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社会的排除

social exclusion
労働
[Korean]


*作成:橋口 昌治 / 増補:村上 潔

●「子どもの貧困」については、主に→子/育児に掲載。

■非正規労働者における社会的排除の実態とその要因
 (2010/03/30 独立行政法人経済産業研究所[RIETI] ディスカッションペーパー2009年度)
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/10030010.html
「概要
本稿では、非正規労働者の「雇用形態」の違いによる社会的排除の実態について、実証的に分析した。具体的には、非正規労働者を対象とした全国規模のWebアンケート調査から得られたデータを用いて7つの社会的排除指標を作成し、労働者の属性毎に社会的排除の実態を調べて、その決定要因に関する分析も行った。
その結果、指標毎にみると、日雇い派遣の社会的排除率は高く、製造業派遣における社会関係の欠如が顕著であった。しかし、様々な属性をコントロールすると、これらは派遣労働という雇用形態よりも、短い雇用契約期間や製造業での業務と関連していることがわかった。また、過去の就業上の経験や学校での過ごし方が現在の社会的排除の状況に影響していた。それぞれの社会的排除指標には正の相関があり、重複排除が起きていることも明らかにされた。」

◆学力格差「貧困が影響」 県弁護士会が佐賀で報告会
 (2009年4月19日『読売新聞』>地域>佐賀)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saga/news/20090418-OYT8T00894.htm
「(【写真】子どもの学力と家庭の経済状況との関連などについて講演した阿部さん)
 子どもの7人に1人が貧困状態にあるといわれる日本の実態やその原因、改善策について考えようと県弁護士会は18日、佐賀市の県教育会館で「『子どもの貧困』とは〜子どもにとって公正な社会を目指して〜」と題して報告・講演会を開いた。
 県内外の教育関係者や弁護士など約110人が参加。第1部では「現場から」と題して、教諭や児童福祉司が、県内における教育費が払えない家庭や児童虐待の実態について報告した。
 第2部では、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長で、「子どもの貧困」の著者、阿部彩さんの講演が行われた。
 阿部さんは、食べ物・住む場所がない「絶対的貧困」だけでなく、社会の一員として生きていくために必要な就労や結婚などの活動に参加できない「相対的貧困」があり、日本の子どもの7人に1人が相対的貧困の状態にあると主張。
 また、日本の子どもの学力低下が下位層で拡大していることや、子どもの学力は家庭の経済状況と関連していることをデータで示し、「義務教育レベルで『貧困の不利』が表面化しないように、教育諸経費の無料化や就学前児童への知育に力を入れるべき」と話した」

◆広がる貧困問題…家族以外頼れず 低所得者が孤立
 (2008年10月30日『読売新聞』)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/jiten/20081030-OYT8T00494.htm
「 働いているのに十分な収入が得られない「ワーキングプア」など、貧困の問題が注目を集めています。
 各国の貧困の実態を裏付ける数字として参考になるのが、経済協力開発機構(OECD)のデータです。OECDは、国民を所得順に並べた時、真ん中の順位の人の半分以下しか所得がない人の割合を「相対的貧困率」と定義。日本の貧困率(2000年)は、2006年7月に発表した「対日経済審査報告書」で、13・5%としています。調査対象となった17か国中、アメリカに次いで2番目に高い割合です。
 報告書では、日本の貧困率は90年代半ばの11・9%から上昇傾向にある、と強調。主な背景として、非正社員が増えていることを指摘しています。厚生労働省の「労働経済白書」(07年版)によると、非正社員が雇用者全体に占める割合は、84年には15%程度でした。しかし、90年代前半のバブル崩壊後、各企業は、正社員を、派遣社員など人件費の安い非正社員に置き換える動きを加速化。政府もこうした動きを後押しした結果、非正社員の割合は90年に20%を超え、06年は33%と過去最高水準に達しています。
 貧困の問題が深刻なのは、「お金」の問題だけで片づけられない点です。国立社会保障・人口問題研究所の国際関係部第2室長の阿部彩氏らが首都圏のある市に在住する20歳以上の住民約1600人を対象に実施した「社会生活に関する実態調査」(06年)によると、所得が低い人ほど、トラブル時に家族以外に頼れる人がいない割合や地域活動に参加していない割合、さらに、医療や年金制度に加入していない割合が高いことが分かりました。
 低所得者は、企業だけでなく、地域、社会保険制度などからも“孤立”しがちです。欧州では、こうした状況を「社会的排除」と表現し、就業支援、税制などによる経済支援、地域活動支援、健康対策など包括的な対策を講じています。
 しかし日本では、明確な貧困の基準もなく、実態把握すらしていないのが実情です。問題を放置すれば、社会の階層化が進み、福祉コストが増えることになりかねません。政府は実態を調査し、欧州にならい、包括的な支援を行うべきです。(大津和夫)」



■文献表

◇Young, Jock 1999 The Exclusive Society : Social Exclusion, Crime and Difference in Late Modernity,SAGE Publications, London
=20070310 青木 秀男・伊藤 泰郎・岸 政彦・村澤 真保呂 訳,『排除型社会――後期近代における犯罪・雇用・差異』,洛北出版,541p. ISBN-10: 4903127044 ISBN-13: 978-4903127040 2800+税 [amazon]
Giddens, Anthony 2000 The Third Way and its Critics,Polity Press
=20031120 今枝 法之・干川 剛史訳『第三の道とその批判』,晃洋書房,261p. ISBN-10: 477101471X ISBN-13: 978-4771014718 2730 [amazon]
◇小玉 徹・中村 健吾・都留 民子・平川 茂 20030210 『欧米のホームレス問題(上)――実態と政策』法律文化社
◇伊藤 大一 20030600 「イギリスにおける「アンダークラス」の形成――ブレア政権における雇用政策の背景」『立命館経済学』52-2
 http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/52204.pdf
◇渋谷 望 20031025 『魂の労働――ネオリベラリズムの権力論』青土社
◇松田 京子 20031101 『帝国の視線』,吉川弘文館, 225p. ISBN-10: 4642037578 ISBN-13: 978-4642037570 6300 [amazon][boople]
◇Bhalla, A.S., Lapeyre, F., 2004 “POVERTY AND EXCLUSION IN A GLOBAL WORLD, 2nd edition”, Macmillan Publishers Limited
 =福原 宏幸・中村 健吾 監訳 20050420 『グローバル化と社会的排除――貧困と社会問題への新しいアプローチ』昭和堂
◇樋口 明彦 2004 「現代社会における社会的排除のメカニズム――積極的労働市場政策の内在的ジレンマをめぐって」『社会学評論』217:2-18
 http://slowlearner.oops.jp/paperarchives/higuchi_akihiko_social_exclusion_2004.pdf
宮本 みち子 20041200 「社会的排除と若年無業――イギリスとスウェーデンの対応」『日本労働研究雑誌』No.533,p.17-26
 http://www.jil.go.jp/institute/zassi/200412/017-026.pdf
◇岩田 正美・西澤 晃彦 編 20050210 『講座・福祉社会第9巻 貧困と社会的排除――福祉社会を蝕むもの』ミネルヴァ書房
◇(社)部落解放・人権研究所 編 20050425 『排除される若者たち』解放出版社
◇宮本 太郎 20050400 「ソーシャル・アクティベーション――自立困難な時代の福祉転換」『NIRA政策研究』p.14-22
◇NHK「無縁社会プロジェクト」取材班 20110115 『無縁社会』,文藝春秋,269p. ISBN-10: 4163733809 ISBN-13: 978-4163733807 \1470 [amazon][kinokuniya] ※



■小玉 徹・中村 健吾・都留 民子・平川 茂 20030210 『欧米のホームレス問題(上)――実態と政策』法律文化社

◆「貧困や社会的排除に対する各国の取り組みをEUレベルでのイニシアティブによって活性化しようという試みは,単一通貨「ユーロ」を導入するための制度面での準備が整った1990年代の後半から本格化したといってよいであろう。
 1997年10月に調印されたアムステルダム条約は,マーストリヒト条約では付属議定書扱いになっていた「社会政策協定」をほぼ全面的に条約本体に取り込んだ(EC設立条約第11編第1章)。その結果,条約136条には「高水準の雇用の継続と社会的排除の撲滅のための人的資源の開発」がEUおよび加盟国の目標として掲げられた。さらに137条によれば,「労働市場から排除された人々を労働市場へ統合する」ために,加盟国の関係閣僚からなる閣僚理事会は次の2種類の措置をとることができる。すなわち,第1に「最低基準」を特定多数決にもとづく「命令directive」によって採択することである。「命令」が閣僚理事会での全会一致ではなく特定多数決によって採択可能となったことは,排除に抗するEUレベルでの立法を迅速にするうえで効果的である。第2に「知識の改善,情報および優れた慣行の交換の促進,社会的排除を撲滅するための革新的な手法の開発と経験の評価を目的とする発議を通じて,加盟国間の協力を促進する」ことである。この第2の措置が,加盟国政府による「貧困と社会的排除に抗するナショナル・アクション・プラン」の作成とその検証というかたちで具体化されていくのである。」(p.6〜7)

◆「結局,欧州委員会は,――以下で述べるように「社会的排除」の度合いを測るためのEU共通の指標を策定する努力を続けているとはいえ――「社会的排除」に明確な定義を与えることを今日まで回避している。それにもかかわらず,欧州委員会が使用する「社会的排除」の概念は上でみたように,経済のグローバリゼーションと情報社会化に対応して欧州経済の競争力を強化するというEUの全般的な戦略にみごとに合致する仕方で組み立てられている。すなわち,これまで加盟国が整備してきたような「受動的な」所得再分配政策や社会的保護のシステムでは経済と社会の変化に対応できないので,人々の「雇用確保力」や「適応能力」を高める「能動的な福祉国家」(リスボンでの欧州理事会における議長総括)に切り替えていくことをめざすEUの戦略にとって,「所得の再分配」に視野を限定せず「先を見越した」アプローチを要求する「社会的排除」の概念の構成は,実に適合的である。なぜなら,「社会的排除」が示唆する「先を見越したアプローチ」とは,可能なかぎり社会的保護に頼らなくてもすむように労働力としての人々の資質――労働市場における個々人の競争力――を強化することを指向しているからである。それは,マクロ経済政策を通して完全雇用を達成しようとするようなアプローチではない。そうではなくて,供給サイドのミクロな次元における競争力の強化を目指しているのである。[Silver, 1994, p.540]が示唆しているように「社会的排除」の概念は,欧州委員会と加盟国政府のみならず経営者団体をも含む,「欧州の福祉国家を改革しようとする新しい広範な連合」を形成するうえで,キー・コンセプトとしての機能を果たしうる。
 「社会的排除」の概念を以上のような文脈の中においてみると,皮肉なことに,本来は多次元的であるはずのこの概念は,もっぱら「変化の激しい労働市場から排除された人々」に適用される概念となり,したがって「社会への包摂」が「労働市場への包摂」へと切り詰められかねない危険性をともなっているといわざるをえない。そうなると,そもそも労働市場に再参入する以前にさまざまな問題を抱えているホームレス生活者のような人々は,「社会的包摂」のための施策から除外されかねないのである。「先を見越した」就労支援策と事後的な生活保障政策は,いわば車の両輪なのであって,前者のみの一面的強調は,人々に自立を強制するような圧力を生み出し,後者のみの一面的強調は,自立への道を閉ざすことにつながる。」(p.14〜15)

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■伊藤 大一 20030600 「イギリスにおける「アンダークラス」の形成」

◆「ブレア政権において社会的排除とは,「個人ないしは地域が失業や低技能,低所得,貧しい住宅事情,高い犯罪率,悪い健康状態,そして家族の崩壊などの 関連した諸問題の結合によって苦しんでいるときに生じうる状態のことである」と定義されている。
 これに対して,Percy-Smith, J.(2000)は,社会的排除委員会の定義を,生じている問題そのものを強調しすぎており,問題を生み出す過程そのものへの分析が十分でないとし,社会的排除を第一に,「グローバリゼーション」の進展によって生み出された問題であり,第二に静的にとらえるのではなく,個人のコントロール外にある諸過程の中で動的にとらえるものであり,第三に,個人やグループが他の個人,グループそして社会全体から社会的に排除されている「関係」を取り扱った概念であるとしている。」(p.3)

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■渋谷 望 20031025 『魂の労働――ネオリベラリズムの権力論』青土社

◆「いずれにせよ、犯罪社会学者イアン・テイラー(1999)がイギリスの若者の犯罪とのかかわりあいを分析しながら指摘するように、消費社会(「市場社会」)の影響を全ライフコースを通じて経験しているのは、若い世代、とくに八〇年代生まれ以降の若者であり、彼らがこのグローバル化された消費社会=排除社会において何を経験していくのかを問うことこそが、むしろ必要である。」(p.95〜96)

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■樋口 明彦 2004 「現代社会における社会的排除のメカニズム――積極的労働市場政策の内在的ジレンマをめぐって」

◆「(…)社会的排除アプローチとは,社会秩序の回復というマクロ的視点と個人的資源の有無というミクロ的視点を有機的に接合させたアプローチだと整理することができよう。」(p.5)

◆「(…)包摂的な社会集団が成立するということは,同時に包摂されない,つまりそこから排除された人々を必ず生み出すのではないか.社会的包摂とは,自己と他者を明確に裁断する境界線によってのみ定義づけられるのではないか.こうした問いを立てることで,R.グッディンは,社会的包摂が排除へと反転する論理的矛盾を突き,社会的排除アプローチを根本的に批判している.
 この推論は単なる論理ゲームというわけではない.実際,社会的包摂は,その包摂に見合う特定の基準に適合しているかどうかという選別的な境界づけを常に行い,最終的に排除/包摂の基準は判断する者が立つ相対的位置に依存している場合が多い.グッディンが想定しているのは,不法移民流入に対して排他的な管理措置を行う国民国家のように「内的には包括的で外的には排他的なコミュニティ」の存在だが(Goodin 1996:362),人々を弁別する選別基準は国籍に限ったことではない.いまや長期失業者,ホームレス,シングル・マザー,学卒若年者らにとって,就業能力employabilityや労働意欲の有無が強力な選別基準となっている.ヨーロッパ各国が熱心に推進する積極的労働市場政策もまた,そうした選別基準に貫かれているのである.」(p.7)

◆「(…)社会的排除/包摂という新たなアプローチを真に一般的なものへと高めるプロセスには,その適用条件をそのつど比較検討する作業も含まれていることを銘記すべきである.わが国でも,2000年12月に発表された旧厚生省社会・援護局の『社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書』が,社会的包摂の必要性を指摘している.だが,新たな社会的「つながり」を訴えている報告書の趣旨は,主として福祉という社会的側面に限られたものとなっている.雇用情勢の悪化とともに,将来に対する不透明感も増しているわが国では,社会的包摂の展望を広く経済/文化/政治的側面にまで拡大する必要があるのではないだろうか.(…)」(樋口2004,p.16)

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宮本 みち子 20041200 『社会的排除と若年無業』

◆「欧米先進諸国では,1970年代末から若年者の失業が大きな社会問題となり,多くの調査・研究と政策の展開があった。景気回復期には若年失業率は低下したにもかかわらず,学校にも雇用にも職業訓練にも就いていない状態の若者の数はむしろ増加し,しかも固定化する傾向がみられた。こうした実態に対して,1990年代半ば以後,EU諸国では「社会的排除」という用語を用いて,ステイタスゼロの若者を政策の対象とするようになった。」(p.17)

◆「若年失業は,単に仕事がないというにとどまらず,貧困,社会的孤立,犯罪や疾病,社会保障の権利の喪失など,重大な困難をもたらす。とくに発達の途上にあり,職業経験を積みながら社会関係を広げていくべき年齢段階における失業は,成人の失業とは異なる問題を生むものであった。若者が,社会的に要求されているあらゆるものへのアクセスができない状態にあり,社会生活上も孤立し周辺化する現象を社会的排除(social exclusion)のひとつととらえ,この状態に陥ることを防止するのが,若者政策の重要課題となった。
 1990年代半ばまで,イギリスでは長期に失業状態にいる若者,さらには最終学校卒業後,一度も職に就くことなく公的給付に依存している若者たちを,アンダークラス(underclass)に特有の問題としてとらえる動きがみられた。働く意欲の低さや福祉への依存体質が労働者階級とは区別される下層階級の特徴として,攻撃された。増加するティーンエイジャーの未婚の母は攻撃の矛先となった(Murray,1990)。いっぽう,1990年代に一部の研究者は若年者の実態調査をもとに,若者をアンダークラス問題として扱うことに対して反論し,社会経済構造が,成人期への移行を危機に陥れていることに警鐘をならした(Coles,1995;Furlong and Cartmel,1997;Jones,2002)。
 1997年に政権についた労働党ブレア首相は,社会的排除防止局(Social Exclusion Unit)をたちあげ,社会のメインストリームから隔絶された若者への取り組みを開始した。社会的排除防止局は,全国調査を実施し,その結果を1999年にBridging the Gapと題するレポートにまとめた。報告によれば,毎年16〜18歳の若者の約9%が学校にも雇用にも訓練にも就いていないNEET(Young people Not in Education, Employment or Training)の状態にある。しかし9%という数字は問題の深刻さを十分示す数値とはいえない。NEETの状態をどの程度続けているかが重要であった。ちなみに,6カ月以上が6%,12カ月以上が3%であった。特定の地域,学校,エスニックグループ,特定の状況にあるグループで,平均値を大幅に上回っているのは,社会的不平等の存在とその固定化を示すものであった。」(p.18)

◆「5) 若者が社会的排除に結びつきやすい類型として次の10点が指摘されている。
@労働市場からの排除,A社会的孤立,B経済上,また制度や組織からの排除や低い資格レベル,C低い社会階層出身者,D労働市場に対する受身的存在,E不安定な経済状況,F社会的支援の少なさ,G制度的サポートの不在,H低い自己評価,I薬物依存や非行行動。
いっぽう,社会的排除の危険が少ない類型として次の9点が指摘されている。
@高い資格レベル,A労働市場での積極性,B安定した経済状況,C社会的サポート,D制度的サポート,E高い自己評価,F社会文化的活動への活発な参加,G家族への統合性が高いこと(例南欧),H水面下の経済活動の存在(不安定な仕事への定着の危険はあるが,同時に,経験・社会的コンタクト,自己評価の維持に役立っている)。
このような類型化から,労働市場への統合だけでは,失業中の若者を社会的排除から守るのは不十分だということがわかる。」(p.25)

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■岩田 正美・西澤 晃彦 編著 20050210 『講座・福祉社会第9巻 貧困と社会的排除――福祉社会を蝕むもの』ミネルヴァ書房

◆「社会的排除は,1980年代に若者の長期失業など従来の社会保障制度では対応できない集団の存在に直面したフランスに起源をもつ言葉だとされている(Madanipour et al.2000)。これが次第に長期失業層だけでなく,地理的空間的に区分された大都市の周辺部やゲットーに暮らし,経済,政治,文化のあらゆる側面で,通常の機会や制度から切り離された特定集団の問題全体を指すものとして使われるようになった。ヨーロッパでは近年この用語をヨーロッパ連合(EU)の新しい社会統合の中心にすえようとする政治戦略が現れ,「社会的排除との闘い」という共通目的や社会的統合のための計画策定が加盟国に課せられたために,この概念が貧困に代わるものとして急速に普及している。なお,この排除された層を,アメリカでなかつての「下層社会」アンダークラスというラベルで呼んで,19世紀型貧困の復活という意味を印象づけた。
 むろん,社会的排除論の背景にあるのは19世紀への逆行ではなく,欧米では1973年の石油危機と為替変動相場制への移行を期に急速に進んだ「ポスト工業化社会」とグローバリゼーションによる「われわれの社会」自体の根本的な変容だといわれている(Harvey, D. 1989)。ブースやラウントリーの把握した貧困は工業社会の労働者の貧困であり,さらに福祉国家は,大量生産体制を基本とする工業常用労働者とその家族の生活変動を制度設計のモデルとした。そこでは主に雇用と賃金の安定維持,また子供の養育費や高齢期のニーズなどライフサイクル上のリスクが考慮されたが,ポスト工業化社会は金融や情報などの新しい部門を膨らませるとともに,これらの部門を資本が次々と移動するため,これらを支える労働市場の再編が,不正規雇用の拡大,外部化や下請け化というかたちで進行した。グローバリゼーションによる世界市場での競争がこれらの「変動」をさらに加速させていると理解することもできる。また離婚や未婚の増大など家族の変容も指摘されている。
 こうした変化のもとで,中間層の膨らんだ「気球型社会」から「砂時計社会」のような貧富の差の大きな両極社会へ移行していることや(Lepietz et al. 2000),貧困の期間の長い「貧困経験者」の増大が,同一集団をくりかえし調査するパネル調査の結果から明らかにされはじめた。この「貧困経験者」の構成では従来の高齢層の比率が減って,代わりに若年者,一人親世帯,移民層の比率が高まっていることから,これらを「新しい貧困」と呼ぶ人びともいる。社会的排除論は,この「新しい貧困」の一部を,社会総体との空間的,制度的位置関係において,捉え直そうとした概念であるともいえよう。空間的にも、制度的にも「排除」されて,社会の周縁に蓄積された「彼らの貧困」は,同質の労働者階級,市民層の中の連続する生活水準レベルの,ある「解決すべき」閾値だけで判断されるものではなく,「われわれの社会」総体の排除と統合の動態的プロセスの中でしか把握されない,ということのようやく社会の関心が向けられるようになったわけである。」(岩田・西澤[2005],p.6〜7)

◆「□イギリス政府の指針――Our Healthier Nation
 健康戦略のための白書である“Our Healthier Nation”には1990年代の健康の社会的な格差は拡大しており,ほとんどの死因において社会の最下層の人びとが最も打撃を受けている、と明記されている(Department of Health 1999)。
 「全国民の健康を改善すること」,「健康の不平等を是正すること」の2つを目的とし,特にがん,虚血性心疾患と脳卒中,事故,精神疾患の4分野に関してデータをもとに2010年までの達成目標値が掲げられている。それぞれの問題解決のための目標値を掲げるだけではなく,目標値に到達するための具体的施策もまとめられている。
 “Our Healthier Nation”では,食事,運動,性行動など個人のライフスタイルの決定には個人のコントロールを超えた多くの要因が直接的に健康に影響を与えている場合がある,と言明している。また,その要因として貧困,社会的排除,雇用,住宅,教育,環境などを例にあげている。」(p.123)

◆「以上,本章で述べてきたことをまとめてみよう。野宿者をはじめとする「住所不定」の困窮者は,形式的には国民すべてに最低限度の生活を保障する生活保護制度からは,「高齢者」「病人」をのぞいては実質的に排除されてきた。他方で,寄せ場のような日雇労働市場は,そうした「住所不定」の人びとに当座の寝床と仕事を与え,かれらを失業者・貧困者として可視化することを抑制する――と同時に「住所不定」者の一般福祉体系からの排除という問題の顕在化を抑制する――「緩衝装置」として機能してきた。ただし,そのような「非定住」の日雇労働者の生活基盤の脆弱さという問題については,家族・子持ち世帯と単身男性という選別――いわば,「定住化」の支援により地域住民として社会的に包摂するに値する層とそうでない層との選別がなされ,単身男性の日雇労働者の生活基盤の脆弱さという問題については,ほとんど放置されてきた。1990年代以降の野宿者の増加とその男性・中高年者に偏った人口構成は,生活保護行政からの「住所不定」者の排除と日雇労働市場への吸収という“連動”体制が日雇労働市場の変容によって崩れたことの現れである。」(p.237)

◆「野宿者は,都市のマジョリティからは隔絶されて,固有の空間を生きている。組織・定住社会――「よき国民」の領域――は,履歴の空白,「不定」な住所,保証人の欠如などを標識として野宿者を拒絶し,社会的に排除する。(…)」(p.236)

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■アジット・S・バラ/フレデリック・ラペール 20050420 『グローバル化と社会的排除』昭和堂

◆「社会的排除の観念はアングロサクソン系の文献では比較的新しいものであるにもかかわらず,1990年代になって急速に普及した。それはまずフランスにおいて,1980年代の社会経済的変容に関連する新たな社会的懸案問題に関心をいだいた社会学者たちによって発展させられた。この観念は,人びとに対する不平等の拡大から生じた社会的結束の喪失と,社会的・経済的脆弱さが再び広がったことと示そうとするものである。実際,満足のいく(ディーセント)仕事(あるいは,そもそも仕事一般),所得,住宅,医療サービス,教育へますます多くの人びとがアクセスできなくなっており,一定の人びとのあいだでは不確実さの感覚がよりいっそう広がっている。しかも,そうした現象は,繁栄の可能性にあずかることのできる別の人びとに対して新しい機会が提供されることと平行しながら進行している。社会的排除は,物質的な豊かさの欠如だけでなく,シンボルによる排除,社会的剥奪,主要な社会的諸制度への不完全は参加とも関連している[Silver,1995]。それは,個人と社会のあいだにある関係の質を強調するものである。社会的排除を考慮に入れたアプローチは,社会的拘束に影響をあたえることで社会政策に大きな変更を迫るような新しい社会問題を浮き彫りにする。
 社会はますます壊れやすくなった。社会的排除に関する議論は,資本主義の変容と,それが新しいグローバルな時代において全世界におよぼす影響とに関係している。生産システムからの排除と社会的剥奪は,社会的排除へと導く2つの重要な過程である。それに対して,満足のいく(ディーセント)仕事と効果的な社会的ネットワークは,社会的統合の主要な要素である。
 社会的排除は多次元的で構造的な過程である。すなわち,それは一方では労働の不安定さ〈pcecariousness〉や失業をふくみ,他方では福祉国家の危機,フレキシブルな〔資本〕蓄積のパターン,個人主義の台頭,そして第1次的連帯(たとえば家族のネットワーク)の弱体化などを通じた,社会的なつながり〈social bonds〉の崩壊をふくんでいる。」(p.1〜2)

◆「ルノワールは、「社会的排除」という言葉を使用した先駆者とみなされている。『排除された人々:フランス人の10人中の1人〈Les Exclus: un Francais sur dix〉』において、彼は、排除された人びと――すなわち、経済成長の果実を手に入れる術をもたない人びと――にスティグマを生じさせるような見方を説いた[Lenoir, 1974]。実際、社会的に排除された者とは、精神障がい者または身体障がい者、自殺する人びと、高齢者や病人、麻薬乱用者、非行に走る者、社会に溶けこめない人びとなどであった。これらのさまざまな人びとに共通することは、彼らが工業社会によって設けられた規範に適合していなかったということであった。つまり、彼らは社会的に不利な立場の集団であった。しかしながら、「社会的排除」という言葉はこの時期には限定された意味しかもたず、社会的な受容の範囲も限られていた。というのは、社会的排除は社会全体に影響をあたえることのない周辺的な現象にかかわるものであったからである。」(p.3)

◆「このような文脈で見ると,1998年6月29日のフランスの反排除法は,社会的排除との闘いにおける欧州での礎石であり,独創的な発案であるとみなすことができる。排除をふくむあらゆる次元に取り組むよう国家に要求してきた社会的行為主体による数年の闘いの帰結として,反排除法は,すべての人間に保障されるべき基本的権利の観念に言及している。」(p.7)

◆「結論として,社会的排除は社会的諸問題の分析に対する新しいアプローチであるということができる。それは,以前にはこの現象から影響を受けていなかった人々の多くがますます脆弱さや剥奪にさらされるようになっていることの原因をなす多次元的な過程をよりよく理解するための,長期的な研究の発展を刺激してきた。1980年代の後半に社会科学における研究は,貨幣アプローチにもとづく貧困の静態的(スタティック)な定義から,不利な状態の累積や社会的なつながりの断絶が――少なくともいくつかのケースでは――社会的排除という極端な状態に行きつく過程へと,関心を移した。」(p.20)

◆「結論をいえば,新しい社会的論点について議論するうえでの「アンダークラス」という言葉の適切さに対しては,強い批判が寄せられている。この言葉はアメリカにおいてこれまで広く用いられてきたが,学術的な議論からはしだいに姿を消しつつある。(…)これとは対照的に「社会的排除」という言葉は,社会的な議論や研究プログラムへと導入されることで欧州において普及した。」(p.136〜137)

◆「多くの場合,「〔市民を〕活性化する」政策は,仕事への復帰を確実にするために復帰過程への行政的な監督を強化すること,失業手当にアクセスする条件をより厳しくすること,労働市場へのアクセスを促進するネットワークを創出すること(職業紹介サービスと社会的サービス,労使の社会的パートナー,ならびにNGOを動員すること),仕事へ復帰する人(および彼らを雇う雇用主)に財政的なインセンティブを付与すること,そして求職活動が不十分であると職業紹介機関が判断した者に対して制裁を課すことに結びついている。この新しい政策の枠組みがかかえているリスクのひとつは,社会的排除の個人的な次元と,社会への(再)統合過程に参加するという失業者や排除された人びとの義務とを強調しすぎていることである。この見方からすると,〔市民を〕活性化する政策は,社会的排除の構造的要因をないがしろにし,長期失業者に烙印を押す一因となる。それというのも,長期失業者が(再)参入するには実際に構造的な障壁があるにもかかわらず,彼らがかかえている諸問題は彼ら自身のせいにされてしまうからである。」(p.139)

◆「ファシンは,貧困の発生が3つの現象を引き起こすと記している[Fassin,1996b,p.263]。すなわち,フランスの排除,アメリカのアンダークラス(いずれも第4章で議論された),そしてラテンアメリカのマージナル化である。彼は,これらの概念が社会的空間の3つの布置連関に対応していることに注意をうながしている。つまり,排除は「内/外」に,アンダークラスは「高/低」に,そしてマージナル化は「中心/周辺」に対応しているというのである。西欧における排除をめぐる議論を受けて,何人かの研究者たちは,排除とマージナル化との類似性を示唆しながら欧州のラテンアメリカ化について語り始めた。〔排除とマージナル化という〕2つの現象は,労働市場のインフォーマル化と臨時雇用の増大によって特徴づけられる。しかしながら,2つの現象のあいだには違いもある。たとえば、フランス、西欧、北米の場合には,「新しい貧困層」と呼ばれている人口の一部分は,優勢な資本主義のシステムにある時点ではその一部として組み込まれていた(彼らは「内側」にいた)が、いまではそこから排除されている(彼らは「外側」にいる)。他方で、ラテンアメリカや他の発展途上国では,都市貧困層は都市の資本主義システムには最初から決して統合されてこなかった,農村からのかつての出稼ぎ労働者である。」(p.183)

◆「現在進行中の社会的排除の過程が行きつく主要な帰結のひとつは,「非自発的退出〈involuntary exit〉」である。言い換えれば,排除されている人びとの政治的代表と影響力が失われているのであるが,これは公式の政治的・市民的権利の制限と混同されてはならない。マージナル化された個人が主要な社会的制度へ関与したり,コミュニケーションをはかったりするための能力が低下している。また,彼らにおいては,新たな社会契約を結ぶための交渉力がますます弱くなっている。私的領域への引きこもりが映しだしているのは,集団による取り組みや連帯といった実践が危機に陥っている状況であり,社会的な結びつきがほころんでいるという事態である。搾取から排除への移行は,長期失業と不安定な仕事にとらわれた人びとの脆さが深まっていく新たな過程に行きつくことになる。
 加速する個人のアトム化,社会生活の多くの領域の市場化,そして集合的な行為やプロジェクトの危機は,団体交渉の過程から人びとが退出する可能性を増大させる。告発〈voice〉を汲みとってきた伝統的な伝達メカニズムの危機の中で告発が弱体化していることは,人びとが現在進行している事態に賛同していることを意味しない。個人の立場から見れば,社会は公正ではないと感じられている。(…)」(p.236)

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■(社)部落解放・人権研究所 編 20050425 『排除される若者たち』解放出版社

◆「本書には、大卒で定職に就こうとしない、自分探しや新しい生き方を模索する若者たちは登場しない。これまで「フリーター」問題として議論されてきたのは、そうした比較的条件に恵まれた若者たちを対象としたものが多かったのではないだろうか。より深刻な、困難な状況におかれた、しかし十分に目が向けられてこなかった若者たち、言い換えれば、現実の生活条件において社会のメインストリームから「排除」され、さらに社会的な問題関心からも「排除」されている若者たちの状況を、本書では扱うことになる。」(B)

◆「他方、産業構造の転換に伴い、ヨーロッパを中心に低所得者層やマイノリティの個人・集団・地域にのしかかっている重層的な困難が顕在化した。このような重層的な困難に対処するために、そのような状況を「社会的排除(Social Exclusion)」としてアプローチする研究が盛んになっている(樋口,2004)。アメリカ・イギリスを中心に生じた産業構造の転換をやや遅れて経験している日本においても、相対的に低い階層出身者・マイノリティの若者に対する社会的排除は拡大しつつあると予測される。しかしながら、そうした「社会的に不利な立場に置かれた」若者にのしかかる社会的排除の内実はほとんど把握されていないのが現状である。」(p.5)

◆「今回の調査を始めるにあたって、学校教育の問題にはそれほどウェイトを置いてはいなかった。学校を出てからの問題が中心課題であろうという想定があったのだが、調査と分析を進める過程で、社会からの排除の原因として、またその結果として、学校からの排除が見過ごせないテーマとして浮かび上がってきたのである。1、3、4、5章でそれぞれ触れられているのだが、学校からの排除の現れとして低学力と不登校の問題をあらためて取り上げておきたい。
 小学校の段階から「勉強がわからない」経験をする者がいることは、従来から「落ちこぼれ」として触れられてきた。しかし、それが「学校に上がってすぐ」といった極めて早い段階から生じていること、そしてさらに、漢字の読み書きができない、暗算がつらいなど基本的な生活能力すら身につかないままに社会に出てしまっている現実が語られたことの意味は大きい。「落ちこぼれ」とは、基本的な生活能力を身につけさせるという学校教育の責務を放棄した結果であり、まさに社会からの排除状態をもたらす学校からの排除として見なすべき重大な問題であることにあらためて気づかされたのである。」(p.204-205)

◆「イギリスでは、学校からの排除が問題とされ、怠学、中退を軽減することが社会的排除の解決策として模索されている。学校における排除をテーマとした調査研究も多数なされており、学校をつくりかえるための提言や取り組みも示されている。」(p.205)

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■宮本 太郎 20050400 「ソーシャル・アクティベーション」『NIRA政策研究』

◆「こうした構造を持った20世紀型福祉国家は、雇用と家族の揺らぎによって機能不全に陥る。安定した雇用関係と家族関係の中で支えられてきた、生活能力形成、社会参加、技能形成がうまくいかなくなる。こうした事態に、新しい政策手段によって積極的に対処し、人々の自立を支援しようとする考え方が強くなっていく。先に見た多様なコンセプトはこうした問題意識から提起されている場合が多いが、ここでは比較的間口が広い「社会的排除」という言葉でアプローチをくくっておきたい。
 社会的包摂という考え方が新しい主流となる背景は、以上のようなリスク構造の転換にかかわる社会的背景だけではない。リスク構造の転換とあいまって政治的、経済的な背景も挙げることができる。リスク構造の転換は、いわば社会的リスクの普遍化を意味するが、新しい社会的リスクに対処する経済的能力は、むしろ階層ごとに格差が現れる。しかし、周辺層の社会的保護を徹底すると、自らもリスクに直面している中間層の反発が強くなる。ここで、福祉の理念を社会的包摂に転換することが、合意調達のために有効とされる。これは社会的包摂の理念が台頭する政治的背景である。また経済的には、グローバル化のなかで、ディマンドサイド志向の経済政策が有効性を喪失する一方で、労働力のサプライサイドに焦点を合わせ、いわゆる人的資本を形成する政策が、新たに期待されるようになる。」(p.15)

◆「わが国では、基本的には(本稿が示した意味での)ワークフェア的な色彩の強い福祉改革が進んでいる。雇用保険は、自己都合退職に対する手当の給付期間を短縮すると同時に、「就業促進手当」を導入し、給付期間を残しての就業に誘引を設けた。また、児童扶養手当の改革も、収入と手当の関係を調整して勤労意欲を促進することを狙った。自立のための活動を怠る場合は手当の一部あるいは全部の給付をしないという「自立条項」を導入した。生活保護改革についても、自立支援に力点を置いた改革が追及されている。他方で、多様な就労支援の政策や予算も投入されているが、必ずしもこうしたワークフェア的な政策展開とかみ合っているとはいえない。
 ソーシャル・アクティベーションを志向する福祉改革は、このような状況にあるわが国にとってもまた有益な処方箋となろう。」(p.22)

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■行政文書

◆厚生労働省20001208「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書(平成12年12月8日)
 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0012/s1208-2_16.html
 http://www.city.kobe.jp/cityoffice/18/menu03/t/keikaku/chosa/siryou16-1-06.pdf

「3.対象となる問題とその構造
 従来の社会福祉は主たる対象を「貧困」としてきたが、現代においては、
・「心身の障害・不安」(社会的ストレス問題、アルコール依存、等)
・「社会的排除や摩擦」(路上死、中国残留孤児、外国人の排除や摩擦、等)
・「社会的孤立や孤独」(孤独死、自殺、家庭内の虐待・暴力、等)
といった問題が重複・複合化しており、こうした新しい座標軸をあわせて検討する必要がある。【別紙】
 このうち、社会による排除・摩擦や社会からの孤立の現象は、いわば今日の社会が直面している社会の支え合う力の欠如や対立・摩擦、あるいは無関心といったものを示唆しているともいえる。
 具体的な諸問題の関連を列記すると、以下の通りである。
・急激な経済社会の変化に伴って、社会不安やストレス、ひきこもりや虐待など社会関係上の障害、あるいは虚無感などが増大する。
・貧困や低所得など最低生活をめぐる問題が、リストラによる失業、倒産、多重債務などとかかわりながら再び出現している。
・貧困や失業問題は外国人労働者やホームレス、中国残留孤児などのように、社会的排除や文化的摩擦を伴う問題としても現れている。
・上記のいくつかの問題を抱えた人々が社会から孤立し、自殺や孤独死に至るケースもある。
・低所得の単身世帯、ひとり親世帯、障害者世帯の孤立や、わずかに残されたスラム地区が、地区ごと孤立化することもある。
・若年層などでも、困窮しているのにその意識すらなく社会からの孤立化を深めている場合もある。これらは通常「見えにくい」問題であることが少なくない。
 以上の整理は、あくまで例示であって、これらの問題が社会的孤立や排除のなかで「見えない」形をとり、問題の把握を一層困難にしている。孤独死や路上死、自殺といった極端な形態で現れた時にこのような問題が顕在化することも少なくない。
 そのため、「見えない」問題を見えるようにするための、複眼的取り組みが必要である。」


*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p1/2004t.htme

UP: 20070710 REV: 0805, 20090423, 0513, 0519, 20100407, 20110423
労働  ◇貧困  ◇平等/不平等/格差  ◇「貧困」関連の研究会など
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