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税についての言説




◆税についての言説
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税と国境(別ファイル)
税と家族(別ファイル)

立岩「税制について」(『現代思想』連載)(別ファイル)
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◆立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 20090910 『税を直す』,青土社,350p. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 2310 [amazon][kinokuniya] ※ t07.


◆196412 「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」についての答申(昭和39年12月)」

◆196807 「長期税制のあり方についての答申(昭和43年7月)」
 「税率構造のあり方としては、最低税率適用階級から最高税率適用階級まで限界負担能力の上昇に応じてなめらかに負担が累増していく形が望ましい」

◆和田 八束 19741128 『税は公平か――福祉社会の税金を考える』,日本経済新聞社,日経新書,177p. ASIN: B000J9U746 [amazon] ※ t07.

 「所得は、それが生み出される源泉がどこであるかにかかわりなく、一つの量的な大小として示される。資産の所有や階級の違いなどにかかわりなく、貨幣所得が多いか少ないかということを容易に明らかにできるのである。税負担の公平を客観的に実現しうる指標として、さしあたり最も便利なものといえよう。税の公平のうえから、所得税が理想的であるといわれるのは、このためである。
 所得税の最も優れている点は、所得再分配を行うのに適していることである。つまり所得の分配を課税によって修正し、とくに高所得者に対する税を重くすることによって、可処分所得(税引き後の所得)を平準化しようというわけである。
 このためには、あらゆる源泉からの所得を総合して、これに累進的な課税をする必要がある。」(和田[1974:62])
◆佐藤 進 19791218 『日本の税金』,東京大学出版会,UP選書201,218p. ISBN-10: 4130020013 ISBN-13: 978-4130020015 980 [amazon] ※ t07.

第3章 会社と企業の税金

 「わが国で、企業課税強化の主張が大きく取り上げられるようになったのは、昭和四〇年代後半に入ってからであり、その最初の出来事が昭和四五年度税制改正における法人税率の一・七五%引上げであった。この当時の状況をふりかえってみると、企業の設備投資の増大・技術革新・輸出拡大という形ですすめられてきた経済の高度成長が、社会的ひずみの拡大や公害等の社会的費用の増大をもたらす結果となり、これが企業に対して応分の負担を求める声を高まらせるにいたった。また、大都市への企業の集中と過密の弊害の発生などが、企業の受益に応ずる負担の要求の根拠となった。さらに、昭和四八秋の石油危機以降、企業が便乗値上げ等の反社会的行動をとったとして世論の反撥をかったが、四九年度税制改正では議員立法による会社臨時特別税の採用、そして法人税率の一層の引上げ(基本税率三六・七五%より四〇%)がなされ、この間、企業の実効税負担ないし実質税負担をめぐる議論が盛んに行われた。法人税率以外に大きな問題となったのは、法人税の課税ベースをめぐる論議であり、これは法人関係特別措置の管理をめぐる動きとなってあらわれた。[…]」(佐藤[1979:94])

 「法人税は、法人所得に対する税であるが、法人所得は配当と内部留保とからなり、配当がこれを支払う法人と、受け取る個人の両方で課税されると二重課税になるということで、この二重課税の調整をめぐりさまざまの論議が展開されてきた。」(佐藤[1979:95])

 「シャウプ勧告法人税制は、「法人は与えられた事業を遂行するために作られた個人の集合である」という法人擬制説の立場にたって、二重課税の排除を主張するものであった。シャウプ使節団の母国であるアメリカでは、むしろ実在説的立場での二重課税が行われていたのに対し、シャウプは理論的にすぐれた考え方として二重課税排除を主張した。もっとも[…]」(佐藤[1979:98])

 「(一)法人は組織体として法的に独立しており、財産を取得し、所得を稼得することができる。[…]
 (二)法人企業は個人企業にくらべ資金動員力において圧倒的に優勢であり、また収益力においても優れているので、均等化のため独立法人税を強化する必要がある。[…]<0108<
 (三)一般的国家サービスのうち、企業経営の安定や労働力養成、技術開発、そして社会資本の整備なと企業向サービスの分野が拡大しており、企業とくに法人企業はこれに見合った対価を支払う必要がある。
 (四)法人の社会的責任の根拠から独立法人税を支持することが可能であり、法人は企業活動の結果もたらされた社会的費用を第三者に転嫁することなく、自ら負担する必要がある。発生者負担・原因者負担・汚染者負担等々の根拠からの企業負担強化の提案であり、この場合、負担はあくまでも第一次的負担であり、公害発生等の防止に第一次的に責任をもつべきは、発生者ないし原因者であるという理解がその基礎にある。
 (五)経済政策遂行の観点から独立法人税を推進する根拠も十分あると思われる。[…]
 (六)課題の効率性の観点から、第二次的所得である利子・配当・地代・賃料といった個別所得に課題するより、それらの所得の発生源である企業ないし法人のところで課税するほうがより効率的である。賃金に対する所得税が源泉徴収制度のもとで企業による給料天引きの形で徴収されており、これが所得<0109<税の徴税費節約に役立っていることは周知のことである。また利子・配当・地代・賃料等々は派生所得であり、これを生み出すものは企業利潤にほからないのであるから、これらの源泉課税として法人税にウェイトを置いてゆくという考え方も可能と思われる。
 […]二重課税排除や法人擬制説の純化という角度より、二重課税是認・法人実在説の基礎での法人独立課税強化が、わが国の場合とるべき方向ではないかと思われるのである。」(佐藤[1979:109-110])

◆国民税制調査会 編 19830425 『行政改革と税財政――第二臨調の矛盾を突く』,学陽書房,215p. ISBN-10: 4313820086 ISBN-13: 978-4313820081 1600 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◇佐藤進 19830425 「租税負担と租税構造」,国民税制調査会編[1983:93-112]

 「租税負担が高額所得層において実質増となり、税引後所得がマイナスとなっているところから、高額所得層の税率引下げに重点をおいた税率引下げを行うべきであるという考え方がありうるが、これは疑問である。わが国の所得税の超過累進税率の最高は七五%であり、これに地方税住民税率一八%を加えると九三%にもなり、これは貯蓄意欲を削減する高税率であるとされるが、累進税率の構造を手直しするためには、税率適用区分の実際を明らかにすることが先決であり、形式税率の高さだけを問題にすることは誤っている。最高所得層は利子・配当所得税の優遇、譲渡所得優遇等による負担回避を大規模に利用しているとみてよく、これらの優遇措置をそのままにしての税率引下げは、課税の不公正をさらに拡大するだけであろう。」(佐藤[1983:107])

◇佐藤 祐次 19830425 「減税問題と税の公平」,国民税制調査会編[1983:149-166]
 「税の不公平感を裏づけるものとして、東京都の新財源構想研究会が行った個人および法人の税負担の実態を調査した報告はよく知られている。その内容は、おどろくべきことに、個人、法人を問わず高額所得になるほど実際の税負担率が低くなっている(逆累進)ことである。<0162<
 個人について、同研究会の第六次報告(昭和五三年一月)が、所得税、個人住民税の実態分析をした結果、当時の課税方式(土地長期譲渡所得税率二〇%、個人住民税率六%の分離課税)では、所得二、〇〇〇万〜三、〇〇〇万円の階層の税負担率三三・六%を最高として、五億円超の階層が二六・三%と逆に低くなる。その原因は、高額所得者ほど、資産所得の割合が高く、これらに定率分離課税が適用されてきたからである。」(佐藤[1983:]162-163])

◆福田 幸弘 19840105 『一大蔵官僚の眼』,東洋経済新報社,285p. ASIN: B000J795LO 1400 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第1部 この10年
 12 累進課税の意味 20-21
 「自由主義経済下における税制の歴史的な、そして基本的なモラルは累進課税の原則であり、特に「差別課税」の考え方であることを思い返す必要がある。(昭和49年8月)」(福田[1984:21])

 高齢化社会対応の処方箋
 「高齢化社会への対応の一つは雇用面の拡大であり、これが社会の活力維持と老人の生きがいからみて最も望ましい。[…]
 第二の対応策は、自己責任、自助努力を基本とした貯蓄と保険の活用である。[…]
 第三の対応策として、家族的な福祉を復活させることが基本的に重要である。この家族福祉は人類<0255<古来の在り方であって、三世代同居が老人の生きがいであるとともに、若い二世代に人生経験を伝えることになる。
 第四の、国による、やむをえない社会的な老人福祉は、以上のような自己努力や家族福祉を補完するものであるが、この国の援助は、働ける間は社会のために尽くして、納税のぎむも果たしてきた老人たちに対する、国家社会の当然のお返しとして理解すべきであろう。」(福田[1984:254-255])

 「アメリカでレーガン大統領が、イギリスでサッチャー政権が累進税率を緩和した理由は、自由社会<0259<における勤労意欲を重視したからである。わが国の場合、中堅層のところでの累進カーブの圧迫が大きく、しかもこの年代は子供の教育費と住宅ローンの圧迫を受けており(このことは教育費等の特殊控除の理由になるものではないが)、ことさらに税負担を重く感じている。この中堅層は、職場にあっては管理職としてワーカホリックといわれるまでに仕事に専念している社会的に貴重な人たちである。減税は、累進課税の過度の圧迫をうけている、このような社会の中堅層を対象とした税率の緩和に重点をおくべきであり、また異常に高い最高税率もこの際引き下げるべきである。そして、このような減税の理念を、活力ある社会の維持発展におくべきである。」(福田[1984:259-260])

◆牛嶋 正 19840726 『社会的公正と所得課税』,東洋経済新報社,259p. ISBN-10: 449261009X ISBN-13: 978-4492610091 3500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「結局、税負担の公平の基準に照らして税構造を考えるとき、これまで暗黙裡に是認されてきた「税構造は累進的でなければならない」という考え方に必然性を見いだすことはできない。いうまでもなく、課税の公平は、課税のもつ再分配効果とは完全に切り離して、税負担の納税者間への公平な配分という観点からのみ考えるべきである。」(牛嶋[1984:77])
第8章 課税のインセンティブ効果
 1 課税と労働インセンティブ
  所得効果と代替効果
 「いずれにしても一個人の賃金率の変化に対する労働時間の増減は、所得の余暇の選好の状態[…]に依存することから、一個人についてさえその方向を確かめることは困難であるといえる。まして、労働市場に参加するすべての個人を総合して、賃金率wの変化に対する労働供給量の増減を見きわめることは非常に困難である。」(牛嶋[1984:179])

◆福田 幸弘 19841129 『税とデモクラシー』 ,東洋経済新報社,287p. ISBN-10: 4492610103 ISBN-13: 978-4492610107 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

1章 税・財政の基本課題
 税率緩和は最大のポイント 16
 「第二次大戦後の先進諸国の財政が福祉中心に拡大したため、所得税による所得再分配の意味が薄れ、最近では、自由社会の活力を再び喚起すべきだという自由主義の政治哲学から、累進税率の緩和という租税政策が打ち出されるようになってきた。
 アメリカではレーガン大統領が[…]イギリスではサッチャー首相が[…]」(福田[1984b:16-17])
 「わが国でも税務職員一人につきコスト約五〇〇万円の約一〇倍、五〇〇〇万円の税収増が見込まれるという計算がある。」(福田[2004b:25]) 2章 税制改正を顧みて
 累進課税緩和と直間比率是正
 「所得税の本来の原則は、勤労所得には軽く、資産性所得には重くということである。それなのに日本の場合には反対に、勤労性所得はむしろ重い扱いを受けていて、これが不公正感を生んでいる。しかも、税率カーブが急で、一番高いところは、所得税七五%と地方税一八%を入れると、限界税率が九三%で、賦課制限が八〇%であったが、五九年度の改正で所得税を五%引き下げて七〇%にした。限界税率は八八%で賦課制限は七八%になった。したがって最高で一〇〇万円のうち二二%しか残らない。これはやはり税金としては異常である。異常な税制を持っていてはいけないというのが、常<0054<識的な税の執行の立場である。余り高い税率があるから法人になる。所得を分配する、経費で落とすことになる。だから、素直な税率にして、所得を正直に出してもらった方がいい。みんな正しく納税をしたいという気持ちはもっているはずで、それが無理なく納められるようにすれば、税収は決して減らないと思う。
 一方、下の方の税率は異常に低い。日本の場合、下が一〇%であったのを、五九年度に〇・五%上げたが、下を上げるということは上を下げるのと同様、相当勇気のいることである。イギリスの場合は、最初の税率が三〇%である。しかし上は六〇%で抑えている。西ドイツは下が二二%で上が五六%である。日本は下が低くて、上が高過ぎる。そして、中間のところからカーブが急になっている。しかも、課税最低限が世界で一番高くなっている。夫婦、子二人で二三六万円である。
 ところが、納税者は中から下にかけてダンゴみたいに集まっている。これは所得の分布を見ればわかることだが、日本の社会は国際的にみて貧富の差が最も少ない国の一つである。そういうところでは、累進税率の意味が余りない。国民の大部分がいるところにカーブの急な累進税率がかかるものだから、ちょっと月給が上がっても、税金がうんとふえるという感触を持つことになる。これが不公公平感の最大の原因といえる。
 だから、むしろ税率は比例税率的に考える方が正しいかもしれない。税率の歴史は最初比例税率であった。アメリカでは、いま比例税率論が出てきているが、一般の国民が納める税率は、なだらかな方がいい。今より下の方は重くなってもやむをえない。しかし、なかなか低いものを高くすることは<0055<政治的にも社会的にもできない。直ちに”貧乏人いじめ”とくる。それから、高い方を下げると”金持ち減税”とくる。しし、働いている人にモダレートな税率をというのは、勤労意欲を高めるということであって、もっと働こうとしても、税金を考えるともうやらない方がいいという気が強くなっては社会としても困るわけで、税率のために働かなくなるということがあってはいけない。それは働く者にとってむしろ不公正でもある。
 それから法人税についても同じことで[…]」(福田[1984:55-56])
 4章 今後の税制をどうすべきか 福田・石弘光 103-

◆福田 幸弘 19850510  『税制改革の視点』 ,税務経理協会,395p. ISBN-10: 4419005491 ISBN-13: 978-4419005498 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第5章 これからの税制と執行
 5 所得税のあり方
 「次に所得税の問題であるが、累進税率が、各種所得の総合と共に所得税の基本になる。
 しかし、累進税率のカーブが非常に高いと勤労意欲に影響する。所得税による所得の再分配ということが最近まで非常に重要視されてきた。上の人は限界効用が下がってくるから高い税率にしておいて、その税金で下のほうの歳出に当てるという再分配である。このように上のほうに高い税率を適用していいという議論が一般化してしまっているが、一方で社会福祉が歳出面ですでに下に厚く行われているということを見落としてしまってはいけない。累進構造が非常に強く言われてきたのであるが、これは一方で福祉的な歳出面を忘れているということと、勤労意欲の阻害ということを考えなければならない。」(福田[1985:251])
 高い日本の最高税率
 累進税率は不平等
 クロヨン問題
 結局稼得者単位に戻ったスウェーデン
 マル優問題の点

◆木代 泰之 19851128 『自民党税制調査会』 ,東洋経済新報社,215p. ISBN-10: 4492210180 ISBN-13: 978-4492210185 1100 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆国民税制調査会 19860115 『財政危機下の税制改革――"増税なき財政再建"は可能か』,学陽書房,236p. ISBN-10: 4313820124 ISBN-13: 978-4313820128 1680 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆野口 悠紀雄 19860130 『税制改革の構想』 ,東洋経済新報社,東経選書,228p. ISBN-10: 4492610111 ISBN-13: 978-4492610114 1500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「税制に要求されるいま一つの原則は、「所得が高いほど税負担が高まらなければならない(すなわち、税負担は累進的でなければならない)」こ<0012<とを要請する「垂直的公平の原則」である。税制の表面的な姿をみる限り、日本の現状がこの原則に照らして問題を含んでいるとは考えられない。
 […]問題は、すでに述べた「法人成り」やさまざの節税策により、サラリーマンの場合を除けば、形式上の累進性を実現しえない場合が多いことであろう。したがって、実質的な垂直的公平を実現するためにも、水平的公平の実現が要求されるのである。この意味で、異種の所得間の不均衡の是正が、日本の税制にとって最大の課題といえるのであろう。」(野口[1986:12-13])

 「消費財にたいする一般的課税は、余暇と労働にの選択に関して、非中立的である。[…]<0024<
 以上でみた非中立性は、所得税においても全く同様に生ずる。」(野口[1986:24-25])
 「「高額所得者が現状より多くの負担をすべきだ」という主張は、おそらく、どんな税制下でも生ずる意見であろう。したがって、欧米の労働組合がこの点を重視するのは当然である。また、日本でも、垂直的公平の確保は重要な問題とされている(とくに、古典的イデオロギーに束縛されている政党の公式見解ではそうである)。」(野口[1986:188])
◆加藤 寛・金子 敬生 198601 『不公平税制への挑戦』,国際商業出版,250p. ISBN-10: 4875422059 ISBN-13: 978-4875422051 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 まえがき
 「いまの財政危機は、財政のムダがあまりにも多すぎるために起こっているのですから、「行政改革」を進めることによって、結果的にはかなり解決できるのです。「行政改革」を徹底的に進めていくことが先決です。それが歴史の流れというものです。長期的視野に立った抜本的な税制改革は、不公平の是正のために必要なことです。しかしながら、不用意に税制改革を主張すれば、その意図は正しくても、財源調達の「税制改革」論に利用されかねません。ここを見分けることが大切なのです。」(加藤・金子[1986:3])

◆19860318 「累進構造に関する専門小委員会報告」
 「(限界税率と納税者行動)
 (2) 税率構造の検討に当たっては、上記のような観点のほか、限界税率が納税者行動に及ぼす影響についても十分配慮する必要がある。限界税率が高すぎたりその累進が強すぎる場合には、一般に次のような弊害があると考えられている。
 @ 事業意欲等を阻害する恐れがある。
 A 所得分割あるいは金銭によらない対価の支払いといった租税回避等の誘因となり、結果的に課税の公平を損なうおそれがある。
 B 国民経済的に見ても、租税回避のためのループホール探しといったエネルギーの浪費や脱税と地下経済の横行による経済秩序の混乱といった弊害を生ずる。
 C 経済の国際化が進展した今日では、諸外国と比してあまりに税率が高い場合には、経済活動の海外移転や人材の海外移住を招くことになりかねない。
 近年、米国その他の諸外国において、限界税率の納税者行動に及ぼすこうした影響を考慮して、その水準の引下げないしは累進緩和を図る動きがみられる。
 (高所得階層に対する税率構造)
 (3) 最高税率をはじめとする高所得階層に適用される限界税率のあり方については、機会の均等性が比較的高く、流動的な社会構造の下では、基本的には、働きに応じた所得配分が達成されることがむしろ公正であり、高所得階層といえども限界税率の水準には自ずから限度があるとする考え方が有力である。
 最高税率のあり方に関しては、所得課税の垂直的公平性を端的に示す象徴的存在としての意義を認める見地等から、その適用所得階層を十分高いところにおけば、相当に高くてもよいのではないかとする考え方がある。これに対しては、税率が高水準に設定されているからこそ、現実問題として分離課税や所得分割を認めざるをえないことになるのであり、みかけだけの高い税率を定めるより、税率水準を引き下げると同時に課税ベースを拡大することがむしろ垂直的公平も含めた課税の公平にかなうとする考え方がある。
 このほか、最高税率の水準を考えるに当たっては、税制がいわゆる法人成りの誘因となることのないよう、法人税率の水準にも留意すべきであろう。」

◆198604 「政府税制調査会第二特別部会中間報告」

 「3負担累増感の問題への対応
 (1) 先に述べたとおり、我が国の個人所得課税における税負担の水準は国際的にみればかなり低い水準にあるにもかかわらず、中堅サラリーマン層を中心として税負担感、特に負担累増感が強い。
 (2) 現行の税率構造の基本的な姿は昭和43年の「長期税制のあり方についての答申」に基づいて定められたものであり、その際には、所得税について、「税率構造のあり方としては、最低税率適用階級から最高税率適用階級まで限界負担能力の上昇に応じてなめらかに負担が累増していく形が望ましい」とされた結果、10%の最低税率から始まり75%の最高税率に至るまでの間を5%ずつ刻んでいたそれまでの所得税の税率構造についてその刻み方を変え、課税所得の最初の段階では2%ずつ、課税所得が大きくなるにつれて逐次3%、4%、5%ずつ適用限界税率が引き上げられる姿に改められた。
 (3) ところで、個人所得課税の納税者の太宗をなす給与所得者について、生涯の各段階における稼得、支出のパターンを見ると、その年収は就職時の低い水準から中堅段階に至るとある程度の水準に達しはするが、他方、結婚、育児、教育、住宅取得等により家計上の諸支出も増加する。そして支出の増加の一方で、所得の上昇の結果、累進課税により税負担は累増する。したがって、収入の大きさは必ずしも文化教養に親しむなどゆとりのある生活を営むための支出能力と結びつかず、それが家計の逼迫感を醸し出している面があるのではないかと考える。
 サラリーマンについてみられるこのような現象が、収入の増加にも関わらず絶えず負担累増感を抱かせる背景となっているのではないか。
 こうしてみると負担感ないし負担累増感の原因は、我が国の累進構造が、高水準の所得控除を背景として、低い最低税率から出発して相当高い最高税率に至ることから全体として強い累進度をもっていること、かつ、税率の区分の刻み数が多く、とりわけ中堅所得階層以上に対する累進がかなりきついものとなっていることにあるものと考える。
 (4) 税率構造のあり方を検討するに当たっては、所得水準及び所得分布の実態ならびに所得課税に対する歳入依存度等を勘案する必要があるが、我が国においては、先にも述べたとおり、所得水準の大幅な上昇が見られる中で、所得分布が著しく平準化し、大半の納税者がある程度の幅の所得階層に集中するに至っている。更に、この間に社会保障制度が広範に充実されたこと等に照らせば、個人所得課税に求められる所得再分配の役割はかってに比べ相対的に弱まってきており、従来のようなきつい累進構造は思い切って見直して良いのではないかと考える。
 更に、一般的にいえば、限界税率が高すぎたり累進が強すぎる場合には、勤労意欲、事業意欲等を阻害したり脱税の誘因となる等、納税モラルに悪影響を与えるという弊害が指摘されており、また、国際化が進展する中で、外国との格差が開きすぎる場合には所得の移転や人材の移動といった現象が生ずる恐れがあることも否定できない。
 (5) 以上の状況をふまえれば、負担累増感を緩和する見地から、税率構造全体として累進度を相当程度緩和し、所得税と個人住民税を合計した最高税率を6割台に引き下げるとともに、税率区分の幅の拡大、刻み数の大幅な削減により簡素化を図る方向で、今後具体的な検討を行うことが望ましいと考える。
 この場合、中堅サラリーマン層を中心として抱かれている負担累増感の緩和に資するため、@大多数の納税者の集まる所得階層の中においては適用される限界税率がなるべく変わらないようにする、あるいは、A普通のサラリーマンにとって就職時からある程度の地位に達し退職する時までに適用される限界税率がなるべく変わらないようにするといったことが考えられる。
 なお、課税最低限については、負担軽減の観点からの見直しの議論も無いではないが、一方、所得水準の上昇や所得分布の平準化等を背景として幅広く負担を求めるべきであるとの観点から基本的に見直しを行うべきではないかとの意見がある。我が国の課税最低限はかなり高い水準にあることからすれば、給与所得者の負担あるいは負担感の緩和の観点から一般的な人的控除の額を引き上げることは、最低税率の水準との関連もあり、その必要性に乏しいと思われるが、いずれにせよ、その合理的なあり方については今後なお検討を要すると考える。
 (6) 以上のような累進構造の緩和にあわせて、公平確保等の観点から、個人所得課税における非課税所得の範囲の見直し等の方策についても検討することが必要である。」

◆宮島 洋 19860920 『租税論の展開と日本の税制』,日本評論社,348p. ISBN-10: 4535576181 ISBN-13: 978-4535576186 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第1章 包括的所得税
 累進税率
 「カーター報告が税率構造の改革にあたってもっとも重視したことは、最高限界税率を現行の八〇%から五〇%へと大幅<0011<に引き下げ、累進度の緩和を図ることでした。その理由として、@追加的所得に対する政府の要求分を二分の一に制限することが心理的なメリットをもたらすこと、A貯蓄、投資、生産などへのインセンティブを損なわないためには最高限界税率を十分に低くしておくことが必要不可欠なこと、B法人所得税との実行可能な完全統合を図るためには最高限界税率を法人税率五〇%にそろえる必要があること(後述)、などがあげられています。
 このように最高税率を大幅に下げ、累進度を緩和したのでは垂直的公平が維持できないのではないか、という疑問が生じるかもしれません。この点について、カーター報告は、第一に現行の急激な累進税率構造が高額所得者の広範な租税回避行動によってたんなる名目上のものにすぎなくなっていること、第二に資産所得や事業所得の包括化により中高所得者の課税ベースが相当に拡大すること、そして第三に特定の非裁量的支出の控除をすべて税額控除方式にすることにより真の生活困窮者に効果的な負担の軽減を及ぼすことなどを指摘し、その疑問に答えています。」(宮島[1986:11-12])

◆税制調査会 編 198612 『税制の抜本的見直しについての答申 昭和61年10月』,大蔵省印刷局,155p. ISBN-10: 4172339069 ISBN-13: 978-4172339069 [amazon][kinokuniya] t07.

◆財経詳報社 編/大蔵省主税局総務課 監修 19861220  『税制改革のポイント――答申と資料にみる改革のビジョン』 ,財経詳報社,225p. ISBN-10: 4881770578 ISBN-13: 978-4881770573 1470 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「基本税率の適用所得区分を超える所得階層については、適正かつ公平な所得税負担を求めるという見地から負担能力の上昇に相応して負担の増加を求めることが適当である。
 しかしながら、この場合においても、限界税率の累進が強すぎたり、その水準が高すぎたりする場合には、イ勤労意欲や事業意欲等を阻害する、ロ所得分割等による租税回避の誘因となり結果的に課税の公平を損なう、ハ経済活動の海外移転や人材の海外流出を招くことになりかねない、といった弊害を生ずることが指摘されているところであり、また、高所得者といえども限界税率の水準にはおのずと限界があると考えられる。
 このような見地から、最高税率を所得税と個人住民税を合わせて60%に引き下げることとし、所得税については50%とするととともに、基本税率の上に原則として10%刻みの累進税率を設けることが適当である。この結果、税率の刻みの数が現行の15段階から6段階に減少することになる。
 このような税率構造は、全体として極めて簡明なものであり、納税者には自らに適用される限界税率が分りやすく、合理的な経済行動をとる上での助けとなる面からも評価できる。
 この点に関し、最高税率の水準を引き下げる必要はなく、その適用所得区分を引き上げれば足りるとする考え方があり、他方、最高税率を50%より低い水準としてもよいのではないかとする考え方があった。」([53]、イ・ロ・ハは○イ・ロ・ハ)

◆富岡 幸雄 19870325  『税制改革と売上税――そのあり方に物申す』 ,森山書店,182p. ISBN-10: 4839416672 ISBN-13: 978-4839416676 1050 ※ t07. [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆山下 元利 19870429  『いま税制改革をしなければ日本は生き残れない!』 ,かんき出版,214p. ISBN-10: 4761252111 ISBN-13: 978-4761252113 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第3章 今、なぜ税制改革が必要か
 なぜ所得税の減税が必要か
 「最高税率は、所得税、住民税をあわせると八十八%。
 「私は税金のために働いているようなものです」
 高額所得者が、インタビューに答えて自嘲気味にそう言うのをよく聞くことがある。これを六十五%にする。
 何も、金持ちをかばうわけではない。しかし、自由主義経済において、「もっと豊かになろう、働こう」という意欲は大事にせねばならない。
 「努力をしてもしなくても大して変わらない」
 「より一生懸命働こうとしても税引後自分に残るものはそれに比例しない」
 というのは悪平等ではないか。それによって意欲を失うことが心配だ。
 この六十五%でも、まだ、世界最高の税率だ。フランスは六十五%であったが最近五十八%に下げた。英国が六十%、西ドイツが五十六%、そしてアメリカにいたっては三十八%だ。
 二つの国があって、税率が片や八十八%、片や三十八%だったら、どちらの国に住み<0118<たくなるか? 三十八%の国の方が。働く意欲もわいてくる。”そんな八十八%の高税率の国なんて住もうと思わないし、そんな国では愛せない”と言われてもしかたがない。 […]
 日本人はよく我慢しているな、と思っている。たとえばアメリカが最高税率を八十八%にしたら、皆逃げ出してしまうのではないだろうか。国民性の違いといえばそれまでだが、、最高税率が上がるだけで、直接関係ない低所得者までが意欲を失ない、経済が停滞してしまうほどだ。
 税制改革によって、税率を十五段階から六段階に簡素化し、しかも、課税最低限は二百五十九万五千円にまで引きあげる。その目的は、働く者の意欲を高め、消費を増やし、内需を拡大して経済を活性化させることにある。」(山本[1987:118-119])

◆後藤 弘 19870406 『欠陥だらけの税制改革――売上税マル優廃止で日本経済はどうなる』,講談社,218p. ISBN-10: 4062033526 ISBN-13: 978-4062033527 1000 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆橋本 徹・山本 栄一 編 19870525  『日本型税制改革』 ,有斐閣,309p. ISBN-10: 4641064830 ISBN-13: 978-4641064836 2300 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 第1章 抜本的税制改革は可能か――所得税・間接税改革を論ず 本間 正明
 「日本の賃金体系は年功序列的な色彩に強く支配された構造になっており、賃金プロファイルが年齢とともに増大していく仕組みになっている。この点を反映して、社会全体の所得分配構造もまた先進諸国ではきわめて平等な部類に属する。
 それにもかかわらず、日本の現行所得税制はきわめて累進的な構造をとり、再分配的機能を全面的に押し出す形になっている。[…]この累進度は諸外国に見られないほどのきつさなのである。
 この年功序列的で所得分配が平等化した日本社会における厳しい累進構造は、ライフステージ間の税負担の配分に大きな歪みをもたらしている。[…]<0020<
 所得税の累進構造の見直し、ライフステージ間の税負担を平準化していくことなしには、中堅サラリーマンの重税感を緩和することは困難である。」(本間[1987:20-21])

◆福田 幸弘 著/新日本税制研究会 編 19870810  『税制改革への歩み――福田幸弘対談集』 ,税務経理協会,705p. ISBN-10: 4419009535 ISBN-13: 978-4419009533 2300 [amazon]/[kinokuniya] ※ t07.

◆河野 惟隆 19870915  『個人所得税の研究』 ,税務経理協会,277p. ISBN-10: 4419003227 ISBN-13: 978-4419003227 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆中谷 巌 19871023 『ボーダーレス・エコノミー――鎖国国家日本への警鐘』,日本経済新聞社,234p. ISBN-10: 4532088046 ISBN-13: 978-4532088040 1200 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

4 法人税制の日米比較
 格差の是正を急げ
 「日本の若い経営者が日本の高い法人税を嫌って大挙して本社をアメリカに移転するなどという事態が起こってからでは手遅れである。税率を高くしておけば、税金が余計に徴収できるという考え方は徐々に有効でなくなりつつある。税制という面でも「制度の国際競争」は始まっているということをわれわれは認識すべきであろう。」(中谷[1987:162])

◆藤田 晴 19871225  『税制改革――その軌跡と展望』 ,税務経理協会,312p. ISBN-10: 4419009640 ISBN-13: 978-4419009649 1900 [amazon] ※ t07.

第3部 所得・法人課税の見直し
 第7章 サラリーマン減税政策の評価
  1 累進課税の緩和
   1改革案のねらい
 「わが国における個人所得税の負担水準は、マクロ的負担率等の国際比較によれば、けっして重いものではない。それにもかかわらず、納税者の負担感、重圧感が問題になっているのはなぜであろうか。昭和六一年の税制改革答申は、その背景として、働き盛りの中堅給与所得者層を中心とした税負担の累増感の問題と、サラリーマンと他の所得者との間における負担不均衡感の問題を重視している。そして、これらに対処するため、個人所得税負担を軽減するとと同時に、制度的枠組み自体を変革することを、所得税改革提案の中心的なねらいとしている。」(藤田[1987:140])
 「税制改革答申によって提案されている税率構造の変革は、二つのねらいを持っていた。第一は、大半のサラリーマンが包摂される収入階層に対して適用される、一本の基本税率を設定することである。第二は、所得税と住民税を合わせた最高総合税率を、かなり思い切って引き下げることである。これらのうち第一点は、サラリーマン層の働き盛りにおいて、累進課税による税負担の増加が著しいため、収入の上昇がかならずしも生活のゆとりに結び付かず、税負担累増感がもたらされている<0143<[表]<0144<のを是正するためだと説明されている。また第二点は、過度の累進課税の結果、勤労意欲や事情意欲等の阻害、所得分割等による租税回避の誘発、経済活動の海外移転や人材の海外流出等の弊害が生じるのを、避けるためだと述べられている。」(藤田[1987:143-145])

◆鶴田 広巳・藤岡 純一 編 19880325 『税制改革への視点――租税民主主義の発展にむけて』,中央経済社,253p. ISBN-10: 4481815922 ISBN-13: 978-4481815926 [amazon] ※ t07.

◆19880428 自由民主党政務調査会税制調査会「税制改革の基本方針(案)」
 *福田[1988:697-600]に収録

◆内田 健三・金指 正雄・福岡 政行 編 19880510  『税制改革をめぐる政治力学――自民優位下の政治過程』 ,中央公論社,320p. ISBN-10: 412001682X ISBN-13: 978-4120016820 ※ t07.

◆19880615 税制調査会「税制改革についての答申」
 *福田[1988:601-603]に収録

◆19880628 閣議決定「税制改革要綱」
 *福田[1988:601-634]に収録/小倉[1988:268-293] に収録

 所得税の最高限界税率が60%→50%など

◆小倉 武一 19880730 『三間人税政問答』,農山漁村文化協会,293p. ISBN-10: 4540880462 ISBN-13: 978-4540880469 [amazon] ※ t07.

 渓谷「日本の法人税率は国際的にみていかにも高い。また過去を顧みても昨今のように高い水準はありません。とくに経済取引が国際化している今日では企業の海外逃避とか、日本での一つの企業の集中管理をきらう傾向も生じてきます。日本企業の活力を維持するゆえんではありません。」(小倉[1988:65])
 渓谷「中間答申」「は多分に説得性を欠く答申であったが、そこには財政危機打開に焦燥感をもった大蔵当局の意向が反映していた」。
 これは佐藤進教授の著書『日本の税金』(東大出版会)からの引用です。
 貴丹 なかなか当たっているところもあるのではないですか。」(小倉[1988:85])

◆自由民主党税制調査会 編 19880811  『早わかり 税制改革一問一答』 ,東洋経済新報社,236p. ISBN-10: 4492610154 ISBN-13: 978-4492610152 980 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「問18 所得税の最高税率の引き下げは、金持ち優遇になるのではないですか。むしろこれを引き上げて、もっと金持ちから税金をとるべきではないですか。
 答 1.現在、所得税・住民税を合わせた最高税率は76%(国60%、地方16%)に達しています。その水準が高すぎる場合には、
 @勤労意欲や事業意欲を阻害する、
 A脱税などの誘因となり結果的に課税の公平を損なう
 B優秀な人材の海外流出を招く、
などの弊害を生ずることになります。このような観点から、社会の活力を維持増大する見地に立ち、今回の改革では、全体の累進構造をなだらかにしていくのと合わせて、この最高税率を引き下げることにしました。
 2.つまり現在では、最高税率が適用される人たちは、所得が100万円増加すれば、その増加した所得のうち76万円を税金として納めなければならないことになってしまいますが、こうした高い最高税率は事業意欲などに好ましくない影響を与えるばかりでなく、仮に、この人がアメリカのニューヨークに移住してしまえば同じ100万円のうち税金として納めるのは37万円と半分以下になってしまいます。そうすると我が国には1円の税金も入らないばかりか、我が国の<0029<経済活動の沈滞化を招く恐れもあります。こういう点も考えて、100万円のうちの税金をせめて65万円にまで引き下げて、35万円程度は手元に残してあげようというのが今回の最高税率を引き下げる趣旨です。
 3.(1) 引下げ後でも、所得税・住民税を合わせた最高税率65%(国50%、地方15%)は、先進諸国の中にあっては最も高い水準にあります。
 (2) また、我が国の所得税の課税最低限は、先進諸国の中で最高水準にあります(問9の表参照)
 (3) 今回の税制改革においては、キャピタル・ゲイン(有価証券譲渡益)の原則課税化、医師税制(社会保険診療報酬課税の特例)の見直しも行い、高額所得者に負担を求めることとしています。
 (4) したがって、改革後の我が国の個人所得税は、国際的にみて、依然として下に軽く上に重いものとなっており、今回の最高税率の引下げをもって「金持ち優遇」であるという批判は当たりません。」(自由民主党税制調査会編[1988:29-30])

◆福田 幸弘 著/新日本税制研究会 編 19880825  『続・税制改革への歩み――福田幸弘対談集』 ,税務経理協会,669p. ISBN-10: 441901167X ISBN-13: 978-4419011673 2000 [amazon]/[kinokuniya] ※ t07.

◆中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 『税制改革で変わる日本経済』,東洋経済新報社,214p. ISBN-10: 4492610162 ISBN-13: 978-4492610169 1400 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◇八田 達夫 19880929 「間接税は必要ない」,中谷・本間・八田[1988:43-71]

◇中谷 巌 19880929 「国際国家へ飛翔するパスポート」,中谷・本間・八田[1988:73-93]

 「日本が税制を決定する場合には、アメリカがどうなっているか、ヨーロッパはどうか、あるいはアジアとの関係はどういう実情にあるかをしっかりと把握したうえで、日本だけが突出しないようにしなくてはいけない。
 この点に関していえば、自民党の税制大綱も政府税調の答申も多少の配慮はしていて、たとえば所得税の税率構造を簡素にしたり、法人税については現在四〇%の法人税率を三七・五%になる方針を打ち出している。<0082<
 しかし、これでも依然、アメリカに比べると、かなりの格差が残る。改正後の所得税の最高税率が日本で六〇%、アメリカで二八%では岡本綾子さんはなかなか日本に戻ってこないだろう。また、アメリカでは法人税率が三四%であることに加え、減価償却制度も日本よりかなり有利である。
 だから、完全に平準化が行なわれたとは言いがたいが、方向としては日米の格差も多少は縮小することになろう。この点では、それなりの評価ができると思う。」(中谷[1988:82-83])

◇中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 「改革すべきは何か」(鼎談),中谷・本間・八田[1988:97-214]

 八田「ヒト・カネ・モノとよく言いますけれども、それの移動の度合がいろいろ違うと思う。法人のように、非常に簡単に場所を移せる場合には、これはいくら番号があっても、本質的に同一の税率にしないといけないあるいは税率を非常に引き下げていかなければいけない。
 人間の場合には、動けるけれども、動く度合が法人ほど楽ではない。教育とか、言語とか、文化、親の面倒を見るとか、そういうさまざまな問題がある。もちろん、将来に関しても移動性が高まっていくわけですね。[…]しかしそこの段階に至るまでは、ある程度、所得税の累進度が外国よりも高いということは許容できるだろうと思う。」(中谷・本間・八田[1988:184]、八田の発言)

 八田「非常に荒っぽく言うと、アメリカの場合、連邦政府は所得税、州政府は小売売上税、市町村は固定資産税中心である。
 […]どうしてかいとうと、同一国内ですから、人の移動が実に簡単なわけである。そのため、ひとつの州だけ非常に累進的な税になってしまうと、カネ持ちはみんな逃げてしまう。それが理由で州単位では小売売上税中心になっている。
 まさに中谷さんがおっしゃっていた問題があるわけです。国全体で累進的な所得税をやるのは可能だ。しかし、一構成要素だけが非常に累進的なものをやったら、もうだめになってしまうという問題がある。人が移動しやすいと、それが問題になる。
 もう一つの問題は、大きな町の周りにいろいろなテミュニティーがあって、カネ持ちの地区があるとする。そういうところは公共サービスが非常にいいわけですね。学校の質もいいし、公園も立派だ。だれでもそこに住みたい。そこで累進的な所得税だったならば、貧しい人がたくさん入ってくる。だから市町村レベルでは所得税はやりにくい。アメリカの市町村税は、固定資産税が中心です。」(中谷・本間・八田[1988:184]、八田の発言)

 「本間[…]たとえば言語のバリアだとか、生活の快適さというか、たとえばシルバーコロンビア計画みたいに、みんなが集団で行くとかという形でやるのならともかく、一般の人のオポチュニティーはそんなに高くない。  中谷 ある意味で、一般の人のオポチュニティーが高くないから問題なので、国際的に移動する能力とか力がある人は常に有利なことを選択できるけれども、選択できない人が多いから問題がある。  本間 だから、それこそまさにオポチュニティーが高い人ほど得をするような状況が生まれてきて、実質的に税逃れができる。」(中谷・本間・八田[1988:197])
◆早房 長治 19890228 『税制こそ国家の背骨――歪んだ改革、民主国家の質を問う』,徳間書店,331p. ISBN-10: 4195538998 ISBN-13: 978-4195538999 1500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「今回の税制改革で所得税と法人税の最高税率は、それぞれ五〇パーセントと三七・五パーセントとなった。再改革では、二つの税とも、優遇措置を徹底的になくし、課税ベースを広げることによって、税率をさらに引き下げることが可能になる。
 所得税はさらに一〇パーセント引き下げで四〇パーセントにする。[…]土地課税の強化が実現した場合には三五パーセントと、英国の水準(四〇パーセントと二五パーセントより低く、米国(二八パーセントと一五パーセント)にもう一歩というところまで引き下げることもできる。」(早房[1989:261])

◆八田 達夫 19890916  『直接税改革――間接税導入は本当に必要か』 ,日本経済新聞社,262p. ISBN-10: 453208850X ISBN-13: 978-4532088507 1300 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第1部 直接税改革の構図
 第2章 直接税の歪みは正す価値があるか
 1 ライフサイクル説
 2 日本は平等か
 3 所得税以外による再分配
 「4 所得再分配と活力(一)――労働意欲
 流行に敏感な日本では、次のような外国での政治スローガンもいち早く輸入された。
 ▼高い累進度は労働意欲を減退させ、経済の活力を殺ぐ。[この文太字]
 所得の分配をすればパイのサイズを小さくするから、低所得の人も含めて皆が損をするというわけである。これについては、高所得者と低所得者を分けて論じよう。
 高所得者の勤労意欲
 高所得者に対する高い累進税率は高所得者の勤労意欲を殺ぐから、低い税率にした型が、かえって多く働き多額の税を納めることになり、社会全体のためによいのだという議論がある。
 これはレーガン、サッチャー流の保守主義の受け売りである。金持ちの勤労意欲に関する実証研究は日本にはないので、これに対して決定的なことは何もいえない。しかしながら、イギリスの上流階級の人間が怠け者であることがイギリスの沈滞の原因であった、とイギリス自身が指摘してきた(注1)。そういう国で、藁をもすがる思いで所得税率を減らし、勤労意欲をあおろうとするのは、効<0066<果は疑わしいとしても全く理解できないわけではない。アメリカでも一九八一年のレーガン減税に、景気拡大の効果があったことは認められるが、これが高額所得者の労働時間を増やし、そのために彼らの支払い税額が増加したという実証研究は、寡聞にして知らない。低所得者に減税すれば、もっと少額の減税でもより大きな景気拡大効果があったであろう。
 英米においてすらそうである。ましてや日本のように働き過ぎの社会で、累進度の緩和が勤労意欲をさらに増大させるとは考えられない。まず、大企業の重役の場合、勤務時間や勤務日数は自由になるものでもないから、当人の自由で労働時間を調整することができるのは、退職年齢についてであろう。しかし、多くの財界人が老害といわれながらも役職にしがみついているところをみると、高い税率が彼らの勤労意欲を阻害しているとはとても考えにくい。
 また、労働時間や努力を調整しうる小説家にしても歌手にしても、努力を重ねて仕事をする理由は収入だけではあるまい。仕事の内容や社会的評価が、その大きな報酬である場合が多いであろう。幸いにして日本は、そのような意味での健全な勤労意欲がある。そういう文化が衰退してしまった国ででてきた政策論、それも金持ちによって自分たちのためにねつ造された政策論を、日本で当てはめるのは無理であるように思われる。
 そもそも人が高い労働所得を得るのは、運と能力と努力とを合わせて初めて可能になる。もし人々が平等な能力と運とを持って生まれ、努力だけで人の貧富の差がつくのなら、税による所得の再分配は必要である。一方、運や生まれつきの能力の違いのみで所得の差がつくのならば、ある水準以上<0067<の所得には全額課税することによって、社会的な総生産を減らすことなく完全平等な世界を達成できる。実際は、その中間にあると考えられる。
 […]
高い労働所得を得ている人に対する高い所得税率は、このような運のよさや生まれつきの才能に対して課税するためのものである。税率が高いからといって、必ずしもそれらの人々が怠けものになってしまうわけではない。
 一方著しく高い資産所得は、運の良さや才能とともに、相続が深く結びついている。アメリカの大富豪の財産の約五〇%は、相続によって得たものである。[…]
 高い資産所得に対する高い税率は、運のよさと才能と、相続財産が生む資産所得とを課税するものである。
 […]  婦人・老人・若年の勤労意欲
 三十歳から定年までの男子については、賃金率が労働時間に対して非常にわすかな影響しかないことが知られている(注2)。したがって、このグループについては、税が勤労意欲に及ぼす影響は、無視できると考えられる。
 しかしながら、婦人・老人及び若年の労働者が、働くか働かないかを決める段階で、賃金率が非常に重要な役割を果たす(注3)。したがって彼らの手取り所得が高ければ、婦人は家にとどまらず稼<0069<ぎに出かけるようになり、老人は定年後も再就職先を見つけて働き続け、若年もぶらぶらせずに勤め始める。
 人々を働かせ、経済を活性化させるためには、このグループの人たちが直面する税率を低く抑えねばならない。しかし、このグループの人々の平均所得はせ、どちらかというと低い所得の人々である。一方、所得税の完全なフラット化や、大型間接税の導入は、最も所得の低い人たちの実質所得を引き下げる。このため、低所得者に対しては低い税率で課税することのできる累進所得税こそ、このグループの労働意欲を刺激し、活力ある経済を生み出すことができる。
 「高所得者によるり低い税率を、低所得者により高い税率を」という今回の税制改革の政府案は、経済の活性化のちょうど正反対をねらっていることになる。」(八田[1989:66-70])
 5 所得再分配と活力(二)――競争的環境
 6 まとめ

◆新藤 宗幸 19890629  『財政破綻と税制改革』 ,岩波書店,255p. ISBN-10: 4000034642 ISBN-13: 978-4000034647 1700 [amazon] ※ t07.

終章 財政破綻は回避されたのか
 「高齢化社会に対応するために税制改革=消費税の導入が必要だというのは短絡的である。問題は所得階層間、世代間の負担の公平を税制に実現することにおかれなくてはならない。そのために、キャピタルゲインの総合課税化が実現されなくてはならない。またさきにも指摘したように、消費税の徹底した改革が行なわれ、税務行政の「代行者」が租税で私腹を肥やすことを防止するとともに、課税最低限以下の人々に「戻し税」の導入がはかられなくてはならない。さらに、クロヨンの除去するためには、プライバシー保護制度の確立を前提として、納税者番号制が積極的に検討されてよい。」(新藤[1989:251])

◆石 弘光 19900426 『税制のリストラクチャリング』,東洋経済新報社,267p. ISBN-10: 4492620338 ISBN-13: 978-4492620335 1700 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 第12章 世界の税制改革と日本
 「一九八四年以後、多くの国でかなりの幅で最高税率の引下げが実現している。とりわけ脚光をあびているのがアメリカで、最高税率を三三%に引き下げ、かつ残りの一五%、二八%として、計三段階のフラット化を実行した[…]。この措置は一般国民の人気を集め、レーガン税制改革を推進させた大きな原動力となったといえよう。」(石[1990:225])

 13章 最近の国際財政学会から――2つの報告
 「国際協調といっても、各国の関与の仕方にはおのずから程度の差がある。税制改革の際、間接的にお互いの制度を近づけていく受動的なものから、直接的な交渉によって税制の具体的内容を同一の方向にもっていこうとする積極的なものまで、いくつものケースに分かれる。
 間接的な協調は、一九八〇年代以降の世界の税制改革といわれる現象に代表される。つまり税率のフラット化、課税ベースの拡大、間接税のウェイト増大などが、暗黙のうちに各国の税制改革の共通の方向とされてきた。[…]
 しかし今日、お互いの税制を間接的に模倣し合うという受け身の対応が積極的な姿勢に転じざるを<0240<えない状況となっているのは明らかである。その状況とは、冒頭に強調した世界経済のグローバル化であり、そして域内の自由化を目指した一九九二年のEC統合である。この場合、当事者が直接に交渉し合う租税強調、あるいは内容的にもっと強化された租税調和が必要となる。
 従来、この分野は一連の国際課税上の諸ルール(源泉地あるいは居住地原則、移転価格、タックス・ヘイブンなど)をもとに、租税条約で問題が処理されるものと考えられてきた。しかし基本手貴に相互の税制を所与としたままで、二国間の条約締結によって問題を処理することは、もはや不可能な事態にまで経済活動が変わってきている。」(石[1990:240-241])
 クノッセンは「EC統合は認めつつも、税制の国際協調という流れの中で、果たしてそれでよいの<0241<かと疑いを投げかけている。つまり租税強調は各国政府に安易な租税負担増の動機を与え、多く非効率的な政府の温床になりかねない。それより各国独自の立場で自らの税制構築を目指しもっと競争すべきだという主張である。
 […]日本の税制抜本改革でも目標の一つとして、国際性がうたわれている。しかし、その中身は法人税率が国際的にみて高水準だとか、現行間接税が貿易摩擦を生んでいるとかの指摘にとどまっている。
 いま、世界各国は課税の中立性確保をスローガンに、国際協調を目指して既存の税制の枠組みを基本的に改めようとしている。これに対し、現在の日本ではこの種の問題意識が非常に希薄である。日本だけが孤立を保ち、世界的潮流の外に存在し続けられるとは思えない。税制の国際化に関し、われわれはもっと関心を払わねばならぬというのが、学会に出席しての著者の強い印象であった。」(石[1990:241-242])

 「オランダの財政学者クノッセンは[…]税制の調和をカルテルに類似した概念と規定し[…]ている。[…]
 クノッセンは、このカルテル志向の本質から、税制の調和がいたずらに関係各国で高い税負担を維持させ大きな政府を助長しがちであるという性質を指摘している。そして政府内部での効率性、さらにはその規模抑制のためにEC各国でもっと税制上の競合(tax competition)が必要なことを主張している。」(石[1990:249])

◆貝塚 啓明・野口 悠紀雄・本間 正明・石 弘光・宮島 洋 編 19901020 『税制改革の潮流』,有斐閣,324p. ISBN-10: 4641053529 ISBN-13: 978-4641053526 2060 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◇堀場 勇夫(ほりば・いさお) 19901020 「経済国際化の中の法人税改革」,貝塚他編[1990:155-178]

 「世界的規模で活動している企業は、各国の租税負担の格差に配慮しつつその行動を決定する。すなわち、各国の法人税制を勘案しつつ、世界的規模で資金を調達し、製造し、販売し、利益の分配を選択している。法人税に対するこのような企業の対応は、主として二つあげられる。すなわち、法人税に対する裁定行動と、企業の立地国選択に関する行動である。
 第一の法人税に対する裁定行動とは、活動している国々によって法人税制に大きな格差が生じた場合、トランスファー・ブライシングやタックス・ヘイブンなどを利用することで、その課税所得を法人税負担の低い国に配分させる行動をいう。
 第二の立地国選択に関する行動とは、各国の法人税格差が特に大きくかつ継続する可能性が<0167<ある場合、また裁定行動では限界がある場合、工場、支店、本店の立地国についての選択をする行動を言う。この企業行動は、各国の法人税を論ずることきに、産業の空洞化の問題として、特に最近問題となっている点である。
 […]各国の税務当局は一種の競争市場原理の中で税制を考えなければならなくなるであろう。いわゆる、国際的なタックス・コンペティション(租税の競合)の発生である。」(堀場[1990:167-168])
 「各国が自由に国際的なタックス・テンペティションをする制度の下では、経済力の強いアメリカのような国がちょうど寡占理論におけるプライス・リーダーのように行動する可能性がある。その結果、タックス・テンペティションに任せた場合に、カナダの例にみられるように他の諸<0171<国はその税制に追随せざるをえないという問題が生じ、世界的な規模での各国の租税制度の統合をいかにすべきかという問題が新たに提起される。
 この統合問題は、従来EC統合と税制のハーモニゼーションとして取り扱われてきた問題であったが、今回のアメリカの税制改革はこの問題を世界的規模で考えなければならない問題であることを明確にした。第4節では、ECの問題を通じてこの問題を考えてみる。」(堀場[1990:172])
 「統合について考えるとき、経済学でのカルテル論の援用によって、イーコーライゼーションによる統合が必ずしも効率性の観点から好ましくないことが主張された。」(堀場[1990:172])
 4 統合の三つの考え方
 「税制のハーモニゼーションの問題については、わが国においてはまだ研究が始まったばかりであり、まとまった文献はない。わが国の文献としては、石教授の次の著作および本シリーズの第4巻が参考となろう。[…]
 石弘光『税制のリストラクチャリング』、東洋経済新報社、一九九〇年。」(堀場[1990:178])

◆貝塚 啓明・野口 悠紀雄・本間 正明・石 弘光・宮島 洋 編 199011 『グローバル化と財政』,有斐閣,シリーズ現代財政4,348p. ISBN-10: 4641053545 ISBN-13: 978-4641053540 [amazon][amazon] ※ t07.

◆和田 八束 19901120 『日本の税制――総点検と新時代への選択 増補版』,有斐閣,354p. ISBN-10: 4641181497 ISBN-13: 978-4641181496 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆富岡 幸雄 19920319  『背信の税制――サラリーマン・生活者いじめの構造』 ,講談社,382p. ISBN-10: 406205728X ISBN-13: 978-4062057288 1835 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆藤岡 純一 19920520 『現代の税制改革――世界的展開とスウェーデン・アメリカ』,法律文化社,218p. ISBN-10: 4589016621 ISBN-13: 978-4589016621 2575 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆小倉 武一 19920702 『農政・税制・書生――私の履歴書』,日本経済新聞社,206p. ISBN-10: 453216060X ISBN-13: 978-4532160609 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆水野 勝 19930601 『主税局長の千三百日――税制抜本改革への歩み』,大蔵財務協会,367p. ISBN-10: 4754740009 ISBN-13: 978-4754740009 1325 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆臨時行政改革推進審議会 199310 最終答申

 「租税負担よりは受益と負担の関係がより明確な社会保障負担に重点を置くべきである」

◆199311 税制調査会「抜本改革」の答申

 所得税、住民税について
 ・最高税率を現行の65%(住民税含む)から50%程度に下げる。
 ・給与所得控除を引き上げる
 ・消費税増税に応じ課税最低限引き上げを検討する

◆高橋 利雄 19940130  『日米の税制改革と租税論の展開』 ,勁草書房,日本大学法学部叢書,229p. ISBN-10: 4326500778 ISBN-13: 978-4326500772 4500+ [amazon][kinokuniya] ※

第1章 税制改革の基本理念
 「我が国の高齢化社会をかりに財政的にささえることを前提とするなら、租税負担を増強するか社会保険料を大きく引き上げる方法しか存在しない。現在のような不公平税制下では、中堅サラリーマン層に課税が集中しているので、直接税の増税は困難である。したがって、世界の税制改革の動向を見てもなんらかの課税ベースの広い間接税を導入しており、日本の将来を考えるとき、消費型付加価値税を無視して高齢化社会の財源を考えることは、あまりにも無責任である。
 […]今後の政治課題の中で税制改革は最重要な地位を占め続けるべきものである。とくに経済が国際化し、ボーダーレス・エコノミーの時代になってきている現在、一国だけが突出した税制を長期にわかって維持することは事実上困難になるからである。今後の税制改革にあたって留意すべき点は、各種の租税特別措置をさらに改廃し、課税ベースを拡大すること。その結果、税率をさらに低めること。他方、課税ベースの広い間接税とくに消費型の付加価値税を定着させること。またキャピタル・ゲイン課税を強化し貧富の差拡大を抑制すること等が少なくとも必要な改革である。」(高橋[1994:3]、下線部は傍点)

 「レーガン税制改革は、政治的奇跡と呼ばれるほど大きな成功をもたらした改革であった。」(高橋[1994:111]、下線部は傍点)

◆野口 悠紀雄 編 19940516 『税制改革の新設計』,日本経済新聞社,シリーズ現代経済研究8,244p. ISBN-10: 453213062X ISBN-13: 978-4532130626 3800 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆富岡 幸雄 19940901  『税制再改革の基本構想――「税の公正化」へのチャレンジ』 ,ぎょうせい,197p. ISBN-10: 4324042098 ISBN-13: 978-4324042090 2548 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆野口 悠紀雄 19941017 『税制改革のビジョン――消費税増税路線を見直す』,日本経済新聞社,252p. ISBN-10: 4532143268 ISBN-13: 978-4532143268 [amazon] ※ t07.

第1章 なぜ税制改革か
 「一九八〇年代の税制改革の背景としていま一つ指摘されるのは、累進課税に対する批判的な見解の強まりである。
 所得税の累進性の問題として、つぎの諸点が指摘された。第一は、労働意欲に与える影響である。累進度があまりに高いと、働くより余暇を楽しむほうが合理的になり、労働意欲が低下する。こうした影響は、所得の高い人々、つまり生産性の高い人々に対してより強く働くため、社会は大きな損失をこうむる。第二は、所得分散との関連である。累進度が高いと、所得を世帯員間で分散することが有利になり、水平的公平が侵される。第三の理由としてあげられるのは、いかに形式的に累進度が高くとも(あるいは、累進度が高いために)、節税や脱税が増加し、実質的な累進性が確保されないということである。さらに、利子所得などについて源泉徴収が行われる場合、所得税<0024<の税率が単一税率に近いと、単一税率の源泉分離課題だけで課税が完結することも、付加的な理由としてあげられる。
 こうした背景のもとで、アメリカでは、それまで最高税率が五〇%であったものが、一九八六年の税制改革において、税率がに一五、二八%の二段階に簡素化された。また、イギリスでは、形式的には累進税率をとっているものの、基本税率(二五%)で納税者の九五%をカバーするという事実上の単一税率となった。従来、所得税の一つの大きな機能は、所得再分配にあるとされ、そのため、高い累進税率が設定されていた。アメリカかイギリスにみられた累進構造の緩和は、所得税の大きな変化であるといってもよい。」(野口[1994:24-25])

◆安部 忠 19941125  『所得税廃止論――税制改革の読み方』 ,光文社,196p. ISBN-10: 4334012922 ISBN-13: 978-4334012922 [amazon] ※ t07.

◆和田 八束・星野 泉・鵜川 多加志・青木 宗明 編 19941210  『現代の財政と税制――21世紀への税財政構想』 ,文眞堂,237p. ISBN-10: 4830941766 ISBN-13: 978-4830941764 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

石 弘光 19941220  『税金の論理』 ,講談社現代新書,220p. ISBN-10: 4061492292 ISBN-13: 978-4061492295 650 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「今日、所得税の累進税率はそのメリットよりもデメリットが強調されている。デメリットとして、次の三点が特に重要である。
 まず第一に、法定上シャープな累進税率の仕組みを作っても、その通り実行することはほとんど不可能といえる。[…]<0063<
 第二に、累進税率がシャープなほど経済活性化を阻害する。税引き後収益率の激減から貯蓄意欲は阻害されるだろうし、労働意欲にも大きなダメージが生じてくる。かりに限界税率を七五%とすると、一万円を残業で稼いでもその付加的な所得のうち七五〇〇円は税金である。おそらく多くの人々は労働する意欲を失うであろう。この傾向が社会全体に拡大すると、一国の経済成長率の鈍化は避けられない。
 第三に、最高税率を高めるほど脱税や租税回避を誘うことになる。[…]
 税率のフラット化は、一九八〇年代にはいりアメリカのレーガン税制改革を景気に世界的な傾向となった。アメリカでは[…]一時、一五、二八、三一%の三段階にまで削減された。イギ<0064<リスでも[…]二〇、二五、四〇%の三つの税率刻みになっている。日本の所得税も一九八九年以降、五段階の累進課税にフラット化されたが、これは世界的な税制改革の流れにそって改められたものである。」(石[1994:63-64])

◆八田 達夫 19941222  『消費税はやはりいらない』 ,東洋経済新報社,243p. ISBN-10: 4492610308 ISBN-13: 978-4492610305 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆加藤 寛・横山 彰 19941225 『税制と税政――改革かくあるべし』 ,読売新聞社,253p. ISBN-10: 4643941006 ISBN-13: 978-4643941005 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「累進的所得課税に偏りすぎれば、必ず不満や脱税が増大する。いわば能力に応じて課税する応能主義課税方式は、人々の能力発揮を抑制させるきらいがある。工業化の時代、高度成長を持続させることができた間は、応能主義でよかったのだが、成熟社会に変わったいま、増大した社会資産を平等に享受する以上、負担はそれなりに平等になされねばならない。いわば応益主義課税方式を導入することは必然的な流れである。」([3])

◆牛嶋 正 19950415  『分権時代の新・税制改革――進めよう!平成のシャウプ改革』 ,ぎょうせい,183p. ISBN-10: 432404516X ISBN-13: 978-4324045169 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第3章 所得税のゆがみ
「S字型の累進構造についていえることは、図3−3のS字型曲線の太線の部分に属する納税者は、急な累進度のため税負担の累増感を抱いていることは明らかである。そのため、この階層に属する納税者が労働インセンティヴを鈍らせ<0086<ているのではないかという懸念がある。このことから、S字型の累進構造は公平の原則に適合するとしても、中立の原則に対しては著しく適応性を欠くことにもなりかねないのである。」(牛嶋[2005:86-87])

 補論 所得税と労働インセンティヴ
 「所得税が納税者たる勤労者の労働インセンティヴにどのような影響を与えるかについては、これまでも多くの分析がおこなわれてきたが、必ずしも明確な結論が得られているわけではない。その理由は、課税が納税者に対して所得効果(income effect)と代替効果(substitution effect)の反対方向の二つの効果をもたらすからであって、前者が生活水準の維持を図って労働時間の延長を促すのに対して、後者は労働時間より余暇を納税者に選ばせるように作用するのである。そして、個々の納税者においてこれら二つの効果のいずれか強く作用するかについて、多くの要因がそれに加わることになるからである。」 (牛嶋[2005:94])
とになるからである。」(牛嶋[2005:94])
 「今回の税制改革のように、これら多くの要因のなかから税負担の累増感だけを取り出し、その緩和を図ったとしても中堅所得者の労働インセンティブを阻害している要因を取り除くことにはならないだろう。むしろ、労働インセンティブへの影響からすれば、税負担の累増感より、税の公平、とりわけ、水平的公平が確保されているか否かの方が重要な要因ともみなされる。」(牛嶋[2005:95])

◆橋本 真吾 199505 「個人の所得行動の計量分析――税率の引き下げの高額所得者に対する影響について」,『フィナンシャル・レビュー』1995-5(大蔵省財政金融研究所)
 http://www.mof.go.jp/f-review/r35/r_35_119_134.pdf

 「本稿は、税制改革の影響を事後的、実証的に分析することを試みたものである。税制改革の政治的、社会的重要性は言うまでもないが、その経済的影響の分析は、データ収集が困難であることや、その他の多数の要因が同時に影響をもたらしていることから、総合的な分析をすることは難しく、分析範囲を限定した研究が行われているところである。本稿は、そこに新たな手法を試みて、なんらかの示唆が得られる研究を行うための実験を行おう、との問題意識から作成された。具体的には、個人(高額所得者)の所得行動の変化を分析することにより、所得税減税の誘因効果を計測し、所得税の累進構造のうち、高額所得者に対する税率が所得行動を阻害しているか否かの評価を行った。
 分析する際に、以下の手法を用いた。まず、個人の所得データを高額所得額(所得税額)の公示制度に求めた。これは、国税庁(税務署)が所得税法に基づき高額(年によって異なる)所得(所得税納税)者の住所、氏名、金額を公示する制度である。この公表データから、25年程度に渡り継続して掲載されている人物を探し、そのデータを集積した。このデータの特徴は、個人の時系列のデータで、かつ、その額については、その他のアンケート形式のデータソースよりも信憑性の高いものであると考えられることである。ただし、データは高額所得者のみであり、かつ所得額ないし所得税額のみである。
 以上のデータを基に、まず、ヘドニックアプローチを応用し、個人の所得形態を分類することを試みた。すなわち、個人の所得行動のうち、雇用者所得と事業所得のいずれかに有意に反応しているものを抽出した。次に、所得と可処分所得(所得所得税額)についてその構造変化が税制改革以前と以後とで変化しているか否かを、個人のデータとパネルデータにおいて分析し、それぞれの変化から所得効果と代替効果を類推することとした。
 その結果、累進税制の緩和の所得行動に対する誘因効果を観察することはできなかった。すなわち、減税によって所得が増加するような行動の変化は見られなかった。これは、個人のデータで行った場合も、パネルデータで行った場合もほぼ同様の結果であった。特に雇用者所得に有意に反応している者については、可処分所得を一定にするよう行動し、税制改革によって減税になった部分は所得を減少させているようにさえ見受けられた。
 このように、税制改革以前と以後とで所得を増加させる方向に有意な変化を見ることはできなかった。この限りにおいては所得税の累進カーブが強く、所得行動を阻害している<0001<という見解を支持することはできない。したがって、この分析は累進カーブの緩和、特に最高税率の引き下げについては否定的な結果を示唆している。しかしながら、今回の分析は都心3区における高額所得(納税)者に限られた分析であり、データ数も限られていることから、未だ類推の域を出るものではない。また、累進カーブ全体の評価にあたっては高額所得者よりも中堅層に対するの影響をより重視するべきであり、税制改革全体を直接的に評価するものではない。ただ、税負担の問題を考えるにあたって、従前の経済活動を前提とする静的な分析に加え、このような動的な分析を行うことの意義は大きいと思われ、今後更に分析を深めてみたいと考えている。」([1-2]、要約全文)

◆谷山 治雄 19950625  『増税の論理』 ,新日本出版社,206p. ISBN-10: 4406022619 ISBN-13: 978-4406022613 1365 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆八田 達夫・八代 尚宏 編 19951025  『「弱者」保護政策の経済分析』 ,日本経済新聞社,シリーズ現代経済研究10,252p. ISBN-10: 4532131030 ISBN-13: 978-4532131036 [amazon][kinokuniya] ※ e05. t07.

◆金子 宏 編 19960320  『所得税の理論と課題』 ,税務経理協会,21世紀を支える税制の論理2,346p. ISBN-10: 4419023929 ISBN-13: 978-4419023928 3500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆今井 敬(いまい・たかし 経団連副会長) 199608 「経済活力維持のために国民負担率の抑制を」
 http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/jou9608.html

  「世界に類を見ない高齢社会を迎えるわが国では、国民負担率(国民所得に占める租税負担と社会保障負担合計の比率)の上昇が、国民一人ひとりにとっても企業にとっても大変な重荷となってくる。今後も現状の社会保障の給付水準を前提とすれば、今の若い世代が高齢者になる時には、国民負担率は50%を遥かに超えるものと推定されている。社会的コスト負担の増大によって、世代間の不公平が拡大して個々人が働く意欲をなくし、企業が国際競争力を喪失すると、経済の活力が失われる上に国の財政も破綻してしまう。労働力人口と貯蓄率の減少に伴う潜在成長率の低下が懸念される中で、これを克服していくためには、行政改革を行なうことは勿論であるが、医療をはじめとする国民への過剰なサービスを見直すことによって、財政全体の歳出を削減することが何よりもまず必要である。
  その際、国民の間で十分なコンセンサスを得ておかなければならない基本理念は「自己責任に基づく受益者負担の貫徹」である。この考えに立つと、受益をナショナル・ミニマムのレベルで享受できれば、これを超える内容をさらに望むか否かは個人の自由な選択に委ねられ、より高い水準を望む人は自助努力で負担を賄うということになる。
  また高齢者は全て弱者という考え方にとらわれることなく、資産や所得の豊かな高齢者は、後世代に極力迷惑をかけないよう費用を応分に負担することも必要だろう。現役の世代は自分たちにとって暮らし易い未来を作るためにも、また子や孫の世代に必要以上に重い負担をかけないためにも、創造性を大いに発揮して新たな産業の創出と経済規模の拡大に努力すべきである。
 政府も国民も、現状の痛みを恐れて問題を将来に先送りするのではなく、21世紀を見据えて効率的で、世代間でも公平な税制・社会保障制度の改革を推し進めることこそ、安定的な経済成長と、活力ある高齢社会の実現を両立させる方途であると確信する。」

◆税制調査会 19970124 「これからの税制を考える――経済社会の構造変化に臨んで」
国際的整合性
 経済社会のグローバル化、ボーダーレス化が一層進展する21世紀には、公平・中立・簡素の基本的考え方を反映した税制が、同時に国際的な整合性を保っているのかについても検討する必要があります。金融取引のように、ボーダーレス化が特に進んでいる分野では、税制の中立性の確保が国際的な整合性という観点からも重要であると考えられます。
 各国の税制はその国の歴史や文化、経済や社会の仕組みを反映して構築されてきたものです。国際的な整合性を保つということはむろん各国間の横並びを意味するわけではありません。租税負担率の水準や課税バランスも念頭におく必要があります。しかし、各税目の仕組みや負担水準が主要国間であまりにもかけ離れたものになっているとすれば、国際的な競争力、経済の活力といった観点から問題が生ずる可能性があります。」

 「(参考6)税のダンピング  税制の国際的な整合性の追求が、OECDやG7でも問題視されている国家間の税の引下げ競争、つまり「税のダンピング」に結びついてはならないことは言うまでもありません。この点について、リヨン・サミットの経済コミニュケには次のように記述されています。
 「16.最後に、グローバル化は、租税政策の分野で新たな課題を生み出している。
 金融その他の地理的に移動可能な活動の誘致を目的とする税制に見られるような税に関する国家間の有害な競争は、貿易と投資を歪曲する危険があり、各国の課税基盤の浸食につながり得る。我々は、OECDに対し、各国が、個別にまた共同で、これらの慣行や税に関する様々な形態の有害な競争の範囲を制限し得るような多国間のアプローチの確立を目指し、この分野における作業を精力的に推進するよう強く要請する。我々は、1998年までに報告書を作成することになっているOECDによる作業の進展を注意深く見守っていく。」
 「(参考10)国際的な資金の逃避
 ドイツにおいて、1989年に利子に対する源泉徴収制度が導入された際に、これを嫌った資金の他国への流出や外国からドイツへの投資回避が引き起こされました。そのため、導入後半年で同制度が廃止されたという経緯があります。しかし、その後、1993年から利子課税軽減措置と併せて利子源泉徴収制度が再び導入されています。近年においても、租税回避のために利子源泉徴収を行っていないルクセンブルグに資金が逃避する例があり、ドイツの課税当局はその捕捉に取り組んでいると伝えられています。
 こうしたことを背景に、EU内では共通利子源泉税の導入が真剣に議論されてきています。また、OECDにおいても、クロスボーダーの利子に対する適切な課税を確保することの重要性が確認され、このために、各国は、利子支払者による源泉徴収か、情報交換の強化を前提とした総合課税かのいずれかにより対応すべきものとされています。」

◆税制調査会 199712 「平成10年度の税制改正に関する答申」
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/zeicho1.html
 三「引き続き検討していく事項」3「国際的な税の引下げ競争」
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/zeicho5.html

 「3 国際的な税の引下げ競争
 経済のグローバル化、国際的な資本移動の自由化等を背景に、「税のダンピング」、 すなわち外国からの資本を誘致するために優遇税制等を導入する政策を意識的に採用す る国が目立ってきています。金融・サービスのようないわゆる「足の速い」経済活動に ついて、このような税の引下げ競争が行き過ぎると、[1]労働、消費といった可動性の低 い経済活動に対する相対的重課につながり、税体系全体の公平性・中立性が損なわれる、 [2]各国課税ベースが浸食される、[3]貿易・資本取引が歪曲される、という問題が生じる おそれがあります。
 こうした「税のダンピング」には、各国の税当局が国際的に協調して行動することが 不可欠と考えます。昨年来OECDにおいて、有害な税の競争を牽制するため、ガイド ラインを策定し、それに該当するような優遇税制の導入制限・縮減等が検討されており、 来年春に報告書がとりまとめられることになっています。
 このように、税について国際的協調を図っていくことの重要性はますます高まりつつ あります。当調査会としては、今後も、政府がこうした検討に積極的に参加していくこ とを期待します。」

◆加藤 寛 監修 19970301  『これからの税制を考える――経済社会の構造変化に臨んで』 ,大蔵財務協会,94p. ISBN-10: 4754704010 ISBN-13: 978-4754704018 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「(参考7)課税のメリット・デメリット
 所得・消費・資産等に対する課税のメリット・デメリットは次のとおりです。
 (メリットは◇、デメリットは◆で示します。
 […]  ◆累進構造による負担累増感が勤労意欲や事業意欲を阻害するおそれがあります。
 ◆所得の正確な補足は必ずしも容易ではなく、給与所得、事業所得などの所得の種類により課税ベースの把握に差が生ずるおそれがあります。
 ◆法人所得税においては[…]」([44])

◆石川 直正 19970424  『日本税制改革への提言――オーストラリアとの比較論』 ,まつ出版,105p. ISBN-10: 4806405515 ISBN-13: 978-4806405511 3000 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆和田 八束 19970530 『税制改革の理論と現実』,世界書院,269p. ISBN-10: 4792770521 ISBN-13: 978-4792770525 3990 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆吉田 和男 19980316  『財政改革が日本を救う――高負担社会からの脱却』 ,日本経済新聞社,253p. ISBN-10: 4532146488 ISBN-13: 978-4532146481 1890 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆橘木 俊詔 19981120  『日本の経済格差――所得と資産から考える』 ,岩波新書,212p. ISBN-10: 400430590X ISBN-13: 978-4004305903 [amazon][kinokuniya] ※ e03. e05. t07.

第5章 不平等は拡大していくのか―制度改革
 4効率性と公平性(平等性)
  税と社会保障の効果
 「高い税率や充実した社会保障制度は人の勤労意欲や貯蓄意欲にマイナスの効果が本当にあるのか、という疑問を呈する経済学者もいる。逆に、データを用いて実証した結果、マイナス効果を支持する経済学者もいる。福祉国家は経済効率の達成に阻害要因となっていないと主張する経済学者もいれば、逆に阻害要因になっていると主張する経済学者もいるのである。
 私自身は、少なくともわが国に関して、税や社会保障が日本人の労働意欲や貯蓄意欲にマイナス効果があると主張する根拠は乏しい、と判断している。高い税率や社会保険料が、日本人の勤労意欲や貯蓄行動を阻害したことを証明する研究例はほとんどない、といっても過言ではない。このような阻害効果を、キャンペーンやプロバガンダとして主張する例は多いが、科学的根拠に欠けているのである。加えれば、第1章で示したように、日本人は政府から多額の税<0184<を徴収されておらず、アメリカとともに先進諸国の中で最低の租税負担率である。
 さらに福祉国家と経済効率の関連については、両者は関係がないと考えている。すなわち、福祉国家であっても経済効率の良い国もあれば、福祉国家でなくとも経済効率の悪い国はある。経済効率をけっていずる要因として、福祉国家かどうかはそれほど大きな意味を持たない。経済効率の悪さは他の要因が原因となるケースが多い。むしろ福祉国家が悪者扱いされる可能性を指摘したい。
 福祉国家でないわが国が、勤労意欲や貯蓄への効果を恐れること自体が、むしろ本末転倒で開く。不可思議な議論が横行しているともいえる。日本経済の場合、効率性と公平性のトレード・オフ関係は小さいと理解しているので、たとえ現在よりも税や社会保障の負担射が増加しても、さほど効率性を心配する必要がないというのが私の判断である。
 こう理解する根拠を積極的に示すためには、賃金の変化によって労働供給がどれほど変化するかといった労働供給の賃金弾力性や、利子率の変化多が貯蓄にに与える効果といった貯蓄の利子弾力性の議論を紹介する必要がある。わが国では、両弾力性の値はそれほど大きくない。既婚女子や高齢者の一部にやや高い労働供給弾力性が計測されているが、おおむね諸先進国によりはるかに低い値である。これらの意味するところは、たとえ税率の変更があっても、日本人は労<0185<働供給や貯蓄を変更させない、ということである。
 これらはやや専門的な議論なので、ここでは象徴的な例や具体的な事実を示すことによって理解の根拠に代えたい。第一に、プロ野球・オリックスのイチロー選手のような高所得者が、税金が高いからといって野球への取り組み姿勢を変えることはない。多くの日本人が税や社会保障負担によって労働供給を変更することはないのである。第二に、労働時間を決めるのは労働者ではなく主として企業である。むしろ法人税や企業の社会保障負担が企業行動に与える効果に注目した方がよい。第三に、わが国の家計貯蓄率の高いことは、税制と無関係のところで決まっているので、税制の変更がたとえあったとしても貯蓄率におよぼす影響は小さい。
 もう一つ忘れてならないことは、税や社会保障拠出の公的負担がもし削減されれば、民間負担の額が増加せざるをえないということである。」(橘木[1998:184-186])

◆谷山 治雄 19981205  『ものがたり税制改革』 ,新日本出版社,230p. ISBN-10: 4406026258 ISBN-13: 978-4406026253 1785 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆坂本 忠次・和田 八束・伊東 弘文・神野 直彦 編 19990620 『分権時代の福祉財政』,敬文堂,324p. ISBN-10: 476700067X ISBN-13: 978-4767000671 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

和田 八束 19990620 「21世紀の福祉と財政」,坂本・和田・伊東・神野編[1999:1-17]

 「日本の租税負担率は、なお低い水準にあるとはいえ、社会保障負担の比率が高く、増加の度合いも租税よりも大きい。こうした現象は、社会保障負担を”租税”ととらえることでも説明できるが、同時に「租税国家」の崩壊としてもとらえることができよう。
 中央集中型の福祉財政が、新しい分権型の福祉社会に変る時、これまでの「租税国家」も変質せざるをえない。
 租税のあり方としては、19世紀の「中立」から、20世紀においては「所得再分配」が基本理念とされていた。21世紀の租税理念としては、「参加型」ともいえるものに移行していくのではなかろうか。とくに、中心となるべき地方税においては、行政サービスとの対応、住民による参加と決定、コスト意識の重視という要素が基本となるのであり、それは住民自らの決定する「福祉サービスの価格」としてとらえられるであろう。それは、従来の「応益負担」に似ているともいえるが、より高度化した、新しい租税理念としてとらえるべきである。
 具体的な税の形として考えると、多くの税が「目的税」になるといってよかろう。地方税としては、自主課税が原則であり、地方財政需要に対応した税種と税収を決定することになり、その賛否は住民自治によって行われる。こうした地方自治の原則に立つかぎり、税は一般税ではなく、目的と限界を限定し、課税の範囲も特定した形の税にならざるをえてい。さきの地方分権推進委員会の「勧告」にも示されていた「法定外目的税」が多用化[ママ]されるといってもさしつかえない。
 21世紀においては、20世紀的な意味合いでの「租税国家」は、しだいに消滅していくことになるであろう。」(和田[1999:15])

◆加藤 寛・渡部 昇一 19990730  『対論「所得税一律革命」――領収書も、税務署も、脱税もなくなる』 ,光文社,254p. ISBN-10: 4334972292 ISBN-13: 978-4334972295 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

結章 この税制革命で日本は世界が仰ぎみる国になる
 世界の金持ちが日本に集まる 渡部
 「カナダもオーストラリアも相続税をゼロにしました。そのため、この二国にはユダヤ系も含む欧米の金持ちや香港から脱出した華人財閥などが多数移住し、カナダやオーストラリアの国力に貢献しています。税金を下げる方向にいく国々には世界的な大金持ち一族が移り住んで国籍を取得しようとするのです。
 私たちの日本は残念なことにこうした世界的な税制の流れに背を向けて、国民に新たなる負担を求めるような政策を取りつづけてきました。その結果、国運は衰退の方向に向かい、世界的には対アングロサクソンで日本は敗者の側に立ってしまったのです。」([244])

◆吉田 和男 20000413  『21世紀日本のための税制改正――所得税の改革』 ,大蔵財務協会,252p. ISBN-10: 4754706935 ISBN-13: 978-4754706937 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「市場で分配された所得の補正によって「公平性」を追求しようとして、限界税率を高めて行けば、労働供給量が減少して生産が減少する。この程度は弾性値によって代わる[ママ]ことになる。
 […]
 労働供給が弾力的なときには、所得税は歪みを作ることになり、高い限界税率は望ましいことではなくなる。<0117<
 日本の特徴であるS字型の平均税率曲線の与える効果を考えると、低所得者の限界税率は低いために労働供給阻害効果は小さいが、ある水準から急に大きくなる。すなわち、ある水準を超えればもうそれ以上努力することは無意味になる。すなわち、ある程度の努力に対して保護が強いが、中所得層をこえるとそれ以上の努力は課税によって大きく阻害されることになる。これは中低所得者層の保護を行ってきた結果である。しかしながら、先に述べたような労働供給に与える効果を考慮した場合に適切な課税のルールに最も反したものになる。
 結局、戦後の日本が中流・中産階級化していくわけであるが、これを税制が促進することになる。いわゆる金持ちが消えて行くことになる[…]<0118<現実に総サラリーマン化する中で増大する中流・中産階級を保護すると共に、税制は人々に一定水準以上の努力、特に次に述べるリスクを伴う努力をさせない方向で作用することになる。これは日本型経営システムを維持するのには大きな作用を引き起こしたのは間違いのないところであろう。異常な努力をしてベンチャー・ビジネスを始めても失敗すれば借金だけで、成功すれば税金でもって行かれる社会では会社を飛び出そうとする者も少なくなる。雇用の安定というのも人手不足が続いた状況の下では、企業の側の努力と言うよりも労働者の選好の要因が重要であった。好景気の時に労働者が企業を飛び出しておれば日本型経営システムは維持できなくなる。しかしながら、これが今日の労働流動性を阻害して大きな問題を引き起こすことになっている。」(吉田[2000:117-119])

◆牛嶋 正 20000511  『これからの税制 目的税――新しい役割』 ,東洋経済新報社,223p. ISBN-10: 4492610405 ISBN-13: 978-4492610404 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆税制調査会 200007(平成12年7月)「わが国税制の現状と課題――21世紀に向けた国民の参加と選択」
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/zeichof/zeicho.html

 租税は「社会共通の費用を賄うための会費」ということができます。
(注)租税の最も基本的な機能は以上のような公的サービスの財源調達機能ですが、経済社会との関連では、税制は所得再分配機能を担っているほか、経済自動安定化機能も有しています。

 垂直的公平とは、負担能力の大きい人にはより大きな負担をしてもらうということです。これは、個人所得課税などの累進構造などによる再分配機能をどの程度発揮させるかということに関わってきます。かつて、現在より所得等の格差の大きかった時代には、垂直的公平を個人所得課税などの強い累進性により確保することが適当であるとの考え方が支配的でした。近年では、国民全体の所得水準の上昇と平準化を背景に、累進性を緩和させる方向で税制の見直しが行われてきました。今後については、所得等の格差がどのように変化していくか、それに対する国民の受け止め方はどうかについて、注視していく必要があります。

 諸外国においても1970年代末から80年代にかけて、石油危機に伴うインフレや経済成長の鈍化の中で政府部門の拡大及び所得課税負担の増加が生じていたことなどを背景に、税制の大幅な改正が行われていました。主要国では、イギリスのサッチャー首相による税制改革、アメリカのレーガン大統領による税制改革に見られるように、所得課税の重税感や高い限界税率による活力の低下などの弊害を取り除く観点から、課税ベースの拡大を図るとともに、個人所得課税の税率引下げ・累進緩和や法人課税の税率引下げが行われていました。ヨーロッパ諸国では、所得課税の負担軽減を図るための財源確保や財政赤字の削減のため、付加価値税の税率引上げ等が行われていました。
(注)その後の90年代には、アメリカにおいて、垂直的公平を回復させるという観点などから個人所得課税の税率の刻み数の増加、最高税率の引上げが行われるという動きもありました。

2)  近年の景気対策と恒久的な減税等
 わが国経済は、アジア通貨危機の影響や金融機関の相次ぐ破綻などにより、平成9年秋以降極めて厳しい状況に陥りました。平成9年度の実質GDP成長率はマイナス0.1%と昭和49年度以来のマイナスを記録し、翌平成10年度もマイナス1.9%となるなど、深刻な状況が続きました。このため、景気回復を図る観点から、財政・金融などあらゆる政策手段を駆使して対応することが求められ、税制面でも景気に最大限配慮することが求められました。平成10年(度)には個人所得課税について二度にわたる特別減税が実施されました。平成11年度税制改正においては、1年限りの減税では景気対策としての効果が不十分ではないかとの指摘をも踏まえ、景気に最大限配慮して、個人所得課税及び法人課税について6兆円を相当程度上回る恒久的な減税をはじめ、住宅ローン減税などを含む過去最大規模の減税が実施され、現在、これが継続されています。この恒久的な減税の一環として、個人所得課税の最高税率の引下げ、法人課税の実効税率の国際水準並みへの引下げが実現しました。恒久的な減税は、このように将来の抜本的改革の方向を一部先取りした内容を含んでいますが、景気への配慮から負担軽減となる措置のみを実施したものでした。個人所得課税や法人課税の課税ベースなどの見直しは今後の検討課題として残されました。

参考)「公平」に対する様々な考え方
 そもそも何が「公平」で社会的に望ましいかについても、アリストテレスから、ベンサム、ロールズ、そしてセンなど、有史以来その時々の社会状況とそれを捉える視点によって様々な考え方があります。
 アリストテレスは、人々の他人に対する羨望に関して、「正当な羨望(義憤)」と「不当な羨望(嫉妬)」の2種類があると考えていたと言われています(de la Mora (1987))。「不当な羨望(嫉妬)」とは、例えば、一生懸命に働かないために貧しい者が、汗水垂らして働いた結果豊かになった者に対して抱くような羨望のことで、「純粋に努力の差によって生じる結果の差」に対する羨望です。「正当な羨望(義憤)」とは、例えば、貧しい一般市民の家庭に生まれた子供が豊かな貴族の子供の生活に対して抱くような羨望で、「(自分ではどうすることもできない)運・機会の差によって生じる結果の差」に対する羨望です。アリストテレスは、基本的に、人々の「貢献」に応じた分配を行うことが「公平」で社会的に正義であると考え、社会への「貢献」を怠った人々の抱く「不当な羨望(嫉妬)」を社会的に配慮する必要はないと考えていました。このような公平観について、後にハイエク、フリードマンなどは市場と自由を重視し、自由な市場原理に基づく社会へ「貢献」を行った人々がその「貢献」に応じて市場から分配されることが「公平」でそれが社会的に正義となると主張しました。
 他方で、アリストテレスの考え方は、人々が(自分ではどうすることもできない)機会の差によって生じる「正当な羨望(義憤)」さえ抱くことのない社会を築いていくことにつながると言われています。近代以降、民主主義の確立と資本主義の進展とともに、人々が少なくとも人間らしく生活できる機会、さらには自由で様々な活動を展開する機会を得るために「必要」なものを「必要」に応じて(再)分配することが「公平」で社会的に正義であるとする考え方が出現しました。そして、その(再)分配の基準として人々の「必要」をどのように特定化し指標化するかによって様々な考え方が現れました。
 ベンサムをはじめとする功利主義者は、人々の幸福・満足を「効用」として数値化し、社会的な望ましさ(厚生)をその総和で表すことにより、1単位の追加的消費に伴って増加する効用(限界効用)が一番大きい人に、それらの財を一番「必要」な人として、より多くの資源を配分することによって、「最大多数の最大幸福」が得られてより望ましい社会となり、そのような分配をすることが「公平」で社会的に正義であると考えました。
 これに対し、ロールズは、「最大多数の最大幸福」のみを正当化すると、豊かな人々の限界効用が貧しい人々の限界効用より大きい場合、豊かな人々への(再)分配政策を正当化してしまうという問題点を指摘しました。そして貧しい人々に焦点を当て、彼らに対して、その数値化された効用に着目するのではなく、その効用を高める機会を得るために「必要」な手段(「社会的基本財」)を保障するような(再)分配をすることが「公平」で社会的に正義であると考えました。このような主張に対しては、貧しい人々以外をどのように考えれば良いかという問題が残ります。また、豊かな人々の生活を大幅に良くし、貧しい人々の生活は僅かに良くする社会も正当化してしまう可能性があるという問題もあります。
 センは、人々は多様な評価基準を持つと指摘し、功利主義者が人々の幸福・満足を「効用」として数値化することをまず批判しました。そして、ロールズの重視する「社会的基本財」に対しては、その財は単に貧しい人々にとって「必要」であるにすぎず、その財が人々にどのような満足を与えるかという視点を欠いていると批判しました。また、功利主義者に対しては、彼らの「効用」という考え方そのものについても、財が人々にどのような満足を与えるかについては示しているものの、人々がその財をいかに活用しようとするかという視点を欠いていると指摘しました。そして、人々はそれぞれ財を活用する基本的な「潜在能力」を有し、様々な目的・基準に基づいた様々な活動を展開する機会を得るために「必要」なものを「必要」に応じて(再)分配することが「公平」で社会的に正義であると考えました。
 以上のように、そもそも何が「公平」で社会的に望ましいかについて、時代の変遷の中で、様々な立場や価値観などによって多様な考え方が示されてきています。

(2 ) 昭和63年及び平成6年の抜本的税制改革においては、所得課税を減税し消費課税を充実する方向での改革が行われ、これらの改革は、「直間比率の是正」と呼ばれることがあります。直間比率は結果として決まってくるものですが、その比率を見る場合も、租税が必要な歳入を賄った上でのものであるのかどうかに留意しなければなりません。近年の景気に最大限配慮した個人所得課税・法人課税の減税などにより、その比率は相当変化しています。今後については、所得課税の負担水準は景気対策のための減税もあって極めて低いものとなっていること、財政状況は極めて深刻なものとなっていることなどから、これまでのような所得課税の減税を伴う改革は行い得ないと考えられます。
(3 ) 個人所得課税は、大きな規模の課税対象を持ち、国民一人一人の負担能力に応じた分担を実現できる税であり、所得再分配機能を持ち、垂直的公平に適う税です。
 また、租税は「社会共通の費用を賄うための会費」の性格を有していますが、個人所得課税は、申告納税制度を基本とするものであり、社会の構成員としての意識を養うことにも役立つものです。給与所得者については、今後の選択肢の一つとして、給与所得控除のあり方の見直しとの関連で、年末調整に代え、確定申告を行う途を広げることも考えられます。
 個人所得課税の現状は、近年の税制改革や景気対策としての減税もあって、その負担水準は諸外国に比べて最も低くなっています。
 課税最低限は諸外国に比べて高くなっており、そのあり方について種々の議論がなされています。課税最低限は、各種の控除のあり方との関連で決まってくるものですが、公的サービスを賄うための負担は国民が皆で広く分かち合うことを基本にそのあり方を議論することも必要です。
 少子・高齢化の進展や国民のライフスタイルの多様化など経済社会の構造変化が進む中で、各種の控除のあり方などについて、公平性・中立性といった観点から検討することが必要となっています。
 以上を踏まえ、今後、勤労意欲・事業意欲が損なわれないよう留意しつつも、個人所得課税が本来持っている役割や機能を十分に果たすことができるよう、その再構築に向けた議論が必要と考えられます。

(参 考)個人所得課税の沿革
 個人所得課税の沿革を顧みると、所得税は明治20年(1887年)に導入され、第二次世界大戦後、昭和24年のシャウプ勧告に基づく改革により、包括的な課税ベースに対する総合課税や申告納税を中心とする制度が施行されました。
 また、個人住民税は明治11年(1878年)の「戸数割」を起源とし、シャウプ勧告に基づく改革により、均等割と所得割による制度が設けられました。
 その後、高度成長期には自然増収を背景に減税がしばしば実施され、また、控除の創設・拡大、各種の非課税措置、分離課税、特定の政策目的のための租税特別措置等が導入されました。
 昭和62・63年の抜本的税制改革においては、消費税の創設とともに、個人所得課税については、税率の累進緩和、人的控除の拡充、マル優制度などの原則廃止と利子所得の源泉分離課税化、株式等譲渡益の課税化が行われました。
 その後、平成6年の税制改革をはじめとして、税率構造の見直しや、個人所得課税の負担軽減などが行われ、平成11年度からは、景気に最大限配慮して、最高税率の引下げ、20%の定率減税などが実施されています。
 世界的な歴史をたどると、個人所得課税は18世紀末のイギリスにおいて世界で最初に導入されました。その後、19世紀半ば以降から主要国において導入され、20世紀に入って各国の社会情勢を背景に累進税率や控除制度が整備され、第二次世界大戦以降、1970年代にかけて高い累進構造となっていました。70年代末から各国で税制改革が行われ、イギリスのサッチャー首相による税制改革やアメリカのレーガン大統領による税制改革に見られるように、個人所得課税の税率構造のフラット化が世界の流れとなりました。しかし近年再び、アメリカでは最高税率の引上げが行われています。

(3 ) 所得再分配機能のあり方
 累進性を有する個人所得課税は税制全体の中で所得再分配機能の中心的な役割を果たしています。今後この機能のあり方についてどう考えるべきでしょうか。近年の所得の分布状況を見ると、少なくともかつてのような明確な平準化の動きは見られません。むしろ、市場原理や自己責任を重視した経済活動が進展する中で、国際化、情報化の下で個人や企業の経済活動が多様化することにより、所得格差の拡大の方向に働く可能性や、消費課税の割合が高まってきていることをも考慮すると、税制全体の所得再分配機能を維持していくことが必要です。以上の点を踏まえれば、個人所得課税の果たす役割は引き続き重要と考えます。」

◆加藤 寛 監修 20000907 『わが国税制の現状と課題――21世紀に向けた国民の参加と選択』,大蔵財務協会,445p. ISBN-10: 4754707362 ISBN-13: 978-4754707361 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆舛添 要一 20001214 『舛添要一の税金のことが面白いほどわかる本』,中経出版,176p. ISBN-10: 4806114197 ISBN-13: 978-4806114192 [amazon][kinokuniya] ※ a07.

第6章 会社をつくるとかかる税金
 「今や企業が国境を越えて活動する時代です。税制を初めとするビジネス環境が劣っていれば、優良な企業は海外に逃げていきます。1998年度の税制改正より前には、日本の法人課税の実効税率は50%と、諸外国に比べて高かったのですが、現在は40%にまで下がっていますので、その点は評価してよいと思います。」(桝添[2000:138])

第8章 舛添要一の直言 民主主義のための税制改革
 「日本については、今後さらに累進性を緩和するか否かは、慎重に検討して決定すべきだと思います。1983年以降、累進性を緩和してきた結果、確かに上昇志向を持つ人間を増やし、経済を活性化するのには役立ちましたが、その一方で、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる傾向が強まりました。私は、今以上に貧富の格差が拡大することはよくないと考えますし、アメリカのように国民が豊かな層と貧しい層とに二極分化することには反対です。」(桝添[2000:159])

 「地方分権一括法が施行されましたので[…]課税自主権は強まりました。<0172<[…]ただ、問題は広域的に課税しないと、税金を逃れるために課税対象がよその町に逃げるということも起こりえます。東京都以外の道府県が外形標準課税を入れようとすれば、対象となる企業は他の地方に移るでしょう。東京都の場合、本社機能を東京に置きたい企業が多いからこそ、法人事業税の外形標準化が可能なのです。いずにせよ、地方自治を確立するために財源を確保するという地方の戦いは始まったばかりです。」(桝添[2000:172-173])

◆森信 茂樹 20010129  『日本の税制――グローバル時代の「公平」と「活力」』 ,PHP新書,203p. ISBN-10: 4569614612 ISBN-13: 978-4569614618 693 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第1章 何のための税金か 
 「税の第二番目の機能は、所得の再分配である。つまり、累進課税と社会保障の組み合わせにより所得の再分配が行われ、所得格差が少なく、福祉の行き届いた活力のある国家が建設されることが目的である。しかし現実は、累進税率や社会保障が進みすぎると「社会の活力をそぐ」との指摘が多い。バブル経済崩壊後のわが国においては、経済・社会の「活力」を取り戻すことが最優先の政策課題となり、累進税率の緩和により、労働のインセンティブを向上させるという政策がとられてきた。また「結果の平等」より「機会の平等」が重視され、所得の再分配の持つ社会的意義は相対的に小さくなっている。」(森信[2001:19])
 「公平が課税を考える場合の最大の原則であることは変わらない。公平な税制であるからこそ、近代民主主義の中で国家が課税権をもつことの正当性が与えられるといってよい。しかし、何が公平かということになると、人によりさまさまであるというのが今日の税制を巡る状況である。<0022<
 公平でまず考えられるのは、より大きな経済力を持つ人はより多く負担すべきであるという「垂直的公平」である。次に、経済力が等しい人は等しく負担すべきであるという「水平的公平」である。国民全体の経済状況が改善されていき、人々が豊かになっていくにしたがって、「垂直的公平」から「水平的公平」へと公平の重点がシフトしていく。」(森信[2001:22-23])
 「しばしば、レーガン税制が米国経済を活性化し、それが現下の財政黒字につながったという見解が、あたかも実証済みかのように論じられるが、税収に関する限り誤りである。高所得者の税負担を軽減すれば貯蓄が増加し、それが投資に回り経済成長につながるというサプライサイドの理論は、米国でも必ずも実証されていない。レーガン政権のもとで作り上げられた財政赤字は、米国経済の土台を揺るがすほどの規模、問題になり、ブッシュ、クリントンという二代の大統領によって、大幅な歳出カットとともに、所得税を中心とする増税、それも最高税率を引き上げる形での増税が行われた。そして規制緩和とIT革命のもとでの経済好調とあいまって、今日の財政均衡に結びついているのである。」(森信[2001:34])

◆斎藤 貴男 20010209  『サラリーマン税制に異議あり!』 ,NTT出版,226p. ISBN-10: 4757120540 ISBN-13: 978-4757120549 1200 [amazon] ※ t07.

◆加藤 寛 20010301 『大増税の世紀――「税金のために生きる日本人」でいいのか』,小学館,222p. ISBN-10: 4094051813 ISBN-13: 978-4094051810 500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

石 弘光 20010625  『税制ウォッチング――「公平・中立・簡素」を求めて』 ,中公新書,252p. ISBN-10: 4121015916 ISBN-13: 978-4121015914 819 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

プロローグ
 「本書執筆中の二〇〇〇年九月に、図らずも政府税制調査会の会長に任命された。しかしながらあえて断わるまでもなく、本書はまったく個人の研究者の資格で書かれたものである。政府税調の見解とは、無関係であることをお断わりしておきたい。」(石[2001:5])

第1章 税制改革の担い手―政府税制調査会の役割
 課税の公平・中立・簡素
 「課税の公平はもっとも基本的なもので税負担に公平感のない税制では国民の支持を得られない。課税の公平は個人の主観的なもので税負担に公平感のない税制では国民の支持を得られない。反面、あいまいながら社会通念としての公平の基準は厳然と存在し、税制改革の折にはこれを無視できない状況になる。」(石[2001:19])
 「課税の中立とは家計や企業の経済活動を税制によって歪めるべきでないとする原則である。課税によって、民間は政府に対して税支払いの義務が生じる。これが実際に発生する税負担だが、しかし税支払額以上に追加的に負担が生じる場合もある。高い累進課税率による勤労意欲や貯蓄意欲の減退や、あるいは特定の財のみに課税されると、消費者は好みを変え、非課税の財へ購入を移すかもしれない。」(石[2001:19])
 公平・中立・簡素の「三つの原則はこのように一般的な基準として広く認められているが、そのそれぞれがトレード・オフの関係にあることはよく知られている。」(石[2001:20])

◆加藤 寛・中村 うさぎ 20010723 『税金を払う人使う人――加藤寛・中村うさぎの激辛問答』,日経BP社,221p. ISBN-10: 482224234X ISBN-13: 978-4822242343 1470 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆経済産業省経済産業政策局企業行動課 編 20010810  『日本新生のための税制改革戦略――経済活性化のための税制基本問題検討会最終報告』 ,経済産業調査会,162p. ISBN-10: 4806526622 ISBN-13: 978-4806526629 1890 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

2 個人所得課税
 「個人所得課税改革は、その影響を受ける国民が多く、また、個々の改革が相互に深く関連し、他の税目の在り方にも大きな影響を及ぼすことが多い。そのため、いわゆる「聖域」が多数存在し、個々の改革が独立して検討された場合に、全体としての改革は進みづらくなりがちである。しかしながら、個人所得課税改革は、困難が大きいだけに、まさに包括的な税制改革への第一歩として相応しいものである。国民一人一人が個々の利害にとらわれることなく、「公平性の確保」を強く認識し、包括的な税制改革につながるよう個別課題に取り組まなくてはならない。そして経済界は、自らが「公平性の確保」を視点に据え、「クロヨン問題の是正」に取り組むことによって、もつれあった糸を解きほぐすための第一歩を踏み出さなければならない。」(経済産業省経済産業政策局企業行動課編[2001:20])

◆宮本 憲一・鶴田 広巳 編 20010920  『所得税の理論と思想』 ,税務経理協会,334p. ISBN-10: 441903808X ISBN-13: 978-4419038083 [amazon] ※ t07.

 「東京都は年問題解決のための財源構想として、不公平税制の是正を目的として所得税と住民税の実際調査を1975年に4区3市の63万人について行った。これは実態調査としては最初の貴重な成果である。当時の累進税率は10%から75%までの19段階でこれに住民税をあわせると最高税率は93%(賦課制限80%)であったた。ところが、実態調査の結果をみると、最高の税負担は年所得2,000〜3,000万円階層の33.6%でそれ以上の高額所得層の税率は減少し、年所得5億円を超える階層は26.3%、つまり所得1,000万円階層と同じとなっていた。」(宮本[2001:5])

◆大田 弘子 20020330  『良い増税悪い増税――納得できる税制を目指して』 ,東洋経済新報社,223p. ISBN-10: 4492610448 ISBN-13: 978-4492610442 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第3章 所得税の問題点はここにある
 「先進各国では、福祉の充実などで税負担が大きくなるにつれて、高い限界税率がもたらす弊害を重視するようになった[…]。この観点からいえば、日本の最高税率五〇%が三七%に引き下げられたことはプラスに評価できる。最高税率の引き下げは、金持ち優遇というより、金持ちになろうとする人への優遇でもある。高い所得を得るためには、何らかのリスクを負うことが多い。ベンチャー企業の経営者がその代表だ。リスク・テイキングに対して報いるということを、税制の面でも考える時期がきているのではないだろうか。」(大田[2002:84])

『現代思想』30-15(2002-12)  20021201 特集:税の思想――ポストモダンの税制 <288>

◆湯元 健治 編 20030320  『税制改革のグランドデザイン――よくわかる税金の今と近未来』 ,生産性出版,227p. ISBN-10: 4820117548 ISBN-13: 978-4820117544 1890 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆岩崎 薫里 20030320 「持続的に経済活力を高める税制とは――レーガン税制の教訓を踏まえて」,湯本編[2003:25-52]
 「限界税率の低下が労働供給に与える影響は、男性についてはほとんど認められていないというのが、多くの研究結果から導き出されている。これは経済学的にいえば、税引き後の賃金が上昇すると労働意欲が促進される「代替効果」が働く一方、手取り収入が上昇すると労働意欲が低下する「所得効果」も働くためである。  なお、OECDが税引き後賃金の労働供給への影響についての研究を集めたところ、男性については労働供給の弾性値は最大で0%、最小で▲0.2%の結果となり、税引き後賃金の上昇で労働供給は変わらないかむしろわずかながらも減少することが確認された。ちなみに、既婚女性については、この弾性値が最大で2.3%、最小でも0.45%と、税金後賃金が上昇すると労働供給は促進されるとの結果であった(OECD[1997:59])。もっとも、既婚女性の平均労働時間は男性より少ないこともあり、既婚女性の労働供給が促進されても、労働供給全体への影響は限定的に止まることに留意する必要があるだろう。
 一方、税率変更の貯蓄への影響も、やはり認められていない。[…]
 このように、レーガン税制は当初の予想に反し、労働や貯蓄の促進を通じたサプライサイドの強化に対してほとんど効果がなかったといえよう。その一方で、減税によって可処分所得が増加し、それが個人消費を押し上げるというケインズ的需要刺激効果が働いたことは確認されている。」(岩崎[2003:44])

◆蜂谷 勝弘 「税の空洞化論をただす――広く薄い税負担は本当に必要か」(第4章)pp.95-121
 「@理論的観点からの検討
 一般に、所得税率の引き下げが経済活力に与える効果には、需要サイドの効果と供給サイドの効果の2つが存在する。需要サイドの効果とは、税率引き下げによる税負担の軽減が可処分所得の増加を通じてGDPを押し上げる効果、いわゆるケインズ効果である。これに対し、供給サイドの効果とは、税率の引き下げが労働供給や貯蓄率の変化を通して経済に影響を与える効果である。ちなみに、税率のフラット化の効果という場合、通常、供給サイドの効果を指している。
 このうち、税率の引き下げによる経済活性化効果が確実に見込まれる<0112<のは、需要サイドの効果である。もっとも、この効果の大きさは、可処分所得のうちどれだけを消費に回すか(いわゆる消費性向の高さ)に依存する。したがって、仮に、最高税率引き下げの目的が需要拡大にあるのであれば、一部が貯蓄に回る減税よりも、支出分が100%需要増大に結び付く公共事業の方がより大きな需要創出効果が期待できる。
 一方、供給サイドの効果は一義的には定まらない。これは、税引き後の実質賃金率の上昇によって労働供給が増えるか否かは、所得効果と代替効果の大きさに依存するためである。要するに、税率の引き下げによって手取り効果が増加した場合に、余暇を減らして少しでも多く働こうとするか(代替効果)、労働を減らして余暇を楽しもうとするか(所得効果)は、人によって異なる。わが国の高所得層について、所得効果と代替効果のどちらが大きいかは、生活に余裕のある高所得層ほど、手取り収入が増えたことで余暇を楽しむ傾向にあると考えられる。そうした場合には、最高税率の引き下げは、引き下げ論者の主張とは逆に、労働供給にマイナスに作用することになろう。
 A第2章でもみたとおり、最高税率の引き下げの先進国である米国の経験をみても、経済活性化効果が明確に現れたとする確証は得られていない。[…]<0113<
 B現実的観点からの検討
 […]高額所得者の場合、退職金やフリンジ・ベネフィット(福利厚生費)を利用した事実上のタックスシェルター(租税回避の仕組み)が存在している[…]わが国の所得税の最高税率が諸外国と比べて依然高い水準にあり、将来的にこれが優秀な人材の海外流出につながる懸念は否定できない。これを理由に、将来的に最高税率の引き下げを目指す場合でも、最高税率引き下げ単独ではなく、公平な税体系構築の一環と位置付けたトータルでの議論を行うべきであろう。」(蜂谷[2003:112-114])

◆三木 義一 20030820  『日本の税金』 ,岩波新書,210p. ISBN-10: 4004308496 ISBN-13: 978-4004308492 735 [amazon] ※ t07.

第1章 所得税―給与所得者は優遇されている?
 「ジェンダー研究者による配偶者控除の廃止論が従来から主張されているが、その主張の多くは配偶者控除を「働かないということを税制上優遇する制度」とか、専業主婦の夫を優遇するにすぎない制度と理解し、その廃止を求めている。しかし、このような理解は配偶者控除の正しい理解とはいえないのである。
 憲法は二五条で「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、所得のある者には最低生活費を控除することを命じている。これが前述の基礎控除である。<0034<憲法は二五条によりすべての人間に基礎控除を保障しているといえる。ところで、家事労働が所得を生み出さないということ自体が実は問題であるが、専業主婦には家事労働からの所得はないとされ、そして現行の夫婦別産制により夫の給与等に対する持ち分もない。つまり専業主婦は無所得者であり、基礎控除という制度を利用できない。しかも、国家は専業主婦に社会給付をするわけではない。そうすると、この人たちの最低生活費はどこが負担しているのだろうか。いうまでもなく、夫のものとされている、夫名義の所得からである。そこで、夫の所得から所得のない配偶者の最低生活分を控除するのが配偶者控除なのである。つまり、OLが自分の最低生活費を基礎控除として引いているのと同様に、専業主婦も自分の最低生活費を(夫の所得から)引いているだけのとこである。これが配偶者控除の本来の性格である。優遇でも何でもなく、所得のない者にも基礎控除分の最低生活費を課税上除く工夫がされているだけの話である。この点を見誤ると、感情論からの増税容認論になる。」(三木[2003:34-35])
 「累進税率に対しては高額所得者の「勤労意欲の喪失」等を中心<0042<とした批判も多く、近年の改正では徐々に税率構造がフラット化され、消費税導入前の成功税率が七〇%であったのに、導入後五〇%に、一九九四年改正でさらに三七%にまで引き下げられてきているのである。
 このような最高税率の引き下げをどう評価すべきなのだろうか。「金持ち優遇」という側面があるのは事実だが、この面だけを強調するのは必ずしも妥当でないように思われる。というのは、確かに累進度は弱まってきているが、客観的に負担感が平等といえる累進税率といえるものが確立しているわけでもなく、現行の最高税率は、後述のように、住民税も加えると五〇%になっており、半額の税負担というのも決して軽くはないからで開く。ただ、従来の最高税率が引き下げられ、それに替わる消費税の導入、消費税率の引き上げという大きな改正の流れからすると、「広く薄く」低所得層にも税を負担させる方向にシフトしていることは間違いなさそうであるし、高所得者が実質的に税負担を軽減できる特別措置が今名と多く存在していることも忘れてはならない。」(三木[2003:42-43])

◆森信 茂樹 20030910 『日本が生まれ変わる税制改革』,中公新書ラクレ,273p. ISBN-10: 4121501039 ISBN-13: 978-4121501035 798 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第1章 税制改革とは何か―経済・社会のあり方と税制
 「勤労意欲と税制
 所得税が高すぎると勤労意欲を損なわせ、社会の活力を奪い、外国への人材の流出を招くことは欧米の経験でも知られている。また、最近のわが国世論は、「結果の平等」より「機会の平等」を重視する考えから、ある程度の所得格差は甘受すべきだという意見が多くなりつつある。一方で、ITディバイドという言葉に象徴されるような、知識や能力による新たな不公平の懸念も生じ始めている。そのような状況の中で、現行所得税がどの程度機能を発揮しているのか検証する必要がある。
 所得税の最大の機能である、累進課税による所得再分配が行き過ぎると経済に活力がなくなることは事実としても、逆に、限界(最高)税率を引き下げれば本当に勤労意欲は拡大するのであろうか。この問題は、わが国所得税の具体的数値に基づき議論すべき問題で、第3章で詳述する。」(森信[2003:23])

第3章 所得税
 「以上から、わが国は今、活力の観点から、累進税率、とりわけ最高税率を「さらに引き下<0076<げて」格差拡大を支援しなければならない状況にはないといえよう。むしろ、ある程度の所得格差を容認しながらも、それが世代を超えて受け継がれ、社会の階層化につながれば、「機会の平等」を阻害することになるので、相続税等資産に対する税制のあり方をあらためて考えることの方が重要であろう。」(森信[2003:76-77])

『別冊環7 税とは何か』  20031130 藤原書店,225p. ISBN-10: 4894343630 ISBN-13: 978-4894343634 2520 [amazon][kinokuniya] ※

◆岩田 規久男・八田 達夫 20031204 『日本再生に「痛み」はいらない』,東洋経済新報社,247p. ISBN-10: 4492394184 ISBN-13: 978-4492394182 1785 [amazon][kinokuniya] ※ e05. t07.

第6章 成長に資する税制改革とは
 1高齢化時代の税構造を考える
  女性労働力の活用による財政再建を
  税金以外のハードルも
  高齢者の資産所得への課税
  家を売りやすくなる
  相続ぜいりまは引き上げるべきだ
  介護サービス市場のゆがみ
 「八田 相続税率を引き上げると、生前消費が過剰に促進されて、非効率的な資源配分になるという主張があります。私は、相続税率が引き上げられると、多くの人は、生きているうちにおカネを使おうとしますが、そのかなりの部分は自分自身の介護のために使うことになると思います。」([201])
  消費税シフトは高齢化対策にはならない
  法人税はなくすべきだ
 「八田 […]株式の譲渡益や配当所得には税金をかけ続けて、むしろ、法人税をなくす方向に持っていくべきだと思います。元来は、最終的に所得を得た人が税金を払うべきですね。株主が個人として得る所得は、株式の配当と譲渡益です。これらに所得税がかけられれば、法人税をかける理由がなくなります。
 昔は、コンピュータによる情報管理ができませんでしたから、譲渡益の徴税は難しかったのです。[…]いまでは、徴税技術が発達し、譲渡益に直接きちんと課税ができるようになったのですから、法人税は不要です。」([205])
  法人の譲渡益税
 2誤解だらけの消費税シフト
  消費税シフトと低所得者の負担
 「八田 有権者が、「高齢者の負担を現状より軽くするために、低所得者の負担を増やすべきだ」と考えるなら、そうすべきだと思います。
 ただし、消費税シフトの是非を選挙で問うときには、そのように争点を明確にすべきだと思います。高齢化対策としてその是非を選挙で問うのは、間違いです。すなわち「このシフトは、高齢化対策としてはまったく役に立たない。しかし、低所得者の負担を増やして高所得者の負担を減らすことができる。賛成か反対か」という形で問うべきでしょう。そのうえで、有権者が賛成だというのならば、これは所得分配に関する価値観の問題ですから当然そうすべきでしょう。
 経済学の観点から、所得分配に関する価値観の是非について何かいえることはまったくありません。<0208<経済学の観点から明確にいえることは、「消費税シフトは、高齢化時代の勤労世代の平均的な人の生涯税負担を軽減しない」ということだけです。
 また、高額所得者の限界所得税率を引き下げることによって、彼らの働く意欲が増すという議論もありますが、統計的に意味のあるほど意欲が増すということを示す実証的研究は、どこにもありません。むしろ、大企業の重役たちの大半は、少しでも長く会社にいたいと思っているようです。それは、限界税率が八九%のときもまったく同じでした。」 (岩田・八田[2003:208-209]、八田の発言)

石 弘光 20040325 『税の負担はどうなるか』,中公新書,185p. ISBN-10: 4121017390 ISBN-13: 978-4121017390 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第2章 いま何故、税制改革か―「あるべき税制」を求めて
 「第一に課税の公平確保は、納税者の間で税負担に不公平があってはならないという原則である。戦後税制の根幹を築いたシャウプ税制が何よりも重視したのが、この課税の公平という<0046<原則である。税制が不公平であっては納税者である国民の支持を得ることは到底できないからである。」(石[2004:46-47])

第5章 空洞化した所得税――基幹税としてどう修復するか
 「所得税は税体系の中で最も重要な税である。とりわけ累進税率構造を持ち、また納税者の個々の担税力を控除によって勘案できることから、課税の公平確保に優れた特性を持つ。戦後、この所得税は国税あるいは地方税(この場合、住民税)の中で、基幹税としての地位を著しく低下させてきたといわざるを得ない。
 その最大の問題は、近年所得税の税収が減少の一途をたどっていることである。」(石[2004:120])

◆牛嶋 正 20040630  『租税原理――課題と改革』 ,有斐閣,288p. ISBN-10: 4641162166 ISBN-13: 978-4641162167 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「20世紀に入って、税の公平に関する議論はいろいろのアプローチにもとづいて展開されてきたが、この章の各節で見てきたように、いずれの議論も公平な所得税であるためには、所得税は累進課税の構造をとらねばならないという必然性を導き出すことはできなかった。ましてや、累進度の適正水準については、それを導き出す手順さえ見出せなかった。では、なぜ、「所得税は累進課税でなければならない」ときいう考え方がア・プリオリに生まれてきたのか。このことは、所得税が戦費調達の主力として、はじめに臨時税として導入された経緯と関連しているといえる。
 おそらく、戦費調達のために所得税を導入するとき、国としてはできるだけ多くの税収を得て、戦争が国民全体の協力の下に容易に遂行されることを目指したことを考えれば、累進課税の構造をとることはある意味では当然のことでもあった。さらに、産業構造は軍需産業が中心となっていくが、戦費の大部分はそこに集中することから、不当な利益も発生しやすい状況がつくられていったので、それを吸収していくためにも累進課税が導入されたとも考えられる。<0140<その意味では、累進課税は超過課税としての機能も持っていた。」(牛嶋[2004:140-141])

◆古谷 一之 (財務省主税局総務課長)・矢野康治 (財務省主計局企画官) 20041104 「わが国税制の現状と課題−国民負担率の観点から」
 経済産業研究所 BBLセミナー
 http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/04110401.html

 古谷「個人所得税は、国の所得税と地方の個人住民税の2つの組み合せでできていて、個人の住民税が5%、10%、13%の3段階の税率、国の所得税が10%、20%、30%、37%の4段階の税率になっていて、最高あわせて50%というのが現状の税率構造です。いまは国税も地方税も累進税率構造を持っていますが、今進めている三位一体改革の税源移譲を行う場合に、住民税をフラット化しようという議論があります。住民税は、いわばコミュニティーチャージであるという発想から比例税率でよい。所得税のほうは国の所得再分配機能の発揮の一環として、累進構造を維持すべきである。住民税と所得税の役割の分担を明確にする方向で税源移譲をしようというわけです。仮に3兆円を地方に税源移譲する場合、個人住民税を10%でフラット化して、その分所得税の税率や控除で調整をするという考え方で作業が行われています。住民税を10%でフラット化しますと、低所得層は5%から10%に住民税が増税になり、高所得層が13%から10%に減税になります。この辺をどのように所得税サイドで調整をしていくかが、今後の課題になります。」

◆高橋 利雄 20041201  『わが国の税制改革の経緯と租税論の展開』 ,税務経理協会,334p. ISBN-10: 4419044837 ISBN-13: 978-4419044831 3570 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

「累進税率の所得区分が細かすぎ、かつ限界税率が高すぎること[…]<0020<は、最近とくに顕著になっている中堅サラリーマン層の重税感、不公平感と関連し、勤労意欲の低下につながるおそれもある。」(高橋[2004:20-21]、初出年不明)

「個人の税負担にしても平均所得が九百五十万円程度で、働き盛り、あるいは仕事が順調でこれからさらにがんばろうというところで税負担が急増し、人々のやる気をかなり阻害している可能性がある。」(高橋[2004:235-21]、初出年不明)

◆鈴木 章 20050317  『「税制改革」のからくり』 ,東銀座出版社,228p. ISBN-10: 4894690861 ISBN-13: 978-4894690868 ※ t07.

◆橘木 俊詔・森 剛志 20050325  『日本のお金持ち研究』 ,日本経済新聞社,227p. ISBN-10: 4532351359 ISBN-13: 978-4532351359 1890 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第7章 高額所得者への課税
 高額所得者への課税の現状
 なぜ累進度を弱めるのか
 所得税の累進度をめぐる議論@――容認論
  (1) 所得分配の不平等否定
  (2) 支払い能力説
  (3) 税収確保説
 所得税の累進度をめぐる議論A――否定論
  (1) 労働意欲と貯蓄意欲にマイナス
  (2) 自由束縛説
  (3) 有能で生産性の高い人は社会の宝物
 経済学からみた累進所得税制
 「以上のような経済学による最適所得税制に関する分析をまとめると、次の三つが重要な要因である。(1)どのような社会的厚生関数を想定するか、(2)所得税が労働供給に与える効果、(3)人の能力分布の形状、である。
 この三つの要因を考慮した上で、日本経済における最適所得税制を求めたものとして、アトダ=タチバナキ(二〇〇一)がある。この研究の結論は、一九七〇〜八〇年代の所得税の累進度は、ほぼ最適に近いものであったとするものである。すなわち、効率性と公平性の兼ね合いを考慮した上で、日本の所得税制はほぼ理想に近かったのである。
 当時の最高税率は七〇%、最低税率は一〇%であり、しかも一五段階の税率が定められていたことはすでに述べた。すなわち、所得税制の累進度は相当強かったのであるが、経済学の計算上からは望ましい税制だったのである。現在は図7−1でみたようにその累進度が相当弱められて<0188<いるが、これは最適な税制から離脱したものである、その解釈が可能である。言い換えれば、日本の最適所得税制を求めるのであれば所得税の累進度を強めることが要請されているのである。」(橘木・森[2005:188-189])
 日本の所得税制の実態:外国との比較を含めて

◆高橋 利雄 20050910  『アメリカの財政政策と税制改革』 ,ぎょうせい,239p. ISBN-10: 4324077274 ISBN-13: 978-4324077276 2500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「個人所得税との限界税率が高過ぎたことが一つの要因になって個人の労働供給が阻害されているとの判断から、税率を引き下げることで労働供給を増加させて、経済成長を促進する必要があると、サプライ・サイダーは主張していた。しかしながら、個人所得税の減税は必ずしも労働供給の増加に直結するとは限らないのである。減税によって可処分所得が増加すると、労働と余暇の選択が発生するからである。労働を魅力的に感じて、労働供給の増加に働くかもしれないと同様に可処分所得の増加によって、今までよりも余暇を増やし、労働供給を減らす可能性もある。したがって、アプリオリに、個人所得減税によって労働供給が増加するかどうかは明らかではないのである。
 かり労働供給がサプライ・サイダーの予測に反して増加しなかったとすると、減税措置の効果はサプライ・サイドを刺激しなかったことになる。むしろ、レーガン減税の効果はサプライ・サイドよりも、ディマンド・サイドを刺激して、投資需要と消費需要の増加となって、米国の景気を回復させることになったとする見解が支配的である。」(高橋[2005:159])

 「減税は金持ちのやる気を起こすのではなく、「金持ちになりたい層」のやる気に訴えるのである。減税はこの層の人々をもっと仕事をする気にさせ、稼得所得を蓄積して投資の機会を得ようという気持ちにさせるのである。」(高橋[2005:232])

石 弘光 20051010  『税制スケッチ帳』 ,時事通信出版局,226p. ISBN-10: 4788705591 ISBN-13: 978-4788705593 2100 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第3章 あるべき所得税の姿
 所得税改革の視点
 「膨大な借金を抱える一方で、急速に少子高齢化が進捗するわが国経済社会において、年金・医<0085<療などの社会保障制度を持続可能にすくため、国民がどのようにその費用を負担するかがいま問われている。危機的な財政状況や高齢化による社会保障給付の増大を考えれば、将来の税負担増は不可避であろう。この際、最も重要なことは、すべての人が「広く」「公平」に税負担を分かち合うことである。これは、先般公表された政府税調答申「少子高齢社会における税制のあり方」に盛り込まれた基本的な考え方である。」(石[2005:85-86])


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◆Murphy, Liam B. and Thomas Nagel 2002 The Myth of Ownership: Taxes and Justice, Oxford Univ Pr, 228p. ASIN: 0195176561 (pb 2004/12/9)  [amazon]=20061110 伊藤 恭彦訳,『税と正義』,名古屋大学出版会,255p. ASIN: 4815805482 4725 [amazon][kinokuniya] ※ t07,


UP:20081211 REV:20081212, 14, 17, 27 20090107, 0212, 13, 0311, 14, 0611, 0814
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