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障害者の権利条約 第12条(第8回特別委員会)


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last update:20160810


■目次

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文献
引用


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■文献

United Nations Enable

□United Nations Enable, 2006, "Drafting Group,"(http://www.un.org/esa/socdev/enable/drafting.htm).
□United Nations General Assembly, 2006, "Convention on the Rights of Persons with Disabilities," UN Doc A/Res/61/106.(=2014,外務省,「障害者の権利に関する条約」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html).)


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■引用

修正意見(下線は修正草案)
第12条 法の前にひとしく認められる権利
1.締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
[2.締約国は、障害者がすべての分野において他の者との平等を基礎として[法的能力]をもっていることを認め、その能力を行使するために支援が必要な場合に、以下のことを保障する。
 (a)提供される支援は、必要とされる支援の程度に応じたものであり、その人の状況に応じたものとする。当該支援は、その人の法的権利を損なうことはなく、その人の意思及び選好を尊重し、利益相反や不適切な影響にさらされない。当該支援は、定期的な独立の再審査を受ける。
 (b)締約国が最終選択肢として代理人を任命するために法によって規定された手続を提供する際、当該法は、権限のある、独立の、かつ公平な裁判所によって代理人の任命及び代理人による決定の定期的な審査をうけることを含めて、適切な保障を提供する。代理人の任命及び運営は、既存の条約及び国際人権法と矛盾しない原則によってなされる。]

←代案のほうがよい。本人の決定の自由を妥協することなく必要な十分な支援を保障しているから。〔IDC 1st week〕
または:代案:
[2.締約国は、
「必要に応じて」を挿入〔中国〕。法的能力が障害者の状況に適したものであるべきことを述べる、または「一般的に適用される法に従って」を挿入〔カタール〕障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力(脚注1)を享有「及び行使(and can exercise)」を挿入〔アフリカグループ〕〔ケニア〕〔IDC1st week〕することを認める。
2第2案.締約国は、「必要に応じて」を挿入〔中国〕障害者が法的能力を行使することにおいて必要とするかもしれない支援に障害者がアクセスできるようにするために「障害者がアクセスできるようにするために」を削除して「障害者に保障するために(persons with disabilities to→have the support〔ICD 1st week〕)」を挿入〔アフリカグループ〕〔ケニア〕〔IDC 1st week〕適切な法的及びその他の方法を採る。「当該支援措置は、支援を求め得るために必要な支援を含む」を追加〔アフリカグループ〕〔ケニア〕〔IDC 1st week〕
←「2第2案.締約国は、「障害者が利益を受けるかもしれない特異的な治療を偏見なく、この条約に含まれている権利を十分に共有できるための」適切な法的及びその他の方法を採る。」にする〔メキシコ〕
←全ての障害者が法的能力を行使するために必要かもしれない支援を実際にもつということを保障することを強調すべき。このことは、支援つきでしか行使できない人たちに真に法的能力をアクセス可能なものにする。ほかの人が支援を求めることのできない人に支援を開始できるように、支援を探すために必要な支援も含むようにすべきである。支援の条項は、いつも法的能力の本人の行使及びそのほかの保護措置に従う。このため、本人の意思を損なうことはできない。保障の手段的な側面の条文は、保障が必要に応じた定期的な処方審査を含めて提供される支援の種類に適したものであるべきことを言うように書きなおされるべきである。削除すべきとした文言は、支援は望ましくなく、本人の権利や利益に有害な影響があるという間違った信念を反映している。支援は、あらゆる罰や羞恥心を伴うことなく本人のニーズに応じて提供されるべきである。〔IDC 1st week〕
2第3案.締約国は、「必要に応じて」を挿入〔中国〕法的能力の行使「における支援」を挿入〔IDC Aug 18〕に関連する全ての法的及びその他の措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保障を国際人権法に従って定めることを確保する「法的能力の行使に関連する全ての法的及びその他の措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保障を国際人権法に従って定めることを確保する」を削除して「法的能力の行使における支援の乱用を防止するための効果的な保障をおこなう」を挿入する〔IDC 1st week〕「国際人権法に従って」を削除〔IDC Aug 18〕。当該保障は、法的能力の行使「における支援」を挿入〔IDC Aug 18〕に関連する「法的能力の行使に関連する」を削除〔IDC 1st week〕「支援」を挿入〔IDC 1st week〕措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反を生じさせず、及び不当な影響を及ぼさないこと、障害者の状況に応じ、かつ、適合する「適合する(proportional)」を削除〔IDC 1st week〕こと、可能な限り短い期間に適用されること「可能な限り短い期間に適用されること」を削除〔IDC Aug 18〕並びに定期的な「定期的な」を削除して「必要に応じて」を挿入〔日本〕〔IDC Aug 18(挿入のみ)〕権限のある、独立の司法の審査「司法の審査」を「適切に権威づけられた権限のある国家機関による審査」に変更〔ロシア〕の対象となること「可能な限り短い期間に適用されること並びに定期的な権限のある、独立の司法の審査の対象となること」を削除〔IDC 1st week〕を確保するものとする。当該保障は、当該措置が障害者の権利及び利益「及びニーズ」を挿入〔action for mental illness〕に及ぼす影響の程度に応じたものとする。「当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする」を削除して「必要に応じた定期的な権限のある、独立の司法の審査を含めた適切な支援の提供であること」を挿入〔IDC 1st week〕「当該保障は、当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする。」を削除〔IDC Aug 18〕]
←支援の条項において保障(safeguards)に言及するように書きなおすべき。支援のための保障に関するそのような法は存在しないので、国際法の言及は削除すべき。現在の条文は、支援のモデルと平等な法的能力の前提とで対立がおこるような解釈ができるようになっている。支援のモデルと代理(substitution)のモデルの違いは、本人の決定権を剥奪する外部の決定が存在しないということである。すべてのレベルの支援や代理(representation)は、適切な保障(safeguard)とともに支援のモデルに含まれるべきである。〔IDC 1st week〕
3.締約国は、「この条の規定に従うことを条件として」を挿入〔メキシコ〕障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、及び銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用を利用する均等な機会を有することについての平等の権利を確保するための全ての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。
←障害者が経済的な決定を管理できる立場にないときには何がなされるのだろうか。ここでも後見人を出すべきではないのか。〔action for mental illness〕
(脚注1)「A/AC.265/2005/2, annex II, para. 20」を参照。
←脚注を維持すべき〔中国〕
←削除すべき。法的能力は、女性差別撤廃条約の文脈にあるように、契約することや司法手続に参加することといった行為能力(capacity to act)を含めて理解されるべきである。〔IDC 1st week〕

新たなパラグラフの提案
□〔中国〕
「4.この条文の文脈において「法的能力」の意味は、締約国の適切な法に従って解釈される。」

そのほか
□〔action for mental illness〕Amita Dhandaによれば、「法的能力」という単語は、社会的に構築されたものである。このため、その定義は医学的アプローチの影響を受けている。彼女の基本的な前提は、精神病者の法的能力は、すべての障害者と同じであり、治療には同意が必須であるというものだ。とくに「強制治療」や「強制的なリハビリテーション」は廃止しなくてはならない。このことは、911の緊急支援や地域支援サービスが確立している西洋では、(実現していないけれど)おこなえる。こちらではそれは災害となる。標準としての強制治療は主張しないけれど、治療の権利を守るために(大文字)必要性が生じた場合に、法に組み入れておくべきである。このことについて、WHOの文書では、「法的能力(legal capacity)」と「法的資格(legal competence)」を区別している。前者は医学、後者は法学の言葉である。国連に、精神病者のためにそれらの言葉を採用することを要望する。
□〔federation of and for people with disabilities〕全ての障害者は法的能力をもっているということを条約において述べるための試みがなされるべきではないと強く感じている。なぜなら重度の知的障害をもつ私たちの仲間は、法的能力をもっていないからだ。(大文字)
□〔IDC〕
法的能力
・法的能力とは、法的システムの枠組みの中で人が何ができるかである。
・それは構築されたもので物理的な実体があるわけではない。しかし、それはすべての法的システムがその支配を受けるもの(subjects)とそれ自体のあいだに構築している関係である。
・法的能力は、市民(civil)及び司法システム、自分のことを法的に主張する独立性へのアクセスの権利を与える。
法的能力の認識
・法的能力の否定は、社会的偏見の法的強化である。
・全ての障害者は、完全な人生(human life)をつくる権利があり、それをつくることは能力(capacity)の行使の機会なくしてはおこらない。
・あらゆる集団のこの機会を否定することは、永続的な排除であり、差別の正当化である。
支援と代理
・支援は、人が法的能力を行使するのを助けることである。代理は、人の法的能力を引き受けること(to take over)である。
・支援された意思決定は、本人の考えるニーズによって多様な程度や期間おこなわれる。ニーズは、支援的な過程を経て確かめられる。代理は全か無かである。一度それをつけるととり除くまで続く。
ニーズの連続体に対応する
・支援モデルは、本人の意識がないときのような、他人が私たちの決定をする場合があるということを認識している。支援は、緊急のニーズの世話がなされる間も、法的能力の行使を開始することを本人に促すために提供される。
・支援は、たとえば支援を受ける人の意志を尊重することや不適切な影響を与えることを意図しないことのような、提供される支援の程度にかかわらず同じ原則を固持していなくてはならない。たとえば、利益相反は、あらゆる支援の程度においてよくない。
□〔IDC〕精神医療の文脈における強制介入は、特に法的能力に関係している。なぜなら精神医療の介入は、完全な意思決定能力(decision-making capacity)を本人に復活させるために必要だとされるため、診断にも提案された治療にも反対する余地がない。このことは、医療ケアの自由なインフォームドコンセントの平等な権利だけでなく、法的能力の支援モデルとも矛盾している。支援モデルは、自分を表現することを安全にするために丁寧で忍耐強い相互作用を必要とする――しばしば残酷さと結びつき暴力とともに強要される「医者が最善を知っている」という態度に反して。
□〔IDC〕
Q個人が提供された支援を拒否した場合にどうなるのか。
A支援は本人の意思に反して押しつけることはできない。これは平等な法的能力の前提に反する。
Q起こりうる濫用にどのような措置をとるのか。
A支援を受ける個人は、満足しない場合に支援の提供者を解雇できる。それは、一人以上のネットワークをつくるのに有用でもありうる。支援体制は定期的な審査が必要だろう。
Q非常に高い支援のニーズがある人に支援された意思決定はどのように機能するのか。
Aその人が孤立したり信頼できる関係をもっていなかったりすれば、それを築く支援をする必要があるかもしれない。話さないときでも、感じていることや要望を表現するほかの多くの方法がある。支援を提供する人は、好き嫌いを示す合図に非常に注意深くある必要がある。障害者の意思に反対しない支援の提供者を保障する措置が必要である。
Q昏睡や意識障害(unconsciousness)の場合にはどうなるのか。
Aこのような場合、倫理的な法的措置が本人の表現したあらゆる意志や選好に反しない不可避な決定がなされることを許容するように用意されなければならない。支援的な方法は、可能な場合はいつでもコミュニケーションを促すために採られなくてはならない。

□草案
第12条 法の前にひとしく認められる権利
1.締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2.締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力(脚注1)を享有することを認める。
3.締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。
4.締約国は、法的能力の行使に関連する全ての措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保障を国際人権法に従って定めることを確保する。当該保障は、法的能力の行使に関連する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反を生じさせず、及び不当な影響を及ぼさないこと、障害者の状況に応じ、かつ、適合すること、可能な限り短い期間に適用されること並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査の対象となることを確保するものとする。当該保障は、当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする。
5.締約国は、この条の規定に従うことを条件として、障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、及び銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用を利用する均等な機会を有することについての平等の権利を確保するための全ての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。
(脚注1)アラビア語、中国語において「法的能力」という単語は、「法的主体性(legal capacity to act)」よりも「法的地位(legal capacity for rights)」に適用される。(ファシリテーターからのコメント:複数の代表者がこの脚注の削除を求めている。)

□1回目修正案(2016年9月13日)
(※第1項のみ修正)
1.障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有する(修正註25)。
 (代案:すべての障害者は、法の前に人として全ての場所において認められる権利を有する。(修正註26))
(修正註25)第5、12、27.2条の初めの文を自由権規約にあるそれらの起源により沿うようにすることが提案された。子どもの権利条約のモデルに従って、それらの権利は「再確認される(reaffirmed)」のではなく、直接的に表現される。
(修正註26)言い回しが、自由権規約第16条、世界人権宣言第6条により沿っている。

□2回目修正案(2006年10月3日)
(※第1項のみ修正)
1.締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。

□3回目修正案(2006年10月10日)
※2回目修正案から修正なし

□4回目修正案(2006年10月30日)
※2回目修正案から修正なし。国連の6つの公用語に翻訳された。
(United Nations Enable 2006)

採択(2006年12月13日)
(※第2項のみ修正:脚注の削除)
2.締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。
(United Nations General Assembly 2006=2014)




*翻訳・作成:伊東香純
UP:20160810 REV:
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