HOME >

出生・出産と技術/生殖技術・2003年

代理母/代理母出産/代理出産 2003

出生・出産と技術/生殖技術



●2003

◆2003/01/10 「<不妊治療>ルール一本化できず国民の意見募る 厚労省審議」
 毎日新聞ニュース速報
◆2003/02/27 日本受精着床学会:安易に禁止すべきでない 第三者かかわる不妊治療
 共同通信ニュース速報・他
◆2003/04/15 <体外受精>匿名の第三者提供認める 産科婦人科学会が答申
 毎日新聞ニュース速報・他
◆203/08/11 「<不妊治療>別の夫の精液を注入 愛知・小牧市民病院」
 『毎日新聞』203/08/11
◆2003/11/12 「亡夫の凍結保存精子で出産、親子関係認めず…松山地裁」
 『読売新聞』2003/11/12・他


◆2003/01/10 「<不妊治療>ルール一本化できず国民の意見募る 厚労省審議」
 毎日新聞ニュース速報

 「夫婦以外の精子や卵子、受精卵の提供による不妊治療のルールづくりを進めている厚生労働省の厚生科学審議会生殖補助医療部会は9日、中間報告案をまとめた。原則として第三者からの提供を認めたが、重要な論点となった兄弟姉妹からの提供の是非や、生まれた子供に対する提供者の個人情報の開示方法は一本化できなかった。同部会は意見を国民から募り、3月中に最終報告書を作る。同省はその報告書をもとに、代理母や営利目的での精子などのあっせんを禁止する新法の制定や民法など関連法の改正を関係省庁と進める。
 同部会は00年12月に専門委員会がまとめた報告書を下敷きに議論を進めてきた。
 生殖補助医療で生まれた子供が遺伝上の親を知ることについて、専門委は提供者の身長や体重など「個人を特定できない情報で、提供者が開示を承認した範囲」とした。これに対し、同部会は「子供の出自を知る権利」が世界的に保障され始めている状況を踏まえ、個人を特定できる情報を開示する方針を打ち出した。ただ、「提供者のプライバシーも保護されるべきだ」との意見もあり、個人を特定できる情報の開示を前提として提供者から同意を得るかどうかという具体的な開示条件については判断を持ち越した。
 兄弟姉妹などからの提供も合意に至らなかった。
 一方、生殖補助医療の実施施設に倫理委員会を設置することや、未熟児出産に対応できる設備を備えることを求め、新設する公的機関が提供者の個人情報などを80年間保存する点で合意した。
 中間報告案はホームページ(http://www.mhlw.go.jp)に掲載。意見は〒100―8916厚生労働省母子保健課(seishokuiken・mhlw.go.jp)へ。【田中泰義】

◆解説◆

 厚生労働省の厚生科学審議会生殖補助医療部会は9日、不妊治療のルールについて中間報告案をまとめたが、重要部分では部会の見解を統一できなかった。その背景には、生殖医療をめぐるさまざまな矛盾や立場の違いがある。
 日本では夫以外の精子提供による人工授精は50年以上の歴史があり、1万人以上の子供が生まれている。海外で代理母や卵子の提供を受けて子供をもうけるケースも出てきた。だが、本格的な議論が始まったのは98年6月、長野県の根津八紘医師が日本産科婦人科学会の会告に反して、不妊に悩んでいた夫婦に、妻の妹からの卵子を用いた体外受精を実施したことが明らかになったのがきっかけだった。
 厚生省(当時)はその4カ月後、専門委員会を設置。00年12月の報告書では、精子に限定されていた第3者からの提供を、卵子や受精卵に拡大する方針を盛り込んだ。また、提供は匿名で無償の第三者が原則だが、提供者がいない場合は例外的に兄弟姉妹や友人からの提供を、公的機関の審査を経た上で認めた。
 この専門委の報告書を基に議論した。メンバーは産婦人科医や小児科医、不妊カウンセラー、弁護士、児童福祉や家族法、生命倫理の専門家など20人。昨年11月に最終報告をまとめる予定だったが、核となる部分でさまざまに見解が分かれた。
 例えば、根津医師が実施した兄弟姉妹からの提供について――。子供の身近な人が遺伝上の親だと、親子関係を複雑にしかねない。提供を強いる恐れも出てくる。だが、血のつながりを重視する考えもある。卵子は肉体的な負担が大きく、精子のように第三者からの提供が期待できないという意見も強い。
 子供が出自を知る権利に関しては、スウェーデンやオーストラリアの一部の州が人工授精児について認めており、同部会でも子供には遺伝上の親を知る権利があるという意見が出た。一方、提供者にはプライバシーを確保した上で提供する権利もある。遺伝上の親が判明すると遺産相続の問題も起こりうる。
さらに、日本産科婦人科学会は近親者からの卵子や精子の提供を認めず、第三者の受精卵を使うことを否定している。実際の不妊治療を行う医師グループとの調整が難航することも予想される。」【田中泰義】
[2003-01-10-00:27]

 

◆2003/02/27 安易に禁止すべきでない 第三者かかわる不妊治療
 共同通信ニュース速報

 「日本受精着床学会(会員約千五百人)は二十七日までに、夫婦以外の第三者がかかわる不妊治療について「安易に禁止するべきでない」とする初めての見解をまとめた。
 見解は、不妊治療の制度づくりを進める厚生労働省の生殖補助医療部会に提出され、同日開かれた部会で公表された。
 同学会は今後、第三者からの受精卵や卵子提供による出産のほか、生殖補助医療部会が罰則付き禁止の方向で審議中の代理出産についても話し合い、提言を発表する。
 同学会には、不妊治療医院の医師が多く加入している。
 見解は@子を持つのは基本的人権で、自己決定権を認めるA価値観の多様性を認め、子を持ちたい希望を尊重するB子の権利と福祉を尊重するC第三者がからむ不妊治療は倫理的、社会的コンセンサスがないというだけで、安易に禁止すべきでないD生殖医療は進歩が早く、三年ごとに規定を見直す―の五項目。
 学会は昨年十二月、倫理委員会で見解を決め、その後の理事会で正式決定した。
 一方、日本産科婦人科学会(会員約一万六千人)は、受精卵提供や代理出産の禁止方針などを明らかにしている。」
[2003-02-27-18:28]


◆2003/11/12 「亡夫の凍結保存精子で出産、親子関係認めず…松山地裁」
 『読売新聞』2003/11/12

 「凍結保存していた亡夫の精子で体外受精し、男児を出産した西日本の40歳代の女性とその男児が、亡夫の子供としての認知を求めた訴訟の判決が12日、松山地裁であり、上原裕之裁判長は亡夫と男児の法的な親子関係を認めず、請求を棄却した。
 夫の死後の妊娠、出産という民法が想定していない事態に対し、初めて示された司法判断だが、実際の父子関係と相違する結果となった。急激に進歩、多様化する生殖補助医療をめぐる法整備の論議に一石を投じるとみられる。
 訴状などによると、女性は、生殖能力にかかわることのある白血病の治療を受け、1999年9月に死亡した夫の凍結保存精子で体外受精し、2001年5月に男児を出産。夫の死から300日を過ぎていたため、嫡出子としての出生届は民法の規定で受理されず、裁判に訴えて最高裁まで争ったが、退けられた。
 このため、非嫡出子(婚外の子)として戸籍を得たうえで昨年6月、「死後認知」を求めて提訴した。今回は、民法が想定していない親子関係の解釈と、死後の体外受精(死後生殖)についての生前の夫の同意の有無が争点となった。
 民法は、父親の死後3年以内の死後認知を認めているが、死後生殖の場合は規定がなく、人事訴訟手続法の定めで被告となった検察官は、現行法上、親子関係は認められないとした。
 これに対し、女性側は、今回の事態を想定していないのは「法の不備」と主張。男児がすでに生まれた以上、認知して出自を知ることをはじめ、様々な権利を保障して、子供の福祉を守るべきだと訴えていた。
 生前の同意について、検察官は精子を保存する際、亡夫が医師と交わした「死後は廃棄」と記した書面を挙げて否定。女性側は亡夫に生前、「自分が死んでも子供を産んでほしい」と頼まれたと主張していた。
 生殖補助医療の進歩に比べ、わが国の法整備は出遅れてきた。厚生労働省と法務省の審議会はようやく今年、法制化の方針をまとめたが、対象は精子や卵子、受精卵の第三者提供、代理出産などに限り、夫婦間の死後生殖には触れていない。」

◆203/08/11 「<不妊治療>別の夫の精液を注入 愛知・小牧市民病院」
 『毎日新聞』203/08/11

 「愛知県小牧市立小牧市民病院(末永裕之院長)は10日、昨年11月末、県内の30代女性患者に対する不妊治 療で、夫の精子を妻の子宮内に注入する配偶者間人工授精(AIH)施術の際、別の女性患者の夫の精液を注入す る医療ミスを犯していたことを明らかにした。担当医師、看護師ともに、患者確認マニュアルに基づく対応を怠っ たことが原因。ミス発生から3日後、ようやく産婦人科部長が院長に報告するという不手際ぶりだった。
 施術直後に患者の取り違えが判明、すぐに体内洗浄などを実施したため、女性は妊娠せず感染症もなかったとい う。女性は約半年間に計7回の通院治療を受けていたが、ミス以降、ショックを受け同病院を訪れていないという 。
 市は、今年2月に当事者の医師と上司の産婦人科部長を減給10分の1(6カ月)に、現場にいた看護師を同2 カ月、院長を戒告処分とするなど計7人を懲戒処分とした。市と女性側は、市が損害賠償金を支払うことで合意しているという。
 病院によると、女性は昨年11月下旬、待合室で人工授精を待つ別の2人の女性患者とともに施術を待っていた 。看護師は別の女性患者を診察室に招いたつもりだったが、被害女性が診察室に入り、診察台に上がった。診察台 はカーテンで仕切られ、医師からは患者の顔が見えない構造だが、医師と看護師は患者名を確認していなかった。
 女性は、その後、待合室にいたが、診察室に入るよう名前を呼ばれたため、不審に思い、施術済みであることを 告げた。驚いた医師らが確認したところ、この女性に注入すべき精液は保管されたままだったことから、患者の取 り違えが判明。避妊のため、医師が女性に体内洗浄と内服薬を投与した。
 同病院は人工授精を1982年から開始、これまでに20〜30人の患者に延べ200〜250回施術している 。
 末永院長は「女性や家族の方々に精神的苦痛を与えた。医師と看護師が患者名の確認を怠るという初歩的なミス 。ずぼらであったとしかいいようがない」と陳謝した。【松田哲夫】」

◆2003/11/12 「<認知訴訟>凍結精子での出生児、実子と認めず 松山地裁」
 『毎日新聞』

 凍結保存していた夫の精子を使って、その死後に行われた体外受精で生まれた愛媛県内の男児(2)が、民法上の父子関係の確認(死後認知)を国側に求めた訴訟で、松山地裁は12日、請求を棄却した。上原裕之裁判長は、「社会的通念からして、今回のように生まれた子と、夫との間に親子関係を認めるという認識は乏しい。さらに、精子提供者である父が、死後体外受精が行なわれることに同意していたとは認められない」と指摘。そのうえで、「あいまいな社会通念で決めることは望ましくなく、何らかの立法措置が必要」との認識を示した。
 現行の民法の規定では、夫の死後に妊娠・出産するケースを想定していない。急速に進歩する生殖医療によって現実化した精子提供者の死後認知が認められるかどうかについての初の司法判断で、今後の論議に大きな影響を与えそうだ。原告側は控訴する方針。
 男児を産んだ女性が法定代理人として提訴した。母親は男児出産後、地元の役所に「夫の嫡出子」として出生届を提出したが、夫の死後300日を超え出生した子について嫡出子と認めない民法の規定を理由に不受理とされたことなどから、02年6月、訴訟に踏み切った。
 訴えによると、白血病と診断された夫は、骨髄移植の手術を受ける際に放射線を浴びて無精子症になることを懸念し、医療機関で精子を凍結保存した。夫は99年9月に死亡。女性は別の医療機関で凍結精子を使って体外受精を受け、01年5月、男児を出産した。凍結保存の精子で、夫を含めてその死後に妊娠・出産した国内初のケースとみられている。
 民法は、父親が死んでから3年以内なら死後認知を提起出来るとだけ規定している。今回の裁判では(1)父親が死亡した後に妊娠・出産したケースに「死後認知」の規定を適用できるのか(2)凍結精子を使った出産に対して夫の同意があったか――が主な争点だった。
 女性側は「夫から『自分が死んだら子供を産んで両親の老後をみてほしい』と依頼されており、同意があった」と主張。国側は「夫の真の同意があったか疑わしく、民法が認める死後認知は父親の死後に妊娠することを想定していない」などとして棄却を求めた。
 死後認知の訴えを起こす場合、人事訴訟手続法などで、裁判所のある検察庁の検察官を被告にする。【井上綾子、堀川剛護】」

◆2003/11/12 「「亡夫の保存精子で出産」、認知求めた母親の訴えを棄却」
 『朝日新聞』

 西日本に住む40代の女性が、夫の死後、凍結保存していた精子を使って体外受精を受け男児を出産したとして、男児を夫の子として認知するよう求めていた訴訟の判決が12日、松山地裁であった。上原裕之裁判長は「夫は死後、体外受精が行われることに同意していたとは認められない」と述べ、女性の請求を棄却した。父親の死後に妊娠して生まれた子について、法的な親子関係の有無が争われた司法判断は初めて。
 訴えによると、女性は、夫が病死してから約1年たった00年夏、医療機関で生前に採取し、凍結保存していた夫の精子を使って体外受精をし、翌年5月に男児を出産したという。
 女性は夫の嫡出子(婚姻中の夫婦の間に生まれた子)として役所に出生届を提出したが、夫の死後300日以上たって生まれた子は嫡出子に当たらないとして、不受理になったという。家裁に不服申し立てをしたが却下され、最高裁まで争ったが、不受理が確定した。
 女性は昨年6月、男児を原告として同地裁に提訴。民法は、親の死亡から3年以内であれば、子は認知(死後認知)の訴えを起こすことができると定めている。今回の場合、女性は原告である男児の法定代理人で、訴えの相手方は夫になるが、夫が死亡しているため、松山地検が被告になる。
 裁判で、同地検は「死後認知は夫の生存中に妻が妊娠していることが前提」と反論。さらに「夫は、死後は精子を破棄するという取り決めを書面で医師と交わしており、同意があったとは言えない」と主張した。これに対し、女性側は「夫は生前、自分の子供が生まれることを希望しており、同意があったことは明らか。男児は家族から望まれて生まれた」と争っていた。
 女性側は、男児が夫の死後に体外受精で生まれた証拠として、男児の出生証明書や夫の両親の陳述書などを同地裁に提出した。」

◆2003/11/12 「凍結精子児の認知請求棄却 夫の死後に妊娠、出産」
 共同通信

 夫が凍結保存した精子で、夫の死後に体外受精で妊娠、出産した西日本の40代女性が、生まれた男児(2つ)の代理人として、男児を夫の子と死後認知するよう求めた訴訟で、地元の地裁は12日、請求を棄却した。
 裁判長は判決理由で「このような方法で生まれた子の父を精子提供者とする社会的な認識は乏しく、法律上の父と認めることにはちゅうちょを感じる」とした上で、「父が死後の体外受精に同意していたとは認められない」と述べた。
 原告代理人の弁護士は「予想に反する判決。原告と相談して控訴する方向になる」と話した。
 男性の死後に凍結保存精子で女性が妊娠、出産した例が国内で明らかになったのはこのケースが初めて。民法は女性の妊娠後に男性が死亡することは想定しているが、男性の死後の妊娠は想定外で、不妊治療でも夫の死後は精子を廃棄することになっている。」


ファイル分離:20031227 REV:1228,20040112
生殖技術
TOP HOME (http://www.arsvi.com)