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WTO 2003



科学技術・国際競争・国家戦略・…
科学技術・国際競争・国家戦略・…2003


◆2003/01/22 WTOは誰のため?東京行動実行委員会→外務大臣
 「質問及び要請書」
◆2003/02/05 日本、特許緩和で提案=EU案を修正−WTO会合
 時事通信ニュース速報
◆2003/02/05 African States Rebuff EU Plan on Cheap Drugs
 GENEVA (Reuters)
◆2003/02/06 「コピー薬輸入解禁「22疾病先行」 日本が打開案」
 『朝日新聞』2003年2月6日(木)朝刊
◆2003/02/06 「製薬特許権 日本、緩和を提案 エイズなど、コピー薬容認」
 『日本経済新聞』2003年2月6日(木)夕刊
◆2003/02/06 「医薬品特許問題の早期解決を=途上国の新ラウンド参加促進で−駐日EU大使」
 時事通信ニュース速報
◆2003/02/06 「エイズ治療薬で独自案提出 WTO理事会で日本政府」
 共同通信ニュース速報
◆2003/02/08 <社説>「新ラウンド 東京会議で交渉に弾みを」
 毎日新聞ニュース速報
◆2003/02/10 「エイズ治療薬で進展目指す WTO一般理事会」
 共同通信ニュース速報
◆2003/02/11 「<WTO>エイズ治療薬問題の結論先送り 東京会議で議論へ」
 毎日新聞ニュース速報
◆2003/02/14 東京で集会 →2003/02/15  「エイズ「コピー薬の認可を」」
 NHKニュース速報
◆2003/02/15 「<WTO>医薬品特許問題で途上国の不満続出 非公式閣僚会議」
 毎日新聞ニュース速報
◆2003/02/16 「WHOに監視業務依頼 エイズ薬輸入でブラジル案」
 共同通信ニュース速報
◆2003/02/16 医薬品、対立解けず WTO会合 途上国「例外幅広く」
 『日本経済新聞』2003年2月16日(日)朝刊
◆2003/02/17 「農業・医薬 進展なし WTO東京会合閉幕」
 『日本経済新聞』2003年2月17日(月)朝刊 他
◆2003/02/17 「[新ラウンド]「ほど遠い自由化ルールへの道」(社説1)
 『読売新聞』2003/02/17
◆2002/02/18 「新ラウンド推進 WTO超える論理も必要だ」(社説)
 『毎日新聞』2002/02/18
◆2003/02/19 「エイズ薬問題、結論出ず=WTO」
 時事通信ニュース速報
◆2003/07/16 「治療薬特許緩和の合意期待 スパチャイWTO事務局長」
 共同通信ニュース速報
◆2003/08/29 「エイズ治療のコピー薬、途上国の輸入合意へ WTO」
 『朝日新聞』2003/08/29 についての稲場雅紀さんのコメント

   
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◆2003/01/22 WTOは誰のため?東京行動実行委員会→外務大臣
 「質問及び要請書」

質問及び要請書
外務大臣 川口順子様 2003年1月22日

 私たち「WTOは誰のため?東京行動」実行委員会は、世界貿易機構
(WTO)に関わる問題に対し、関心を持ち行動しているNGOや農民団体、
労働組合、消費者団体などの団体が参加するネットワークです。現在、
様々な分野で活動するこうした市民団体が、世界中で同じように活動
する団体と連絡・連携をとりながら、各々の分野で活動を展開してお
り、市民側のこうした動きは徐々に日本でも広まってきています。
 こうした市民側の意識の高まりに伴い、様々なWTOの問題点が指摘
されています。その中でも、WTOの交渉プロセスの非民主性はかねて
から問題視されてきました。WTO本会議に先立って行われる非公式閣
僚会議は、招待される国の基準が明確でなく、会議の内容はすべて非
公開であり、閣僚会議に招待されなかったWTO加盟国や市民にその内
容が全く知らされないことから、いくつかの途上国政府や市民側から
その非民主性を非難されてきました。このような密室での非民主的な
会合であるにもかかわらず、この閣僚会議で一握りの国々によって決
定された事項が、WTO加盟各国に影響を及ぼしていることは問題だと
思われます。
 以上のような問題が指摘される中、WTO非公式閣僚会議が2月に東京
で開催されることが新聞等で報道されております。しかし、1ヶ月前
になっても国民に会議の詳細が全く情報公開されていないのはまこと
に遺憾であります。東京での非公式閣僚会議開催は、いつ、どこで行
われるのでしょうか。また、以下の5点に関し、質問させていただき
たいと思います。
1. 非公式閣僚会議の目的は何ですか
2. 同会議の議題は何ですか
3. どこの国に対して招待状を送っているのですか
4. その国々を招待することは誰が、どこで決定したのでしょうか
5. この会議は誰に対して責任を負い、報告がなされるのでしょう
   か
 以上の質問に加え、WTO意思決定プロセスをより民主的なものにす
るために、市民からだされる意見を討議の場に取り入れていただける
よう要請したいと思います。その点に関連して、私たちが2月14日に
予定している会議で採択される提言書を、閣僚会議が始まる前に各国
政府代表者に手渡したいと考えており、日本政府はそのための場を設
けていただくことを要請したいと思います。
 また、この間日本政府・外務省はNGO向け事前の説明会を熱心
に行ってきましたが、今回に限りないようです。早急に事前説明会
を行うことも併せて要請します。
以 上

●「WTOは誰のため?東京行動実行委員会」
【賛同団体 1月20日現在23団体】
ATTAC Japan、平和フォーラム(フォーラム平和・人権・環境)、日本
消費者連盟、ストップ!遺伝子組み換えイネ 生協ネットワーク、
全日農(全日本農民組合連合会)、アジア太平洋資料センター(
PARC)、「みんなの種」宣言、ACA(Anti-capitalist action)、ア
ジア連帯講座、APF(Anarcho Punk Fedration)、Oxfam
International日本事務所、日韓投資協定NO!緊急キャンペーン、日
韓ネット(日韓民衆連帯全国ネットワーク)、農民連(農民運動全国
連合会)、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)、
ピースネット、中小労組政策ネットワーク、全国一般全国協労働組
合、グローカル編集局、電気通信産業労働組合、協同センター・労
働情報、鉄建公団訴訟原告団(闘う闘争団)、食政策センター ビ
ジョン21、フィリピン・ピースサイクル

   
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 【ジュネーブ5日時事】「日本は5日、エイズ治療薬などの特許緩和問題の打開に向けた提案を、世界貿易機関(WTO)貿易関連知的所有権(TRIPS)理事会の非公式会合に提出した。1月初めの欧州連合(EU)案に沿った内容だが、開発途上国が安価に輸入できるコピー薬の対象となる病気の範囲については、世界保健機関(WHO)ではなく、TRIPS理事会が最終判断するとした。
 WTOの問題解決を他の国際機関に委ねることに難色を示す加盟国が多かったため、EU案を修正している。」
 [時事通信社][2003-02-05-21:06]

   
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◆ロイター通信「アフリカ諸国、EUの計画をはねつける」

*稲場さんより

皆様 こんにちは。
Health GAP/ACT UP Philadelphia のAsia Russellさんが送ってくれた記事で、
WTOの医薬品協議に関するアフリカ諸国の態度についてのニュースです。アフリカ諸
国は、とりあえずまとまってEU案に対抗するようです。
稲場 雅紀

************

February 5 2003

African States Rebuff EU Plan on Cheap Drugs

GENEVA (Reuters) - African states on Tuesday rebuffed a European Union (news
- web sites) bid to break a deadlock in world trade talks over access to
life-saving medicines for poorer countries.

The 144 World Trade Organization (news - web sites) (WTO) states have been
wrangling since the launch of free trade negotiations in Doha, Qatar, in
November 2001 over how to overcome patent rules on medicines for countries
facing health emergencies and which do not have any domestic drug industry.

The EU launched its proposal for an advisory role for the UN World Health
Organization (news - web sites) (WHO) on health emergencies after the WTO
countries failed to meet an end-2002 deadline for a deal on drugs.

But African countries, meeting for the first time on the issue since
Brussels announced its compromise in January, said the EU scheme was not a
solution to the problem.

"While we welcome the EU effort, it does not fully respond to our concerns,"
said senior Moroccan embassy official Abdesselem Arifi, whose country holds
the rotating presidency of the African Group within the WTO.

Developing countries, particularly those in Africa, reject any attempt to
narrow the scope of the pact because they say that could hamper their
ability to tackle future health crises.

Talks collapsed just before Christmas after the United States, which is home
to many of the world's leading drug companies, demanded that any accord
specify the types of diseases to be covered.

Washington put forward its own list of some 20 infectious diseases,
including AIDS (news - web sites) and malaria, for which it said it would
allow patent rights on drugs to be suspended in any emergency. The US said
it would not take any action under the WTO's dispute procedures against any
developing country that sought to import cheaper generic copies of patented
medicines to treat these diseases.

The EU plan would allow countries to turn to the WHO if they believed a
disease not included on the list poses a serious threat to public health.

"The EU plan is not acceptable. We do not want to surrender our flexibility
to the WHO," Nelson Ndirangu, Kenya's representative at the drug talks,
said.

Under existing WTO rules, member states have the right to issue so-called
compulsory licensing orders to their pharmaceutical companies to make
generic copies of drugs when they feel they face an emergency or when
patented medicines are not available at reasonable prices.

But the rules do not allow for the export of such drugs, so states without
any, or without a sufficiently advanced, domestic drug industry to make the
copies cannot take advantage of them.

The United States says it is still committed to finding a solution to the
drug issue, but it says that it does not favor imposing fresh deadlines.

--
Asia Russell
Health GAP
ACT UP Philadelphia
asia@critpath.org
1 215 474 9329 office
1 267 475 2645 mobile
www.healthgap.org

   
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◆2003/02/06 「コピー薬輸入解禁「22疾病先行」 日本が打開案」
 『朝日新聞』2003年2月6日(木)朝刊

 【ジュネーブ=荒田茂夫】「エイズ治療薬などについて、特許料減免の安いコピー薬を途上国が輸入できるようにする問題を討議している世界貿易機関(WTO)の会合で5日、日本が事態打開案を示した。
 特許権がなし崩しになることを警戒する米国は、コピー薬を容認する範囲を、エイズ、マラリア、結核などの深刻な感染症に限定すべきだと、主張している。途上国は、公衆衛生上必要がある場合には感染症に限らず、広い範囲でコピー薬の輸出入を認めるべきだとして、対立している。
 日本案はまずエイズなど22の疾病について、無条件に容認し、それ以外の治療薬については、途上国が必要に応じてWTOに相談し、WTOが専門家の意見などを聞きながら適否を判断する、としている。」

   
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◆2003/02/06 「製薬特許権 日本、緩和を提案 エイズなど、コピー薬容認」
 『日本経済新聞』2003年2月6日(木)夕刊

 【ジュネーブ=清水真人】「日本政府は5日、世界貿易機関(WTO)に、懸案である製薬関連の特許権の緩和に関する新規案を提出した。エイズ、マラリアなど22の感染症を対象に、特許料を支払わずに製造したコピー薬の輸出や輸入を認める新制度を創設する。欧米製薬会社が持つ特許を手厚く保護するWTOルールが、安い医薬品入手を妨げているという途上国の声にこたえる。
 WTOは昨年末を起源としてこの交渉の決着を目指したが、米国が産業界の圧力を受け、権利保護を緩めることに慎重姿勢を崩さず、決裂した。途上国の反発は強く、新多角的通商交渉(新ラウンド)の足を引っ張っている。日本は14日から東京で主催する非公式閣僚会議での事態打開をにらみ、新提案をした。合意できれば議長国として大きな成果となる。
 米国は特許権の「風穴」が広がれば、製薬会社が研究開発投資の意欲を失うと主張。途上国は新制度の適用対象を広くしたい思惑で、溝が深い。日本案は当面は製薬特許を緩める対象となる疾病を22に限定し、さらに拡大するかどうかはWTOの知的所有権理事会で専門家の意見も聞いて判断する、という内容だ。
 新制度は特許保護の例外として条件つきでコピー薬の取引を認める。アフリカなどの最貧国は無条件で輸入できるが、それ以外の途上国は医薬品の製造能力の不足などを証明する必要がある。」

   
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◆2003/02/06 「医薬品特許問題の早期解決を=途上国の新ラウンド参加促進で−駐日EU大使」
 時事通信ニュース速報

 「欧州連合(EU)のツェプター駐日大使は6日、都内で記者会見し、エイズ治療薬などの特許権緩和問題の早期解決が世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(新ラウンド)への途上国参加に欠かせないと指摘した。10日からのWTO一般理事会で合意できない場合、同問題は、14−16日に東京で開く同非公式閣僚会合の主要議題となる。
 医薬品特許問題は、昨年末までの合意を目指していたが、コピー薬製造を認める対象疾病をめぐって、製薬会社を抱える米国と途上国が対立、決着が越年した。同大使は「新ラウンドに途上国が参加する気になるためには、この問題で成果が必要だ」と語った。」
[時事通信社]
[2003-02-06-21:13]

   
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◆2003/02/06 「エイズ治療薬で独自案提出 WTO理事会で日本政府」
 共同通信ニュース速報

 「【ジュネーブ5日共同】日本政府は世界貿易機関(WTO)貿易関連知的所有権(TRIPS)理事会の非公式会合で五日、エイズ禍などに苦しむ途上国が安価なコピー薬を調達するための独自案を提出した。
 大手製薬会社の特許を保護したTRIPS協定の特例を適用するのはエイズなど二十二の感染症を原則とし、拡大する際はTRIPS理事会や外部の専門家が検討するとしている。
 しかし、適用範囲をめぐる先進国と途上国の対立は深刻で、日本案が受け入れられるかどうかは不透明。今月十―十一日のWTO一般理事会で合意が達成できなければ、十四日からのWTO非公式閣僚会議(東京会議)で農業と並ぶ主要議題として論戦が展開されることになりそうだ。
 この日の日本提案は、欧州連合(EU)が一月に提出した案とほぼ同様。EU案は対象範囲の拡大時に世界保健機関(WHO)が是非を検討するとしたが、日本案はTRIPS理事会が関与する度合いを強めた内容になっている。
 WTOは一昨年、途上国のコピー薬調達では原則合意に達しながら、特例を適用する疾病の範囲をめぐり対立、最終合意が得られていない。
(了)」
[2003-02-06-07:44]

   
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◆2003/02/08 <社説>「新ラウンド 東京会議で交渉に弾みを」
 毎日新聞ニュース速報

 「世界貿易機関(WTO)の非公式閣僚会議が14日から16日まで東京都内で開かれる。WTOとして初めての多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は01年11月、カタールのドーハで開始が合意された。9月にメキシコのカンクンで開かれる第5回閣僚会議では、05年1月1日の交渉期限に向け、それまでの合意事項の確認とともに、交渉の加速が図られる。
 東京会議は閣僚会議に向けた準備会合ではあるが、同時に、具体的な成果も求められている。開催国である日本が何をするのか、参加国は見ている。
 ドーハ・ラウンドは、初めて農業貿易やサービス貿易にまで踏み込んだウルグアイ・ラウンドの後ということもあり、当初から、参加国の熱意はいまひとつだった。2国間や地域での自由貿易協定(FTA)の活発化も、新ラウンドの影を薄くしている。
 しかし、秩序立った貿易の自由化は途上国にとっても利益は大きい。保護主義の動きに対して、貿易ルールや自由化の強化が新ラウンドの中心に据えられているのはそのためだ。その際、環境への配慮も新たな課題として交渉テーマに上がっている。
 では、東京でやるべきことは何だろうか。
 第一は難航している農業交渉を一歩でも進ませることだ。これまでの交渉で、米国と農産物輸出国(ケアンズグループ)対欧州連合(EU)と日本という構図が明確化している。FTA志向を強める米国にとって有力な輸出産業である農業貿易の拡大は政治的にも得点になる。
 農業交渉では3月末までに、交渉の大枠(モダリティー)で合意することになっている。東京会議で合意ができる状況にはないが、交渉委のハービンソン議長は会議前に議長提案をまとめるといわれている。米国などとEU・日本の意見のかい離は大きいが、その距離を狭める努力が必要だ。同時に、日本はコメ貿易で腹をくくる決意を固めるべきだろう。
 第二は、途上国を交渉に協力的にする手立て作りである。
 ウルグアイ・ラウンド合意に基づいた現WTO協定には、そのまま適用されたのでは、経済発展段階の高くない途上国に不利になってしまう項目がある。途上国はそうした項目について義務内容の一部緩和などを求めている。また、途上国は知的財産権保護とからんで、エイズやマラリアなど感染症用医薬品の特許権緩和も求めている。感染症撲滅のため、安価な医薬品に道を開くためだ。
 このうち、医薬品問題では昨年11月のシドニー非公式閣僚会議で妥協に動いたが、米国などの製薬会社が難色を示し、東京会議に持ち越しになった。感染症への世界的な取り組みは日本が提案したものだ。日本は東京会議での合意に向け、米国、途上国の調整に当たるべきだ。
 日本は自由貿易で世界第2の経済大国になった。いま、世界に恩返しする意味でも、新ラウンド妥結に向け、汗をかく番だ。」
[2003-02-08-01:03]

   
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◆2003/02/10 16:26 エイズ治療薬で進展目指す WTO一般理事会
 共同通信ニュース速報

 【ジュネーブ10日共同】世界貿易機関(WTO)は十日、一般理事会を開き、アフリカをはじめとする最貧国がエイズ治療薬などを安く調達する方策を協議した。製薬会社の特許を保護した貿易関連知的所有権(TRIPS)協定の例外適用について進展が得られ
るかどうかが焦点。
 昨年末が本来の合意期限だったが、米国が適用範囲をめぐって強硬に反対したため、結論は今回の一般理事会に持ち越した。十一日までの会期中に合意が得られなければ、十四日からのWTO非公式閣僚会議(東京会議)で、先進国と途上国が非難合戦を繰り広げる
可能性がある。
 通商筋によると、WTO加盟国はTRIPSの例外を適用する必要性では既に原則合意している。問題は例外の対象となる疾病の範囲で、米国はエイズをはじめ「深刻な感染症」に限定するよう要求、途上国はがんなど非感染症も対象とするよう主張してきた。
 現在は疾病を特定せず、代わりに「国家規模の緊急事態」に限って例外扱いとする案が浮上。米国は軟化の兆しを見せているが、非政府組織(NGO)が強く反発し、妥協案を拒否するよう途上国に働きかけている。
 治療薬問題は、先進国と途上国がともに重視しており、早期合意がなければ新多角的貿易交渉(新ラウンド)への影響が懸念されている。
[2003-02-10-16:26]

   
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◆2003/02/11 「<WTO>エイズ治療薬問題の結論先送り 東京会議で議論へ」
 毎日新聞ニュース速報

 「世界貿易機関(WTO)は10日、一般理事会を開き、貿易関連知的所有権(TRIPS)協定の例外を適用しアフリカをはじめとする最貧国がエイズ治療薬などを安く調達するための方策を協議した。
 通商筋によると、治療薬問題の特別会合委員長を務めるメキシコのペレス駐ジュネーブ大使が提示した妥協案に対し、米国など一部の国が「なお検討に時間が必要」としたため、結論は17日以降のTRIPS理事会に先送りとなった。
 治療薬問題は昨年末が合意期限だったが、米国が適用範囲をめぐり強硬に反対したため決裂に終わった。再び結論が先送りされたことにより、14日からのWTO非公式閣僚会議(東京会議)で、治療薬問題が主要議題の一つになることが確実になった。
 通商筋によると、WTO加盟国は製薬会社の特許を保護したTRIPSの例外を適用する必要性では原則合意した。問題は例外の対象となる疾病の範囲で、米国はエイズをはじめ「深刻な感染症」に限定するよう要求、途上国はがんなど非感染症も対象とするよう主張してきた。
 ペレス大使は疾病を特定せず、代わりに「国家規模の緊急事態」に限って例外扱いとする案を提示。米国は軟化の兆しを見せているものの、非政府組織(NGO)が不十分だとして強く反発している。(ジュネーブ共同)」
[2003-02-11-19:53]

   
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◆2003/02/14 東京で集会 →2003/02/15  「エイズ「コピー薬の認可を」」
 NHKニュース速報

 「きのうから東京で始まったWTO=世界貿易機関の非公式閣僚会合で焦点のひとつになっているエイズ治療などに使う、いわゆる「コピー薬」の問題について、エイズ問題に苦しむ発展途上国にコピー薬の輸入や製造を認めるべきだと訴える集会が昨夜、東京で開かれました。
 これは途上国の支援を行っている国内外のNGOが共同で開いたもので、およそ五百人が参加しました。
 今回のWTOの非公式閣僚会合で焦点の一つとなっているエイズなどの治療薬の成分を真似た、いわゆるコピー薬の問題について、集会では特許法の規定をゆるめて、エイズ問題に苦しむ途上国が安く製造したり輸入したりすることを認めるべきだと訴える意見が相次ぎました。
 このうちタイのNGOの代表は、「WTOは治療薬の特許権を保護することで先進国の製薬会社が利益を独占することを許している。命よりも企業の特許権が重んじられるようなしくみは、ただちに変えなければならない」と訴えました。
 エイズなどのコピー薬をめぐるWTO交渉はアメリカが回答を留保していることから、まだ合意にいたっておらず、今回の会合でどこまで各国が歩み寄りを見せるかが注目されます。」
[2003-02-15-11:07]

   
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◆2003/02/15 「<WTO>医薬品特許問題で途上国の不満続出 非公式閣僚会議」
 毎日新聞ニュース速報

 世界貿易機関(WTO)の15日の非公式閣僚会議で、WTOの自由貿易ルールの適用で発展途上国を特別扱いする「途上国問題」では、特に医薬品特許の例外適用のあり方を巡って、参加途上国から合意の遅れに対する不満の声が続出した。米国中心の経済のグローバル化に反対するNGO(非政府組織)も会議に合わせて集会を開催し、先進国が途上国問題への真剣に取り組むよう訴えた。
 会議に参加したアフリカ諸国などの途上国は15日朝、急きょ会合を開き、途上国問題を今回の会議で重点的に取り上げるべきだとの意見で一致した。このため夕刻に予定していた同問題は、午後第一番目の議題に前倒しになり、結局この日午後は途上国問題の議論で終始した。
 途上国が特に重視にしているのは、エイズ治療薬など、特許で守られた正規の治療薬が高価なため、貧困国が安いコピー薬を第三国から輸入することを認める医薬品特許の例外適用問題。議事運営に異例の注文を付けたのは、同問題が、昨年末の合意期限にまとまらなかったからだ。
 この日の会合でも、途上国は幅広い病気でコピー薬の輸入を認めるべきだと主張。特許権の空洞化を恐れ、対象を特定の病気に限定したい米国など先進国と激しく対立。妥結に向けた具体的成果は得られなかった。
 地球規模の環境問題や貧困撲滅などに取り組むNGOは非公式閣僚会議に合わせ、東京都内でシンポジウムや1万人規模(主催者発表)の集会・デモ行進を14、15日相次いで開催。医薬品特許の問題では「必要な治療薬が、必要な人の手に入る世界」の実現を訴えた。また、15日にはNGO5団体の代表者が外務省幹部に会い、医薬品特許問題の早期解決などを求める要請書を提出した。」
【瀬尾忠義】[2003-02-15-20:18]

◆2003/02/15 「医薬品特許問題、進展見られず=早期解決では一致−WTO非公式閣僚会合」
 時事通信ニュース速報

 「東京都内で開かれている世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合は2日目の15日、午後の討議のすべてを途上国問題に充てた。このうち、焦点となっていたエイズ治療薬など医薬品の特許権緩和問題では、早期解決を目指すことで一致したものの、具体的進展は見られなかった。
 討議では、多くの途上国が「このままでは、新多角的貿易交渉(新ラウンド)全体のプロセスが遅れる」とけん制し、医薬品特許問題への取り組み強化を要求。これを受けて、各国が抱える問題について主張をぶつけ合い、WTOの枠組みで早期解決を図ることでは一致したが、「前進は見られなかった」(WTO筋)という。」
[時事通信社]
[2003-02-15-21:12]

   
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◆2003/02/16 「WHOに監視業務依頼 エイズ薬輸入でブラジル案」
 共同通信ニュース速報

 「エイズなどの疾病の治療薬を途上国が安く調達できる特例を設ける問題で、ブラジルが世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会議に示した新提案の内容が十六日、明らかになった。安価な薬品調達を望む途上国の医薬品製造能力の監視を、世界保健機関(WHO)に依頼、製造能力のある国には特例を認めない内容となっている。 ブラジルは今週半ばにも開かれるWTOの会合にこの案を再度示す。欧州連合(EU)はブラジル案を「建設的だ」と評価しており、解決に向け前進する可能性が出てきた。
 WTOはエイズなどの感染症に苦しむ国のうち薬品製造能力がない国には、特許使用料支払いを免除した安いコピー薬を輸入できるよう特例を設ける方向で討議を進めている。
 しかし、米国などの一部先進国は製造能力のある途上国までも特例の恩恵を受け、先進国の製薬業界が特許料収入減などの損失拡大にさらされることを危ぐしている。」
[2003-02-16-19:29]

   
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◆2003/02/16 医薬品、対立解けず WTO会合 途上国「例外幅広く」
 『日本経済新聞』2003年2月16日(日)朝刊

 「世界貿易機関(WTO)の非公式閣僚会合は15日、都内で二日目の討議をした。農業分野では日本、欧州連合(EU)など自由化慎重派と米国、豪州など積極派の意見が対立。エイズ患者の激増に悩む途上国が治療薬などを輸入できるよう、先進国の製薬会社の特許権への保護を一部制限する議題も話し合ったが、合意には至らなかった。
 15日の討議では、農業など市場開放問題に続き、医薬品など途上国問題を協議した。途上国の一部が「医薬品問題の決着を優先すべきだ」と主張したためで、当初取り上げる予定だった国際投資ルールの議論は最終日に持ち越しとなった。
 医薬品問題は昨年中の決着を目指していた。途上国が幅広く例外措置を認めるよう求めているのに対し、米国は製薬会社の研究開発意欲が失われるとして、対象の疾病を絞り込むべきだと主張している。決着がさらに延びれば、新多角的通商交渉(新ラウンド)への途上国の参加機運がしぼみかねないため、最終日も引き続き議論することになった。
 これに先立ち、15日の討議の冒頭では、農業自由化など市場開放問題を協議。12日にWTOのハービンソン農業交渉議長が示した議長原案をめぐり意見交換した。」

   
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◆2003/02/17 「農業・医薬 進展なし WTO東京会合閉幕」
 『日本経済新聞』2003年2月17日(月)朝刊

 「東京で開いた世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合は16日午後、閉幕した。3日間を通じて農業自由化や途上国の医薬品輸入をめぐる対立が目立ち、進展が見られなかった。川口順子議長(外相)は終了後の記者会見で、「問題点の理解が深まり、交渉は前進した」と総括したが、農業は3月末に交渉期限が迫っており、新多角的通商交渉(新ラウンド)の行方は不透明だ。
 東京会合では、12日にWTOのハービンソン農業交渉議長が自由化交渉のたたき台として示した議長原案への評価が焦点となった。日本、欧州連合(EU)は「環境保全機能や食糧安全保障など農業の様々な側面が無視されており、受け入れられない」と反発。積極派の米国や豪州は議長原案を土台として一段の自由化を求め、双方の溝は埋まらなかった。3月初めにも議長の第二次案が示される見通しだが、交渉はさらに難航しそうだ。
 もう一つの焦点だった、途上国がエイズ治療薬などを輸入できるよう、先進国の製薬会社の特許権保護を制限する枠組みづくりについても、米国の強い反対で昨年12月末に続き合意には至らなかった。
 日本が新ラウンドで優先課題としている国際投資ルールの確立と反ダンピング(不当廉売)措置の乱用防止の協議は、最終日に後回しされた。投資ルールに関しては途上国に独自の開発政策が制限されるとの懸念が強く、インドなどが「拘束力あるルールをつくると、途上国の負担になる」と反対。日本はメキシコでの閣僚会合で、投資ルール問題の正式議題格上げを狙うが、予断を許さない状況だ。
 日本が反ダンピング発動条件の厳格化を求めている問題では、欧州連合(EU)がこれまで以上に日本と連携する姿勢を示すなどやや前進した。しかし、最大の反ダンピング発動国である米国は「発動手続きの透明化に力点を置くべきだ」として、引き続き日本提案に反発している。
 「会合がなければ、農業問題や医薬品問題も深く議論することはなかった。今後の交渉に弾みがつく」。川口外相は会見で会合の成果を強調した。しかし、新ラウンドの合意期限(2005年1月)に向けた節目となる今年9月のメキシコ会合を控えて、難問が山積みのまま残った。

「議論は前進」事務局長が評価
 WTOの非公式閣僚会合に出席したスパチャイWTO事務局長は16日、都内で一部記者団と会見し、農業の自由化問題などで加盟国間の溝が浮き彫りになった同会合について「議論は前進した」と協調した。
 スパチャイ氏は「非公式だからこそ率直で直接的な議論が可能。各国は自国や他国の立場を確認できた」と指摘。「先進国も途上国も多くの提案をしたのには勇気づけられる」と語った。途上国が強く求める、エイズ治療薬などの特許権保護を一部制限する議題についても「難しい問題だが、意見の集約に向けて動いている」と述べた。

医薬品分野「早期合意を」ラミー欧州委員
 欧州連合(EU)のラミー欧州委員(通商担当)はWTO非公式閣僚会合閉幕後の会見で、「(9月にメキシコで開く)カンクン閣僚会合に向け前向きの議論ができた」と非公式会合を評価。同委員はすでに昨年末の合意期限を過ぎている医薬品問題で、「法的に問題のない多国間合意が早急に必要だ」と述べた。」

◆2003/02/17 「WTO会合、各分野で大きな進展なし…合意へ道険しく」
 読売新聞ニュース速報

 「16日に閉幕した世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合は、新多角的貿易交渉(新ラウンド)の最大の焦点である農業分野で、アメリカなど農産物輸出国と日本、欧州連合(EU)などの意見対立が改めて鮮明になったのに加え、他の分野でも意見集約へ向けた大きな進展は得られなかった。2005年1月に交渉期限を設定、5年以上かかった過去のラウンド交渉に比べ、3年間という短期間での合意を目指している新ラウンドだが、合意への道のりの険しさが印象づけられた形だ。
 議長を務めた川口外相は、16日の記者会見で、「(今回の会合で)問題点の理解が深まった」と総括したが、今回会合の成果は、各国・地域が主張を激しくぶつけあった結果、お互いの立場の相違点が、よりはっきり示された点に尽きるとも言える。
 反面、お互いの立場を理解しあった上で、合意形成へ向けた手がかりをつかむという目標は、“消化不良”に終わった。
 農業分野だけではなく、すでに昨年末に合意期限切れを迎えた、開発途上国がエイズ治療薬などを輸入できるように医薬品の特許権を緩和する問題については、先進国と途上国の対立が解けなかった。今後、途上国側の先進国側への不信感といらだちが募れば、他の分野も含めた交渉全体に影響しかねない。
 このほか、日本が重視してきたアンチダンピング(反不当廉売)措置の発動厳格化をめぐる問題や、「シンガポールイシュー」と呼ばれる投資などの新たなルールづくりをめぐる討議は、農業や途上国問題に時間が割かれた結果、時間不足もあって、議論を深めることができなかった。
 今後の新ラウンド交渉は、当面、3月末に期限が来る農業分野の自由化の枠組み合意が実現できるかが、大きな焦点となる。
 WTOのハービンソン農業交渉議長は、今回会合直前に示した「1次案」に次ぎ、3月初めにも「2次案」を示す見通しだが、関税率の大幅引き下げを求める米、豪などと、自国の農業保護を重視する日・EUや一部の途上国の主張は、大きな隔たりをみせている。16日の会合後の記者会見でも各国・地域の批判合戦となっており、交渉の難航は必至だ。さらに、6月にはエジプトで次回の非公式閣僚会合が開かれる見通しとなっているが、他の分野も含め、9月のメキシコ・カンクンでの公式の閣僚会合に向けて、交渉を加速できるかは不透明だ。」[2003-02-17-02:07]

   
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◆2003/02/17 「[新ラウンド]「ほど遠い自由化ルールへの道」(社説1)
 『読売新聞』2003/02/17

 新たな貿易自由化のルール合意の道は、まだまだ遠い。
 世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(新ラウンド)を巡って、東京で開かれた非公式閣僚会合は、それを強く印象づけるものとなった。
 三月末に期限が迫る農業分野の関税引き下げなど大枠合意に明確な展望を開くことが、会合の最優先課題だったが、果たせなかった。途上国が新ラウンドへの積極参加の条件の一つとして重視する、医薬品の製造特許権保護の一部制限の問題も、決着が先送りされた。
 新ラウンドの最終合意期限は二〇〇五年一月一日だ。しかし、交渉分野は、農業、
鉱工業品を含む非農産品、サービスや、反ダンピングをはじめとするルール強化など
多岐にわたる。個別分野で期限に沿って確実に合意を重ねていかないと最終合意はお
ぼつかない。
 新ラウンドが世界貿易を円滑に進める新たな枠組みで合意することは、世界経済の
成長、発展に欠かせない。
 東京会合に参加した二十二の先進国・地域と途上国は、交渉の成否のカギを握って
いる。会合で改めて明らかになった新ラウンドを巡る状況の厳しさを認識し、取り組
みを強化せねばならない。
 東京会合では、農業分野で、直前にWTO農業交渉委員会議長の一次案が示され、
これをもとに議論が進められた。
 しかし、米国やオーストラリアなど輸出側は大幅な関税下げを主張し、反対する日
本や欧州連合(EU)など輸入側との間に歩み寄りはなかった。
 米国は工業品並みの大幅な関税下げを盛り込む二次案を期待している。「安い輸入
米が出回り、国内農業が甚大な影響を受ける」「農産物生産は、食糧安全保障や環境
保全などの側面があり、工業品と同列に扱えない」と一次案そのものを拒否する日本
やEUとの溝は深い。
 一次案の位置づけを、東京会合の議長を務めた川口外相の判断で「たたき台」では
なく「触媒」にとどめたことにも、そうした背景がある。各国に、互いの立場を理解
し、国内農業改革による国際競争力強化などと並行させる形で、引き下げの水準を探
る努力が求められる。
 東京会合では、医薬品の製造特許権保護の一部制限の問題も、決着できなかった。
感染症治療など幅広い薬品を安価に輸入できるよう希望する途上国に対し、関係薬品
メーカーを多く抱える米国が難色を示したためだ。
 WTOに加盟する百四十五の国・地域のうち四分の三を途上国が占めている。決着
の遅れは大きな障害になり得る。米国の前向きな対応が必要だ。
[2003-02-17-09:41]

   
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◆2002/02/18 「新ラウンド推進 WTO超える論理も必要だ」(社説)
『毎日新聞』2002/02/18

 01年11月にカタールのドーハで開始が宣言された世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の進展を目指し、14日から16日まで東京で開かれた非公式閣僚会議は、具体的な成果がないまま終わった。
 議長の川口順子外相が言うように、東京会議は交渉の場ではなかった。しかし、直前に農業交渉のハービンソン議長が3月末に迫った自由化交渉の大枠(モダリティー)の1次案を提示した。緊急課題として、途上国の関心の強い感染症治療薬の特許使用の緩和問題も急浮上した。しかし、会議では各国・地域間の意見の違いは明確になったものの、歩み寄りはほとんど見られなかった。
 WTOは05年初に設定されている最終合意に向け、今年9月にメキシコのカンクンで閣僚会議を開く。それまでに、どれだけ合意に近付くことができるかが焦点だ。
 こうした状況になっているのは、自由貿易推進機関としてのWTO、具体的な交渉の場としてのラウンドの役割が様変わりしたためであろう。
 まず、新ラウンドのけん引役が不在だ。ウルグアイ・ラウンドまでは、日米EU(欧州連合)それぞれ問題を抱えながらも、鉱工業品を中心に関税引き下げや、参入障壁撤廃では基本的意見の違いはなかった。自由貿易推進が経済を発展させるという、関税貿易一般協定(ガット)の精神を貫徹できた。しかし、今回はウルグアイ・ラウンドでサービスや農業にまで踏み込んだ後のうえ、自由貿易協定(FTA)の締結が活発化しており、日米EUいずれも新ラウンドへの熱意は、いまひとつだ。
 その意味で、東京会議で議論されたWTO体制下で許容されるFTAルールの明確化は早急にやられなければならない。
 各国・地域間の利害も複雑化しており、一方的に自由化を進めることには消極的になっている。しかし、世界貿易全体の枠組みとしてWTOに代わるものが見当たらない以上、主要国・地域は譲り合っていく以外にない。
 途上国が関税引き下げなどを実施し、交渉に積極的に関与していくためにも、先進国が市場をさらに開く必要がある。自由貿易体制推進の側面である。
 同時に、自由貿易では解決のつかない問題が増えていることも認識しておく必要がある。環境や農業の多面的機能、サービス貿易などが好例である。99年末のシアトルでの閣僚会議で非政府組織(NGO)が激しい抗議行動を展開したのは、先進国による会議運営への批判とともに、環境問題などへの配慮を求めてであった。
 21世紀に入ったいま、環境保全抜きに経済活動は成り立たない。農業も市場にすべてをゆだねるという古典的自由貿易理論では割り切れない状況にある。WTOといえども地球という人類の活動の場を維持、発展させるという任務も負っている。
 ドーハ・ラウンドの成功は、WTOの論理を超えられるか否かにかかっている。
[2003-02-17-23:38]

   
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◆2003/02/19 エイズ薬問題、結論出ず=WTO
 時事通信ニュース速報

 【ジュネーブ18日時事】「世界貿易機関(WTO)の貿易関連知的所有権(TRIPS)理事会は18日、エイズ治療薬などの特許緩和問題を議論したが結論は出ず、今後も協議を継続することになった。開発途上国が安価に輸入できるコピー薬の対象をめぐる対立は解けず、合意形成が難しい状況となっている。」
[時事通信社][2003-02-19-01:42]

   
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◆2003/07/16 「治療薬特許緩和の合意期待 スパチャイWTO事務局長」
 共同通信ニュース速報

 【ジュネーブ15日共同】世界貿易機関(WTO)のスパチャイ事務局長は十五日、「(九月のメキシコ・カンクン閣僚会議までに)貿易関連知的所有権と公衆衛生分野で合意が成立すると確信している」と述べ、途上国のエイズ対策として医薬品の特許を緩和、安価な治療薬が供給できる枠組みづくりの早期決着に期待を表明した。
 事務局長が委員長を兼ねる新多角的貿易交渉(新ラウンド)の進展を検証する貿易交渉委員会で発言した。
 事務局長はまた、最大の懸案である農産物と非農産物の市場開放問題について「前向きな兆候が出ているが、全体像は見えていない」と述べ、加盟国間の協議を促した。
 同委員会で日本は農業自由化交渉、非農産物市場開放について、バランスが取れた自由化を求める従来の立場をあらためて表明、大幅な農業自由化を求める米国やオーストラリアなどを強くけん制した。」(了)[2003-07-16-08:43]

   
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◆2003/08/29 「エイズ治療のコピー薬、途上国の輸入合意へ WTO」
 『朝日新聞』2003/08/29

 についての稲場雅紀さんのコメント


皆さま こんにちは。

 途上国における医薬品と特許に関する報道には、日本においてなじみのない問
題であることから、多くの誤りが見受けられます。8月29日の朝日新聞の朝刊の
記事をチェックしてみましたのでご参考までに。

アフリカ日本協議会
感染症研究会
稲場 雅紀


(8月29日朝刊)
エイズ治療のコピー薬、途上国の輸入合意へ WTO

 世界貿易機関(WTO)は28日、貿易関連知的財産権(TRIPS)の会合を開き、エイズ治療薬などの安いコピー薬を途上国が輸入できる制度をつくることで合意する見通しだ。当初の合意期限は昨年末だったが、途上国と、製薬会社を抱える米国が対立し、決着が遅れた。

 途上国はすでに、特許保護をうたったTRIPS協定の例外として、自国内で、特許料を払わずに、エイズ治療薬などのコピー薬を製造することが認められている。

→これは誤りです。2001年11月のWTOドーハ閣僚会合で決定された「ドーハ宣言」では、TRIPS協定の中で、それまで、国家の非常事態のような場合にのみ発動可能と考えられていた特許の強制実施権の発動について、WTO加盟国(途上国に限らない)に対して、加盟国の公衆の健康の保護のために(国家の非常事態に限らず)強制実施権を発動する権利があるということが定められました。しかし、いずれにせよ、これについては「強制実施権の発動」という、非常に高いハードルを必要とすることです。

→また、「強制実施権の発動による医薬品製造」については非常に誤解が多いのですが、この「強制実施権の発動」による医薬品の製造は、ドーハ宣言が採択された後も、現在に至るまで、世界のどの国においても行われていません。インドは2005年まで、医薬品に関してはTRIPS協定の完全履行を免除されており、医薬品の製造については、強制実施権を発動する法的必要がありません。一方、ブラジルは、TRIPS協定発効前(1996年以前)に発明された医薬品のうち、ブラジルにおいて特許が設定されていない医薬品について自国内製造を行っています。これについては、強制実施権の発動の必要がありません。1997年以降に発明された医薬品に関しては、ブラジルは製造していません。

 今回、新たに容認されるのは、製造能力のない途上国が、一定のルールの下でコピー薬を輸入すること。インド、ブラジルなどがコピー薬の製造・輸出国になるとみられている。

→この記述は特にそれ自体として誤りはありませんが、そもそも、上記のように、製薬能力ある途上国においても、未だに「強制実施権の発動」ができていないという事実を重く見る必要があります。「強制実施権」の発動は、形式的には合法でも、国際貿易上、非常に困難なことであるという事実をまず認識すべきです。

 米国と途上国の最大の対立点は、適用される疾病の範囲だった。米国は特許権がなし崩しに侵害されることを警戒し、エイズ、マラリア、結核などの深刻な感染症に限定すべきだと主張。これに対し途上国は、がんや糖尿病なども含めることを想定し、対象となる疾病を限定することに強く反発した。

→途上国においては、感染症以外の疾病も非常に深刻な状況です。途上国の首都や主要都市の大気汚染は先進国に比べ極端に深刻であり、ぜん息の患者は数多く存在します。また、紛争や貧困などにより、精神疾患も深刻な状況であり、中国農村部やインド・スリランカにおける自殺率は先進国並みの状況です。こうしたことに鑑みれば、途上国では、感染症以外の疾病についても医薬品の存在は必須であり、決して、感染症以外の医薬品のニーズを軽視することはできません。
→「がんや糖尿病」も含めると記述されていますが、途上国は、感染症に限定され得ない公衆の健康保護に関して、必須医薬品等の供給をより包括的・普遍的な形で行うことを主張したのであって、上記記述は誤解を生む表現です。

 結局、疾病の範囲については、米国が譲歩。一方で、米国に配慮して、商業目的には利用しないことや、コピー薬が先進国に流れることを防ぐため、薬の色や包装を変えることなどが条件となる。

→「商業目的に利用しない」というのは、一見、当たり前のように見えながら、非常に深刻な結果をもたらしかねない文面です。現在、アフリカの多くの国々で流通している廉価なエイズ治療薬は、インドのジェネリック薬製造企業によって作られたものです。これらの企業は、そもそも途上国を市場として無視していた先進国のブランド薬企業に対して、これらを市場として考え、ジェネリック薬を廉価に販売しました。2001年にエイズ治療薬の価格が途上国で格段に下がり、ある程度の人々がエイズ治療薬を手にすることができるようになったのは、廉価なジェネリック薬の途上国市場への参入が最大の要因の一つであるということができます。このように、必要な薬を安く途上国に届ける上で、途上国のジェネリック薬製造企業の果たす役割を軽視することはできません。
 「国境なき医師団」は、必須医薬品の途上国への流通を促進するためには、欧米の多国籍製薬企業の一時的な善意や良心に頼るのでなく、ジェネリック薬企業の大規模な市場参入と、競争原理の導入による医薬品の価格低下を促進することが必要である、と提言しています。
→「商業目的に利用しない」という文面は、実のところ、欧米の多国籍製薬企業が、途上国のジェネリック薬製造企業に対して突きつけていると解釈できます。この一文は、欧米製薬企業が途上国においても医薬品市場の独占を回復し、巨利を上げるためのマジックとして挿入されているわけです。

→また、薬の色や包装を変えることについてですが、途上国のジェネリック薬企業は、そもそも先進国のブランド薬企業とは違う名称で医薬品を出しています。ですから、逆流防止に関して、わざわざ薬の色や包装を変えなければならないという規定を作る必要は、本来はないはずです。薬の色や包装について言及し、細かな規定を作れば、それを順守しなければならないということになり、それについてもコストがかかるようになります。これは、コスト上の障害を生み出しかねません。

 WTOは、9月にメキシコで開かれる閣僚会議前の決着を目指して、舞台裏の折衝を進め、27日には米国とブラジルなど主要途上国4カ国の合意を取り付けた。 (08/28 23:52)

→この主要途上国とは、ブラジル、インド、ケニア、南アフリカの4ヶ国です。カンクンの閣僚会議では、医薬品問題以外に、数多くの問題が存在します。米国は、カンクンで取り扱われる様々な議題との取引材料として、これら4ヶ国に対してこの医薬品問題についての解決を迫りました。その結果、ケニア・南アフリカなど、実際に人的に大きな被害を被っている国が、譲歩を迫られたわけです。
 また、この5ヶ国協議は、極めてクローズドな形で行われました。米国がこれら4ヶ国とどのようなやりとりをしたのかについては、ほとんど情報が出ていません。しかし、ケニアについては、この決着に関して一定の留保意見を述べ、その結果、この5ヶ国会談が深夜に及ぶものとなったという報道がAP通信によってなされています。
 こうした背景を度外視して、たんに5ヶ国が合意した、というだけの報道がなされると、この「決着」の背景になにがあるのかということが全く見えなくなってしまいます。


UP:20030208 REV:0213,18,19,21,22,0717,0927
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