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出生・出産と技術/生殖技術 2001年

代理母/代理母出産/代理出産 2001
出生・出産と技術/生殖技術



◆2001/05/21 「不妊治療、女性側に焦点 細胞質移植や代理出産 妊娠率に限界」
 『日本経済新聞』2001/05/21朝刊
◆2001/11/08 「<精子細胞>体外培養で精子に成長 東京の医療機関」
 毎日新聞ニュース速報
◆2001/11/08 「老化卵子「若返り」 高齢不妊治療に新手法、健康な未熟卵に核移す」
 『北國新聞』2001/11/08
 http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20011108002.htm
◆2001/11/08 「がん治療前の精子・卵子凍結、死亡後廃棄条件に容認」
 『読売新聞』2001/11/08


◆2001/05/21 「不妊治療、女性側に焦点 細胞質移植や代理出産 妊娠率に限界」
 『日本経済新聞』2001/05/21朝刊

 「不妊治療研究の最前線が精子から卵子へ――。体外受精技術の進歩で「男性不妊」に対処する治療が一般化する一方で、女性側に原因がある場合の治療技術の実用化が焦点になってきた。米国で実施された受精卵の細胞質移植による「遺伝子改変ベビー」の誕生や、長野県の産婦人科病院で明らかになった代理出産などはいずれも女性側の治療だ。卵子を対象にする技術は生命倫理の面でより難しい問題を提起する。
 体外受精は精子と卵子とを体外の容器内で出会わせる。顕微鏡の下で細い管を使って卵子に直接精子を入れる顕微授精技術の発達で、移動能力がない精子でも受精可能になり、精子側の問題の多くは解決できるようになった。体外受精での授精率は80〜90%まで向上している。
 しかし、実際に妊娠につながるのは約25%(日本産科婦人科学会調べ)で「限界が見えてきた」(福島県立医科大学の柳田薫助教授)との指摘も出てきた。
 受精卵が子宮に着床し成長するには卵子や子宮の状態に依存する要素が大きいと考えられるからだ。また女性の高齢出産が増えるにつれ、卵子に問題を抱えるケースが今後増えると予想される。
 今月初め、米国で受精卵の能力回復を狙って第三者の卵子の細胞質を注入する新手法の実施が明らかになり、夫妻の精子・卵子だけでなく第三者の女性の卵子の細胞質も受け継いだ「遺伝子改変ベビー」の誕生と話題を呼んだ。だがその後、生まれた子に染色体異常が見つかり安全性の問題が浮き彫りになった。 
 国内でも細胞内小器官のミトコンドリアに異常があって受精卵が成長できない患者の治療を目指して、ミトコンドリア移植の研究が進んでいる。マウスによる動物実験段階だが、山梨医科大学の星和彦教授らは移植で受精卵の能力回復に成功している。
 ただ卵子や受精卵の操作はより高度な安全性が求められる。代理出産のように社会的な合意形成が未熟な技術もある。旧厚生省で専門委員を務めた吉村泰典慶應大学教授は「可能だから実施するのではなく、安全性や倫理面の問題をクリアしてから進むことが重要」と指摘する。
 一般に不妊は男性・女性側の原因がそれぞれ3分の1ずつ。残りは原因不明。

法整備、日本の遅れ目立つ
 不妊治療技術を適正に普及させる社会的な仕組み作りでは欧州が先行、「生殖技術についての議論の歴史があり内容も深い」(ぬで島次郎三菱化学生命科学研究所主任研究員)。80〜90年代に英国で「ヒトの授精・胚(はい)研究に関する法律」、ドイツで「胚保護法」が誕生、法制度の整備が進んでいる。
 体外受精はほとんどの国で認められているが、夫婦以外の第三者が関係する技術への対応が分かれる。
 ドイツが最も厳しく、卵子・受精卵の提供、代理母はいずれも罰則付きの禁止、受精卵の凍結保存も原則的に認めていない。不妊治療を実施できる施設の技術水準まで決めるなど徹底している。
 英国は代理母を含めてすべてを認める一方で商業化を制限している。不妊治療できる機関は保健省の独立行政法人として設立されたヒト受精胎生学庁(HFEA)の認可が必要だ。
 米国は州によって代理母、精子・卵子の提供などが実施可能。米生殖医学会のガイドラインで年齢制限などを明示しているだけ。
 日本には日本産科婦人科学会のガイドラインはあるが法律はなく、厚生労働省が専門委員会の報告を受け規制法の制定を目指す。

ことば…不妊治療技術
 最も普及しているのは人工授精と体外受精。精子が少なかったり運動能力などに問題がある場合に夫の精子を妻の子宮に入れるのが人工授精。夫以外の第三者から精子の提供を受ける場合、非配偶者間人工授精(AID)と呼ぶ。
 体外受精は卵子・精子を対外の容器で受精させ受精卵を女性の体内に戻す。夫や妻以外の第三者から提供された精子・卵子を使って受精させる治療も実施され、特に第三者の卵子を利用するケースが提供者が受けるリスクなどから国内で議論になっている。体外受精で生まれる子は国内で年間1万人を超える。
 代理母と借り腹は、子宮の異常や病気による切除で妊娠できない妻に代わり、妻以外の女性が妊娠・出産する。夫婦の受精卵を妻以外の女性の子宮に入れるのが借り腹で、長野県で実施された代理出産はこれにあたる。夫の精子を妻以外の女性の卵子と体外受精などを使って受精させ、第三者の女性が妊娠するのが代理母だ。

第三者が関与する不妊治療に関する各国の制度
(容認…○ 禁止・認めない…×)
                英  仏  独  米  日本
非配偶者間人工授精(AID)    ○  ○  ○  ○  ○(○)
提供精子・卵子による体外受精  ○  ○  ×  ○  ○(×)※ 
提供胚の移植          ○  ○  ×  ○  ○(×)
代理母・借り腹         ○  ×  ×  ○  ×(×)

(注)厚生労働省試料より作成。日本は厚生労働省専門委員会の報告、カッコ内は日本産科婦人科学会の指針。※は一部認める方向。」


◆2001/11/08 「<精子細胞>体外培養で精子に成長 東京の医療機関」
 毎日新聞ニュース速報

 「人の未熟な精子細胞を体外で培養し、尾っぽの生えた精子に成長させる手法の開発に、加藤レディスクリニック(東京都新宿区)の研究グループが成功した。8日から東京・新宿で始まる日本不妊学会で発表する。人での成功は世界で初めてといい、男性が原因の不妊カップルが子供をもうける可能性を開く成果と注目される。
 精子細胞は、まだ精子になっていない円形の細胞で、尾っぽの部分がなく運動能力がない。精液などに精子がない無精子症の男性でも、こうした未熟な精子細胞を持っている場合がある。
 研究グループは、無精子症の男性8人の精巣組織から取り出した精子細胞を、人工イクラなどに用いられる多糖質のゼリー状の液に封じ込め、圧力をかけて、生体内の状態に近づけた。約10日間培養したところ、いずれも尾っぽの部分がある精子に育った。
尾っぽが動くものもあった。
 人ではまだ、活発に泳ぐ精子はできていないが、生後3週間のマウスの精子細胞を、同じ方法で培養したところ、尾っぽができ、活発に泳ぐようになった。
 海外では、精子細胞をそのまま卵子に注入する方法で子供が生まれたケースが報告されている。しかし、安全性などを疑問視する研究者が多く、日本不妊学会は97年、精子細胞そのものを使った不妊治療について「当面は実施すべきでない」との見解をまとめた。
 同クリニックの加藤修院長は「この方法で子供ができるようになれば、他人から精子を提供してもらうしかなかった患者さんも自分の子供を持てることになる。培養した精子に染色体異常などがないかどうかを確認したうえで不妊学会の倫理委員会に申請し、臨床応用を目指したい」と話している。」【松村由利子】
[2001-11-08-03:05]

◆2001/11/08 「老化卵子「若返り」 高齢不妊治療に新手法、健康な未熟卵に核移す」
 『北國新聞』2001/11/08
 http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20011108002.htm

 「女性不妊患者の老化した(不健康な)未熟卵と、第三者・ドナーの若い(健康な)未熟 卵の核を取り換えることで、高齢女性の体外受精を成功に導く手法を、永遠幸(とわこう )(小松市)グループの加藤レディスクリニック(東京)などが考案した。この手法によ る子牛が来年二月に誕生する予定で、人間でも卵子の凍結保存まで行った。取り換えた卵子は、受精できる段階まで体外で培養し、夫の精子と受精した後で母体に 戻す。
 東京農大と共同で実施中の牛の実験では、老化した未熟卵三十九個のうち五個の受精に 成功。うち四個を子宮に戻し、二例が妊娠した。人間でも夫婦の同意の上で同手法を数例 行い、卵子は凍結保存されている。
 同クリニックの加藤修院長によると、老化した卵子は、核の周りの「入れ物」の部分に 問題が多いとされる。成長途中の未熟卵のうちに核を取り換えることで、卵子がより健康 な状態で成長するという。
 顔かたちなどを決める遺伝情報は核に詰まっているため両親の遺伝情報が子供に受け継 がれるが、「入れ物」の部分にあるミトコンドリアの遺伝子はドナーのものが遺伝するこ とになり、この手法に対する安全性や倫理上の問題点を指摘する声もある。
 加藤院長はラットの実験で安全性の確認を進めており、「ミトコンドリア遺伝子による 外見上の影響はない。倫理の問題をクリアでき次第、臨床応用につなげたい」と話してい る。八日から東京で開かれる日本不妊学会で発表する。」

◆2001/11/08 がん治療前の精子・卵子凍結、死亡後廃棄条件に容認
 『読売新聞』2001/11/08

 「日本不妊学会の倫理委員会が7日、東京都内で開かれ、「死亡後は廃棄する」との条件付きで、がん治療を行う予定の未婚男女の精子や卵子の凍結を認める方針を固めた。一部のがんでは、放射線治療や精巣、卵巣の摘出などで、精子や卵子がなくなってしまう可能性が高く、精子や卵子を事前に保存することを認め、将来的に自分の子どもが持てる可能性を残す狙い。
 ただし、神奈川県内の病院で、亡夫の精子を使った体外受精を希望するケースが明らかになるなど、凍結した精子、卵子をめぐる所有権問題や、死亡後に子どもが作られる可能性もあるため、「死亡後廃棄」を明示した。来年3月の理事会で正式に決定する。 同学会は、すでに6月に未婚のがん患者の精子や卵子の凍結を認める方針を打ち出していたが、詳しい条件付けなどについて検討を重ねていた。」

ファイル分離:20031227
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