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吃音

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last update:20160817

■目次

組織  ◇雑誌  ◇書籍  ◇関連情報  ◇新聞記事


■組織

■国内組織

◆NPO法人 全国言友会 連絡協議会
 http://genyukai.org/
◆中高校生の吃音のつどい
 http://tsudoi.irdr.biz/
◆日本吃音臨床研究会
 http://kituonkenkyu.org/
◆日本吃音・流暢性障害学会
 http://www.jssfd.org/
◆日本コミュニケーション障害学会
 http://www.jacd-web.org/
◆一般社団法人 日本言語聴覚士協会
 http://www.jaslht.or.jp/
◆特定非営利活動法人 コミュニケーション・アシスト・ネットワーク
 http://www.we-can.or.jp/
◆吃音サポートグループ ジークフリーツ
 http://sieg-kitsuon.jimdo.com/

■国際組織

◆国際吃音者連盟(ISA)
 http://www.isastutter.org/introduction/japanese
 ◇世界の吃音者(関係)団体 [英語]
 ◇世界吃音者大会 [英語]
 ◇国際吃音アウェアネスの日 [英語]
 ◇「吃音啓発の日」チラシ(2012年、名古屋言友会) http://nagoya-gyk.jimdo.com/isad/
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■雑誌

◆『言語聴覚研究』日本言語聴覚士協会
 http://www.jaslht.or.jp/st_app/jigyou.html
◆『コミュニケーション障害学』日本コミュニケーション障害学会
 http://www.jacd-web.org/journal/
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■書籍

◆伊藤 伸二 1977 『吃音者宣言――言友会運動十年』 たいまつ社 [amazon]
◆酒井 真 1993 『楽石社の歩み――伊沢修二から八十八年−−渦巻く潮流の福祉法人』 社会福祉法人楽石社
◆伊藤 伸二 1999 『新・吃音者宣言』 芳賀出版 [amazon]
◆石隈 利紀 ・ 伊藤 伸二 2001 『論理療法と吃音――自分とうまくつき合う発想と実践』 芳賀書店 [amazon]
◆伊藤 伸二 ・ 中田 智恵子 2001 『知っていますか? セルフヘルプグループ 一問一答』 解放出版社 [amazon]
◆藤樹 拓也 2002 『吃音!吃音者のどこが悪い?』 文芸社 [amazon]
◆伊藤 伸二 2004  『知っていますか? どもりと向き合う 一問一答』 解放出版社 [amazon]
◆石隈 利紀 ・ 伊藤 伸二 2005 『やわらかに生きる――論理療法と吃音に学ぶ』 金子書房 [amazon]
◆水町 俊郎 ・ 伊藤 伸二 2005 『治すことにこだわらない、吃音とのつき合い方』 ナカニシヤ出版 [amazon]
◆平木 典子 ・ 伊藤 伸二 2007 『話すことが苦手な人のアサーション――どもる人とのワークショップの記録』 金子書房 [amazon]
◆伊藤 伸二 2008 『どもる君へ いま伝えたいこと』 解放出版社 [amazon]
◆伊藤 伸二 ・ 吃音を生きる子どもに同行する教師の会 2010 『吃音ワークブック どもる子どもの生きぬく力が育つ』 解放出版社 [amazon]
◆大野 裕 ・ 伊藤 伸二 2011 『ストレスや苦手とつきあうための認知療法・認知行動療法: 吃音とのつきあいを通して』 金子書房 [amazon]
◆菊池 良和 2011 『ボクは吃音ドクターです。』 毎日新聞社 [amazon]
◆向谷地 生良 ・ 伊藤 伸二 2013 『吃音の当事者研究――どもる人たちが「べてるの家」と出会った』 金子書房 [amazon]
◆Preston, Katherine 2013, Out wit It: How Stuttering Helped Me Find my Voice, Simon & Schuster. [amazon]
 =20140806 辻 絵里 訳 『吃音を生きる――言葉と向き合う私の旅路』 東京書籍 [amazon]

◆近藤 雄生 2014 「吃音と生きる・1――百万人の知られざる苦悩」 『新潮45』 2014年2月号
◆近藤 雄生 2014 「吃音と生きる・2――『治す』ために何ができるか」 『新潮45』 2014年7月号

◆内須川 洸 1983 『講座心理臨床の実際6 吃音の心理臨床』 福村出版 [amazon]
◆内須川 洸 1986 『吃音診断学序説』 風間書房 [amazon]
◆内須川 洸 2000 『言語臨床入門』 風間書房 [amazon]
◆都築 澄夫 編 2000 『言語聴覚療法シリーズ13 吃音』 建帛社 [amazon]
◆日本聴能言語士協会講習会実行委員会 編 2001 『コミュニケーション障害の臨床 2 吃音』 協同医書出版社 [amazon]
◆廣島 忍 ・ 堀 彰人 2004 『子どもがどもっていると感じたら――吃音の正しい理解と家族支援のために』 大月書店 [amazon]
◆盛 由紀子 ・ 小澤 恵美 編 2004 『シリーズ 言語臨床事例集 第9巻 吃音』 学苑社 [amazon]
◆都築 澄夫 編 2008 『言語聴覚療法シリーズ13 改訂 吃音』 建帛社 [amazon]
◆小林 宏明 2009 『学齢期吃音の指導・支援――ICFに基づいた評価プログラム』 学苑社 [amazon]
◆菊池 良和 2012 『エビデンスに基づいた吃音支援入門』 学苑社 [amazon]
◆小林 宏明 ・ 川合 紀宗 2013 『特別支援教育における吃音・流暢性障害のある子どもの理解と支援』 学苑社 [amazon]
◆小澤 恵美 ・ 原 由紀 ・ 鈴木 夏枝 ・ 森山 晴之 ・ 大橋 由紀江 2013 『吃音検査法』 学苑社 [amazon]
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■関連情報

◆ ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)」)
 ◇ 厚生労働省統計情報・白書各種統計調査結果疾病、傷害及び死因分類に関する指標
 ◇ F00-F99 精神及び行動の障害 > F90-F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 > 98 小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の行動及び情緒の障害 > F98.5 吃音症

◆ 国際生活機能分類(The International Classification of Functioning, Disability and Health)
 ◇ 「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について
 ◇ 第3章 音声と発話の機能 > b330 音声言語(発話)の流暢性とリズムの機能

◆ DSM-IV(精神障害の診断と統計の手引き:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
 ◇ 307.0 発達障害のコミュニケーション障害

◆ DSM-V(精神障害の診断と統計の手引き:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
 ◇ 315.35 小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音) Childhood-Onset Fluency Disorder (Stuttering)

◆ 国立障害者リハビリテーションセンター
 ◇ 発達障害情報・支援センター発達障害を理解する各障害の定義吃音[症]とは
 ◇ 国立障害者リハビリテーションセンター研究所感覚機能系障害研究部吃音について

◆ 身体障害者福祉法施行規則
 ◇ 身体障害者福祉法施行規則 > 別表第五号 (第五条関係) > 音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害

◆吃音ポータルサイト(金沢大学人間社会研究域学校教育系小林宏明のホームページ)
 http://www.kitsuon-portal.jp/
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■新聞記事

「吃音 苦しみ深く…社会の理解不可欠 アンケート記述欄」『毎日新聞』2016年8月16日

 「吃音のせいで人生の歯車が狂った」「しゃべらないで済む職業を考えた」。 全国の吃音当事者を対象に毎日新聞が実施したアンケートの自由記述欄には、当事者の苦しみが切々とつづられていた。 そこからは、吃音に対する社会の理解を深め、当事者をさまざまなかたちで支援していくことの必要性が浮かび上がる。
 「どもりさんが発表しているんか」
 60代の行政書士の男性は小学2年の時、かけ算の九九の練習で言葉に詰まりながら発表していると、担任教師から笑いを誘うような雰囲気でそう言われたという。 アンケートで「屈辱感でいっぱいであった」と振り返る。
 言葉を発するようになって間もない2歳の時から吃音を抱え続けているという20代の無職男性は、症状が原因で幼稚園から中学校まで同級生らから殴る蹴るの暴力を受けたと明かす。 「教師も注意せずに見て見ぬふりをしていた。吃音を患っている多くの人々が苦しんでいることを考えてほしい」と訴えた。
 40代の非正規社員の男性は、電話口で会社名を言えず、勤め先を辞めた。自殺を考えたこともあり、今は心療内科に通院している。 「人生の歯車が吃音という障害が原因で大きく狂ってしまった」と苦しみを吐露した。
 現在、吃音は努力で完治する「癖」ではなく、脳の機能障害が原因だとする学説が有力だ。だが「治す努力」を求められたことに苦しんだ経験を持つ人もいる。
 20代の女性は、会社の新人研修で行われたプレゼンテーションの練習で吃音の症状が出てしまい、最低評価を付けられた。 全員の前で再度プレゼンをしたがうまくいかず、「治せないのか」と指摘されたことがつらかったという。
 40代の男性会社員は「高校生の私が進路選択を考えていた時、しゃべらないで済む職業を考え、自分自身で可能性をどんどん潰していったことを後悔している」と告白。 若い吃音者たちに「自身の可能性を諦めないで」と呼びかけた。【遠藤大志】

アンケートの自由記述
・吃音が出ると顔面がけいれんするためマスクや手で隠していた。人との距離感が分からず、成人後に困った。吃音のない状態で生まれ変わりたいと思った。  アルバイト・女性(39)
・人と話すことを避け続けた子ども時代。どもりやすい言葉を言い換えや前置きなどで避けるため話の内容が回りくどくなり、さまざまな誤解を招いてしまう。  福岡県・看護師・男性(33)
・職場の会議で症状が出た際、課長から遠回しであったが、以後なるべく発言を控える旨の指示を受けた。 埼玉県・公務員・男性(43)
・出勤時にあいさつの言葉が出るか心臓がバクバクし、精神を摩耗する。言葉を出すのがつらく、誰ともしゃべりたくない。飲み会では全然言葉が出ない。 仕事はやるからずっと黙っていても許容してほしい。 岩手県・無職・男性(26)
・学生時代は友人にからかわれたり、まねされたりした。すごく嫌で、自殺も考えた。もし吃音がなかったら歌手になりたいと思っていた時期もあった。 薬局に勤めたが吃音があるためクビにされた。 埼玉県・無職・女性(21)
・吃音は劣ったもの、恥ずかしいものと思っていた。中学生のころにすごく意識し始め、いじめが原因で不登校になってしまった。 大人になっても困難なことがあると逃げ出す癖がつき、対人恐怖症にもなった。 無職・男性(60)
・入社当時から言葉が出ず、上司や同僚から嫌な顔をされ、頭が悪いというイメージがついてしまい、叱責や無視をされる日々が続いた。 転職を繰り返したがいじめが続き、精神疾患で5年ほど通院している。 愛知県・男性(39)
・吃音が原因で、高校の英語の授業で3年間全く当てられなかった。(症状改善のため)毎日、声出しなどをしている。 宗教法人の修養や吃音サークルでも努力したが10%程度改善したぐらい。生きているのが苦しいが、親より先に死ぬわけにはいかない。 無職・50代男性
・就職試験の面接などで自分をコントロールできず、話せなくなってしまう。吃音のことを知っている人と面接したい。 大人になれば治ると思っていたが、大人に近づくほど吃音のことで頭がいっぱいになってしまった。 学生・男性(21)
http://mainichi.jp/articles/20160817/k00/00m/040/093000c
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「吃音「差別受けた」6割 「理解不十分」7割」『毎日新聞』2016年8月16日

本紙アンケート
 言葉が出にくい吃音を抱える人々を対象に毎日新聞が当事者団体などの協力で全国アンケートを行ったところ、6割強が「学校や職場でいじめや差別を受けた」と回答した。 「吃音への社会的理解や支援が不十分」との回答は7割近くに達し、吃音への無理解や社会的支援の欠如が浮き彫りになった。 症状を抱える人は100人に1人程度とされるが、当事者団体によると吃音によるいじめや差別の実態を明らかにする調査は過去に例がない。
 アンケートは今年2〜6月、各地の自助グループを束ねるNPO法人「全国言友会連絡協議会」(全言連、東京都豊島区)や、 名古屋市のNPO法人「吃音とともに就労を支援する会」(どーもわーく)などの協力で実施。20〜80代の80人から回答を得た。
 「吃音が原因で学校や職場でいじめや差別など不利益な扱いを受けた経験はあるか」との問いに、50人が「はい」と回答。 「吃音への社会的理解や支援は足りていると思うか」には、55人が「不十分」とした。
 理解などが「不十分」な理由について、「正しい知識を持つ人が周りに少ない。『あがり症』や『よくかむ人』くらいの認識にとどまっている」 「法的支援を受けられるはずなのに、福祉・医療の現場で(吃音が)ほとんど知られていない」などの意見があった。
 また、「現在の就労は吃音者に不平等。(面接などで)配慮が必要だ」「中学や高校に『ことばの教室』のような通級指導(障害の状態に応じた特別な指導)の場がほしい」 「保健体育の教科書に吃音を載せるべきだ」との声があった。吃音に対する社会的偏見を踏まえ「できれば誰にも知られたくない。隠し通したい」と望む人もいた。
 一方、「吃音の症状を改善・克服したいと考えているか」との問いには、67人が「はい」と回答。12人が「個性と考えている」などを理由に「いいえ」と答えた。
 集計を踏まえ、全言連の南孝輔理事長は「社会で不利益を被る吃音者は潜在的にはもっと多いと感じている」と指摘。 「障害者の不当な差別的扱いを禁止する障害者差別解消法が今年、施行された。身近な障害である吃音のことを人々にもっと知ってほしい」と訴えている。【遠藤大志】

吃音(きつおん)
 一般的に「どもり」と言われる発語障害。典型的な症状は「た、た、た、たまご」などと単語の一部を繰り返す▽「たーーまご」などと一部を長く伸ばす ▽「……ったまご」と出始めで詰まる――など。 吃音者の多くが「話すとまたどもってしまうのではないか」という予期不安を抱え、症状を隠そうとしたり、コミュニケーション自体を避けたりする傾向がある。 三島由紀夫の小説「金閣寺」や、吃音に苦しんだ英王ジョージ6世の史実に基づく映画「英国王のスピーチ」など文学や映画のテーマになった。
http://mainichi.jp/articles/20160817/k00/00m/040/092000c
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「ことばマガジン こちら人権情報局 「吃音ラジオ、はじまります!」」『朝日新聞』2016年4月1日

 同じ音を繰り返したり、言葉が出にくかったりすることで、思い通りに話せない吃音。多くの当事者は、会話への苦手意識を抱えています。 そんななか、吃音について知ってもらおうと、あえて音声だけで表現する「ラジオ」を通して発信を続ける吃音当事者がいます。 開始から1年を過ぎ、「人前で話すのが楽しくなった」と大きな変化もありました。

■当事者たちがあえて放送にチャレンジ
 「吃音ラジオ、はじまります!」
 明るい声で番組をスタートさせたのは、大学生の遠藤百合加さん(20)。小さい頃から吃音があります。
 「吃音」とは、話すときに、[1]「わ、わ、わたし」と繰り返したり(連発)[2]「わーたし」と引きのばしたり(伸発) [3]「…………わたし」と音が詰まって出てこなかったり(難発)することで、思い通りに話せないことをいいます。 原因ははっきり分かっておらず、決定的な治療法もまだありません。 3歳前後で症状が出ることが多く、7割程度は自然になくなっていきますが、大人になってからも症状に悩む人は多くいます。
 吃音者は100人に1人いると言われていますが、「その割に知られていない」と遠藤さんは感じています。 吃音についてもっと知ってほしいという思いから、2014年、ツイッターを通じて集まった、会社員の広瀬功一さん(30)、音響エンジニアの青木瑞樹さん(30)とともに、 吃音当事者によるインターネットラジオ番組「吃音ラジオ」を始めました。
 「自分がスムーズに話していないところを聞いてもらえれば、吃音について知ってもらえるんじゃないか。 ラジオなら発信できるし、近くに住んでいない人でも参加できると思った」
 主に広瀬さんと遠藤さんが司会を、青木さんが編集・配信を行っています。第1回の放送は14年12月。 収録は、インターネットの通信サービス・スカイプを使っておのおのの自宅などから参加する形で行われており、九州など遠方のゲストが加わることもあります。 ゲストから体験談や悩みを聞いたり、リスナーからの相談に答えたりするほか、吃音に関するニュースの紹介も行っています。 月1〜2回の放送を続け、今年3月に第24回を迎えました。
 遠藤さんは、難発・連発型の吃音です。放送中、言いたい単語の最初の1音が出ず、言葉につまることもあります。 そんな時は、「言えるところから言ってみる?」「代わりに言おうか」。周りから声がかかります。
 「始めた頃は、スムーズに話せる言葉に言い換えて話したりしてしまっていたけど、続けるうち、自分本来の話し方で話せるようになってきた」と遠藤さん。 吃音について伝えるラジオだからこそ、自分の話し方を出すことが重要だと考えています。
 きっかけになったのはリスナーにもらったメッセージでした。「吃音ラジオなのにどもってない、と実は思います。 初めて吃音に接する人にとっては、一体どこがどもっているのか、どこが困るのか分からないのではという気もする。だから遠藤さんが言葉につまるとうれしいです」
 感動した、と遠藤さんは話します。
 「今まで苦しめられてきた吃音。その吃音の状態を肯定してもらった。せっかくの吃音ラジオなんだから普通に話す必要なんてない。 自分の吃音を認めてくれている言葉をきいて、こうやってラジオを作ったんだから必死で隠す必要なんてないんじゃないかと思った」。 それ以来、言い換えは極力避けて、自分を出そうと心がけているといいます。
 遠藤さんとともに番組の司会をつとめる広瀬さんは「ラジオを始めたことで、自分と同じことで悩んでいる人がこんなにいるんだと知った。 ツイッターやメールだけでなく、直接『聞いてるよ』と声をかけられることもある」と話します。 人前で話すのは苦手でしたが、「ラジオ以外の場面でも、人前で話すことが好きになった。話す楽しさを知った」と、自身の変化を語りました。

■就職や恋愛の悩み、リスナーから相談
 リスナーからは、吃音に関する体験談や相談が寄せられます。テーマは就職・進学に関する悩みや、学生生活であったいやなこと、また恋愛などさまざまです。
 第1回の放送では、「就職活動をどう乗り越えたか」という質問が届きました。 投稿者の学生は、高校生の時「いらっしゃいませ」がうまく言えずアルバイトを1日でクビになってしまった苦い経験から、就職活動や働くことに不安を持っていました。
 大きい分岐の一つは、吃音について、面接時に会社側に話すかどうかです。
 就活を機に吃音について考えるようになったという広瀬さんは「分かってくれる会社に入るためにも言った方がいいと思う。 隠し通すことはむずかしいので、言わないとあとあと自分が苦労することになる」。面接では吃音について話さず合格し、働き始めてからカミングアウトした出演者は、「言ってみるとみんな『知ってたよ』という反応だった。言う前から分かっていて普通に接してくれていたんだなと思った」と話しました。
 話すことで理解される場合もある一方、「名前を言うのに時間がかかるなんて、社会人失格」と返されたという人もいます。 広瀬さんは、「ただでさえ就職活動は大変なのに、面接で自分の思いを話せない、仕事が始まってもやっていけるかなどの悩みを持つ人が多い。 話さなくていい仕事や、自分の言える社名の会社を選ぶなど、吃音があることによって進路を狭めてしまうこともある」と語ります。
 また、15年7月には、恋人が吃音者だという女性から相談がありました。 「難発が出たときは、最初の1音を代わりに言うという約束になっているが、この方法を本当に彼がよいと思っているのか分からない。 みなさんならどうしてほしいか」という内容でした。
 難発で言葉に詰まっているときは、最初の1音を相手に言ってもらうことで、言いたいことが言えることがあります。 遠藤さんは「自分なら、最初の1音を言ってもらえたら助かる」と答えましたが、本当に分かってくれている人には言えるまで待ってほしいかもしれない、という考えも話しました。 ゲストの意見も「待ってほしい」「代わりに言ってほしい」とさまざまでした。
 広瀬さんは「吃音についての考えは人それぞれだから、毎回答えに悩む。意見を押しつけたくはない。 ゲストの人の意見も聞いたりして、『答えを出す』というよりは、『みんなで考える』ようにしている」と話します。
 相談をくれた女性からは2カ月後、再び投稿が届きました。
 恋人とラジオを聴き、話し合った、という内容で、結婚することになったこと、吃音についての思いが書かれていました。 遠藤さんは「役に立てたかは分からないけど、ラジオを始めて本当によかったと思う」と喜びました。

■「吃音の全てを知って欲しいとは言わない。ただ……」
 4月2日配信予定の次回は、「ボクは吃音ドクターです。」(毎日新聞社)の著書がある菊池良和さんをゲストに迎え、あらかじめ募集したリスナーからの質問に答えます。 「春から1年生になるという6歳の子からの質問も来ている。小さな子が知ってくれて、悩みを相談する場に選んでくれたのがうれしい」。 青木さんは広がりに手応えを感じています。
 遠藤さんは「ラジオを続けて、もっとたくさんの吃音者さんと話したい」と笑顔を見せました。吃音のない人にも、ラジオを聞いてほしいと考えています。 「吃音の全てを知って欲しいとはいわない。ただ、ふつうにしゃべることがちょっと難しい人もいるということを知って欲しい」
                     ◇
 ユーチューブで、過去の放送をさかのぼって聞くことが出来ます。詳しくは吃音ラジオのウェブサイトで。
                     ◇
 広瀬さんが制作に関わった、福山雅治さん主演のドラマ「ラヴソング」(フジテレビ系、月曜午後9時)が始まりました。 吃音で他人とのコミュニケーションに悩むヒロインが、福山さん演じる男性と出会い、歌を通して成長する物語です。 広瀬さんは「吃音の症状や苦しみが非常によく描かれている。吃音の当事者だけでなく、これまで吃音のことを知らなかった方々にもぜひ見ていただきたい」と話します。 (青山絵美)

写真:(左から)青木瑞樹さん、広瀬功一さん、遠藤百合加さん=3月13日、東京都渋谷区、青山絵美撮影
http://digital.asahi.com/special/kotoba/jinken/SDI201603272336.html
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「ことばマガジン こちら人権情報局 聞いて、私たちの話を――吃音を知りたい(下)」『朝日新聞』2014年7月11日

■「吃音の問題は、吃音を持たない人の問題」
 言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりすることで、思い通りに話せない吃音(きつおん)。
 吃音が出にくい「歌」を通した交流を中心に、吃音者のサポートをおこなっているグループ「ジークフリーツ」の松田真奈美代表は、 「吃音の問題は、吃音を持たない人の問題」といいます。
 「それが彼らの話し方。ジークフリーツの集まりが終わって、当事者同士わいわい話している時、誰も困っているようには見えません。 吃音が問題にされない場では、彼らも問題に思っていない。私たちが理解することで吃音の問題ってもっと軽くなっていくんじゃないかなと思う」。 吃音が受けいれられない環境が、吃音者を苦しませてきたと考えています。
 ある女性は「聞いている人が気にしないくらいでも、自分は落ち込む。失敗を気にすると、どんどん症状が重くなるというスパイラルで、一音も出なくなったこともある」。 周囲が気付かない程度に言葉に詰まったとしても「失敗した」と落ち込んでしまうそうです。 周りの人が感じる吃音と本人の思う吃音の間のギャップは、「つらい思いをした歴史があるから」のものだといいます。
 「分かっているのに言葉が出なくて答えられない」「思っていることが伝えられない」「あいさつが言えなくて怒られる」「教科書の音読でうまく読めない」 「話し方をまねされてからかわれる」――。 もどかしい思いや、つらい気持ちを積み重ね、人と話さなければならない場面を避けるようになったり、コミュニケーションに消極的になったりする人もいます。

■「言いたい言葉を言えない」言い換えのつらさも
 ジークフリーツの運営に携わる言語聴覚士の吉澤健太郎さん(北里大東病院)は 「吃音者は、自分の名前や決められたフレーズ、場に即したあいさつなど、他に言い換えがきかない語を話す場面で困ることが少なくない」と話します。 苦手な言葉やつまりそうになった言葉を言いやすい言葉に言い換えて話すことで、吃音がでることを避けることも多いからです。
 とくに、進学や就職の際の面接や自己紹介などは、人生において重要な場面であると同時に、言い換えのきかない言葉の多い局面でもあります。 現在の就職試験は、面接を重ねる形式が多いため、能力があるのに出し切れない人も多いそうです。
 一方で、言い換えができれば、問題が解決するわけではありません。
 言いにくい言葉を避けることで、表面的には吃音を出さず話すことができる人の中には、吃音者であることを隠している人も少なくありません。 周囲に話すかどうかはその人の考え次第ですが、隠すことで、誰にも相談できずつらい思いを抱えてしまう人もいます。 「(小さい頃からあった吃音が成長後も続いていたことを)親にも言えなかった。隠していたから、親もなおったと思って心配していなかったと思う」と吃音者の女性は話します。 実際には症状は重く、ひとりで悩んでいたといいます。
 同じように親に隠していたという、ジークフリーツに参加する男性は、「親にごまかすのはつらかった」。 松田さんは「どもっている人だけが吃音の人じゃないんです」と話します。
 また、言い換えをすることには、「本当に言いたい言葉を言えない」つらさもあるそうです。
 吃音のある小学6年生、ヒカルくんを取材した、2012年の1月の朝日新聞の連載がありました。 「あ行」ではじまる言葉が苦手なヒカルくんは、苦手な言葉を別の言葉に言い換えて話します。
 本当は「ママ」じゃなくて「お母さん」って言いたい。「弁当」って言ってるけれど、「お弁当」ってちゃんと言いたいし、「腹減った」より「おなかすいた」がいい。 でも、つっかえたら嫌だから、言い換えてしまう。(2012年1月6日〜1月15日 朝日新聞「(いま子どもたちは)強敵キッツオー」)

■理解と、相手に寄り添う気持ちを
 吃音が出やすい状況や「苦手な言葉」は人それぞれで、吃音の症状も一様ではありません。
 吃音のためにしてきたつらい思いも人によって違い、吃音に対する考え方も異なります。 「音読をとばしてほしかった」という人もいれば、「音読でとばされてつらかった」という人もいます。 思うように話せない時、「待ってもらいたい」と話す人がほとんどでしたが、なかには「相手が話してくれる方が気が楽」という人もいました。
 前回、吃音に対して「ゆっくりとね」と声をかけることは、吃音者を苦しめることがあるといいましたが、それが、方程式のようにいつも正しい答えなわけではありません。
 吃音が職場で理解されないことなどに悩み、北海道の看護師の男性(当時34)が命を絶った、という記事が、1月、朝日新聞に掲載されました(1/28朝日新聞)。
 男性は、職場で理解を得ようと、自己紹介の紙に吃音の症状について書き、「対処方法」として、「はげます」「待つ。『ゆっくり話していいよ』」と書いていました。
 ジークフリーツの参加者の男性は「『分かっているよ、聞いているよ』という気持ちで言ってくれているのが分かれば、 『ゆっくり話していいよ』が力になることもあると思う」と話します。大切なのは、聞き手が吃音を理解していること、話し手に寄り添う気持ちを持っていることです。
 彼らの「話し方」でなく、「話すこと」を聞く。必要とされているのは、人と人がコミュニケーションを取るうえで、当たり前の態度なのではないかと思います。(青山絵美)

写真:ジークフリーツの交流会で歌う参加者たち。吃音が出にくい「歌」を通した交流を、 月に1度おこなっている=4月13日、東京都狛江市、青山絵美撮影

【吃音を知るために】
・「吃音のこと、わかってください」(北川敬一著、岩崎書店)
・「ボクは吃音ドクターです。」(菊池良和著、毎日新聞社)
・「吃音からの脱出」(広瀬努、石田宗男著、黎明書房)=品切れ
・「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(押見修造著、太田出版)
http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/kouetsu/2014070700001.html
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「ことばマガジン こちら人権情報局 歌でほぐれる心もあるから――吃音を知りたい(上)」『朝日新聞』2014年6月27日

■気持ちよく声が出せる場所
 「どんなときも、どんなときも、僕が僕らしくあるために」
 軽やかな伴奏にのった歌声が、小学校の音楽室に響きます。歌っているのは、「吃音(きつおん)」のある人たち。 合唱を中心とした交流などをおこなっている吃音サポートグループ「ジークフリーツ」のメンバーです。 交流会は、月に1度、東京都狛江市の狛江第一小学校でおこなわれています。
 この日の参加者は10代から40代までの27人。 槇原敬之さんの「どんなときも。」からはじまり、「贈る言葉」「明日があるさ」など、誰もが知っている8曲を、声を合わせて歌いました。
 「吃音」とは、話すときに、《1》「わ、わ、わたし」と繰り返したり(連発)《2》「わーたし」と引きのばしたり(伸発) 《3》「…………わたし」と音が詰まって出てこなかったり(難発)することで、思い通りに話せないことをいいます。 さまざまな研究やアプローチがされてきましたが、原因ははっきり分かっておらず、決定的な治療法もまだありません。 3歳前後で症状が出ることが多く、7割程度は自然になくなっていくそうですが、大人になってからも症状に悩む人は多くいます。 どの言語でも、100人に1人程度の吃音者がいるといいます。
 吃音に悩んだ英国王ジョージ6世とスピーチ・セラピストの交流を描いた映画「英国王のスピーチ」(2010年)で、ご存じの方もいるかもしれません。
 吃音のある人の多くは、歌う際には吃音が出ません。「英国王のスピーチ」でも、言葉に詰まるジョージ6世に、セラピストが「歌うといい」と話す場面があります。 ジークフリーツは、吃音を心配しないで気持ちよく声が出せる場をつくることを目的に、歌を通した当事者同士の交流をおこなっています。
 吃音者の中には、話すことに自信をなくし、会話が必要な場面を避けて、コミュニケーションに消極的になってしまう人もいます。 ジークフリーツ代表の音楽療法家・松田真奈美さんは「一人きりで悩んでいた人が同じ悩みを持つ人と交流する場になるように」とグループをたちあげました。
 松田さんは、自身に吃音はありませんが、音楽療法の仕事の一環で訪れた老人ホームで、吃音のあるお年寄りに接したことをきっかけに、吃音の問題に取り組み始めました。 大人の吃音者の受け皿がないと感じた松田さんは2002年、団体を立ち上げ、以降、支援の活動を広げてきました。 「最初は当事者の人たちから『触れてくれるな』という反応もあった」。続けてきたことで、受け入れられ始めたといいます。
 参加者の男性は「歌うことで、感覚的な心のほぐれを感じる」と話します。通ううち、吃音への悩みが軽くなったという人もいるそうです。
 グループの運営に携わる言語聴覚士の吉澤健太郎さん(北里大東病院)は、 「歌にはリズムやメロディーがあるため、声が出やすい。 話すこと自体を避けがちな吃音者は、声を使う機会そのものが減る場合もあるため、みんなで歌うことは声を出せる機会になる」。 ともに歌うことで感動を分かち合い、コミュニケーションの大切さを再認識することを経て「『もう一度、話してみようと思える気持ち』が育まれるのではないか」と話します。
 現在は、歌の交流会の他に、言語聴覚士への個別無料相談、専門家を招いての学習会、女性限定の交流会などをおこなっています。

■「緊張しているからではないんです」
 ジークフリーツに参加する男性は「吃音は常に出るものではなく、同じ状況でも話せたり話せなかったりする」。 参加者の女性は「声を出そうとしてみないと、自分でも分からない」と話します。 「吃音が出やすい場面」や「苦手な言葉」はありますが、たとえば、「緊張しているから言葉に詰まっている」わけではないのです。 吃音者の多くは、緊張したりあわてたりしなくても、吃音が出るときには出ます。
 別の参加者が、吃音への理解を広げるためのポスターに描いた4コマ漫画があります。
 言葉に詰まる吃音者の女性。上司は優しく「落ち着いて話してごらん」と話しかけます。 善意からの「ゆっくりとね」という言葉に「……はい」と小さく答えながら、女性は「そうじゃないんです」と心の中で叫びます。
 「緊張しなくていいよ」「ゆっくり話してごらん」。よかれと思ってかけられる言葉が、吃音者を苦しめることがあります。 「『ゆっくり言えば言えるよね』と言われているようで、『ゆっくりでも言えないんだ!』とつらい気持ちになる」。 吃音のある女性は話します。理解されていないと感じること、その説明ができないことが、吃音者を苦しめます。
 松田さんは話します。「漫画の係長さんも、悪い人ではないんですよ。でもだからこそ、吃音の問題をよくうつしていますよね」
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 吃音について、知ってほしい。何に苦しんでいるのか、どういうことなのか――。見えにくい問題であるため、理解されにくく、当事者たちだけが苦しむことも多かった吃音。 社会に理解されることが、悩みの緩和につながると、周囲に知ってもらおうと考える人も増えています。
 次回は、人それぞれ違う、吃音への考えや悩みについて、ご紹介します。(青山絵美)
http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/kouetsu/2014062300001.html
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*作成:渡辺 克典 *増補:北村 健太郎
UP: 20110606 REV: 20111222, 1223, 1224, 1230, 20120911, 20121014, 20130401, 0514, 0930, 20140807, 20150209, 20160817
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