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障害者の権利条約 第12条(第4回特別委員会)


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last update:20160811


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文献
引用


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■文献

United Nations Enable
□Landmine Survivors Network, 2004, "Daily Summary of Discussions Related to Article 9: Equal Recognition as a Person before the Law," Vol. 5, #4, August 26, 2004,(http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc4sumart09.htm).

□United Nations Enable, 2004, “Contributions submitted by Governments in electronic format at the Fourth Session: Proposed Modifications to Draft Article 9,"(http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc4da9.htm).


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■引用

8月26日(下線は作業部会草案の原文)
第9条 法律の前における人としての平等の承認←「法的能力」に変更〔チリ〕
締約国は、
(a)障害のある人を法律の前に他のすべての者と平等な権利を有する個人として認める。

←「障害のない者と平等な条件において、法の前に権利と義務の主体として障害者を認識すること」に修正〔メキシコ:第3回AHC〕←賛成〔中国〕
(b)障害のある人が「法に定めされていることを除いて」を挿入〔アフリカグループ〕他の者との平等を基礎として完全な法的能力(財政事項を含む。)を有することを是認する「是認する(accept)」ではなく「認識する(recognize)」に変更〔チリ〕。
←条約のどこかで対応されるべきことである。この条文は、そのとき自分の能力(capacity)を行使することができる個人の状況に対応しており、自分の能力を行使できないとき何がなされるべきかについて決定しているということを確認する。〔オーストラリア〕
(c)障害のある人が完全な法的能力を行使するための支援が必要な場合には、次のことを確保する。
(i)この支援は、その者が必要とする支援の程度に
「可能な範囲で」を挿入〔アフリカグループ〕比例し、その者の状況に合わせて仕立てられ、かつ、その者の法的能力、権利及び自由に干渉し「干渉し(interfere)」の代わりに「だめにし(undermine)」〔アフリカグループ〕ないこと。
←障害者への支援は、人権の完全な享有を妨げるべきではないことを示すべき。支援された意思決定の原則は、この条文に示されるべきであり、代理意思決定とは異なる。定期的に適切な再検討の機会があるべきだ。〔メキシコ〕←支持する〔IDC〕
(ii)「(再検討のための対策を含めて)」を挿入〔アフリカグループ〕関連のある決定は、法律で確立された手続及び関連のある法的保護の適用に従って「適格かつ(独立かつ)公平な権威によって」を挿入〔アフリカグループ〕のみなされること。
←支持するが、障害者を保護するために必要な保護手段が重要である。障害者が法的能力を行使できないという例外的な状況において、決定は適正手続の保障の範囲で構成になされるべきである。支援の条項に従って人権と矛盾せずに適切な権威への定期的な監視と報告が必要である。〔チリ〕
 「(iii)支援された意思決定のためのネットワークを発展させるための適切な支援サービスを障害者に提供する」をつけ加える〔アフリカグループ〕
(d)自己の権利を主張し、情報を理解し、かつ、コミュニケーションをとることに困難を経験する障害のある人が、「自由に及び証人として行為するための署名によって拘束力のある合意や協定(treaties)、そのほかのあらゆる公的または私的な文書に応じるために」を挿入〔ウルグアイ〕自己に提供される情報を理解するための支援、自己決定、選択及び選好を表明するための支援、「裁判所における手続のあらゆる段階において参加するための支援」を挿入〔アフリカグループ〕拘束力のある合意又は契約を結ぶための支援、文書に署名するための支援並びに証人として立ち会うための支援を利用できることを確保する。
(e)「自身の事務(affairs)を執行し管理するために」を挿入〔ウルグアイ〕財産を所有し又は相続「使用またはそうでなければ処分」を挿入〔アフリカグループ〕し、自己の財政事情を管理し、かつ、銀行融資抵当貸付及び他の形態の財政的信用供与を平等に受けることができる、障害のある人の平等な権利を確保するため、適当かつ効果的なすべての措置をとる。
(f)障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。


新しい提案
□〔カナダ〕
「1.締約国は、障害者はほかの者と同一の法的能力をもっていることを認識すべきであり、法的能力の行使のために平等な機会を与えるべきである。とくに障害をもった大人は契約を結ぶため、財産を管理するための平等な権利をもっていることを認識し、裁判や取調べの手続きのすべての段階において彼らを平等に扱うべきである。」
「2.締約国は、障害者が、情報を理解するため、また決定、選択、希望を表現するための支援を含めて、法的能力を行使するために支援を必要とする場合には、その支援はその人の個人的な環境に必要でその環境に合った支援の程度に比例することを保障すべきである。」
←支持する。〔ノルウェイ〕
←「(その支援は)支援を受ける人の選好や意思を尊重し、利害対立とは関係なく、不適切な影響に巻き込まない」を最後につけ加える。これはIDAの立場から導き出せる。障害者が支援つきで能力を行使する際には、IDCが述べているように、支援された意思決定を認めるための段階がふまれるべきである。財産権の保護は尊重されなければならない。カナダ草案はこのことを適切に網羅している。弁護士の権力が第3者に与えられているときに適切に対応している。〔ニュージーランド〕
「3.「定期的な」を挿入〔ヨルダン〕再検討のための対策を含めて、法に規定された基準や手続きのもとで適格かつ独立かつ公平な権威だけが、ある人が支援つきで法的能力を行使できないと認められる。締約国は、その人の代わりに法的能力を行使するために代理人の任命のために「定期的な」を挿入〔ヨルダン〕再検討のための対策を含めて適切な保護手段の手続きを法的に規定すべきである。そのような任命は、次のことを含めて、この条約及び国際的な人権法と矛盾しない原則によって導かれるべきである。」←適切に保護され代理された意思決定は、支援された意思決定があってもいくつかの場合には必要になる。なぜなら法的能力を行使できない人がおり、そのために虐待や虫につながってしまう恐れがあるからだ。法的能力の行使ができないこと決定する場合の再審査のための条項にも言及しており、法定代理人の任命の場合と同様に再審査を加えてある。〔カナダ〕
←2つの項に分けた方がよい〔ノルウェイ〕
←法的無能力をうけいれているように思われる。支援の必要性は認識されるべきであり、それはほかの人による代理意思決定とは異なる。〔レバノン〕←支持する〔IDC〕
「(a)任命がその大人の支援つきで法的能力を行使するための無能力(inability)に比例し、その人の個人的な環境に合わせられることを保障すること。」
「(b)代理人がその人の決定、選択、希望を可能な限り考慮に入れることを保障すること。」
(United Nations Enable 2004)
フィードバックに応えて、障害者は平等に法的能力をもっているということに基づいて「大人」を「人」に変更した。この草案は、障害者が法的能力を行使することを可能にする支援の連続体に対応している。また、この支援は、もっとも制限の少ないかたちで可能になるべきであり、個々人に合わせてなされるべきである。
←支持し、自国のものを取り下げる。〔コスタリカ〕
←支持する〔ベネズエラ〕
←強く支持する。障害者の法的能力を推定し、支援ともに行使される必要があるかもしれないことを認めているから。それは、自分自身で又は支援つきで法的能力を行使することができないと思われる人の法のものでの適切な手続きを示している。支援が必要だと考えられる場合の保護手段を用意してもいる。ほかの代表団はカナダ草案を支持するかを表明すべきだ。〔ニュージーランド〕
←(2)(3)を支持する〔中国〕
□〔EU〕
「締約国は、
1.法の前に平等な権利をもった個人として障害者を認め、障害者への差別なく法の前の平等を保障する」←作業部会草案(a)と(b)
←カナダ草案よりも広い範囲を対象にしている。〔ノルウェイ〕
「2.締約国は、障害者が、情報を理解するため、また決定、選択、希望を表現するための支援を含めて、法的能力を行使するために支援を必要とする場合には、その支援はその人の個人的な環境に必要でその環境に合った支援の程度に比例することを保障すべきである。」←(c)はカナダ案にする
「3.関連のある決定、とりわけ法的能力の喪失または制限については、再検討のための対策を含めて、適格かつ独立かつ公平な権威によって法律で確立された手続及び関連のある法的保護の適用に従ってのみなされること」←作業部会草案(c.ii)とカナダ草案(3)
「4.締約国は、その人の代わりに法的能力を行使するために代理人の任命のために適切な保護手段の手続きを法的に規定すべきである。そのような任命は、次のことを含めて、この条約及び国際的な人権法と矛盾しない原則によって導かれるべきである。」
←カナダ草案(3)は、法的能力の否定の決定と代理人の任命という2つの問題を扱っているので(3)と(4)に分けた。
「(a)任命がその大人の法的無能力の程度に比例し、その人の個人的な環境に合わせられることを保障すること。」
「(b)代理人がその人の決定、選択、希望を可能な限り考慮に入れることを保障すること。」←カナダ草案(3後半、3.a、3.b)&作業部会草案(e)は削除。
←(a)(b)は、法の前の障害者の義務に言及した修正された第1項(メキシコの提案)のなかに構成されるべきである。
「5.障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。」←作業部会草案(f)
←支持する。法的能力と司法へのアクセスは別にすべきであり、この条文は法的能力の方だと思われる。〔national human rights institutions〕
□〔セルビア・モンテネグロ〕EUとカナダの草案に基づいた自国の草案を提出。
□〔日本〕第3回特別委員会で提出した案を修正して再提出した。作業部会草案に(g)として加えるべき。
「市民的及び政治的権利についての国際規約第14条で規定されている権利を行使するために障害者の物理的及びコミュニケーションの障壁を除去し、理解の困難さを減らすための適切で効果的な方法を採る」
←支持する(※原文ではインドの(g)とされている)。障害者は他の者との平等を基礎として法的能力をもっている。しかし、いくつかの状況では能力(capacity)が減る人の利益を保護する必要がある。〔ジャマイカ〕
□〔チリ〕未
←支持する。とくに、「認識する(recognize)」という単語を使っていること〔エルサルバドル〕
□〔IDC〕
「第9条:法の前及び下に人としてひとしく認められること
締約国は、法的能力の生得的な性質(inherent nature)を認識する。締約国は、個人は独立してだけでなく、相互依存関係の文脈のなかで意思決定をおこなっていること、意思決定において支援を受ける人は、その人の法的能力や権利、自由を維持することを認識すること。この目標のために締約国は以下のことをおこなうべきである。
1.他の者との平等を基礎として法の前及び下に権利と義務の主体として障害者を認める。
2.障害者が他の者と同一の法的能力をもっていることを認め、彼らに平等な権利と、その能力を行使する機会を与える。
3.法的能力が支援つきで行使されるかもしれないことを認める。この目標のために締約国は以下のことをおこなうべきである。
 a)他の人あるいは他の人たちへのその人の信頼の表現に基づいて個人間の関係での支援された意思決定を認めるため、また事前指示書及び弁護士の権力を作成および利用するための法的な仕組みを提供する。」
第9条の目標:1)自分の意思に従って人生の選択や決定をし実行する権利、2)法的効力のある行為をする権利、3)自分を代表する権利(the right to represent oneself)、4)積極的な措置を必要とするかもしれないそれらの権利を行使することへの障壁を除去すること。この草案は支援された意思決定のモデルを採用しており、代理意思決定とは違う。

そのほか
□〔カナダ〕作業部会草案は自由権規約に基づいていて、法的能力や、財産管理に関する問題を扱っている。
□〔コスタリカ〕第9条は、法的能力と司法へのアクセスの2つの問題を対象にしている。カナダ草案は、法的能力の問題には言及しているが、司法へのアクセスについては脇におかれている。EU、中国、日本、コスタリカの草案は司法へのアクセスにも対応している。司法へのアクセスについての新たな条文をつくることを提案する。条文案:略。←分けることには利点がある〔ニュージーランド〕。
□〔インド〕障害者は自分たちの法的能力を主張し、支援者や家族は代理意思決定を主張する。代理意思決定のモデルのなかでそれらの主張のバランスをとる必要がある。完全な法的能力の原則に共鳴する。しかし、環境がそれを許さないかもしれない。この問題は、バランスのとれた位置を達成するためのより上昇志向のモデルに投げかれられるべきだ。
□〔中国〕法的能力の問題は議論の余地があり、法体系の違いからそれは生じている。大陸法体系では、法的能力をもっているかどうかについての一般的な文言はない。国連原則の原則1.6は、法的能力の違いの問題に対応している。
□〔DPI〕障害者が権利を行使するときの法的及びその他の手続きのアクセシビリティを保障することが重要である。
(Landmine Survivors Network 2004)




*翻訳・作成:伊東香純
UP:20160811 REV:
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