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科学技術/所有・国際競争・国家戦略・…2002<産業スパイ事件>

科学技術・国際競争・国家戦略・…2002
科学技術・国際競争・国家戦略・………



◆2002/06/20 ハーバード大から遺伝子盗む、日本人女性研究者ら逮捕
 読売新聞ニュース速報
 http://www.yomiuri.co.jp/

 【ワシントン19日=館林牧子】米ボストン連邦地検は19日、米ハーバード大医学部から最先端の遺伝子情報を盗んだとして、同大元研究員で日本人のキンバラ・カヨコ容疑者(32)と中国人男性のチュー・チアンユー容疑者(30)を産業スパイ法違反(商業機密窃取)などの罪で米連邦捜査局(FBI)が逮捕したと発表した。2人は日本の企業と共同で臓器移植で使う免疫抑制剤の研究をしており、遺伝子などを日本に送っていた疑いも持たれている。
 関係者によると、逮捕された日本人女性は東大に在籍していた金原加代子・元研究員と見られている。2人は在住していたサンディエゴで逮捕された。
 発表によると、キンバラ容疑者は1998年10月からハーバード大医学部の細胞生物学教室に在籍。同僚のチュー容疑者と共同で、上司に十分相談せずに、同教室が蓄積していたノウハウを用いて免疫抑制にかかわる複数の遺伝子を発見。99年暮れから2000年1月にかけて、契約で禁止されているにもかかわらず、20箱の遺伝子を含む物質をハーバード大の研究室から盗み出し、2人の移籍が決まっていた米テキサス大に送った疑い。チュー容疑者は日本の生化学企業に研究成果を利用して抗体の開発を持ちかけ、3種類の遺伝子を送った疑いももたれている。
 盗まれた物質はその後、一部ハーバード大に返還された。日本企業は、この情報をもとに抗体を開発したが、研究データや関連物資はすべて同大に返還。同地検は、この企業が捜査に協力しているため、名前は公表しないとしている。
 同法違反では、昨年5月に理化学研究所の元研究員が米国の研究所から遺伝子にからむ試料を持ち出したとして起訴された「遺伝子スパイ事件」が起きている。
[2002-06-20-13:48]

◆2002/06/20 12:10 読: FBI、日本人女性を産業スパイ容疑で逮捕
 読売新聞ニュース速報
 http://www.yomiuri.co.jp/

 【ワシントン19日=館林牧子】米ボストン連邦地検は19日、米連邦捜査局(FBI)が、米ハーバード大医学部から新薬開発にかかわる物質を盗んだとして、同大元研究員の金原加代子容疑者(32)と中国人のチュー・チアンユー容疑者(30)の2人を産業スパイなどの疑いで逮捕したと発表した。
 2人は日本の企業と共同で臓器移植で使う免疫抑制剤の研究をしており、サンプルの一部を日本に送っていた。当局によると、この企業は捜査に協力しており、名前は明かせないとしている。
 調べによると、金原容疑者は1998年10月から、ジュー容疑者は97年2月からそれぞれ、ハーバード大医学部の細胞生物学教室に在籍。上司に十分な相談をせず、同大の研究手法を使って免疫抑制にかかわる複数の遺伝子を発見した。
 2人は99年12月にテキサス大に移籍が決まったが、ハーバード大との契約で禁止されているにもかかわらず、同月末から翌年1月にかけて、20箱の遺伝子を含む物質をハーバード大の研究室から盗み出し、テキサス大に送った。
 また、日本の生化学企業に電子メールで、共同で新たな抗体の商業化を持ちかけ、3種類の遺伝子をこの企業に送った疑いがもたれている。これをもとに日本の企業は抗体を開発した。
 2人はテキサス大を辞職した後、サンディエゴに居住。盗まれた物質の一部はその後、ハーバード大に返還された。日本の企業はすべての研究データと関連物資を同大に返還したという。有罪が確定した場合、2人は最大で罰金75万ドル以下、禁固25年以下の刑に処せられる。
 東京大分子細胞生物学研究所で大学院時代に同じ研究室だった笹川昇・東大助手の話「大学院時代には、筋肉内の酵素の研究などをしていた。分生研からハーバード大に留学し、その後の研究については詳しく知らない。私の知る限りでは、スパイ容疑をかけられるようなことをする人ではなく、ニュースを聞いて驚いている」
[2002-06-20-12:10]

◆2002/06/20 新薬関連の遺伝子情報盗んだ容疑、米で日本人女性ら逮捕
 朝日新聞ニュース速報
 http://www.asahi.com/

 米連邦捜査局(FBI)は19日、米ハーバード大医学部(ボストン)の研究室から最先端の遺伝子情報を盗み出したとして、元同大研究員の金原加代子容疑者(32)と中国人男性チュー・チアンユ容疑者(30)を商業機密窃取の疑いで逮捕した。ボストン連邦地検が発表した。遺伝子情報は日本企業に渡されたが、すべて大学側に返されたという。
 関係者によると、金原容疑者は東大農学部を卒業、東大分子細胞生物学研究所で研究していた。
 発表によると、2人は97〜99年、ハーバード大のフランク・マケオン教授(細胞生物学)の下で臓器移植の際の拒絶反応を抑える免疫抑制剤の開発に役立つと見られる新しい遺伝子を発見した。この研究は深夜ひそかに進めていたらしく、大学と結んだ契約に反して、教授に報告しなかった。
 2人はともに00年、テキサス大へ移籍。その後、この遺伝子情報を日本の製薬企業へ渡し、企業側は研究に着手していたという。
 この企業については、FBIの捜査に協力するとともに、遺伝子情報を返還したとして、名前は公表されていない。
 2人はカリフォルニア州サンディエゴ在住。
 ハーバード大医学部は19日、「非常に深刻な問題だ。大学として捜査に全面的に協力している」との声明を発表した。
 米司法省によると、商業機密の盗み出しは、最高刑が禁固25年、罰金総額75万ドル(約9300万円)。
 昨年5月にも遺伝子試料を持ち出したなどとして日本人研究者2人が起訴される「遺伝子スパイ事件」が起きている。
[2002-06-20-08:30]

◆2002/06/20 <産業スパイ>邦人女性逮捕 米の大学から遺伝子情報盗む
 毎日新聞ニュース速報
 http://www.mainichi.co.jp/

 米ボストン連邦地検は19日、ハーバード大医学部から新薬開発に関する最先端の遺伝子情報を盗み出したなどとして、産業スパイなどの疑いで元同大研究員の日本人キンバラ・カヨコ容疑者(32)=漢字表記不明=と共犯の中国人男性チュー・チアンユ容疑者(30)を、連邦捜査局(FBI)が逮捕したと発表した。
 調べによると、カリフォルニア州サンディエゴに住むキンバラ容疑者は、1998年10月から99年12月の間、同大医学部の細胞生物学研究室に在籍。この間にチュー容疑者と共謀し、最先端の遺伝子情報を盗み出し、日本企業に渡していた疑い。
 盗み出されたのは、臓器移植の際に使用される免疫抑制剤の開発に有用な遺伝子情報とされている。この日本企業は捜査に協力しているとして、企業名は明らかにされていない。
 同大のフランク・マケオン教授(細胞生物学)は19日、共同通信に対し、キンバラ容疑者の存在と逮捕されたことは知っていると述べた。
 米司法省によると、産業スパイ事件は、最高刑の場合で禁固25年、罰金総額75万ドルの刑罰が科される可能性がある。(ニューヨーク共同)
[2002-06-20-09:21]

◆2002/06/20 <経済スパイ>FBIが邦人女性ら逮捕 遺伝子情報など盗む
 毎日新聞ニュース速報
 http://www.mainichi.co.jp/

 【ワシントン斗ケ沢秀俊】米連邦捜査局(FBI)は19日、米ハーバード大医学部から臓器移植用新薬の開発に関連する遺伝子情報や試薬を盗んだとして、元同大研究員の日本人研究者、金原加代子容疑者(32)と中国籍の男性、チュー・チアンユ容疑者(30)=いずれもカリフォルニア州サンディエゴ在住=を経済スパイ法違反などの容疑で逮捕した。2人は共謀して、これらを日本の製薬会社に売り込もうとしていた疑いが持たれている。
 FBIの調べでは、チュー容疑者は97年2月から、金原容疑者は98年10月から、それぞれ99年末まで同学部細胞生物学研究室に在籍し、「カルシニューリン」と呼ばれる酵素への免疫抑制剤の影響を研究していた。2人はこの酵素と関連のある遺伝子4個を見つけ、論文を発表した。
 ところが、チュー容疑者は99年10月にテキサス大から転職の誘いを受けた際、日本の製薬会社と連絡を取り、遺伝子試料を送付。同社はこれをもとに抗体を作成し、同容疑者に送り返した。さらに2人はハーバード大を辞職する際、30箱分以上の試料などをテキサス大に送った。いずれもハーバード大の許可を得ていなかった。
 2人はハーバード大との間で、研究情報や試料の持ち出しを禁止する契約を交わしていた。同大側は00年1月、2人と話し合いをしたが、2人は試料などの持ち出しを否定したという。
 FBIによると、2人は午後11時から翌朝9時にかけての夜間に研究することが多く、担当教授の監督をあまり受けていなかったという。
 FBIは2人の行為が「商業上の秘密の窃取」を禁じた経済スパイ法と、盗品を州を越えて輸送することを禁じた法律に違反すると判断した。日本の製薬会社はFBIの捜査に協力し、チュー容疑者から受け取った試料をすべて同大に返却したという。FBIは社名を公表していない。
 金原容疑者は東大で博士課程を修了した後、ハーバード大の研究員になった。カルシニューリンの研究では、日本で有数の研究者だった。
 経済スパイ法では、昨年4月、理化学研究所員ら2人の日本人研究者が米オハイオ州のクリーブランド・クリニック財団研究所から遺伝子試料を無断で持ち出したとして起訴されている。

     ×     ×     ×

 米ハーバード大医学部から研究成果を違法に持ち出したとして逮捕された金原加代子容疑者らは、臓器移植の際の拒絶反応にかかわるカルシニューリンという酵素の研究者だった。
 専門家によると、カルシニューリンの働きを抑える物質が、臓器移植の際の免疫抑制剤として商品化され、最近では筋肉の肥大によって起こる心筋症などの病気とも深くかかわっていることが明らかにされるなど、多くの関係者の注目を集めているという。
 金原容疑者らは、カルシニューリン阻害に関する遺伝子二つを発見するというハーバード大時代の成果を違法に持ち出したとされ、米司法省は「これらの最先端の発見は、免疫関連の病気や心臓病、神経疾患などに関連する医薬品開発につながる極めて商業的価値の高いものだった」と指摘する。 (共同)
[2002-06-20-11:46]

◆2002/06/20 クリーブランド事件と酷似 最先端医療機密持ち出し
 共同通信ニュース速報

 【ワシントン19日共同】米ハーバード大医学部から遺伝子情報を盗み出したとして日本人女性研究者、金原加代子容疑者(32)らが逮捕された事件は、日本人研究者が米国屈指の医療機関から「最先端の機密情報」を持ち出したという点で、昨年五月に発覚した
米オハイオ州のクリーブランド・クリニック財団(CCF)を舞台にした遺伝子スパイ事件と酷似している。
 起訴状によると、金原容疑者は移植臓器の拒絶反応抑制に関する最先端の遺伝子情報を大量に持ち出したとされる。バイオテクノロジーや情報技術(IT)の研究で世界をリードする米国はこれらの情報を軍事機密と同様に保護、他国への流出を防止するため監視の
目を光らせている。
 CCFを舞台にした遺伝子スパイ事件ではアルツハイマー病に関する遺伝子試料を持ち出し、理化学研究所(理研)に利益を与えたとして元理研チームリーダー岡本卓被告(日本在住)と米カンザス大医療センターの芹沢宏明助教授が経済スパイ法違反などで起訴さ
れた。
 芹沢助教授は今年五月、新たに訴追された偽証の罪状を認め、代わりに検察側が本件である経済スパイ法違反の起訴を取り下げる司法取引が成立。米検察当局は主犯格とされる岡本被告の身柄引き渡しを日本に請求しているが、公判開始の見通しは立っていない。
 岡本被告が持ち出したとされる遺伝子試料が「機密情報に該当するのか」という事件の核心は解明されていない。今回の事件も金原容疑者が盗み出したとされる遺伝子情報の「機密性」をめぐり弁護側と検察側の主張が注目される。
(了)
[2002-06-20-10:50]

◆2002/06/20 優秀で穏やかな人物 東大時代から酵素を研究
 共同通信ニュース速報

 【ワシントン19日共同】ハーバード大医学部から新薬開発に関する最先端の遺伝子情報を盗み出したなどとして、産業スパイなどの疑いで逮捕された金原加代子容疑者(32)は、東大農学部を卒業後、東大分子細胞生物学研究所でタンパク質分解酵素の研究など
に従事した。
 当時を知る研究者の一人は「非常に優秀。穏やかで、ぎすぎすしたところのないとても温厚な人だった。産業スパイのような事件に関与するような人ではなかった」と振り返る。
 金原容疑者は臓器移植の際の拒絶反応にかかわるカルシニューリンという酵素の研究者。カルシニューリン阻害に関する遺伝子二つを発見するというハーバード大時代の成果を違法に持ち出したとされる。
 もう一人のチュー容疑者も、ハーバード大医学部時代は細胞内の情報伝達物質に関連する研究で、著名な英科学誌ネイチャーに掲載された論文の主著者となるなど、優秀な研究者として知られていたという。
 東大時代の金原容疑者の別の同僚は「日本人も中国人も、研究成果は自分のもので、研究機関の壁を越えて自由にできるとの感覚があり、知的所有権にうるさい米国研究者との間ではトラブルが多い」と話した。
(了)
[2002-06-20-11:04]

◆2002/06/20 「深刻な問題」とハーバード大 遺伝子スパイ事件
 共同通信ニュース速報

 【ワシントン19日共同】移植臓器の拒絶反応抑制剤開発に絡む遺伝子スパイ事件について、ハーバード大医学部は十九日、「この種の問題は非常に深刻。大学側は米司法省の捜査に全面的に協力している」との声明を発表した。
(了)
[2002-06-20-09:39]

◆2002/06/20 転出直後からトラブルに 日本の関係者に衝撃 遺伝子情報
 共同通信ニュース速報

 米ハーバード大医学部から遺伝子情報を盗み出した疑いで日本人女性ら研究者二人が逮捕された事件で、二人を知る日本の関係者は「トラブルになっているとは聞いていたが、まさか逮捕されるとは」とショックを受けていた。
 この関係者によると、チュー・チアンユ容疑者(30)は一九九九年十二月、テキサス大に採用が決まった。同時に金原加代子容疑者(32)も研究員としてテキサス大に移ることになった。
 ところが、その直後にハーバード大がテキサス大に対し、チュー容疑者らがDNAや免疫抑制剤などの元になる化合物を持ち出したとして抗議した。二人はテキサス大を解雇され、消息が途絶えた。
 それ以降、両大学の間で問題解決に向けた話し合いが続いていた。解雇直前、学会出席のため日本を訪れたチュー容疑者は、先行きについて楽観視していたようだったという。
 二人が所属していたハーバード大研究室のフランク・マケオン教授は今年三月、名古屋大で開かれた研究会に出席。その際、「二人は司法的にかなり追いつめられている。いずれ逮捕されるだろう」と話していた。
 チュー容疑者は中国出身で、北京大卒業後、米テンプル大に留学。中国で飛び級を重ねたため、同大で博士号を取ったのは二十代半ばと早かった。
 「チューさんは天才肌の研究者だっただけに、残念だ。論文発表をめぐって教授ともめていたとも聞いており、そんな行き違いも背景にあるのではないか」とこの関係者は話している。
(了)
[2002-06-20-11:54]

◆2002/06/20 新薬開発なら莫大な利益 知的所有権に敏感な米政府
 共同通信ニュース速報

 【ワシントン19日共同=井田徹治】米ハーバード大医学部から研究成果を違法に持ち出したとして日本人女性研究員らが逮捕された事件の背景には、特許によって莫大(ばくだい)な利益が開発者にもたらされる新薬研究の知的所有権保護に敏感な米国政府や司法当局の厳しい姿勢がある。
 金原加代子容疑者(32)らの研究対象は、臓器移植の際の拒絶反応にかかわるカルシニューリンという酵素。免疫抑制剤や心臓病の治療薬などに直結する内容だ。
 昨年、発覚した理化学研究所の遺伝子スパイ事件の研究対象はアルツハイマー病で、やはり大きな利益につながる。
 ある日本の製薬会社の米国駐在社員は「これらの医薬品に代表される巨大なバイオ産業市場をにらんで、米国政府も研究機関も、研究情報の流出には近年、従来に増して神経質になっている」と話す。
 金原容疑者らは、カルシニューリン阻害に関する遺伝子を発見するというハーバード大時代の成果を持ち出したとされる。米司法省は「これらの最先端の発見は、免疫関連の病気や心臓病、神経疾患などに関連する医薬品開発につながる、極めて商業的価値の高いも
のだった」と指摘する。
 一方で、優秀な成果をあげた研究者の引き抜きなども盛んになっており、今回の事件も昨年の事件と同様、研究者の移籍に伴う、研究成果の扱いに関するトラブルも背景にあった。
(了)
[2002-06-20-12:38]

◆2002/06/20 徹夜作業で監視の目かわす 逮捕の金原容疑者
 共同通信ニュース速報

 【ニューヨーク19日共同】米ボストン連邦地検によると、逮捕された金原加代子容疑者は中国人研究者のチュー・チアンユ容疑者とともに指導教授の監視の目を巧みにかわしながら遺伝子情報の特定作業を進めたとされる。
 捜査当局が注目するのは二人がハーバード大医学部に研究員として在籍していた一九九九年一―二月以降の行動。深夜十一時から翌朝九時ごろまでを選んで、免疫機能の障害や心臓病、神経疾患の治療に役立つ遺伝子情報を探す特殊なスクリーニング作業を続けた。
 この時間には研究室に指導教授がおらず、二人は研究成果の一部だけを報告。ハーバード大は二人が発見を報告したうち二種類の遺伝子を九九年十月時点に特許申請したが、実際には別に七種類の遺伝子を見つけていたという。
 中国人容疑者はその後、日本のバイオ医薬品会社に研究成果をもとにした事業化の協力を打診。一部の遺伝子情報を日本に送り、この会社は実際に抗体を製造して同容疑者の移籍先であるテキサス大に返送したことも判明している。
 二人はこうした容疑を否認。一方、協力を打診された日本企業は捜査当局に全面協力しているとされる。
(了)
[2002-06-20-12:54]

◆2002/06/20 邦人女性研究者を逮捕 免疫抑制の新薬情報盗む 共犯に中国
 共同通信ニュース速報

 【ニューヨーク19日共同=伊藤英一】米ボストン連邦地検は十九日、ハーバード大学医学部から最先端の遺伝子情報を盗んだとして、産業スパイ(企業機密の窃盗罪)などの疑いで元同大研究員の日本人、金原加代子容疑者(32)と共犯者の中国人チュー・チア
ンユ容疑者(30)の二人を米連邦捜査局(FBI)が逮捕したと発表した。
 盗んだのは臓器移植の免疫抑制剤に有用な遺伝子情報とされる。米国では昨年五月にも日本人研究員によるDNA情報持ち出し事件が発覚。競争が激化するこの分野で今後、研究情報の扱いに関する規制強化を求める声が上がるのは必至だ。
 同連邦地検の調べでは、カリフォルニア州サンディエゴに住む金原容疑者は、臓器移植時の拒絶反応に関する遺伝子の研究のため同大医学部の細胞生物学研究室に勤務していた一九九八年十月から九九年十二月にかけ、二容疑者が発見にかかわった拒絶反応に関連する物質の遺伝子情報を日本の製薬会社に売り込もうと計画。チュー容疑者と情報を盗み出した疑い。
 製薬会社側は情報に基づいて抗体などの開発に着手していた。しかしこの企業は捜査に全面協力し、情報などはハーバード大側にすべて返還しているとして、名前は明らかにされていない。
 二人は同大に研究員として採用された際、新薬開発に関する情報の持ち出しを禁じる契約を大学側と交わしていた。金原容疑者は九八年、東京大学の博士課程を修了。二人は親密な関係だったという。
 FBIの当局者は十九日、金原容疑者はサンディエゴで拘置中で、二十四日以降にボストンに移送する予定であることを明らかにした。
 米司法省によると、産業スパイ事件は、最高刑の場合で禁固二十五年、罰金総額七十五万ドル(約九千二百万円)が科される可能性がある。
(了)
[2002-06-20-13:58]

◆2002/06/20 日本企業の刑事責任問わず 遺伝子情報窃盗事件
 共同通信ニュース速報

 【ニューヨーク20日共同】米ハーバード大学医学部から最先端の遺伝子情報を盗んだとして、日本人の女性研究者ら二人が産業スパイなどの疑いで逮捕された事件で、ボストン連邦地検は二十日までに、遺伝子情報が渡った日本の製薬会社の刑事責任を追及しない方針を固めた。
 このため、事件は個人の犯罪として、犯行の動機や背景の解明などが急がれることになる。
 米連邦捜査局(FBI)が十九日に逮捕した金原加代子容疑者(32)らから遺伝子情報を受け取っていた日本の製薬会社について、同連邦地検当局者は訴追する考えはないと言明。あくまでも金原容疑者ら個人の犯罪として訴訟手続きに入る方針を明確にした。
 臓器移植の際の免疫抑制剤を開発していたこの製薬会社は、ハーバード大にすべての情報を返還するなど「捜査に全面的に協力」(同地検)しており、地検が会社名を公表しないのも双方に「ギブ・アンド・テイク」の関係があったことを示唆するものだ。
 金原容疑者と中国人のチュー・チアンユ容疑者(30)はカリフォルニア州サンディエゴで拘置されており、拘置中に弁護人の選任手続きなどが進められ、ボストンには二十四日以降に移送される予定。
 今後は容疑者二人のどちらが犯行を持ち掛けたかといった経緯や、特許によって莫大(ばくだい)な利益が絡んだ研究成果を持ち出すに至った犯意の認定などが焦点になる。
(了)
[2002-06-20-16:50]

◆2002/06/20 産業スパイ容疑で邦人女性逮捕=ハーバード大から遺伝子試
 時事通信ニュース速報

○産業スパイ容疑で邦人女性逮捕=ハーバード大から遺伝子試料盗む−米
 【ニューヨーク19日時事】米マサチューセッツ州ボストンの連邦地検は19日、ハーバード大医学部から新薬開発のための遺伝子試料などを盗み出したとして、カリフォルニア州サンディエゴ在住の邦人で元同大研究員の金原加代子容疑者(32)ら2人を産業スパイなどの疑いで逮捕したと発表した。
 調べによると、金原容疑者は同大医学部の細胞生物学研究室に在籍していた1999年12月ごろ、同僚の中国人研究者チュー・チアンユ容疑者(30)と共謀し、臓器移植の際に用いられる免疫抑制剤開発のための遺伝子試料を盗み出し、日本の製薬企業に提供した疑い。両容疑者は直後にテキサス大学に移籍した。 
[時事通信社]
[2002-06-20-12:27]

◆2002/06/20 11:51 「また海外で、契約内容は?」=産業スパイ事件で情報収集−文科省
 時事通信ニュース速報

 日本人研究者が米ハーバード大医学部から遺伝子を盗み出したとして逮捕されたニュ
ースが伝わった文部科学省の担当課では20日午前、「また海外での事件が起きた」と
衝撃を受け、日本人研究者の逮捕理由などの情報収集に追われた。
 昨年5月、米クリーブランドクリニック財団研究所からアルツハイマー研究用の遺伝
子試料を盗み出し、理化学研究所に持ち込んだとして、日本人研究者2人が逮捕された
。これをきっかけに再発防止策として、理研をはじめ国内の研究機関では研究試料やデ
ータは研究所に帰属することや、研究者の異動の際には研究者との間で契約を明確にす
るよう、国も方針を示した。
 同省ライフサイエンス課の田中敏課長は「国内の研究機関では対策を立てるようにな
ったばかり。事件がいつ起きたことなのか。どのような契約関係を結んでいて、何に違
反したのかといった事実関係を早急に調べたい」と話している。 
[時事通信社]
[2002-06-20-11:51]

◆2002/06/20 13:51 <経済スパイ>相次ぐ邦人摘発に衝撃 米は厳しい姿勢示す
 毎日新聞ニュース速報

 し烈な競争が展開される新薬開発をめぐって、日本人の研究者が米当局に「産業スパイ」の嫌疑をかけられた。昨年5月には、理化学研究所の研究者ら2人が、アルツハイマー病治療薬に関する研究試料を盗んだとして訴追されたばかり。相次ぐ日本人研究者のスパイ事件に、関係者は戸惑いを隠せない。
 金原加代子容疑者は東京大大学院農学生命科学研究科在籍中に、筋ジストロフィーの発症メカニズムの一端を解明した。これらの実績が評価され、博士研究員としてハーバード大に招かれたという。
 指導教官だった東大名誉教授の鈴木紘一・東京都老人総合研究所長(62)は「世界的な水準の研究で、仕事ぶりもきちんとしていた。米国と日本では研究に対する考え方の違いがあり、研究室を移るときに、研究成果が誰のものかをめぐってトラブルになる例が多い。詳細が分からず驚いている」と語る。
 金原容疑者を知る日本人研究者によると、3年ほど前から金原、チュー両容疑者とハーバード大の教授との関係が悪化し、テキサス大へ移ることになったという。
 この研究者は「教授との関係がこじれた時期が、金原さんが研究で成果を挙げた時期と重なり、教授側は研究室に入れないようにするなど大きなトラブルになっていたようだ」と話す。
 別の日本人研究者も「ハーバード大の教授は、これまでも情報の扱いをめぐって、研究員と感情的なトラブルが絶えなかった人と聞いている」と指摘する。
 製薬企業などによると、臓器移植などに使われる免疫抑制剤の主力は、金原容疑者が研究していた「カルシニューリン」という酵素の働きを抑えるものだ。このタイプの免疫抑制剤として世界の注目を集めるタクロリムス(FK506)を93年に日本で発売した藤沢薬品工業の広報室は「逮捕のしらせをうけて社内調査をしているが、該当する事実は見つかっておらず、いまのところ、無関係だ」と話している。

     ×     ×     ×

 金原容疑者は、免疫反応にかかわる「カルシニューリン」という酵素の研究者だった。
 78年に発見されたカルシニューリンは、抗原からの刺激に対して、免疫を増強する物質をつくる指令を出す役割をしている。免疫増強に強くかかわるほか、カルシニューリンの働きを抑えることができれば、免疫抑制にも使える。
 臓器移植の際の拒絶反応を抑える、強力な免疫抑制剤のサイクロスポリンやタクロリムス(FK506)が、カルシニューリンの働きを抑える役割をしていたことが分かり、90年代から注目されるようになった。
 千葉大医学部の落合武徳教授(外科学)によると、これらの免疫抑制剤は微生物の働きによって作られている。遺伝子レベルの研究が進んで人工的に作れれば、副作用を除いた新薬に改良することが可能だ。「免疫を増強する働きを生かした薬をつくれば、がんなどへの適用も期待できる」という。カルシニューリンが、筋肉の肥大に伴う心筋症などの病気に関与しているという指摘もあり、幅広い応用が模索されている。 【元村有希子】

 ■問われる研究者の倫理

 【ワシントン斗ケ沢秀俊】金原容疑者らが逮捕された事件は、昨年の理化学研究所員らによる遺伝子スパイ事件と同様、知的所有権の保護を重視する米司法当局の厳格な姿勢を改めて見せつけた。研究分野での国際競争の激化を背景に、研究成果をめぐるルールは厳しくなっており、研究者はそれに沿った行動が求められている。
 事実関係が起訴状では必ずしも明確でなかった前回の遺伝子スパイ事件と違って、今回はボストン連邦地検と連邦捜査局(FBI)の発表により容疑事実が具体的に示されている。それによると、2人の容疑者は日本の製薬会社に遺伝子試料などを送り、同社側もこれを認めているという。
 金原容疑者らが研究していたのは臓器移植に伴う拒絶反応に関連する酵素「カルシニューリン」。この酵素に関連のある遺伝子4個を見つけるなど業績を挙げていた。ハーバード大はこのうち2個について特許を取得した。前途ある2人がなぜ同大と交わした「研究情報や試料を持ち出さない」との契約を破って、製薬会社に送ったのかは不明だ。
 大学や研究機関が特許取得を重視し、研究者との間でこうした契約を結ぶことはごく一般的になってきている。
 製薬会社は捜査に全面協力したため、司法当局から責任を問われなかった。しかし、共犯のチュー容疑者から新しい抗体開発を持ちかけられた段階で、共同研究に応じていたという。同大への照会なしに進めたとすれば、その倫理を問われることになるだろう。
[2002-06-20-13:51]

◆2002/06/20 17:52 教授の目避け、深夜に作業=遺伝子試料持ち出しの金原容疑者
 時事通信ニュース速報

 【ニューヨーク20日時事】米ハーバード大学から新薬開発用の遺伝子試料を持ち出したとして、逮捕された金原加代子容疑者(32)は、1999年初めごろには、担当教授の目を避けるように、深夜に研究作業を行うようになっていた。
 ボストンの連邦地検の発表によると、金原容疑者は、99年1月ないし2月ごろから、共に逮捕されたチュー・チアンユ容疑者(30)と一緒に、午後11時から午前9時までの時間帯で研究していた。教授も同容疑者が、何かを隠しているように感じていたとされる。
 持ち出しも、同年12月末から2000年1月初めにかけ、早朝あるいは深夜に行われた。少なくとも20個の荷物が研究室から運び出されたという。 
[時事通信社]
[2002-06-20-17:52]


◆2002/06/21 01:02 「事態は深刻」=産業スパイ事件で米ハーバード大が声明
 時事通信ニュース速報
 【ニューヨーク20日時事】米ハーバード大医学部は20日、同医学部の元研究員、金原加代子容疑者(32)らが遺伝子試料などを盗み出した産業スパイの疑いで逮捕されたことについて、「事態は非常に深刻だ」とする声明を発表した。 
[時事通信社]
[2002-06-21-01:02]

◆2002/06/20 12:32 遺伝子情報盗み日本人逮捕
 NHKニュース速報

 アメリカのハーバード大学の医学部の研究室で働いていた日本人研究者ら二人が新薬の開発に関わる遺伝子情報や資料を盗み、日本企業に渡していた疑いで十九日、アメリカの捜査当局に逮捕されました。
 マサチューセッツ州ボストンの連邦地方検察局によりますと逮捕されたのは、カリフォルニア州サンディエゴに住む日本人の金原加代子(キンバラカヨコ)容疑者(三十二)と、中国人のチュー・チアンユ容疑者の二人です。
 二人は、三年前の千九百九十九年末、それまで勤めていたボストンにあるハーバード大学医学部の細胞生物学教室を辞めて別の大学に移る際に、研究していた遺伝子の情報や資料を持ち出し、利益をあげる目的で日本の企業に渡した疑いが持たれています。
 検察当局では、これらの遺伝子情報は、臓器移植の際の拒絶反応を抑制する新しい薬の開発などにつながる高い商業価値を持ち、ハーバード大学医学部に帰属する財産で、二人の行為は、産業機密の窃盗にあたるとしています。
 一方、持ち出された遺伝子の一部を受け取った日本の企業は、捜査に全面的に協力し、全ての情報や資料を当局に返還したということです。
 新薬の開発で膨大な利益をもたらす可能性を持つ遺伝子情報など知的財産の保護にアメリカは大きな力を入れています。
 去年は、日本の理化学研究所の研究者ら二人がアメリカ、オハイ州の研究機関から遺伝子情報を日本に持ち出したとして産業スパイの疑いで起訴される事件も起きています。
[2002-06-20-12:32]

◆2002/06/20 13:46 遺伝子情報事件 去年理研の研究者起訴
 NHKニュース速報

 遺伝子情報などをアメリカの研究機関から持ち出した事件としては、去年、埼玉県にある理化学研究所の研究者らが以前、勤めていたアメリカの研究機関から遺伝子や細胞などの研究試料を盗み出したとして、「産業スパイの罪」で起訴される事件が起きています。
 この事件で、理化学研究所は「問題になった資料は研究所に持ち込まれたが使用されたと認定することはできなかった」とする報告書をまとめていて、研究者は研究所を辞職しています。
[2002-06-20-13:46]

◆2002/06/20 13:46 遺伝子情報事件 金原容疑者とは
 NHKニュース速報

 金原(キンバラ)容疑者が日本で在籍していた東京大学の関係者などによりますと、金原容疑者は平成五年に東京大学農学部を卒業した後、博士課程に進み、大学の分子細胞生物学研究所などで研究していました。
 四年ほど前にハーバード大学に移り、体の免疫の働きに関わる「カルシニューリン」という酵素の研究を進めていたということです。
 臓器移植の拒絶反応を抑えるために現在、広く使われている薬はカルシニューリンの働きを抑えるもので、この酵素の研究で新しい薬の開発につながる可能性があると製薬会社などで研究競争が進められています。
[2002-06-20-13:46]

◆2002/06/20 遺伝子情報盗み出し容疑で逮捕 金原元研究員とは
 NHKニュース速報

 逮捕された金原・元研究員は平成五年に東京大学農学部を卒業した後、大学の分子細胞生物学研究所などを経て平成十年十月から一年あまり、ハーバード大学で研究に携わりました。
 盗み出したとされるのは金原・元研究員が研究していた「カルシニューリン」という酵素に関わる遺伝子についての研究成果です。
 この酵素はヒトの免疫に関係し、その働きを抑える物質が臓器移植の拒絶反応を抑える薬として広く使われています。
 また、最近になって心臓の筋肉が肥大して起きる心臓病にも関係していることがわかり、新しい薬の開発につながるものとして研究競争が進められています。
 金原・元研究員と、かつて一緒に研究をした東京大学大学院の石浦章一(イシウラショウイツ)教授は「朝早くから夜遅くまで働く真面目で熱心な研究者だった。研究成果についての考え方の違いでハーバード大学の教授とトラブルになり苦労していると聞いていたが、逮捕されたと知って驚いている」と話していました。
[2002-06-20-17:46]

◆2002/06/20 21:30 <新薬スパイ事件>研究室の複雑な人間関係が事件の背景
 毎日新聞ニュース速報
 http://www.mainichi.co.jp/

 【ワシントン斗ケ沢秀俊】日中の研究者2人が米ハーバード大医学部から臓器移植用新薬に関連する遺伝子情報や試薬を盗んだとされる事件で、連邦捜査局(FBI)に逮捕された元同大研究員の金原加代子容疑者(32)と中国籍のチュー・チアンユ容疑者(30)の2人は研究室の教授と対立し、意思疎通もなかったことがFBI捜査官の宣誓供述書で分かった。研究室の複雑な人間関係が事件の背景にあるとの見方が強まっている。
 地元紙ボストン・グローブがFBI捜査官の宣誓供述書の内容として伝えたところでは、両容疑者は研究室を率いるフランク・マケオン教授と折り合いが悪く、「深夜の通常考えられない時間帯」に研究をしていた上、教授との議論もなく対立していた。研究室内はコミュニケーションが乏しく、緊張した空気が漂っていた。両容疑者が99年に塩基配列を明らかにした7個の遺伝子も教授に内証で進められた研究の結果だった。
 確執は99年末にピークに達し、チュー容疑者がテキサス大への移籍を決心。金原容疑者に打ち明け、一緒に来るよう説得した。教授は同年のクリスマス休暇の直前、無許可研究について2人に説明を求めたが、両容疑者は無許可研究を否定。テキサス大への移籍についても話さないまま、冬季休暇中に多くの試料を研究室から運び出した。
 2人は博士号取得後の研究者を対象とした「ポスドク」と呼ばれる研究職。いずれも優秀な研究者として周囲の評価が高い。捜査当局は、研究室の人間関係や研究成果をめぐるトラブルが事件の引き金になった可能性があるとみて、動機などを慎重に捜査している模様だ。
 金原容疑者を知る日本人研究者によると、同教授と女性研究者の人間関係をめぐるトラブルが絶えず、短期間でやめる研究者が多かったという。金原容疑者も友人に「教授を信頼できなくなった」と漏らしていた。

   ×  ×

 ミシガン大学など米国で30年間研究した産業技術総合研究所ジーンディスカバリー研究センターの倉地幸徳センター長は、知的財産に関する米国の事情について以下のように語った。
 米国では、研究者が大学や研究機関に在籍して生み出した成果は、基本的に所属機関のものだ。研究費が企業資金の場合、成果の取り扱い、特許の所有権、実施料など特許収入を企業と大学と発明者(研究者)でどう分配するかなどを事前に決める。既存の成果を外部に移転する場合も、研究者本人でなく大学の知的財産管理部門が交渉にあたる。
 昨春、産総研に転身することになり、ミシガン大の研究室ごと引っ越すことを決めた。特許の帰属や、進行中の動物実験が日本で成果を出した場合の対応など、1年かけて決めた。実験装置は大学から買い取り、持ち出す材料や資料を、「これは大学側もいらないだろう」と思うようなものまですべてリストにした。そうしたルールをMTA(財産移転同意書)にした。
 今回の場合、遺伝子が自分の発見でも、組織のスタッフとしての働きなのだから、独断では持ち出せない。正式な手続きを経ずに企業に渡したことも問題だ。受け取った日本の製薬企業もうかつだ。米国の常識では考えられない。
 もし悪気がなかったとしても「知らなかった」では済まされない。日本では、研究者を養成する大学院で、こうした研究の倫理をほとんど教えていないことも問題だ。
[2002-06-20-21:30]

 

◆2002/06/21 08:24 共: 特許申請トラブルが動機か 米遺伝子情報窃盗事件
 共同通信ニュース速報

 【ニューヨーク20日共同】米ハーバード大学医学部から最先端の遺伝子情報を盗んだとして、日本人の女性研究者ら二人が産業スパイなどの疑いで逮捕された事件は、遺伝子情報の特許申請をめぐるトラブルが犯行の直接の引き金になった可能性があることが二十日、分かった。
 臓器移植の際の拒絶反応にかかわる酵素の研究者だった金原加代子容疑者(32)は、一九九九年二月までに、この酵素の働きを抑える遺伝子を発見。共犯の中国人チュー・チアンユ容疑者(30)とともにその後も研究、分析を続けていた。
 米ボストンの検察当局者によると、同年十月、同大は発見した遺伝子に関して特許を申請。当初は「発見者」としてフランク・マケオン教授と両容疑者の名前が登録されたが、チュー容疑者は最終的に「要件を満たさない」として名前を外され、別の女性研究者に差し替えられた。
 テキサス大への転出が決まったチュー容疑者は同年十二月、日本の製薬会社に電子メールで「ハーバード大は特許を取れないだろう」と連絡。「発見者」である自分との連携を持ち掛けた上で、この遺伝子情報を製薬会社側に渡した。
 同大関係者は「チュー容疑者にとって特許申請者の名前から外されるのは、大変な屈辱だったはずだ」と話している。」[2002-06-21-08:24]

◆2003/06/21 <新薬スパイ>ハーバード大が取材規制 学生や研究員に関心
 毎日新聞ニュース速報

 【ボストン(米マサチューセッツ州)上村幸治】日中の研究者2人がハーバード大医学部研究室の遺伝子情報や試薬を盗んだとされる事件は20日、大学側にも詳しく伝わり、関係者の間に波紋を広げている。大学側が取材規制に乗り出したほか、研究室のフランク・マケオン教授も姿を見せようとせず、当事者が極めて神経質になっていることがうかがえる。もっとも、キャンパスの学生や研究員の多くは事件のことをあまり知らず、強い関心を示さなかった。
 金原加代子容疑者(32)とチュー・チアンユ容疑者(30)が所属していた細胞生物学研究室は、医学部の中庭西のビル4階408号室にあった。12畳ほどの部屋が三つ、実験用の大きな机で仕切られ、ビーカーや試験管、薬品が所狭しと並んでいる。
 この日はアジア系の女子学生が2人座っているだけで、室内は静まり返っていた。2人は「マケオン教授はまだ来ていない。来るかどうかも分からない。みんな緊張して、研究どころではありません」と話した。
 校内では、警備の職員が巡回し、記者をつかまえては「大学の施設での取材は禁止している。大学広報を通して取材してください」と警告し、名前や会社名を次々に控えていった。大学の広報担当は「19日に声明を出した。それ以上、何も出す予定はない」としか答えない。」[2002-06-21-11:06]

◆2002/06/21 <近事片々>21日
 毎日新聞ニュース速報

 日本人研究者がまた米捜査当局に逮捕された。遺伝子情報を盗んだ経済スパイ法違反容疑だという。盗む対象は金や物が普通だが、「芸を盗む」や「国盗(くにと)り」という言い方がわが国にもある。
   ◇
 知識はみなの役に立つものだが、ある種の知識は「知的財産」として特定所有者に専有特許を与え、発明・発見を奨励する。発明発見者必ずしも専有者でないのは、現代的先端研究は大きな組織と資金を要するからだ。
   ◇
 巨額な利益を約束する新薬製造を見込む研究成果の財産的価値は高い。当然、国際競争に勝ち抜く国家戦略も絡む。「スパイ」の語の意味だ。日本人研究者はなぜ米国で同じ愚を問われるか。日本では論理が違うのか。」[2002-06-21-14:31]

◆2002/06/21 <新薬スパイ>特許申請めぐり教授とトラブル 2容疑者
 毎日新聞ニュース速報

 【ワシントン斗ケ沢秀俊】日中の研究者2人による新薬情報スパイ事件で、元ハーバード大研究員、金原加代子容疑者(32)と中国籍のチュー・チアンユ容疑者(30)が研究室から試料などを持ち出す直前、遺伝子情報の特許申請をめぐるトラブルがあったことが21日、米連邦捜査局(FBI)捜査官の宣誓供述書で分かった。
 毎日新聞が入手した供述書によると、ハーバード大は99年10月22日、医学部の研究室で発見された「CSP1」と「CSP2」という遺伝子に関して仮特許を申請した。当初の申請書には「発見者」として、研究室を率いるフランク・マケオン教授とチュー、金原両容疑者の3人の名前がリストアップされた。ところが、チュー容疑者は「プロジェクトへの貢献が、申請の基準を満たさない」との理由で最終的に名前をはずされた。
 チュー容疑者は同年12月13日にテキサス大から誘いを受け、翌14日には日本の生化学企業に新薬実用化の共同研究を持ち掛ける電子メールを送付。この中で「ハーバード大の特許は認められないと思う」などと説明していた。その後、チュー容疑者はマケオン教授に無断で「CSP1」「CSP2」など三つの遺伝子試料を、この生化学企業に送っていた。
 両容疑者は以前からマケオン教授と関係が悪く、特許申請をめぐる教授への恨みが犯行の直接のきっかけになったと捜査当局はみている模様だ。
[2002-06-21-20:50]

◆2002/06/21 遺伝子スパイ事件、邦人容疑者ら拘置可否を24日審理
 読売新聞ニュース速報

 【ロサンゼルス20日=森田清司】米ハーバード大を舞台にした遺伝子スパイ事件で、カリフォルニア州サンディエゴの連邦地裁は20日までに、サンディエゴの自宅で逮捕された金原加代子容疑者(32)とチュー・チアンユー容疑者(30)の拘置の可否を決める審理を24日に行うことを決めた。産業スパイ法違反(商業機密窃取)容疑についての審理は来月以降にボストンで行われる見通しだ。

[2002-06-21-13:26]

◆2002/06/21 スパイ事件 尾身・科技担当相が「研究者の認識甘い」
 朝日新聞ニュース速報

 米国で日本人研究者らが遺伝子情報を盗み出したとして逮捕された事件について、尾身幸次・科学技術政策担当相は21日の閣議後の記者会見で、「研究開発における知的所有権の問題、その権利義務関係についての考え方が、一般的に日本は甘いのではないか。国全体として、研究者、企業、大学、研究機関などがしっかりとした認識を持つことが大事ではないか」と述べた。
 事件については「正確な情報がわからないのでコメントは差し控える」としながらも、「知的国家、科学技術創造立国を目指す以上、そういう認識をきちっと持つことが必要」と強調した。
[2002-06-21-13:36]

 

◆2002/06/25 13:23 遺伝子スパイ事件、7月3日に予備審問
 読売新聞ニュース速報

 【サンディエゴ(米カリフォルニア州)24日=森田清司】米ハーバード大を舞台とした遺伝子スパイ事件で、サンディエゴの連邦地裁は24日、産業スパイ法違反(商業機密窃取)容疑で逮捕された金原加代子容疑者(32)とチュー・チアンユー容疑者(30)について、公判に付すだけの証拠があるかどうかを審査する予備審問を、7月3日に行うことを決めた。
 また両容疑者の拘置と、ボストンの連邦地裁に移送するかどうかの可否の審理は、当初の予定を延期し、併せて同日に行うことを決めた。
[2002-06-25-13:23]

◆2002/06/25 10:42 遺伝子スパイ事件、3日予備審問
 読売新聞ニュース速報

 米ハーバード大を舞台とした遺伝子スパイ事件で、サンディエゴの連邦地裁は24日、金原加代子(32)とチュー・チアンユー(30)両容疑者の予備審問を、7月3日に行うことを決めました。
 産業スパイ法違反で公判に付すだけの証拠があるかどうかを審査します。
[2002-06-25-10:42]

 

◆2002/07/15 18:01 産業スパイ事件 2人の元研究員 遺伝子の権利は自分たちに
 NHKニュース速報
 アメリカのハーバード大学で研究員をしていた日本人ら二人が遺伝子など産業機密を盗んだ疑いで逮捕された事件で、二人は遺伝子を送った名古屋市の検査薬メーカーに対し、「遺伝子の権利は自分たちにある」と説明していたことがわかりました。
 ハーバード大学医学部の金原加代子(キンバラカヨコ)・元研究員(三十二)と夫の中国人の研究者の二人は、新薬の開発に関わる遺伝子などを無断で持ち出して日本の企業に渡したとして、ハーバード大学の知的所有権を侵した産業機密の盗みの疑いでアメリカの捜査当局に逮捕され、その後、保釈されています。
 二人は持ち出したとされる遺伝子を名古屋市に本社がある検査薬メーカー、「医学生物学研究所(ショ)」に送り、研究に使う「試薬」を作ってもらっていましたが、この際、会社からの確認に対して「遺伝子の権利は自分たちにある」と説明していたことがわかりました。
 会社はその後、遺伝子の権利をめぐってハーバード大学で問題になっていることを知り、大学側に遺伝子の返却を申し出ましたが指示がなかったため現在も保管しているということです。
 西田克彦(ニシダカツヒコ)社長は「遺伝子の権利をすべて把握するのは難しく依頼者との信頼関係で作業を進めざるを得ない面がある。通常の企業活動が突然、産業スパイに絡んでいることになったわけでたいへん驚いている」と話しています。
[2002-07-15-18:01]

◆2002/07/15 12:46 産業スパイ事件 研究員 名古屋の会社に遺伝子送る 会社は
 NHKニュース速報
 アメリカのハーバード大学で研究員をしていた日本人ら二人が、遺伝子など産業機密を盗んだ疑いで逮捕された事件で、二人は名古屋市の検査薬メーカーにこの遺伝子を送っていたことが明らかになりました。
 この会社は「遺伝子で新薬を開発する意図はなかった」として、産業スパイへの関与を否定しています。
 この事件では、ハーバード大学医学部の金原加代子(キンバラカヨコ)・元研究員(三十二)と夫の中国人の研究者の二人が、新薬の開発に関わる遺伝子などを無断で持ち出して日本の企業に渡したとされていますが、この企業は、名古屋市にある検査薬メーカー、「医学生物学研究所(ショ)」だったことが分かりました。
 会社側の説明によりますと、遺伝子は二人と交友があった会社の研究員のもとに、あわせて三種類が送られ、会社ではこのうち二種類について、遺伝子の働きを確かめる研究に使う、「試薬」を作り、送り返していたということです。
 これについて、西田克彦(ニシダカツヒコ)社長は「二人の研究に使う試薬を作っただけで通常の企業活動だったと考えている。遺伝子そのものはすでに論文で発表され、大きな意味はないもので会社として新薬を開発する意図は全くなかった」として、産業スパイへの関与を否定しました。
 逮捕された二人は、現地時間の今月十七日にボストンの連邦地方裁判所で起訴するかどうかの審理を受けることになっています。
[2002-07-15-12:46]

◆2002/07/15 21:15 <米新薬スパイ>遺伝子送り先 名古屋市の検査薬メーカーと
 毎日新聞ニュース速報
 米ハーバード大学の研究室から新薬にかかわる遺伝子情報などを盗んだとして、元同大研究員の金原加代子容疑者(32)と中国籍の夫、チュー・チアンユ容疑者(30)が米連邦捜査局(FBI)に逮捕された事件で、2人が遺伝子を送った企業が、名古屋市の検査薬メーカー「医学生物学研究所」(西田克彦社長)であることが分かった。
 同社は69年に日本初の抗体メーカーとして設立され、現在は3000種類を超える抗体を販売しているほか、免疫に関する臨床検査薬の開発、生産、販売をしている。
 同社によると、99年12月ごろ、チュー容疑者から「遺伝子を調べたいので抗体を作ってほしい」と依頼された。ハーバード大で同僚だった同社員が「研究支援」目的で、同社の業務として2種類の遺伝子の抗体を作成、翌00年2月にチュー容疑者に送った。その後、研究の進行状況などのやりとりをしていたが、5月末に連絡が取れなくなったという。当時は同大の研究者からの抗体作成依頼は無償で引き受ける慣行があったという。
 西田社長は「スパイ行為とは無関係。抗体作成前にチュー容疑者に遺伝子の特許などを問い合わせたが、『問題ない』と説明していた」と言う。
 金原容疑者らは産業スパイ法容疑で逮捕されたが、先月保釈された。17日にマサチューセッツ州ボストンの連邦地裁で予備審問が開かれる予定だ。
[2002-07-15-21:15]

◆2002/07/15 13:15 <新薬スパイ事件>情報の送付先は名古屋の「医学生物学研究
 毎日新聞ニュース速報
 米ハーバード大学の研究室から新薬にかかわる遺伝子情報などを盗んだとして、元同大研究員の日本人、金原加代子容疑者(32)と中国籍の夫チュー・チアンユ容疑者(30)が米連邦捜査局(FBI)に逮捕された事件で、2人が遺伝子を送ったとされる企業が、名古屋市に本社がある検査薬メーカー「医学生物学研究所」(西田克彦社長)であることが、15日までに分かった。
 同社は69年に日本初の抗体メーカーとして設立され、現在は3000種類を超える抗体を販売しているほか、免疫に関する臨床検査薬の開発、生産、販売をしている。
 同社によると、99年12月ごろ、チュー容疑者から「遺伝子を調べたいので抗体を作ってほしい」と依頼があった。ハーバード大で同僚だった同社員が「研究支援」目的で、同社の業務として抗体を作成し、翌00年2月にチュー容疑者に送った。その後、研究の進行状況などについてやりとりをしていたが、5月の末に連絡が取れなくなったという。
 同社の林通宏・経営企画室長は「抗体作成は事実だが、それがビジネスになった事実はなく、スパイ行為とは無関係だ」と話している。
 金原容疑者らは産業スパイ法容疑で逮捕されたが、先月保釈された。17日にマサチューセッツ州ボストンの連邦地裁で予備審問が開かれる予定だ。
[2002-07-15-13:15]

◆2002/07/15 慣行として無償で抗体作成=遺伝子提供先の企業が正式コメント−米産業スパイ事件
 時事通信ニュース速報
 ハーバード大医学部から遺伝子試料などを盗み出したとして同大研究員だった金原加代子容疑者(32)ら2人が逮捕された事件で、試料を持ち込まれた「医学生物学研究所」(名古屋市、西田克彦社長)は15日、「抗体作成依頼を無償で引き受けることは慣行となっていた」と事件について正式にコメントを発表、改めて産業スパイ事件との見方を否定した。 
[時事通信社]
[2002-07-15-20:01]

◆2002/07/15 提供企業は医学生物学研=「産業スパイでない」−研究支援と主張・米遺伝子事件
 時事通信ニュース速報
 米ハーバード大医学部から新薬開発のための遺伝子試料などを盗み出したとして、米国で元同大研究員の日本人女性ら2人が逮捕された事件で、試料を提供された企業が医学生物学研究所(名古屋市)であることが15日、分かった。
 同研究所は取材に対し「抗体の作成ができるかと持ち掛けられた。ビジネスとしてではない。産業スパイという事実は存在しない」とコメントした。
 元同大研究員の金原加代子(32)、夫で中国籍の研究者チュー・チアンユ(30)両容疑者は1999年12月ごろ、遺伝子試料を盗み出し、同研究所に提供したとして逮捕されたが、これまで提供先は公表されていなかった。 
[時事通信社]
[2002-07-15-13:56]

◆2002/07/15 14:10 共: 米で盗んだ遺伝子試料送る 名古屋のメーカーへ
 共同通信ニュース速報
 米ハーバード大から遺伝子情報を盗み出したとして、同大の元研究員金原加代子容疑者(32)と夫の中国人チュー・チアンユ容疑者(30)の二人が産業スパイなどの疑いで逮捕された事件で、両容疑者(保釈済み)は盗んだ遺伝子試料を名古屋市の臨床検査薬会社「医学生物学研究所」(西田克彦社長)に送り、抗体作成を依頼していたことが十五日、分かった。
 同社の数納幸子会長は「盗まれた遺伝子とは知らなかった」などと事件への関与を否定。「問題の遺伝子情報を利用して新薬を開発する意図もなかった」(経営企画室)としている。
 同社の説明によると、チュー容疑者らは一九九九年十二月ごろ、臓器移植の拒絶反応にかかわる酵素の働きを抑える計四種類の遺伝子試料を同社に送り、抗体作成を依頼。同社の研究員が以前、ハーバード大でチュー容疑者と同じ研究室に留学していたことがきっかけという。
 同社は作成した抗体を二○○○年二月、チュー容疑者に送ったが、五月ごろ突然連絡が取れなくなったという。「抗体は研究支援として作成した。チュー容疑者から創薬を持ちかけられたことはない」と同社は説明している。
 同年七月にハーバード大から、チュー容疑者らがこれらの遺伝子を同大から不当に持ち出したと知らされたため、担当教授に遺伝子の返還を申し出たという。
(了)
[2002-07-15-14:10]

◆2002/07/15 15:29 読: 米産業スパイ事件、研究者が遺伝子送った日本企業判明
 読売新聞ニュース速報
 米ハーバード大の元日本人研究者らが、産業スパイ法違反(商業機密窃取)容疑で米連邦捜査局(FBI)に逮捕された事件で、チュー・チアンユー、金原加代子両容疑者らに協力して“盗品”の遺伝子から試薬を作ったのは、「医学生物学研究所」(本社・名古屋市)であることが、15日、明らかになった。同社は「同大の研究室と以前から取引があった縁で、研究用の試薬製造を依頼された。スパイという認識は全くなかった」と話している。
[2002-07-15-15:29]

 

◆2002/07/18 事件自体を否認の戦術 司法取引に向けた交渉も 遺伝子情報
 共同通信ニュース速報

 【ボストン17日共同】米遺伝子情報窃盗事件で逮捕された金原
加代子容疑者らの弁護士が十七日、逮捕容疑を全面否認する声明を
発表し、起訴決定を遅らせるよう裁判所側に要請したことで、「事
件そのものの否定」を目標にした法廷戦術が浮き彫りになった。
 金原容疑者らの関係者は同日、共同通信に対して「起訴させない
こと、さらに逮捕の容疑の取り消しも目指したい」と述べており、
近く検察側との協議に入り、同容疑者らの行為が犯罪ではなかった
ことを認めさせたい意向だ。
 これは裏を返せば、米国の刑事裁判で頻繁に行われている司法取
引に向けた交渉の可能性を強く示唆するものだ。例えば、「企業機
密を盗んだ」などの逮捕容疑とは別の軽微な容疑を認めることと引
き換えに、本件については起訴見送りとするなどの取引が成立すれ
ば、容疑者らにとって事件はなかったとの解釈も可能になる。
 「捜査に全面協力した」として、米捜査当局から企業名を公表さ
れるのを免れた遺伝子試料送付先の名古屋市の臨床検査薬会社が「
米連邦捜査局(FBI)からの照会はなかった」と述べるなど、双
方の食い違いも発覚。
 さらに「日本、中国などアジア系を狙った強引な捜査」との指摘
も出始めており、今後の検察側の出方が注目される。
(了)

◇07/18 09:25 共: 報道陣との接触避ける 法廷内では余裕の表情も 米遺伝子情
 共同通信ニュース速報

 【ボストン17日共同】米遺伝子情報窃盗事件の予備審問があったボストン連邦地裁に十七日出廷した金原加代子容疑者(32)は、終始報道陣を避ける一方、廷内では夫のチュー容疑者(30)らと落ち着いた表情で話し込むなど、法廷戦略が固まりつつあるためか余裕もうかがわせた。
 地裁ビル五階の十四号法廷。開廷前、傍聴席には日本や地元の記者ら約三十人がぎっしりと並んだ。金原容疑者は左隣に座るチュー容疑者や弁護士と何度か顔を寄せ合い話し込んだ。
 予備審問は裁判官と検察官、弁護士とのやりとりだけで、約十分で終了。閉廷後、二容疑者と同じエレベーターに乗り込もうとする報道陣に、弁護士が「ここはプライベートの場だ」と制止。ビルから出た後もすぐに車に乗り込んだ。
 ボストン港に臨む同地裁は最近、「靴爆弾男」のリチャード・リード被告やカトリック教会聖職者による性的虐待事件に関する審理の場として注目されており、日本のメディアに「何があったのか」と尋ねる米国人の姿も見られた。
(了)
[2002-07-18-09:25]

◇07/18 08:46 共: 容疑事実を全面否認 米遺伝子情報窃盗事件
 共同通信ニュース速報

 【ボストン17日共同】米ハーバード大医学部から遺伝子情報を
盗んだとして産業スパイなどの容疑で逮捕された同大元研究員、金
原加代子(32)と夫の中国人チュー・チアンユ(30)の両容疑
者の弁護人は十七日、逮捕容疑を全面否認する声明を連名で発表、
無実を訴えた。先月十九日の逮捕以来、両容疑者が容疑について正
式な見解を明らかにしたのは初めて。
 声明発表に先立ち、両容疑者に対する予備審問がボストン連邦地
裁で開かれ、次回の期日を決めないまま約十分で閉廷した。
 声明は「今回の事件は不完全な情報と誤解に基づくものであり、
金原容疑者らには何らの間違いもなく、罪は犯していない」と述べ
、米連邦捜査局(FBI)の不十分な捜査の結果、不当逮捕に追い
込まれたとの主張を展開した。
 この日の予備審問で弁護側は起訴決定を半年間延期するよう裁判
官に要請。今月二十六日までにこの要請を書面にして提出すること
だけが決まった。
 金原容疑者らは一九九八年から九九年にかけ、自分たちが発見に
かかわった拒絶反応に関連する物質の遺伝子情報を日本の臨床検査
薬会社に売り込むため、情報を盗み出した疑いで逮捕された。先月
二十七日に保釈されたが、夜間の外出を制限されるなどの措置が取
られている。
 両容疑者が遺伝子試料を送ったのは、名古屋市の臨床検査薬会社
「医学生物学研究所」。ボストン連邦地検は日本の会社が捜査に全
面協力し、遺伝子試料も返還済みだと発表したのに対して、同社は
これまでFBIからの照会はなく、試料も保管中と述べるなど食い
違いが生じている。
(了)
[2002-07-18-08:46]

◇07/18 07:52 時: ◎金原容疑者、司法取引模索へ=起訴期限延長を要請−米
 時事通信ニュース速報

 【ボストン17日時事】米ハーバード大医学部の研究室から遺伝子試料を盗み出した
として、産業スパイの疑いで逮捕された金原加代子容疑者(32)ら2人に対する予備
審問が17日、マサチューセッツ州ボストンの連邦地裁で開かれた。弁護側は審問後、
「司法省と近く協議を行う」との声明を発表、司法取引を模索する意向を示した。
 予審には金原容疑者と共犯とされる夫の中国人研究者チュー・チアンユ容疑者(30
)が出廷。この中で弁護側は、逮捕状発行後30日以内の起訴を定めた規則の権利放棄
を宣言、起訴期限を6カ月延長するよう予審判事に求めた。検察側もこれに同意したた
め、判事は期限延長のための正式な申し立てを行うよう命じ、26日に次回審問を開く
ことにした。 
[時事通信社]
[2002-07-18-07:52]

◇07/18 <遺伝子スパイ>金原容疑者ら容疑を全面否認 初の正式見解
 毎日新聞ニュース速報

 米ハーバード大医学部から遺伝子情報を盗んだとして産業スパイなどの容疑で逮捕さ
れた同大元研究員、金原加代子(32)と夫の中国人チュー・チアンユ(30)の両容
疑者の弁護人は17日、逮捕容疑を全面否認する声明を連名で発表、無実を訴えた。先
月16日の逮捕以来、両容疑者が容疑について正式な見解を明らかにしたのは初めて。

 声明発表に先立ち、両容疑者に対する予備審問がボストン連邦地裁で開かれ、次回の
期日を決めないまま約10分で閉廷した。

 声明は「今回の事件は不完全な情報と誤解に基づくものであり、金原容疑者らには何
らの間違いもなく、罪は犯していない」と述べ、米連邦捜査局(FBI)の不十分な捜
査の結果、不当逮捕に追い込まれたとの主張を展開した。

 この日の予備審問で弁護側は起訴決定を半年間延期するよう裁判官に要請。今月26
日までにこの要請を書面にして提出することだけが決まった。(ボストン共同)
[2002-07-18-10:25]

◇07/18 11:03 NH: 遺伝子持ち出し 容疑全面否定
 NHKニュース速報

 アメリカのハーバード大学で働いていた日本人研究者ら二人が、新薬の
研究に関わる遺伝子を無断で持ち出して日本企業に渡した疑いで逮捕され
た事件で、十七日、ボストンの裁判所で審理が行われ、審理のあと、弁護
側は事件は誤解に基づくもので、二人の言い分を聞けば何も罪を犯してい
ないことがわかるはずだとして、容疑を全面的に否定する声明を発表しま
した。
 この事件は、ボストンのハーバード大学医学部で研究者として働いてい
た、日本人の金原加代子(キンバラカヨコ)容疑者と、その夫で中国人の
チュー・チアンユ容疑者が三年前、別の大学に転職する際に研究していた
遺伝子を大学側に無断で持ち出し、日本の企業に渡したとして、産業機密
を盗んだ疑いで、先月、逮捕されたものです。
 二人はその後、保釈され、住いのあるカリフォルニア州サンディエゴに
とどまっていますが、十七日、初めてハーバード大学の地元、ボストンの
連邦地方裁判所で開かれた審理に出廷しました。
 審理では、裁判を開くだけの理由があるかどうかを判断する予備審問の
開催について、弁護側が六か月間の延期を申し立てたのに対し、検察側も
互いに協議する時間が必要だとしてこれに合意しました。
 この申し立てについて裁判所側が判断するため、今月二十六日にもう一
度審理が行われることになりました。
 審理の後、弁護側は声明を発表し、この中で「今回の事件は情報の不足
と誤解に基づくもので、検察側が二人の言い分を聞けば、何も罪を犯して
いないことがわかるはずだと確信している」と述べ、容疑を全面的に否定
しました。
[2002-07-18-11:03]

◇07/18 12:04 読: 遺伝子スパイ事件で金原容疑者ら無罪を主張…予備審問
 読売新聞ニュース速報

 【ボストン(米マサチューセッツ州)17日=館林牧子】米ハーバード大から遺伝
子情報を盗んだとして産業スパイ法違反(商業機密窃取)の疑いで逮捕された金原加
代子(32)、夫の中国人チュー・チアンユー(30)両容疑者に対する予備審問が
17日、ボストン連邦地裁で開かれた。
 弁護団は、「この事件は部分的な情報と、誤解に基づいて作られたもので、どんな
犯罪も犯されていないと信じる」などと、逮捕容疑を全面否認する声明を発表した。
事件で2人の主張が明らかになったのは初めて。
 声明は、「2人は知識の発展のために研究に従事しており、研究成果を不法に商業
化する意思など全くなかった。検察当局側と話し合えば、2人が犯罪を犯していない
ことに同意すると強く確信している」などとしている。
 この日、金原容疑者はベージュのブレザーに黒のズボン、チュー容疑者は濃紺のブ
レザーに灰色のズボン姿で出廷。弁護人に付き添われ、疲れた表情の金原容疑者は終
始うつむいたまま、記者団の質問に対し無言で法廷を後にした。
[2002-07-18-12:04]

 

◆2002/07/24 産業スパイにならないために…文科省が心得文書
 読売新聞ニュース速報

 産業スパイにならないように気を付けて――米ハーバード大から遺伝子情報を盗んだとして、日本人研究者らが産業スパイ法違反で摘発された事件を受け、文部科学省は、海外で研究活動をする際の注意事項をまとめた文書を作った。
 文書では、米国の大学・研究機関では、試料や特許などの成果は所属機関に帰属し、情報を公開する時も機関の了承が必要であることや、研究機関を去る時には、成果のコピーの持ち出しさえも当局の承認がいるケースがあると指摘。研究者は、各研究機関が定める規定に十分注意し、合意書を交わす際には、内容を理解したうえで署名することを求めている。
 また、米国では研究成果を無断で持ち出すと、契約違反による民事上の責任を問われるほか、ハーバード大の例のように産業スパイ法違反として刑法上の罪を問われる可能性があることも明示。滞在国の法律のチェックや情報収集を欠かさないよう呼びかけている。
 文書は、25日に開かれる科学技術・学術審議会国際化推進委員会に報告。研究助成をしている日本学術振興会や大学などを通じて留学の手引書などの資料と一緒に配布し周知徹底を図るほか、ガイダンスでも説明する予定。文科省では、国内の研究開発成果の取り扱いについても、現在ルール作りを進めている。
[2002-07-24-03:06]

◆2002/07/25 スパイの疑い持たれるな 研究者向け文書作成 文科省
 共同通信ニュース速報

 研究成果の外部への持ち出しにはくれぐれも注意を―。日本人研究者が米司法当局に相次いで経済スパイ容疑で摘発されたのを受けて、文部科学省は二十五日、若手研究者らが海外で研究活動を行う際に注意すべき心得をまとめた文書を作成し公表した。
 同日開かれた科学技術・学術審議会の国際化推進委員会で報告。近く公的研究機関や研究助成機関などを通じて配布する。
 文書は、日本と海外の研究慣行や手続きには大きな違いがあると指摘。米国の研究機関や大学などを具体例に、試料や特許、ソフトウェアなどの成果は、研究者個人でなく研究機関に所属するのが原則だと説明し、研究者が別の研究機関に移る際に、ノートのコピーを持っていくにも承認が必要なケースがあるとしている。
 さらに、雇用時に研究成果の取り扱いルールを含む合意文書に署
名を求められた際には、十分に理解したうえで署名するよう念押し。その国の法規を把握した上で、周囲にあらぬ誤解を与えないよう呼び掛けている。
(了)
[2002-07-25-18:12]



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