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労働関連ニュース 2007年8月16日から20日





◆原告ら大使館に要望書。
2007/08/20, 日本経済新聞
 第二次大戦中に日本に強制連行されたとする元労働者ら十人が二十日、北京の日本大使館に問題解決を求める要望書を提出した。要望書は原告側が敗訴した四 月の最高裁判決を受け、約二百人の元労働者や遺族らが署名。安倍晋三首相に被害救済などを求めている。(中国総局)

◆「ふるさと回帰フェア」開催(日経からのお知らせ)
2007/08/20, 日本経済新聞
 ふるさと回帰支援センターと日本経済新聞社は、第3回「ふるさと回帰フェア」を東京・大阪で開催します。42道府県240の地方自治体が参加し、シンポ ジウム・展示コーナー・物産展を多元的に開催し、都市住民の地方移住と就農を応援します。
 ◇東京開催 10月6日(土)午前10時―午後5時 日経ホール、サンケイプラザ、JAビル、メトロスクエアにて※前夜祭10月5日(金)午後6―8時  日経ホール(出演)立松和平、池田理代子、倉本聰、菅原文太、見城美枝子ほか
 ◇大阪開催 10月27日(土)午前11時―午後5時 なんばパークス円形劇場、パークスタワー、カーニバルモールにて※前夜祭10月26日(金)午後 6〜8時半 大阪商工会議所ホール(出演)藤本義一ほか
 ◇申し込み http://www.furusatokaiki.net/、FAX03・6812・8696、入場無料。ホール催事は要事前登録
 ◇問い合わせ 本部事務局(電)03・5255・3588
 共催 内閣官房、総務省、国土交通省、環境省、農林水産省、厚生労働省、文部科学省、経済産業省

◆中国――給料上昇は本当?、格差大きく、乏しい実感(BRICsペリスコープ)
2007/08/20, 日経産業新聞
 「大多数の労働者の給料の上げ幅は物価上昇率より低い」「以前は苦労して働けば家が買えたが、今は一生働いて良い家が買えないぞ」「私は勤続二十七年。 今の給料は千二百九十六元。これって高い?」「公務員の給料が全国平均を押し上げているに違いない」――。
 中国のネット掲示板でこんな書き込みがこの夏、急激に増えた。きっかけは中国労働学会の「二〇〇二年から〇六年の従業員給料の年間上昇率は平均一二%」 との発表。庶民の間でこうした実感は全くないようだ。
 大衆紙「中国青年報」も最近のネット調査(全国千六百四人から回答)で、八五・四%が「給料の上昇率は年一二%未満」と答え、七・一%が「この四年、給 料が上がるどころか減少した」と回答したと伝えた。同紙はさらに「公的な機関のデータはなぜ民意を反映できないのか?」と題する評論まで載せた。
 中国の給与水準は確かに上がっている。広東省深〓市では〇五年、〇六年と二年連続で最低賃金が引き上げられ、経済特区内は現在八百十元。〇五年の調整前 より二百元も増え、今や全国最高水準。企業関係者は「今年も上がるだろうか」と人件費高騰に気をもむ。
 それでも庶民は豊かさを享受できない。例えば住宅価格。深〓では五月まで連続十六カ月、前年同月比で一〇%以上、値上がりした。当然、賃貸の家賃も上が る。深〓市で職探しをしていた青年は「少しでも高い給料の会社で働かないとこの街で暮らしていけない」と嘆く。
 労働学会の統計数値はなぜ庶民の実感とかけ離れたものになったのか――。中国青年報はこう指摘する。「給与格差が大きすぎるからだ」
 事実、ある日系企業の経営者は「二十歳代後半のそれほど地位も高くない社員が輸入ベンツを乗り回している」とあきれ顔で話す。農地を転売したり高級住宅 地として開発したりする不動産業者の社員だ。
 電力や金融など一部の独占業種の従業員給与の年間上昇率も二〇%前後に達するという。ごく一部の人が豊かさを独占している実態が見て取れる。
 日本と比べものにならないほどの格差社会。それが中国の現実だ。少し給料を上げても従業員は満足しない。企業にはせめて従業員の心を潤すひと工夫が求め られているのかもしれない。(T)
【図・写真】給料が上がったとしても、中国の庶民は豊かさをなかなか享受できない(広東省内の電子機器工場)

◆東京ガス社長鳥原光憲氏――エネルギー競争に協調訴え(ポートレートトップの軌跡)
2007/08/20, 日経産業新聞
信頼でチーム築く“名監督”
 一九九〇年代に自由化が進んだエネルギー市場。共存共栄の時代が過ぎ去り「エネルギー間競争」が常態化するなかで、都市ガス最大手、東京ガス社長の鳥原 光憲(64)は「競争だけでは無駄が生じ、非効率」と言い切る。競争と共に協調を――。サッカーで培ったチームワークを重んじる姿勢が、鳥原の底流を支え ている。
 「鳥原さんと仕事すると後輩はみんな参っちゃう。一番夜遅く、一番朝早いんだから」。同僚はこう苦笑する。飲んだ後も会社に戻って仕事。後輩が帰っても まだ仕事。後輩が朝来たときはもう仕事をしていた。「でも、みんな好きになる。ぼそっと冗談言ったりするから」。木訥(ぼくとつ)な人柄が人をひき付け る。「社長になるんじゃないか」。同僚たちの予感は的中した。
 東大経済学部卒。公益性の高い仕事に就きたかったのなら、官僚の道もあったはず。東京ガスを選んだのは「東京を動きたくなかったから」。
 文京区本郷付近で生まれ育った根っからの江戸っ子だ。後楽園球場まで歩いて五分。もちろん、ジャイアンツファンだった。目の前で見た川上哲治にあこが れ、中学生まで野球に明け暮れた。
サッカーに学ぶ
 サッカーの伝統校だった小石川高校への進学が転機になる。「人の動きを読んで自分の動きを決める」サッカーの面白さに取りつかれた。運動神経に頼らず頭 を使え。チームワークが強みの小石川サッカーの伝統は、その後の鳥原の行動規範になっていく。
 入社後、石油や石炭を熱して都市ガスを作っていた当時の豊洲工場の管理部門に配属された。働く九百人の多くはブルーカラー。猛烈な熱さが支配する工場の 労働条件は厳しい。ホワイトカラーの管理部門とはほとんど交流がなかった。
 一体感のない職場に違和感を持った鳥原は、オリジナルの名簿作りを始めた。名前だけ知っても、顔が一致しないと意味がない。社員一人ずつ顔写真を撮っ て、カードにした。深夜労働者もすべて把握するのに一週間泊まり込みで作業した。
 工場内で、バス内で、少しずつ掛け合う声が聞こえた。「豊洲工場のサッカーチームを作らないか」。しばらくして、どこからともなく声がかかった。工場が 少しずつチームになるのを感じた。
 入社七年目、労働組合の役員に就任した。当時の労使は強い緊張関係にあった。毎年、過大な要求を掲げ、労使交渉に長時間を費やす。「戦うだけでは得られ ない」。書記長に就いた鳥原は、実情に合った要求を掲げる戦略への方針転換を模索した。
 「要求が小さすぎるっ!」。現場から厳しい声が上がったが、他の労組役員と分担して支部を回り説得した。酒を片手に現場社員と語り合う。考え方を知り、 分かってもらうことに努めた。
大型投資を立案
 経営企画部マネージャーだった八〇年代後半は会社の転換点でもあった。鳥原は大幅なガス販売量の増加を前提に大型投資計画を作成した。日中は社内調整、 夜中にまとめる日々が続く。
 その計画に基づき、九〇年代に高圧ガス管を敷設、新たな液化天然ガス(LNG)基地の建設にも乗り出した。年一千億円の減価償却費に対し、千五百億円規 模の投資が続く。大型投資は当時の東京ガスの経営を圧迫。有利子負債は七千億円を超えて、株価は低迷。時価総額は一時、大阪ガスを下回った。
 だが、その投資のおかげで、ガス販売量は八五年度の四十二億立方メートルから、二〇〇六年度は三倍強の百三十三億立方メートルまで増えた。計画時に想定 した最大の伸び幅に近い。「あのときの設備建設があったから、今がある」。二十年前のマネージャー鳥原の確信は、今、社長になった鳥原を支える。
 東京ガスの協調と競争の先には、常にエネルギー業界の巨象、東京電力がいる。経営企画部時代はカウンターパートで後に東電社長となる南直哉と親交を深め た。原料部長だった九〇年代後半は、東電の燃料部門と多く共同歩調を取った。
 そもそも東ガスが販売量を大幅に伸ばせたのも、東電の発電燃料としてのガス需要が伸びた面がある。自由化で家庭のエネルギーを巡る東電との競争は激しさ を増しているが、鳥原は「基本に信頼関係があるから、協調だって競争だってできる」と話す。
「FC東京」の絆
 鳥原の人脈は思わぬ形でも花開いた。部長を務める東京ガスサッカー部が九七年、プロ化を決めた。チームへの出資を真っ先に要請したのが東電副社長だった 南。「東京にプロサッカークラブを作りたい」。南は社長の荒木浩の了解をすぐに取り付けてくれた。
 LNG調達先の日本石油社長、大沢秀次郎には直接、出資の了承を得た。三菱商事、富士銀行、清水建設……名だたる企業が一年で鳥原の元に集まった。首都 のサッカークラブ「FC東京」の誕生だ。
 味の素スタジアムの正面には「鳥原シート」と呼ばれる一角がある。今でも鳥原はホームゲームの六割を観戦する。週末は東電や新日本石油、三菱商事などの トップと並び、選手に声援を送る。
 FC東京のユニホームの胸には新日石の「ENEOS」、肩には東電マーク。背中に東ガスの地域販売店「Enesta」の文字が躍る。まさにエネルギー業 界の協調が支える「チーム・エネルギー」。その姿は、トップとなった鳥原の真骨頂にもみえる。
 =敬称略、社名・肩書は当時
(宇野沢晋一郎)
一筆啓上
「ミッドフィルダー」守勢から転換注目
 七月十六日に発生した新潟県中越沖地震。現地の都市ガス網は寸断され、まだガスの供給が回復していない地域も残っている。別会社の供給地域ではあるが、 鳥原は被災地の様子を懸念し、自ら足も運んだ。
 〇六年四月の社長就任以降、ずっと守勢が続いた。パロマやリンナイ製の旧式給湯器が原因となった死亡事故が相次いで発覚。「ガスは危険」のイメージを払 拭(ふっしょく)するため、旧式器具の買い替え促進などの対応に追われた。家庭用のエネルギーでも電力会社の「オール電化」攻勢にさらされ、守勢が続いて いるのが実情だ。
 サッカー選手時代のポジションは主に守備的ミッドフィルダーだった。攻撃でも守備でも起点となる要の位置だ。守備に費やす時間が長くなるなかで、いつか ら攻勢に転じるのか。サッカーで磨いた戦略眼から繰り出す、次の球さばきに注目だ。
 〈略歴〉とりはら・みつのり 1943年3月12日生まれ。東京都出身。64歳。67年東京大学経済学部卒業、東京ガス入社。原料部長、企画本部長など を務めた後、2006年4月から現職。
 〈趣味・オフの過ごし方〉サッカー以外に、子供の頃からチョウの収集を続ける。高校生までに160種集めて標本にしていた。「会社での仕事に区切りがつ いたら、再び野山に繰り出し、200種集めに挑戦したい」
 〈最近印象に残った本〉「言語学者が政治家を丸裸にする」(東照二著)。人前で話をするのが苦手なので、本心がどうすれば伝わるのかが分かりやすかっ た。
 〈座右の銘〉敬天愛人
 〈交友関係〉小石川高校の同窓生と、年に1度集まる会がある。2学年下の帝国石油の椙岡雅俊社長(62、写真)とは共にゴルフや食事に行く間柄。同じエ ネルギー業界に身を置くが、プライベートな席では仕事に関わる話はしない。「椙岡がスタジアムに来るとFC東京が負けるジンクスがある」とも。

 〈会社概要〉1885年に創立した国内最大の都市ガス事業者。1969年から液化天然ガス(LNG)の導入を開始し、1988年までに全域を天然ガスに 転換した。ガス管網は関東一円に拡大している。顧客件数は1000万件近い。
【図・写真】東京ガス労働組合書記長だったころの鳥原氏(右)(1970年代後半)

◆(声)語りつぐ戦争 話し続けたい、9年間の体験 【名古屋】
朝日新聞 2007年8月20日
 自営業 木村七二(名古屋市中村区 83歳)
 「憲法を守る会の者です」と名乗る人から先日、電話があった。話の内容は、昨年8月15日の本欄に載った私の「先住の農民を 追い出し開拓」という投稿 を切り抜いて持っている。あなたの戦争体験をもっと深く知りたいので、話してもらえないか、という講演依頼だった。むろん、引き受けた。
 16歳だった私は1940年、「満蒙(まんもう)開拓義勇軍」に入隊し、ソ満国境の新立屯という所に入植した。そこで知ったのは、住民を追い出してから の開拓だった。まさに侵略である。
 20歳になって、チチハルの第十七航空情報隊に入隊した。45年8月9日、ソ連軍が参戦し、満蒙国境(中国東北部)に展開していた各分隊は、玉砕無電を 残して全滅した。
 零下50、60度のシベリアに抑留された我々は、伐採と鉄道敷設の重労働に追われ、草を食べ、シラカバの汁を吸い、飢えをしのいだ。大勢の戦友が死ん だ。
 私は9年間の戦争体験をふまえて、今こそ平和憲法を守り、世界の平和に貢献すべく、老骨にむち打って頑張っている。
 夏草や日本へ向けし墓の石 ハバロフスクにて

◆(声)語りつぐ戦争 日韓を超えた小さな友情も
朝日新聞 2007年8月20日
 大学臨時職員 久保田桂子(東京都小平市 26歳)
 韓国に住む朴道興(パクドフン)さんが話してくれた小さな友情について思い出す。映画化をめざしてシベリア抑留を調べるため、2年前に旅した韓国で会っ た83歳。旧日本軍に所属し、戦後、シベリアに3年間抑留された。
 「日本の軍隊では良いこともあったんだ」と言う。驚いて聞き返すと、「本当です。広島出身の戦友が兄弟のように親切にしてくれた」。朴さんは色丹島(現 在の北方領土)にいた。その戦友は小隊で唯一の同年兵だった。日本語の読み書きが不自由だった朴さんに、親身になって日本語を教えてくれた。シベリアでの 苦しい労働も、互いに助け合ったという。
 しかし、朴さんが凍傷で入院した後、二度と会えなかった。「彼のことを思い出すと眠れない夜がある」
 朴さんは左耳が悪い。上官に殴られたのが原因だが、そのことについて冗舌になったことはない。
 韓国を旅すると日本による傷跡に触れることがよくあるが、その一方で、とても小さいが、消えることのない人間同士の優しさもあった。そのことを朴さんが 教えてくれた。

◆財政・雇用巡り舌戦 現新2氏、立候補 盛岡市長選が告示 /岩手県
朝日新聞 2007年8月20日
 盛岡市長選が19日に告示され、新顔で廃棄物処理会社長の芦名鉄雄氏(62)、再選を目指す現職の谷藤裕明氏(57)のいずれも無所属2氏が立候補を届 け出た。財政状況が切迫する中で、北東北の拠点都市を目指す市の将来図をどう描くのか、7日間の選挙戦がスタートした。投票は26日で、即日開票される。 18日現在の有権者数は23万7828人。

 現新4氏が争う混戦だった前回選挙とは一転し、今回の市長選は新顔1人が、現職に挑む構図となった。県内の政党がいずれも独自候補の擁立を見送る中、 「市民党的立場」を掲げる現職がどのような政策を訴え、市民から支持を集められるかが焦点となりそうだ。
 芦名氏は7月末、立候補を表明した。市長選への挑戦は3度目で、今春には知事選にも立候補した。企業経営者という立場から「民間感覚での行政運営」を主 張する。経費節減を訴え、選挙戦でも自ら選挙カーのハンドルを握る。
 谷藤氏は「市民党的立場」を掲げ、市内各地に70の地区後援会を設立した。政党からの推薦は求めない一方、議員個人からの支援を受け、後援会を総動員す る組織戦を展開する。連合岩手や医師会など有力団体からも支援を受ける。
 盛岡市は、市の借金にあたる市債残高が1400億円を超える。今年3月には、存続の決まった岩手競馬に66億円を融資した。谷藤市政の4年間で財政状況 は改善したとは言え、厳しい状態に変わりはない。
 一方で、盛岡公共職業安定所管内の月間有効求人倍率が0・7を下回るなど、雇用の確保は切実な状況だ。中心市街地の活性化や高齢化社会を見越した街づく りなど、市民生活に身近な課題も抱える。限られた財源をどう振り分けるかなど、課題は山積している。

 ■候補者の略歴と第一声
 (年齢は投票日現在。カッコ内数字は当選回数▽以下は出身校と住所)

 ◇芦名鉄雄(あしなてつお) 62 無新
 廃棄物処理会社長・盛岡廃棄物協会理事▽盛岡市加賀野1丁目

 ○「民間感覚で改革」訴え
 芦名氏は午前9時ごろ、同市加賀野1丁目の事務所近くで、約50人の支持者を前に第一声を上げた。
 芦名氏は市の財政について、「盛岡の赤字財政が4年前から続いている」と指摘し、「民間の経営感覚で赤字をなくしていく」と従来とは異なる財政改革を訴 えた。
 また、地域経済については、「大手企業が増え、地元企業が落ち込んでいる。大手の進出に規制をかけ、税金を納める地元企業を大切にしていく」とした。深 刻な雇用問題にも触れ、「(雇用問題を)早く解決しなければ盛岡経済の発展はない」とし、工場誘致などによる雇用促進の計画を述べた。
 3度目の市長選立候補となる芦名氏は「一貫した訴えが浸透し、だんだん支持が増えている」との受け止め方を示した。

 ◇谷藤裕明(たにふじひろあき) 57 無現(1)
 不動産管理会社役員・岩手陸上競技協会長〈元〉県議会議長・自民党県連幹事長▽早大教育学部▽盛岡市梨木町

 ○「50万都市構想」に意欲
 谷藤氏は午前9時過ぎ、同市大通3丁目の七十七銀行前で第一声を上げた。約200人の支持者に加え、県議10人、市議25人らも応援に駆けつけた。
 谷藤氏は1期目の財政状況を「予想を超える厳しさがあった」と振り返り、2期目はこれまでの改革を通して「未来に向かって成果を図っていく大切な4年間 になる」と位置づけた。
 その上で、将来の盛岡市について「仙台に次ぐ北東北の拠点を作りたい」と述べ、周辺町村との広域連携を進める中で合併を果たし、50万都市を実現する構 想に意欲を示した。
 また雇用状況が低迷している問題にも触れ、新しい工業団地の造成や企業誘致で雇用を確保し「この地に住み続けたいと思う人のため、環境を整備していく」 とした。

◆事実から真摯に学ぶ姿勢を 中国での日本軍の「罪」語り継ぐ 浜田の鹿田さん/島根県
朝日新聞 2007年8月20日
 戦後62年。戦争を経験した世代は次々と世を去り、残った人も高齢化し、記憶の風化が進む。元陸軍将校で、浜田市に住む鹿田正夫さん(88)は、二度と 過ちを繰り返さないとの思いから、中国大陸での日本軍の「罪行」を語り続ける。(西江拓矢)

 「当時、中国人は日本人より劣っていると教育されていた。戦場で一人でも多く殺すことが手柄だと信じていた」
 出雲市出身の鹿田さんは、善隣高等商業学校(東京)を卒業後、1941年4月に上海華中蚕糸に入社。同年12月、浜田連隊に入隊し、敗戦を迎えるまで、 中国大陸で戦闘に参加した。
 日本への内通者を作り、敵方の情報をさぐった。情報をとるため、拷問することもあった。
 敗戦後は、シベリアに抑留され、5年間強制労働させられた。寒さと飢えで多くの将兵が死亡した。その後も帰国できず、50年7月に元将兵約千人ととも に、中国に引き渡された。収容された遼寧省の撫順戦犯管理所での6年間の体験が、鹿田さんの考えを根本から変えた。
 待遇は、シベリア時代とは大違いで食事も十分だった。その代わり、自らの罪の告白と「認罪」を徹底して求められた。
 反発、警戒していた元将兵たちも次第に、重い口を開き始める。虐殺、強姦(ごうかん)、略奪……。
 鹿田さんも、情報提供を拒否した中国人を殺害したこと、病気の女性を命請いする父親の前で殺させたことなどを告白した。
 管理所で見せられた1枚の写真は、今も、鹿田さんの目に焼き付いている。写真には、白骨体とそばで悲しみにくれる夫人の姿があった。骨は、鹿田さんが殺 害した男性のものだった。
 そのとき、鹿田さんは自らの罪の重さと被害者の苦しみを知り、立っていられず、土下座した。
   ◇   ◇   
 軍事裁判で不起訴となり、鹿田さんは56年、15年ぶりに帰国した。翌年、帰国者たちが作った中国帰還者連絡会(中帰連)に参加し、講演や大学の講義な どで戦争を知らない世代に、日本軍の罪を語り続けている。
 侵略行為を検証したドキュメンタリー映画「日本鬼子」(01年、松井稔監督)で、証言もした。「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書に対し、採択 反対の立場から会も作った。
 高齢化が進んだ中帰連が02年に解散した後も、山陰中国帰還者連絡会を作り、証言活動を続けている。会員は、十数人いるが、実際に証言活動をできる人 は、3人ほどだという。
   ◇   ◇   
 中帰連の会員の証言を、「中国に洗脳された」「自虐史観の元凶」と批判する勢力もある。
 それに対し、鹿田さんは反論する。「事実は事実。そこから真摯(しんし)に学ぶ姿勢こそが大事だ」
 「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍首相らの動きに、じっとしていられない思いに駆られている。「今こそ、私たちに存在意義がある。証言を続け、若 者たちに精神を受け継いで欲しい」

 【写真説明】
日本軍の罪を語り続ける鹿田正夫さん=浜田市内で

◆(県政の足もと 07選択の年に:4)地域医療 産科医不足ワースト1位 /埼玉県
朝日新聞 2007年8月20日
 さいたま市中央区のさいたま赤十字病院。産婦人科の医師7人は、昼夜を問わずに診療にあたる。宿直明けの日でも、帰宅せずにそのまま夜まで勤務が続くこ とがほとんどだ。
 昨年夏、近くの病院が産科を閉鎖した影響で、患者の数が増えた。今年になって、ひと月あたりの出産数が100件を超えるようになった。産婦人科部長の安 藤昭彦さんは「ベッドの数が追いつかなくなりそうだ」ともらす。
 同病院では、お産に加えて子宮がんの手術なども扱っている。「医師にかかる負担は増える一方だ」と安藤さんは語る。ただ、こうも思う。「うちの病院はま だ恵まれている方。もっと忙しい病院があるはずだ」
   □  □ 
 県内の産科医の不足は極めて深刻だ。厚生労働省の04年の調べでは、産科医1人あたりの出生数は134・1人で、人口10万人あたりの産科医数(28・ 7人)とともに全国最下位。県産婦人科医会(柏崎研会長)の昨年の調査によると、県内の産婦人科で実際に出産を扱う診療所は約4割にとどまっていた。
 なぜ産科医が足りなくなるのか。柏崎会長は「激務に加えてお産の結果が悪いとすぐに訴えられる場合もあり、若い医師が敬遠する傾向にある」。産科から撤 退し、がんや不妊治療、更年期障害のみを扱う診療所も増えているという。
 「子どもの誕生に立ち会う産科は、明るくてやりがいのある職場」と安藤さんは力を込める。「医師の負担を少しでも減らすために、県には急患をスムーズに 転送できるような病院間のネットワークを構築してほしい」と願っている。
   □  □ 
 小児科医も足りない状況が続く。特に、手術が必要な重症患者を受け入れる第2次救急でここ数年、休日や夜間の医師が手薄になる地域が目立ち始めた。
 県医療整備課によると、県内に16ある2次救急医療圏のうち半数で、休日と夜間に緊急患者の受け入れを手配できない日がある=図。同課は「ここ数年で、 当直のできる常勤医が減り始めている」と分析する。
 幸手市など3市9町で構成する「東部第一地区」では、三つの病院が交代で休日と夜間の急患の診療にあたる。しかし、昨年4月から365日の輪番制が確保 できなくなった。地区を統括する幸手保健所の土屋久幸所長は「輪番充足率は、7割程度になった」。
 当直医が減る理由として、土屋所長は「小児科の採算性の低さ」を挙げる。「激務で手間と人件費がかかる割には、病院の収入が少ない。そのために規模を小 さくしたり、閉鎖したりする病院が多くなっている」と説明する。
 さらに輪番病院での保護者とのトラブルが多発し、小児科医の情熱が失われ始めていることも影響しているという。小児医療への知識不足もあって、理不尽と も言える要求をする親が目立っており、土屋所長は「医師確保だけでなく、小児医療に関する保護者への意識啓発も必要だ」と語る。
 医師不足の問題を解決しようと、県は昨年11月から病院関係者らによる医療対策協議会を設置した。現在、産科と小児科でそれぞれ部会を設けて話し合いを 続けており、9月をめどに意見を集約するという。県医療整備課は「医師を拠点病院に集めるなど、地域の実情にあった方法を考えたい」と話している。(前田 大輔)

 ◇キーワード
 <県の小児救急医療への取り組み> 今年6月から相談電話「#(シャープ)8000」番をほぼ全域で設置。平日と土曜は午後7時から同11時、日祝日と 年末年始は午前9時から午後11時まで受け付けている。病院に行く必要があるかどうかや、家庭での処置法などをアドバイスする。小児救急に駆け込む患者を 減らすことなどが狙い。県医療整備課によると、1日平均約30件の利用があるという。

◆(働く人の法律相談)スポット派遣 実態は問題だらけ 棗一郎
朝日新聞 2007年8月20日
 携帯電話やメールで、派遣会社から1日単位で仕事を紹介してもらう「スポット派遣」。日雇い派遣などともいわれ、リストラされた人たちや20代、30代 の若者たちの間で急速に広がっています。
 派遣会社に登録し、仕事があるときだけ1日限りの雇用契約を結びます。仕事は、引っ越しや倉庫での仕分け作業などの単純労働が主。毎日仕事があるとも限 らず、月収は15万円前後が多い。自活するには厳しい状況です。
 派遣を受ける企業にとっては、簡単に人員を確保できる便利で安い労働力でしょう。しかし、その実態については、さまざまな点で違法性が指摘されていま す。
 まず、「データ装備費」「業務管理費」などの名目で、派遣されるたびに約200円を給料から天引きされる。派遣会社側は、事故に備えた保険料、装備品の 購入費などといいますが、それらは本来会社が負担すべき経費です。天引き自体、労働基準法の賃金の全額払いの原則に反します。
 また、作業前に集合させられるのに、その分の拘束時間が賃金に反映されない問題もあります。働いていなくても使用者の指揮命令下にあれば労働時間。集合 時からの賃金も支払われるべきです。
 多くが雇用保険にも入っていませんが、スポット派遣で一定期間、生計を立ててきた人ならば、日雇い労働者向けの保険が適用されるはず。派遣会社はそのた めの手続きをすべきです。
 さらに、警備や建設、港湾現場への派遣は、その危険性などから労働者派遣法が禁じていますが、実際には横行しています。
 元々派遣の仕事は専門業務に限られていたのが、規制緩和が進んで原則自由化され、低賃金で不安定な労働が一気に広がりました。
 最近、スポット派遣の労働者らが労働組合を相次ぎ結成し、待遇改善のための労使協定を派遣会社と結んだり、天引きされた賃金の返還訴訟を準備したりして います。孤立しがちな派遣労働者がこうした連携を深め、声を上げていくことこそ、重要です。
 (弁護士 棗<なつめ>一郎)

 ◇ここがツボ
 ・根拠のない天引きは違法
 ・日雇いでも雇用保険に入れる
 ・労働者は孤立せず連携して声を上げよう
 <イラスト・今井ヨージ>

◆ホームレスと話したい、ケニア人学生「豊かな日本でなぜ?」――貧困巡り意見交換。
2007/08/19, 日本経済新聞 大阪朝刊 (社会面)
支援誌ビッグイシュー販売員と28日
 来日中のケニア人大学生の一行が、ホームレスの自立支援雑誌を発刊する「ビッグイシュー日本」(大阪市北区)の販売員らと貧困などの問題について大阪市 西成区で意見交換し、交流を深める。ケニアでは孤児が急増し経済的な苦境に立つ若年層の増加が深刻な社会問題になっている。一行は炊き出しなどもする予定 で、関係者は「先進国・日本が抱える問題を知ってほしい」と話している。
 企画したのは両国の懸け橋として社会情勢や文化を学ぶ学生団体「日本ケニア学生会議」。二〇〇〇年から毎年夏、ケニアで合宿を開き、〇五年に日本で初め て合宿を行った。
 昨年の夏合宿で日本を紹介したスライドを見たケニア人学生が最も興味を示したのが、河川敷でブルーシートのテントに住む野宿者の写真。「日本では誰もが 一日三回食事をし、どの家にもパソコンや自動車があると思っていた」と驚いたという。
 二回目の来日となる今回、ケニア人学生側からぜひ日本のホームレスの人たちと話がしてみたいとの声が上がったのに対し、「自分の経験したことを世界の若 者に知ってもらいたい」とホームレス男性らが応じた結果、二十八日に大阪市立西成市民館で意見交換が実現する運びとなった。
 参加者のエガトン大学二年、マーティン・ワンゲンドー・カランジャさん(21)は「ケニアの路上生活者は孤児やエイズ患者が多い。日本は成人男性がほと んどで驚いた」と話す。「大阪では労働者の人々がより生きやすくなる方法を探るような議論ができれば」と楽しみにしている。
 知り合いの誘いなどでビッグイシューの販売員を始めたホームレスの男性(50)は「日本のホームレスの若年化という深刻な問題を考えてもらいたい」とケ ニア人学生との意見交換を快く引き受けたという。
 ビッグイシュー日本の佐野章二代表は「国内外の学生が活動に興味を持ってくれて大変ありがたい。ナイロビにある世界最大級のスラム街でビッグイシューケ ニア版が昨年発刊されたばかり。日本の実情を伝える絶好の機会だ」と話している。
「ビッグイシュー日本」が来月 一貫支援へNPO
健康診断やパソコン研修
 「ビッグイシュー日本」が雑誌創刊四周年を迎える九月、支援活動の枠を広げるため新たに非営利組織(NPO)を設立、健康管理から就職活動まで一貫した サポート体制づくりを目指す。
 九月一日に発足予定のNPOは「ビッグイシュー基金」。一年で三千万円を目標に寄付を募り、東京と大阪に活動拠点となるホームレス向け相談窓口を設け る。民間医療団体や弁護士らと連携、健康診断やアルコール依存症克服の活動を展開するほか、借金返済の法律相談にも応じる計画。
 パソコン研修や面接の受験指南など講座を開いて就職活動を支援。気力回復や生きがいづくりに向け、サッカーやダンスなどのスポーツクラブや音楽バンドな どの活動にも力を入れる。急増する若者層のホームレス対策にも乗り出す。
 同誌は平均五十歳代のホームレスが販売員となり、売上高の半分以上を収入にすることで自立を支援しようと二〇〇三年に創刊。現在は全国十都市で販売し、 約三万部を発行しているが、赤字経営で寄付金などでカバーしている状態という。
 これまで約六百五十人が販売員となり、うち五十四人以上が、この収入を元手にアパートを借りて定職に就き、ホームレス生活から脱する契機となったとい う。
 ▼ビッグイシュー ホームレスが販売する雑誌として、英国ロンドンで一九九一年に創刊。日本版は二百円で読者に販売し、うち百十円がホームレスの収入に なる。
 二十―三十代の読者層を想定し、国内外の俳優や歌手のインタビュー記事のほか、引きこもりや格差などの社会問題を多く取り上げる。
【図・写真】街頭で雑誌を販売する男性。ケニアと日本の学生交流の場でホームレスの現状を伝える(大阪市北区)

◆(声)格差社会生む構造改革とは 【大阪】
朝日新聞 2007年8月19日
 無職 岩瀬さだ子(岡山県津山市 76歳)
 ワーキングプア、非正規雇用労働者の増加など若年層の格差拡大。労働市場の規制緩和と市場原理主義を進める構造改革の負の側面が、いま浮き彫りになって いる。「聖域なき構造改革」の響きに国民は酔い、気づいたらとんでもないところにいた。それが実感だ。
 かつて総中流といわれた日本だが、平均所得の半分以下しか稼いでいない人の割合を示す貧困率は上昇している。経済協力開発機構(OECD)の調査では、 日本の00年の貧困率は15・3%と先進国中3番目の高さだ。
 規制緩和の本家ともいえる米国では、80年代に格差社会が到来し、所得と職種の二極化など様々な弊害が指摘されていた。
 ところが日本は、米国型社会を求めた。国際競争力を重視する経済界の要求を受け入れ、規制緩和、税制改革を推し進めた。あおりを食ったのは国民と地方に 他ならない。将来への不安から、老いも若きも明日への希望を失っている。地域社会は崩壊しつつある。
 政府には、構造改革の影を直視し、社会保障やセーフティーネット(安全網)の拡充など格差是正の施策を急いで頂きたい。

◆(日曜ラウンジ)炭都の証し、保存へ力 地域支えた旧三菱大夕張鉄道 /北海道
朝日新聞 2007年8月19日
 夕張市の石炭産業とそこに暮らす人々を支えてきた三菱大夕張鉄道。87年には全線廃線になったが、同市南部のレールの上にわずかに残されたラッセル車や 客車など数両は、かつての炭都を代表する産業遺跡でもある。市は一時は「列車公園」まで構想したが、財政破綻(はたん)などで宙に浮いたままだ。地元の人 たちがボランティアで保存に邁進(まいしん)している。(本田雅和)

 市内の人口集中地域、清水沢から国道452号を東へ8キロほど行くと、土台部分が崩れかけ、夏草が生い茂る旧南大夕張駅のプラットホームがある。その前 だけに残された鉄路の上に、ラッセル車を先頭に3両の客車がつながれているほか、石炭車や軌道モーターカー、軌道自転車も、昨日まで働いていたかのように 停車している。

 ○本来は貨物車
 かつての南部地域には炭鉱を中心に2万人の人々が暮らし、24時間労働者を送り出す炭鉱住宅や人々の疲れを癒やす飲食街は、さながら不夜城のように輝い ていた。
 今は商店の多くがシャッターを下ろしたり廃業したりして、人口は820人余りにまで減った。それでもここに保存された客車内はきれいに掃除され、記念品 が展示されている。「想い出ノート」も置かれ、時折、訪問者が感想を書き付けていく。
 「私はこの汽車で夕張の本町にある女学校に通いました。鹿ノ谷で国鉄から夕鉄に乗り換え、1時間半かけて。冬は列車内に石炭のだるまストーブが置かれま した」。酒店を経営する山影静子さん(79)はそう振り返る。
 本来は石炭や木材を運ぶ貨物列車だったが、山間地で他に交通手段がなかったため、当時は「人命は保証しない」と書かれた切符「乗車勘合証」が発行され、 地元民の便乗が開始された。
 山影さんの父、高橋善兵衛さんは同鉄道の廃止後、「残されたズリ山や坑口跡ともに貴重な炭鉱遺産だ。将来はここを郷土の鉄道博物館にしたい」と、放置さ れていた列車などの保存運動に尽力。高橋さんが87年3月に84歳で亡くなったあとは山影さんが遺志を継ぎ、一周忌には列車保存に期待を込めて、市に百万 円を寄付したりしてきた。
 三菱側もこうした動きをふまえて、90年3月の南大夕張炭鉱閉山後、ここに残った客車、貨車などを夕張市に譲渡。99年には高橋さんらの運動に賛同した 地域の人々や郷土史家らにより「三菱大夕張鉄道保存会」(奥山道紀会長)が発足し、ボランティアで車両の補修をしたり、「無料の観光スポット」として整備 したりしてきた。

 ○公園化は凍結
 しかし、線路のある土地自体は国有地で、三菱系企業が借用したままだったため、保存会は土地も市が借り受けて公園化を進めるよう要請。今年3月、ようや く土地が三菱から国に返還され、夕張市が借用者になったが、市の財政破綻で、老朽化した客車の最低限の補修費120万円どころか、公園化への整備も凍結状 態になっている。
 同会では雨漏りなどがする客車の屋根の補修費だけでも何とか自力で捻出(ねんしゅつ)しようと、新たな募金運動を開始。8千円以上の寄付に応じてくれた 人には、同会が保存する旧大夕張鉄道の「行き先表示板(サボ)」の忠実な復刻版を百個限定で贈呈することにした。
 また今月26日午前10時から午後3時まで、南大夕張駅跡地の現地で「カフェ・シューパロ」などが店開きする「汽車フェスタ」を開催し、資金の一助にす る。

 ◆キーワード
 <三菱大夕張炭鉱と鉄道> 北炭夕張炭鉱の開発などに続いて1906(明治39)年、夕張川上流の二股地区(現・南大夕張=南部地区)の大露頭で採炭が 開始。当初は馬車鉄道で運炭が行われていたが、11(明治44)年に清水沢―二股間が専用鉄道・大夕張鉄道として開業。29(昭和4)年には奥地・鹿島の 大夕張炭山まで延長したが、87(昭和62)年に合理化で鉄道部門は廃止された。

 【写真説明】
南大夕張駅跡地の崩れかけた旧プラットホーム。駅の看板横に立つ山影静子さんらが保存に取り組む=夕張市南部で

◆リハビリ専門職、合同就職説明会 希望者262人が参加 /宮城県
朝日新聞 2007年8月19日
 県内で不足する理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの就職希望者を対象とした合同就職説明会が18日、県庁で開かれた。
 2年目の今年は昨年の倍の262人が訪れ、人材不足に悩む病院や老人ホームなどが熱心に就職を呼びかけた。
 厚生労働省によると、県内のリハビリ専門職の数は全国の最低水準という。学生らの人気は都市部の施設に集中する傾向にあり、郡部で人材不足が深刻化して いる。
 だが説明会では「今は全国どこででも修業したい」「腕を磨くことができれば地域は限らない。たくさんの施設から話を聞きたい」など、地域にこだわらない という声も多かった。
 主催した県リハビリテーション支援センターの樫本修所長は「地方の施設は患者の生活を見据えたリハビリが体験できる魅力がある。幅広い選択肢を検討して もらいたい」と話した。

◆無店舗型風俗店、立ち入り指導 長野中央署 /長野県
朝日新聞 2007年8月19日
 管内に約50店のデリバリーヘルス(無店舗型風俗店)を抱える長野中央署が17日、全国的にも珍しいという立ち入り指導を実施した。少女を働かせるな ど、長野市の同署管内3店舗で6人の摘発が今年あったため、18歳未満や不法就労者を雇用しないことや、法令を順守するよう指導した。
 少年指導委員と同署員ら約30人が5班に分かれ、約20店の受付所を巡回。立ち入りを受けた受付所の男性従業員は「雇用する際の誓約書で、年齢の確認を している」などと応じていた。
 県警は「立ち入り指導によって、『次はうちに来るかも』という警告にもなる」としている。

◆県立高の再編に批判的な意見 県民集会に200人 熊本 /熊本県
朝日新聞 2007年8月19日
 「第2回県高校再編を考える県民集会」が18日、熊本市花畑町の市国際交流会館で開かれた。講演やパネルディスカッションがあり、県教委が進める県立高 校の再編について批判的な意見が出された。
 県高校再編関係市町村長等連絡協議会が主催し、約200人が参加した。
 熊本大文学部の徳野貞雄教授が「地域社会における高校の存立構造と意義」と題し、地域社会と教育の関係について講演。明治維新後の教育機関は近代化推進 や労働力確保を目的に成立し、都市部への人口集中をもたらした、と指摘。それに対して、「地域社会を存続させる担い手の育成という視点で高校を考える必要 がある」と述べた。
 その後、佐藤義興・阿蘇市長や教育関係者らが高校再編について議論を交わした。
 県立高校再編については、21日に県教委が臨時の教育委員会を開き、基本計画案を決定する見通しだ。

◆子どもの急病、あすから対処法相談 「#8000」番、午後7〜11時 /鹿児島県
朝日新聞 2007年8月19日
 夜中に突然子どもの具合が悪くなったが、救急車を呼ぶべきなのか、自宅で様子を見て大丈夫なのか――。判断に迷った時に相談できる「小児救急電話相談」 が、20日から始まる。「#8000」(市外局番「0986」の地域やダイヤル式電話の場合は、099・254・1186)に電話をかければ、経験豊富な 看護師が症状を聞いてアドバイスする。
 県保健医療福祉課によると、小児救急で運ばれてきた子どものうち、大半は入院の必要性がない場合が多い。しかし子どもを持つ親が緊急性の判断をするのは 難しく、結果、小児救急が混雑する原因となっている。
 そこで電話で看護師に症状を説明し、病院で受診する必要があるか▽救急車を呼ぶ必要があるか▽家庭でどのような応急処置ができるか――などを相談できる ようにする。看護師は必要に応じ小児科医の指示を仰ぐ。
 04年度に厚生労働省が補助を始めた「小児救急電話相談事業」の一環。同省によると、07年8月現在、電話相談未導入の自治体は鹿児島県を含め9県だけ だった。
 受け付けは午後7〜11時で、毎日対応する。おおむね15歳未満の子どもが対象。

◆ブラジルでエタノール価格急落――サトウキビで労働問題も浮上(市場の話題)
2007/08/18, 日本経済新聞
 バイオエタノールが代替エネルギーとして注目されるなか、ブラジルでエタノールの卸売価格が急落している。
 応用経済先端研究センターの発表によると、エタノール(加水アルコール)一リットルあたりの卸売価格は、今年三月末時点で約〇・九六レアル(一レアル= 約六十円)だったのが八月十日現在、約〇・五八レアルと三九・七%下落。四月ごろから始まった原料のサトウキビの収穫期がピークを迎え、生産過剰が顕著に なっていることが背景にある。
 今年度のブラジル国内のエタノール生産量は、サトウキビの栽培面積の拡大や品種改良で昨年度に比べ約一四%増の二百億リットルに達する見込み。国際相場 の上昇で、生産業者もサトウキビから作る製造比率を砂糖よりエタノール向けに大幅にシフトさせていることも増産に拍車をかけている。
 値下がりに加え、新たな問題も浮上しつつある。サトウキビの刈り取りを行う季節労働者の過酷な労働実態が問題化。なかには一日に十二トン以上も収穫する ことを条件に「奴隷のような」契約を結ばせたり、児童就労をさせたりする業者も出現した。国営石油会社(ペトロブラス)はこうした悪徳業者からの買い取り をしない姿勢を打ち出し、対応に躍起になっている。
 一方、同国政府は今年三月のブッシュ大統領のブラジル訪問の際に批准した米国とのエタノール共通市場創設に向けた準備も迫られている。先月、米政府高官 八人が訪問し、エタノール取引の活性化策や、第三国での生産への技術移転策を協議した。
 INMETRO(国家度量衡・規格・工業品質院)は今年末までに、国内で生産されるエタノールに含まれる不純物の割合などの品質基準を策定する見通し。 今後、エタノールの価格安定に向け、ブラジル政府は生産拡大と品質の保持、さらに労働環境の改善への努力が試される。
(サンパウロ=岩城聡)

◆茨城・高萩の海岸、海岸キャンプ、今年から禁止――日系ブラジル人、大音量で音楽。
2007/08/18, 日本経済新聞
「習慣なのに」
 テントの絵とポルトガル語で「プロイビサォン」(禁止)の文字が描かれた看板が立ち並ぶ茨城県高萩市の高戸海岸。北関東で働く日系ブラジル人に人気の “リゾート”だが「夜中に大音量で音楽」「ごみを分別しない」などの住民の苦情や水死事故を理由に、高萩市がキャンプを今年から禁止した。
 日系ブラジル人には「唯一、長い休みがもらえる時期に海に行くのを毎年楽しみにしていたのに……」と失望が広がり、支援者からは「キャンプとバーベ キューはブラジルの習慣。追い出すだけでは、同じことが他の場所で繰り返されるだけ」という声も出ている。
 高戸海岸で、群馬県太田市や栃木県足利市などの工場で働く日系人が夏にテントを張り、数日間過ごす姿が目立ち始めたのは五年ほど前。高萩市によると、昨 年は二百以上のテントが浜を埋めて騒音などの苦情が寄せられ、遊泳禁止場所で前橋市の日系人男性がおぼれて死亡した。
 約十年前から毎年、高戸海岸で夏休みを過ごしていた足利市の日系ブラジル人シルビオ・モリモトさん(49)は「マナーの悪い人が増え、歯止めが利かない 危険な状態だった」と話す。しかし出稼ぎで“仕事漬け”の日々の疲れをいやす場を失ったことに「やはりショック。禁止する前に手を打てなかったのか」とや り切れない様子だ。
 高萩市は浜から離れた空き地に有料の仮設キャンプ場を設けたが利用者は少ない。
 群馬県大泉町で日系人の生活を支援している日伯センターの高野光雄代表(70)は「日系人を労働力として受け入れる一方で、日本社会のルールを伝える教 育の場が日本にはない。高萩市のようなケースはどこでも起こり得る」と話している。
【図・写真】茨城県高萩市の高戸海岸に、ポルトガル語で「禁止」と書かれた看板を設置する市職員(7月19日)

◆第7部先輩国の教え(3)仕事と裁判の板挟み(試される司法)
2007/08/18, 日本経済新聞
支援体制、中小に負担重く
 「今日は出社せず、裁判所に直行してください」
緊急の呼び出し
 五月下旬のある朝、独ベルリン市内の自宅を出る総合電機大手シーメンスのユルゲン・ゼーバルト人事部長の携帯電話が鳴り、秘書から連絡が入った。労使紛 争を扱う労働裁判所から緊急に呼び出されたのだ。
 ゼーバルト部長は裁判官とともに労働裁判を裁く「名誉職裁判官」。企業や労働組合が推薦する候補者から選ばれる仕組みで、刑事裁判の参審員と同様、市民 代表として裁判に加わる。
 同社の名誉職裁判官は管理職クラスだけで九十人。通常、裁判所から二週間前に召喚状が届くが、欠員が生じれば急な呼び出しもある。出張の多い同社は社員 ごとに代理者を決め“公務”による不在をフォローする社内体制を整えている。
 裁判を専門家任せにしないで、市民参加の制度を確立するには企業を含めた社会全体の協力が不可欠。米裁判所が作製した冊子には「陪審員で休んだ社員にそ の分の仕事を強要すると、雇用主は刑事訴追される可能性がある」など、企業の義務が列挙されている。
 米ボーイングは社員が陪審員に選ばれた場合に備え、陪審員候補になったら直ちに上司に報告するよう求めている。同社は召喚状のコピーを提出した社員に有 給休暇を与え、通常勤務と同額の給与を払う。
 各国とも大企業は支援体制に余裕がある。問題は中小企業とその働き手だ。
 「参審員で裁判所に出向いた翌日は十二時間働く。それでも穴埋めできない」。伊ミラノのオフィス機器販売会社社長、レナート・バルサモさんは嘆く。
 三カ月の任期の予定が、担当した裁判が長引き、裁判所通いは一年四カ月に及ぶ。審理の日は会社にコンサルタントを呼ぶ。八千円の日当は割に合わない。 「裁判所は非日常の世界で経験は貴重だ。ただ部下が十六カ月も参審員をすると分かったら何としても阻止する」と皮肉たっぷりだ。
 イタリアの老人医療専門の公立病院の看護師、ルッソ・エレナさんも嫌な経験がある。参審員参加を申し出ると、有給休暇扱いのはずなのに夜間勤務を命じら れた。裁判所の証明書を出して免除されたが、「職場の雰囲気が重くなった」。人手不足の職場では言い出しづらい現状がある。
警察から召喚状
 陪審制とは陪審員の義務を逃れる知恵のない人に運命を委ねること――。米国のブラックジョークだが、米民間団体が四月に実施した全米調査で裁判所が召喚 状を送付した人のうち実際に出向いた人は四六%と半数以下にとどまった。人員確保は各国共通の課題で、地方都市ほど深刻だ。
 「一時間後に裁判所に行って」。米ノースカロライナ州で三月、スーパーマーケットで買い物中の女性(64)が警察官から陪審員の召喚状を手渡された。 「応じないと法廷侮辱罪に問われます」。同州の最高裁担当者は「裁判を始めようとしたら陪審員候補が足りず、緊急招集せざるを得なかった」と弁明する。
 日本でも「裁判員休暇」の導入など準備を進める大企業に対し、中小企業からは辞退理由の拡大を求める声が上がる。法曹界は企業に出張して説明会を開くな ど協力取り付けに躍起だ。
 パソコン十数台が並ぶ米ニューヨーク州最高裁の陪審員用待合室。仕事を持つ陪審員が電子メールをチェックする風景が見られる。ジュディス・ケイ主席判事 は「陪審員の負担をいかに軽くし、使いやすい制度に変えていくか。百年以上の歴史がある米国でも改革は道半ば」と話した。
法廷メモ
鉄のオリで厳重監視
 イタリアの法廷に置かれた鉄製の頑丈なオリ。殺人事件などの被告は弁護人の横の席ではなく、オリの中のいすに座らされ、公判中は拳銃を所持した数人の刑 務官に監視される。被告がマフィア幹部などの場合、敵対勢力の報復を避けるために裁判所に出頭させず、拘置所と裁判所をテレビでつないで被告に質問する ケースもある。
【図・写真】ニューヨーク州最高裁の待合室で、メールを確認する陪審員

◆グッドバランス賞、育児・仕事の両立進める中小、横浜市が認定・表彰。
2007/08/18, 日本経済新聞 地方経済面 (神奈川)
 横浜市は市内の中小企業や団体を対象に、「よこはまグッドバランス賞」を創設した。女性の子育て支援など従業員が仕事と家庭を両立できる環境づくりに取 り組む企業を認定・表彰する。同賞に認定されると市の低利融資の対象になるほか、ホームページなどを通じて取り組みが紹介される。取引先や地域住民による 推薦も可能だ。
 評価の対象となるのは男女ともに使える短時間勤務制度や、出産後の職場復帰支援制度などの有無、女性管理職の登用やセクシュアルハラスメント防止対策の 状況など。
 募集期間は他薦が三十一日まで、自薦が九月末まで。外部識者による認定委員会による選考を経て、十二月に認定・表彰企業を決める。問い合わせは横浜市男 女共同参画推進課(電)(045・671・2035)まで。

◆外国人技能実習、事業場88%法令違反、4―6月埼玉県内、時間外や休日労働。
2007/08/18, 日本経済新聞 地方経済面 (埼玉)
 埼玉労働局は、県内の労働基準監督署が今年四―六月に集中的に実施した外国人技能実習生受け入れ事業場への監督指導の結果をまとめた。実習生を受け入れ ている六十一事業所に立ち入り調査した結果、約八八%の五十四事業場で労働時間や就業規則の作成などに関する労働基準関係法令の違反が見つかった。同局は 監督指導を強化していく。
 今回が初めての取り組み。協定を結んで労基署に届けることなく、時間外や休日労働をさせている違反が最も多く、違反率は六二・三%に上った。
 常時十人以上の労働者を使用していながら、就業規則を作成していない、あるいは規則の変更などを労基署に届けていなかった例は三四・四%あった。
 各事業所の違反に対してはいずれも是正指導を行った。
 古曳享司局長は違反率の高さについて、「制度に対する理解が進んでいないのではないか」とみている。
 米国務省は今年六月に公表した人身売買に関する年次報告で、日本の「外国人研修・技能実習制度」に言及。「強制労働の状況下に置かれている労働者がいる とされる」と指摘している。

◆老人ホーム譲渡、数社に絞り面談 コムスン第三者委
朝日新聞 2007年8月18日
 コムスンの事業譲渡先を選定している同社の第三者委員会(5人、堀田力委員長)は17日、有料老人ホーム事業の譲渡先を最終的に応募のあった52社から 数社に絞り込み、事務局の弁護士らが経営陣と直接面談したことを明らかにした。厚生労働省などと意見交換し、月末までに譲渡先を決定する。分割譲渡される 訪問介護事業には、最終的に252法人、延べ675件の応募があった。

◆4割「仕事の割に賃金低い」 介護職員、11万人調査 離職者1年で2割も
朝日新聞 2007年8月18日
 ホームヘルパーら介護労働者の約4割が現在の賃金に不満を感じていることが、財団法人介護労働安定センターの調査で分かった。事業者側も4割以上が介護 報酬の少なさを運営上の問題点と指摘。1年間で2割以上の職員が離職しており、介護現場の疲弊が浮き彫りになった形だ。
 調査は昨年9〜10月、約3万7千の介護事業所と、職員約11万2千人を対象に実施。回答率は32%と27%だった。職員への調査では仕事上の悩みにつ いて、「仕事内容のわりに賃金が低い」が40・3%で最多。「休憩がとりにくい」(31・4%)、「健康面の不安がある」(30・1%)が続いた。
 賃金は月収20万円未満が56・4%を占めた。訪問介護員の平均月収は14万4700円、施設などで働く介護職員は16万8200円。非正社員ら時給制 の場合、訪問介護員は平均時給1140円、介護職員は869円。
 一方で、事業所に運営上の問題を尋ねると、「今の介護報酬では十分な賃金が払えない」が45・9%でトップ。「経営が苦しく労働条件や福祉環境の改善が できない」も34・4%に上った。
 4分の1の事業所で1年以内に辞める職員が30%以上に上り、平均は20・3%。平均勤続年数も「1年以上3年未満」が37・5%で最多。危うく事故に なりかけた経験も49・8%の職員が「あった」と答えた。

◆(けいざいノート)格差問題の深層 生産と闘争の技術が混在 小林慶一郎
朝日新聞 2007年8月18日
 格差問題が大きく取り上げられる中で、市場競争やグローバル化に対する批判が盛んである。
 市場競争を擁護する経済学者や企業経営者の議論と、市場競争を批判し格差解消を訴える論者(社会学者、政治学者、評論家ら)の議論が、どうもかみ合って いない印象を持つのは筆者だけだろうか。
 経済学者が描く市場競争のイメージは、価格の値下げ競争であり、価格というシグナルのもとで、人々は自由に商品やサービスを生産し、交換する。互いの活 動を邪魔しあう「争い」というイメージはない。価格による競争は、資源や人材の最適な使い方に導き、社会の厚生を最大にするというのが経済学者の信念であ る。市場経済の中で、個人や企業が自己利益を最大にするように競争すると、「神の見えざる手」に導かれ、結果として社会の公益に貢献することになる、とい うアダム・スミス以来の考え方だ。
 一方、市場経済に批判的な評論家などの議論では、市場競争は弱肉強食のイメージで語られる。肉食動物のような企業が消費者や労働者などを獲物として狙 い、だまし、とって食べる「生存競争」――それが市場での競争ならば、負けた方は耐え難い損失を被り、勝者のみが繁栄することになる。そのイメージから は、競争は社会全体の厚生を高めるという経済学者の議論は納得できない。
   ○ ◎ ○
 市場競争について、どうして正反対のイメージができあがってしまうのだろうか。
 答えは、経済学者と、市場に批判的な論者は、それぞれ市場経済の異なる側面を見ている、ということだろう。市場競争には、経済学者が言うような素晴らし い側面もある一方で、評論家が指摘するような負の側面(ダークサイド)もある。
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の経済学者だった故ジャック・ハーシュライファー教授は、市場競争のダークサイドが生み出される原因は、競争に使われ る技術の違いであると指摘した。
 市場競争で使われる、と経済学者が想定するのは、当然、生産技術である。原料を加工し、部品を組み立てて製品やサービスを作るのが生産技術である。さら に、商品やサービスを消費者に行き渡らせる技術も生産技術に入れて良いかもしれない。
 一方、経済活動の中には、生産とは無縁な技術も存在する。社内の権力闘争で勝つ技術、顧客の無知につけ込んで不必要な商品を売り込む技術、政治家に取り 入って利益誘導(レントシーキング)をする技術……。ハーシュライファーは、これらをまとめて闘争技術と呼んだ。それは社会全体としては損失しか生まな い。既に存在する資源を、ただ単に他者から奪い取る技術が闘争技術なのである。
 市場経済に批判的な論者は、この闘争技術の弊害を問題視しているのではないか。
 現実の経済社会には、生産技術と闘争技術が混在し、企業も個人も状況に応じてそれらを使い分けている。議論がかみ合わない大きな理由は、現在の標準的な 経済学では、生産技術以外の技術がまったく無視されていることだ。
   ○ ◎ ○
 格差論議など最近の経済を巡る論争が提起しているのは、市場で闘争技術が使われることの害悪の問題といえるのではないだろうか。
 だとすると、生産技術だけを仮定した経済学の議論では説得力のある反論にはならない。闘争技術を分析対象に加えた新しい経済学を作る必要があるのかもし れない。
 政治の意思決定や行政プロセスを経済学的に分析する「公共選択論」という分野は以前からあった。そこでは政治や行政の場での闘争技術が経済学的に分析さ れている。しかし、市場経済活動の広い範囲で闘争技術を分析する経済学はまだない。
 格差論争自体を一種の闘争活動とみることもできる。過去10年の企業のリストラによって生活水準が下がった人々にとっては、現在の格差論争は政治的闘争 だ。
 ハーシュライファーによれば、持たざる者にとっては生産活動にいそしむより、政治的な闘争に参加する方が合理的な選択肢になる。自分で生産できるものは たかが知れているが、闘争によって政府の再配分政策を変化させ、利益を手に入れることができればずっと割が良い。かくして、格差論争に多大な時間とエネル ギーと才能が費消される。
 こうした分析は、再配分政策に新しい意義を与えるかもしれない。再配分政策は、一般に、効率を犠牲にして公平性を高める政策だと言われる。しかし、競争 のダークサイドを考慮するならば、再配分で格差への不満を解消することは、格差をめぐる政治的闘争に資源が費消されることを防ぐ。それは、社会全体の効率 を高めるうえでも望ましいのかもしれない。
(こばやしけいいちろう 経済産業研究所上席研究員)

◆漁船銃撃拿捕で死者に労災認定 /北海道
朝日新聞 2007年8月18日
 北方領土の貝殻島周辺海域で昨年8月、根室市のカニかご漁船「第31吉進丸」(坂下登船長、4人乗り組み)がロシア国境警備局に銃撃、拿捕(だほ)さ れ、甲板員の盛田光広さん(当時35)が死亡した事件で、釧路労働基準監督署が今年7月、盛田さんを労災認定していたことが17日、分かった。すでに遺族 補償年金の給付が始まっているという。
 同労基署によると、労災は国内の事業所に勤務し、その業務中に業務が原因で死傷した場合が対象となる。盛田さんの場合もこれに当てはまると判断したとい う。
 同労基署は「仕事に含まれるリスクが現実にあらわれたケース。(ロシア主張領海付近での操業で)ありうる災害だと認定した」と話している。

◆(県政の足もと 07選択の年に:3)環境影響評価 問われる指導力 /埼玉県
朝日新聞 2007年8月18日
 「100ヘクタールの山がまっ平らのコンクリートになる。一帯にどんな影響があるか、町との共生を含めて長いスパンで考えてほしい」
 7月10日、さいたま市で開かれた県の環境影響評価(環境アセスメント)技術審議会で、委員の一人が念を押した。
 議題は、ホンダが寄居町富田地区に9月の着工を目指す新工場建設事業。事業者側は、新工場が環境に及ぼす影響について、現地調査に基づいて準備書にまと めた。
 800ページを超す準備書は、工場建設により、近くを流れる荒川水系吉野川流域の地下水流出量が最大4割減る可能性を予測。ハクウンランやトウキョウサ ンショウウオなど、絶滅が危惧(きぐ)される動植物にも影響があるとして、約100ヘクタールある計画地内の森林約13ヘクタールを残し、ビオトープ約 1・6ヘクタールを設けて、植物を移植するなどの代償措置を検討した。
 これに対し、委員からは「対策のレベルが低い」「一部の種を守ればいいのではない」と厳しい意見が出た。
  □  □
 ホンダ進出は、県が05年1月〜07年3月に行った「企業誘致大作戦」の中で決まった。小川町に建設予定の工場と合わせた投資総額は約700億円。誘致 した計237社の中で最大級だ。経済波及効果は3千億円以上といわれ、県や町は税収アップや雇用拡大に大きな期待を寄せる。
 「誘致に熱心なのはいいが、県が環境対策に指導力を発揮しないと企業に足元を見られる」と指摘するのは、審議会委員も務める東大大学院総合文化研究科助 教の清野聡子さん(42)だ。
 清野さんによると、計画地一帯は、平野に向かって丘陵がでこぼこと出入りし、水源や防災、生態系の上で重要な地域。山を切り崩して谷を埋めるホンダの計 画については「世界企業としては時代遅れ」と手厳しい。
 「県の信念を打ち出せるかが問われている」と清野さん。背景には、高度成長期に公害問題に直面、ダイオキシン汚染など苦い経験を経て、全国に先駆けて戦 略的環境アセスメントを制度化するなど「埼玉は環境先進県」との思いがある。
 「県が誘致した企業に高水準の環境対策を求めていくことが、企業にノウハウを蓄積させ、結果的に企業価値を高める。県は積極的に人材や技術力を提供し、 一段上の対策を目指してほしい」
  □  □
 同町の元高校生物教師の南部(なんぶ)敏明さん(71)は「ナンブアシブトコバチ」の昆虫標本を木箱で大切に保管している。蜂研究者でもある南部さんが 77年に同町の三ケ山付近で発見した。町外に発見例がなく、最近は見つかっていないため、県の絶滅危惧種に加えられている。
 ホンダが進出する町南側の丘陵地帯を挟むように、すでにゴルフ場と資源リサイクル工場がある。「開発すべては否定しないが、今ある自然や生態系にもっと 配慮がほしい」
 町観光協会事務局長で南部さんとともにNPO法人「むさしの里山研究会」メンバーでもある石川光男さん(65)は「大切なのは開発と自然保護のバラン ス」と考える。ホンダが植林活動や計画地内にビオトープを設けることなどを挙げ「自然との共存を模索する企業姿勢の表れ」と評価した。
 計画地のすぐ近くに住む40代の主婦は今年、ホタルの数が減ったことが気がかりだ。「町の財政が潤うのか、自然がどう変わるか、期待と不安が半々」と話 した。(渡辺志帆)

 ◆キーワード
 <環境影響評価>(環境アセスメント) 大規模開発事業による環境への悪影響を回避または低減するため、一定規模以上の事業で事業計画決定後に境境への 影響を調査、予測、評価し、環境保全を目指す制度。埼玉県は県策定事業を対象に、計画決定前の策定段階で影響を予測、評価をする「戦略的環境アセスメン ト」を全国に先駆け、02年に導入した。

 【写真説明】
ホンダの新工場建設予定地。環境アセスメントのため、立ち入りが制限されている=寄居町富田で

◆賃金不払い容疑でバス業者を書類送検 水戸労働基準監督署 /茨城県
朝日新聞 2007年8月18日
 水戸労働基準監督署は17日、城里町石塚のバスタクシー業者「石塚交通」と旅行業者「石塚サン・トラベル」の2社と、両社の社長(44)を労働基準法違 反(賃金不払い)容疑で水戸地検に書類送検した。
 調べでは、石塚交通は従業員18人に対し、05年4月から06年8月支払い分までの賃金約2400万円を、支払わなかった疑い。石塚サン・トラベルは従 業員3人の同期間の賃金約276万円を支払わなかった疑い。
 石塚交通は昨年11月に解散し、精算手続き中。

◆「養育里親」手当を倍増 虐待児童の受け皿支援 厚労省方針
朝日新聞 2007年8月18日
 厚生労働省は18日、親と死別したり、虐待を受けたりした子どもを預かる「養育里親」への手当を来年度から、現行の月額3万4千円(児童1人あたり)か ら7万円程度に倍増させる方針を固めた。養護施設に代わり、家庭的な環境で被虐待児童らを育てる場として里親への委託を増やしたい考え。08年度予算の概 算要求に盛り込む。
 子どもを委託されている里親は06年3月末現在、2370家庭、ここで生活する子どもは3293人。里親数はここ数年、微増傾向にある。
 里親には、一般家庭が中心で里親全体の9割を占める「養育里親」や、処遇困難な子どもを一定期間預かる「専門里親」などがあり、養育里親を中心に支援を 強める。
 養育里親に対しては現在、里親手当3万4千円のほか、生活費4万7680円、教育費、医療費を国と都道府県が折半で支出。このうち里親手当を倍増して、 なり手を増やす考え。手当増額による初年度の国の支出増は数億円になる見込み。
 支援強化には、施設入所から、家庭に近い環境で児童を養育する里親制度への転換を図る狙いがある。虐待などで親と一緒に暮らすことのできない要保護児童 は現在4万人と、10年間で7千人近く増えた。9割は児童養護施設や乳児院などにいるが、都市部では定員超過も深刻化。施設になじめず、より家庭的な環境 での養育が求められる児童も多い。
 また、同省は来年度から里親と里子のマッチングや里親になるための研修などを充実させるため、都道府県の判断で支援機関を設置できるようにする。機関の 運営は、NPOや児童養護施設などにまかせたい考えだ。(高橋福子)

◆<お知らせ>横浜総局事務アシスタント募集 24日必着 /神奈川県
朝日新聞 2007年8月18日
 朝日新聞総合サービスは、朝日新聞横浜総局(横浜市中区日本大通15)で働く派遣社員を募集します。勤務条件、待遇などは次の通りです。
 ◇勤務時間 午前9時〜午後5時、午前10時〜午後6時の交代制勤務。時間外勤務あり。月1回程度土曜出勤あり(振り替え休日あり)
 ◇主な仕事 総局内の事務庶務業務
 ◇応募資格 PC(Excel、Word)が扱える35歳ぐらいまでの方(1時間程度で通勤可能な方)
 ◇待遇 日給1万500円(実働7時間)。雇用契約は長期(最長3年)。時間外手当あり。有給休暇あり。社保完。福利厚生充実
 ◇採用 8月下旬を予定
 ◇応募 エントリーシート(HPより印刷)または市販の履歴書にご記入の上(横浜総局勤務希望と明記)、朝日新聞総合サービス(株)派遣事業部 〒 104・8011 東京都中央区築地5の3の2あてに郵送。締め切りは8月24日(金)必着。応募書類は返却しません。
 ◇面接 8月下旬予定。書類選考後、通過者のみ面接日をご連絡します。
 詳細はHP(http://www.asahi−sougou.co.jp)。問い合わせは03・3541・2738。担当・野田。人材派遣業(般 13―01―0564)

◆市町村だより /岡山県
朝日新聞 2007年8月18日
 ■岡山■
 ◆創業・経営革新セミナー「人事労務を中心とした雇用管理」 9月12日と19日の各13時半〜15時、厚生町3丁目の岡山商工会議所4階会議室。社会 保険労務士の双田直さんが、人事労務をめぐる法令上の基準や制度、採用や教育、配置・業務命令など人材育成の進め方などを解説する。無料。各定員60人 (先着順)。同商工会議所経営革新支援アドバイザーセンター(電話086・232・2266、ファクス086・232・5269)。

◆三次の三セク、賃金不払い 労基署が是正勧告 /広島県
朝日新聞 2007年8月18日
 三次市君田町で「君田温泉・森の泉」などを運営する第三セクター「君田21」(藤原清隆社長)が、賃金不払いで三次労働基準監督署から是正勧告を受けて いたことが17日わかった。
 勧告によると、賃金未払いが認められたのは、毎月第3火曜日の休館日に草取りや窓ふきなどの清掃作業に従事したパート従業員ら39人分。告発を受けた同 労基署が事情聴取し、今月1日付で是正を勧告。会社は10日、2年間分の未払い分48万313円を支払った。
 同社によると、04年4月の合併前まで、旧君田村が予算を計上して業者に委託していたが、合併後はパートも含めた従業員による「奉仕作業」に切り替えた という。古川充常務は「企業活動にあたると指摘されたので勧告を受け入れた」と話した。(馬屋原清市)

◆入管申請偽造で行政書士を処分 都、業務停止9カ月 /東京都
朝日新聞 2007年8月18日
 東京入国管理局への申請書類を偽造したとして、都は17日、港区に事務所を持つ千田昌之行政書士(67)を9カ月の業務停止処分にした。
 都によると、昨年3〜4月、中国人留学生計10人について、在留資格を「留学」から「人文知識・国際業務」に変更する手続きを請け負った際、計6社の会 社名を使って雇用契約があるかのように書類を偽造。依頼者や報酬などについて、行政書士法に定めた帳簿記載も怠っていた。申請を受けた東京入管が会社側に 雇用契約を確認し、違反がわかったという。

◆(ここであった戦争)昭和の証人、解体の危機 県庁第1南別館 /山梨県
朝日新聞 2007年8月18日
 戦禍をくぐり抜けた「昭和の証言者」である建物がまた一つ、解体の危機にさらされている。1930(昭和5)年完成の県庁第1南別館だ。
 県の庁舎が立ち並ぶJR甲府駅前の一角。外観が重厚な別館や議事堂と異なり、傷みが目立つ第1南別館に目を向ける人は少ない。敗戦後は、進駐軍傘下の 「山梨軍政チーム」に接収されたことがある。
 軍政チームは、県内の政治や教育、労働運動などに目を光らせていた。文官で赴任した米国人のJ・V・スターヴェレンは、当時の自身の書簡や報告書などを もとに98年、著書「アメリカ・イン・ジャパン1945〜1948」をまとめた。その中で、県立図書館だった当時の第1南別館について「現代風の2階建て の建物で、屋根には大きな星条旗がはためいて人目を引いていた」と記している。
 もともとは県出身の実業家根津嘉一郎氏の寄付で図書館として建設された。進駐軍が引き揚げた後は、再び図書館、そして県庁舎として使われてきた。
 県は7月、県庁舎の耐震化を検討する委員会を立ち上げた。第1南別館については解体される可能性もある。県職員OBの専門家は「甲府には大正、昭和の建 物が少ない。歴史的価値も高く、保存すべきだ」と訴えている。
 戦争の記憶の風化が懸念されている。最終判断を下す県には、「保存」を求める声なき声にも十分耳を傾ける必要があると思う。
 (床並浩一)

 【写真説明】
現在の県庁第1南別館。山梨軍政チームは1946年、県内の児童・生徒が描いたクレヨン画の展示会を開き、多くの市民が訪れたという=甲府市丸の内1丁目 で

◆賃金不払いで社長らを書類送検 熊本労基署 /熊本県
朝日新聞 2007年8月18日
 (熊本労基署) 17日、城南町鰐瀬の有限会社中九運輸と同社社長(68)、経理担当従業員(58)を労働基準法違反の疑いで熊本地検に。
 調べでは、社長らは、従業員28人の昨年10月〜今年1月分の賃金計約1600万円を支払わなかった疑い。同社は、燃料費の高騰などで経営が悪化し、今 年2月に事業を停止していた。

フルキャスト問題、日雇い派遣の若者は――根強い「正社員ノー」。
2007/08/17, 日本経済新聞
不安定な立場、自覚も
 派遣会社から携帯電話やメールを通じ、日々仕事を紹介される日雇い派遣。景気が回復した今も、二十―三十代男女の働き方の一つとして定着している。今 月、大手のフルキャスト(東京・渋谷)が禁止業務への派遣で一―二カ月の事業停止命令を受け、業界の法令順守姿勢に赤信号がついた。それでも仕事への責任 を最小限にしたいと考え、自ら日雇い派遣を選ぶ若者は多い。
 午後二時、東京都千代田区のある現場で早朝からの引っ越し作業が終わった。「お疲れさまです」。日雇い派遣で働く小木有二さん(仮名、31)はそう言い 残してトラックを降りた。正社員たちは、もう一件作業をこなすため次の現場に向かう。「私の日給は八千五百円。昼過ぎに解放されることもあるが、正社員は そうはいかない。だから日雇い派遣がやめられない」
親の心配かわす
 小木さんは地方の大学を中退し、上京した。「長期の」仕事が見つかるまでの「つなぎ」のつもりが、日雇い派遣で生計を立ててはや五年だ。週六日働き月収 は平均二十万円だが、趣味はテレビを見ることくらいなので十分やっていける。
 九州で飲食店を営む親は、定職につかず結婚しない子どもが気が気ではない。電話のたびに「将来どうするつもり」と問われるが、うやむやにしている。気に 入っているのは日雇い派遣には責任がなく、嫌な職場でもすぐ辞められること。派遣先の正社員に「おい、そこのメガネ」とモノ扱いされても、時間外手当の支 払いが怪しい正社員の方が「待遇はよっぽどひどい」と思っている。「それなら今のままで十分」
新しい労働市場
 小木さんのような若い日雇い派遣労働者が急増している。フルキャストでは二〇〇二年九月末に六十三万人だったスポット派遣(日雇い派遣)への登録スタッ フ数が、〇七年六月末に百八十二万人と約三倍に増えた。大部分が二十代だ。
 背景には〇四年の改正労働者派遣法の施行がある。それまで派遣対象業務は、専門性がある労働者がこなす一群の業務に限られていたが、同改正で港湾運送、 建設、警備業務を除いて派遣業務が原則的に自由化された。時間当たりコストがパートより高くなったとしても、雇用調整が楽な労働力市場ができた。
 「その極端なものが日雇い派遣」と派遣ユニオン(東京)の関根秀一郎書記長は指摘する。若者と企業の双方が注目し、派遣会社数も急増した。しかしフル キャストにみられるように、法令順守意識は十分と言い難い面があった。
 フルキャスト問題は日雇い派遣で働く若い世代にどう影響したのだろう? 日雇い派遣歴六年の緒方章二さん(仮名、28)にとっての影響は、今月から二万 円ずつ貯金を始めたこと。「自分の派遣元もどうなるか分からない」と不安になったからだ。
それでも冷笑的
 緒方さんが働くのは主に工事現場。昼勤と夜勤の二通りの勤務をこなし、月収三十万円と正社員の一・五倍はある。「正社員に魅力を感じない」のは小木さん 同様だ。しかし立場の不安定さは自覚している。六年前に比べ賃金は下がり、交通費も減らされた。仕事中に肩を七針縫うケガをしたときは、派遣元から治療費 は出たが休業補償はなく、抜糸前に現場に出た。
 しかし彼の不安の種類は所属会社の将来を憂う正社員のものとは違っている。自分の将来は不安でも、派遣元に対しては「事業停止になってみろという気持ち もある。会社の体質が良くなるかもしれない」と冷笑的でさえある。
 より上の年代になると、事態は深刻なようだ。仕事はいつまでもないからだ。フルキャストに登録している白井康子さん(仮名、38)は「事業停止はきつ い。ひどい会社でも仕事がないよりはまし」と嘆く。最近は月に半分勤務するのがやっと。月収は十万円を切るという。
 東京学芸大学の山田昌弘教授は、こうした働き方について「将来設計を描けないから、今を生きるしかない。三十歳近くなっても、かつての日本人が目指した ような理想的な将来が想像できない。そこで奮起するわけでもなく、競争から降りている」と分析する。
 フリーターの出現以来、若い世代の変質が指摘されてきたが、フルキャスト問題は、彼らの足元の不安定さに初めて光を当てたと言えるだろう。
自主ルール策定、業界団体が検討
 日雇い派遣の受け入れ側は、フルキャスト問題を「一部の違法な運用をした個別企業の問題」とみている。日本通運広報部は「引っ越し作業のピーク時には短 期の派遣労働者らを活用して乗り切るしかない」とする。
 その一方、日本人材派遣協会は会員七百五十九社に禁止業務への派遣がないか改めてチェックを要請する。松田雄一専務理事は「事前に詳細が把握できない業 務への派遣を禁止する」など自主ルール制定も考えていると明かした。
 現状で日雇い派遣で働く人は、雇用保険の日雇労働被保険者の資格がない。二月にフルキャストが適用を申請したが、厚生労働省は「想定外のため、実態調査 が必要」と保留している。
【図・写真】日雇い派遣で働く若い世代が要求をまとめる動きも出ている

◆地方自治体や省庁のサイト、障害者配慮が不足――龍谷大調べ、9割に使いづらさ。
2007/08/17, 日経産業新聞, 6ページ, 有, 743文字

 中央省庁と地方自治体のウェブサイトの九割は視聴覚障害者や高齢者に対する配慮が欠けていることが、龍谷大学経済学部の西本秀樹教授の調査で分かった。 政府は二〇一〇年度までにインターネットを活用して行政サービスを向上させる「電子政府計画」を進めているが、ネット弱者への配慮が不十分な実態が浮き彫 りになった。
 中央省庁四十サイトと、都道府県四十七サイトを昨年十一月から今年一月にかけて調査。米系ソフト会社ウォッチファイア・ジャパン(東京・渋谷)が販売す る専用ソフトを使って、日本工業規格(JIS)のアクセシビリティー(利用しやすさ)規定を満たしているか調べた。合格点とされる六十点以上を取得したの は中央省庁の三サイト(七・五%)、地方自治体の六サイト(一二・八%)だけだった。中央労働委員会、内閣法制局、東京都などが高い評価を得る一方で、船 員労働委員会、国土交通省、長野県などは低迷した。
 JISは〇四年から視聴覚障害者や高齢者向けにウェブサイトで文字を大きく表示したり、写真の説明文を添付したりすることを求めている。国や自治体は法 律でJIS規定の尊重を義務付けられているが、ほとんど守られていなかった。同時に調査した問い合わせ対応などの結果も芳しくなかった。西本教授は「高い 公共性が求められる電子政府の実現に向けた課題は多い」と指摘している。
【表】サイトの使い勝手上位5件(カッコ内は点数)    
順位  中央官庁  都県
1  中央労働委員会(69.37)  東京(69.87)
2  内閣法制局(63.49)  香川(65.10)
3  海難審判庁(61.48)  神奈川(62.51)
4  公害等調整委員会(59.19)  宮崎(61.51)
5  内閣官房(57.98)  群馬(61.33)

◆「社内ニート」を予防せよ――トーマツコンサルティング寺崎文勝氏。
2007/08/17, 日経産業新聞
表彰制度で失敗も評価
存在認め声かけを
 就職氷河期も今は昔。景気回復を背景にした超売り手市場により、職場には若手社員の姿が一気に増えた。ただ、ちょっと待ってほしい。あなたの座席の横に 座っている若手社員は“社内ニート”になっていないだろうか。彼ら彼女らは、わずかなつまづきで就労意欲を失いかねない。専門家に対策などを聞いた。
 「大切なのは存在を認めてあげること。『今どきの若いやつは……』と否定してしまうと、たちまち出社しているだけの社内ニートになってしまう」
 企業に経営手法などを助言するトーマツコンサルティング(東京・千代田)の寺崎文勝ディレクターはこう警告する。
 「がんばっていたら、率直に『がんばっているね』と声をかける。バブル崩壊後は『がんばっている云々(うんぬん)よりも結果』という風潮だったかもしれ ないが、それでは若手社員との距離は縮まらない」
 トーマツによると、人材の引き留めに関する相談が急増している。ままならない超売り手市場の中、苦労して人材を確保しても、早期離職が相次いでいるため だ。
 「例えば、部下の仕事を月一回やってみてはどうか。若いころの気持ちを思い出すし、意外と忙しいことに気が付くはず。若い社員に感謝の気持ちを示すこと ができるはずだ」
 寺崎さんはありがちな精神論を説いているつもりはない。「そう思った人は間違い。あくまでこれはビジネススキル。訓練をしなければ実践できないのだか ら……」
 社内にニート予備軍をつくらないための、具体的な対策をみてみよう。寺崎さんは著書「ニート世代の人事マネジメント」(中央経済社)で、「飲みニケー ション予算」の設定や、挑戦する姿勢を維持するための「失敗表彰制度」などを紹介している。
 ただ、安直に取り入れても効果は期待できない。「どんな妙案であっても上司と部下の信頼関係があってこそ。例えば社長との食事会。率直に意見が交換でき ない雰囲気であれば『むりやり出席させられて、本当に面倒だなぁ』となる。意識改革には一年ぐらい時間をみたい」
ニート
 家事や通学をせず職業訓練も受けていない若年無業者を指す。Not in Education,Employment or Trainingの頭文字 (NEET)からとった。総務省の労働力調査によると二〇〇六年のニート人口は六十二万人。前の年よりも二万人減ったが、高止まりしている。
 今年六月に公表された厚生労働省の委託調査では、ニートの八二・八%が「うしろめたい」と感じていることが明らかになった。ただ、同時に八〇・九%が 「仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる」と訴えている。

◆南部化成、外国語や海外会社法の研修、派遣含め全社員に。
2007/08/17, 日経産業新聞
 【静岡】ジャスダック上場の南部化成は、派遣・契約社員を含む全社員を対象に、外国語や海外の会社法などの研修を始めた。主力の自動車、家電向けプラス チック部品で海外生産を拡大していることに対応。社員の語学力の向上などを図る。
 このほど始めた中国講座では、中国に赴任予定の社員向け教育制度を全社員に開放。来年三月まで月末の土曜日に開く講座に、希望者はいつでも参加できるよ うにした。さらに今年度中には生産拠点のあるフィリピンの講座も新たに設ける計画で、制度を順次拡充していく。
 中国講座は「人文コース」と「技術コース」の二種類を用意した。人文コースは、語学のほか中国の文化や歴史、労働法を講義。現地の子会社経営に必要な内 部統制やコンプライアンス(法令順守)、簿記、会計の知識、知的財産権などについても学べる。講師は外部の弁理士や社内の専門部署の担当者が務める。
 技術コースでは押し出し成型や射出成型の仕組み、成型技術の実習、成型設備の保全方法、トヨタ生産方式、品質管理などを社内の技術者が解説する。希望者 はどちらかのコースを選んで参加。初回には二コース合わせて計七十人の社員が受講したという。
 今回の教育制度により、駐在員予備軍の能力底上げを図るとともに、国内の社員も現地への理解を深めることで海外拠点との連携を強化することを狙う。
【図・写真】中国の拠点では、生産の拡大が続いている(広東省広州市)

◆野村資本市場研究所シニアフェロー関志雄氏――中国、労働力不足の時代に(視点論点)
2007/08/17, 日経金融新聞
完全雇用、所得格差の是正に寄与
 農村部での豊富な余剰労働力の工業部門への移転は、これまで中国の高度成長を支えてきた。しかし、近年、沿海地域における出稼ぎ労働者の供給がタイトに なってきたことに象徴されるように、中国は、急速に労働力過剰から不足の段階に差し掛かっている。これを反映して、一九九八年まで実質賃金の伸びは一貫し て国内総生産(GDP)成長率を大幅に下回っていたが、その後、両者の関係が逆転するようになった。完全雇用の達成は、中国の更なる成長を制約する要因に なりかねないと懸念されるが、その一方で、所得格差の是正や産業高度化に寄与するだろう。
 中国の農村部には、一億五千万人ほどの余剰労働力が存在すると言われてきた。政府がまとめた「国家人口発展戦略研究報告」(二〇〇七年一月に発表)にお いても、同じ数字が援用されている。このような「労働力過剰説」に対して、中国社会科学院人口・労働研究所の蔡〓所長は、一連の研究で異論を唱え、過剰か ら不足への転換点は〇九年にも到来すると論証し、話題を呼んでいる(「中国経済が直面している転換とその発展と改革への挑戦」、『中国社会科学』〇七年第 三期、「中国における雇用の拡大と構造変化」、中国社会科学院における報告、〇七年五月十日)。彼によると、経済の高成長と八〇年代の初めから徹底されて きた一人っ子政策の影響で労働年齢人口の伸び率が低下していることを背景に、〇四年以降、労働需要がすでに労働力人口を上回るペースで伸びており、〇九年 ごろには、農村部の余剰労働力が完全に枯渇するという。
 無限と言われた労働力の供給は、次のルートを通じて、中国の経済成長を支えてきた。まず、供給側では、農業部門における余剰労働力が工業部門に吸収され ることは、GDPの拡大に貢献している。また、賃金が低水準に維持されることは、所得分配の面において、資本収入を得られる高所得層に有利に働き、ひいて は高貯蓄と高投資につながっている。さらに、需要の面では、低賃金が、低コストに基づく輸出主導型成長を可能にしてきた。これに対して、完全雇用が達成さ れれば、生産性の上昇に合わせて賃金が上昇するようになり、雇用も労働人口の伸びに制約されることになる上、貯蓄率と労働集約型製品における輸出の国際競 争力が落ちてしまう。その結果、成長率も低下せざるを得ない。
 しかし、完全雇用の達成後の生産性の上昇に伴う賃金上昇は、中国経済にとって決して悪いことばかりではない。
 まず、賃金上昇に伴って国民所得における賃金収入の割合が高まり、所得分配における格差が縮小することになる。賃金に限らず、労働市場における需給関係 の変化は、すでに労働時間の短縮や戸籍制度の緩和など、労働者の権利の改善につながりつつある。失業率の低下とともに、これらは、社会の安定にも貢献する だろう。
 また、生産性の上昇に伴う賃金の上昇は、物価の上昇(固定為替レートの場合)、または名目為替レートの上昇(変動為替レートの場合)を通じて実質為替 レートの上昇をもたらす(バラッサ=サミュエルソンの仮説)。かつて日本が経験した「円高」のように、「元高」も、交易条件(輸出の輸入に対する相対価 格)の改善を通じて中国の国民の購買力を向上させ、ひいては内需の拡大と対外不均衡の是正に寄与するだろう。
 さらに、六〇年代の日本のように、このような相対価格の変化は、産業構造の高度化と投入量の拡大から生産性の上昇という成長パターンへの転換を促す要因 にもなるだろう。これにより、予想される成長率の低下に歯止めがかかることになる。実際、日本では、六〇年ごろにすでに完全雇用を達成したと見られるにも かかわらず、一〇%前後の高成長は七〇年まで続いた。
 最後に、これまで、中国政府は、雇用へのマイナス影響を懸念し、人民元の切り上げには慎重であったが、完全雇用が達成されれば、このような配慮をする必 要性がなくなる上、賃金上昇に伴うインフレ圧力を抑えるためにも、人民元の切り上げにはより積極的姿勢に転換するだろう。

◆フィリピン人の母国送金18%増、1―6月、70億ドルに。
2007/08/17, 日経金融新聞
 【マニラ=石沢将門】フィリピン中央銀行は今年一月から六月までに海外で働くフィリピン人労働者が母国に送った外貨の合計が七十億ドル(約八千百二十億 円)と、前年同期に比べ一八・一%増えたと発表した。海外に新たに働きに出た人数は減少したが、金融機関がフィリピン人向け送金拠点を増強し、銀行を通じ た送金が増えたようだ。
 六月の送金額は十一億ドル(千二百七十六億円)で十四カ月連続で十億ドルを上回った。フィリピンは人口の一割にあたる八百万人が海外で就労しているとい う。以前は地下銀行を使ったり、帰国の際に現金を持ち帰ったりする場合が多かったが、最近は安全を考慮して金融機関を通じて送金する労働者が増えている。

◆道内景気、足踏み感強まる、「改善兆し」10ポイント低下――地域経済本社調査。
2007/08/17, 日本経済新聞 地方経済面 (北海道)
雇用低迷 消費も回復遅れ
 道内景気に足踏み感が強まっている。日本経済新聞社が主要企業・団体を対象に調査したところ、半年前に比べ、景気に「改善の兆しがみえる」と答えたのは 全体の一五%にとどまり、前回調査(二月、二五%)から一〇ポイント近く低下した。雇用情勢の低迷に加え、消費や設備投資の回復が全国より遅れているため だ。先行きに関しても、原油高や金利動向への懸念が強い。
 調査は全国の主要五百社・団体を対象にした「地域経済五〇〇調査」の一環として実施。全国では景気が「良くなった」が九%、「改善の兆し」が二六%に達 したが、道内ではそれぞれゼロ%、一五%にとどまった。「悪化の兆し」は全国では五%だが、道内では前回のゼロ%から六%に回答が増え、全国との景気格差 が広がっている。
 項目別にみると、雇用情勢について「改善の兆しがみえる」は二七%で、前回の三二%から低下。全国の四〇%を大きく下回った。実際、四―六月期の道内失 業率は五・三%と前年同期比〇・一ポイント低下したものの、全国の三・八%を上回り、全国十地域で最悪の水準にある。
 十五―二十四歳の失業率が大きく低下するなど、若年層には明るさもみえる。だが二十五―四十四歳は逆に悪化し、労働力の中核である層には厳しさが続く。 倒産やリストラに伴う失業者が増える兆しもある。北海道労働局の集計では事業主都合の離職者が六月は前年同月比一二%増の二千七百十五人だった。
 個人消費は「活発になりつつある」との回答が前回の七%から九%に、設備投資は「旺盛になりつつある」が二一%から二四%へと、それぞれ小幅に改善し た。ただし、ともに全国の水準(二二%、三三%)を下回り、回復の遅れが際立つ。
 消費を巡っては六月の大型小売店売上高が既存店ベースで八カ月ぶりに増加に転じた。「びっくりドンキー」を運営するアレフ(札幌市)ではここ数カ月、道 内の既存店売上高の前年同月と比べたマイナス幅が縮小しつつある。
 もっとも七月以降の百貨店販売が減速気味となるなど、消費全体では「横ばい圏内」(日銀札幌支店)の動きにとどまっている。
 今後の景気に悪影響を及ぼしそうな要因(複数回答)については「原油・原材料価格」が七六%と最も多く、「金利動向」(四六%)、「公共事業」(三三 %)が続いた。日糧製パンは重油価格の高騰を受け、七月中旬から蒸しパン製造や給湯などに用いるボイラーの燃料を天然ガスに切り替えた。年間二千五百万― 三千万円のコスト削減効果を見込む。
 日銀の利上げの影響については「マイナス」「どちらかと言えばマイナス」が八二%に達し、全国の六七%を上回った。売り上げの大幅な伸びが望み薄ななか で、利上げに伴う借金の利払い負担の増大を懸念する空気が強まっている。
 ▽調査の方法 アンケートは八月、道内の主要四十社・団体を対象に実施し、以下の三十三社・団体から有効回答を得た(五十音順)。
 アインファーマシーズ、アークス、旭ダンケ、アレフ、石屋製菓、伊藤組土建、王子製紙苫小牧工場、カナモト、カンディハウス、札幌銀行、セイコーマー ト、ダイナックス、テーオー小笠原、トヨタ自動車北海道、豊平製鋼、中道リース、日糧製パン、ニトリ、野口観光、フジタコーポレーション、北洋銀行、ホク レン農業協同組合連合会、北海道ガス、北海道銀行、北海道国際航空、北海道中央バス、北海道電力、北海道旅客鉄道、ミサワホーム北海道、三ツ輪運輸、宮川 建設、リラィアブル、ルネサス北日本セミコンダクタ
【図・写真】若年層の雇用情勢には明るさもみえるが…(札幌市内のジョブカフェ北海道)

◆女性働けば雇用増 育児と両立、内閣府試算
朝日新聞 2007年8月17日
 出産や育児で女性が働くことをやめなければ、雇用は44万人増え、経済成長も押し上げられる−。内閣府は16日、こんな委託調査の結果を発表した。短時 間勤務や在宅勤務を進める先端企業の取り組みを調べ、その効果を試算したものだ。
 調査によると、日本は他の先進国と比べて育児などで仕事をあきらめる女性が突出して多いと指摘。短時間勤務などで働き続けていれば、06年の労働力人口 は6658万人から6702万人に増えるとはじいた。仕事を続ければ知識や能力が失われずに済むため新規採用より経済効果が高いとし、国全体で06年から 10年にかけて経済成長を0・4ポイント押し上げる、とも分析した。
 政府はワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進に躍起で、内閣府は調査結果について「(短時間・在宅勤務は)社員の評価が高く、企業側もコ ストパフォーマンスも良好との評価が圧倒的」としている。

◆(私の視点)外国人研修生 労働者と認め、負担を軽く 牧原創一
朝日新聞 2007年8月17日
 外国人研修・技能実習制度に基づいて来日した研修生が、中小企業や農家で過酷な低賃金労働を強いられていることが、問題になっている。彼らが「労働者」 とは認められず、労働基準法や最低賃金法が適用されない、という背景がある。
 長勢法相は「単純労働者」として、3年間限定での受け入れを提案した。日本政府は、事務レベルの対応がバラバラで方針がまとまっていない。長勢私案を基 に、実勢に即した制度改正を急ぐべきではないか。
 制度は、日本の技能を外国人に学んでもらい、途上国に技術移転するのが目的だ。だが、多額の借金をした中国人研修生が06年、千葉県木更津市の派遣先の 養豚場で、残業代が少ないことが不満で殺人事件を起こしたこともあり、制度の見直しを求める声が強い。
 私は87年、日本人と結婚し、日本国籍を取得した。モンゴルの大学で日本語教育に携わり、日本には計200人もの留学生、研修生を派遣してきた。外国人 の研修や技能実習について研究している立場から、次の改善策を提案したい。
 (1)研修生を「単純労働者」と認定し、労働基準法などの適用対象にする。
 (2)研修生の送り出し機関や受け入れ団体は、研修費、紹介料、手数料など、どんな名目でも、高額な要求ができないよう、政府間で妥当な上限を設定す る。
 (3)研修生には、最低限のマナーやルール、日本語会話能力、生活習慣などについて、ある程度は習得しておくことを条件にする。日本語が全く理解できな い人を受け入れても、日本社会への適応は難しいからだ。
 研修生の在留資格は「研修」なので、就労はもちろん、残業も禁止されている。だが、人手不足に悩む繊維、食品加工などの中小企業や農家などでは、不可欠 な「労働力」になっているという現実もある。
 木更津市の事件の被告は貧しい農家の出身で、家計を助けるために来日した。日本の制度を知らず残業が多いと聞き、「稼げる」と思ったという。だが、時給 450円で月50時間前後の残業をしても、収入が少なかったので失望していた。
 研修生をあっせんしているのは、商工会、事業協同組合などの「受け入れ団体」である。被告は千葉県農業協会が中国に設けた研修センターに100万円以上 の研修費を払っていた。
 中国の研修生派遣会社でも、「紹介料」として研修生から70万円から100万円をとるのが常識だ。彼らが失跡すれば、紹介料以外に高額な担保金が会社に 入る。日本の制度が悪用されているといえるわけだ。
 研修生には、犯罪にかかわったり、失跡して不法滞在者に転落したりする人もいる。法務省の統計では、06年に来日した研修生は9万2846人。警察庁に よると、同年の刑法犯での検挙者は585人、失跡者は1178人に上る。
 日本の中小企業や農業を支える研修生を、便宜的に利用するのではなく、「単純労働者」と位置づけ、彼らの経済的負担を減らすことが不可欠だ。研修生にも 不法就労に陥らないため、日本社会で自立できるよう努力を求めたい。
     *
 まきはらそういち モンゴル文化教育大学長

◆(経済気象台)正義感か、義務か
朝日新聞 2007年8月17日
 コリーン・ローリーという名前に記憶はないだろうか。それではシェロン・ワトキンスあるいはシンシア・クーパーはどうであろうか。それぞれ米国同時多発 テロ、エンロン事件、ワールドコム事件に関し内部告発を行った女性である。
 多くの会社では、コンプライアンス体制確立の一環として、ホットライン、スピークアウト、ヘルプライン等々の名称で、内部通報制度を設けている。そこで は、会社におけるコンプライアンス違反行為につき、あらかじめ定められた通報窓口に通報できること、窓口は適切な改善措置を講ずること、通報者に関し秘密 を保持することや不利益な取り扱いを禁止することなどが詳細に定められている。
 内部通報制度は、社員にとっては自らが所属する会社のコンプライアンス体制へ参加していることを実感できる一つの方法であり、会社にとっては社員のコン プライアンス意識の高揚に資する制度である。しかし、この制度が、十分に活用され、目立った成果が上がっているわけではないようである。制度の活性化のた めには、次の2点を解決する必要があろう。
 多くの内部通報規定を見ると、「通報することができる」と定められている。内部通報自体は別の面からみると自らが属している組織や同僚に対する「裏切 り」で、どうしても「密告」の暗いイメージが付きまとう。「できる」というのならば「しなくてもいい」「見ないふりをする」とはならないだろうか。だから といって「する義務がある」となると、労働協約や就業規則との関係が気になる。どう折り合いをつければいいか。
 また、「通報する」行為自体を何と呼ぶか。英語ではWhistle−Blowing、警告を発すること、という。内部通報者に対し後ろ暗い思いをさせな い、そして前向きかつ建設的な意味を持つ、何かいい言葉はないだろうか。(啓)

◆在庫次第で期限操作 全商品の3割延長 「白い恋人」賞味期限改ざん問題 /北海道
朝日新聞 2007年8月17日
 会社の都合で賞味期限を勝手に延長する――。「白い恋人」の製造元・石屋製菓が10年以上もの間、社内で定めた賞味期限を自己都合で延長していたことが 16日、分かった。同社は全商品の自主回収を決め、安全を確認するまで工場を全面休止する。石水勲社長は「創業的出直しを図りたい」と話すが、食の安全を 軽視し続けた同社の体質に批判の声も強い。

 「白い恋人」の賞味期限延長が始まったのは96年ごろ。新たな個包装材の導入で長期間の保存が可能となり、社内で賞味期限を「4カ月」に設定。社外にも 公表してきた。だが在庫が多い時は出荷までに時間がかかることから、1〜2カ月賞味期限の日付を延長。同じ商品でも賞味期限が3種類ある状態が続いてい た。延長は全商品の3割にあたり、当時から社長も認識していたという。
 同社の検査では「白い恋人」は少なくとも半年間は品質が変わらず、「堅く見積もって」4カ月に決めたという。道内の菓子業界の関係者も「賞味期限とは菓 子をおいしく食べられる期限のこと。各メーカーが自社製品を分析して期限を定める」と話す。
 だが自社の都合のみで賞味期限を変更するやり方に、厳しい意見も多い。道消費者協会の本田均事務局長は「消費者は食品を買う時に賞味期限を目安にする。 自分の都合で変更するとは認識がずれている」と憤る。同社の近くに住む札幌市西区の男性も「食べ物は私たちの命に直結するという認識が足りない」と同社の 姿勢を批判する。
 15日に決めた4日間の工場休止から一転、無期限の休止になったことへの波紋も広がる。再開の見通しについて、同社は「不二家の休止が約2カ月。会社の 規模から考えればそこまではかからない」と言うが、「安全が確認できるまでは休止する」と具体的な再開のめどは示していない。
 石水社長は休業中も約480人の従業員の雇用を続けると明言。全社で衛生管理研修などを行う予定だ。同社のパート従業員の女性は「これを機に従業員の気 持ちがひとつになれば、と思う。おいしいお菓子を作ってお客様を喜ばせたい、というのが仕事の原点」と話した。

 【写真説明】
台湾から来たのに… 臨時休業になった「白い恋人パーク」を訪れ、門の外で写真を撮る台湾人観光客=16日、札幌市西区宮の沢で

◆リハビリ専門職の合同就職説明会 県庁であす /宮城県
朝日新聞 2007年8月17日
 県は18日、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ専門職の合同就職説明会を県庁2階の講堂で開く。県内のリハビリ専門職の数は全国的に 見ても少ない上、仙台市に集中している。こうした地域偏在の解消も狙いで、昨年に続く2回目の開催になる。
 厚生労働省の調査(05年10月現在)によると、県内の病院で働く理学療法士は人口10万人あたりで15・2人と全国平均(22・3人)を下回り全国で も44位。また、理学療法士359人のうち、約6割の213人が仙台市内の病院で働いているという。作業療法士と言語聴覚士についても同様の傾向がみられ る。
 当日は、県内32の病院や介護老人保健施設などがブースを設け、採用条件や施設の概要などを説明する。約120人の求人があるという。来春卒業予定の学 生のほか、転職希望者らの参加も受け付けている。
 参加無料で申し込みも不要。問い合わせは県リハビリテーション支援センター(022・286・4395)。

◆(メガロポリス 街ひと)東京・山谷、9500万円の主いずこ 労働者ら預金
朝日新聞 2007年8月17日
 Megalopolis

 日雇い労働者が集まる東京・山谷(さんや)で、1億円近い労働者の預金が宙に浮いている。銀行口座を開けない人から小金を預かっていた貯蓄組合が05年 に解散。山谷を離れ連絡がとれなかったり、訳あって名乗り出られなかったりする預金者も多く、払い戻せないためだ。組合の清算業務を引き継いだ東京都の外 郭団体「城北労働・福祉センター」は、「早く取りに来て」と呼びかけている。(富田祥広)

 古い木造2階建ての簡易宿泊所(ドヤ)が軒を連ねる東京の下町、通称・山谷地区(東京都台東、荒川両区)。その一角にある同センターを6月下旬、 60〜70代の男性が訪れた。近くに2年前まであった「東京都城北貯蓄組合」に約2千円を預けていたという。住民票で名前や住所を見せて現金を受け取る と、姿を消した。
 同組合は、日雇い労働者に貯蓄を勧めるため、都が呼びかけて66年に設立された。組合名義で銀行口座を開き、労働者から現金を預かって出し入れを代行。 銀行取引に必要な印鑑や住民登録がなくてもドヤの住所で取引でき、91年には利用者が延べ約9200人、預金残高は5億円を超えた。
 だが、バブル崩壊で残高は減少。また、金融機関が破綻(はたん)した場合、預金を元本1千万円とその利息までしか保護しないペイオフが05年4月に全面 解禁されると、労働者からの預かり金を組合の代表者名義で一括して預金していた組合口座も全額保証されなくなるため、ペイオフ全面解禁の直前に解散した。 同センターが清算業務を引き継いだが、今も延べ約8100人分の預金約9500万円が残っている。
 7千人分が残高1千円未満で、センターは「預けたことを忘れた人も多いはず」と、払い出しを呼びかける手紙をドヤに配り、記録に残る住所にも郵送した。 だが、手続きに訪れたのは05年度が20人、06年度が25人、今年度はまだ1人だ。
 センターによると、現在のドヤ宿泊者数は約4800人と、ピークの60年代前半の3分の1以下。長期不況で求人が減り、路上生活する人も増えた。借金の 取り立てに追われ、姿を隠している人も少なくない、という。
 同組合は民法上の任意組合で、民法の規定により、払い戻し請求できるのは組合解散から10年後の15年3月末まで。払い戻せなかった預金は、解散時の取 り決めで都の財源になる。都福祉保健局の穴田和男課長は「都内の職業安定所や大阪、名古屋の簡易宿泊所街に通知を配ることも考えている。何とか全員に払い 戻したい」と話している。

 ◆キーワード
 <山谷地区> 東京都心の北東、JR南千住駅に近い簡易宿泊所の密集地域。66年に住居表示の「山谷」はなくなった。江戸時代は宿場町。戦後、戦災者や 復員者を受け入れる仮設のテント村になり、高度経済成長期に入ると、多くの日雇い労働者が集まった。60〜70年代の人気少年漫画「あしたのジョー」の舞 台でもある。

 【写真説明】
98年の山谷地区。大勢の人たちが早朝から職を求めて集まっていた=東京都台東区で

◆賃金不払い容疑で会社を書類送検 益田労働基準監督署 /島根県
朝日新聞 2007年8月17日
 従業員に賃金を支払わなかったとして益田労働基準監督署は16日、益田市高津7丁目の木製家具製造会社「大島木工」と同社の総括責任者(45)を労働基 準法違反(賃金不払い)の疑いで松江地検益田支部に書類送検した。
 調べによると、同社と総括責任者は、06年7月1日〜07年1月31日の従業員16人の賃金計約1051万円を期日までに払わなかった疑い。同署による と、同社は07年5月には事業活動を停止、7月には破産宣告を受けていたという。

◆職業安定局長、太田氏を起用。
2007/08/16, 日本経済新聞
 柳沢伯夫厚生労働相は十五日、同省の局長級以上の幹部人事を発表した。同日の閣議で了承を得ており、二十四日付で発令する。
 金子 順一氏(かねこ・じゅんいち=官房長)76年(昭51年)一橋大商卒、労働省へ。06年労働担当政策統括官。東京都出身。53歳。
 外口 崇氏(とぐち・たかし=医政局長)81年(昭56年)慶大医院卒、83年厚生省へ。06年健康局長。千葉県出身。55歳。
 西山 正徳氏(にしやま・まさのり=健康局長)77年(昭52年)慶大医卒、78年厚生省へ。06年技術総括審議官。東京都出身。56歳。
 太田 俊明氏(おおた・としあき=職業安定局長)74年(昭49年)東大法卒、75年労働省へ。06年官房長。島根県出身。55歳。
 新島 良夫氏(にいじま・よしお=職業能力開発局長)75年(昭50年)東大法卒、労働省へ。05年大阪労働局長。群馬県出身。56歳。
 小野 晃氏(おの・あきら=労働担当政策統括官)78年(昭53年)神戸大経卒、労働省へ。05年労働基準局安全衛生部長。岡山県出身。52歳。
 浅野 賢司氏(あさの・けんじ=中央労働委員会事務局長)76年(昭51年)一橋大法卒、労働省へ。05年雇用・能力開発機構理事。長野県出身。56 歳。
 松谷 有希雄氏(まつたに・ゆきお=国立療養所多磨全生園長)75年(昭50年)北大医卒、81年厚生省へ。05年医政局長。東京都出身。57歳。

◆アジア各国の労働政策、ネットで情報共有、20ヵ国合意。
2007/08/16, 日本経済新聞
 日中韓などアジアの主要二十カ国が参加して十三日から中国・北京で開かれていた国際労働機関(ILO)のアジア地域フォーラムは、インターネット上で各 国の雇用政策や法令などが一覧できる「アジア知識ネットワーク」を構築することで合意した。各国の労働者が社会的、倫理的に適切な仕事(ディーセントワー ク)に就けるように政策当局が緊密に情報交換するのが狙い。
 日本からは柳沢伯夫厚生労働相が出席し、日本は定年年齢引き上げなどで六十―六十四歳の男性の労働力率が七割に達したことなどを紹介した。

◆7月、米消費者物価0.1%上昇、ガソリン値下がりで小幅。
2007/08/16, 日本経済新聞
 【ワシントン=小竹洋之】米労働省が十五日発表した七月の消費者物価指数(一九八二―八四年の平均値=一〇〇)は二〇八・二九九となり、季節調整値で前 月比〇・一%上昇した。ガソリンなどの値下がりを反映し、八カ月ぶりの低い上昇率となった。変動の大きいエネルギーと食品を除くコア指数は〇・二%上昇し た。
 七月の消費者物価上昇率は市場予測の平均値である〇・二%をわずかに下回った。ガソリンが一・七%値下がりし、エネルギー価格全体でも一・〇%下落した のが主因。前年同月比でみた上昇率は消費者物価全体が二・四%、コア指数が二・二%となった。
 米国では景気の減速に伴って、物価上昇圧力が徐々に緩和している。七月の消費者物価も低い伸びにとどまり、インフレ懸念を和らげる方向に働きそうだ。
 ただ、労働需給の引き締まりや原油高などによる物価上振れのリスクは残る。米連邦準備理事会(FRB)は信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライム ローン)問題といった景気下振れのリスクを警戒するだけでなく、今後の物価動向も注視する構えを崩していない。

◆従来より重視する経営課題は、「人材育成」が7割、対外関係より内部に関心。
2007/08/16, 日経産業新聞
 企業が人材育成重視にシフトしていることが労働政策研究・研修機構のまとめた企業意識調査で分かった。従来より重視するようになった経営課題として約七 割が人材育成を挙げた。「企業は業績改善でおざなりだった人材育成を改めて意識するようになった」(同機構)
 一月中旬から二月上旬にかけて全国に調査し、従業員百人以上の企業千二百九十一社から回答を得た。
 三年前に比べ重視するようになった経営課題では、「人材育成の強化」と答えた企業が六七・九%と最多。「収益性の向上」(五八・九%)や「顧客満足度の 向上」(五五・三%)を上回り、業績や対外関係よりも組織内部に関心が向いている様子がうかがえる。
 今後重視する利害関係者をたずねたところ、上場企業では「従業員」との回答が九七・二%で最多。「顧客」(九四・四%)や「株主(個人投資家)」(八 八・七%)ではなく、従業員を最重要視する意向が示された。

◆日本協力の「泰日工業大」開校、「ものづくり」タイに懸け橋、製造業支える人材育成。
2007/08/16, 日経産業新聞
トヨタなど日系企業 現地の技術者不足
 日本とタイの経済界が協力し、タイで「ものづくり」の担い手となる人材の育成を目指す四年制私立大学「泰日工業大学」が正式に開校した。日タイが互いの 製造業を発展させる基盤を強固にし、継続的に人材を輩出していこうとの試み。海外進出した日本のものづくりが、質の高い外国人労働力なしには進まない新段 階に突入したことを示している。
 「日本とタイの懸け橋として両国の発展に大きく寄与するだろう」。二日の開校式。日本側主賓として参加した森喜朗元首相は、タイ側主賓のシリントン王女 を前に強調した。
 バンコク市東部の敷地約一万五千平方メートルに五階建て、七階建ての教室二棟が建つ。自動車製造についてはコンピューター・システムによる開発設計から 精密金型などの製造実技に至るまで、ほぼ全工程が学べる教材や機械が並ぶ。授業は六月四日に始まり、現在約三百五十人が工学部、情報学部、経営学部で学 ぶ。
 工学部にはタイでは珍しい生産工学科と、同国私大で初めて自動車工学科を設置。また工業管理、人材開発管理の二学科からなる経営管理学部など、日本の製 造業が海外展開する際に「人材育成が最も難しい分野の教育に力を入れた」(クリサダ学長)。経営学の大学院も備え、二〇一〇年には学生数を三千四百人に増 やす計画だ。英語とともに「日本語も仕事で使えるレベルで教える」(クリサダ学長)ことで即戦力の供給を狙う。
 同校の設立構想が立ち上がったのは三十年以上前。通産省(当時)や日・タイ経済協力協会が支援し、一九六〇年代以降の日本への留学経験者らが七三年十一 月に泰日経済技術振興協会(TPA)を創立。当時から大学設立の目標を掲げた。
 九七年のアジア通貨危機で地価が下がり、政府が「教育のためなら」と土地を安く放出したこともあり、実現が見えだした。TPAは地元企業への技術指導や 語学研修などの事業収益から設立資金を確保、約十五億円全額を自己調達した。
 日本企業は資金以外の面で厚く協力した。自動車工学用の機材は日本精工や牧野フライス製作所などが提供。パソコンや机は三井住友銀行や住友商事など邦銀 や商社が供与した。奨学金基金もバンコク日本人商工会議所が会員企業から年間八百万バーツ(約三千万円)を集めて設置している。
 タイは九〇年代半ばの円高以後、日系企業の進出が加速し、製造業のすそ野が厚みを増した。だが理工系大学を卒業した人材が不足気味で、日系企業の悩みの タネだ。
 例えばトヨタ自動車。タイ生産は〇六年で約五十万台。輸出も年々増えて同二十万台あり、東南アジアの消費動向や調達体制をにらんだ研究開発機能の強化が 急務だ。
 現在、タイのテクニカルセンターの技術者は日本人五十人とタイ人三百人。タイ生産する世界戦略車のピックアップトラックのモデルチェンジ時には「開発の かなりの部分を我々が担うが、今後の車種展開に向けて人材が足りない」(同センターの大村英一社長)。一〇年までにタイ人技術者を六百人増やす計画だが、 園田光宏トヨタ・モーター・タイランド社長は「ものづくりを理解できる人材の確保は難しい」と話す。
 「タイは学歴重視の階層型社会。高卒者が多い現場で、大卒者の管理職候補が交流しないなど悪弊が製造業の進化を妨げている」と同大学のランサン教授は指 摘する。こうした認識に基づき、クリサダ学長は「現場の強みを経営システムへ組み込む日本の手法を、タイ製造業のすそ野まで浸透させたい」と強調する。
 タイが安価な労働力を武器にした単純な生産拠点から脱皮し、その体内にものづくりの本質を組み込んで高い付加価値を生む東南アジアの製造開発拠点へと進 化する――。同大学設立の理念は、日本との経済交流が生んだ“志”と言えるだろう。
(バンコク=三河正久)
【図・写真】森元首相(右から3人目)らが参加した泰日工業大学の開校式(2日、バンコク市内)

◆世銀・国連が共同研究、海外投資と人権保護両立。
2007/08/16, 日経金融新聞
 世界銀行と国連は海外直接投資と投資先の人権保護の両立に向けた共同研究に着手した。投資受け入れ国が他国からの民間投資を重んじるあまり、国内の人権 保護を軽んじる事態を防ぐ狙いがある。
 研究するのは世銀グループの国際金融公社(IFC)と、企業活動と人権を担当する国連事務総長特別代表、米ハーバード大学のラギー教授。投資受け入れ国 が労働条件の改善など人権保護関連の法律を導入した場合、企業のコスト負担や国外投資家の利益保護への影響を分析する。
 ラギー氏は「投資家の利益保護と投資先の人権保護とのバランスを探す必要がある」と指摘。成果は二〇〇八年初めに発表、同年春の国連人権理事会報告に反 映させる。
(ワシントン=山本留美子)

◆夏季一時金、1万2718円増、静岡県、最終まとめ。
2007/08/16, 日本経済新聞 地方経済面 (静岡)
 静岡県がまとめた夏季一時金の要求・妥結状況(最終報)によると、八月六日までに妥結した四百二十七組合の平均妥結額は七十三万五千四百九十四円(加重 平均)だった。月数では二・五〇カ月。前年同期と比べ一万二千七百十八円増え、月数では〇・〇二カ月上回った。
 業種別では製造業は七十七万千三百六十二円の二・五九カ月、運輸業は一・六八カ月の四十二万四千百二十五円と、業種間格差が鮮明になっている。規模別で は従業員三百人以上が二・五四カ月の七十六万七百八十円、二百九十九人以下が二・一一カ月の五十二万四千二百八十一円。

◆商品開発やマナー研修など、呉信金が女性チーム。
2007/08/16, 日本経済新聞 地方経済面 (広島)
 呉信用金庫(広島県呉市、大年健二理事長)は女性役職員で構成する専門チームを立ち上げた。団塊世代向けの投資信託や定期預金など女性を対象にした新商 品を検討するほか、女性の働きやすい職場づくりなどを提案する。女性を戦略として活用する体制を整える。
 専門チームは「NEXT くれディーズ」で、非常勤理事を含めて二十―六十代の九人の役職員からなる。幅広い視点で女性顧客の需要をとらえる。
 月二回ペースで集まり、十二月までに投信などの商品開発や女性向けセミナーの開催を目指す。
 接客を担当する女性職員の表情やマナー研修も実施する。呉信金は店舗での保育所設置など女性の働きやすい環境を整え、人材の確保につなげる狙い。

◆夏季一時金8983円増、山梨県内民間最終集計、大企業けん引役。
2007/08/16, 日本経済新聞 地方経済面 (山梨)
 山梨県が十五日発表した二〇〇七年の県内民間労働組合の夏季一時金妥結状況に関する最終集計結果で、平均妥結額は六十六万五千百六十五円と前年より八千 九百八十三円(一・四%)増えた。中小企業は低迷したが、大企業がけん引した。妥結月数も二・三五カ月と〇・〇九カ月増え、妥結額・月数とも五年連続で前 年を上回った。
 要求を提出した百五十三組合のうち、妥結したのは百四十八。平均要求額は二万四千九百六十五円増の七十四万七百七十六円、要求月数は〇・一五カ月増の 二・六二カ月だった。
 企業規模別の妥結状況では、中小企業が四十九万九千百四十二円と一・九%減ったが、大企業は七十万五千二百四十八円と一・六%増えた。
 業種別では組合数の最も多い製造業が一・五%増の七十万二千百六十三円となった。大企業が四・一%伸び、中小企業の五・〇%減を補った。サービス業・そ の他が一〇・二%増、情報通信業が一九・二%増と大幅に伸びたが、卸・小売業は大企業の減少が響いて五・五%減った。
 ただ、平均要求金額に対する平均妥結額の比率は大企業、中小企業とも昨年より低下。要求提出組合の平均賃金月額もいずれも前年を下回っている。県労政雇 用課は「大企業の好調が全体の伸びを支えた面があり、この調査結果だけで県内景気の好転は判断できない」としている。
 調査は二百二十組合(大企業、中小企業とも百十組合ずつ)を対象に実施し、最終基準日の七月三十一日までに百五十三組合から回答があった。

◆(ニュースがわからん!)最低賃金引き上げ、十分なのか? 先進国で最低水準
朝日新聞 2007年8月16日
 ホー先生 今年中に最低賃金が上がることになったな。
 A 厚生労働省の審議会が引き上げ額の目安を決めたんだ。全国を四つのランクに分け、東京など都市部が中心のAランクは時給19円アップする。Bは14 円、Cは9〜10円、青森など地方中心のDが6〜7円。平均14円の引き上げになる。
 実際に上げる額は今後、各都道府県の審議会で決めるけど、ほぼ同額になるのが通例だ。目安通りになれば、97年度以来の高水準になる。例年は数円程度だ からね。
 ホ 地域でずいぶん違いがあるな。
 A 景気回復が遅れている地方の中小零細企業はまだまだ経営が苦しい。もし都会並みの賃金になると、企業が苦境に陥ったり、採用を控えたりして、働く場 が減ってしまう心配がある。そこに配慮したんだ。
 ホ 今回の最低賃金引き上げは、働いても生活保護以下の収入しかない「ワーキングプア」が増えたため、賃金を底上げするのが目的と聞いたぞ。これで十分 かな。
 A 不十分だろうね。厚労省の試算(05年度)だと、東京や神奈川、北海道など11都道府県で生活保護の水準を下回っていて、解消するには平均で時給 49円の引き上げが必要になる。今回の引き上げでは届かないんだ。
 ホ 日本の最低賃金は、国際的にみて高いのか低いのか?
 A 今回、目安通りに上がれば、日本は全国平均で時給687円になる。しかし、英仏は千円以上だ。日本より低かった米国も2年後に800円台になるか ら、日本は先進国でも最低水準といえる。
 ホ 働く側からするとまだ改善が必要だな。
 A 政府が国会に提出した最低賃金法改正案は、生活保護以上への引き上げを狙ったものだ。一方、民主党は全国一律の最低賃金を約800円とし、施行後3 年間で地域ごとに上乗せし全国平均で千円にするべきだと主張している。参議院は野党が過半数を握ったから、政府との激しい駆け引きが予想される。
 ただ、企業の側からすると、特に地方では急な大幅アップは、簡単じゃない。政府は年内に、中長期的な引き上げ目標を決める予定だから、その額がいくらに なるか注目される。(松浦祐子)

 ◆主な都道府県の引き上げの目安額と現在の額
ランク  目安額 主な都道府県 現在の最低賃金額
A    19円  東京     719円
          愛知     694円
          大阪     712円
B    14円  埼玉     687円
          京都     686円
          広島     654円
C  9〜10円  北海道    644円
          福島     618円
          福岡     652円
D   6〜7円  青森     610円
          愛媛     616円
          鹿児島    611円
 (厚生労働省の資料から)

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◆(声)高速道で脇見、大事故の前兆 【大阪】
朝日新聞 2007年8月16日
 無職 米山茜(広島市南区 66歳)
 東名高速で観光バス追突、母子死亡のニュースに、その数日前に見た驚くべき光景を思い出した。
 あるツアーに参加した私は、観光バスで名神高速を通った。滋賀県の手前にさしかかった時だ。隣の車線を走る大型トラックの若い運転手が、ハンドルの上に 漫画雑誌をのせ、左手に携帯電話を握っているのを車窓から見たのだ。
 「気をつけて」。はらはらして思わずつぶやいた。こんな脇見運転で、事故が起きないか。会社の安全管理は一体どうなっているのだろうと憤りを感じた。
 2月に大阪府吹田市でスキー客ら27人が死傷したバス事故の背景には、業界の過当競争に伴う過重労働があったといわれる。トラック運送業界も同様の事情 を抱え、運転手の勤務実態は過酷なものであるようだ。
 運転しない私には運転手のストレスは想像もつかないが、ちょっとした気の緩みから事故は起きる。一生後悔することがないようにと願う。
 会社には安全な運行管理を徹底して頂きたい。そして、運転手さん。車間距離を確実にとって、他の車のためにも、自身のためにも安全を大切にして下さい。

◆(情報フラッシュ)07春闘、賃上げ率1.9%
朝日新聞 2007年8月16日
 厚生労働省は15日、07年春闘での主要企業の妥結状況を発表した。定期昇給込みの賃上げ額は、前年より229円高い5890円。賃上げ率も前年を0. 08ポイント上回る1.87%だった。景気回復を受けて額、率ともに4年連続で前年を上回った。
 資本金10億円以上、従業員1千人以上で労働組合がある281社についてまとめた。産業別の賃上げ率では、最も高かった窯業(2.30%)、機械(2. 17%)など計7産業で2%を超えた。

◆アスベスト被害、相談会と講演会 さいたま、18日・来月22日 /埼玉県
朝日新聞 2007年8月16日
 80年代までアスベスト(石綿)を使ったセメント管の製造工場があったさいたま市で、アスベスト被害に関する相談会と講演会が開かれる。開催日は8月 18日と9月22日。予約不要で参加は無料。
 相談会を開くのは、アスベストの被害者救済や、公害の調査研究を行っている民間非営利団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(事務局、東京都江東 区)。
 同センターによると、さいたま市中央区上落合5丁目には1933〜82年、セメント管製造の大手「日本エタニットパイプ」の大宮工場があった。当時の工 場労働者88人のうち17人が中皮腫や石綿肺などのアスベスト関連疾患で死亡したという。
 同センターは、アスベストが工場の周辺1〜1・5キロ四方に飛散した可能性もあると指摘。労働者やその家族だけでなく、周辺に住んでいた人に健康被害が ないかを調べている。中皮腫は診断が難しいため、相談会では同センター所長でアスベスト専門医でもある名取雄司氏らが、来場者の胸部レントゲン写真や診断 書を基に検討する。アスベスト被害者救済制度の案内も行う。
 8月18日は、さいたま市大宮区の市宇宙劇場5階で、午後1時半から横浜のアスベスト公害についての講演会。9月22日は浦和区の県労働会館で午後1時 半から名取医師による講演がある。両日ともに、午後2時半〜5時に相談を受ける。問い合わせは同センター斎藤さん(080・3482・1020)へ。

◆最低賃金引き上げ審議スタート /茨城県
朝日新聞 2007年8月16日
 07年度の県内の最低賃金を話し合う茨城地方最低賃金審議会が15日開かれ、中央最低賃金審議会が示した9〜10円の引き上げ額の目安が労使双方の委員 などに伝えられ、審議がスタートした。現在の県内の最低賃金は時給655円。この日は、労使双方の委員が基本的な考えを表明したが、具体的な金額の主張は なかったという。17、20日の会議で本格的な話し合いが行われ、改定額が茨城労働局長に答申される。
 中央審議会では大幅増をねらう政府や労働側と小幅アップを譲らない企業側の意見が対立した経緯があり、県内でも議論の行方が注目される。

◆凍った指、解けぬ怒り シベリア抑留62年の夏 宇都宮・寺内さん、補償訴え/栃木県
朝日新聞 2007年8月16日
 シベリア抑留者にとって、62年前の終戦の日はさらなる苦難の始まりだった。中国などで敗戦を迎えた60万人が最果ての地シベリアで抑留され、6万人が 飢えと寒さ、強制労働で命を落としたとされる。生き残った人たちの平均年齢は今や85歳。いまだに国からは謝罪の言葉も賃金補償もない。「奴隷労働の汚名 を着せられたまま、あの世に旅立つのは忍びない」。元抑留者の悲痛な訴えは続く。
 (赤松真琴)

 宇都宮市の寺内良雄さん(83)の左足の親指の先は、今でもまるで凍っているかのように白く硬い。どんなに月日が過ぎても、足先の凍傷の跡を触るたび に、凍(い)てついた大地での強制労働を思い出す。
 「トーキョー、ダモイ(東京に帰る)」。中国で敗戦を迎え、21歳だった寺内さんがロシア兵にそう言われて貨車に詰め込まれたのは敗戦の年の11月だっ た。しかし、南の港へ向かうはずの貨車は内陸の方角へと進路を変えた。幾日も貨車に揺られるうち、寒さは厳しくなった。着いたのはすでに一面の雪に覆われ たシベリア、ホルモリン収容所だった。
 零下30度近い現地での労働は森林伐採。一日のノルマを達成するまで仕事を終わらせてもらえない。マスクをしていても絶えず手で顔をこすっていないと鼻 や眉毛が凍り付いてしまう。寒くて体が動かず、大木を倒す際に下敷きになって亡くなった人もいた。
 だが「一番苦しかったのは飢えだった」。食事は家畜のエサに使われるコーリャンや固い黒パン、それに岩塩を溶かしただけのスープ。「朝、ベッドで目覚め ることなく、冷たくなった仲間もたくさんいた」。甘い饅頭(まんじゅう)やぼた餅が夢に出てきては消えた。
 「まだ20代で若く、体力があったから助かった。高齢だったら生き延びられなかった」。47年9月12日、約2年の抑留を経て、宇都宮に帰り着いた。父 は終戦の年に亡くなり、母のマサさん一人が涙で迎えてくれた。
 79年、寺内さんら元抑留者は仲間とともに「全国抑留者補償協議会」を結成。81年、強制労働への国家補償を求めて10万人の仲間とともに裁判を起こし た。しかし97年、最高裁は「原告らの損害は国民が等しく負担すべき戦争損害」と判断、請求を棄却した。
 一方、政府は88年、平和祈念事業特別基金を設立し、首相による「銀杯」の授与と「慰労金10万円」の支払いを決定。05年7月には、野党3党が特別基 金を解散し、その資本金で30万〜200万円の特別給付金を支給する法案を出したが「郵政解散」で廃案になった。昨年12月、代わりに最高10万円相当の 旅行券などを支給する与党案が成立し、政府はこの問題に事実上終止符を打とうとしている。
 「旅行券をもらってどうしろというのか。国に何度裏切られたら済むのか」。寺内さんらの怒りは収まらない。思いは「慰労ではなく労働に対する補償が欲し い。お金の多寡ではない。ただ、人間として生きた尊厳の証しが欲しい」という一念に尽きる。
 活動を始めて30年余。寺内さんは03年に同協議会の会長になった。しかし当初、県内に3千人近くいた元抑留者は年々少なくなり、活動も事実上休止状態 になった。
 「いまだにシベリアに眠る戦友も多く、死亡者の名簿作成すら進んでいない。後世に語り継ぐためにも、もう残された時間は少ない」と焦りは募る。寺内さん は支給された旅行券を換金して活動を続ける一方、野党が過半数を握った参院に、補償と抑留の検証を求める法案を再度出したいと考えている。
 今月23日には、引き取り手のない抑留者の遺骨が眠る東京の千鳥ケ淵戦没者墓苑で仲間と共に追悼の集いを開く。寺内さんたちの戦争はまだ終わっていな い。

 【写真説明】
(上)全国抑留者補償協議会長の寺内良雄さん=宇都宮市内の自宅で(下)寺内さんがシベリアから母親に送ったはがき。「ミソシルノクニ、ボタモチノクニ、 ウツクシイクニニホン」などと母国日本への思いがつづられている

◆ネパールの新聞、相次ぎ発行妨害 毛派労働者
朝日新聞 2007年8月16日
 【ニューデリー=小暮哲夫】ネパールで、ネパール共産党毛沢東主義派(毛派)傘下の労働者による民間新聞の発行阻止行為が相次いでいる。労働者らは11 日から、同一会社から出版している英字紙「ヒマラヤンタイムズ」とネパール字紙「アンナプルナ・ポスト」の印刷を阻止。16日に再開されるまで5日間連続 で2紙は配達できなかった。毛派は「新聞社の労使問題」と直接関与を否定するが、現地では「労働者を使った批判的なメディアへの妨害行為」との見方が強 い。
 毛派傘下の配達員の労組員数十人が正社員待遇を要求、印刷、発送の担当社員が社内に入るのを阻止している。ただ、配達員は新聞社と契約する配達業者の雇 用で、新聞社と雇用関係はない。
 2紙は7月下旬にも同様の阻止行為で5日間、発行が止まった。これらの新聞は、毛派の活動家による恐喝行為などを積極的に報道していた。毛派幹部で、暫 定政権のメディア担当、マハラ情報通信相は「党は介入していない」と説明するが、地元ジャーナリスト団体は「言論の自由を脅かす」と批判している。
 毛派は王制打倒を掲げて96年に武装闘争を始めたが、昨年11月、政府との内戦を終結。今年4月に暫定政権に加わった。

◆宮崎に太陽電池工場 東国原知事が補助拡充 昭和シェル 【西部】
朝日新聞 2007年8月16日
 昭和シェル石油は15日、太陽電池の第2工場を宮崎県内に建設すると発表した。同社は昨秋、宮崎市の第1工場で太陽電池の製造を始めた。新工場は第1工 場同様、シリコンを使わない薄膜型の電池を製造する。生産能力は第1工場の3倍の年間60メガワットで、操業を始める09年前半には約150人の新規雇用 を予定する。企業誘致に苦戦する宮崎県が進出企業への優遇策を拡充して、大手では初の進出表明になり、地元にとって明るい材料だ。
 増産するのは銅などの化合物を薄い膜にしてガラス基板に載せる薄膜型のCIS電池。市場に出回っている太陽電池の大半は結晶型が占めるが、原料のシリコ ン価格高騰で、量産のネックになっている。CISは発電効率で結晶型より、やや劣るが、製造工程のエネルギー消費が少ないのが特徴だ。
 昭和シェルは量産態勢を強化して市場を広げる必要があると判断した。新工場の立地場所は今後詰めるが、同社は「第1工場から近い方がいい」としている。 投資額は約150億円で、敷地は第1工場の2倍に当たる5万平方メートルになる。
 宮崎県の東国原英夫知事は「任期中100社誘致 1万人の雇用創出」の方針を掲げている。7月には進出企業への補助金の上限を5億円から九州・山口では 最大の50億円に拡充したばかり。同県は「誘致に力を入れているので、大変ありがたい」と歓迎している。
 九州経済産業局などの調査では、06年の宮崎県の工場立地数(1千平方メートル以上)は15件。九州では最下位と振るわず、自動車関連の立地が進む福岡 (67件)など北部九州と対照的だった。
 九州では太陽電池量産拠点の立地が相次いでいる。

 【写真説明】
昭和シェル石油が増産する薄膜型の太陽電池を使った発電パネル(昭和シェル石油提供)

◆「給食番長」残飯を退治 博多弁訳付き 福岡在住・よしながさんの絵本人気 【西部】
朝日新聞 2007年8月16日
 福岡市東区在住のイラストレーターよしながこうたくさん(27)の初めての絵本「給食番長」が人気だ。6月の発売から1週間で増刷が決まり、すでに新人 絵本作家としては異例の1万2千冊を売り上げた。人気の秘密は、併記された博多弁と陰影のくっきりした画風。給食をテーマにした珍しい食育絵本としても学 校現場から熱いラブコールが届いている。(永井真紗子)

 「ぴしゃっとすわって食べんしゃい!」「番長が『好かんもんげな残せ』やらいうけん、おばちゃんたち はらかいたやないねー」
 くっきりした眉毛に大きな口。強烈な色づかいの画面いっぱいに、番長や「給食のおばちゃん」たちが走り回る。その横に、少し小さな字で博多弁訳が添えら れている。A4判よりやや小さいサイズで31ページの絵本だ。
 よしながさんが絵本づくりを始めたのは昨年6月ごろ。よしながさんが描いた「給食食器セット」のパッケージを見た長崎出版(東京)から「給食をテーマに した話を」と持ちかけられた。
 早速近くの市立香住丘小学校に取材に行った。給食室の職員の女性たちが、重い大鍋を片手で持つ重労働をこなしながら、残り物の多さに心を痛めていること を知った。「誰かが作ってくれるから給食を食べられる。そんな実感が、情報化社会に生きる子どもたちには薄いのでは」。給食室のシーンは特に力を入れ、実 際の献立表通りのメニューを描いた。
 博多弁との「バイリンガル絵本」にすることを思い立ったのは、制作途中の昨年12月、東京から郷里・福岡に戻った時だ。「子どもたちに、同世代でも違う 言葉を話す人がいると知ってほしくて、遊び心で書き加えました」
 反響は予想以上だった。「言葉が二つで2倍楽しめる」との声が相次ぎ、絵本の読み聞かせボランティアからは「イントネーションが分からず『勝手な博多 弁』で読んでいます」「知り合いの福岡出身者に読んでもらいます」などの反応が届いた。ストーリーに共感した本物の「給食のおばちゃん」たちからは「気持 ちを代弁してくれた」、学校の教員からは「子どもたちが残す量が減りました」との声や読者カードが届き、教育現場からの講演依頼も舞い込んでいる。
 よしながさんは「食が人間を支え、給食は『おばちゃん』が支えている。僕の絵を気持ち悪いと思う子どももいるかもしれないが、どんな形でも読んだ人の心 に一生残る絵本であったらうれしい」。
 1575円。問い合わせは長崎出版(03・5283・3752)へ。

 <あらすじ>
 腕白(わんぱく)小1年2組の番長はクラスのやんちゃ者。番長の指示でみんなが給食を残すので、怒った給食のおばちゃんが「家出」してしまった。番長た ちが代わりに作った給食はまずくて、たくさんの残り物が出てしまう。番長たちは初めておばちゃんたちの苦労を知り、泣き出した。その様子を見ていたおば ちゃんたちは、番長たちを抱きしめた。

 【写真説明】
絵本を手にするよしながこうたくさん=福岡市東区のスタジオ「江戸マッチョ」で


UP:20071112 REV:随時
◇労働 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/d/w001.htm  ◇労働関連ニュース
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