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税と国境



*立岩真也「税制について・6〜7」(『現代思想』2009-5, 2009-6)で以下の文献の多くに言及。
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◆立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 20090910 『税を直す』,青土社,350p. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 2310 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

『税を直す』表紙

◆窪内 義正 1978 『タックス・ヘイブンと国際租税問題』、教育社

◆高橋 元 1979 『タックス・ヘイブン対策税制の解説』、清文社

◆永川 秀男 1985 『オフショア金融市場――タックス・ヘイブンの研究』外国為替貿易研究会,296p. ASIN: B000J6NHPA [amazon] ※ t07.

◆中谷 巌 19871023 『ボーダーレス・エコノミー――鎖国国家日本への警鐘』,日本経済新聞社,234p. ISBN-10: 4532088046 ISBN-13: 978-4532088040 1200 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

4 法人税制の日米比較
 格差の是正を急げ
 「日本の若い経営者が日本の高い法人税を嫌って大挙して本社をアメリカに移転するなどという事態が起こってからでは手遅れである。税率を高くしておけば、税金が余計に徴収できるという考え方は徐々に有効でなくなりつつある。税制という面でも「制度の国際競争」は始まっているということをわれわれは認識すべきであろう。」(中谷[1987:162])

◆犬飼 貴博 19880130 『税金避難地 タックス・ヘイブン活用の実際――外国に会社をつくって節税する方法』,日本実業出版社,254p. ISBN-10: 4534012128 ISBN-13: 978-4534012128 [amazon][kinokuniya] 1500 ※ t07.

◆中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 『税制改革で変わる日本経済』,東洋経済新報社,214p. ISBN-10: 4492610162 ISBN-13: 978-4492610169 1400 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◇中谷 巌 19880929 「国際国家へ飛翔するパスポート」,中谷・本間・八田[1988:73-93]

 「日本が税制を決定する場合には、アメリカがどうなっているか、ヨーロッパはどうか、あるいはアジアとの関係はどういう実情にあるかをしっかりと把握したうえで、日本だけが突出しないようにしなくてはいけない。
 この点に関していえば、自民党の税制大綱も政府税調の答申も多少の配慮はしていて、たとえば所得税の税率構造を簡素にしたり、法人税については現在四〇%の法人税率を三七・五%になる方針を打ち出している。<0082<
 しかし、これでも依然、アメリカに比べると、かなりの格差が残る。改正後の所得税の最高税率が日本で六〇%、アメリカで二八%では岡本綾子さんはなかなか日本に戻ってこないだろう。また、アメリカでは法人税率が三四%であることに加え、減価償却制度も日本よりかなり有利である。
 だから、完全に平準化が行なわれたとは言いがたいが、方向としては日米の格差も多少は縮小することになろう。この点では、それなりの評価ができると思う。」(中谷[1988:82-83])

◇中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 「改革すべきは何か」(鼎談),中谷・本間・八田[1988:97-214]

 八田「ヒト・カネ・モノとよく言いますけれども、それの移動の度合がいろいろ違うと思う。法人のように、非常に簡単に場所を移せる場合には、これはいくら番号があっても、本質的に同一の税率にしないといけないあるいは税率を非常に引き下げていかなければいけない。
 人間の場合には、動けるけれども、動く度合が法人ほど楽ではない。教育とか、言語とか、文化、親の面倒を見るとか、そういうさまざまな問題がある。もちろん、将来に関しても移動性が高まっていくわけですね。[…]しかしそこの段階に至るまでは、ある程度、所得税の累進度が外国よりも高いということは許容できるだろうと思う。」(中谷・本間・八田[1988:184]、八田の発言)

 八田「非常に荒っぽく言うと、アメリカの場合、連邦政府は所得税、州政府は小売売上税、市町村は固定資産税中心である。
 […]どうしてかいとうと、同一国内ですから、人の移動が実に簡単なわけである。そのため、ひとつの州だけ非常に累進的な税になってしまうと、カネ持ちはみんな逃げてしまう。それが理由で州単位では小売売上税中心になっている。
 まさに中谷さんがおっしゃっていた問題があるわけです。国全体で累進的な所得税をやるのは可能だ。しかし、一構成要素だけが非常に累進的なものをやったら、もうだめになってしまうという問題がある。人が移動しやすいと、それが問題になる。
 もう一つの問題は、大きな町の周りにいろいろなテミュニティーがあって、カネ持ちの地区があるとする。そういうところは公共サービスが非常にいいわけですね。学校の質もいいし、公園も立派だ。だれでもそこに住みたい。そこで累進的な所得税だったならば、貧しい人がたくさん入ってくる。だから市町村レベルでは所得税はやりにくい。アメリカの市町村税は、固定資産税が中心です。」(中谷・本間・八田[1988:184]、八田の発言)

 「本間[…]たとえば言語のバリアだとか、生活の快適さというか、たとえばシルバーコロンビア計画みたいに、みんなが集団で行くとかという形でやるのならともかく、一般の人のオポチュニティーはそんなに高くない。
 中谷 ある意味で、一般の人のオポチュニティーが高くないから問題なので、国際的に移動する能力とか力がある人は常に有利なことを選択できるけれども、選択できない人が多いから問題がある。
 本間 だから、それこそまさにオポチュニティーが高い人ほど得をするような状況が生まれてきて、実質的に税逃れができる。」(中谷・本間・八田[1988:197])

◆貝塚 啓明・野口 悠紀雄・本間 正明・石 弘光・宮島 洋 編 19901020 『税制改革の潮流』,有斐閣,シリーズ現在財政・2,324p. ISBN-10: 4641053529 ISBN-13: 978-4641053526 2060 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◇堀場 勇夫 1990 「経済国際化の中の法人税改革」、貝塚他編[1990:155-178]
 「世界的規模で活動している企業は、各国の租税負担の格差に配慮しつつその行動を決定する。すなわち、各国の法人税制を勘案しつつ、世界的規模で資金を調達し、製造し、販売し、利益の分配を選択している。法人税に対するこのような企業の対応は、主として二つあげられる。すなわち、法人税に対する裁定行動と、企業の立地国選択に関する行動である。
 第一の法人税に対する裁定行動とは、活動している国々によって法人税制に大きな格差が生じた場合、トランスファー・ブライシングやタックス・ヘイブンなどを利用することで、その課税所得を法人税負担の低い国に配分させる行動をいう。
 第二の立地国選択に関する行動とは、各国の法人税格差が特に大きくかつ継続する可能性が<0167<ある場合、また裁定行動では限界がある場合、工場、支店、本店の立地国についての選択をする行動を言う。この企業行動は、各国の法人税を論ずることきに、産業の空洞化の問題として、特に最近問題となっている点である。
 […]各国の税務当局は一種の競争市場原理の中で税制を考えなければならなくなるであろう。いわゆる、国際的なタックス・コンペティション(租税の競合)の発生である。」(堀場[1990:167-168])
 「各国が自由に国際的なタックス・テンペティションをする制度の下では、経済力の強いアメリカのような国がちょうど寡占理論におけるプライス・リーダーのように行動する可能性がある。その結果、タックス・テンペティションに任せた場合に、カナダの例にみられるように他の諸<0171<国はその税制に追随せざるをえないという問題が生じ、世界的な規模での各国の租税制度の統合をいかにすべきかという問題が新たに提起される。
 この統合問題は、従来EC統合と税制のハーモニゼーションとして取り扱われてきた問題であったが、今回のアメリカの税制改革はこの問題を世界的規模で考えなければならない問題であることを明確にした。第4節では、ECの問題を通じてこの問題を考えてみる。」(堀場[1990:172])
 「統合について考えるとき、経済学でのカルテル論の援用によって、イーコーライゼーションによる統合が必ずしも効率性の観点から好ましくないことが主張された。」(堀場[1990:172])
 4 統合の三つの考え方
 「税制のハーモニゼーションの問題については、わが国においてはまだ研究が始まったばかりであり、まとまった文献はない。わが国の文献としては、石教授の次の著作および本シリーズの第4巻が参考となろう。また、海外の文献として以下のものを挙げておく。
 石弘光『税制のリストラクチャリング』、東洋経済新報社、一九九〇年。
 S. Cnossen ed. Tax Coordination in the European Community, Kluwar Law and Taxation Publishers, 1987」(堀場[1990:178])

◆石 弘光 19900426 『税制のリストラクチャリング』,東洋経済新報社,267p. ISBN-10: 4492620338 ISBN-13: 978-4492620335 1700 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 第12章 世界の税制改革と日本
 「一九八四年以後、多くの国でかなりの幅で最高税率の引下げが実現している。とりわけ脚光をあびているのがアメリカで、最高税率を三三%に引き下げ、かつ残りの一五%、二八%として、計三段階のフラット化を実行した[…]。この措置は一般国民の人気を集め、レーガン税制改革を推進させた大きな原動力となったといえよう。」(石[1990:225])

 13章 最近の国際財政学会から――2つの報告
 「国際協調といっても、各国の関与の仕方にはおのずから程度の差がある。税制改革の際、間接的にお互いの制度を近づけていく受動的なものから、直接的な交渉によって税制の具体的内容を同一の方向にもっていこうとする積極的なものまで、いくつものケースに分かれる。
 間接的な協調は、一九八〇年代以降の世界の税制改革といわれる現象に代表される。つまり税率のフラット化、課税ベースの拡大、間接税のウェイト増大などが、暗黙のうちに各国の税制改革の共通の方向とされてきた。[…]
 しかし今日、お互いの税制を間接的に模倣し合うという受け身の対応が積極的な姿勢に転じざるを<0240<えない状況となっているのは明らかである。その状況とは、冒頭に強調した世界経済のグローバル化であり、そして域内の自由化を目指した一九九二年のEC統合である。この場合、当事者が直接に交渉し合う租税強調、あるいは内容的にもっと強化された租税調和が必要となる。
 従来、この分野は一連の国際課税上の諸ルール(源泉地あるいは居住地原則、移転価格、タックス・ヘイブンなど)をもとに、租税条約で問題が処理されるものと考えられてきた。しかし基本手貴に相互の税制を所与としたままで、二国間の条約締結によって問題を処理することは、もはや不可能な事態にまで経済活動が変わってきている。」(石[1990:240-241])
 クノッセンは「EC統合は認めつつも、税制の国際協調という流れの中で、果たしてそれでよいの<0241<かと疑いを投げかけている。つまり租税強調は各国政府に安易な租税負担増の動機を与え、多く非効率的な政府の温床になりかねない。それより各国独自の立場で自らの税制構築を目指しもっと競争すべきだという主張である。
 […]日本の税制抜本改革でも目標の一つとして、国際性がうたわれている。しかし、その中身は法人税率が国際的にみて高水準だとか、現行間接税が貿易摩擦を生んでいるとかの指摘にとどまっている。
 いま、世界各国は課税の中立性確保をスローガンに、国際協調を目指して既存の税制の枠組みを基本的に改めようとしている。これに対し、現在の日本ではこの種の問題意識が非常に希薄である。日本だけが孤立を保ち、世界的潮流の外に存在し続けられるとは思えない。税制の国際化に関し、われわれはもっと関心を払わねばならぬというのが、学会に出席しての著者の強い印象であった。」(石[1990:241-242])

 「オランダの財政学者クノッセンは[…]税制の調和をカルテルに類似した概念と規定し[…]ている。[…]
 クノッセンは、このカルテル志向の本質から、税制の調和がいたずらに関係各国で高い税負担を維持させ大きな政府を助長しがちであるという性質を指摘している。そして政府内部での効率性、さらにはその規模抑制のためにEC各国でもっと税制上の競合(tax competition)が必要なことを主張している。」(石[1990:249])

◆貝塚 啓明・野口 悠紀雄・本間 正明・石 弘光・宮島 洋 編 19901130  『グローバル化と財政』 ,有斐閣,シリーズ現代財政4,348p. ISBN-10: 4641053545 ISBN-13: 978-4641053540 [amazon][amazon] ※ t07.

第1章 国際化の視点と財政
第2章 国際的二重課税と国際租税制度
第3章 税制と海外直接投資
第4章 移転価格税制とユニタリー・タックス
第5章 タックス・ヘイブンと対策税制
第6章 ECにおける税制の調和
第7章 経済協力の財政問題
第8章 マクロ政策の国際協調
第9章 関税制度と貿易自由化

◇石 弘光 「国際化の視点と財政」,貝塚他編[1990:1-30](第1章)

◆渡辺 淑夫 19930420 『外国税額控除――国際的二重課税排除の理論と実務 新訂版』,同文舘出版,472p. ISBN-10: 4495172107 ISBN-13: 978-4495172107 4000 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆野口 悠紀雄 編 19940516 『税制改革の新設計』,日本経済新聞社,シリーズ現代経済研究8,244p. ISBN-10: 453213062X ISBN-13: 978-4532130626 3800 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第9章 国際化時代の税制

 「タックスヘイブンとは、法人の所得に対する税率が日本に比べて著しく低い国・地域を指す。企業活動の利益をタックスヘイブンに設立した子会社に吸収させれば、企業グループ全体の納税額を低く抑えることができる。「タックスヘイブン対策税制」とはこうした行為を抑えるための<0211<措置である。具体的には「タックスヘイブン」を指定し、ここにある子会社の留保所得の一部、または全額を親会社の利益とみなして課税する。日本は一九七八年にこの制度を導入した。現在、バハマやバミューダ、モルディブなど四一の国・地域がタックスヘイブンに指定されている。
 「移転価格規制」とは、多国籍企業の取引価格操作による租税回避を防止するための措置である。企業が海外企業と取引をする際、子会社などの系列会社との間では、取引価格を通常より高くしたり、低くしたりする操作がしやすい。[…]「移転価格税制」はこうした価格装置をチェックするため、系列会社間でも通常価格で取引したとみなして課税する仕組みである。日本では八六年から実施されている。」(野口[1994:211-212])
 「域内資本移動が完全に自由化されると、利子所得課税の脱税を防止する必要は緊急のものとなる。このため、EC委員会は、八九年に共通利子課税案を委員会指令として採択した。これは、加盟国がEC居住者への支払い利子に対し一五%以上の源泉徴収税を適用するというものである。
 しかし、この指令に対してはクルセンブルク、オランダ、イギリスが反対した。ことにルクセンルクは利子の源泉徴収がなく、さまざまな優遇処置を講じて外貨導入をはかってきたので、強く反対した。  このように、税の国際協調はきわめて困難であり、それが資本移動の完全自由化に対して大きな障害になっている。経済活動について国境を撤廃するのは一見するほど容易ではない。現実の世界は「ボーダーレス」とはほど遠いものといわざるをえないのである。
 税制の協調は望ましいか
 以上でみたように、税制の差による効果は、調整できるものもあるが、できないものもある。こ<0214<のため、税制の違いが、さまざまな問題をもたらすことになる。また、調整するといっても、そのための手続きは繁雑である。
 そこで、各国で税制や税率を統一することが考えられる。これは、右でみた諸問題を解決する。また、調整措置が不必要になり、簡略化がはかれるというメリットがある。
 しかし、これには、つぎのような問題がある。まず、技術的な問題がある。[…]
 仮に技術的困難が克服されたとしても、調整は必ずしも望ましいとはいえない。それは、決定過程における問題である。たとえば、利子課税の場合、仮に税率の低い国があれば、税制協調がなければ、他国にはそれに合わせて税率を低く設定する圧力が加わる。他方で、各国で協調することになると、通常は税率の高い国に合わせられることになる。したがって、税率は協調しない場合に比べて高くなる傾向がある。つまり、税率の決定に関して一種のカルテルが結ばれるのと似た効果が発生するのである。
 ただ、この考えにも、いくつかの問題を指摘できる。第一に、国の間の競争は個人や企業の場合とは異なる。たとえば、ある国が高齢化していれば、社会保障経費が多く、したがって税率も高くせざるをえないだろう。このように、税率は必ずしも政府活動の効率性を示さないから、簡単ではない。第二に、前述の競争原理は、国境を越えられない生産要素には働かない。そこで、競争圧力<0215<に直面した国は、労働所得や土地に対する課税を強化する可能性がある。土地課税は望ましいかもしれないが、労働所得に課税が集中するのは、公平の観点から、望ましいとはいえまい。
 ただし、一般的にいえば、協調とは市場の決定を官僚機構の決定で置き換えることを意味する。したがって、協調が無条件に望ましいとはいえないことを認識するのは重要であろう。」(野口[1994:214-216])

◆税制調査会 19970124 「これからの税制を考える――経済社会の構造変化に臨んで」
国際的整合性
 経済社会のグローバル化、ボーダーレス化が一層進展する21世紀には、公平・中立・簡素の基本的考え方を反映した税制が、同時に国際的な整合性を保っているのかについても検討する必要があります。金融取引のように、ボーダーレス化が特に進んでいる分野では、税制の中立性の確保が国際的な整合性という観点からも重要であると考えられます。
 各国の税制はその国の歴史や文化、経済や社会の仕組みを反映して構築されてきたものです。国際的な整合性を保つということはむろん各国間の横並びを意味するわけではありません。租税負担率の水準や課税バランスも念頭におく必要があります。しかし、各税目の仕組みや負担水準が主要国間であまりにもかけ離れたものになっているとすれば、国際的な競争力、経済の活力といった観点から問題が生ずる可能性があります。」

 「(参考6)税のダンピング  税制の国際的な整合性の追求が、OECDやG7でも問題視されている国家間の税の引下げ競争、つまり「税のダンピング」に結びついてはならないことは言うまでもありません。この点について、リヨン・サミットの経済コミニュケには次のように記述されています。
 「16.最後に、グローバル化は、租税政策の分野で新たな課題を生み出している。
 金融その他の地理的に移動可能な活動の誘致を目的とする税制に見られるような税に関する国家間の有害な競争は、貿易と投資を歪曲する危険があり、各国の課税基盤の浸食につながり得る。我々は、OECDに対し、各国が、個別にまた共同で、これらの慣行や税に関する様々な形態の有害な競争の範囲を制限し得るような多国間のアプローチの確立を目指し、この分野における作業を精力的に推進するよう強く要請する。我々は、1998年までに報告書を作成することになっているOECDによる作業の進展を注意深く見守っていく。」
 「(参考10)国際的な資金の逃避
 ドイツにおいて、1989年に利子に対する源泉徴収制度が導入された際に、これを嫌った資金の他国への流出や外国からドイツへの投資回避が引き起こされました。そのため、導入後半年で同制度が廃止されたという経緯があります。しかし、その後、1993年から利子課税軽減措置と併せて利子源泉徴収制度が再び導入されています。近年においても、租税回避のために利子源泉徴収を行っていないルクセンブルグに資金が逃避する例があり、ドイツの課税当局はその捕捉に取り組んでいると伝えられています。
 こうしたことを背景に、EU内では共通利子源泉税の導入が真剣に議論されてきています。また、OECDにおいても、クロスボーダーの利子に対する適切な課税を確保することの重要性が確認され、このために、各国は、利子支払者による源泉徴収か、情報交換の強化を前提とした総合課税かのいずれかにより対応すべきものとされています。」

◆古橋 隆之 19970807 『税金亡命――ビッグバン時代の超節税法』,総合法令出版,261p. ISBN-10: 4893465562 ISBN-13: 978-4893465566 1600+ [amazon][kinokuniya] ※ t07.

プロローグ 日本ではもう、税金は払えない
 破綻寸前の日本の財政
  一億総破産予備軍の日本国民
 日本で税金を納める意味はあるか
  税金をムダにバラまく族議員の暴走
  政府のムダ遣いを許してしまう日本の国民性
  源泉徴収制度で国民が納税者意識をなくす
  国民の血税はすべて死に金になっている
 大重税国家へと変遷するこれからの日本
  国際的にも突出して高い日本の法人税率
  イギリス、アメリカの税制改革
  消費税をはじめ日本の税金は今後、うなぎ上りに
  「超」節税法としての税金亡命

◆本庄 資 19971107 『アメリカの租税条約』,大蔵省印刷局,501p. ISBN-13: 978-4171015803 ASIN: 4171015804 4200 [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b.

◆Nash, Richard Michael 19971128 『日本人のためのオフショア金融センターの知識――新・国際資産運用の衝撃』,ダイヤモンド社,248p. ISBN-10: 4478260435 ISBN-13: 978-4478260432 [amazon]d/[kinokuniya] ※ t07.

 はじめに
 「私が一番きらいなのは、日本の一般の人々を「くいもの」にする数多くの日本の政治家、官僚の一部の金融機関である。上級官僚の汚職事件、都市銀行の総会屋に対する資金供与、証券会社の損失補填、特殊法人の不正請求等の最近の一連の不祥事は、日本の国民を完全に馬鹿にしたものばかりである。国民が一生懸命働いて稼いだお金、子供や老後のために生活を引き締めながら貯めているお金を、いかにも国のお金のように政治家や官僚たちは使おうとしている。いろいろな悪党どもが私腹を増やした後の”ツケ”は、みな国民に税金という形で負担させようとする。」(Nash[1997:i])

◆神野 直彦・金子 勝 編 19980611 『地方に税源を』,東洋経済新報社,234p. ISBN-10: 4492610367 ISBN-13: 978-4492610367 1700+ [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b

◆木村 昭二 19990204 『税金を払わない終身旅行者――究極の節税法PT』,総合法令出版,297p. ISBN-10: 4893466283 ISBN-13: 978-4893466280 1700+ [amazon][kinokuniya] ※ t07.

プロローグ 貴方は「PT」の生き方に賛同できますか
 「このような不安な時代に我々は国だけに頼ることなく、自分自身で、かつ自己責任で将来の見通しを描き、自分の生活設計を立てなければならない状況で置かれ始めています。将来貰えると言われている公的年金も先行きは全くわかりませんので、国を当てにしないで自分で生きていくことを検討しなければならないのです。
 ところで、そのことを考えることにおいて、いたずらに日本国に対する不信感と不安感を煽る訳ではありませんが、時代や状況に応じて、ここで、日本以外の国にも目を向けてみるのはどうでしょうか。」(木村[1992:22])

◆税制調査会 199712 「平成10年度の税制改正に関する答申」
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/zeicho1.html
 三「引き続き検討していく事項」3「国際的な税の引下げ競争」
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/zeicho5.html

 「3 国際的な税の引下げ競争
 経済のグローバル化、国際的な資本移動の自由化等を背景に、「税のダンピング」、 すなわち外国からの資本を誘致するために優遇税制等を導入する政策を意識的に採用す る国が目立ってきています。金融・サービスのようないわゆる「足の速い」経済活動に ついて、このような税の引下げ競争が行き過ぎると、[1]労働、消費といった可動性の低 い経済活動に対する相対的重課につながり、税体系全体の公平性・中立性が損なわれる、 [2]各国課税ベースが浸食される、[3]貿易・資本取引が歪曲される、という問題が生じる おそれがあります。
 こうした「税のダンピング」には、各国の税当局が国際的に協調して行動することが 不可欠と考えます。昨年来OECDにおいて、有害な税の競争を牽制するため、ガイド ラインを策定し、それに該当するような優遇税制の導入制限・縮減等が検討されており、 来年春に報告書がとりまとめられることになっています。
 このように、税について国際的協調を図っていくことの重要性はますます高まりつつ あります。当調査会としては、今後も、政府がこうした検討に積極的に参加していくこ とを期待します。」

◆坂本 忠次・和田 八束・伊東 弘文・神野 直彦 編 19990620 『分権時代の福祉財政』,敬文堂,324p. ISBN-10: 476700067X ISBN-13: 978-4767000671 [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b.

和田 八束 19990620 「21世紀の福祉と財政」,坂本・和田・伊東・神野編[1999:1-17]

 「日本の租税負担率は、なお低い水準にあるとはいえ、社会保障負担の比率が高く、増加の度合いも租税よりも大きい。こうした現象は、社会保障負担を”租税”ととらえることでも説明できるが、同時に「租税国家」の崩壊としてもとらえることができよう。
 中央集中型の福祉財政が、新しい分権型の福祉社会に変る時、これまでの「租税国家」も変質せざるをえない。
 租税のあり方としては、19世紀の「中立」から、20世紀においては「所得再分配」が基本理念とされていた。21世紀の租税理念としては、「参加型」ともいえるものに移行していくのではなかろうか。とくに、中心となるべき地方税においては、行政サービスとの対応、住民による参加と決定、コスト意識の重視という要素が基本となるのであり、それは住民自らの決定する「福祉サービスの価格」としてとらえられるであろう。それは、従来の「応益負担」に似ているともいえるが、より高度化した、新しい租税理念としてとらえるべきである。
 具体的な税の形として考えると、多くの税が「目的税」になるといってよかろう。地方税としては、自主課税が原則であり、地方財政需要に対応した税種と税収を決定することになり、その賛否は住民自治によって行われる。こうした地方自治の原則に立つかぎり、税は一般税ではなく、目的と限界を限定し、課税の範囲も特定した形の税にならざるをえてい。さきの地方分権推進委員会の「勧告」にも示されていた「法定外目的税」が多用化[ママ]されるといってもさしつかえない。
 21世紀においては、20世紀的な意味合いでの「租税国家」は、しだいに消滅していくことになるであろう。」(和田[1999:15])

◆金子 宏・永尾 正章 編 20000117 『グローバル戦略と国際税制――国際課税京都フォーラム第1回シンポジウムより』,清文社,210p. ISBN-10: 4433122394 ISBN-13: 978-4433122393 2000+ [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b.

◆本庄 資 20000910 『租税条約――国際課税の理論と実務・第3巻』,税務経理協会,308p.(本庄 資・川田 剛 編,日本税理士会連合会 監修) ISBN-10: 4419036567 ISBN-13: 978-4419036560 [amazon] ※ t07.

◆永峰 潤 20000925 『非居住者・非永住者課税――国際課税の理論と実務・第1巻』,税務経理協会,208p.(本庄 資・川田 剛 編,日本税理士会連合会 監修)ISBN-10: 4419036540 ISBN-13: 978-4419036546 28000+ [amazon] ※ t07.

◆中野 百々造 20000925 『外国税額控除――国際課税の理論と実務・第2巻』,税務経理協会,283p.(本庄 資・川田 剛 編,日本税理士会連合会 監修) ISBN-10: 4419036559 ISBN-13: 978-4419036553 3400+ [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆川田 剛 20001001 『タックス・ヘイブン対策税制、過少資本税制――国際課税の理論と実務・4』,税務経理協会,275p. ISBN-10: 4419036575 ISBN-13: 978-4419036577 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆舛添 要一 20001214 『舛添要一の税金のことが面白いほどわかる本』,中経出版,176p. ISBN-10: 4806114197 ISBN-13: 978-4806114192 [amazon][kinokuniya] ※ a07.

第8章 舛添要一の直言 民主主義のための税制改革
 「地方分権一括法が施行されましたので[…]課税自主権は強まりました。<0172<[…]ただ、問題は広域的に課税しないと、税金を逃れるために課税対象がよその町に逃げるということも起こりえます。東京都以外の道府県が外形標準課税を入れようとすれば、対象となる企業は他の地方に移るでしょう。東京都の場合、本社機能を東京に置きたい企業が多いからこそ、法人事業税の外形標準化が可能なのです。いずにせよ、地方自治を確立するために財源を確保するという地方の戦いは始まったばかりです。」(桝添[2000:172-173])

◆神野 直彦 編 20001225 『分権型税財政制度を創る――使え!!自主財原』,ぎょうせい,分権型社会を創る5,376p. ISBN-10: 4324060193 ISBN-13: 978-4324060193 3150 [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b.

◆森信 茂樹 20010129 『日本の税制――グローバル時代の「公平」と「活力」』,PHP新書,203p. ISBN-10: 4569614612 ISBN-13: 978-4569614618 693 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆神野 直彦,自治・分権ジャーナリストの会 編 20010630 『課税分権』,日本評論社,248p. ISBN-10: 4535583048 ISBN-13: 978-4535583047 1890 [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b.

◆古橋 隆之 20011106 『納税者反乱――賢い国際節税法』,総合法令出版,263p. ISBN-10: 489346728X ISBN-13: 978-4893467287 1680 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

 「現在の日本では様々な改革が唱えられています。行政改革、財政構造改革、政治改革、金融システム改革、社会保障改革、司法改革、教育改革など等。このいずれも「国民のために必要不可欠な社会資本の整備」が機能していない、国民のためのではなく特定の既得権得者だけのものだから、改革すべきだということでしょう。
 そうすると税金についての考え方は、国家は国家として存在するために税金を取る、国家は税金を取るために存在するという考え方のほうが、残念ながら、日本の現状に合って<0001<いることになります。[…]
 国の経済を動かすのに、税金ほど重要なものはありません。平成一一年度の法人税率引き下げで実行税率は他の先進国並みの四一%となったものの、法人税を下げた後、日本企業全体の国際競争力が増したかというと、そうではありません。[…]
 まさに日本の税制は、納税者の立場から見ると全くいいことはないわけです。」(古橋[2001:1-2])

◆中里 実 20020620 『タックスシェルター』,有斐閣,319p. ISBN-10: 4641129118 ISBN-13: 978-4641129115 3150 [amazon][kinokuniya] ※

◆本庄 資 20020801 『国際的租税回避――基礎研究』,税務経理協会,386p. ISBN-10: 4419040165 ISBN-13: 978-4419040161 3990 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆海外投資を楽しむ会 20030807 『小富豪のためのタックスヘイヴン入門』,東洋経済新報社,353p. ISBN-10: 4492731660 ISBN-13: 978-4492731666 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆本庄 資 20030901 『アメリカン・タックス・シェルター――基礎研究』,税務経理協会,351p. ISBN-10: 4419042362 ISBN-13: 978-4419042363 [amazon][kinokuniya] ※ t07. t07b

◆本庄 資 20041001 『国境に消える税金』 ,税務経理協会,313p. ISBN-10: 4419044497 ISBN-13: 978-4419044497 3780 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆神野 直彦・宮本 太郎 編 20061205 『脱「格差社会」への戦略』,岩波書店,234p. ISBN-10: 4000237705 ISBN-13: 978-4000237703 1680 [amazon][kinokuniya] ※ e03. t07. t07b.

◇大沢 真理・三木 義一・神野 直彦 2006 「有効で公平な税制とは何か」、神野・宮本編[2006:18-48]
 「金融所得への課税を重くすれば海外へ逃げてしまうとか、法人税を重くすれば企業は海外へ出て行くなどとよく言われますが、かつてOECDが警鐘を鳴らしたように、有害な税の割引競争はやがて各国の税制を蝕みます。
 現在はむしろ、国際取引を利用した租税負担回避のほうが大きな問題です。きちんと負担をさせるよう、日本でも税法上の適切な手当が必要です。そうでないと、海外に移動できない中小・零細企業や給与所得者だけが、税負担させられることになりかねません。」(大沢・三木・神野[2006:30-31]、三木の発言)

◆本庄 資 20061220 『米国マネーロンダリング――米国財務省・IRS‐CI捜査 基礎研究』,税務経理協会,325p. ISBN-10: 4419048565 ISBN-13: 978-4419048563 4200 [amazon][kinokuniya] t07 t07b.

◆Chavagneux, Christian & Palan, Ronen 2006 Les paradis fiscaux, Editions La Decouverte=20070520 杉村 昌昭 訳,『タックスヘイブン――グローバル経済を動かす闇のシステム』,作品社,169p. ISBN-10: 4861821282 ISBN-13: 978-4861821288 1680 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第4章 タックスヘイブンへの対抗策
 公的規制の歴史――大国の三度の失敗
 「タックスヘイブンを法律的に世界地図から抹消するのは、形式的には簡単なことである。つまり、大きな金融市場をもつ国家(アメリカ、イギリス、日本など)が、その国内法のなかに、タックス・[ママ]ヘイブンの地域に関わるいっさいの商取引は違法である、と書き込めば「充分」なのだ。そうすれば、ある程度の不法行為は周辺部分で生き延びるかもしれないが、タックスヘイブンで堂々と行われる活動は縮小されるだろう。そして、当然のことながら、投資や金融の回路、つまりあらゆるグローバルな経済活動は、縮小を余儀なくされるだろう。しかし、これこそが、関係諸国がこの道にけっして踏み込もうとしない理由なのである。
 しかしながら、公的な政策によってオフショア市場の役割を統制し弱めることはできる。それは二十世紀に三回ほど試みられた。しかし、確信と忍耐に欠けるものであった。今、EU(ヨーロッパ連合)のなかで、<0123<三つの異なった政策を通して、新たな試みがはじまっている。それらの政策はタックスヘイブンにメスを入れる重要な原理原則を提起しているが、その効果はまだ証明されていない。ともかく、タックスヘイブンの規制は、私的アクター(行為主体)に任せることができない問題である。自己規制では話に成らないのだ。
 タックスヘイブンは、オルター・グローバリゼーションの国際的な社会運動からも批判の対象になっている。しかしこの社会運動の動員力からすると、タックスヘイブンの分析を共有し、共同行動を開始すれば、なんらかの成果を獲得できることを最近の動きは示している。」(Chavagneux & Palan[2006=2007:123-124])

 1 公的規制の歴史――大国の三度の失敗
 国際連盟とルーズベルトの挫折――一九二〇〜一九四五年 125
 アメリカの敗北と転向――一九四五〜一九九八年 127
 ブラックリスト政策――一九九八年〜二〇〇〇年 128

 「OECDの目標は、結局、いかに逸脱的な行為をも正常なものとし、課税率を全体的に引き下げて、諸大国が税による圧力を弱めることによって、タックスヘイブンを健全な競争に仕向けるか、それだけであった」(Chavagneux & Palan[2006=2007:134])
 「国際的な公的政策は、こうして、犯罪行為への攻撃から、タックスヘイブンが世界経済のなかで果たしうる「肯定的役割」を確保するための新たな共通規範の探求の方へと移行したこ。それで、タックスヘイブンの行なっている行為に対して一定の規制を導入するかわりに、その存在権を正当なものとして認めようという<0136<取引がはじまった。」(Chavagneux & Palan[2006=2007:136-137])

 2 ヨーロッパで上がった烽火 138
 「ここ数年、ヨーロッパ委員会は、三つの異なった方向で歩みを進めようと試みている。第一の方向は、二〇〇一年からはじまった、法人税のハーモナイゼーションである。[…]<0139<
 第二の道は、非居住者の貯蓄への課税である。[…]<0140<
 第三の介入分野は、一九九二年一二月に動きはじめたが、きっかけは、OECDがはじめた有害な税務実践への対策にどう対応するかという議論であった。[…]<0141<
 この行動規範は、また、ある重要な革新的な要素を含んでいた。すなわち、とくに租税問題で主権を侵害するような政策をいかなる国も国家連合も押しつけることはできないという、従来からオフショア地域が主張していた異議を、この規範で回避することが出来るのである。この点に関連して言うと、この規範は「公平な課税」の原則を押しつけようとはしていない。逆に、OECDの路線にしたがって、国家間の租税競争の原則を受け入れながら、各国は税金に関して選択の自由をもつことを認めている。ただし、租税の規則が地域内に存在するすべての人々にとって同一であるかぎりにおいて、という重要な一点が明記されているのである。これはオフショア地域にとっては強力な拘束になる。なぜなら、これらの地域が世界経済に参入するための基本方針の一つは、まさに居住者と非居住者のあいだに租税規則の差異を設定するということだからである。」(Chavagneux & Palan[2006=2007:139-142])

◆赤松 晃 20070810 『国際課税の実務と理論――グローバル・エコノミーと租税法』,税務研究会出版局,415p. ISBN-10: 4793115691 ISBN-13: 978-4793115691 3400+ [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆Brittain-Catlin, William 2005 Offshore: The Dark Side of the Global Economy=20080103 森谷 博之 監訳/船見 侑生・長坂 陽子・熊谷 義彰 訳,『秘密の国 オフショア市場』,東洋経済新報社,325p. ISBN-10: 4492443452 ISBN-13: 978-4492443453 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第8章 オフショアの崩壊
 「ケイマン諸島の成功は、第二次世界大戦後、ケイマン諸島が他地域との差別化を図ったことに基づく。国民国家が自由貿易や資本の移動にまだほんの少ししか門戸を開いていなかった時代には、ケイマン諸島は他の国に対して優位な競争力を持っていた。[…]
 ケイマン諸島とその仲間たちは、古い世界経済の形である境界や障壁に対する新しい力となった。政治家たちにほんの少しだが障壁を引き下げさせ、外部からの資本と海外企業に経済を開放させるための圧力となった。なかでもマーガレット・サッチャーとロナルド・レーガンに投票した有権者にとって大きかったのは、それぞれの国で減税を行わせる力となったことである。この1980年代におけるアメリカの減税により、90年代のアメリカは世界経済を牽引する役割を果たす事になく。減税とその効果はその後、他の欧米の経済、主にイギリス経済に影響を及ぼした。理論的には、経済成長は広<0212<範な税基盤に貢献するので、より国庫歳入に貢献するはずだった。[…]
 先進国は、財政緩和と競争という、タックスヘイブンから学んだやり方によって、世界における資本の解放に踏み切ったが、ほどなく彼らは国家の税基盤がダメージを受けているのことに気づいた。[…]問題の原因はまさに彼らが解決法として推し進めていたもの、つまり資本や所有を制限から解き放ち世界中で自由に漂流させたことにある。財務大臣は犯人探しを行い、そして見つけたのである。主犯は、オフショアのタックスヘイブンだった。1990年代の終わり、競争を取り除いて税との調和を図りましょう、というのがお金持ちクラブの、特にヨーロッパからのメッセージだった。経済的に進歩を遂げた世界は、さらに次の段階に進んだ。減税競争という圧力は管理(コントロール)され、新たな「適正」レベルの競技場が用意されなければならなかった。
 突然、ケイマン諸島やその他のオフショア・ネットワークは冷遇を受けることになった。」(Brittain-Catlin[2005=2008:212-213]、「税との調和」→)

◆2009/10/22 税制調査会(第3回)議事録
 http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/pdf/21zen3kaia.pdf

日 時:平成21 年10 月22 日(木) 午後5時〜
場 所:合同庁舎第4号館11F 共用第1特別会議室

○横山財務省主税局参事官
 国際租税担当の横山でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料の2ページ目「国際課税の基本的な考え方」から御説明させていただきたいと思います。
 国際課税においては、「我が国の適切な課税権の確保」「我が国経済の活性化」「国際的な二重課税の調整」という3点の政策目的実現を図る必要がございます。その1点目の中の国際的租税回避への対応というところで、先ほど古本政務官がおっしゃった移転価格税制とか、外国子会社合算税制というものがございます。
 そして、下のてんびんの絵にございますように「課税権の確保(租税回避行為の抑止等)」と「我が国経済の活性化(投資交流の促進等)」のバランスをとりながら施策を実施していく必要があると考えております。
 次に、この3つの政策目的を実現させるための重要なツールとして「我が国の租税条約ネットワーク」というものがございます。現在45 条約があり、56 か国に適用されてございます。
 下の囲みの(参考)でございますが、条約交渉から外務委員会で審査していただいた上で行われる国会承認、発効・公布に至るこういう一連の流れにつきましては、外務省主管で行っております。
 4ページ「租税回避を巡る国際的な議論の動向」につきましては、G8、G20 で、いわゆるタックスヘイブン、この「タックスヘイブン」の「ヘイブン」というのは「天国」という意味ではなくて、避難所という意味なんですが、不透明な資金の流れというものが問題視されていまして、OECDでそのような議論も踏まえつつ、税の情報交換ネットワークの強化等について議論を行っているところでございます。
 5、6ページ目が、現在の我が国における租税回避への対応の主要な制度の概要でございます。
 まず「外国子会社合算税制について」ですが、我が国の内国法人が、実体のない外国子会社等を通じて取引を行うことによって、直接取引するよりも不当に税負担を軽減回避するということが生じ得ます。
 これに対応するために、一定の税負担の水準(25%)以下の地域にある実体のない外国子会社の所得につきましては、日本にある法人の所得とみなして、合算して課税する制度でございます。
 ただし、何でもかんでも課税しているわけではございませんでして、その外国子会社に実体のある事業を行っている等の一定の条件(適用除外基準)、これは下の方の囲みに小さく書いておりますが、これを満たす場合には、合算の対象とはなりません。6ページが、先ほど政務官から御説明がありました「移転価格税制について」でございます。
 これは代表的には、日本の親会社、海外の子会社の間で取引を行う。この際の取引<26<価格を移転価格と申しますが、これがもしもお互いに独立した関係、例えば資本関係が全くない企業間である取引価格と異なれば、それは所得の移転ということが行われるということで、それを独立企業間価格といいますが、そういうものに引き直して課税する制度でございます。これにつきましては、両国間で同じような課税をやると二重課税が当然起こり得るわけなので、租税条約におきまして、相互協議を通じて調整する枠組みが設けられております。これが政務官が御指摘のような問題点がございます。
 最後に「国際課税の主な課題」でございます。大きく2点「我が国の適切な課税権の確保」「企業活動の活性化と租税回避の防止とのバランスの確保」というものがございます。
 1番目の@としては、税の情報交換ネットワークの拡充ということで、租税条約の締結とか、情報交換の実施円滑化のための国内法整備があります。Aとしては、適切な課税・徴収のための措置ということで、クロスボーダー取引を行う非居住者の課税の確保とか、国外にある資産に関する情報を把握するということがございます。
 2番目の@としては、外国子会社合算税制の見直しということで、先ほど申しました適用除外の基準の見直しでして、これは実際に国外に進出されている企業の事業形態の変化に応じて、その実態を見て、実体のない子会社等を定義する基準を見直す必要ということもあるのではないのかということと、利子、配当のような資産運用的な所得を外国の子会社に付け替えてしまっているような租税回避行為というものを防止するということ。
 Aとしては、移転価格税制の見直しということで、価格算定に必要な文書に関するルールの整備というものが論点でございます。これは外国の主要国においては法令等で明示されているのでございますが、我が国においては法令では明示されてはございません。
以上でございます。
○峰崎財務副大臣
 ありがとうございました。それでは、皆さんから御質問をお受けしたいと思います。
武正外務副大臣、どうぞ。
○武正外務副大臣
 先ほど峰崎座長からもお話があったように、国際連帯税については、先日、西村政務官が国際会議でやはり問題提起をしてまいりました。全世界的にやはり貧困撲滅あるいは人間の安全保障等、そうした必要な財源をそれぞれの国が当然ODAなどで捻出をしているのですが、やはりそれぞれ各国の財政事情が厳しい中で、そうした国際的な連帯税というものができないだろうかと。例えば航空チケットなどに何か活用するとか、そういうアイデアが出ているということなので、是非こうした点は、我が国<27<であるからこそ、よく主張していいのではないのかなと思っております。
 それから、3ページの「我が国の租税条約ネットワーク」なんですが、今、大体外務省では、年に3〜4本の租税条約と、投資条約というものも年に3〜4本、ここには出ておりませんが、年金課税、ダブルで払わないようにということで、社会保障協定、このいずれも年に3〜4本ということなんですが、実はここで45 条約56 か国は多そうに見えるんですけれども、中国とか韓国とかは100 に近い協定や条約を結んでいまして、実はまだまだ日本は遅れております。ですから、年に3〜4本というのをもっと加速しなければならないという問題意識を持っております。
 3点目は、ここには出ておりませんが、国際会計基準。これはもうお話があったのでしょうか。この導入ということが、特にヨーロッパ、EUから発せられておりますけれども、実はこういった会計基準が大きく変わると、また課税基準なども変わってくるわけですから、これをどう考えていくのかということもあるのではないかなと思います。
○峰崎財務副大臣
ありがとうございました。
中川文部科学副大臣、どうぞ。
○中川文部科学副大臣
 私も同趣旨です。特に連帯税の話なんですが、環境分野で25%を打ち出しただけに、そこをよく言われるキャップ・アンド・トレードで、いわゆる投機的資金へ向いて話を持っていくという選択肢に対して疑問を呈するとすれば、連帯税で、いわゆる環境税というものを共通化していって、そこから技術移転の資金捻出をしていくという構想を日本から具体的に打ち出して、持って行ってもいいのではないかなと思います。そこの連帯税と、もう一つは金融分野での連帯税です。こういうものはもっと具体化をして、世界でそういうチャンスがあったときに提起をしていくというところまで進むべきだと思います。やらなければいけないよという話ではなくて、そのように思っているんです。
○峰崎財務副大臣
大塚内閣府副大臣、どうぞ。
○大塚内閣府副大臣
 2つ質問させてください。
 1つは、外国子会社合算税制のところで、租税回避行為をとっているようなことが判明した場合には、重課税と何か罰則があるのかということ。
 もう一つは、こういう子会社合算税制や移転価格税制等を総合的に見て、日本の税制は不利益だからといって、海外に逃避行動をする傾向にあるというか、むしろこちらに入ってくる傾向にあるのか、そこの当局の認識をお伺いしたいです。
○峰崎財務副大臣<28<
まず、古本財務大臣政務官、どうぞ。
○古本財務大臣政務官
 古本です。少なくとも移転価格税制に関して言えば、例えばアメリカの方が格段に安いから、向こうに利益を留保しようとか、どこかフランスの方が安いから留保しようという国際的な税率にはなっていなくて、むしろ本当に当局との見解の相違というものが実体上は多いと承知しています。
 つまり、そうやってタックスヘイブンに行くメリットというのは、そういった国で大体、例えば製造業が大きな工場をつくって操業していることはあり得ませんので、そういったことが多いのではなかろうかと承知しています。
○峰崎財務副大臣
先ほどの質問は2つありましたが、どうですか。答えられますか。
○横山財務省参事官
 第1点目につきましては、そういうものが見つかった場合につきましては、通常の法人税の過少申告の場合と同じような扱いということになります。
 第2点目につきましては、入りと出のところなんですが、私ども今はデータを持っておりませんが、今後ともそういうものについてもデータが入手可能であれば、把握に努めてまいりたいと思います。
○峰崎財務副大臣
 国際連帯税の導入状況というのは、主税局でつかんでいますか。後でもしわかれば、皆さんに航空連帯税というものはどういう国で入っているのかとか、金額的にはどのぐらいなのかということをお願いします。
諏訪園調査課長、どうぞ。
○諏訪園財務省主税局調査課長
 まず、国際連帯税につきましては、どのようなものに課税するのかという議論は未定なところがございますが、今、副大臣からお話があったのは、1つ、フランスを中心に行っている航空券に課税する話であろうかと思います。航空券連帯税ということで、これはシラクフランス大統領が安定的な開発資金源として国際税の導入を2004 年に提唱したことを受けて、私どもの手元に今あるのは2008 年1月段階での数字ですが、8か国で航空券連帯税を導入しております。フランスのほか、チリ、コートジボワール、コンゴ、韓国等々でございます。
 例えばフランスでは、2006 年7月にフランス出発便を対象として航空券連帯税を導入しておりますが、参考までにフランスでの税率を申し上げますと、国内欧州圏内便でエコノミーであれば1ユーロ、ファースト、ビジネスクラスでは10 ユーロ、国際便では同じく4ユーロと40 ユーロ。2007 年の税収は1.6 億ユーロ、約260 億円ということでございます。
 通貨取引税については、現在そのような税を課している国はございません。<29<
○峰崎財務副大臣
 現状でございますけれども、御存じのように、イギリスのFSAの総裁がトービンタックスの導入を提案した等だとか、世界的にもいろいろ出始めておりますので、これらの問題は、是非我々も税調の場で、もしできれば、今後継続して議論していったらいいのではないかなと思います。
 先ほど会計基準のお話がありましたが、これは恐らく金融担当副大臣のおはこのところなんですが、多分税会計といわゆる企業会計とのギャップが出てくると思います。
 ですから、時価会計で本当に未実現の利益まで取り入れてしまって、それが実はだめだったというときに、一体これはどういう扱いになるのかということは、時価会計の凍結みたいに言ってしまったんですけれども、そういうことを含めて、これは税制上はどういう問題が起きるのか、あるいはストック・オプションの扱いでそういうものをもらっていて、実はお前さん、それは利益なんかなかったよと言われたときに、返せと言ったときにどうするかとか、税制上はいろんな大きい問題がありますので、これはまたいつか会計基準といわゆる税基準の議論をする材料として、問題提起として受け止めたいと思いますが、よろしゅうございますか。
○武正外務副大臣
結構です。


 
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◆立岩 真也 2009 「税制について・6〜7」,『現代思想』 資料

◆立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 20090910 『税を直す』,青土社,350p. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 2310 [amazon][kinokuniya] ※ t07.


UP:20090429 REV:20090502, 05, 0628, 20100410
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