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二分脊椎

spina bifida

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last update: 20220326


■紹介 二分脊椎

◆二分脊椎とは
二分脊椎は、生まれながらにして脊椎(背中の骨)の形成不全があり、また同時に脊椎の中にある脊髄の機能が障害を受けている先天疾患のひとつである。脊髄は大脳からの指令を体中に伝える神経の束と、この働きを調節・制御する神経細胞からできている重要な器官である。生まれてまもなく脊椎の異常を修復する手術を受けるが、下肢の運動と知覚の麻痺や、排泄(排尿・排便)の機能障害が残ることが多い。また水頭症という大脳の障害を合併し、脳外科での対処を必要とすることもある。障害の状態は、車椅子が必要な方から、歩いたり走ったりすることは問題なく排泄の障害だけがある方まで様々である。
二分脊椎では、下肢の麻痺に対しては車椅子や歩行のための装具や杖をうまく使えるようにリハ訓練を受けることが必要であるが、時には麻痺に伴う下肢の変形や褥瘡に手術で対処しなければならないこともある。また排尿障害に対して適切に対処しなければ、腎臓の機能の低下を来たすという重大な問題を引き起こす危険性がある。排便に問題を抱える方も少なくない。水頭症の状態も時々チェックが必要である。
このような多岐にわたる障害に対して、泌尿器科・脳神経外科・整形外科・小児科・リハビリテーション科・外科(消化器)などの診療各科によるケアが必要となる。また、日常生活や社会生活をサポートするために、理学療法士、作業療法士などによるリハ訓練をはじめ、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーが連携をとり積極的に取り組むことが重要である。

◆泌尿器科と二分脊椎
二分脊椎症患者が最も頻回に受診される必要性があるのは、泌尿器科である。排尿の障害に対しては間欠導尿という方法がよく用いられるが、膀胱の機能障害は腎臓にまで影響を及ぼすことがあるため、これを続けるためには定期検査を受けることが必要である。
しかし、こうした適切な対処を行っていても膀胱機能障害が進行し、手術が必要になることもある。排尿障害に関しては、十年あるいは数十年先を見据えたケアと治療が必要である。

◆脳神経外科と二分脊椎
二分脊椎は背髄の先天奇形のひとつである。その程度にもよるが、脳神経外科、泌尿器科、整形外科の手術が必要な病気である。
脳神経外科で必要な手術に関する説明が以下のとおりである。
・脊髄髄膜瘤閉鎖術
 二分脊椎で生まれつき腰の背椎が閉鎖せず脊髄と神経が背中に露出した状態が脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)である。髄膜炎の危険があり生後すぐに閉鎖術が必要となる。
・水頭症に対するシャント術,シャント再建術
 80%の症例で水頭症を合併するため髄液のシャント術が必要となる。通常は生後1ヶ月以内に行われる。外径2mmの管で脳とお腹を結び余分な頭からお腹に髄液を流す。シャントはシリコン製の人工物であり数年から20年で詰まったり切れたりする。シャントが流れなくなると脳の圧が上がり、頭痛や嘔吐が出現する。そうなりますと緊急でシャントを修理する再建術が必要となる。また、身長の伸びに合わせてシャントの管の長さを延長する必要がある。シャントを流れる髄液の量はバルブでコントロールしている。バルブの圧、流量は外から特殊な装置を用いて変えることができる。最近ではシャント以外の神経内視鏡を用いた手術方法(第3脳室開窓術)も可能な場合がある。第3脳室開窓術が行えれば、シャントが必要なくなる。全例にできるわけではないが、画期的な方法である。
・脊髄脂肪腫摘出術,脊髄係留解除術
 成長期に問題になるのが、脊髄脂肪腫、脊髄係留症候群(せきずいけいりゅうしょうこうぐん)である。腰の部分で癒着した背髄は身長の伸びについて行けずに引き延ばされる。足や膀胱・直腸に行く神経が引き延ばされてその機能が低下すると、転びやすくなる、尿を漏らすようになるなどの症状が学童期や思春期になって出てくることがある。脂肪腫を摘出して脊髄下端の癒着を剥離することで症状が改善する。
・その他
 側弯症に伴う脊髄の変性により脊髄空洞症を来たす場合もある。これは脊髄に無理な力が働き、脊髄の中に髄液が貯まってしまう状態である。脊髄空洞症も手術が必要となる場合がある。
 二分脊椎は先天奇形であるが、成人でも症状が悪化する場合があり、最低でも年1回の脳神経外科の診察と検査をしておくことが望まれる。

◆看護と二分脊椎
二分脊椎のこどもの多くは排泄に障害を持っており、排泄の自立や合併症予防に対する指導が大切になる。
就学前のこどもの排尿の自立に対しては、清潔的間欠導尿(CIC)を用いた取り組みがある。CICの手技は1週間程度で習得が可能であるが、習慣化していくためには、本人が理解し行動していくことが必要になる。
CICの手技の習得については、それぞれのこどもの理解力や運動障害の程度を考え、こどもに適した自立への援助を工夫する必要がある。こどもの理解に合わせた関わりができるよう、臨床心理士と相談し学習方法について検討することもある。文字や時間に対する理解が苦手なこども、集中力が続かないこどもなどは時計の絵を描いて説明したり、手順どおりにきちんとできたらシールを貼ってほめたり、遊びの時間との兼ね合いを考え、保育士と調整したりと工夫の方法は様々である。運動機能に障害がある場合は、便座への移動や着替えがどの程度できるかにより、車椅子上でのCICや衣服の改良なども行われる。
排尿だけでなく、排便の管理も大切なことである。家庭生活や修学旅行の準備として排便の自立や排泄時間のコントロール、介助方法の指導などの支援も求められる。
いずれも医師や他部門との情報交換を行い、こどもに合う方法が検討される。また、学童に対しては、両親だけでなく教員や介助員など学校関係者への指導も行い、学校での排泄にも配慮した関わりも重要である。

■ホームページ


◆日本脊髄外科学会
 http://www.neurospine.jp/original35.html
◆日本脊髄障害医学会
 https://www.jascol.jp/
◆日本小児外科学会
 http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/nibun-sekitui
◆日本排尿機能学会
 http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/special/?id=16256
 ・cf. 二分脊椎に伴う下部尿路機能障害の診療ガイドライン [2017年版]
 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/31_lower-urinary_dysfunction_2017.pdf
◆全国二分脊椎症児者を守る会
 http://www.asahi-net.or.jp/~wc4n-szk/sbaj.htm
◆二分脊椎症のこども
 http://plaza10.mbn.or.jp/~stardust/
◆日本二分脊椎症協会
 https://sba.jpn.com/
◆日本二分脊椎研究会 - 順天堂大学
 https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/shonigeka/jsbss/guide/
◆二分脊椎外来 - 東京大学医学部附属病院
 https://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/sb/
◆日本二分脊椎・水頭症研究振興財団
 https://www.jikeikai-group.or.jp/jsatoshi/
◆医療法人村上整形外科
 https://www.murakamiseikei.com/medical-examination06
◆難病情報センター
 https://www.nanbyou.or.jp/

 ※二分脊椎症者・家族のページ

◆かづよさん
 http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/1329
◆MIYOKOさん
 http://www.asahi-net.or.jp/~ca3s-mbc/index.html
◆バッドほし丸さん
 http://www2a.biglobe.ne.jp/~kfm75881/index.html
◆秋山さん
 http://member.nifty.ne.jp/YOSHI_EUPH/euph.htm
◆跡部さん
 http://www.kumagaya.or.jp/~raven/
◆すすむさん
 http://www4.justnet.ne.jp/~susumu.o/
◆牧野さん
 http://plaza8.mbn.or.jp/~makino/
◆河野さん
 http://www.hetk.com/
◆南十字星さん
 http://plaza10.mbn.or.jp/~stardust/
◆上田さん
 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/chika-u
◆のぢかなこさん
 http://www.educ.ls.toyaku.ac.jp/~s947081/
◆山下&柴田さん
 http://www.dtinet.or.jp/~unamas/index.html
◆鈴木信行さん
 http://www.asahi-net.or.jp/~WC4N-SZK/

◆立岩真也『私的所有論』第5章注6より(pp.207-208)

 「医師による新生児の状態に対応した医療方針のガイドライン作成の試みとしてLorber[1971]、Cambell ; Duff[1979a][1979b]、Duff[1979]等があり、こうした行いに対してGallagher[1995=1996:128-129]の批判がある。日本ではこの種の試みは少ないが、仁志田博司他[1985][1987](他に仁志田[1988][1991])がある。以上を土屋[1995b:161-165]が紹介、検討している。また、川村眞由美・仁志田博司[1994]では、クラスC(現在行っている以上の治療は行わず一般的養護に徹する)とされた一八トリソミーの子の長期生存例が報告されている。Gallagher[1995=1996:129-130]に、アンソニー・ショー(小児外科医、全米小児外科協会倫理委員会委員長)が考案した以下の基準を利用して、二分脊椎症の新生児を分類し、一方に積極的治療を行い(そして生き残った)他方に行わなかった(そして死亡した)「実験」が紹介されている。「生命の質(QOL)」という語がこのように用いられることがある。cf.注24
 QL=NE×(H+S)。
 QL=生きた場合に子供が持つだろう生命の質。NE=子供の知的・身体的な天賦の資質。
 H=両親の結婚の情緒的安定度・両親の教育レベル・両親の財産に基づいて、子供が家庭、家族から得られるだろう支援。
 S=子供が地域社会から得られる社会サービスの質。」

◆立岩真也『私的所有論』第9章注1より(pp.429)

 @母体血清マーカーを用いた検査、その中で三つのマーカーを用いるトリプル・マーカー・スクリーニング(triple marker screening)と呼ばれる検査が日本でも実用化されつつある。母体血中のアルファ胎児性蛋白(AFP)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(uE3)、エストリオール(hCG)を妊娠中期(一五週〜一八週)に測定し、その分析結果によりダウン症、トリソミー一八、二分脊椎、神経管奇形等の可能性を推定する。検査結果は確率として示される。確率が高いとわかった場合には羊水検査を受けるかどうかを選択する。(佐藤孝道編[1996:33-86]が詳しい。他に検査の実際と結果について北川道弘[1994]、北川・武田[1994:278-281]、恩田威一他[1994]。検査の現状について飯沼和三・恩田威一[1994]。検査法について佐藤章他[1995:8-9,12]、検査法、留意点について福嶋義光・大橋博文[1995]。)

■参考文献

◆CiNii Articles - 日本の論文をさがす
 https://ci.nii.ac.jp/search?q=%E4%BA%8C%E5%88%86%E8%84%8A%E6%A4%8E%E7%97%87&range=0&count=20&sortorder=1&type=0
◆CiNii Dissertations NII論文情報ナビゲータ(博士論文)
 https://ci.nii.ac.jp/d/search?advanced=false&count=20&sortorder=1&q=%E4%BA%8C%E5%88%86%E8%84%8A%E6%A4%8E%E7%97%87&range=0
◆Google Scholar
 https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=%E4%BA%8C%E5%88%86%E8%84%8A%E6%A4%8E%E7%97%87&btnG=
◆J-STAGE トップ
 https://www.jstage.jst.go.jp/result/global/-char/ja?globalSearchKey=%E4%BA%8C%E5%88%86%E8%84%8A%E6%A4%8E%E7%97%87


*更新:兵頭 卓磨
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