HOME > 事項 >

労働関連ニュース 2007年9月16日から20日




◆ハケンの伝道師(3)テンプスタッフ社長篠原欣子氏(仕事人秘録)
2007/09/20, 日経産業新聞
英会話教室開き資金繰り
 起業を思い立ち、篠原氏は六本木のマンションに一室を借りた。マンションは仕事場兼自宅だったうえ、運転資金を賄うために夜は看板を変え英会話教師をし た。
 会社をつくるのは意外に簡単だった。税理士に聞くと六―七人の発起人を集め、書類を作れば設立できるという。早速、菓子折りを持って母や親戚を説得して 回った。発起人を集め、書類には会社業務をタイピストや秘書の派遣、経営者には私本人の名前を記した。
 六本木に借りたマンションは二十六平方メートルの狭いワンルーム。机ひとつに電話ひとつを置いて事務所スペースをつくった。毎晩寝るベッドは、病院にあ るようなカーテンで事務所スペースと仕切った。
 次は会社の存在を世の中に知らせなくてはいけないと思った。当時は六本木に外資系企業が多数進出してきた時期で、本国で派遣を使い慣れている外資系に照 準を絞った。オーストラリアで見学した派遣会社が小さなパンフレットを作っていたのを思い出し、それを見本に英語でA4判一枚のパンフを作った。
 パンフを携え一人で六本木界隈の名だたる外資系企業に足を運んだ。デュポンやチェース・マンハッタン(現JPモルガン・チェース)などもこのとき開拓し た取引先だ。「タイピストがいますので、必要なときにご用命ください」と説明して回った。
 とはいえ、派遣できるスタッフが多数いるわけではなく、同時に人集めもしなくてはならない。英字紙「ジャパンタイムズ」に英文タイピスト、英語のできる セクレタリーを求むと求人を出した。やっと一人の女性と面接を約束したが、時間になると電話がかかってきて「道が分からないので帰ります」という。急いで 迎えに出たこともあった。
 スタッフが増えると給料の支払いが悩みの種になった。スタッフに給料を支払い、その後に取引先に請求書を送るため、翌月に払い込みがあるまでの資金繰り が苦しい。少しでも資金繰りをよくするために、夜は同じマンションの玄関に「英会話教室」の看板を掲げ、外資系で働くビジネスマンに英会話を教えた。
 英会話は月謝が先払いでもらえる。それで何とか支払いをしたときもある。ただ、給料日が明日に迫っても二万五千円が足りない夜もあった。こっそり実家に 帰り、母に泣きつきお金を借りた。
 緊急の注文にも丁寧に応えたことで取引先の信頼を獲得。取引先の紹介で顧客を徐々に拡大し、事業を軌道に乗せた。
 最初の一年は本当に大変で、労働需給はいつもアンバランス。仕事があっても人がいなかったり、逆にいい人がいても働きに行ける取引先がなかったりした。 経営もわからないことだらけ。書類の作り方も知らず、最初は大学ノートに働いてくれた人の名前を書いて、いつ何時間働いたか記録し時給を計算した。見かね て外資系の同業で働いていたスタッフが「あそこは書類をこうしているわよ」と教えてくれた。
 仕事も「明日一日」「今日の午後」といった一日単発が多かった。それが少しずつ長期になり「秘書として数カ月」といった月単位の仕事に変わっていった。 午前九時に「今すぐ英文入力できる人をよこして」と電話がくると、赤い依頼票をオフィスに張り出し緊急の人選を呼びかけた。赤い依頼票が張り出されると社 内は大騒ぎだった。
 当時の主要取引先だった外資系は即戦力が必要で、特に英文の通訳やタイプ、速記などは希少な人材として引き合いが多かった。緊急の注文にも丹念に応えた ため便利に感じてもらえたのだろう。お礼の手紙が来ることもあった。信頼関係ができると、取引先が別の顧客を紹介してくれた。
【図・写真】六本木のマンションの一室から事業を起こした(篠原氏による手書きの間取り)

◆長時間労働是正の方策を聞く(中)早大教授島田陽一氏――「残業代ゼロ」不安根強く。
2007/09/20, 日経産業新聞
ホワイトカラー・エグゼンプション制度
試験的な運用必要に
 ――厚生労働省は長時間労働を見直すために、ホワイトカラーを労働時間規制の適用から除外するホワイトカラー・エグゼンプション(WE)制度導入を狙っ たが、野党から「残業代がゼロになる」と批判されたため、実現していない。
 「WEは短時間で効率よく働く人に多く報いる制度だが、働く人の側にWEへの不安がある。日本の企業では仕事の手順を自分の裁量で決められる人は多いか もしれないが、仕事の量を自分で調節できる人は少ない。そうした現状を考えると、WEが導入されれば残業代がゼロになってしまうという見方は受け入れられ やすい」
 ――不安を解消するにはどうすべきなのか。
 「現行の労働基準法でも管理監督者は労働時間規制の適用除外となっている。ただ、労基法の管理監督者の範囲があいまいで、ファストフード店の店長を管理 監督者と見なすべきかで紛争が起きている。時間外労働の範囲もあいまいだ」
 「それらを整理したうえでホワイトカラーが能力を発揮できるモデルを示す必要があるだろう。例えば、労働組合があって、有給休暇の消化率が一定水準以上 の大企業に限定して導入する。労働時間が際限なく長くなるのを防ぐ仕組みがある企業で試験的に運用することで、短時間で効率よく働く人に報いる制度にする ための課題を洗い出すのだ」
 ――何が労働時間を長くしているのか。
 「短時間勤務のパート従業員は増えているが、正社員はあまり増えておらず、結果的に正社員の業務負担が重くなっている。さらに成果主義型の賃金制度が普 及し、常に成果を求められるようになり、一日の仕事にピリオドを打ちにくくなっている。成果主義は組織を活性化させる効果はあるのだが、働く人のストレス 要因にもなる」
 ――仕事が過多になればうつ病など心の病にかかる人も増える。
 「今、企業の人事担当者の最大の悩みは従業員の心の病だろう。病にかかってしまった人を治すのは大変で、企業は予防に力点を置かなければならない。その 意味でも労働時間の短縮は重要な経営課題になっている」
 ――企業は何をすべきなのか。
 「従業員を評価する際の時間軸を長くすることがあげられる。四半期や半年という短い期間で成果をあげるように従業員を追い立ててしまうと、労働時間が長 くなり、従業員を使い捨てにしてしまいかねない。従業員が成果を出せるまである程度待つという姿勢を経営側が明確に示す必要があるだろう」
 ――労働時間の短縮を進めると、企業の国際競争力を低下させるのではないか。
 「高付加価値の製品・サービスで勝負するのがこれからの日本企業の戦略であるならば、国内外から有能な人材を集めなければならない。従業員に過大な負担 を強いる企業で働こうと思う人はそれほど多くない。有能であればあるほどその傾向は強いはずだ」
 「有給休暇の消化率の高い企業に政府が税制上の優遇を与え、表彰することがあってもよい。有給休暇を取る人が増えれば国内の観光産業の振興につながり、 地方経済の活性化にもなる」(聞き手は長島芳明)
 ▼ホワイトカラー・エグゼンプション(WE) 年収や地位など一定条件を満たした事務系の会社員(ホワイトカラー)を労働時間規制の対象から外すこと。 現行の法律でも管理監督者(管理職)は労働基準法の労働時間規制の適用除外としているが、WEは管理監督者以外のホワイトカラーに適用除外の範囲を広げる ことを目的としていた。
 日本経団連が「労働生産性向上と時間に縛られない自由な働き方が可能になる」として導入を主張。厚生労働省が今春に法案提出を目指したが、野党や労働組 合の「残業代ゼロ法案」との反発にあい、断念した経緯がある。
 労基法では、従業員を一日八時間または週四十時間を超えて働かせた場合、経営者は残業代を上乗せした賃金を払う(労働時間規制)義務がある。
 しまだ・よういち=75年(昭50年)早大法卒。早大大学院法学研究科を経て83年(昭58年)に小樽商科大講師。96年に早大助教授、97年に教授。 04年より早大法務研究科教授を兼任。54歳。

◆JR西日本、障害者雇用で子会社、来月設立、印刷・製本など受託。
2007/09/20, 日経産業新聞
西日本旅客鉄道(JR西日本)は十九日、障害者雇用を目的とした全額出資の子会社を十月に設立すると発表した。JR西日本グループから印刷や製本などの業 務を受託する。事業開始後に厚生労働省に特例子会社の認定を申請する計画で、障害者雇用の受け皿とする狙い。
 十月一日付で新会社「JR西日本あいウィル」(兵庫県尼崎市、来島達夫社長)を設立し、二〇〇九年春に業務を開始する。
 資本金は三億円で、JR西日本が全額出資する。グループから受託した印刷・製本や封入・発送、軽作業などを手掛ける。従業員数は約三十人で、うち二十人 に障害者を採用する予定。
 特例子会社の認定には従業員の二割以上が障害者であるなどの一定の要件を満たすことが必要。認定を受けると、親会社の障害者雇用率に算定される。
 JR西日本は既に、単体で二百七十二人(六月末時点)の障害者を雇用している。

◆群馬県内の最低賃金、10円上げ664円に、来月19日から適用。
2007/09/20, 日本経済新聞 地方経済面 (群馬)
 群馬労働局は十九日、群馬県内の最低賃金を時給で十円引き上げて六百六十四円にすると発表した。十月十九日から適用する。賃金の引き上げ幅が二ケタとな るのは一九九七年以来。
 全国平均の最低賃金は、十四円引き上げて六百八十七円となる見通しだ。賃金格差の社会問題化や、参院選で暮らし重視を掲げる民主党が躍進したことなどが 大幅な引き上げの背景にある。

◆(スポーツ★フロンティア 第5部 大学スポーツ考:8)選手の支援、企業と分業
朝日新聞 2007年9月20日
 五輪がまだアマチュアリズムの「看板」を掲げていた60年ローマ大会では、日本選手団の約半分を現役の大学生が占めていた。
 04年アテネ大会では、その割合は1割強に減った。プロに門戸が開かれて以降、18〜22歳の学生の段階ではメダルを狙うレベルになかなか達しない。一 見、大学の存在感が薄れてきたようにも映る。しかし、内情は違う。卒業後も選手を受け入れる場所として大きな役割を果たしている。
 今月あった柔道の世界選手権の女子無差別級金の塚田真希と同78キロ級銀の中沢さえは綜合警備保障に所属するが、練習場所は塚田は東海大、中沢が淑徳 大。それぞれの母校だ。同社が抱えるレスリング組も同じ。17日に世界選手権グレコローマン60キロ級で銀メダルを取った笹本睦(まこと)は日体大、アテ ネ五輪金の女子の吉田沙保里、伊調馨も母校の中京女大で練習する。
 「五輪でメダルを狙えるような選手は、会社の看板選手として競技に専念してもらっています」(同社広報部)。事実上のプロである。
 練習拠点を提供する大学にとっても、在校生が先輩の胸を借りることで成長を促されるという、相乗効果が期待できる。
 企業が経済的に支援し、大学が練習拠点を保証する。こうした「分業」が増えつつある。
 終身雇用ではなく、現役の間だけスポンサー契約を結ぶドライな関係も珍しくない。派遣社員など、非正規雇用で労働力を確保する労働形態に似たトレンドが スポーツにも及ぶ。
 現役引退後の人生設計は、アスリートにとって切実な問題だ。ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)、棒高跳びの沢野大地(ニシ・スポーツ)らトップクラスの 選手であっても、企業と大学院に同時に所属するケースが陸上などで目立つようになった。大学で指導者になるという引退後の選択肢が増えることになる。
 日本学生陸上競技連合理事で強化委員長の尾縣貢は「競技がダメになったら会社に残れない状況が増えている。だから、大学院で勉強をという気持ちになるの だろう」。
 競技力のピークを迎えるのは男子の場合、30歳手前くらいだ。そこまで競技環境を確保しつつ、将来への見通しを立てられる生き方である。(敬称略)

◆管理職の賃金1600万円未払い ミスターマックス 【西部】
朝日新聞 2007年9月20日
 店長や次長ら管理職の深夜労働に対する割増賃金が未払いだったとして、ディスカウントストアのミスターマックス(本部・福岡市)は19日、山口県下松市 の下松労働基準監督署から指導を受け、全社的に調べて確認した未払い総額約1600万円を10月給与支払日までに支払うと発表した。07年7月までの2年 間で延べ295人が対象という。
 同社によると、労基署から8月15日、下松市内の末武店の店長と次長に対して、労基法の定める午後10時以降の労働に対する割増賃金を払っていないとの 指導を受けた。

◆中堅派遣会社も給与天引き発覚 2年で1億円
朝日新聞 2007年9月20日
 日雇い派遣業界の不透明な給料天引き問題で、中堅の人材派遣会社オープンループパートナーズ(東京)は19日、新宿労働基準監督署から過去2年分、約1 億円の返還を指導されたと発表した。グッドウィルなど大手だけでなく中堅企業でも、不透明な天引きが横行していたことを示している。
 親会社のオープンループ(札幌市、大証ヘラクレス上場)によると、安全協力費の名目で派遣1回当たり200円を6月まで天引きしていた。新宿労基署は 「使途が明白でないのに賃金から控除していた」として、返還指導したという。

◆「日勤教育は不適切」 JR西に一部賠償命令 大阪地裁 【大阪】
朝日新聞 2007年9月20日
 JR西日本(大阪市北区)が、業務でミスした運転士らに課す懲罰的な「日勤教育」で精神的苦痛を受けたとして、JR西日本労働組合と組合員3人が同社と 当時の上司2人を相手取り、慰謝料など計約660万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、大阪地裁であった。山田陽三裁判長は、組合員1人について 「日勤教育が必要なほどのミスとは認められず、車内清掃や草むしりなどの内容も不適切だ」と認定。同社側に15万円の支払いを命じた。
 原告3人は森ノ宮電車区(同市城東区)所属の運転士と車両管理係。判決によると、勝訴した盛満英昭さん(51)=大阪府摂津市=は04年4月、車両管理 係として電車の入れ替え運転中、線路上のスズメを小石と見誤って無線報告した内容にミスがあったとして、電車区内の草むしりなどの日勤教育を12日間受け た。
 判決は、日勤教育について「再教育が目的」と指摘し、盛満さんに日勤教育を課す必要性を否定した。掃除や草むしりも「日勤教育の理由と関係ない無意味な 作業」と判断した。一方、電車の操作や工具の扱いなどでミスをした他の2人の日勤教育には「違法性はない」と訴えを退けた。

◆(ひと)湯浅誠さん 「反貧困ネットワーク」の拡大に奔走
朝日新聞 2007年9月20日
 生活保護を申請する人の付き添い役を務めて10年。その数、千人以上になる。ネットカフェ難民の聞き取り調査をしたかと思えば、日雇い派遣会社で働き、 労組と行動。野宿者が働ける便利屋、借金相談の法律家ネットづくりに奔走――。
 思いついたらまず行動し、支援の固定観念を軽やかに越える。Tシャツ姿で育てた人脈は今春、多重債務や労働、福祉問題に取り組む人々でつくる「反貧困 ネットワーク準備会」に実を結んだ。
 年100本以上見る映画青年だった東大生時代。友人に誘われ東京・代々木公園で野宿者の越年支援に参加、「命が路上に放置される」現実に衝撃を受けた。 野宿者と一緒に役所と交渉、就労を後押しする。活動の手応えを感じた。
 NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」を01年、友人と2人で立ち上げた。野宿者らにアパートの入居保証人を提供する。一時は個人で300人 の保証人に。「いざとなれば自己破産すればいいやって、腹くくってました」
 00年代に若いホームレスを見るようになり、03年にはネットカフェから相談のメールが届いた。現場は貧困の拡大を告げているのに、福祉は抑制される。 「このままでは貧しい人が本当に殺される」
 7月発売の「貧困襲来」(山吹書店)は生活保護費の計算ソフトが付録だ。
 「自分の最低生活費を知ることが、見えにくい貧困を考える第一歩です」
 (文・清川卓史 写真・小宮路勝)
   *
 ゆあさまこと(38歳)

◆(声)労使対等など、絵に描いた餅 【名古屋】
朝日新聞 2007年9月20日
 無職 川口光春(三重県伊勢市 71歳)
 本紙8日の生活面「働きすぎの現場から」「残業月150時間」に載った「私生活とのバランス、企業にも利益」との学習院大・脇坂明教授のコメントを、繰 り返し読みました。
 限られた紙面の中の意見で判断することは危険なことかも知れませんが、私は中小、零細企業での労働者の実態を、脇坂教授はどこまで理解されているか、疑 問を感じました。
 「自分の会社の短時間勤務制度や育児休業制度を知らない人は、実は結構多い」「制度がないか調べ」よと言われますが、常時10人以上の労働者を働かせて いても就業規則さえなく、あっても周知徹底されず、就業規則は課長のロッカーの中というのが現実です。
 「落ち着いて上司と話し合ってみては」ともありますが、そうすれば経営者からは不良社員のレッテルをはられ最悪の場合、小さなミスで職場から追放された 実態を見ています。
 真の労使対等の場を作らねば、すべてが絵に描いた餅です。労働者の声を経営者に理解させるためには労使対等の、労働者自らの手による、労働者のための労 働組合が先決です。

◆都内の最低賃金、20円増の739円に /東京都
朝日新聞 2007年9月20日
 07年度の都内の最低賃金について、東京労働局は18日、時給を20円引き上げて739円にすると発表した。最低賃金引き上げは4年連続。引き上げ幅は 93年度(19円引き上げ時給620円)以降で最大となる。
 10月19日から都内の全労働者を対象に適用される。8月の厚生労働省の中央最低賃金審議会では、東京都などAランクの都府県の引き上げ目安は19円 だったが、東京地方最低賃金審議会が1円分を上乗せして答申していた。

◆(終わらぬ公害 第2部 四日市の軌跡:13)組織 3500人集まったが…/三重県
朝日新聞 2007年9月20日
 67年11月30日夜、四日市公害訴訟を支持する会が正式に発足した。提訴から3カ月、第1回口頭弁論が開かれる前夜だった。
 会員は3500人。三泗(し)地区労組協議会(地区労)の事務局職員だった沢井余志郎(79)は解説する。
 「個人で、おれやったる、という人はほとんどいなかった。(官庁の)労働組合が、まとめてポンと金を払えば、それで会員になる。だから、人数はすぐ集 まった」
 例えば傍聴券の確保では、口頭弁論のたびに裁判所に並ぶ人を出してもらうよう各組合に依頼する。傍聴席に座ることが前提だったが、早朝から並んで傍聴券 を取った後、「後は頼むわ」と沢井に渡して帰っていく組合員もいた。
 傍聴券を抱え込んだ沢井は、津地裁四日市支部の向かいある市役所に駆け込んだ。「半日でもいいから座ってくれ」と頭を下げて回った。
 傍聴席が埋まらないこともしばしばあった。
    ■
 訴訟の実質審理が始まったばかりの67年12月。後に市長になる加藤寛嗣(故人)が市助役に就任する。加藤は、裁判の被告だったコンビナート6社の1 社、三菱油化(現三菱化学)の旭工場総務課長だった。
 三菱油化は当時、コンビナート各社に供給するエチレンを生産する中核企業だった。沢井は思い起こす。
 「おまえたちが敵に回したコンビナートと市は一緒になって闘うぞ。当時の九鬼喜久男市長(故人)が、そんな姿勢を示したんだと受け止めた。なにせ、コン ビナート寄りの発言を議会などで繰り返していたから」
 反公害運動が広がらないなか、沢井は「大事なことは被害の実態を知ってもらうことだ」と、磯津通いを続けた。
 患者から聞いた話を録音し、そのまま起こしてガリ版を切った。提訴翌年7月から文集「記録 公害」を自費で発行した。十数ページから80ページのB5 判。全部で60号まで出した。公害病患者に成り代わった生活綴(つづ)り方運動でもあった。(敬称略)

◆ベルトコンベアーの自主点検求める 石川労働局、313事業所に /石川県
朝日新聞 2007年9月20日
 石川労働局は19日、ベルトコンベヤーを設置している県内313事業所に対して、巻き込まれ防止や非常停止装置の設置について自主点検を求める点検用紙 を配布した。6月21日、かほく市の工場でコンベヤーに巻き込まれて男性社員(当時32)が死亡した労災事故を受けて実施を決めた。
 同局安全衛生課によると、99年以降、休業4日以上を必要とするコンベヤーによる労災事故は先月15日までに116件あり、そのうち98件が、はさま れ・巻き込まれによる事故だった。死亡事故は4件で、うち3件が巻き込まれ防止措置をとっておらず、非常停止装置もなかった。
 このため同局は、コンベヤーを使っている可能性が高い産廃処理、採石、鋳物の各業者らに対して自主点検してもらうことにした。コンベヤーの種類や非常停 止装置の設置状況などを10月1日までに回答してもらう。
 同局は「巻き込まれ防止措置をとっていれば、事故があっても被害は最小限に抑えられる」と呼びかけている。

◆大野市、定住促進へ情報発信 全国誌に広告掲載へ 回帰フェアに相談ブース /福井県
朝日新聞 2007年9月20日
 「田舎暮らし、応援します」――。大野市は今月下旬、全国発行の週刊誌に、定住を呼びかける広告を初めて出す。7年前から、県内外の人を対象に住宅取得 の支援事業に取り組んできたが、市人口は年々減少している。このため、発行部数が多く、都市部でも購読率が高い週刊誌に絞って広告掲載することにした。東 京、大阪で来月に開かれる中高年のIターンなどを支援するイベントにも相談ブースを設けるなど情報発信を強めていく。(木脇みのり)

 広告を出すのは、9月27日発売の「週刊文春」10月4日号。1ページの3分の1の縦長スペースに「時がゆっくり流れるまち 北陸の小京都 越前おお の」として、中世から近世に建てられた寺院が連なる寺町通りと、名水百選に選ばれた「御清水(おしょうず)」の2枚の写真を掲載。「第二の人生はのんびり ゆっくり 水と緑あふれる田舎で暮らしたい」「田舎暮らしを希望する貴方(あなた)を応援します」と呼びかける。広告費は約30万円。
 同市の8月1日現在の人口は3万6947人。最近4年間では、年間300〜600人の減少が続いている。65歳以上が人口に占める高齢化率(今年4月1 日現在)は27・47%。県内9市では勝山市(27・62%)に次いで高い。
 同市は、定住希望者向けに、96年度から中心商店街の空き地や空き家を活用した家賃・改修費の補助事業、00年度からは住宅取得補助を実施。新規就農の サポート事業も導入してきた。
 このうち住宅取得補助制度(05年度に制度内容を変更)では、自宅を新築した場合には上限100万円で取得額の20分の1を、中古住宅を購入した場合に は上限50万円で取得費の10分の1をそれぞれ補助。家賃補助は上限2万円で、2分の1を支援している。
 これらの制度を活用し、県内外から00〜04年度は20件、05年度以降は6件の市内への移住があったという。
 8月からは市ホームページで、各課で実施していた関連の定住支援事業をひとまとめにして紹介し、わかりやすく閲覧できるようにした。市内の全区長にも呼 びかけ、定住希望者に提供できる空き地や空き家の情報を収集している。
 また、全国の経済、労働関係の団体などでつくるNPO「ふるさと回帰支援センター」(東京)が、団塊世代らに地方移住の情報などを提供するため10月に 開く「ふるさと回帰フェア2007」にも参加する。東京と大阪の2会場に、全国の計240自治体が参加する予定。県内からは県と大野、勝山の両市が予定し ている。他の自治体とともに大野市も相談ブースを設けて市職員2人が対応する。
 東京は10月6日午前10時〜午後5時、千代田区の大手町サンケイプラザ2〜4階で開催。大阪は同27日午前11時〜午後5時、大阪市浪速区のなんば パークス7階パークスホールで開かれる。ともに入場無料。
 週刊文春への広告掲載について同市総合政策課は「全国80万部の発行で大人の読者が多い。目に留める人が仮に1%でも、8千人にアピールできる。予算の 制約も考え、効果的な1媒体を選んだ。少しずつの取り組みだが、大都市圏で少しでも目に留めてもらえるPRを進めていきたい」と話している。

 【写真説明】
週刊文春に掲載される、大野市・寺町通りの写真(同市提供)

◆中国人実習生の賃金支払い要求 事業組合に支援労組 /熊本県
朝日新聞 2007年9月20日
 外国人研修・技能実習制度で来日した中国人実習生6人が、天草市の縫製会社で不当な労働を強いられたと訴えた問題で、支援する労組「ローカルユニオン熊 本」の上山義光委員長らは19日、実習生6人とともに受け入れ窓口の事業協同組合(小国町)を訪れ、未払い賃金の支払いなどを求める要求書を提出した。
 ユニオンは個人労働者が加入する県労連加盟の労組で、6人を支援している。6人は9日にユニオンに加入したという。
 要求書では、1人約330万〜430万円、計約2300万円の支払いのほか、新たな受け入れ先を探すことや、話し合いの場を持つことを協同組合に求めて いる。
 ユニオンは「協同組合は雇用主ではないが、会社を紹介しており管理責任がある」と主張している。これに対し協同組合は「取材はお断りしている」と話して いる。

◆個人の請求権認めず 原告「不当」と抗議 第2次不二越訴訟判決 /富山県
朝日新聞 2007年9月20日
 第2次不二越訴訟は19日、富山地裁で判決が言い渡され、原告側の請求は退けられた。判決は強制連行や強制労働の事実は認定したが、4月の最高裁判決を 踏襲し、「日韓請求権協定により消滅した」と、個人の請求権は認めなかった。原告らは「不当判決だ」「今日の判決は無効」と無念を訴えた。原告側は控訴を 明言し、不二越をめぐる戦後補償訴訟は今後も続く見通しとなった。

 「原告側の請求をいずれも棄却する」
 午後2時すぎ、佐藤真弘裁判長は主文を言い渡し、判決理由を述べた。「勧誘者の欺罔(ぎもう)で、勤労挺身(ていしん)隊に参加したものと認められ、強 制連行されたというべきである」。原告らが主張する強制連行の事実はほぼ認め、不法行為による請求権の存在を認めたが、「日韓請求権協定により、日本国及 びその国民は、消滅した請求に応じる法的義務はない」とし、原告の訴えを退けた。
 判決は約5分で終わり、佐藤裁判長らが退廷しようとすると、傍聴席にいた原告側の支援者の1人が立ち上がり、「原告の訴えを認めてください」と声を張り 上げた。すると「不当判決だ」「恥を知れ」などと傍聴席から怒号があがった。裁判中に亡くなった原告の遺影を手にした原告団長の李福実さん(75)も「良 心もないんですか」と叫んだ。他の原告も法廷を立ち去らず、裁判所職員らに抗議した。
 午後2時10分、富山地裁の正面玄関前で、支援者が「不当判決」などと書いた横断幕を広げて高々と掲げた。
 支援者ら約20人は険しい表情で「不当判決」「不二越は原告に未払い借金を払え」などと、こぶしを突き上げてシュプレヒコールを始めた。コールは10分 以上続き、敷地の外に出るように促す裁判所職員と支援者らが押し問答になる場面も。法廷から出てきた原告の一人は両手を地面にたたきつけて、泣き叫んだ。
 その後、原告らは横断幕を手に市内をデモ行進した。
 富山市民プラザで開いた会見で、島田広弁護士は、強制連行の事実を認定したことを評価する一方で、「権利は消滅しないが請求はできないという、4月の最 高裁のそのままの判決を繰り返した。国際社会から許されない。極めて不当な判決だ」と批判した。
 会見後、原告や支援者らは不二越本社前で「不当判決弾劾」と書かれたビラを配り、責任者との面会を求めたが、不二越側は拒否。敷地内で座り込みをした原 告らに、警備員が敷地外へ出るように促す一幕もあった。
 午後7時から富山市安住町の「サンシップとやま」での報告集会には原告に加え、全国から集まった支援者ら約60人が参加した。

 ◆法廷外の救済に言及せず
 《解説》富山地裁は、4月の最高裁判決を踏襲した。挺身(ていしん)隊をめぐる訴訟では、5月の名古屋高裁の判決でも、日韓請求権協定を理由に原告側の 請求権を退けた。今回の判決も最高裁判決の影響を受けるのは必至の情勢だった。
 判決では、(1)勧誘された原告らが当時12〜16歳と幼かった(2)実際には勉強の機会がなかったのに上級学校へ進学できると勧誘された(3)親の反 対を抑えるため脅迫があったことなどから、強制連行と認定。工場での労働も幼かった原告には過酷で、賃金も支払われず、十分な食事も与えられなかったこと から、強制労働だったと判断した。
 そして、最高裁が4月に中国人強制連行訴訟の判決で示した「枠組み」と同じように、日韓請求権協定を締結した韓国は、個人の請求権を失ったという判断を 示した。
 不法行為での損害賠償請求権は認めても、法廷内の請求権は失われているとする判決は、各地で相次いでいる。原告側の島田広弁護士も「最高裁の影響は大き かった」と話す。
 今回の判決が最高裁判決と大きく異なるのは、最高裁が促したような法廷外の救済に一切言及しなかったことだ。最高裁判決に比べて後退したとも言える。
 原告らは高齢だ。原告団長の李福実さんは「私たちに残された日は長くない。だが、恨みの感情は永遠に捨てない」と話した。
 救済を促す「言及」がなかったとは言え、強制連行の事実は認められた。国と不二越の誠実な対応がなければ、裁判はさらに続くだろう。(舩越紘)

 ◇「解決を」の付言、なぜしなかった
 戦後補償問題に詳しい田中宏・龍谷大教授(日本アジア関係史)の話 最高裁は、何らかの解決を図るべきだとの付言を付けたが、今回はなぜ付言しなかった のか。最高裁の判例を踏襲したつもりだろうが、救済には言及せず、判例を曲解した判決と言える。法廷での解決は難しいだけに、最高裁の判決の時点で政府が 動くべきだった。

 ◇事実認定では主張認められず
 不二越総務部の話 原告の請求が却下され、当社勝訴の判決だったが、事実認定で当社の主張が認められずに残念。我々の主張が正しいと考えており、事実認 定まできちんと認めて欲しかった。控訴審や和解などについては、まだ具体的には考えていない。

 ◇今までの主張、認められた
 外務省北東アジア課の話 今までの主張は認められた。判決の内容の細かい部分については、よく分からないので、コメントは差し控えたい。

 【写真説明】
「判決は無効だ」と主張する原告ら=富山市の富山地裁前で

◆(Doraのドラ猫 ボンジュール!)暮らしを楽しむ達人
朝日新聞 2007年9月20日
 「パリジェンヌは、クロワッサンを朝、わざわざ買いに行くって?」
 「ディナーには、一度着替えに戻るってホント?」
 ウィ、ウィ、その通り。
 パリジェンヌは生活を楽しむ達人です。朝の忙しいひとときも、焼きたてのおいしいクロワッサンを食べたいし(買いに行くのは男性に頼むことが多いようで すが)、せっかくのディナーなら家に帰ってシャワーを浴びて着替えたいし、香水もつけ替えたい。
 特に、サマータイムの時期は夜の時間が長いので、ナイトライフはとっても重要。映画や芝居を見たり、パーティーに出かけたり、クラブ遊びをしたり、夜遊 びの種類はさまざまです。ホームパーティーが開かれるのは、たいてい平日。仕事から帰ってパーティーの準備を始めるので、開始時刻はだいたい8時を過ぎま す。なかなかパワフルでしょ? もちろん、子どもがいるママだって同じです。
 オンとオフを使い分けるのも上手です。パリもまた、都会ならではの忙しさやストレスと無縁ではないので、オフタイムはのんびりと過ごします。
 パリから車で1〜2時間の郊外にあるメゾン・ドゥ・カンパーニュ(別荘)で週末を過ごすという人もかなりいます。週35時間労働制のおかげで、木曜日か ら日曜日までは田舎暮らし、なんていう人もいます。
 都会暮らしのパリジェンヌの田舎回帰は、これからもますます進みそうです。
 クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)を高めること。それは給料アップのために残業するよりも、よっぽど大切なことなのです。
   *
 「パリでの私はおいっ子のベビーシッター。まだ11カ月の坊やはホントにかわいくって面白い!」
 (Dora TAUZIN<ドラ・トーザン>フランス人国際ジャーナリスト)
 <編集協力/村松千絵 イラスト/平澤まりこ 写真/Norio Take>

◆介護福祉士、現場離れ深刻、呼び戻しへ実態調査――厚労省、離職理由など。
2007/09/19, 日本経済新聞
 介護福祉士の資格を持ちながら介護の仕事に就いていない「潜在的介護福祉士」について、厚生労働省は初の実態調査に乗り出す。介護現場では人手不足が深 刻になっているが、有資格者のうち約四割が「潜在的介護士」とみられる。来年度中に数万人規模のアンケートを実施し、介護の仕事を離れた理由などを調べ、 復帰支援策などに反映させる。
 介護福祉士は、障害者や高齢者の介護について、リハビリなどの高度な知識や技術が必要とされる国家資格。介護福祉士の養成課程を修了するか、介護現場で 三年以上の実務経験を積んで国家試験に合格するなどの方法で認定される。
 厚労省によると、有資格者数は年々増加しており、二〇〇六年九月末現在で登録されている介護福祉士は約五十四万人。同省が〇五年度の資格者(約四十六万 人)について調べたところ、四割強にあたる約二十万人が「潜在的介護福祉士」と推計された。
 介護現場では人手不足が深刻化しており、厚労省は今年八月、潜在的介護福祉士を呼び戻すことなどを目指す人材確保の指針を策定した。しかし、実態につい て不明な点が多く、実態調査に乗り出すことを決めた。
 アンケートは資格取得時の登録情報を基に対象者を決め、介護の仕事に就いていない場合(1)辞めた理由(2)辞めた時期(3)介護現場に復帰することを 考えているかどうか、などについて尋ねる。
 人手不足対策として厚労省は、潜在的介護福祉士への就職説明会や無料職業紹介などの復帰支援について検討を進めている。実態調査で明らかになったニーズ を支援内容に反映する。
 立教大の服部万里子・コミュニティ福祉学部教授は「現役の介護福祉士への聞き取りを実施するなどして、働いている有資格者が辞めないようにするととも に、資格を取得した人が介護の仕事に就くことに力を入れるべきだ」と指摘している。

◆現金給与総額7月1.7%減。
2007/09/19, 日本経済新聞
 厚生労働省が十八日発表した七月の毎月勤労統計調査(確報、従業員五人以上)によると、すべての給与を合わせた現金給与総額は前年同月比一・七%減の三 十八万七千三百七十三円となった。速報段階の一・九%減と比べ、〇・二ポイント上方修正したものの、八カ月連続で前年同月割れとなった。

◆定年後、アジアの仕事紹介、パソナ、中国中心に3年で1000人、相談窓口も開設。
2007/09/19, 日本経済新聞
年金や健康管理
 人材サービス大手のパソナは十月にも、定年を迎えた団塊世代にアジア地域での働き口を紹介する事業を始める。働き先は主に日系企業を想定しており、営業 や技術開発など日本で蓄えた経験やノウハウを生かせる環境を提供する。赴任者や家族の不安を軽減するため、海外からも問い合わせができる年金や健康管理の 相談窓口を開設。中国を中心に、最初の三年間で一千人の転職支援を目指す。
 中国の上海や北京、タイのバンコクなどにあるパソナの事務所で現地の求人情報を収集。全案件を東京に取り寄せ、海外での就業を希望するシニアに提示す る。直接現地の日系企業に紹介するほか、アジア地域に拠点展開する国内企業に、海外赴任を前提にした人材の紹介も行う。
 年金や健康管理などについての相談を受け付ける電話窓口を設置。二十四時間体制を敷き、海外からの問い合わせにもすぐに対応できるようにする。既存のパ ソナのネットワークを生かし、住居のあっせんや地域情報の提供、暮らし方などもアドバイスする。
 アジア地域では製造業、流通業、サービス業など全般的に、日本人の技術者や管理職経験者への雇用ニーズが高いという。将来は欧米系企業への紹介も視野に 入れる。「軌道に乗れば年間一千人程度の紹介も可能」(南部靖之社長)とみている。
 一九四七年から四九年生まれの団塊人口は約七百万人。ニッセイ基礎研究所の調べによると、〇六年の団塊世代の労働力人口(就業者と求職者の合計)は約五 百三万人という。改正高齢者雇用安定法で、段階的な延長雇用が義務付けられたとはいえ、製造業などでは第一線を退く熟練者らも多い。パソナは環境を変えて 働き続けることへのニーズは高いと判断した。
【図・写真】パソナは海外赴任の説明会を企業向けにも行う

◆ハケンの伝道師(2)テンプスタッフ社長篠原欣子氏(仕事人秘録)
2007/09/19, 日経産業新聞
豪州で起業のタネ発見
  篠原氏は一九七三年、三十八歳でテンプスタッフを設立する。起業のタネは一九七一年に仕事で勤務したオーストラリアにあった。
 私は一九三四年、神奈川県横浜市で五人兄妹の四人目、次女として生まれた。父は国民学校の校長、母は助産師だった。父は私が七歳の時に亡くなり、母は戦 時下で私たちを女手ひとつで育てた。そのため、私も将来、仕事をするのが当たり前だと感じていた。働いている母が素敵だとずっと思っていたのだ。
 一九五三年、高木商業高等学校(現高木学園女子高等学校)を卒業し、三菱重工業に就職し事務の仕事をした。まだ若く、仕事よりデートが楽しい時期でまさ しく青春時代だった。その後、東洋電業に再就職し、その時に出会った九歳年上の男性と二十六歳で結婚した。しかし、仕事を辞めて家庭で過ごす結婚生活は私 の性には合わず、結局一年と持たなかった。
 離婚してからは東洋電業で再び働き始めた。働きながら、新橋のオフィス近くにあった英会話教室に通った。はじめは高校時代に好きだった英語をもう一度学 びたいという程度の気持ちだったが、次第に夢中になり「もっと英語を学びたい。海外に行きたい」と夢が膨らんだ。
 六六年にスイスの知り合いを頼って語学留学。その後、イギリスに単身移住した。イギリスでは住み込みで家事を手伝い語学学校に通った。語学学校には年齢 も国籍も違ういろいろな人々が学びに来る。語学の勉強よりも、考え方の幅が広がったことがその後に役立った。
 滞在費が底をつき帰国し、一年半はドイツ系の日本ワッカーで社長秘書として働いた。英語が生かせる職場だったが、内心、能力不足も感じて「もっと英語を 学びたい」との気持ちが首をもたげた。チャンスを模索していた時に英字新聞「ジャパンタイムズ」に、オーストラリアで働く日本人職員の求人が載った。渡り に船と七一年に勤めたのがオーストラリアの市場調査会社PASAだった。
 オーストラリアの生活は楽しかった。女性役員や女性の経理部長、女性のスーパーバイザー。女性が生き生きと働く姿は新鮮だった。私がトイレに入ろうとす ると、男性の社長がドアを開けてくれた。知り合いの女性に自動車に乗せてもらった時も、彼女の五―六歳の息子がドアを開けてくれた。それだけ女性が大切に されていたのだ。
  オーストラリア滞在中に労働者派遣の仕組みを知る。日本にも必要だと直感し、帰国後に起業を思い立った。
 ある時、同僚の秘書が休暇を取ると、彼女の机で見知らぬ人が仕事をしているのに気づいた。教えられもしないのにテキパキと仕事をこなす姿は鮮やかだっ た。誰かが休む度に電話で呼ばれて仕事をこなす彼女たちは一体、誰なのだろう。同僚に聞くと「テンポラリー・スタッフ」だという。
 日本にはない、すごく便利な仕組みだと思い、強く興味を持った。運良く知り合いの紹介で、現地の派遣会社を見学するチャンスを得た。オフィスに座って一 日中、仕事の様子を見た。女性経営者に昼食をごちそうになりながら仕事の流れも教わった。
 楽しいオーストラリア生活を過ごす一方、海外での生活が長くなるにつれ日本のことが気になるようになった。日本で腰を落ち着けようと帰国。ただ、男尊女 卑の雰囲気が強かった日本の会社には希望が持てなかった。
 そこで、いっそのこと自分で会社を作ってみてはどうかと考え始めた。では何を始めようかと思った時、頭に浮かんだのがオーストラリアで知った「テンポラ リー・スタッフ」だった。
【図・写真】オーストラリア勤務時代の篠原氏(シドニー)

◆エルピーダ・坂本社長、「取締役・職場の総意で続投」、内規に沿いヒアリング。
2007/09/19, 日経産業新聞
「60歳以降の業務 慎重対応」
 エルピーダメモリは十八日、九月三日で満六十歳を迎えた坂本幸雄社長=写真=について、取締役と職場代表者の総意により、現職を継続すると発表した。 「六十歳以降の幹部の業務は慎重な対応を心がける」とする定年規定に近い内規に沿って社内ヒアリングをした結果、業績を立て直した坂本氏の功績を評価する 声が強まった。
 エルピーダ本体は労働組合が無いため、職場代表者の会議を十一日に開催。十四日には取締役に個別に聞き取りし、いずれも全員が坂本氏の続投を求めたとい う。取締役の任期は一期二年で来年六月が改選期。株主総会で承認されれば、坂本氏がそれ以降も続投する。
 役員の続投方針を発表するのは異例だが、「内規」をもとに社内外に憶測が飛び交うのを防ぐのが狙いとみられる。DRAM価格が安定しない中、坂本氏の進 退がはっきりしなければ、株価の下振れ要因にもなりかねない。今後は数年後を見据え後進を育てられるかが課題になりそうだ。

◆県民ニーズ、医療・労働施策が上位――島根県調査、「文化」「空港」低く。
2007/09/19, 日本経済新聞 地方経済面 (中国A)
 島根県が実施した「県政満足度調査」で医療や労働・福祉に関する施策へのニーズが上位を占めていることが分かった。逆に文化振興や空港整備のニーズは低 かった。
 県が取り組む七十項目の施策について県民に重要度や満足度を聞き、重要度から満足度を引いた数値をニーズ度と定義した。ニーズ度首位は「優れた医療従事 者の確保」(五八ポイント)で、「医療機能・施設の充実」(五七ポイント)、「労働福祉の充実」(五四ポイント)が続いた。いずれも重要度が高い半面、満 足度は低かった。
 一方、ニーズ度が低かったのは「芸術・文化の振興」(一七ポイント)、「国際交流・協力の推進」(一九ポイント)、「空港の整備」(同)など。県は「今 年度中に作成する島根総合発展計画の参考にしたい」としている。調査は七月上旬に約三千三百人を対象に実施し、約千六百人から回答を得た。

◆最低賃金20円引き上げ、都内、来月から739円――生活保護と「逆転」続く。
2007/09/19, 日本経済新聞 地方経済面 (東京)
 東京労働局は十八日、都内の最低賃金を十月十九日から、現行より時給で二十円引き上げ、七百三十九円にすると正式発表した。これまでの五円程度の引き上 げに比べると大幅な増額。ただ、増額後も最低賃金の月額に対し生活保護費の月額は八千二百円強上回る水準で、働くより生活保護を受ける方がお金をもらえる 「逆転現象」が続いている。
 都内の最低賃金を審議する東京地方最低賃金審議会で賛成多数で決めた。引き上げ額の目安は中央最低賃金審議会が示した十九円を中心に議論。大幅な引き上 げに難色を示す経営者側と、「十九円でも安すぎる」とする労働者側で調整は難航。最終的に目安に一円を上乗せした。
 二十円の引き上げで試算すると、最低賃金の月額は十一万三千九百三十六円(社会保険料など引き去り後)と三千八十三円上がった。それでも生活保護費の月 額十二万二千百九十三円(十八歳単身者で試算)を八千二百五十七円下回る。
 今回の審議では、生活保護費との逆転を直接結びつけた議論はしなかったという。政府は今の臨時国会で、「生活保護との整合性」に配慮して最低賃金の大幅 引き上げを盛り込んだ最低賃金法の改正を目指している。

◆「検定に合格で技能実習生に」 日本経団連、外国人研修制度に独自の改正案
朝日新聞 2007年9月19日
 過酷な労働環境などが問題になっている外国人研修・技能実習制度について、日本経団連は18日、一定の技能レベルに達した研修生がいつでも技能実習生に 移行できるようにすることなどを盛り込んだ独自の制度改正案を提言した。労働関係法が適用されない研修期間を短縮できるため、労働者保護の強化にもつなが るとしている。
 現行制度では、入国1年目は研修生として日本語や技能を学ぶ。その後2年間は「労働者」として働きながら技能実習をする。提言では研修を1年と限定せ ず、一定レベルの検定試験に合格した時点で実習に移行できるようにすべきだとした。
 同制度をめぐっては、厚生労働省が1年目から実習生として扱うべきだとし、経済産業省が研修期間を残すべきだと主張。提言は「厚労省案では技能移転が有 効に行われるか疑問」としている。

◆夫婦で職求め、東京漂流 寮→ネットカフェ→ゲストハウス→生活保護
朝日新聞 2007年9月19日
 仕事を求めて東北地方から上京した一組の夫婦が、この春、インターネットカフェで寝起きする暮らしに追い込まれた。2人はどんな思いで故郷を後にし、何 を経験したのか。人材会社の寮、ゲストハウス、「敷金・礼金ゼロ」が看板の賃貸ビジネス――。東京を漂流した2人の足跡をたどると、貧困を生み出す格差社 会の断面が浮き上がってくる。
 (清川卓史)

 ●疎外感抱え、睡眠3時間
 夫は40歳、妻は27歳。
 宮城県の海辺の街、妻の実家で2人が新生活を始めたのは昨年春のこと。小学生で両親を亡くした夫が待ち望んだ「家庭」だった。
 妻の父親は事故の後遺症で働くのが難しく、母親も祖母の介護で動けない。一家5人の家計は厳しかった。「最低でも手取り15万円欲しい」。夫は働き口を 探したが、水産加工会社の面接に落ち、工場のパートは時給600〜700円台で生活の見通しがたたない。雇用回復。就職バブル。実感はなかった<※ (1)>。
 そんなとき、スーパーで手にした無料求人誌の「月収25万円以上可」という見出しに目を奪われた。人材会社の県外求人。「カップルOK」の寮も魅力的 だった。「将来の出産、育児を考えても、お金をためたい気持ちが募った」(夫)
 夫婦の漂流が始まった。3カ月などの短期契約で、その都度、様々な人材派遣・請負会社のスタッフとして、埼玉県や長野県の大手メーカーの工場を転々とし た<※(2)>。
 4月下旬、4回目の「出稼ぎ」に出た。今度は東京で定職につき、住み続けようと意気込んでいた。
 コンビニエンスストアの弁当を作る仕事だった。派遣会社から「最初の3カ月は社会保険のないアルバイト」と現地で突然通告された<※(3)>。深夜から 早朝まで6時間労働のはずが実際は8時間で、立ち作業なのにまともな休憩もない。
 話が違い過ぎる――。怒りを抑えられず寮を出た。
 残金は1万3千円。郷里に戻っても展望はない。2人は浅草や池袋のネットカフェに泊まり<※(4)>、求人誌を読みあさった。
 まもなく妻は、期間1カ月で旅館に住み込む仕事を見つけた。生きるために、離れ離れになるしかなかった。夫は日雇い派遣会社に登録し<※(5)>、事務 所移転や本の発送などの作業をしながらネットカフェ暮らしを続けた。
 一晩千〜1200円の「ナイトパック」が使えるのは午後11時から。近くの公園で待っていると、不審者と思われ通報された。社会からの疎外感が胸を刺し た。神経が高ぶり、睡眠時間は3時間ほどだった。

 ●「地方から予備軍続々と」
 約1カ月後、ある程度の現金がたまり、夫は相部屋で家賃3万円台のゲストハウスに移った<※(6)>。
 夫婦で暮らせる部屋を探した。妻がインターネットで「敷金・礼金ゼロ、保証人不要」の部屋探しサービスを見つけた。事務所に足を運び早速申し込むと、 「施設付鍵利用契約書」という書面に「居住権は認められない」とあった<※(7)>。気になったが意味がよくわからなかった。
 4畳半ユニットバスつき、家賃5万9千円。敷布団がなく段ボールの上で寝たが、2カ月ぶりに夫婦の暮らしに戻った。しかし新たな不運に見舞われる。夫は ネットカフェ暮らしで腰を痛め、ぜんそく発作も加わり働けなくなった。妻は精神的な症状が悪化、服飾店員の面接に3社続けて落ちた。収入が断たれた。
 「家賃」(利用料)の遅れには厳しいペナルティーが待つ。契約時に押印した書面では、支払いが1日でも遅れたら入室できなくなり、利用料の10%の違約 金を払う。再利用するには1万5千円余りの再利用料を払う定めだった。
 支払期限は刻々と迫る。2人で野宿か、それとも――。夫は壁に張った風景写真に自分が書いた言葉を見つめた。「人間として生き、人間として死にたい」
 夫婦は決断した。テレビ番組で知ったNPO法人「自立生活サポートセンターもやい」に電話し、生活保護<※(8)>の申請を相談。もやいの支援で生活保 護の受給が決まり、新たなアパートに引っ越した。
 「『ネットカフェ難民』の予備軍は、派遣会社の寮にもゲストハウスにもいる。見えにくいけれど、地方から都市に出てきて、どんどん増えている。それが怖 い気がする」
 夫がつぶやいた。
   *
 ※(1)06年平均の有効求人倍率は最高の愛知県が1.85倍、最も低い青森県は0.44倍。宮城県内(06年度平均)でも、ハローワークの仙台区域は 1.44倍だが、気仙沼・塩釜区域などは0.6倍を切る。
 (2)非正社員の数は01年から07年にかけて366万人増え、正社員は247万人減少。全労働者に占める非正社員の割合は33.7%に拡大した。
 (3)本来、アルバイトなど非正社員でも、正社員の労働時間の約4分の3以上働けば厚生年金や健康保険に加入させる必要がある。
 (4)厚生労働省の推計では、住居を失い、主にネットカフェなどで寝泊まりする「ネットカフェ難民」は全国で約5400人。約4分の1が20代。
 (5)携帯やメールで仕事を手配され、毎日違う派遣先で働くのが日雇い派遣。日払いのメリットがあるが、給料からの不透明な天引き問題などが表面化。
 (6)敷金・礼金が不要で格安なゲストハウスは、外国人旅行者や地方出身の若者などが数多く利用している。2段ベッドの相部屋から個室まで設備は多様。
 (7)一般の賃貸借契約であれば、借地借家法で、契約更新など様々な場面で借り手の権利が保護される。
 (8)生活保護受給者は06年に150万人を突破、この10年間で約1.7倍に急増した。

 ◆雇用安定の政策必要
 日大経済学部の村上英吾准教授(労働経済論)の話 労働市場の変化や地方の疲弊など、様々な影響がこの夫婦に集中している。派遣・請負などの不安定な雇 用が増え、年齢を重ねるほど正社員になるのが難しくなり、家族などの支えが弱い人は貧困に陥りやすい。ネットカフェ宿泊者の存在が注目されるが、短期の就 労支援にとどまらず、所得を保障しながらの腰を据えた生活立て直しと、普通の生活ができる安定的な雇用を増やす政策が必要だ。

 【写真説明】
ネットカフェで寝泊まりしていたとき、表参道近くの路地から六本木ヒルズが見えた。富の象徴のような輝きを2人でぼうぜんと見つめたという=東京都港区南 青山で、江口和裕撮影

◆非正規公務員、法の谷間 フルで働いて年収140万円 パート法適用外・雇用保障なし
朝日新聞 2007年9月19日
 役所の職員といえば、「雇用が保障され生活が安定している」と思われがち。だが財政難のなか、低賃金で不安定な非正規雇用の職員が増えている。公務員だ からとパート労働法などが適用されず、非正規だからと雇用の保障もない「法の谷間」の働き手たち。公務員制度改革を語るとき、こうした「官製ワーキングプ ア」の問題が置き去りになってはいないだろうか。(編集委員・竹信三恵子、友野賀世)

 「公務員はクビにならなくていいよね」。06年、兵庫県加古川市の公立図書館で働いていた女性(37)は、利用者の言葉に絶句した。
 02年に勤め先が倒産。司書の資格をとり、図書館を運営する団体の非正規職員になった。昨春、職場が市直営に変わり、市の臨時職員に。正職員と同じ時間 働いて半分以下の年収が、140万円台へとさらに2割減った。期間1年の契約も更新しないと言われた。労組を作り交渉したが、契約は更新されなかった。
 今は別の公立図書館の臨時職員。「資格も経験もあるのになぜ続けて働けないのか。熟練したら交代、では住民サービスも悪化する」と怒る。
 総務省の05年調査では自治体の非正規職員は約45万人。だが、人数を毎年正確に把握する統計はない。人件費ではなく物件費で扱われるためだ。
 自治労傘下の職場の非正規職員は06年度に約40万人で、公務員の4人に1人に増加=グラフ。保育士や年金相談員、女性センター職員など身近な行政を担 うが、平均年収は01年の約180万円から05年の166万円に低下した。
 総務省によると国家公務員は、06年7月現在で常勤約30万に対し非常勤約15万人。ある非常勤の30代女性は、日給7500円、週3日勤務、月収は約 9万円だ。勤務日数が短く国家公務員共済に入れない。「国民年金を月1万4千円払ったら手取りはもっと減ります」

 ◆「官製ワーキングプアだ」
 非正規職員の劣悪な労働条件の背景には、財政難による正職員の定員抑制と、延長保育や開館時間延長などサービス拡大への住民の要望がある。
 地方公務員法では、非正規職員とは一時的に雇う働き手だ=表。国家公務員も、恒常的な仕事は正職員が行うのが原則。本来は例外的な働き方が拡大利用され てきた。
 加えて、非正規職員は「法の谷間」状態にある。公務員には育児介護休業法やパート労働法が適用されないが、公務員向けの育児介護制度でカバーされる。だ が、非正規であることを口実に、公務員向けの制度から外す場合が少なくない。
 千葉市の非常勤手話通訳の女性は、1年契約を更新して4年働き、育児休業を求めたところ、次の契約を打ち切られた。日本弁護士連合会に人権救済を申し立 て、04年、育休を認めるよう救済勧告が出された。
 社会保険への未加入も多い。東京都江戸川区では昨年まで、「正職員の4分の3以上の労働時間、労働日数」という社会保険の加入資格を満たしても、臨時職 員は未加入だった。労組の要求で区は加入を認めたが、新たな募集では、多くが資格を満たさない短時間パートに切り替えられた。
 国の非常勤はさらに不安定だ。契約は1日単位の「日々雇用」で、期間は最長半年の省庁がほとんど。国家公務員一般労働組合は「国が率先して日雇いをして いる。これでは官製ワーキングプアだ」と批判する。同労組の8月の電話相談には「お前たちはいつでもクビを切れると上司に脅された」との訴えもあった。

 ◆各地に労組、変化の芽
 変化の芽も出ている。
 今月1日、東京都荒川区で、同区職員労組や各地の非正規公務員の労組が、格差是正を求め集会を開いた。約170人が参加し会場はあふれた。
 同区では、正職員が20年で35%減り、非正規職員の比重が増すなかで、今年度から「主任非常勤」や「総括非常勤」の区分を設けた。賃金は一律月16万 8600円だったが、最高の総括非常勤で25万300円まで引き上げた。研修や福利厚生、残業代なども認めた。
 同区職員労組の白石孝書記長は、新区分をつくるだけでは不十分だとしつつ、「非常勤労組が各地に生まれ、報酬アップや残業代の満額支給などに取り組む自 治体が出てきたのは前進」と話す。
 国も今年の人事院勧告に、非常勤職員の「職務の実態にあった適切な給与」の検討などを盛り込んだ。「優秀な人が非常勤だからと低賃金で働くのは損失」 (厚生労働省幹部)との声も出る。
 7月の参院選で当選した民主党の相原久美子さんは、札幌市の非常勤職員出身だ。「住民の公務員批判が、制度の改善ではなく貧しい非正規職員の待遇引き下 げにつながってしまう現実がある。正職員転換は難しくても、同じ仕事なら同じ時給、仕事が常にあるなら継続雇用と、実態に合わせた見直しを急ぐ時期だ」と 話す。

 ●職場の連帯・サービスも低下
 伊田広行・立命館大非常勤講師(社会政策論)の話 正規公務員でも若手は安い。年功部分が大きいため、実際の仕事の負担度と賃金が見合っていない。ここ を正さず、非正規職員にしわ寄せしてしのごうとしたためワーキングプアが生まれ、職場の連帯も崩れ、サービスの質の低下も招いている。職務にあった処遇へ と10年、15年計画で切り替えるなど、年配職員の不安をやわらげつつ、具体的な改定に踏み出す時期だ。

 ■主な非正規公務員とその根拠法          
 【自治体】
 ○臨時職員(一般職)
 〈根拠法〉地方公務員法22条
 〈働く条件〉緊急や臨時の職。任期は半年以内で更新1回。想定される仕事は事務補助など
 ○非常勤職員(特別職)
 〈根拠法〉地方公務員法3条3項
 〈働く条件〉専門的技能を一時的に提供。任期は原則3年以内で更新は可能。校医や委員会委員など

 【国】
 ○非常勤職員
 〈根拠法〉国家公務員法、人事院規則15−15、閣議決定など
 〈働く条件〉日々雇用は1日8時間を超えず、その他は常勤職員の週労働時間の4分の3を超えない。任期は半年を超えず、更新は省庁の内規による。事務補 助など

 【写真説明】
均等待遇を求める集会に、全国から非正規職員がつめかけた=1日、東京都荒川区で

◆教育予算比率、低い日本 OECD、下から2番目
朝日新聞 2007年9月19日
 経済協力開発機構(OECD)は18日、加盟各国の教育への取り組みを04年現在で調査した結果を公表した。国内総生産(GDP)比で見た場合、日本の 公的支出はギリシャに次いで下から2番目、私的負担を加えると下から5番目だった。各国の教育費は95年からの10年で平均42%増えており、11%程度 という日本の伸び率が今後も変わらなければ、数年後に最下位になる可能性がある。
 OECD教育局は「日本は限られた投資で結果を出しており、非常に効率的」と評価するが、文部科学省は「公共事業などに比べ教育予算の削減幅は小さい。 だが、国際競争力を付けようと他国が強化している中、相対的に国力の低下を招く危険がある」と危機感を強めている。
 調査によると、教育予算に相当する公的支出に、授業料や教材費などの私的負担分を加えた日本の04年のGDP比は4・8%で、数値が比較できる26カ国 中スロバキアと並び21位だった。公的支出に限ると、3・5%と25位に下がる。
 増加率を95年比でみると、最も伸びたのはトルコの129%増。日本は平均の42%を下回る11%増にとどまるが、児童生徒1人当たりでは、少子化が進 んでいるため27%増となり、比較できる22カ国中13位。進学率が伸びている高等教育では1人当たり1%増と、23カ国中16位だった。
 初等から高等教育を通じて、日本は1人に年間8148ドル(約93万7千円)を支出している計算で、OECD平均の7061ドル(約81万2千円)を上 回った。
 OECDはこのほか、日本の特徴として(1)初等教育で1学級28・4人は、韓国に次いで2番目に多い(2)教員の給与は比較的高い(3)小学校教員の 授業時間が最も少ない一方、労働時間は最も長い――などを挙げている。

◆フルキャスト、赤字に転落へ 天引き返還で損失
朝日新聞 2007年9月19日
 日雇い派遣大手のフルキャストは18日、07年9月期業績予想を下方修正し、連結当期損益が8月発表時の6億9千万円の黒字から7億3千万円の赤字にな ると発表した。赤字転落は上場以来初めて。違法派遣が発覚し、8月に東京労働局から事業停止命令を受けて業績予想を下方修正したが、再度の修正を迫られ た。
 全額返還を表明している不透明な天引き問題では、18億円の特別損失を見込む。

◆(終わらぬ公害 第2部 四日市の軌跡:12)提訴 自治労の支援受け前進 /三重県
朝日新聞 2007年9月19日
 2人目の自殺者が出た。67年6月13日、公害病認定患者の60歳男性だった。
 こんなに公害がひどいのに、なぜ訴訟ひとつできないのか。地元紙がそんな内容の署名記事を掲載した。これは放ってはおけない、という空気が再び強まって きた。
 コンビナート企業労組などの協力が得られないなか、社会党市議(当時)、前川辰男(86)の出身母体だった市職員組合が動き出した。同年7月にあった全 日本自治団体労働組合(自治労)大会。市職労が提案した公害訴訟支援決議が採択された。大会会場でカンパも集まった。
 前川は振り返る。
 「四面楚歌(しめんそか)のなか、自治労の支援が訴訟を進める力になった。公害では第三者ということで、客観的に受け止められたんでしょうな」
 自治労大会と同じ時期、野呂汎(ひろし)(76)ら弁護団の数人が、県立大医学部教授の吉田克己(84)のもとを訪ねた。原告側証人として出廷してもら うよう協力を求めた。
 「あんたが出てくれんと訴訟が成り立たんから頼むと言われてね。大きな事件であるということは十分に承知していましたから、まあ、やるよりしゃあないだ ろう、と」
 四日市ぜんそくの疫学調査をした吉田は、協力を約束した。
    ■  □
 それでも支援組織はなかった。だが、自治労の支援を得たことで、同年9月1日に津地裁四日市支部に訴状を出すことが決まった。
 市職員や教職員など地方・国家公務員でつくる公務員共闘会議が、あわてて四日市公害訴訟を支持する会の準備会をつくった。原告患者や弁護団が訴状を提出 する際の応援のため、約100人が動員された。
 患者団体や支援組織が立ち上がり、そして訴訟に踏み切る。そんな他の地域の公害訴訟とは大きく異なるのが四日市公害訴訟の特徴だった。それでも、とにか く訴訟にこぎつけた。新潟水俣病公害訴訟提訴から約3カ月後、日本の4大公害では2番目の提訴だった。(敬称略)

◆被告の会社側「和解は困難」 酒田・中国人強制連行訴訟 /山形県
朝日新聞 2007年9月19日
 第2次大戦中に中国から強制連行されて酒田港で労働を強いられたとして、中国人男性6人が国と酒田海陸運送(酒田市)に計1億5千万円の損害賠償を求め た訴訟の2回目の和解協議が18日、山形地裁であった。原告側は「現時点で和解は困難だが、引き続き話し合いたい」と話した。酒田海陸側は「和解も含めて 検討したが、単独では難しい」などとした。

◆均等法の改正で雇用相談倍増 埼玉労働局雇用均等室、環境整備し活用促す /埼玉県
朝日新聞 2007年9月19日
 働きたいのに、妊娠や出産を機に退職を迫られた――。こんな相談を埼玉労働局に寄せる女性が増えている。4月の男女雇用機会均等法の改正で、妊娠・出産 に関し解雇や不当な扱いに対する規制が強まったことが主な理由だ。県内では就職を希望する女性の割合が全国2位の高さなのに対し、働く子育て世代の割合が 低く、労働局は「何かあれば、まず相談を」と呼びかけている。(前田大輔)

 さいたま市中央区の埼玉労働局雇用均等室では、セクハラや解雇など均等法にまつわる相談を無料で受け付けている。場合によっては、紛争解決のための手助 けもしてくれる。今年度に入って目立つのが、女性の妊娠・出産についての相談だ。雇用均等室の森本頼子室長は「昨年の同時期に比べてほぼ倍の36件(8月 現在)になっている」と話す。
 相談が増えた背景には、4月に施行された改正均等法がある。改正前の「妊娠・出産・産休の取得を理由とする解雇を禁止」という部分が、「妊娠・出産など による解雇や不利益な扱い(減給、配置変更など)を禁止」「妊娠中や産後1年以内の解雇は原則無効」などと変わり、禁止の枠が広まった。
 県内の30歳代の事務職の正社員女性は、妊娠したことを会社に告げると、上司に「小さい子どもがいて急に休むなどしたら迷惑だ。退職してほしい」と言わ れ、雇用均等室に相談した。雇用均等室は会社に「均等法に違反する」と指摘し、女性が続けて働けるように助言。結果、女性は仕事を続けることができた。
 森本室長は「均等法の改正が、少しずつ知られてきたのではないか」と分析する。さらに、県内特有の事情の一つとして「仕事と家庭を両立させたい子育て世 代が多いこと」も挙げている。
 総務省の「就業構造基本調査」(02年)によると、県内の女性の就職希望率は32・2%と、大阪府に次いで全国2位だ。一方、05年の国勢調査では、働 く女性の割合(労働力率)は、30〜34歳で60・2%(全国平均63・4%)、35〜39歳で59・1%(同63・7%)と全国平均を下回っている。
 森本室長は「法改正などで、出産しても仕事を続けられる環境の整備が進んでいるが、知られていない部分も多い。分からないことがあれば相談して」と話し ている。雇用均等室への問い合わせは(048・600・6210)へ。

◆偽装請負などで立ち入り調査 NTT西系会社
朝日新聞 2007年9月19日
 NTTグループの情報通信ソフトウエア開発・運用会社「NTTコムウェア西日本」(大阪市)がグループ内の総合人材派遣会社「テルウェル西日本」(同) に委託した業務をめぐり、コム社が委託先の労働者を直接指揮監督する偽装請負をしていたとして、大阪労働局が2社を立ち入り調査していたことがわかった。 労働者は、別の人材派遣会社からテル社を通じて派遣されていた二重派遣の疑いもあり、同労働局は、労働者派遣法と職業安定法に違反するとして近く2社に是 正指導をする方針だ。
 関係者によると、コム社は95年から法人顧客の電話料金のコンピューターシステムなどについての管理業務をテル社に委託。テル社はオペレーター12人を 別の人材派遣会社3社から派遣を受けてコム社で勤務させていた。テル社は管理者を1人置いているが常駐しておらず、オペレーターはモニター監視や異常時の 修復作業についてコム社の指揮命令下にあったという。

◆タクシー会社、書類送検へ 摩耗タイヤ使用容疑 大牟田3人死亡事故 【西部】
朝日新聞 2007年9月19日
 福岡県大牟田市で7月、タクシーが雨でぬれた路面でスリップして信号柱に衝突し、運転手と乗客計3人が死亡した事故で、県警は、タクシーを運行させてい た「みつわタクシー」(熊本県荒尾市)と同社の幹部2人について、近く道交法違反(整備不良車両の運転)の疑いで書類送検する方針を固めた。タイヤの摩耗 が事故の最大の原因とみており、業務上過失致死容疑での立件も検討している。

 県警の調べでは、同社と幹部2人は、タイヤの溝の深さを「1・6ミリ以上」と定めた道路運送車両法の保安基準を満たさない状態でタクシーを運行させた疑 い。事故後、後部タイヤ2本を調べたところ、溝はほとんどなかったという。
 県警は車両の製造元の協力も得て、事故車両を詳しく検証。ハンドルやブレーキなどに目立った異常がないことを確認した。さらに、事故時の様子を知る生存 者がいないなか、現場のスリップ痕などから当時の速度を推測。運転手の人為的ミスの可能性は低く、摩耗したタイヤが事故の主因との見方を強めている。
 事故後の県警の捜索で、同社が所有する30台のうち2台のタイヤ計3本が同様に摩耗していたことも判明した。
 事故は7月4日早朝、大牟田市の県道交差点で発生。運転手の男性(当時61)と乗客だった当時17歳と16歳の少女の計3人が死亡した。県警は死亡した 運転手についても、道交法違反と自動車運転過失致死の疑いで書類送検する方針。
 事故については、国土交通省九州運輸局が道路運送法に基づく特別監査を実施しているほか、大牟田労働基準監督署も労災事故の観点から調査している。

◆(声)WE導入前に労働の規制を 【名古屋】
朝日新聞 2007年9月19日
 会社員 牛田正行(名古屋市千種区 45歳)
 舛添厚労相は一定条件を満たした会社員を労働時間規制から外すホワイトカラー・エグゼンプション(WE)の導入について、「家族だんらん法」「早く帰ろ う法」などの名前にすべきだったとの持論を展開した。
 名前を変えて賛同を得たいとの思惑のようだが、これで賛同が得られるとは思えない。「残業代が出なければ早く帰る動機付けになる」というが、やらなけれ ばいけない業務を次々課せられるからサービス残業が減らないのではないか。
 こうした状況で導入されたら、サービス残業を合法化するようなもので、ますます長時間労働を強いられることは目に見えている。「日本のホワイトカラーの 生産性は低い」というが、それは、多くの会社で、社内の報告や会議と、そのための調整や資料作りが繰り返される効率の悪さのためで、残業代を無くせば解決 するような問題ではない。
 誰だって安定した職場で働き、早く帰って家族だんらんや趣味に時間を費やしたいのは当たり前のことだ。絵に描いた餅のような薄っぺらな名前を持ち出す前 に、長時間労働の規制など優先してやるべきことに力を注いでいただきたい。

◆車業界の高賃金、かなわない… 飲食・小売り、求人苦戦 東海3県 【名古屋】
朝日新聞 2007年9月19日
 東海3県の小売業や飲食業などの非製造業で、人手不足感が強まっている。賃金引き上げに動く企業も目立つが、価格競争が続く小売業界では、条件面のアッ プに限界がある。フル生産が続く自動車産業を始めとする製造業との賃金格差も大きく、人材確保の「特効薬」は見当たらない。(山内明、福田直之)

 愛知県内に40店を持つアオキスーパー(名古屋市)は、名古屋市東部から三河地区にかけての店で働くパートの時給が、他地区より100円程度高い。好条 件で求人をする周辺の自動車関連メーカーに対抗したためだ。猪飼幸喜人事部長は「状況は厳しくなるばかり。パートの2倍の人件費がかかる派遣社員を今後増 やさざるを得ない」。
 だが、小売りや飲食業界では価格競争が厳しく、仕入れ価格の高騰もあって、賃金引き上げは限界を迎えつつある。
 中部地方を中心とする飲食チェーンの担当者は「トヨタ自動車の関連会社に賃金で太刀打ちできない」と語る。4月以降に出店した愛知、岐阜県内では1店当 たりに必要な7〜8人のパートや学生アルバイトを確保できないまま開店したという。
 愛知労働局によると、06年の愛知県内のアルバイトやパートの賃金水準を示す短時間労働者の時給は、製造業が1038円に対し、卸売り・小売業は 1004円、飲食店・宿泊業は932円。賃金水準の差が、非製造業の人手不足感を強めている構図が浮かび上がる。
 日本銀行名古屋支店は東海3県の非製造業の雇用情勢について「自動車産業などの人手不足が非製造業に波及している」と分析する。従業員が「過剰」とする 企業の割合から「不足」とする企業の割合を引いた東海3県の雇用人員判断DIによると、昨春ごろから非製造業の不足感が際だち、今年6月こそ新入社員の採 用などで一服したものの、今後も不足基調が続くとの見方が強い。

◆女性の再就職応援フェア開催 28日広島で /広島県
朝日新聞 2007年9月19日
 子育てが一段落した女性らの再就職を応援しようと、県や広島労働局などは、28日午前10時半から午後4時まで、広島市中区の広島国際会議場で「がんば れママさんお仕事フェア’07」を開催する。
 午前10時半から、子育てに取り組みながら、テレビのコメンテーターとしても活躍する株式会社イー・ウーマン社長の佐々木かをりさんが「主役力を高める 〜夢を実現する7つの発想〜」の題で講演。
 午後1時から、労働時間の短縮など、仕事と家庭の両立に取り組む県内の企業37社が参加する合同就職面接会がある。適性診断や起業に関する相談に応じる コーナーもある。
 講演会は、郵送かファクスによる事前申込制(21日締め切り)。定員200人で、男女を問わず誰でも参加できる。合同就職面接会は再就職を希望する女性 が対象で、申し込みは不要。問い合わせは、県労働福祉室(082・513・3419)へ。
(八百板一平)

◆時間外労働、月100時間超が2割 県内事業所、過去1年間 /愛媛県
朝日新聞 2007年9月19日
 県内の事業所の2割が過去1年間に月100時間を超える時間外労働を従業員にさせていたことが、愛媛産業保健推進センターが実施したアンケートでわかっ た。また、うつ病など心の健康上の理由で休業した労働者がいた事業所は全体の3割に上った。同センターは「過重労働やメンタルヘルスに対する取り組みが遅 れており、早急な対応が必要だ」として、調査結果を愛媛労働局や各事業所に送り、改善を促すことにしている。
 同センターは、厚生労働省が所管する独立行政法人「労働者健康福祉機構」の地方組織。アンケートは今年5月までの過去1年間の状況について調べるため、 県内で従業員が50人以上いる全1129事業所を対象に6月に実施し、373事業所(33%)から回答を得た。
 調査結果によると、週40時間の労働時間を超える時間外労働が、1カ月で100時間を超えた従業員がいた、と答えた事業所は74(19・8%)あった。
 昨年4月に改正された労働安全衛生法では、時間外労働が1カ月で100時間を超え、疲労の蓄積がある労働者から申し出があった場合は、医師の面接指導を 実施することが事業者に義務づけられている。しかし、この制度を従業員に周知していないと答えた事業所は123(33%)あった。月100時間超の時間外 労働をした従業員がいた事業所のうち、「従業員から申し出がなかったので面接指導をしなかった」と答えた事業所も22(29・7%)あった。
 心の健康上の理由で休業した従業員がいた、と答えた事業所は112(30%)あった。このうち、1カ月以上休んだ従業員がいた事業所は93(83%)に 上り、心の健康を害すると、職場復帰に時間がかかることがうかがえた。
 また、事業所の規模別に、心の健康上の理由で休業した従業員がいた事業所の割合をみると、従業員501人以上では51・7%、201〜500人では 49・2%、200人以下では23・9%で、規模の大きい事業所ほど、休業する従業員が出る確率が高かった。
 同法では、労働災害が発生する危険を事前になくすため、設備や原材料、作業工程などを点検することが義務づけられている。しかし、アンケートに回答した 事業所のうち、これらの点検を実施しているのは102事業所(27・3%)にとどまった。

◆最低賃金、7円増623円に 愛媛労働局、来月25日から実施 /愛媛県
朝日新聞 2007年9月19日
 愛媛労働局は、県内の最低賃金を現行の時給616円から7円引き上げ、623円に改定することを決めた。10月25日から、アルバイトやパートを含め県 内の全労働者に適用される。
 最低賃金は最低賃金法で保障されており、違反した使用者には罰則が科せられる。同法に基づいて設置されている厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会 が8月10日、改定額の目安として地域別に6〜19円の引き上げを答申。これを受け、愛媛地方最低賃金審議会(会長、戸沢健次・愛媛大教授)が同28日に 7円引き上げを愛媛労働局に答申した。これに対し、9月12日に愛媛労連(田福千秋議長)から「低額だ」との異議申し立てがあったが、同14日の審議会で 「引き上げ額は妥当」と結論付けた。
 中央最低賃金審議会の答申は、景気回復の格差に配慮して全国を都道府県別にAランク(引き上げ額19円)からDランク(同6〜7円)に分け、愛媛はDラ ンクとされた。改定後の最低賃金の全国平均は687円、引き上げ額の平均は14円。

◆幹部「代走」依頼、給与を不当利得 高槻市交通労働組合 /大阪府
朝日新聞 2007年9月19日
 高槻市交通部の乗務員らでつくる市交通労働組合(組合員約220人)の幹部4人が昨年度、別の組合員に計103回にわたって代行運転を依頼したのに、自 ら運転したとして通常通りの給与を得ていたことが明らかになった。幹部の不当な給与取得は計約100万円にのぼるという。
 市交通部によると、幹部4人は会議など組合活動のため本来の勤務ができない時、運転の代行を依頼していた。組合員には、1回の代行運転につき、組合から 1万円程度の手当てが支払われたという。
 同部によると、代行運転は「代走」と呼ばれ、労使慣行として市側も容認していたが、他自治体の労組幹部による「ヤミ専従」の社会問題化などを受けて3月 末に廃止していた。市は弁護士らによる調査委員会を設置し、返還を求める給与の金額や処分などについて検討するという。(吉田美智子)

◆救急医療体制、確立求める 橿原市議会、意見書採択 /奈良県
朝日新聞 2007年9月19日
 橿原市在住の妊婦が8月末、救急搬送中に死産した問題を受け、同市議会は18日、「救急救命医療体制の早期確立を求める意見書」を全会一致で採択した。 意見書は荒井正吾知事に送る。
 意見書では、医療現場が人員不足から過酷な労働条件にあることなどを指摘。現場の意見を取り入れた新しい緊急搬送マニュアルを早急に作成することを求め ており、「橿原市を含む中南和地域はもとより、全県民が安心して暮らすことが出来る救急救命医療体制の早期確立を強く要望する」としている。

◆8円引き上げ、最低賃金625円 審議会が最終答申 /徳島県
朝日新聞 2007年9月19日
 徳島地方最低賃金審議会(会長=横畠康吉・四国大学教授)は、1時間あたりの最低賃金を8円引き上げて625円にするよう求める最終答申をまとめ、徳島 労働局の斉藤幸夫局長に提出した。9月上旬に徳島労連から不服申し立てが出ていたが、「625円が適当」として退けた。10月下旬から適用される。

◆看護師確保など、村井知事に支援要望 県看護協会 /長野県
朝日新聞 2007年9月19日
 県看護協会(西沢喜代子会長)は18日、看護職確保に向けた支援や女性が働き続けるための再就業支援などを村井仁知事に要望した。
 日本看護協会が実施した昨年の調査によると、県内の新卒看護職の離職率は6・3%、全体では10・6%に達した。
 西沢会長は「新人は、イメージと現場の厳しい労働環境とのギャップが離職の大きな原因。結婚や育児で辞める人も多く、看護師不足は深刻」と訴えた。
 これに対し村井知事は「医療従事者全体が不足している。能力のある人を生かせていないのは大変なこと」との認識を示し、県が進めてきた再就労などの支援 を「継続していきたい」と答えた。

◆NTTコム西日本、偽装請負 二重派遣の疑いも 大阪労働局、是正指導へ 【大阪】
朝日新聞 2007年9月19日
 NTTグループの情報通信ソフトウエア開発・運用会社「NTTコムウェア西日本」(大阪市)がグループ内の総合人材派遣会社「テルウェル西日本」(同) に委託した業務をめぐり、コム社が委託先の労働者を直接指揮監督する偽装請負をしていたとして、大阪労働局が2社を立ち入り調査していたことがわかった。 労働者は、別の人材派遣会社からテル社を通じて派遣されていた二重派遣の疑いもあり、同労働局は、労働者派遣法と職業安定法に違反するとして近く2社に是 正指導をする方針だ。
 関係者によると、コム社は95年から法人顧客の電話料金のコンピューターシステムなどについての管理業務をテル社に委託。テル社はオペレーター12人を 別の人材派遣会社3社から派遣を受けてコム社で勤務させていた。
 テル社は管理者を1人置いているが常駐しておらず、オペレーターはモニター監視や異常時の修復作業についてコム社の指揮命令下にあったという。
 大阪労働局によると、委託契約なのに、委託元が指揮命令して働かせることは偽装請負となり、労働者派遣法に違反する。また、事実上指揮命令関係にある労 働者を別の会社に派遣することは二重派遣になり、職業安定法に違反するという。
 コム社は「指示はテル社にしており、オペレーターへ直接していない」と偽装請負などを否定。一方、テル社は「コム社が指示することもあった。指導があれ ば従いたい」としている。

◆(声)介護者の待遇、早く改善して 【大阪】
朝日新聞 2007年9月18日
 無職 梅澤康弘(兵庫県尼崎市 59歳)
 福祉の充実が叫ばれて久しい。人は誰でも年を重ねて老いていく。コムスン問題後、マスコミは福祉の世界で働く人たちの賃金や待遇のひどさを「官製ワーキ ングプア」と報じていた。
 遅きに失した感はあるが、高齢者らが受けている介護は、そんな彼らに支えられていることが現実の姿として見えてきた。賃金を切りつめて、介護の質を高め ることだけを福祉の充実と置き換えていたのではないだろうか。
 彼らの労働条件を改善しない限り、意欲ある者が継続して働くことはできないだろう。いずれ人材難による「介護崩壊」が進む。
 これから介護を必要とする人たちが次々に控えている。このことを考えると、賃金や待遇の改善は待ったなしの社会問題だ。行政は介護報酬の枠にとらわれ ず、賃金を引き上げるなどして、有資格者の掘り起こしや高齢者、女性の就業促進を図る必要があるのではないだろうか。より良い方向へ今を紡いでいく社会で ありたい。

◆「不当労働強い、給料流用」中国人実習生が訴える 天草労基署指導の縫製会社/熊本県
朝日新聞 2007年9月18日
 天草市内の縫製会社で不当な労働を強いられ、給料を私的に流用されたなどと訴える20〜22歳女性の中国人実習生6人が会社と経営者2人を相手に、労働 基準法(強制労働の禁止)違反と私文書偽造・同行使の疑いで14日、県警に告訴・告発状を提出した。県警生活環境課は「中身をよく検討して受理するかどう か決めたい」としている。
 訴えによると6人は06年4〜7月、外国人研修・技能実習制度で来日。同社では月1回程度の休日しかなく、1日あたり13時間以上の勤務を強いられた り、経営者に預金通帳を偽造されて給料を私的に流用されたりしたなどと主張している。
 6人は、13日には天草労働基準監督署に労働基準法違反の疑いで告訴状を提出した。同社は操業停止状態で、経営者とは連絡がつかないという。
 同労基署は8月末にも別の中国人実習生5人から相談を受け、未払い賃金などを支払うよう同社を指導したが解決せず、5人は帰国している。

◆(医療はいま 看護師不足:下)病院間で獲得競争 地域の中核、経営の危機 /千葉県
朝日新聞 2007年9月18日
 06年4月に診療報酬が改定され、看護職員の配置を増やせば、病院への報酬が増やされることになった。
 改定で、看護職員1人が受け持つ入院患者数で決まる「入院基本料」の区分が変更され、看護職員1人に対する入院患者数「15人」「13人」「10人」の 従来の3区分に加え、「7人」が新設された。「15人」を超える病院は事実上、採算が採れないようにし、一方、手厚い配置の病院には報酬が上乗せされる。
 現場からは「一人ひとりの患者のケアにあたる時間が増えた」「超過勤務が減少した」といった声が報告されている。県看護協会も「長年求めていた権利が、 ようやく認められた」と歓迎しているが、この改定が、病院間の看護師獲得競争を生んでいる。
   ◆ ◇
 今年1月、茂原市の「宍倉病院」などを運営する医療法人社団正朋会が民事再生手続きを裁判所に申請した。同病院は、病床数が54床と、決して大きな病院 ではない。だが、1941年に開業し、長年にわたって救急医療に積極的に取り組んできた。その功績が評価され、06年には厚生労働省から表彰された。
 同病院は、看護職員1人に対して入院患者15人の配置。今回の改定で新しい「7人」の配置基準を満たした大病院や、給料の高い医療施設に移る看護師が出 始めた。
 改定と同時に看護師の夜勤時間が制限されたため、同病院は、労働時間短縮などを進めた。月10回ほどだった救急の受け入れを約半分に制限したり、長時間 かかる手術を減らしたりした。ベッドも約10床減らした。だが収入も減額する悪循環に陥った。
 病院が少ない地域だけに、消防からは「とにかく困っている。何か起きた時が大変だ」と言われた。だが、無理をすれば看護師が辞めてしまうため、仕方な かった。
 「正看護師が5、6人増えてくれれば」と宍倉正胤院長。大きな医療機関による看護師の大規模な募集や看護学生の囲い込みが行われている現状で、「看護師 の獲得競争に負けた。うちのような病院はたくさんある」と話した。
   ◆ ◇
 県内の民間病院を対象にして昨年10月、全日本病院協会県支部(支部長=平山登志夫・医療法人社団晴山会理事長)がアンケートを実施した。病院が抱える 問題として、回答のあった81病院のうち68病院が正看護師不足を挙げた。
 「大規模病院の看護基準引き上げに対応するため、看護師を強引に集めている」「医療従事者不足が給料つり上げ合戦となっている」といった声も寄せられた という。
 平山支部長は「手軽に早期に解決できる手だてはない。首長の責任も大きい」と指摘する。
 県医療整備課は「看護師全体の増加対策はしている」とするが、「個々の病院の看護師確保に対し、行政が施策を講じるのは公平性に欠け、難しい」と話す。
 厚生労働省は、看護師の争奪戦を沈静化するため、診療報酬の上乗せ基準について、救急や手術前後など看護の必要度の高い治療を行う施設に限定するよう見 直す方針を示している。
   ◆ ◇
 県の「第6次看護職員需給見通し」(05年12月策定)によると、06年の需要4万1865人に対して、年末の就業者は3万9442人を見込んでいた。 2423人の不足だった。県は10年に不足数を3分の1に減らしたいとしているが、県医療労働組合連合会(県医労連)などは「5年間で1病院3人程度しか 増えていない計算になる」と批判している。
 (この連載は及川綾子が担当しました)

 ◆カレンダーに赤い斜線、母の夜勤の日は憂うつ 記者から
 我が家のカレンダーに赤い斜線が記されている日は憂うつだった。斜線は、看護師だった母の夜勤の日だった。
 日勤を終えて帰宅した母は、慌ただしく夕食を食べさせた。表情や態度には、焦りといらだちがにじんでいた。
 家族は、午後9時〜同11時半の睡眠時間を邪魔をしないよう、すり足で階段を上った。
 小学生から高校卒業までこの生活は続いた。母を誇りに思うとともに反発心もあった。
 今回取材をした看護師の方に、この経験を打ち明けると、「私も子供たちに、あなたと同じような思いをさせてきた。ずっと申し訳ないと思いながらね」と話 していた。
 看護師は専門性の高い技術が求められる職業であり、精神的なプレッシャーも大きい。だが一人の人間であり、大切な家族もいる。医療の安全そして人権を守 るためどうすればいいか、今後も問いかけていきたい。

 【写真説明】
日本看護協会や県ナースセンターが作成したチラシとパンフレット。表紙には「WE NEED YOU」と書かれている

◆就業人口、2020年1割減 女性・高齢者が鍵に 2005年比、県など推計/埼玉県
朝日新聞 2007年9月18日
 人口減少、高齢化が急速に進む県内で、05年の男女年齢層別の就業率のままでは、2020年の就業者人口は05年の就業者人口の1割に当たる約35万7 千人減るという推計を、県と埼玉りそな産業協力財団(さいたま市浦和区)が、このほどまとめた。現在の水準を保つには、働く意欲のある高齢者と女性の就業 率を上げていくことが重要と結論づけている。

 調査は、県内の高齢化率が2010年に20%、20年には29%に達し、総人口も05年現在の704万人から683万人に減ると予測。年齢別就業率が 05年の水準のままでは、非就業者人口の割合が増え、県財政や経済活性化のマイナス要素になりうるとする。
 シミュレーションの結果、(1)2020年の働く意欲のある60〜74歳の年齢層に05年現在の同年齢層より5年長く働いてもらう、(2)子育てなどの ため就業率の落ち込む25〜59歳の女性の「M字形カーブ」の溝を底上げすることで、05年レベルの就業人口約350万人を保てるとする。
 こうしたシミュレーションを現実にするには、年齢で区切られずに働ける労働条件の整備や子育て支援の推進などが必要と指摘。正規雇用者数を維持する様々 な働き方を採り入れることが肝要だとしている。

◆同僚のX線写真根拠に給付金 石綿被害救済で東京労働局
朝日新聞 2007年9月18日
 19年前に肺がんで死亡した女性(当時68)に対して、東京労働局が、本人のカルテなどが残っていないにもかかわらず、元同僚のX線写真にアスベスト (石綿)を吸い込んだ証拠があるとして、石綿新法に基づく遺族への給付金の支給を認めていたことが分かった。医学的な証拠のない人に給付金を認める判断は 異例だが、厚労省は「今後、本人の資料がない場合には、多方面の資料を集めて判断していきたい」としている。
 同労働局などによると、女性は、石綿を扱う東京都内のブレーキ部品製造工場で働き、1988年に肺がんで亡くなった。通常、労災の遺族補償の時効は本人 の死亡後5年間だが、昨年3月に施行された石綿新法は09年3月までに限り、時効後であっても給付金で救済することが定められた。このため、遺族が給付金 を申請したが、認められず、昨年12月、不服審査を請求。同労働局の労災保険審査官は今年8月、同じ工場で働いていた元同僚のX線写真に石綿を吸い込んだ 証拠となる胸膜プラークなどが残っていたことを理由に、女性の死亡原因を石綿によるものと認定した。
 石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長は「カルテなどが失われているために、石綿が原因と認定されていない人は多くいると考えられる。今回の判断は救 済拡大に向けて意味がある」と話している。

◆「転職で収入増」最高の35.3%、4―6月、中堅層にも波及。
2007/09/18, 日本経済新聞
平均賃金押し上げ要因に
 雇用情勢の改善を受け、転職者の賃金上昇が鮮明となってきた。総務省の労働力調査によると、今年四―六月期に転職し、前職より収入が増えた人は百二十四 万人と前年同期比で五万人増えた。転職者全体に占める比率は三五・三%と過去最高を更新した。企業の人手不足が広がり労働需給が引き締まる中、賃金上昇の 動きが若年層から中堅層にも波及してきた。転職市場が拡大し、平均賃金の押し上げ要因になる可能性もある。(労働力調査は3面「きょうのことば」参照)
 総務省が集計を始めた二〇〇二年以降、転職者のうち「前職より収入が減った人」の割合は常に「収入が増えた人」の割合を上回ってきた。四―六月期の収入 が減った人の割合は三六・五%と収入が増えた人の割合をわずかに上回ったが、差はかなり縮まってきた。
 これまでは企業がリストラの一環で人員削減を進めた結果、転職先で賃金が下がる例が多かった。最近は景気回復による人手不足で、賃金が上がるステップ アップ型の転職が広がってきた。
 総務省の調査によると、四―六月期の転職者のうち「収入が前職より増えた人」は百二十四万人で前年同期比で五万人増えた。十五―四十四歳の層では、転職 して前職より収入が増えた人が減った人より多い。この層では転職で収入が増えた人が増加しただけでなく、転職で収入減となった人が減少。転職後の賃金が全 体として底上げされる傾向が定着してきた。
 年齢別では十五―二十四歳、三十五―四十四歳の転職者で収入が増える人が増加している。団塊世代の退職で、企業は新卒を大量採用している。それでも人員 が足りず、好条件で中途採用を増やしている様子がうかがえる。男女別では、特に女性の転職者で収入増の傾向が目立つ。
 「収入が前職より減った人」は百二十八万人と前年同期比で三万人増えた。四十五―五十四歳では転職で収入が減った人の方が多いが、「減った人」が減少 し、差は縮んでいる。五十五歳以上では団塊世代が一度退職して再雇用される際に、賃金が低下した人が多いため、収入減となる人の比率が高い。
 〇六年に転職した人は年平均で三百四十六万人と前年比一・八%増え、〇二年以降で最多。単純比較はできないが、バブル期の一九九〇年の転職者数(二百九 万人)を上回り、転職市場が盛り上がっている。
 人材紹介最大手のリクルートエージェント(東京・千代田)によると、〇六年に同社経由で転職した約二万三千人のうち、六七%が「転職で年収が上がった」 と回答。年収が百万円以上上がった人も二三%いるという。
 最近は企業からの求人依頼は前年同月比三〇%増のペースだが、転職希望の求職者はさほど増えていない。転職しそうな社員の処遇を良くして引き留める企業 が増えて、ますます転職者の賃金が上昇する構図だ。
 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、サラリーマン一人あたりの現金給与総額は今年七月まで八カ月連続で前年同月の水準を下回った。だが、ニッセイ基 礎研究所の斎藤太郎氏は「前職より高い賃金で転職できる人が増えれば、サラリーマン全体の平均賃金が高まる」とみている。

◆ハケンの伝道師(1)テンプスタッフ社長篠原欣子氏(仕事人秘録)
2007/09/18, 日経産業新聞
女性の働き方を変える
  人材派遣大手テンプスタッフ創業者の篠原欣子社長の人生は人材派遣業界の歩みそのものだ。オーストラリア勤務時代に派遣労働の仕組みを知り、法制度も 未整備だった日本に取り入れようと起業した。労働者派遣法の成立にも尽力するなど、派遣業界の立役者の一人だ。「ハケンの伝道師」としての仕事人ぶりを振 り返る。
 女性は変わった。派遣スタッフと長く接するなかでつくづくそう思う。一九七三年のテンプスタッフ創業時、「勤務は午前十時から午後四時でお願いします」 との要望を女性から度々耳にした。聞いてみると夫が働くことに賛成しないから、夫を朝送り出してから夕食を作る前までに仕事を終えられる時間がよいのだと いう。当時、女性は結婚すれば仕事を辞め家庭に入るのが当たり前で、夫の陰に隠れた印象が強かった。
 今の女性は当時とはまるで違う。夫がいるかいないかではなく、ライフスタイルに合わせ自分がしたい仕事を選ぶ。職場の雰囲気やオフィス立地など働く環境 を求める人もいれば、子育てや親の介護との両立を図る人もいる。個人の志向や事情に仕事をどう合わせるかを考え、残業がない派遣を最大限生かしている。
 昔は女性が仕事をしても十羽一絡げに「あの事務の人」とみなされた。男性が部長や課長に昇進していく一方で、女性はベテランの経理でもみな同じ扱いだっ た。しかし、今は派遣でスペシャリストを目指す女性もいる。秘書や経理、受付など分野別に時給が設定され、能力に応じ給料を受け取る派遣の仕組みが確立さ れたことが大きい。
 能力に応じ給料を得ることがプロフェッショナルとしての職業意識を裏打ちし「私は経理の仕事をしています」「私はIT(情報技術)が得意です」と職務や 技能で自分自身を言い表す女性が増えた。従来は「私は派遣です」、「私はパートです」と雇用形態で自らを定義する人が多かった。
 職務や技能に自信をつけ次の夢をつかもうとする人もいる。例えば、将来は会計士になろうと勉強しながら派遣で経理の経験を積む人がいる。正社員だと経理 以外の仕事を任されるかもしれず、望む経験を積めるとは限らない。資格試験を受験する時期に仕事を休むことも正社員では難しい。
  過去三十年で働く女性が増えた要因の一つは、派遣労働が普及した結果と自負している。しかし、今でも働く女性と社会のあつれきが完全になくなったわけ ではない。
 正社員が大半だった時代には難しかったことが、派遣という選択肢が浸透して可能になり、働くことをあきらめる女性は確実に減った。まだ改善の余地はある が、二〇―三〇歳代の女性の労働力率は上昇した。管理職に占める女性の割合もキャリア形成を断念する女性が減れば上昇する可能性はある。
 ただ、女性の変化に世の中が追いついていないとも感じる。例えば殺人事件の被害者の女性を「派遣社員」と呼ぶ報道には違和感がある。雇用形態が正社員 だったらあえて「正社員」と呼ぶだろうか。「会社員」でよいはずで、不必要な区別だ。その人が永久に派遣であり続けるわけでもない。「ハケン、ハケン」と 区別しすぎるのはおかしい。
 派遣スタッフの相談窓口にセクハラ相談が多く寄せられることも気掛かりだ。男女のコミュニケーションにすれ違う部分があるのかもしれない。職場に女性が 増えたことに社会が適応しきれていないからだろう。
 しのはら・よしこ 53年(昭28年)高木商業高等学校(現高木学園女子高等学校)卒、三菱重工業入社。スイス、イギリスへの語学留学を経て71年に オーストラリアの市場調査会社に入社。勤務時に知った労働者派遣に興味を持ち、帰国後の73年にテンプスタッフを設立、代表取締役社長に就任。神奈川県出 身、72歳
【図・写真】篠原社長のデスクは社員と同じフロアにある(東京都渋谷区のテンプスタッフ本社)

◆全トヨタ労連、正社員登用を推進、活動方針、非正社員増で提言強化。
2007/09/18, 日経産業新聞
 トヨタ自動車とグループ会社の労働組合で構成する全トヨタ労働組合連合会(東正元会長、約二十九万人)は十四、十五の両日、京都市内で定期大会を開き= 写真、二〇〇七年九月―〇八年八月の一年間の活動方針を決定した。グループでは生産拡大を背景に期間従業員など非正社員が増加しており、正社員登用の拡充 に向けた活動を強化する方針を確認した。
 重点的に取り組む活動に、「あるべき健全な職場づくりに向けた取り組み」という項目を新たに設定。職場に占める非正社員の適切な比率の検討や、経営側へ の提言強化を進める方針を決めた。非正社員の教育体制の整備に向けた取り組みも進める。
 グループは期間従業員、パートなど約十二万人の非正社員を抱えており「多すぎるうえ、増えている」(東会長)というのが全トヨタ労連の見解。今春の労使 交渉でも正社員への登用拡大を経営側に求めた。
 あわせて非正社員の組合員化も促進。〇八年八月までに組合員化を完了したい方針で、非正社員の雇用環境の改善に努める。
 大会では、国内の自動車販売の低迷を受けて、市場活性化に向け組合として活動していく方針も決めた。

◆スミダコーポレーション、中国3工場で3000人削減。
2007/09/17, 日本経済新聞
 電子部品メーカーのスミダコーポレーションは九月中をめどに中国の生産拠点で働く全従業員の二割に当たる三千人を削減する。これまで手作業だったライン の一部を自動化するなど生産効率を高め、生産規模は維持する考え。最低賃金の引き上げや人民元高を背景に、中国で人件費が上昇していることに対応する。
 広州市や蘇州市など中国の三工場で一万五千人を対象に削減を進める。同社は携帯電話などデジタル機器や自動車の電子回路の電圧や電気信号を制御する「コ イル」を手掛けている。受注の変動や製品仕様の変更に素早く対応できるよう、生産ラインは手作業を中心とした労働集約型としており、人件費の負担が重く なっていた。
 昨年十月に中国各地で所得格差拡大への是正措置として最低賃金が引き上げられた。同社の中国での人件費も二割ほど上がったという。人員削減のほか、不採 算事業や遊休資産の売却といったリストラを九月中に進める方針で、二〇〇八年十二月期に売上高営業利益率を三ポイント引き上げる。
【図・写真】労働集約型で人件費負担がかさんでいた(広州市の工場)

◆(医療はいま 看護師不足:上)過酷な勤務に悲鳴 8割が仕事中にヒヤリ /千葉県
朝日新聞 2007年9月17日
 「仕事への満足感はない。ただ、疲れと無念さだけが残る勤務でした」
 成田市内の病院で働く女性准看護師(55)がある日の勤務について書いた手記は、こんな言葉で締めくくられていた。
 「忙しい!」「仕事の山、山、山」「眠い、眠い」など、悲鳴にも似た言葉も並ぶ。
 この准看護師は、手記を書いた日、日勤と夜勤とが重なっていた。始業から終業までの約28時間のうち、実質労働時間は24時間に及んだ。昼休みは15 分、自宅でとった仮眠は2時間に満たない。
   ◆ ◇
 勤務時間の長さ、夜勤の負担などを背景に、看護師不足が全国的な問題になっている。
 厚生労働省の調査によると、千葉県では、正看護師数が人口10万人あたり438・9人。埼玉県の407・6人に次いで全国2番目の低さだ。全国平均 (635・5人)より196・6ポイント低く、全国で最も高い高知県(941・2人)の半分に満たない。
 看護師数が十分と言えない医療現場は、医療事故や医療ミスの危険をはらんでいる。
 県医療労働組合連合会(県医労連)が県内7病院762人の看護職員を対象に実施した労働実態調査(05年12月)によると、過去3年間にミスを起こした ことや起こしそうになったことがあるという回答が86・4%に上った。
 また医療事故が続発している原因については、(1)仕事が忙しい(26・6%)(2)看護の知識や技術の未熟(15・1%)(3)交代勤務による疲労 (14・8%)(4)慢性的人員不足(12・8%)――との回答が上位を占めた。
   ◆ ◇
 看護師不足に県や県看護協会はどのような対策を講じているのか。その一つが「潜在看護師」の復職支援だ。
 看護師免許を持ちながら結婚や出産で職場を離れた潜在看護師は、県内に推計で約1万7千人いる、とされる。こうした潜在看護師に対し、県看護協会は、再 スタートのための研修や無料の職場紹介を実施している。
 また、看護師の養成学校でも対策が進む。県内には38校51課程の養成学校があるが、定数割れが続き、卒業後も近隣の神奈川県や東京都に流出してしまう ケースが目立った。同協会では、県内に残ってもらうため各病院などで合同の就職説明会を開催している。
 さらに、県は、4年制の県立保健医療大学(仮称)の開校を09年に予定している。衛生短期大学と医療技術大学校を再編して4年制大学にすることで学校の 魅力を高め、また、より高度な看護技術を習得できるようにする計画だ。
   ◆ ◇
 ただ、肝心の看護学科の入学定員は80人。衛生短大と技術大学校が募集していた定員(合わせて160人)より大幅に減るため、看護師不足解消への効果を 疑問視する声が出始めている。
 堂本暁子知事は6日の記者会見で「看護師不足を深刻に受け止め、県として真剣に取り組んでいこうとしている」と語った。だが「医師不足よりも、看護師不 足の方が深刻かもしれない。施策を色々と打ち出しても、なおかつまだ足りないかもしれない」と複雑な胸中を明かした。
    ◇
 県内の看護師不足は深刻だ。看護師一人当たりの負担が増え、過酷な労働に悲鳴を上げる。さらに診療報酬改定で、病院間の看護師争奪戦が相次ぎ、中小の病 院が、そのあおりを受けている。

 ■ある准看護師の手記
 午前7時45分 日勤の始業。本来は8時半からだが、それでは準備が間に合わない。
 午後12時15分〜同30分 昼食時間。午前11時半〜12時半の休憩には入れない。
 午後7時半 終業。定時(午後4時50分)に帰れたことは年に数回あるのみ。1、2時間の時間外は常のこと。
 午後7時45分 帰宅。夕食と風呂。
 午後9時 寝床へ。なかなか眠れない。体は疲れているのに。
 午後10時45分 起床。家族の朝食の準備。
 午後11時半 出勤。
 午後11時45分 夜勤の始業。午前0時半からの勤務だが。ペットボトルを片手に水分補給をするのが精いっぱい。ナースコールが鳴りっぱなし。忙しい、 忙しい、忙しい!
 午前8時半 引き継ぎ。ホッとするのもつかの間。パソコンの入力が残っている。仕事の山、山、山……眠い、眠い。でも、残っている仕事はやらなければ。
 午前11時半 やっと深夜勤の残務より解放。仕事への満足感はない。ただ、疲れと無念さだけが残る勤務でした。

 【写真説明】
看護師らでつくる「看護職員の増員を求める県実行委員会」が街頭で増員を訴えた(県医労連提供)

◆非正社員、団結で成果 時給100円増・寮費減額も 「ワーキングプア春闘」
朝日新聞 2007年9月16日
 派遣や請負などの労働者がつくる非正社員労組が、この春繰り広げた「ワーキングプア(働く貧困層)春闘」。低賃金や劣悪な労働条件の底上げを求めた交渉 の結果が、ほぼ出そろった。時給引き上げのほか、寮費の引き下げや作業服の無償支給など、働き手に押しつけられていた負担をなくす成果も。春闘を担った新 しい労組の動きをまとめた本も出版された。

 7月末、大手人材会社「日研総業」から日野自動車に派遣された人たちでつくる日研総業ユニオンが妥結した。9月に勤続1年となる人の時給が100円アッ プの1250円に。連休で収入が途絶えないよう、日野工場は5月と8月、羽村工場では8月に、3万円の手当が出ることになった。
 宿舎の居室にカギがなく、プライバシーや防犯面で問題になっていたが、カギの取り付けが始まった。このほか、雇用契約の改善策を今年中にまとめる▽労働 条件を日野が直接雇う期間工の水準に近づけるよう努める▽自己負担だった作業服の無償支給▽寮費の最大1万3000円引き下げ、などでも合意した。
 ユニオンが加盟する製造業の非正社員の労組「ガテン系連帯」の小谷野毅事務局長は、「労働条件を期間工の水準に近づけると明記させた点は胸を張りたい」 と話す。
 トヨタ自動車系部品メーカー「光洋シーリングテクノ」(徳島)では、期間工や請負労働者ら約40人が4月、24時間ストを2回行った。その結果、16人 の請負労働者らを7月から直接雇い、時給を1100円から20円引き上げることなどで妥結した。JMIU徳島地域支部光洋シーリングテクノ分会の矢部浩史 代表は「ストで賃上げを勝ち取ったことで組合員は20人近く増えた。団結して要求しないと何も変わらない」。
 日雇い派遣大手「フルキャストグループ」の社員や派遣スタッフでつくるフルキャストユニオンは、給料からの不透明な天引きの返還を要求。会社は7月、原 則として創業時にさかのぼって全額返還すると表明した。時給アップなどの要求にはゼロ回答で、交渉を続けるという。
 一方、国際電話センターで働く契約社員31人が加入するKDDIエボルバユニオンは、「勤続1年につき10円の賃上げ」などを要求したがゼロ回答。その 後、会社の団交拒否が続き、労働委員会のあっせんを経て団交再開に向け折衝中だ。

 ◇ユニオン結成、本で紹介
 ワーキングプアの反撃の記録をまとめたシリーズ「労働破壊」=写真=が、旬報社から刊行中だ。第1巻は「偽装雇用/立ち上がるガテン系連帯」(大谷拓朗 著)。春闘で成果を勝ち取った日研総業ユニオンの活動が描かれている。
 「26歳で派遣? 人生終わってるな」。2人の男性がユニオンを結成したきっかけは、正社員が投げかけた一言だった。それが、個人で入れるガテン系連帯 の運動に広がっていく。
 本書は、寮生活の実態にもふれつつ「もうだまされない」との怒りを伝える。フルキャストセントラル、日立製作所、日産自動車などでの闘いも紹介する。
 第2巻は「日雇い派遣/グッドウィル、フルキャストで働く」(派遣ユニオン著)。派遣ユニオンは日雇い派遣大手2社の社員やスタッフで組合をつくり、問 題を告発してきた。
 低賃金でネットカフェから通勤した。違法派遣の現場で大けがをしたが救急車を呼んでくれなかった。証言からは不安定な雇用の実像が浮かぶ。組合員による 現場の潜入ルポなども。
 1冊税抜き1300円。第3巻「肩書だけの管理職/マクドナルド化する労働」(安田浩一著)は10月発行予定。

◆(補助線)コムスン問題を読み解く 介護する誇り、傷つけた
朝日新聞 2007年9月16日
 不正を機に解体される大手介護会社「コムスン」。そこを解雇された人たちがつくった介護会社を訪ねた。
 福岡市博多区の「ケアリング」。コムスンの九州地区の責任者だった中尾光明氏が社長、労組の委員長だった岡部廉(ただし)氏が常務をつとめる。常勤職員 約40人のうち約10人はコムスンから移った。
 コムスンは福岡市で88年に故榎本憲一氏が設立し、24時間の巡回型介護などで注目された。社名は Community Medical System  Network の頭文字からとっている。
 中尾氏や岡部氏は99年に相次いで途中入社。人材派遣会社「グッドウィル」を経営する折口雅博氏が98年に実権を握り、介護拠点やヘルパーを急激に増や していた。ところが00年4月に介護保険が始まっても利用者が増えない。今度は大リストラ。中尾氏は抵抗して解雇、岡部氏は労組で闘った後に解雇された。
 残った職員は売り上げ増を迫られる。高齢者の足を洗うなど単価の高い身体介護を勧めるよう奨励されたという。折口氏が今年6月の記者会見で「介護を食い 物にしたと言われても仕方ない」と述べた利益優先の体質は介護保険が始まった当時からだった。
 岡部氏は「介護は人と向き合い、家族や地域社会とかかわる。経験と信頼を要する仕事なのに、コムスンは労働時間を切り売りするだけで済む倉庫の軽作業な どと同じようにとらえていた」とみる。
 「コムスンの罪は二つある」と指摘するのは中尾氏。民間会社の介護事業に負のイメージを植えつけたこと。高齢者を支えたいという若者の介護労働への誇り を傷つけ、夢を壊したことだ。
 「高齢者との日々の小さなできごと」に働きがいを感じる都内の30歳の女性ヘルパーは、「最近、不正は大丈夫かと聞かれる。介護業界全体が疑惑の対象」 と嘆く。
 ただでさえ介護の仕事は厳しい。賃金は常勤の平均で月22万円余。全産業平均の6割程度だ。昨年の介護保険改革で軽度の在宅サービスが縮小され、条件は 悪化している。
 そこへコムスン問題。介護労働の希望者がますます減りそうだ。いまでも求人に反応が少ない。在宅介護の草分け「ケア・センターやわらぎ」(東京都立川 市)はハローワークに求人を出すと、かつては7〜8人の応募があった。今年は1人来るか来ないか。
 学ぶ人も減っている。「やわらぎ」の人気のヘルパー2級講座は今年6月コースで定員35人に対して13人にとどまり、01年以来の最低になった。講座を やめた団体もある。志願者の減少に悩む福祉系の専門学校も出てきた。
 コムスン問題は超高齢社会を支える介護労働者という土台も揺るがしている。
 (編集委員 辻陽明)

◆女性の育児休業取得率88%に、「政府目標の8割」超える――男性は0.57%。
2007/09/16, 日本経済新聞
06年度 厚労省調査
 厚生労働省の調べによると、二〇〇六年度の育児休業の取得率は女性が八八・五%と〇三年度の調査(七三・一%)を一五・四ポイント上回った。大企業を中 心に女性が育児休業を取りやすい環境づくりが進み、政府目標(取得率八〇%)を初めて上回った。一方、男性は〇・五七%にとどまる。〇三年度と比べ〇・一 三ポイント上昇したが、依然、政府目標の一〇%を大きく割り込んでいる。
 取得率を企業規模別にみると、女性は大企業(従業員三百一人以上)で〇三年度比一三・七ポイント上昇し、九四・一%に達した。中小企業(三十人以上三百 人以下)は一六・一ポイント上昇の八〇・二%。企業規模による取得率の差は依然、大きい。
 厚労省は「大企業と中小企業は人員配置にどれだけ余裕があるかなどの点で異なり、育児休業の取りやすさの差につながっている」と分析する。
 男性は大企業が〇・四三%、中小企業は〇・八〇%と中小企業の方が高い。「統計の誤差の範囲内。今後の動向を注視したい」(雇用均等政策課)という。


UP:20071016 REV:随時
◇労働 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/d/w001.htm  ◇労働関連ニュース
TOP HOME(http://www.arsvi.com)