度の派遣労働者のうち、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」は281万1987人で前年度比0・6%増だった。
一方、製造業務に派遣された人は08年6月1日現在、約56万人。前年度比19・6%増と大幅に増加し、過去最高となった。同年10月から今年12月までに失職したか、職を失う予定の派遣労働者数は、10月21日時点で14万人超に上っていることが別の調査でわかっている。今回の製造業派遣の集計は、不況の影響は反映されていない。

◆連合が派遣法の抜本改正求め集会を開催
 http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/kumiai/20091127.htm

◆高い『貧困率』 対策は? 非正規雇用 賃金底上げを
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2009112602000069.html
(東京新聞 2009年11月26日)
 国民の七人に一人が生活に苦しんでいることが、政府が発表した「相対的貧困率」(15・7%=調査対象年二〇〇六年)で明らかになり、貧困の広がりが浮かび上がった。特に、ひとり親の家庭は深刻だ。当事者に事情を聞き、国や社会が取り組むべき対策を考えた。(佐橋大)
 愛知県内の四十代の女性は、四年前から夫と別居し、パートで働きながら、中学生と高校生の二人の子どもを一人で育てている。フルに働いても年収は二百万円程度。長男は新聞配達をして生計を助ける。「貯金を崩して生活しているが、将来が不安。進学など子どもの選択肢が狭まらなければいいが」と話す。
 民主党政権になって初めて発表された相対的貧困率は、15・3%(調査対象二〇〇〇年)、14・9%(同〇三年)、15・7%(同〇六年)で推移している。
 経済協力開発機構(OECD)がまとめた二〇〇八年報告書(各国の対象年は、二〇〇〇年代半ば)で国際比較すると、加盟三十国中四位だ。「ひとり親世帯」でみると、貧困率は58・7%にも達する。半数以上が「貧困状態」は、日本だけだ。
 「反貧困ネットワーク」(東京)などによると、終身雇用制を核にした日本型の雇用が一九九〇年代以降ほころびが目立つようになった。派遣など非正規雇用の増加で、雇用保険などの安全網も崩れ、貧困層が増えて正規と非正規、男女間での格差が顕著になっている。
 母子家庭の〇五年の平均年収は二百十三万円にとどまる。母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)の赤石千衣子理事は「ふぉーらむには、半年以上仕事がなく、うつ状態になったとか、ガスを止められて半年以上になる、など深刻な相談が寄せられている」と窮状を示す。
 「貧困」は、あくまで目安。物価の高い都市部ではそれ以上収入があっても生活は厳しい。東京都の地下鉄売店で契約社員としてフルタイムで働く都内の女性(55)の一カ月の手取りは十四万円前後。独り暮らしで、年間所得は約百八十万円で「貧困」ではない。しかし、家賃は六畳に台所で月六万五千円。光熱費や通信費を除くと食費などに回せる金は月四万円ほど。この三年間、衣料を購入していない。将来に不安を感じるという。
      ◇
 労働問題の相談に応えるNPO法人「労働相談センター」(東京)の須田光照さんは「(小泉内閣時代の)構造改革路線で増えた非正規労働者の賃金が低すぎるのが問題だ。例えば、東京都の最低賃金は時給七百九十一円。これでは、フルに働いても生活が成り立たない。最低賃金の引き上げや、正規雇用と非正規雇用の賃金格差の是正を早急に実現すべきだ」と訴える。
 「反貧困ネットワーク」は「政府が率を発表したのは、貧困と向き合う意思を持った表れ」と評価。今後、障害者や高齢者、女性など貧困に陥りやすいグループごとに貧困率を算出し、それを分析することで効果的な対策に結び付けることを提案している。

◆12月18日に最高裁判決 パナソニック系偽装請負訴訟
 http://www.asahi.com/national/update/1127/TKY200911270333.html
(朝日新聞 2009年11月27日)
 パナソニックプラズマディスプレイ(旧松下プラズマディスプレイ、大阪府茨木市)の工場で、違法な偽装請負状態で働かされていた吉岡力(つとむ)さん(35)が同社に雇用関係の確認を求めた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は27日、双方の主張を聞く弁論を開いた。パナソニック側は雇用関係があると認めた二審・大阪高裁判決の破棄を、吉岡さん側は維持をそれぞれ求めた。判決は12月18日に言い渡される。
 二審判決は、吉岡さんを雇っていた請負会社とパナソニック側が結んだ業務委託契約は「脱法的な労働者供給契約」で無効とする一方、吉岡さんとパナソニック側の間には「黙示の労働契約の成立が認められる」と判断した。
 この日の弁論でパナソニック側は「黙示の労働契約の成立は到底認められない」と主張。吉岡さん側は二審判決を「使用関係の実態を踏まえた正当な判断」と評価し、「偽装請負の違法な就労状態についてパナソニック側の責任を否定することは、司法によって脱法行為を積極的に容認することになる」と訴えた。

◆第138回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/s1120-8.html
(厚生労働省)

1.日時
平成21年11月20日(金)9:00〜11:00

2.場所
厚生労働省共用第7会議室(5階)

3.議題
(1)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について
(2)今後の労働者派遣制度の在り方について

配付資料
N0.1-1
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について(概要)(PDF:91KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8a.pdf

N0.1-2
労働者派遣事業の事業報告について(現行制度)(PDF:56KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8b.pdf

N0.1-3
労働者派遣事業の適性な運用の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱(PDF:40KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8c.pdf

N0.2
「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」に係る参考資料 目次(PDF:19KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8d.pdf
項目6(PDF:174KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8e.pdf
項目7(PDF:388KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8f.pdf
項目8(PDF:526KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8g.pdf
項目9(PDF:367KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8h.pdf
項目10(PDF:44KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8i.pdf
全体版(PDF:1,506KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8j.pdf

参考資料
EU指令及びドイツ・フランスの均等待遇に係る規定の概要(PDF:430KB)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1120-8k.pdf

◆集会:非正規労働者が半数の韓国「あしたの日本の姿だ」 脇田教授が危機感 /京都
 http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20091124ddlk26040259000c.html
(毎日新聞 2009年11月24日)
 派遣やパートなど非正規労働者の待遇改善について考える集会が23日、中京区の「せいきょう会館」であり、龍谷大法学部の脇田滋教授(労働法)が「韓国の非正規労働者の闘いに学ぶ」と題して講演した。脇田教授は、非正規労働者が半数を占めるとも言われる韓国の現状を紹介して「あしたの日本の姿だ」と危機感を示した。
 韓国では97年の経済危機後から非正規労働者が増え、全労働者に占める割合は、08年の政府推計でも約35%、労働界推計では54%に上っている。脇田教授は、韓国では「解雇は殺人」と書かれたタオルを掲げる強烈なデモが行われていることなどを紹介した。
 最近は、行政機関で約6万7000人の正規職への転換が実現したり、最高裁が偽装請負について直接雇用を命じる「変化」も表れているという。この判決文は翻訳して日本の同種訴訟で裁判所に提出しているといい、脇田教授は「日韓で似た状況があり、学ぶべきところがある」と話した。【熊谷豪】
毎日新聞 2009年11月24日 地方版

◆派遣労働者の労働条件、ILOが審査へ 申し立て受理
 http://www.asahi.com/national/update/1120/TKY200911200381.html
(朝日新聞 2009年11月20日)
 日本も批准する国際労働機関(ILO)181号条約に定められた派遣労働者の労働条件などが守られていないとして、全国ユニオンが日本政府に対する是正勧告を求めた申し立てについて、ILOの理事会で正式に受理されたことがわかった。理事会内の専門委員会が内容を審査する。最終報告までに通常、1年程度はかかる見通しだ。
 申し立ては、伊予銀行(松山市)で「雇い止め」にあった派遣労働者の雇用継続を巡り、派遣労働者の権利が直接雇用の労働者と同じように保障されることなどを求めた。

◆パートや派遣の問題で提言…弁護士らが全国会議結成
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091122-OYT1T00737.htm
(読売新聞 2009年11月22日)
 弁護士や大学教授など労働法の専門家約140人が22日、「非正規労働者の権利実現全国会議」を結成した。
 低賃金や短期間の契約など、パートや派遣社員らを取り巻く問題について政策提言していくのが目的。
 都内で開かれた結成集会では、生活保護受給者や偽装請負の状態で働いていた当事者が実態を報告。
 今年3月に働いていた銀行から雇い止めされた派遣社員の女性は「書類1枚で簡単に契約を解除できるような働き方が許されるのか」と訴えた。

◆派遣中途解約に賠償判決
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200911210079.html
(中国新聞 2009年11月21日)
 派遣労働契約を中途解約されたのは違法だとして、呉市の女性(39)が派遣元のキャリアセンター中国(広島市南区)に未払い賃金と慰謝料などを求めた訴訟で、広島地裁の曳野久男裁判官は20日、同センターに約134万円の支払いを命じた。
 訴えによると、女性は2007年11月から1年間、同センターと派遣労働契約を結び、広島市内の会社で通訳業務などに就いた。しかし、08年5月末、派遣先の会社の業務量縮小を理由に中途解約された。
 曳野裁判官は「派遣先と同センター間には中途解約条項があったが、契約期間満了前の契約終了があり得ることが女性には明示されていなかった」と指摘。中途解約できるほどのやむを得ない事情もないなどとして、未払い賃金全額の支払いを命じた。慰謝料の支払いは認めなかった。
 原告代理人の鈴木泰輔弁護士は「派遣先の都合で安易に中途で解雇できるという主張を明確に退けた点で評価できる」と話している。一方、同センター側は「判決文を読んでいないのでコメントできない」としている。

◆「中小つぶれる」と猛反発/労政審の派遣法見直し審議/使側、規制強化に抵抗
 http://www.rengo-news.co.jp/news/kiji/091110.htm
(連合ニュース 2009年11月10日)
厚生労働省内で労働者派遣法の見直しを検討している「労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会」が十一月十日開かれ、製造業務派遣の原則禁止や、均等待遇原則の導入などについて審議した。使用者側は相変わらず「原則禁止」に猛反発。派遣を積極的に選ぶ労働者がいるとの従来の主張に加え、「派遣を禁止すると中小企業はつぶれる」という主張を強めている。
長妻厚労相の諮問後、同部会が開かれるのは三回目。年内に結論を出す方向で審議を進めている。
この日も労使の主張は並行線をたどった。中でも、中小企業・団体出身の使用者側委員の鼻息が荒い。
秋山桂子委員(山陽印刷社長)は「中小は知名度がないのでアルバイトを募集してもすぐには人が来ず一カ月はかかる。一時的な仕事を受けられなくなれば倒産・失業につながる」と発言。市川隆治委員(全国中小企業団体中央会専務理事)は「下請へのオーダーは一カ月前にしかこない」と、大手のしわ寄せを受ける中小の苦境を述べつつ、「その間に必要な人数を揃えるというニーズに即応できるのは派遣会社」 と、派遣労働に頼らざるを得ない立場を強調した。同委員は「原則禁止」について「中小企業いじめ法案」と激しい口調で非難している。
普通に働いてもまともに暮らせず、低賃金の派遣労働で働き始めるとキャリアアップが難しい――そんな派遣労働のありようをいかに改善するかが、審議会に課せられた社会の要請だったはず。
労働側の小山正樹委員代理(JAM副書記長)は「企業にとって(派遣が)都合がいいのはよくわかるが、少なくとも厚労省の審議会なのだから、労働者にとってどうなのかをきちんと考えてほしい」とくぎを刺した。製造業での派遣切りが圧倒的多数を占めたことを指摘したうえで、「労働者にとっては直接雇用の方がいい。将来の可能性も出てくる。製造業派遣禁止の方向で取りまとめていただきたい」と要請した。
●常用雇用とは何か
清家篤部会長は「雇用の安定と、派遣元の責任を強化しつつ、臨時的一時的需要にこたえるという点では、対立することではない。派遣元での常用雇用を前提に考えれば、歩み寄りのきっかけになるのではないか。できれば互譲の精神で」と示唆した。
小山委員代理は「『常用』の定義をどうするかが大事。(厚労省の指標などでは『常用』の中に)有期契約もカウントされていて、よくわからない」とし、「期間の定めのない雇用」とするよう求めた。

◆【プレカリアート】派遣労働者らへの連携メッセージ
 http://www.sakigake.jp/p/column/hokuto.jsp?kc=20091118ax
(さきがけ 2009年11月18日)
北斗星(11月18日付)
 「プレカリアート」という言葉がある。耳慣れない響きだろう。不安定を意味するイタリア語の「プレカリオ」とプロレタリアートを合わせた造語であり、労働運動の現場に広がる
▼派遣労働者ら雇用が不安定な人たちへの連携メッセージを込めて語られる。2003年以降、欧州のメーデーで広まったとされる。日本ではワーキングプア問題などを執筆する作家雨宮処(か)凛(りん)さんらが積極的に提唱する
▼その雨宮さんがアドバイザーとなった映画「遭難フリーター」を都内で観賞した。監督は仙台出身の岩淵弘樹さん(27)。山形県内の大学を卒業後、大手人材派遣会社に登録し、今春まで埼玉県内のメーカー工場で働いていた
▼映画は06年4月から1年間の勤務生活を自らハンディーカメラで撮ったセルフドキュメント。月収19万円のうち12万円が社宅家賃や借金返済で消える。ボーナスはない。土日祝日は「あこがれの地」都内で日雇い派遣の仕事
▼正社員以外にはごみ箱も使用させない職場、繰り返す単純な作業。派遣労働者のデモやトークショーに参加してテレビ取材も受ける。負け組って、おれは誰に負けた??と自分に問う。しかし「これも自分の選択の結果」と語り、社会への怒りは影を潜める
▼上映後の質疑応答で「秋葉原無差別殺傷事件の被告と同じ派遣会社で同年代」と述べた岩淵さん。ネット上で見られた被告への同情論は「まったく納得できない」と明言した。限界の中で保ち続けた強い気持ちの表れだろう。
(2009/11/18 09:51 更新)

◆派遣労働者、最大の減少幅 7〜9月、38万人減の102万人
 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091117AT3S1701R17112009.html
(日本経済新聞 2009年11月17日)
 総務省は17日、7〜9月期の労働力調査の詳細集計(速報)をまとめた。派遣労働者は102万人と前年同期比で38万人減り、比較可能な2003年以降で過去最大の減少幅となった。パートやアルバイトは増えたが、非正規雇用者全体で同36万人減と3四半期連続の減少となった。非正規雇用者の就労環境は厳しい状況が続いている。
 7〜9月期の非正規雇用者は1743万人。このうちパートやアルバイトで働く人は1165万人と前年同期比8万人増えた。契約・嘱託社員も同8万人増の 329万人となっており、派遣労働者の減少幅が目立つ。昨年7〜9月はリーマン・ショックの影響が小さく、派遣労働者数が高水準だった反動が出ている。企業が派遣より人件費が安いパートなどにシフトしている点も響いた。
 7〜9月期の全雇用者数(役員は除く)は5112万人と前年同期比52万人減。マイナス幅は縮小傾向にあるが、本格回復には至っていない。(00:33)

◆派遣から直接雇用へ動く 北陸の製造業、派遣法見直し見据え
 http://www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/K20091118304.htm
(富山新聞 2009年11月18日)
 北陸の製造業で、派遣社員を直接雇用に切り替える動きが出始めている。「派遣切り」が社会問題化したことを受け、政府が製造業への派遣を原則禁止とする方針を示したためだ。金沢村田製作所(白山市)は派遣社員約250人の一部で直接雇用への切り替えを検討している。一方、直接雇用にすれば、採用活動を自社で行う必要があり、経費削減を進める各社から負担増を懸念する声が上がっている。
 「現場の作業部分を支えているのは派遣労働者。禁止となれば、工場が正常に機能しない」。金沢村田の担当者は労働者派遣の見直しに危機感を強める。
 リーマンショック後、電子部品の需要急減で派遣社員を大幅に減らした同社だが、中国を中心とした輸出回復に伴い、再び派遣社員を受け入れている。
 同社は年内をめどに派遣社員約250人の一部で直接雇用となる期間従業員への切り替えを検討している。だが、直接雇用に当たり問題となっているのが採用活動だ。
 派遣社員の場合は、これまで派遣会社で労働者の採用を行ってきたが、直接雇用する場合は、自社で採用を行う必要があるという。担当者は「募集から面接を行うコストと人手が増えるのは困る」とする。
 また、同社では大型の受注があった場合、派遣労働者の数を増やして対応してきたが、「採用までに時間が掛かり、急な受注に対応できるかわからない」とし、時間のロスを課題に挙げる。
 ナナオ(白山市)は4〜9月に派遣社員を数十人規模で正社員化した。法改正を見据えた動きではないとするが、「仮に法改正があれば、海外に生産拠点を移管することも視野に入れなければならない」(担当者)としている。オリエンタルチエン工業(白山市)でも、派遣社員数人を直接雇用に切り替えるかどうか検討を重ねているという。
 労働情勢に詳しい金大人間社会研究域経済学経営学系の澤田幹教授は、製造業への労働者派遣が禁止されれば、生産の海外シフトが強まる可能性があると指摘する。直接雇用の労働者が増えれば、企業は雇用調整を行いにくくなり、「東南アジアなど海外に工場を移転する企業が増えるだろう。かえって国内の雇用が悪化するのではないか」とみている。
 中国など新興国向けの需要が増し、電子部品など一部で回復基調が見られる北陸の製造業。しかし、労働者派遣法の見直しで、これまで増産現場を支えてきた派遣社員をフル活用できない状況になれば、コスト面から足を引っ張られかねない。世界的な競争に勝ち残り、生産変動の波を乗り切るためにも、各社は新たな労働体系に知恵を絞ることになりそうだ。
 労働者派遣法の見直し 「派遣切り」が社会問題になったことを受け、民主党などが製造業派遣の原則禁止などの規制強化をマニフェスト(政権公約)に掲げた。鳩山政権で議論が進められており、来年の通常国会に改正案が提出される見通し。

◆「正社員」求め提訴 元請負労働者が三洋電機に
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091116/trl0911161753003-n1.htm
(産経新聞 2009年11月16日)
 三洋電機で請負労働者として働き、昨年6月に契約を打ち切られた男性(47)が「雇用形態が偽装請負に当たる」として、同社などに正社員としての地位確認と慰謝料300万円などを求める訴訟を16日、大阪地裁に起こした。
 訴状によると、男性は三洋電機の下請け会社と業務請負契約を結んでいた会社に所属し、平成17年12月から大阪府大東市にある三洋電機の工場でデジタルカメラの基板設計に従事。19年10月からは別の会社に移籍した上で、同じ工場でテレビの組み立てなどを担当した。直接の雇用関係はなかったが、業務について三洋電機の社員から指示を受けていた。
 男性は昨年、けんしょう炎を発症、手術が必要になり労災申請を申し出たが、所属する会社は取り合わず、三洋電機から契約を打ち切られた。

◆働くナビ:パート労働者の労組加入が増えています。
 
(毎日新聞 2009年11月16日)
 ◇契約・環境、改善を実感
 ◇団体交渉で成果/「労使対等」自信に 全体の5%…組織率なお低く
 パート労働者が労働組合に加入する割合が年々増加している。連合などナショナルセンターが非正規雇用労働者の組合加入の取り組みを強めていることが大きな要因だ。しかし、パート全体に占める組織率は5%で、労組加入へは依然として壁がありそうだ。あるパート労組の結成の経緯と、その後の取り組みを紹介する。
 パート労働者の組合員は08年で約61万6000人。03年時点では約33万人で、その後5年間で約2倍に増えた。労組の組織率が全体的に一貫して下がり続ける中での急増は特筆に値するが、それでも大多数はこれまで組織化されることなく、放置されてきたとも言える。
      *
 そんな中、今年3月に結成されたのが、地下鉄の売店で働くパート労働者で構成される「全国一般東京東部労組メトロコマース支部」(後呂良子委員長)。東京メトロの子会社で作られたパート労組だ。
 パート労働者が労組に入る場合、正社員の労組に入るケースが最も多い。近年、正社員だけを対象にしてきた労組が規約を改正し、パートも加入できるようにするケースが増えているからだ。1人でも加入できる個人加盟の労組に入る例もあるが、パートだけで労組を結成するケースは少ない。
 後呂委員長は「会社の労組に加入したいと言ったんですが『契約(パート)は入れない』と言われたんです」と打ち明ける。後呂さんらパート仲間は、パートの契約が2種類あり、同じ仕事をしているのに賃金や賞与で大きな差がついていることに納得できず、何とかしたいと考えていた。しかし、会社の労組には加入できず、地域労組の全国一般東京東部労組に相談し、自分たちで労組を結成することにした。
 メンバーは結成の際、「労組を作ったらクビになるんじゃないか」と心配した。けれど、自分たちの労働条件にどうしても納得できなかった。1000円の時給は、働き始めからほとんど上がらない。狭い売店で8000個を上回る商品を覚え、効率良くさばく。工夫を重ね、月700万〜1000万円を売り上げる組合員もいる。しかし、努力も工夫も賃金には反映されない。
 地下鉄の通過音やアナウンスの大音量、狭く蒸し暑い売店、座ることも許されない環境、1日の仕事が終わると粉じんで真っ黒になる。そんな労働環境も変えたい。さらに、別契約のパートにはある忌引休暇や食事補助が自分たちにはない。正社員が使える福利厚生施設も使えない。「同じ仕事を同じように一生懸命やっているのに、なぜ扱いが違うのか」。仲間同士の怒りが突き動かした。
      *
 会社との団体交渉で、売店に扇風機を付けさせたり、熱くならない蛍光灯に変えるなど労働環境の改善を勝ち取った。ある組合員は「仕事を失う恐怖もあったけれど、組合を作って職場が良くなった。力を合わせれば変えられると実感した」と笑顔を見せた。契約も3カ月更新だったのを、半年、1年と安定した雇用に変えることができた。後呂委員長は「自分たちの仕事についてきちんとものが言えるようになり、労使は対等だと思えた。これが一番大きい。黙ったままではどんなひどい扱いを受けても何もできない」と話す。
 長い間黙々と働いてきたパート労働者たち。組合活動に取り組むことで、職場の風景を変えつつある。【東海林智】

◆障害者雇用:労組結成、解雇撤回勝ち取る 東京の人材派遣会社勤務24人、団結
 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091113ddm041040102000c.html
(毎日新聞 2009年11月13日)
 「団結して仕事を守ったぞ」。人材派遣会社「フォーラムエンジニアリング」(東京都港区)の製めん事業部で働いていた知的障害を持つ労働者24人が、会社から解雇を通告されたのに対し、労働組合を結成して交渉、解雇を撤回させた。不況が深刻化する中、障害者の解雇が広がっており、組合員は12日に厚生労働省で会見し「雇用は守れる。障害者解雇の広がりに歯止めをかけたい」と訴えた。【東海林智】
 24人は半年ごとに契約を更新する有期雇用で働いてきたが、会社側から10月、事業部閉鎖と期間満了での雇い止めを通告された。会社は不況の影響と、同社の障害者雇用率(従業員数に対する障害者の比率)が2・7%で、24人を解雇しても法定雇用率(1・8%)を上回ることなどを理由に挙げたという。
 このため、「障害者を一人の人として扱わず、数字や物のように扱っている」と、製めん事業部で働く正社員のスタッフ3人とともに「全国一般東京東部労組フォーラムエンジニアリング支部」(間殿友加利委員長)を結成した。労組結成を通告し、団体交渉を申し入れた際、会社側に障害者雇用の社会的意義や重要性を訴えた。これを受け、会社側は今月11日、事業部閉鎖の撤回と雇用維持を労組に伝えてきた。
 間殿委員長は「グループホームや寮に住んでいる仲間は職を失えば生活できなくなる。多くの人々の支援で雇用を守れて本当にうれしい」と話した。
 厚生労働省によると、08年度に解雇された障害者は07年度の約1・8倍の2774人に達し、今年度も例年を上回るペースで解雇が増えている。結成をサポートした東京東部労組の須田光照書記長は「障害者への解雇の嵐が吹く中、みんなで立ち上がれば雇用は守れることを示せたのは大きい」と話している。
 同社の広報担当は「組合の指摘に、企業の社会的責任も改めて認識し、業務体制の再考をするため提案を撤回した」と話している。

◆「すき家」のゼンショーに団交応じるよう命令 都労働委
 http://www.asahi.com/job/news/TKY200911090337.html
(朝日新聞 2009年11月9日)
 東京都労働委員会が、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショー(本社・東京都港区)に対し、アルバイト店員らで作る労働組合との団体交渉に応じるよう命じていたことが9日、わかった。仙台市の店舗で働く従業員らが、残業代が未払いだとして団交を求めていた。
 都労委の命令書などによると、ゼンショーは組合員の一部との契約は業務委託で、雇用する労働者ではないとして団交に応じなかった。だが、従業員は会社のマニュアルに従い、決められたシフトで働いていることから、都労委は労働契約関係にあるとして会社の主張を退けた。同社は「内容を検討中なのでコメントできない」としている。

◆ブラジル人学校 インフル二重苦 子ども看病、休業の親は収入減
 http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009110800047&genre=C4&area=S00
(京都新聞 2009年11月8日)
新型インフルエンザの感染防止に、滋賀県の日系ブラジル人学校が懸命になっている。児童や幼児が感染して学校を休むと、自宅で面倒を見るため親も仕事を休まざるを得ず、不況下で困窮する生活が一層、苦しくなるからだ。校内でのマスク着用を徹底したり、消毒液を購入するため、廃品回収に取り組む学校もある。
幼児から高校生まで約200人が通う近江八幡市出町の日本ラチーノ学院は、小学生以下のクラスで感染が相次いだため、10月30日から11月3日までの5日間、親の手がかからない中高校生約100人を自宅待機にした。感染拡大の防止が目的で、教職員を含め校内ではマスク着用を義務づけ、教室には消毒液を設置している。同学院では、子どもが発熱すると親に引き取りに来るよう要請している。親の多くは、非正規労働者として工場などで働いており、職員の一人は「ただでさえ生活が苦しい中、仕事を休むのは(減収になり)痛いはず」と話す。現在は小学生を中心に1クラスで数人が休み、爆発的な感染拡大には至っていないが、手洗いやうがいを徹底するよう指導を強めている。
71人が通う愛荘町長野のサンタナ学園では、児童一人ひとりに学園が購入した消毒液を持たせている。親の失業で在籍する子どもの半数以上が授業料を払えない状態。学園の負担はさらに大きくなり、中田ケンコ校長は「廃品回収に取り組み、消毒液の購入資金を稼いでいる」と話す。
県の多文化共生地域づくり支援センター(大津市)でも、日系ブラジル人やペルー人からインフルエンザに関する問い合わせがあったことから、県は2日にポルトガル語、スペイン語、タガログ語など5カ国語での相談に応じる「外国語専用ダイヤル」TEL077(522)4776を開設している。

◆セブン社に団交申し入れ コンビニ労組と連合岡山
 http://svr.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2009110520320130/
(山陽新聞 2009年11月5日)
 セブン―イレブン・ジャパン(東京)のフランチャイズ(FC)店主らでつくる労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」(岡山市・池原匠美執行委員長)と連合岡山は5日、同社の井阪隆一社長に対し、団体交渉の申し入れ書を送付した。
 申し入れ書で同ユニオンは、「加盟店主は労働者としての性質が極めて強い」と主張。交渉の窓口設置など話し合いのルール作りを要求している。12日を回答期限とし、応じない場合は不当労働行為として岡山県労働委員会に救済を申し立てる方針。
 同ユニオンは9、10月の2度にわたり交渉窓口を設けるよう申し入れ、同社はいずれも「加盟店オーナーとは労使関係になく、話し合いに応じる考えはない」と回答していた。
 池原執行委員長は「圧倒的に強い立場にあるFC本部に対して、団交でなければ厳しい労働状況を伝えられない」と話しているが、同社は従来の立場を崩していない。

◆損賠訴訟:元派遣社員、2社を提訴 「不当解雇や偽装請負」 /岐阜
 http://mainichi.jp/area/gifu/news/20091106ddlk21040008000c.html
(毎日新聞 2009年11月6日)
 関市の部品製造会社「メイラ」(本社・名古屋市)に派遣され、2月に派遣元から解雇された県内の男性2人が5日、偽装請負状態で働かされた上に不当に解雇されたとして、同社と派遣会社「丸徳産業」(本社・稲沢市)を相手取り、正社員としての地位確認と未払い賃金など約1400万円の損害賠償を求める訴えを岐阜地裁に起こした。
 2人は岐阜市の花木敏訓さん(43)と美濃加茂市の58歳男性。06年6月〜今年2月に丸徳産業と契約し、メイラで部品の出荷作業をしていた。
 訴状によると、2人は派遣元から指示を受けることなくメイラから直接指示される「偽装請負」で勤務し、2月、業績不振を理由に丸徳産業から解雇された。「丸徳産業との業務請負契約は違法で無効。メイラとは事実上の雇用関係が成立していた」として、雇い止めの無効とメイラの正社員の地位確認を求めたほか、丸徳産業に対し、「厚生年金の等級を不当に下げられ、将来受け取る年金額が減少した」として慰謝料の支払いも請求した。
 花木さんは解雇後、非正規の介護職に就いたが、所得は3分の1に減ったという。この日開いた記者会見で「解雇に明確な理由がなく、なぜ自分たちが、という思いが強い。両社は、謝罪などで誠意を見せてほしい」と話した。2社は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。【三上剛輝】

◆公営住宅、単身者OK 「派遣切り」に対応、基準緩和へ
 http://www.asahi.com/housing/news/TKY200911050235.html
(朝日新聞 2009年11月5日)
 国土交通省の政務三役は5日、原則として家族で住む世帯にしか入居を認めていなかった公営住宅の基準を見直し、自治体の判断で単身者の入居を認める方針を決めた。「派遣切り」などで住居を失った単身者への支援に公営住宅を活用しようとしても、国の基準が障壁になって対応が不十分になったと指摘されていた。
 政府の地方分権改革推進委員会が公営住宅の入居基準緩和を求める勧告を出していた。国交省は、単身者への住宅開放などを含む勧告への対応を分権委に回答する。
 公営住宅法は入居資格の一つとして「現に同居し、または同居しようとする親族」と規定している。昨秋以降、失業と同時に社員寮を退去させられるなどして住まいを失う単身者が続出したため、国交省は昨年12月、単身の失業者の入居を一時的に認める通知を出した。しかし、公営住宅法の規定があるため、「本来の対象者の入居を阻害しない範囲での目的外使用」と位置づけられ、空き家を原則1年間だけ開放する限定的な対応にとどまった。
 国交省は公営住宅法の改正も視野に、単身者を事実上排除してきた規定を撤廃する方針。自治体の判断で、単身者でも通常の公営住宅の入居者募集に応募できるようになる方向だ。(津阪直樹)

◆社説:連合 非正規労働の改善こそ
 http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20091104ddm005070035000c.html
(毎日新聞 2009年11月4日)
連合は来年の春闘で初めて組合員以外の非正規雇用労働者に対しても処遇改善などの課題に取り組む方針を決めた。連合が結成されて20年、今年は総選挙で全面的に支援した民主党が政権を取り、政策決定に直接影響力を発揮できる立場となった。組合員の既得権を守るだけでなく、全労働者の3分の1を占めるパートや派遣など非正規雇用労働者の処遇改善に取り組むのは当然である。連合が労働者全体の利益のために責任を果たそうとする組織へと脱皮できるかどうかが問われている。
 失業率は2カ月続けて改善を見せているが、雇用情勢は相変わらず厳しい。政府は年末に向けての緊急雇用対策を発表したが、新たな財源措置はなく、麻生政権の雇用対策の運用改善にとどまるのが実情だ。雇用調整助成金を受けている人は現在約250万人に上るが、年明けから支給期限が切れる人が続出し、新たな雇用創出をしなければ大量の失業者が出る恐れがある。このため大企業はベースアップ(ベア)を求めず賃金水準を維持することを春闘の基本的考え方とした。連合傘下の組合員の8割が働いている中小企業ではベアを求めるが、そうしなければ景況感の改善が見られない中小企業の労働者の賃金水準や雇用自体を維持できないとの危機感があるためだ。
 非正規雇用労働者に関する具体的取り組みとしては、「正規労働者との均等・均衡処遇の実現」「社会保険・労働保険を含む処遇に関する労使協議の徹底」を挙げる。どの企業でどのくらいの非正規雇用労働者が働いているのか労使とも基本的なデータがないのが実情で、雇用契約のない人に関する労使交渉ができるのかどうかも議論が分かれる。しかし、連合は「既存組合が労使交渉のテーブルに載せなければ解決の緒に就かない」との強い意志を示し、労使交渉を拒否した企業名を公表することも検討している。
 労組に入っている人は雇用労働者の18・1%に過ぎず、連合も発足当初の800万人から現在は675万人にまで減った。自民党の小泉政権下では経済財政諮問会議などで経営側の意向が政策決定に強く反映されるようになり、連合の存在意義は低下していくばかりだった。民主党政権の誕生と時を同じくして新会長に就任した古賀伸明氏は「18%の利益を追求するのではなく、働く者全体の幸せをどう追求するかで国民の共感を呼ぶかどうかが決まる」と話す。正社員、大企業、官公労の意見を代弁する組織から、すべての労働者の声を反映する組織を目指すというのである。春闘も業種別の闘争よりも、働き方ごとの取り組みへ変わる必要があるのではないか。

◆「労働者派遣法規制強化反対論に対する意見」
 http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028a.html
(日本労働弁護団 2009年10月28日)
幹事長 小島 周一
第1 はじめに

民主・社民・国民新党の3党連立政権は「雇用対策の強化」を重点課題とし、その一環として、『登録型派遣』の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、違法派遣の場合の『直接雇用みなし制度』の創設、マージン率の情報公開など派遣法の規制を強化し、『派遣業法』から『派遣労働者保護法』に改めることを内容とする「労働者派遣法の抜本改正」を政策合意として確認した(以下「3党案」という)。しかし、労働者派遣事業の業界団体のみならず、厚生労働大臣の諮問機関である「今後の労働者派遣制度のあり方についての審議会」(労働政策審議会職業安定分科会)においても、3党案を批判し、派遣法の規制強化に反対する意見が述べられている(以下「反対論」という)。さらに、こうした意見に無批判に同調するマスコミ報道もあり、ミスリードに拍車を掛けている。反対論は、派遣労働者の置かれている現状をことさら無視し、労働者派遣法の規制強化をめぐるこれまでの議論の流れに逆行するものであり、到底容認できるものではない。そこで、日本労働弁護団は、反対論に対し以下のとおり反論する。
第2 規制強化に反対する意見の趣旨・内容

労働者派遣法の規制強化反対論の内容は概ね次のとおりである。
反対論@ 「労働者派遣法の規制強化(特に登録型派遣の禁止)は就労機会の喪失につながり、失業をもたらす」。
反対論A 「派遣法の規制強化(特に製造業派遣の禁止)は、人件コストの安い海外への企業流出を招き、国際競争力を損なう」。
反対論B 「派遣労働者が『派遣』という働き方を求めている。特に子育て中の女性は仕事と育児・家事の両立のため、(登録型)派遣がよいと考えている。
反対論C 「貧困の問題は社会保障制度の問題である。派遣法の規制強化は貧困の解決につながらない」。
第3 基本的視点

雇用の原則は「直接雇用」・「期間の定めなし」である。労働者派遣制度は、中間搾取の禁止、不安定雇用の防止という労働者保護の観点から職業安定法により罰則付きで禁止されている「労働者供給事業」の例外として、厳格な要件のものとで法認された制度である。労働者派遣制度の議論にあたっては、その前提として、雇用は本来直接・無期限であることが原則であり、間接雇用、有期雇用は、それを客観的に必要かつ合理的とする特段の事情がある場合に限り許されるものであること、労働者派遣制度は「間接雇用」と「有期雇用」という二重の不安を抱える点で極めて問題のある制度であり、労働者保護の観点から厳しい規制が必要とされることが確認されなければならない。
第4「反対論@ 派遣法の規制強化は失業をもたらす」に対する反論

1、反対論は、派遣規制の強化の動きやそれを見込んで直接雇用への切り替えを進める産業界の対応により,派遣規制の強化は就労機会の減少につながると主張する。
しかし、規制強化によってなくなるのは、禁じられることになる登録型の一部や製造業における派遣という形態での雇用であり、労働者派遣制度そのものがなくなるわけではない。また、規制強化によって、労働者の就業機会そのものがなくなることはない。現に、2008年年末、大量の「派遣切り」を行った大手自動車メーカーが、1年もたたず直雇用の期間工を1000人規模で募集している。むしろ、労働者派遣法の抜本的規制強化は、派遣労働者の現状を改善し,派遣労働者から直接雇用労働者に移行させることで,労働者の雇用安定と労働条件改善に直結するものである。すなわち、派遣業務や派遣期間を限定して強く規制すれば,派遣先はそれまでの派遣労働ではなく労働者を直接雇用して使用するようになるから,直接雇用労働者数が増えて派遣労働者数が減る。また,たとえば,違法派遣や偽装請負の場合の雇用みなし規定があれば,その派遣労働者は派遣先に直接雇用されることになり,派遣労働者特有の地位の不安定さはなくなり,派遣会社の中間搾取もなくなるから賃金も増加する可能性があり,現状が改善されるのである。反対論は、派遣規制を強化すれば失業が増えるかのような、また、派遣を規制しても労働者の利益にならないかのように述べるが、これらの見解は、これまで派遣法を含む労働法制の規制緩和を推し進めてきた市場原理主義論者の見解(解雇規制が厳しすぎるから雇用が増えない,解雇や派遣の規制緩和で雇用が増えて労働者の利益になる)とまったく同じ理論である。労働法制の規制緩和を推し進めた結果が今日の労働者の劣化した地位や労働条件として示されているというのに,規制緩和を推し進めたのと同じ論法で派遣の規制強化に反対するというのはあまりにも議論の過程や派遣労働者の置かれている現状を無視するものである。
2008年11月の金融危機を契機に、失業率は増加の一途を辿っているのであり、すでに失業問題は社会問題となっている。こうした失業者の大多数が派遣労働者をはじめとする非正規労働者であることは2008年末の派遣村の惨状及び厚労省調査から明らかである。2008年10月から2009年12月に職を失ったか、失う予定の非正規雇用の労働者は、23万8752人に達し、うち14万1719人は、派遣労働者であり、非正規全体の59%を占める(「(平成21年9月速報)非正規労働者の雇止め等の状況について(厚生労働省)」)。非正規労働者の中でも真っ先に使い捨てされるのは「派遣労働者」なのである。 

2、この点、反対論者は、派遣村に象徴される大量の派遣切りは2008年末の金融危機による一過性の事態であると主張するが間違いである。格差と貧困にあえぐ派遣労働者が大量に生み出されたのは、労働者派遣法の制定と改定(1999年の派遣対象業務の原則自由化、2003年の製造業派遣の解禁)に起因しているのであり、生活を維持できる安定した収入を得ることができ、また、やりがいをもって働くことのできる適正な雇用の形態になることを怠ってきた立法政策に原因がある。また、労働者派遣制度の深刻かつ根本的な問題は、低賃金の雇用調整弁として位置づけられ、景気の変動により安易に職を失い、能力開発の機会にも恵まれず、雇用保険などの社会保障制度からも排除する、そういった雇用が大量に生み出されていく危険を構造的に内在していることにある。年末の大量の派遣切りは、まさにこうした労働者派遣制度が孕む構造的な問題点が一気に顕在化したのであり、決して、一過性のものではない。
第5「A 派遣法の規制強化は国際競争力をそこなう」に対する反論

1、反対論は、人事管理コストの削減や景気変動による雇用調整弁を維持する必要があり、登録型派遣や製造業派遣を禁止すれば、低価格競争に勝てず、企業が人件費の安価な海外へ流出することになるから国際競争力を損なうと主張する。しかし、人件コストの削減や景気変動による雇用調整については、企業はこれまでも直接雇用の臨時工で対応してきた。企業は、直接雇用の臨時工を雇用責任を負わない派遣労働者に置き換えたにすぎない。
 
2、そもそも、労働者派遣は、派遣会社に収益をもたらすことになっても、企業の人件コストの大幅削減にはつながらない。労働者派遣事業の年間売上は平成15年度の2兆3614万円から平成19年度は6兆64652万円とこの5年で3倍近く売り上げを伸ばし、労働者を商品としてレンタルすることで空前の利益を上げている(「労働者派遣事業の平成19年事業報告の集計結果(厚労省)」)。いうまでもなく、労働者派遣事業の売上の大部分は企業が派遣会社に支払う手数料(マージン)である。こうした手数料は本来、労働者が直接雇用されていれば「給与」として支給されていたものである。すなわち、企業は、直接雇用する労働者に支払うべき賃金相当額を「手数料」として派遣会社に支払っているにすぎないのである。

3、また、国際競争力の強化には優れた人材の育成が必須である。しかし、労働者派遣制度は、賃金の安い雇用調整弁としての労働者を前提とする制度であり、企業が長期的観点から労働者の能力開発を行うことは想定されていない。労働者派遣制度のもとでは人材育成は不可能であり、かえって、国際競争力の低下につながるのである。

4、さらに、国際競争力の強化は各国の共通課題であるところ、ドイツ、フランスなどのEU諸国や韓国の労働法制においては、派遣労働を一時的・補助的性格の雇用と位置付け、派遣労働者の利用事由、派遣期間、更新回数を厳格に限定し、期間制限違反や対象業務違反など法規制に反する違法派遣があった場合は、派遣先企業と労働者との間に直接雇用契約が締結されたものとみなす規定が置かれている。日本の現行労働者派遣制度は、利用事由の制限もなく、また、きわめて厳しい要件のもと、期間制限違反の場合にかぎり派遣先企業は直接雇用の申込み義務ないし直接雇用の努力義務を負うに留まる。現在議論されている3党案の内容はこれら先進諸国と同程度の規制内容を定めるにすぎず、むしろ非正規労働者をめぐる労働法制の国際基準に沿うものである。

以上により、派遣法規制強化が国際競争力を損なうことにはならない。
第6「B 派遣労働者が「派遣」という働き方を求めている」に対する反論

1、反対論は、労働者自ら「派遣」という働き方を求めているのであり、規制強化(特に登録型派遣の原則禁止)は、労働者のニーズに沿った多様な働き方を奪うものであると主張する。しかし、派遣労働者の多くが正社員雇用を希望していること、やむを得ず「派遣」を選択せざるを得ない状況にあることは政府の統計資料から明らかである。まず、「平成20年派遣労働者実態調査(厚労省)」によれば、将来の働き方の希望として、派遣労働者の23.3%が「派遣社員ではなく正社員として今の派遣先の事業所で働き続けたい」、17.5%が「派遣社員ではなく、正社員として今の派遣先以外の事業所で働き続けたい」と回答しており、合計40.8%が正社員として働くことを希望している。また、派遣労働者の23.3%が「常用雇用型の派遣社員として今の派遣先で働き続けたい」と回答し、雇用の安定を願っている。一方、「登録型の派遣社員として自分の都合のよい時に働きたい」と回答したのは6.2%と極めて少数に留まる。また、「平成19年就業形態の多様化に関する総合実態調査(厚生労働省)」によれば、現在の就業形態を選んだ理由について、派遣労働者の37.3%は「正社員として働ける会社がなかった」と回答し(契約社員は1.58%、パートタイム労働者は12.2%)、また派遣労働者の51.6%は「他の就業形態に変わりたい」と希望している。「他の就業形態に変わりたい」と希望している労働者の90.9%(前回84.6%)は正社員を希望している。

2、また、労働者派遣法は、常用代替防止の観点から、派遣可能期間を原則1年(最長3年)に制限しているが(労働者派遣法40条の2)、期間制限を越えた違法な状態で長期就労していた派遣労働者が、派遣先企業に直接雇用を求めたり、派遣元に損害賠償を求める裁判が各地で提起されている(日本労働弁護団「派遣酷書」)。これら派遣労働者の多くは、派遣元および派遣先企業から「派遣でも更新が前提だから」、「長期間働いてもらいたい」などと告げられ、その言葉を信頼し、長期雇用を期待していたものである。
反対論者の主張は、派遣労働者の多くが正社員としての雇用を希望していること、やむを得ず「派遣」という働き方を選択せざるを得ない現状にあることを直視せず、あたかも労働者が自ら積極的に派遣労働を望んでいるかのような虚偽の事実を描き出し、巧妙に問題のすり替えを行っているにすぎない。そもそも、企業の都合によっていつでも職を失ってよい、長期間勤務しても低賃金のままでよいと望む労働者などいないのである。

3、また、反対論は、子育て中の女性は仕事と育児・家事の両立のため、(登録型)派遣がよいと考えていると主張する。こうした反対論は、女性労働者イコール家計補助者と見なし、低収入・不安定雇用の派遣労働者に留め置こうとするものであり、そこには、子を持つ女性が、正社員として就労し続ける社会を実現しようとする発想は皆無である。 女性労働者の7割は第一子出産後に離職している。また、女性の育児休業取得率は9割に達している。一方、男性労働者の約3割は育児休業を採りたいと考えているが、実際の取得率は1.56%であり、男性が子育て・家事に費やす時間は先進国中最低レベルである。また、女性労働者の7割は非正規労働者であり、派遣労働者の6割は女性である。母子家庭の平均年収は213万円と全世帯の平均収入(563.8万円)の37.8%しかない(「平成18年度全国母子世帯等調査結果報告(厚労省)」)。派遣労働者の過半数が正社員雇用若しくは長期雇用を希望していることを考慮すると、これらの統計数値は、(1)子育て中の女性が、@労働時間や勤務日数との関係で、正社員として就労し続けることができないこと、A短時間・短日数勤務を実現する手段として「(登録型)派遣」選択しているにすぎないこと、(2)女性の派遣労働者の多くは、扶養家族を有する家計の中心的担い手でありながら、基本的な生活を営むことが難しい賃金水準や不安定な収入状態に留め置かれていることを示している。
労働時間の長短と労働契約期間の限定は別次元の問題であるし、また、正社員での短時間勤務や直雇用のパート就労によってワークライフバランスの実現は可能である。子を持つ女性が正社員として就労を継続できる社会・労働政策の実現こそが喫緊の課題なのである。
第6「C 派遣村に象徴される貧困の問題は社会保障制度で解決すべきであり、派遣法の規制強化は問題解決につながらない」に対する反論

1、反対論は、派遣村に象徴される貧困の問題は社会保障制度で解決すべきであり、派遣法の規制強化は問題解決につながらないと主張する。
しかし、ワーキングプア拡大の要因は、聖域なき構造改革の名の下、雇用の基本原則を無視した労働市場の規制緩和により、多くの企業が恒常的業務について正規雇用労働者を低賃金・不安定雇用の非正規労働者への置き換えを進めたこと、終身雇用を前提とするそもそも脆弱な社会保障制度のもとでさらなる社会保障費の削減が重なったことにある。2009年6月末に厚生労働省が公表した2009年版労働経済白書(「平成21年版 労働経済の分析」)においても、1990年代以降の2回の景気後退と比べ、今回の景気後退では、正規労働者については残業規制、休日・休暇の増加、配置転換等の雇用調整で雇用が比較的維持されている一方、非正規労働者の雇止めや解雇が増加した事実を指摘したうえで、その背景に、賃金水準が低く能力開発の機会に恵まれない非正規労働者の増加があると分析し、労働者の非正規化と貧困の問題が相互に関連する問題であることを認めている。だとすれば、貧困問題の解決のためには、社会保障政策の強化のみならず、労働者派遣法の抜本改正を含め非正規労働に関する労働政策・労働法制の見直しは必須である。

2、特に、労働者派遣制度が貧困の温床となっていることは統計資料から明らかである。
まず、「平成20年派遣労働者実態調査(厚労省)」によれば、派遣労働者の9割が、生活を賄う収入源について「自分自身の収入」と回答している(次いで「配偶者の収入」31.5%、「親の収入」19.3%)。一方、パートタイム労働者では「自分自身の収入」が28.6%であり、「配偶者の収入」が56.4%である(「平成19年就業形態の多様化に関する総合実態調査結果(厚労省)」)。また、「平成19年就業形態の多様化に関する総合実態調査結果(厚労省)」によれば、1ヶ月(調査対象平成19年9月)の賃金総額について、正社員では、20〜30万円未満が39・0%(前回33.3%)と最も多いが(次いで「30〜40万未満」が25.5%(前回25.23%)、40〜50万円未満13.8%(前回10.3%)である)、派遣社員の42.2%(登録型49.6%、常用型34.6%)は「10万円未満」である(次いで「20〜30万円未満が36.8%、「10万円未満」および「30万円〜40万円未満」がそれぞれが8.8%)。これらの統計数値は、派遣労働者の大多数は、家計の中心的担い手であるにもかかわらず、派遣労働という就労形態ゆえに生活を維持することも困難な収入しか得られていない惨状を示している。
3、 生活保護水準と言われる年収200万円以下で働く民間企業の労働者は、1995年の793万人から2006年には1000万人を超え(1023万人)、2008年には1067万人と給与所得者の2割を超えている(国税庁平成20年分民間給与実態統計調査)。また、「労働者派遣事業の平成19年事業報告の集計結果(厚労省)」によれば、派遣料金について、一般労働者派遣事業の平均料金は14,032円と前年の15,577円より9.9% 減少、特定労働者派遣事業の平均料金は20,728円と前年の22,948円より9.7%減少し、派遣労働者の賃金については、一般労働者派遣事業における派遣労働者の平均賃金は9,534円と前年の10,571円より9.8%減少、特定労働者派遣事業における派遣労働者の平均賃金は12,997円と前年の14,156円より8.2%減少している。一方、労働者派遣事業の年間売上は平成15年度の2兆3614万円から平成19年度は6兆64652万円とこの5年で3倍近く売り上げを伸ばしている。労働者を商品としてレンタルする労働者派遣事業により業界団体が空前の利益を上げる一方、派遣料金の買いたたき、値崩れが進み、派遣労働者の生活は貧困の一途をたどっているのである。
第7 結語
以上のとおり、派遣労働者保護のための規制強化に反対する意見は、もっぱら企業の理論にすぎず、派遣労働者のおかれた惨状が労働者派遣の制定とその後の規制緩和に起因する構造的な問題であることをまったく認識していないのであり、断じて許容できない。日本労働弁護団は、規制強化反対論に抗議するとともに、労働者派遣法の規制強化の早期実現を要請するものである。
以上

◆【働く 暮らしを守る】(3)司法も解決できぬ現実
 http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/091029/sty0910290043000-n1.htm
(産経新聞 2009年10月29日)
派遣社員だからこそ、不良品は出すまいと心に決めていた。それに、1ミクロン単位の誤差を許さぬトップメーカーの技術力に貢献しているという誇りがあった。「正社員にできない難しい工程を任せている」。工場幹部からそう言われたことは何度もある。
岐阜県内のベアリング製造工場で勤務していた30代の男性に、派遣元から大幅な人員削減が記された解雇予告が届いたのは、昨年10月のことだ。リーマン・ショックから1カ月余り。派遣期間は残り5カ月あったが、製造業の現場は容赦なかった。11月末、予告通り行われた派遣切りは100人規模にのぼったという。
3年余りの勤務で、態度や技術に問題があった記憶がない。「なぜ自分なのか」。納得がいかなかった。むしろ、勤務時間を漫然と過ごし、トラブルが起きても「何とかしろ」と派遣社員に丸投げしていたのは正社員の方だ。正社員の作った不良品を、面目をつぶさぬよう、こっそり研磨し直したこともあったのに。
年が明け、同じ工場で派遣切りにあった年配の女性と、ハローワークで偶然再会した。個人加盟できる労働組合に入って会社側と団体交渉をしていると聞き、心が動いた。だが、労組の中心メンバーの返事は意外だった。「やめた方がいい」。交渉は進んでおらず、後悔すらしているが、人を誘った手前抜けられないという。男性は困り果てた。

正社員と派遣社員。立場が違うだけで解雇が決まってしまう。その「見えない壁」を男性は感じた。男性のように働く側が直面するトラブルは多い。派遣切りを含む解雇や退職勧奨、パワハラ、内定取り消し…。それらを解決するための手立てをみる。
まず労働組合で解決できなければ、厚生労働省が全国約700カ所に置く総合労働相談コーナーが、最初の「入り口」だ。平成20年度の相談件数約108万件のうち労使間のトラブルは約24万件。この6年間で約2・3倍になった。
都道府県労働局による紛争調整委員会に訴える方法もある。弁護士などの民間委員が労使双方の訴えを聞いた上で斡旋(あっせん)案を提示する。20年度は8457件を受理した。1回で決着がつく上に無料だが、強制力はない。
次は、司法制度改革で18年に始まった地方裁判所の労働審判。受理件数は昨年1年間で2052件。今年は8月でその数を超えた。民間の審判員2人と裁判官1人が原則3回で決定を下す。福岡地裁が今年4月、元学生の内々定を取り消した会社に75万円の支払いを命じたのも労働審判だ。
ここでも決裂すると、民事訴訟となる。ただ、労働問題専門の裁判所がある諸外国に対し、龍谷大学教授の脇田滋(労働法)は「日本の労働裁判は少なすぎる」と指摘する。

独立行政法人「労働政策研究・研修機構」によると、労働問題専門の裁判所があるドイツ、フランスは2002年でそれぞれ1万件、17万件の訴えを受理している。日本は労働審判分をあわせても18(2006)年で約3千件を超える程度だという。
なぜ、これほど「差」が生まれるのか。単純な比較はできないが、脇田は「日本の場合、労働問題は複雑で手間がかかる割に離婚や相続などと比べ成功報酬が低く、弁護士は受任を敬遠しがちになる。さらに派遣社員など立場の弱い労働者ほど金銭的な余裕がない。まず、弁護士までたどり着けない」と解説する。
冒頭の男性に話を戻す。
労働組合に頼れなかった男性は、知人のつてをたどって労働問題に関心のある弁護士と巡り合った。男性は「それも、これも違法と言われて驚いたが、心強かった」と振り返る。
弁護士は、労働者派遣法で定められた上限3年を超えると受け入れ側が直接雇用しなければならないという「派遣期間」に着目。男性は今年5月、メーカーと派遣会社に直接雇用と慰謝料などを求める民事訴訟を岐阜地裁に起こした。
再び職場に戻るのが理想だが、判決まで1年以上かかる可能性を考えれば、裁判で戦いながら無職のまま過ごす現在の生活は苦しい。たとえ勝訴しても、訴訟沙汰になった企業で満足に働けないとも思う。それでも司法の場で戦う理由を、男性は「労働者を簡単に切れると会社に思ってもらいたくないから」という。
職場に存在する「壁」、弁護士に至るまでの労力と時間という「壁」。そして法律でも解決し得ない「壁」…。働く者を囲む「見えない壁」は多く、その現実はあまりに厳しい。(敬称略)

◆パナ電工派遣の男性、雇い止め無効と労働審判 三重
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091028/trl0910282051020-n1.htm
(産経新聞 2009年10月28日)
 派遣先のパナソニック電工(大阪府門真市)を「雇い止め」されたのは、長期間勤務しており、すでに正社員の地位があり無効だとして、三重県の男性(28)が同社と派遣会社「アロービジネスメイツ」(大阪市)に地位確認や慰謝料330万円などを求める労働審判を28日、津地裁に申し立てた。パナソニック電工は「正式な内容を確認してから対応したい」としている。
 申立書によると、男性は平成15年7月、パナソニック電工の社員と事前面接して契約。当時は製造業は派遣が禁止されており、契約書では「調査」や「研究開発」となっていた。しかし実際には、男性は三重県四日市市の工場で部品の試作品をつくり耐久性をテストする仕事をしており、製造業務に当たると主張。男性は期間満了で今年3月に雇い止めになった。男性は「5年8カ月も働いた。雇い止めになった説明が聞きたい」と話している。

◆派遣法改正に向け論点提示 労政審、登録型の扱い議論
 http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102701000783.html
(共同通信 2009年10月27日)
 労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働力需給制度部会が27日開かれ、労働者派遣法の改正案を検討した。鳩山政権が公約に掲げる製造業派遣の原則禁止などを検討するための論点が事務局から示された。
 論点では、派遣会社に登録をして仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」と製造業派遣について、原則として禁止した場合に例外とする業務をどのように設定すべきかなどの問題を提起。契約期間の短い「日雇い派遣」では禁止する雇用期間を30日以内とするか、2カ月以内とするかの案が示された。
 部会では、登録型派遣の扱いを中心に議論。労働者側は「登録型は細切れの仕事が多く、雇用が不安定だ」と原則禁止を求めたのに対して、経営者側は「短期で働きたいという人もいる。法律で禁止するのはおかしい」と反発。議論は平行線をたどった。
 派遣元が受け取っているマージンを派遣労働者に示すべきかどうかや、有給休暇取得などを理由とする不利益取り扱いの禁止規定を設けるかどうかについても論点で示された。
 鳩山政権は製造業派遣の原則禁止以外にも、登録型派遣の原則禁止や、日雇い派遣の禁止を打ち出している。派遣の規制を強化することで、非正規労働者の雇用安定に結び付ける。年内に結論をまとめ、来年の通常国会に派遣法改正案を提出する考え。ただ経営者側は強く反発しており、議論が難航する可能性もある。

◆「派遣切りで苦痛賠償を」 仙台の女性労働審判申し立て
 http://www.kahoku.co.jp/news/2009/10/20091024t13031.htm
(河北新報 2009年10月24日)
 派遣切りで精神的苦痛を受けたとして、仙台市若林区の女性(41)が23日、派遣元の人材派遣会社テンプスタッフ・カメイ(仙台市)と派遣先の三井住友銀行(東京)に計288万円の損害賠償を求める労働審判を仙台地裁に申し立てた。
 申立書によると、女性は2006年2月、同行東日本ブロック仙台オフィス(青葉区)に派遣され、営業担当者の業績集計や支店長会議資料の作成などに従事した。08年12月、派遣元の担当者から契約を更新しないと告げられ、09年1月に派遣を打ち切られた。翌月には同じ部署で別の派遣社員が働き始めた。
 女性側は「派遣労働者の差し替え行為は労働者派遣法に違反する。女性は悪口も言われ、精神的苦痛を受けた」と主張している。テンプスタッフ・カメイと三井住友銀行広報部は「申立書を確認していないのでコメントできない」としている。

◆「派遣労働のどこが問題か」
 http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/top/index.html
(日本の論点PLUS 2009年10月22日)
民主党は衆院選のマニフェストに労働者派遣の規制強化を掲げた。厚労相の諮問機関である労働政策審議会では、今月から、製造業派遣や登録型派遣の原則禁止の検討をはじめた。しかし規制の強化は、経営者側にはもちろん、労働者側にも異論が出ている。労働者の権利を守り、かつ多様な働き方を可能にするシステムはあるのか――二人の論客が「派遣」という働き方をめぐって激論!

好きなときに好きなだけ低賃金労働を調達できる派遣制度など亡国の手法
鎌田慧 (ノンフィクション作家)
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/ron/09/027/r09027BNA1.html
派遣は悪ではない――規制強化より派遣を活用する労働者の保護強化を
八代尚宏 (国際基督教大学教授)
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/ron/09/027/r09027BNB1.html
[非正規雇用についての基礎知識]
派遣法規制強化で非正社員はどうなるのか?
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/ron/09/027/r09027DFA1.html

◆派遣法の抜本改正を求める有識者声明
 http://hakenunion.blog105.fc2.com/blog-entry-70.html
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派遣法抜本改正の早期実現を求める!
歴史的な政権交代にあたって
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私たちは、昨年11月4日、旧自公政権与党の内閣が閣議決定した派遣法改正法案に反対して、「みせかけではない抜本的な改正を求める」声明を発表した。旧政権の派遣法改正案では、日雇い派遣を全面的に禁止することにはならず、最も問題の多い登録型派遣をそのまま残すなど、重大な欠陥があったからだ。
昨年秋のアメリカ金融危機に端を発した世界同時不況は、ひとたび不況期に突入すれば真っ先に派遣労働者が切り捨てられ、仕事と住まいを奪われた労働者が生存の危機に陥れられることを明らかにした。「働き方の多様化」という名目で進められてきた派遣制度の規制緩和の真相は、労働者をいつでも雇用の調整弁として使い捨てることができる状態に置き換えていくことにあったことが露呈された。
使用者は生産調整に伴う雇用調整のリスクを回避するために、直接雇用を「雇わずに働かせる」(非雇用の)派遣に置き換えた。派遣労働者を雇用する派遣会社もまた、雇用調整のリスクを回避するために、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣に依存した。結果として、必要なときだけ必要な労働力を調達し、いらなくなったら切り捨てる、労働力の「ジャスト・イン・タイム」が横行した。あらゆる産業において生じる繁閑の波は、すべて労働者にしわ寄せされ、働く者が安心して生活できる環境は奪われた。
しかし、未だに派遣法改正はなされていない。現在も失業率は戦後最悪の状態であり、完全失業者数は360万にも上り、潜在的にはそれ以上の失業者が溢れている。貧困と格差社会が到来し、働くことに希望を見出せない多数の労働者を生み出した。これはわが国の社会正義と人権の問題である。このような悲惨な雇用情勢を一刻も早く改善し、安易な派遣切りや年越し派遣村のような事態を二度と繰り返さないために、早期に労働者派遣法の抜本改正を実現することが必要である。
民主・社民・国民新党の連立内閣は、9月9日の「連立政権樹立にあたっての政策合意」において、雇用対策の強化の筆頭に「労働者派遣法の抜本改正」を掲げ、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」に改めること、「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止にとどまらず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とすること、製造業派遣も原則禁止すること、違法派遣の場合の派遣先との直接雇用みなし制度を創設すること、マージン率の情報公開を実現することとしている。
日本で働く労働者の失業不安を払拭し雇用の安定を取り戻すためには、何よりもまず労働者派遣法の抜本改正を行うことが必要であり、私たちは、政府と国会が一刻も早く労働者派遣法の抜本的な改正を成し遂げることを強く求める。
2009年10月21日
労働者派遣法の抜本改正を求める有識者会議

雨宮処凛(作家)/魚住昭(ジャーナリスト)/宇都宮健児(弁護士・反貧困ネットワーク代表)/鎌田慧(ルポライター)/木村達也(弁護士)/小島周一(日本労働弁護団幹事長)/後藤道夫(都留文科大学教員)/斎藤貴男(ジャーナリスト)/佐高信(評論家)/堤未果(ジャーナリスト)/中野麻美(弁護士/派遣労働ネットワーク代表)/湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)

◆フジワークに事業改善命令
 http://www.sankei-kansai.com/2009/10/22/20091022-015987.php
(産経新聞 2009年10月22日)
 厚生労働省大阪労働局は21日、労働者派遣会社「フジワーク」(大阪府高槻市、白石純一社長)が契約手続き不備などの法令違反で是正指導を受けた後も同様の違反を繰り返したとして、労働者派遣法に基づく事業改善命令を出した。
 大阪労働局によると、同社は派遣契約の書類に時間外労働の時間数を正しく記載しないなどの法令違反を繰り返し、同労働局が昨年7月、全契約の点検や是正を指導。同社は同9月、同労働局に是正を終えたと報告したが、その後も同様の違反が続いていた。
 フジワークは「再発防止の改善策を実行する」と話している。

◆中国人研修生3人への残業代支払いで調停成立 山口
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091020/trl0910202147020-n1.htm
(産経新聞 2009年10月20日)
 縫製技術を学ぶために来日し、山口県防府市の会社で研修中だった中国人女性3人が「技術指導もなく、低賃金で長時間労働を強いられた」として未払い賃金の支払いなどを求めた労働審判が20日、山口地裁(飯田恭示裁判官)であり、会社が未払いの残業代を支払うことで調停が成立した。
 代理人弁護士によると、3人はそれぞれ主に時給300円で年間約28万円の残業代を受給。最低賃金法では当時、時給657円の支払いが義務付けられており、会社側が1人当たり、不足分約80万円を支払うことで合意した。
 申立書などによると、3人は平成19年10月から1年間、自動車の革シートの縫製作業に従事。週6日働き、年間1300時間を超える残業を強いられたと主張した。

◆経済危機によって最も打撃を受けた労働者層の一つは派遣労働者、求められる柔軟な労働市場と労働者保護の均衡−ILO新刊(英語原文
 http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm
(ILO 2009年10月19日)
「派遣労働者は金融・経済危機によって真っ先に職を失ったグループの一つ」と、来る10月20〜21日にジュネーブのILO本部で開かれる1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号)批准促進ワークショップに提出される報告書は記し、第181号条約の批准はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進し、労働市場のより良い機能を確保する助けになり得ると唱えています。
第181号条約は、労働の柔軟性を求める企業のニーズと、雇用の安定、安全な作業環境、まともな労働条件及び社会保障を求める労働者のニーズの調和を図ることをめざしています。「Private employment agencies, temporary agency workers and their contribution to the labour market(民間職業仲介事業所と派遣労働者の労働市場への貢献・英語)」と題する討議資料は、過去30年間に驚異的なスピードで成長を遂げた民間職業仲介事業が現代の労働市場で果たす仲介役としての重要な役割を紹介し、経済成長と職業紹介事業の業況との直接相関関係を指摘しています。2008年半ばから、企業はこの圧力弁の機能を用いて、しばしば中核的な労働力には手を触れずに派遣労働者の解雇に走ってきました。派遣労働者の雇用喪失が最大だったのは先進国の製造部門で、自動車産業で特に顕著でした。例えば、ドイツでは2008年10月からの4〜6ヶ月間で10万〜15万人の派遣労働者が契約を切られたと推計され、同様の傾向は日本、アメリカ、スペイン、フランスでも見られます。
大手民間職業仲介事業所の多くが、少なくとも2010年まで業況の好転は望めないとしている一方で、業界自体もコスト節減と業務効率の向上に努力しています。報告書は、派遣労働に関する国内規制がフレクシキュリティー(安全保障を伴う柔軟性)の概念を基礎とし続けることの確保、派遣先を解雇された労働者の速やかな転職支援、コスト節減や効率性計画を通じた事業閉鎖の拡大阻止などといったいくつかの課題に取り組んで初めて、これらの方策は功を奏するだろうとしています。
最近、いくつかの国際的な政策文書で職業仲介事業所や派遣労働を巡る問題に光が当てられています。その一つである2009年6月のILO総会で採択されたグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)は、「効果的な公共職業紹介業務その他の労働市場機構の確立または強化」、「臨時労働者及び非正規労働者に対する十分な社会的保護の提供」などを提唱しています。

◆大学院生事故死:大学に賠償命じる 過労認める 鳥取地裁
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20091017k0000e040041000c.html
(毎日新聞 2009年10月17日)
 鳥取大医学部付属病院で無給で診療に当たっていた男性大学院生(当時33歳)が03年3月に交通事故で死亡したのは過労が原因として、両親が大学に約1億1600万円の損害賠償を求めた裁判の判決が16日、鳥取地裁であった。朝日貴浩裁判長は、過労と事故との因果関係を認めたうえ、大学に安全配慮義務違反があったとして約2000万円の支払いを命じた。院生本人の責任も認定し、賠償額を減額した。
 判決によると、院生は病院の紹介で別の病院でアルバイト診療をしていた。院生と付属病院に雇用関係はなかったが、判決は「診療に従事していれば安全配慮義務が生じる」と判断。「過度の疲労状態から事故は予測可能だった」と義務違反を認めた。
 勤務実態については、恒常的な長時間労働を指摘。事故前日には徹夜で緊急手術に加わり、仮眠もとらずにアルバイト先の病院に車で向かっており、勤務による過労、睡眠不足が事故を招いたと認定した。
 一方「院生も危険性を認識していながら自らの判断で運転した」として過失割合は「院生6・病院4」と判断した。
 医師不足に伴い、院生が「演習」などの名目で無給のまま診療を強いられていることは社会問題化しており、文部科学省は08年、診療に従事している院生とは雇用契約を結ぶよう各大学に通達していた。【田中将隆】

◆京王バス乗務員が差別是正申し立て
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/091016/tky0910161641017-n1.htm
(産経新聞 2009年10月16日)
 京王バスの乗務員26人が組合活動を理由に賃金や昇進で不当な差別を受けたとして、全日本建設交運一般労組(建交労)東京都本部と京王労組支部(京王新労)は16日、京王電鉄、京王電鉄バス、京王バス小金井を相手取り、不当労働行為の救済を東京都労働委員会に申し立てた。
 京王新労によると、平成14年に京王電鉄が行ったバス部門の分社化に反対した乗務員に対し、26人で計約4500万円の賃金カットや昇級の見送りが行われたとしている。

◆自主学習は超過勤務…大阪市立大病院、残業代1億4300万円支給へ
 http://osaka.yomiuri.co.jp/university/topics/20091015-OYO8T00680.htm
(読売新聞 2009年10月15日)
 大阪市立大病院(大阪市阿倍野区)は14日、昨年4〜11月、看護師686人分の残業代計約1億4300万円(約6万7000時間分)が未払いだったとして、今月中に全額支給すると発表した。同病院では、勤務終了後に新人看護師らが行っていた自主学習を超過勤務として扱っておらず、長年にわたって「サービス残業」が常態化していた。
 大阪南労働基準監督署が昨年11〜12月、立ち入り検査し、残業を記録する超過勤務命令簿の労働時間と、IC(集積回路)チップ入りカードで出退勤時間をチェックする管理システムの記録に違いがあることを指摘、行政指導していた。
 これを受け、病院側が調査した結果、新人看護師らが勤務終了後、院内で行っていた自主学習が、業務による時間拘束に当たり、残業代を支払わなければならなかったことが判明。患者の容体急変などで残業時間が延びたのに、命令簿に正しく記載されていないケースもあった。最も未払いが多かった看護師は約84万円(235時間分)だった。
 同病院は「自主学習は病院設立後から続く慣習で、『労働』という認識がなかった。意識改革に努め、適正な労務管理を図りたい」としている。

「正社員並みの仕事」40%
 有期契約労働調査

 契約社員やパート、派遣労働者など決められた雇用期間で働いている「有期契約労働者」に関する厚生労働省の調査で、全国の有期契約労働者の40%超が正社員並みの仕事をしているとみられることが30日、分かった。有期契約労働者を雇用している企業のうち、半数以上が「雇わないと事業が成り立たない」とした。

 企業が正社員の代替として低賃金、短期間の非正社員を雇い、人件費を抑えつつ雇用調整に利用していると指摘されていたが、厚労省調査のデータで実態が示されたのは初めて。
 調査は有期契約労働者を「正社員同様型」「高度技能活用型」「軽易型」など初めて職務別に5分類し7月に実施。約6200社から得た回答を、総務省の「事業所・企業統計調査」などの数値で全国平均になるよう補正し、7月1日時点の状況を推計した。
 その結果、36%の企業が有期契約労働者を雇用。有期契約労働者のうち41%が正社員並みの仕事を任されていた。軽易型の人は54%、高度技能活用型の人は1%だった。

 基本給の水準は正社員の6割以上8割未満とした企業が32%で最多。正社員と同額程度は16%にとどまった。一方、三つまでの複数回答可で雇用理由を聞くと、業務量の変動に対応するためとする企業が39%、人件費を低く抑えるためが38%。
 1回当たりの契約期間は、6カ月超〜1年以内としている企業が54%、3カ月超〜6カ月以内が20%。実際の勤続年数は1年超〜3年以内としている企業が最多の29%で、3年超〜5年以内が28%だった。
 また、計5千人の有期契約労働者を対象にインターネットを通じた調査も同時期に実施。自分または同僚が雇い止めに遭ったことがある人は50%。年間収入は100万円超〜200万円以下が31%で、次いで200万超〜300万円以下が25%だった。
 就業理由(複数回答可)は「正社員として働き口がなかったから」が39%、「仕事内容・責任の程度が自分の希望に合っていた」が32%だった。(共同通信)

090930『京都新聞』夕刊:9

■派遣労働者に関するニュース

◆「労働者派遣法改正まったなし!」日比谷大集会
10/29日比谷に全国から結集しよう!
政権交代!鉄は熱いうちに打て!労働者のための派遣法抜本改正の実現を!

自民、公明の歴史的大敗北から約半月がたち、新政府が発足、組閣されました。
選挙前、民・社・国3党による派遣法改正案が提出され、選挙戦においても、当時の野
党各党は、マニュフェスト、選挙公約において抜本改正を公約に掲げて闘いました。
自民、公明の壊滅的敗北は、雇用も含めた市場原理主義に対する選挙民の怒りの発露に
ほかなりません。この気運を派遣法抜本改正の実現に結び付けようではありませんか。

鉄は熱いうちにうて!抜本改正を磐石なものにするために、10月29日に全国から日比谷
野外音楽堂に結集し、首都中枢で、政府、国会に私たちの声−『今国会で派遣法の改正を
公約どおり実現しよう!』−を轟かせましょう!
全国から、日比谷に総結集しましょう!

派遣法改正まったなし!10/29日比谷集会
【日時】2009年10月29日(木)18:30分〜(開場:18:00)
【場所】日比谷野外音楽堂(集会後デモを予定しています)
【内容】現場から 政党挨拶 労働界 労働弁護団 現場の仲間から

【連絡先】労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動事務局(全国ユニオン気付) 
TEL 03−5371−5202  FAX 03−5371−5172
http://mutokyo.blog57.fc2.com/blog-entry-4.html
e-mail:abe326netlaputa.ne.jp

◆派遣法:抜本改正訴え 有識者会議
 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091022k0000m040026000c.html
(毎日新聞 2009年10月21日)
 労働問題や貧困問題に取り組むジャーナリストや弁護士らでつくる「労働者派遣法の抜本改正を求める有識者会議」が21日、東京都内で記者会見し、製造業を含む登録派遣の原則禁止を盛り込んだ派遣法抜本改正の早期実現をアピールした。
 派遣法を巡っては、厚生労働省の審議会で労働者、使用者、公益の代表3者が改正案を審議している。有識者会議は「公益委員が抜本改正に消極的」と主張している。
 会見でメンバーの一人のルポライター、鎌田慧さんは「派遣法は経営者が好きな時に好きなように労働者を使うために作られ、社会正義に反する」と主張。反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長は「『企業がダメになっては元も子もない』と労働者は不安定な雇用を我慢させられてきた。そういう考え方の転換のため政権が交代した。そこが議論の出発点だ」と述べた。

◆実態ふまえ抜本改正を 派遣法 全労連が意見書
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-10-21/2009102105_01_1.html
(赤旗 10月21日)
 全労連は20日、労働者派遣法の改正を論議している労働政策審議会の労働力需給制度部会に対して、雇用破壊の実態を踏まえた抜本改正を求める意見書を提出しました。
 昨年来の「派遣切り」では、(1)派遣労働が常用雇用の代替となり、「安価でいつでも切れる雇用の調整弁」として使われた(2)派遣契約と同時に雇用契約も破棄され、契約期間中の中途解雇が横行した―などの実態をあげ、「労働者派遣の構造的な欠陥と現行派遣法の問題点を露呈した」と指摘しています。
 論議にあたっては、「雇用破壊と派遣労働者の生活の深刻な実態を改善する実効ある措置を取ることを中心にすえるべき」と強調しています。
 “派遣を制限すれば働いている人の職を奪う”などという主張に対しては、「派遣を制限しても、労働力を必要とする仕事さえあれば企業は労働者を雇用する」と批判。むしろ派遣など非正規労働者の急速な拡大がワーキングプアを増やし、不況と内需の落ち込みを助長し、企業に海外進出を促す結果になっていると指摘しました。
 登録型派遣の原則禁止など連立与党の改正案は改正すべき前提項目にするよう求めるとともに、実態を踏まえればより抜本的な改正が求められると指摘。派遣は臨時的・一時的な業務に限定し、常用雇用の代替としてはならないという原則などに立って踏み込んだ検討を行い、「製造業への派遣禁止」「26専門業務の抜本的見直し」など36項目にわたって抜本改正するよう求めています。

◆期間工切り いすゞの違法 再び断罪 宇都宮地裁支部「財務上も必要乏しい」
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-10-21/2009102101_02_1.html
(赤旗 10月21日)
 いすゞ自動車栃木工場(栃木県大平町)の元社員3人が、「非正規切り」による賃金カットは違法だと訴えていた仮処分裁判で、宇都宮地裁栃木支部(橋本英史裁判官)は20日、いすゞの違法行為を再び認定し、労働者側の訴えを全面的に認める決定を出しました。
 申し立てていたのはJMIU(全日本金属情報機器労組)いすゞ自動車支部の松本浩利委員長ら3人。同支部は5月、いすゞの違法性を認める決定を出し、会社が異議申し立てをおこなっていました。
 同社は期間社員ら1400人を昨年12月26日付で期間途中で解雇すると通告。世論に押されて期間社員の解雇は撤回したものの、新たに希望退職を募集し、応じない場合は休業扱いとし賃金を60%にカットしました。
 決定は、期間労働者に対する中途解雇は労働契約法で原則禁止されており、正社員と比べて「高度の合理性を要する」と指摘。労働組合との合意もなく期間社員に不利益を強いるのは、「均衡処遇」に反した「処遇上の差別であり看過できない」「財務状況から見ても休業手当と賃金カットをする必要性は甚だ乏しい」と断罪しました。
 宇都宮市内の栃木県労連事務所で記者会見した松本委員長は「いすゞの違法性は明白になった。偽装請負などで働かせておいて雇い止めしたやり方は許されない。真摯(しんし)に決定を受け止め、正社員にするよう求めていく」と話しました。

◆正社員への就職支援 30代の非正規雇用者 東京しごとセンター多摩
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20091021/CK2009102102000054.html
(東京新聞 2009年10月21日)
 長い間、非正規雇用の立場で働いている三十代の人で、正社員としての就職を希望する求職者を支援しようと、東京しごとセンター多摩(国分寺市)が二十六日から、専用相談窓口を新たに設置する。専門相談員が求職者と企業の双方の希望に合わせて情報提供に努めるほか、就職後も双方からの相談に応じるなどすることにより職場への定着を支援する。 (萩原誠)
 都が昨年十一月から千代田区飯田橋の東京しごとセンターで同様の事業を始めており、十七日現在で百二十六人が正社員雇用にこぎ着けた。多摩地域でもより条件がいい正社員への転換を進めるため、相談窓口を設置することにした。
 企業の採用・人事担当OBなどの経歴を持つ専門相談員らが相談から職業紹介、就職後の職場定着までサポートする。求職者に対しては就職後も職場の不安や同僚に話せない悩みなどの相談に対応、また正社員として六カ月以上雇用した企業には一人当たり六十万円を支給する。
 相談窓口はJR国分寺駅南口から徒歩五分の同センター多摩二階に開設。日曜、祝日、年末年始を除き、午前九時から午後八時(土曜日は午後五時)まで相談を受け付ける。詳しい問い合わせは同センター多摩=(電)042(329)4510=へ。

◆派遣労働規制/保護の精神にこだわって
 http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2009/10/20091019s01.htm
(河北新報 10月19日)
 このままではまずい。政府・与党も野党各党も昨年秋の段階で認識が一致したというのに、結果的に放置されてきた。
 もう1年になる。衆院解散をめぐる攻防にエネルギーを割かれてのこととはいえ、明らかな遅滞である。
 派遣労働の規制を強化する労働者派遣法改正の議論が、ようやく厚生労働省の審議会で始まった。暮らしの不安に深くかかわる課題を棚上げしてきたという苦い自覚に立って、詰めを急いでほしい。
 民主党はマニフェスト(政権公約)に「派遣労働者の雇用の安定」を掲げた。社民、国民新両党との連立合意でも「製造現場への派遣の原則禁止」が盛り込まれた。
 どこまで規制強化を進めるかが、これからの論点になる。規制を強めることによる弊害を挙げる意見もある。派遣労働の現場の声をくみ取って、しっかり検証する必要がある。
 昨年11月、政府が提出した改正案は、日雇い派遣労働に絡むトラブルが相次いだことを受けての内容で、30日以内の期限付き派遣を禁止した。民主党など野党3党はその後、製造業派遣の原則禁止を盛り込む改正案を出したが、衆院解散でいずれも廃案になった経緯がある。
 あらためて確認しておきたいのは、1986年、労働者派遣法が制定された当時の基本的な考え方だ。
 職安法によってそれまで派遣労働は禁止されていた。過酷な強制労働や不当な中間搾取があった歴史の教訓に基づいてのことだ。86年の解禁は、あくまでも専門的・臨時的な仕事を特例として認める措置だった。歯止めになったのは、労働環境の改善、労働者保護という労働政策の理念である。
 歴史的な流れと、今回、政権交代を勝ち取った側の公約の趣旨。併せ考えれば、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)職業安定分科会で始まった議論は当然、労働者保護の精神が前提でなければならないはずだ。

◆ホステス100人が登録 無許可派遣業で北新地元ホステス逮捕
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091016/crm0910162132033-n1.htm
(産経新聞 10月16日)
 飲食店などに無許可でホステスを派遣していたとして、府警少年課と泉大津署は16日、労働者派遣法違反の疑いで、岸和田市箕土路町、コンパニオン派遣会社経営、上野愛子容疑者(30)ら3人を逮捕、送検したと発表した。
 府警によると、いずれも容疑を認めている。
 逮捕・送検容疑は、今年4月4日から8月29日にかけ、厚生労働省の許可を得ずに堺市堺区内のラウンジに計20回にわたり府内の私立高校3年生の女子生徒(17)をホステスとして派遣したとしている。
 府警によると、上野容疑者は北新地の元ホステスで、平成17年ごろから知り合いのホステスに声をかけて派遣事業を始めた。
 昨年夏からはインターネット上で一般女性も募集しており、逮捕時には、高校生や会社員など、20代半ばまでの女性約100人が派遣登録していたという。

◆日産、非正規社員の採用再開 追浜工場で150人
 http://www.asahi.com/business/update/1016/TKY200910160429.html
(朝日新聞 2009年10月16日)
 日産自動車は16日、12月に追浜工場(神奈川県横須賀市)で、期間従業員150人を採用することを明らかにした。非正規社員の採用は9カ月ぶり。エコカー減税対象車の販売が好調で国内生産が回復。同工場の二つの生産ラインのうち、1ラインが昼夜2交代だが、別のラインも2交代に戻すことに対応する。
 日産は昨秋に約2千人いた非正規社員を今年3月末までにゼロにした。大半が派遣従業員だったが、新政権の製造業派遣禁止の方針を受け、今回は期間従業員を採用する。8月からヤマハ発動機、川崎重工業など他社から数百人規模で正社員の応援を受け入れているが、こちらは10年3月末まで継続する方針だ。

◆非正規就労支援センター開設
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200910140046.html
(中国新聞 2009年10月14日)
 岡山労働局は13日、雇い止めなどで離職した非正規労働者の就職を支援する岡山非正規労働者就労支援センター「おかやまキャリアアップハローワーク」を倉敷市笹沖に開設した。同種のセンター開設は中国地方で広島市に次ぎ2カ所目。
 センターは倉敷中央公共職業安定所近くにある空き店舗を改装。職員1人と、社会保険労務士や、キャリアカウンセラーら相談員19人が常駐、マンツーマンで指導している。
 相談は正社員として就職するためのプログラムを用意し、参加者がグループでセミナーを受けてもらうのが特徴。セミナーのメニューの一つである面接トレーニングは、企業の面接担当者と模擬面接を実施、アドバイスを受ける。履歴書など応募書類の添削指導も受けられる。いずれも無料。

◆働くナビ:急増するセクハラ、パワハラ 派遣社員が遭遇したら?
 http://mainichi.jp/life/today/news/20091012ddm013100026000c.html
(毎日新聞 10月12日)
◇社外の窓口活用も 証拠残すため、被害記録して失業率の悪化など雇用状況が厳しくなる中、セクハラやパワハラの被害を受ける労働者が増えている。被害に遭っても、仕事を失うのを恐れて相談できないケースが多い。
「派遣社員やパート労働者に正社員がセクハラする、身分差別のような被害が目立っている」。セクハラ問題に詳しい板倉由実弁護士は指摘する。
労働弁護団に寄せられた相談では、「2人の男性社員から体を触られ、会社に被害を訴えたら仕事を切られた」(40代、オペレーター)、「派遣先の部長に宴会でキスされ、誘いを断ったら仕事を切られた」(情報技術、女性)などの相談が寄せられている。派遣という弱い立場につけ込んでのセクハラだ。
板倉弁護士によると、派遣労働者が被害に遭った場合、派遣会社に訴えることになるが、セクハラをした加害者は派遣先の社員であるため、派遣会社が直接対応できずあいまいになるケースが多い。また、派遣先との契約を考え、派遣会社がまともな対応をしないケースもある。雇用機会均等法は会社にセクハラなどの相談窓口の設置を義務づけているが、相談担当が男性社員ばかりだったり、匿名で相談できる体制がないケースもある。こうなると、被害者はどこにも頼れない状態だ。
被害を受けた女性は、心や体に多大な被害を受ける。心理的なストレスで働くことができなくなり、仕事を失い、生活できなくなるケースも珍しくない。被害者が泣き寝入りすれば、会社や加害者の責任は問われず、被害者だけが苦しみの中に置かれる。
全国の労働局や都道府県の雇用均等室に寄せられる職場でのセクハラの相談は06年以降、毎年1万件を超えている。また、内閣府の調査では、セクハラ加害者との関係は、職場・アルバイト先が全体の25・8%に上り、3年前の調査の約10%から大きく増加した。いかに職場での被害が拡大しているかが分かる。
セクハラ被害に遭った場合、どのような対処をすれば良いのか。
板倉弁護士は(1)加害者からのメールや携帯電話の着信履歴を保存する(2)ボイスレコーダーなどによる発言の記録(3)自分の日記などに被害を記録する−−などを勧める。後に責任を問う場合、証拠となるからだ。また、一人で悩んだり、自分を責めずに、相談体制が整っているところで相談することを勧める。
相談する場所としては、都道府県の雇用均等室や会社の窓口がある。ただ、会社の相談窓口は、相談体制が整わず、プライバシーが守られない場合もあるので、注意が必要だ。その他には、女性ユニオンなど女性問題に熱心なユニオンや女性弁護士による相談電話も活用できる。
日本労働弁護団は毎月第2水曜日の午後3〜5時、女性弁護士による相談電話(03・3251・5363)を開設している。また、11月21日午前10時〜午後4時、東京弁護士会の女性弁護士が「セクハラ被害110番」(03・3503・8671、当日のみ)を実施する。
板倉弁護士は「次の仕事が心配でがまんしている被害女性も多いと思う。泣き寝入りせず相談してほしい」と話している。【東海林智】

◆人材派遣業から製造業へ 日本ソフト工業
 http://www.oita-press.co.jp/localNews/2009_125513375918.html
(大分合同新聞 10月10日)
景気後退により労働市場が縮小する中、大分県内の人材派遣会社が製造業へ新規参入するケースが出始めている。雇用した人材を活用する契約先を確保しにくい状況が続いている上、円高の進行に伴い、再び海外へ生産が移管する可能性が高まっていることも背景にある。ここ数年で急拡大した非正規労働のビジネスモデルが大きな変化を迫られている。
製造業への転換を図るのは、人材派遣業では県内大手となる日本ソフト工業(日出町)。精密機器の組立工場に社員を派遣したり、(相手先の設備を借りるなどして工程の一部を担当する)業務請負をしてきた。
しかし、製造業が軒並み大減産を強いられた昨秋来、派遣などいわゆる非正規の労働市場は一気に縮小。3年ほど前のピーク時は1500人以上雇用していた社員が、現在は500人程度にまで減った。
望月俊博社長は「かつては、ある業種で受注が減っても別の仕事に人材を振り向けることができたが、今は難しい。大手が派遣・請負の労働形態を見直して直接雇用に改めたこともあり、抱えた人材を活用するすべがない」と説明する。
このため、同社は町内の工場跡地を賃貸で確保し、約7千万円を投入して改装。自社所有の組み立てラインを整備中だ。年内に精密機器関係の組み立てを下請けする製造業として操業を始める予定。当初は約140人でスタートし、仕事量に応じて徐々に人材を移行させる方針。
県内ではほかにも、県外の人材派遣業者が大分市内に自前の工場を建て、精密機械を組み立てる下請け製造業として、従来の派遣先企業と取引を始めている。
望月社長は「民主党中心の政権も製造派遣の規制強化を掲げている。雇用を確保するには自らものづくりに携わるしかない」と厳しい状況を説明。一方、地場製造業の経営者は「新規参入が増えれば、ますます受注競争が熾烈(しれつ)になる」と指摘した。

◆2009/10/09 新聞記事「日系人、労組で助け合い――企業と団交、権利確保」 『日本経済新聞』夕刊:15

◆派遣法見直し、審議始まる 使用者側、規制強化に猛反発
 http://www.asahi.com/national/update/1007/TKY200910070365.html
(朝日新聞 10月8日)
労働者派遣法の抜本改正に向けた労使の議論が7日、厚生労働省の審議会で始まった。鳩山政権は、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」や製造業への派遣を原則禁止し、安定雇用への転換を目指す。厚労省は年内にも労使の合意を得たい考えだが、規制の強化に使用者側の反発は強い。
派遣法の見直しでは、民主、社民、国民新党が9月9日、法律名を「派遣労働者保護法」に改めるとともに、日雇い派遣や登録型派遣、製造業派遣を原則として禁止することで合意し、連立政権の政策合意に盛り込んだ。厚労省の集計では、昨年10月から今年12月までに失職する非正社員23万9千人のうち、約6割にあたる14万2千人が派遣社員。不安定な働き方への批判の強まりを受け、3党は大幅な規制の強化を打ち出した。
7日の審議会で、長妻昭厚労相は「派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど雇用環境に大きな変化が生じた」と指摘し、派遣労働者の雇用の安定のために必要な事項の検討を求めた。今後は3党の合意内容を踏まえて議論が進む見通しだ。
民主党はマニフェストで、派遣法の改正時期を明示していない。だが、連立パートナーの社民党などは早期の改正を求めており、厚労省は年内に審議会での合意を経た上で、来年の通常国会に改正案を提出することを目指す。
ただ、労使の隔たりは大きい。労使は昨年9月、派遣法の改正は日雇い派遣の原則禁止にとどめ、登録型派遣の規制などは引き続き議論することで合意した経緯がある。麻生政権は昨年11月、日雇い派遣禁止を柱とする改正案を国会に提出したが、衆議院の解散で今年7月に廃案になった。雇用情勢の変化や政権交代があったとはいえ、使用者側には一足飛びに「禁止」に踏み込むこと自体に異論がある。
企業経営への影響を懸念する声も強い。この日の審議で、使用者側からは「コスト増で国際競争力が失われれば、製造拠点の海外移転に拍車がかかる」「地方の製造業は自前での人集めが難しい。製造派遣が禁止されると人を雇えなくなる」といった意見が相次いだ。労使の裁定役である公益委員からも疑問の声が上がった。東京大学の岩村正彦教授は「いまが規制強化のタイミングなのか不安を持っている。製造業派遣を禁止すれば、企業は正社員を雇うようになるのかも見えない」と指摘。放送大学の宮本みち子教授も「中長期的にみると、製造業の派遣をどうするかという問題だけの議論でいいのか」と話し、有期雇用や請負など非正社員全体を見据えた議論の必要性を強調した。(林恒樹)

◆製造業派遣禁止の議論開始 経済界はコスト増を警戒
 http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091007/biz0910072042014-n1.htm
(産経新聞 10月7日)
労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の職業安定分科会が7日開かれ、新政権が掲げる製造業派遣の原則禁止など規制強化をめぐる議論がスタートした。厚労省は年内に労働者派遣法改正案をまとめる。社会問題化した非正規社員の雇用の安定化が狙い。ただ、経済界は正社員化によるコスト増を警戒しているほか、「多様な働き方が制限され、逆に雇用機会が失われる」との懸念も強い。禁止の例外などで弾力的な制度にできるかが焦点となりそうだ。
長妻昭厚労相は同日、「派遣労働者の雇用環境に大きな変化が生じている」などとして、派遣の在り方について議論するよう同審議会に諮問した。
今後は同分科会の労働力需給制度部会などでも議論し、年内にも結論を取りまとめ、来年の通常国会に労働者派遣法の改正案を提出する方針だ。
民主、社民、国民新党は連立与党は、(1)製造業派遣の原則禁止(2)契約期間の短い「日雇い派遣」の禁止(3)派遣会社に登録して仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」の原則禁止−で合意している。
焦点である生産ラインなど製造業への派遣は、小泉純一郎政権時代の構造改革の一環として、2004年の法改正で解禁された。しかし、昨秋以降の経済危機では、自動車や電機メーカーなどが相次いで、派遣を中心とした非正規社員を大幅に削減し、“派遣切り”として社会問題になった。新政権は、製造業派遣を構造改革による格差拡大の象徴と位置づけ、規制強化を打ち出した。
民主党では、経済界などに配慮し、製造業派遣に禁止の例外となる「専門職」を設ける方針。具体的には、図面などの設計や特殊な製造技術を持つ労働者を想定している。
ただ、この日の会合でも、経済界の代表から「雇用の悪化が製造業派遣の禁止に即つながるのか疑問を感じる」との意見が出るなど、反発は強い。
実際、規制強化の“副作用”がすでに出始めている。自動車や電機各社では、景気の底打ちで生産は回復傾向にあるが、コスト増への懸念から採用拡大には慎重なままだ。
稼働率上昇に対応した人員確保では、規制強化を念頭に派遣社員ではなく、直接雇用の期間従業員で対応しているが、採用増は限定的で、グループからの応援で対応する企業も目立つ。「規制強化で雇用が硬直化すると、景気回復局面でも採用増に波及しなくなる」(エコノミスト)との指摘は多い。
人材派遣業界も、「専門職を設けても、登録派遣を禁止すれば、大量の雇用が失われる」(大手)と警告する。
このため、経済界としては今後の議論で「専門職」の適用範囲をできるだけ広くするよう求めていく考えだ。

◆ジヤトコに直接雇用求め集団提訴 男性労働者11人、京都地裁
 http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009100701000784.html
(共同通信 10月7日)
自動車部品大手「ジヤトコ」(静岡県富士市)の京都工場で働いていた京都市や大津市の男性労働者11人が、同社が雇い止めしたのは違法として7日、直接雇用を求め京都地裁に提訴した。
 訴状によると、1999〜2006年、11人は業務請負会社を介し、京都市の2工場で勤務を開始。労働者派遣法改正で製造業での派遣が解禁となり06年以降に業務請負契約が派遣契約に切り替えられ、08年12月から09年1月に雇い止めされた。
 原告側は、ジヤトコが業務を指揮管理する「偽装請負」の形で長年勤務し、実質的に直接契約があったと主張。形式的な派遣契約での雇い止めは不当としている。
 原告の宮崎彰さん(48)は「同じ問題に悩む多くの人が立ち上がってほしい」と話した。
 ジヤトコによると、ことし5月、法定期間を超えて働かせている労働者を直接雇用するよう京都労働局から指導を受けた。同社は「事実関係を確認し、今後の対応を考えたい」としている。

◆今後の労働者派遣制度のあり方について労政審に諮問
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/h1007-1.html
(厚労省 10月7日)
厚生労働省は7日、今後の労働者派遣制度のあり方について労働政策審議会に諮問した。今年7月に廃案となった労働者派遣法の改正法案に盛り込まれた日雇派遣の原則禁止や派遣マージンの情報公開等のほか、製造業務への派遣や登録型派遣の今後のあり方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進などについて調査審議を求めた。

(参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」について/厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1104-1.html
◆求人倍率改善も「非正規ばかり」
 http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20091003/CK2009100302000015.html?ref=rank
(中日新聞 2009年10月3日)
 福井労働局が受理した大企業、中小企業向けの雇用助成金の受理件数が、ともに高止まりしていることが2日、同局のまとめで分かった。また、同日発表された8月の有効求人倍率は0・55倍となり、前月比で0・02ポイント改善したが、同労働局は「新規雇用は非正規社員ばかりで、景気回復とはいえない」としている。
 【助成金】6〜8月までの大企業向けの「雇用調整助成金」の受理件数は、ほぼ横ばいで推移。「中小企業緊急雇用安定助成金」は8月にやや減ったものの、各月とも1000件を超えており、「大企業、中小企業ともに高止まり傾向」と分析している。
 3月の中小企業緊急雇用安定助成金は500件台だったが、7月まで右肩上がりになっており、この間の中小企業経営が逼迫(ひっぱく)していた状況が浮き彫りになった。
 【求人倍率】有効求人倍率を業種別に前年同月比でみると、生産用機械器具製造業はマイナス80・5%、金属製品製造業はマイナス55・9%。情報通信業は213人の求人があり、前年同月の79人から大幅な増加がみられたが、「雇用形態のほどんどはパートや臨時社員」(同労働局)という。
 地域別(ハローワーク所在地)の有効求人倍率は大野0・44倍、三国0・45倍、福井0・56倍、武生0・40倍、敦賀0・97倍、小浜0・99倍だった。(川本光憲)

◆非正規失職23万8000人 2.7%増 雇い止めは沈静化
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2009100202000228.html
(東京新聞 2009年10月2日)
 派遣切りなどで昨年十月以降に職を失ったか、または今年十二月までに職を失う予定の非正規労働者は合計二十三万八千七百五十二人で、前回調査に比べ2・7%増加したことが二日、厚生労働省の調べで分かった。
 調査対象の期間が三カ月延びたため、増加率は前回調査(1・4%増)よりも上昇したが、厚労省は「昨年末から今年春までの高い伸び率と比べると、非正規労働者の雇い止めは落ち着いてきている」と話している。
 八月の失職者数は三千百十五人。九月は四千二百九人に増えるものの、十月は千三百九十四人、十一月は百十人と減少傾向が続く見通し。
 雇用形態別では、派遣社員が十四万一千六百十九人で全体の約六割を占めた。契約社員は五万四千四百二十一人、請負社員は一万八千八百七十五人だった。都道府県別では愛知県の四万百十七人が最も多く、長野県の一万四百五十人、静岡県の九千六百六十六人と続いた。調査は九月十八日時点で把握できたデータをまとめた。


*作成:橋口 昌治
UP:20080807 REV:20081202 20090812 0824 0902 1011 1022 1025 1026 1130 1225 20100102 0122 0531 0627 201101118
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