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出生・出産と技術/生殖技術 1994

出生・出産と技術/生殖技術



 
 
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◆19970118  生命倫理研究会総会・シンポジウム

テーマ 母体保護法のこれから――優生思想は消えたのか

日時  1997年1月18日(土) 総会     13:15〜
                  シンポジウム 13:30〜17:30
場所  建築会館ホール(田町)

発言者 松友 了  (全日本手をつなぐ会 常務理事)
    加藤真規子 (全国精神障害者団体連合会)
    新家 薫  (日本母性保護産婦人科医会 常務理事)
    大橋由香子 (SOSHIREN)

問題提起・進行 市野川容孝
司会 斎藤有紀子

 事務局:〒194 東京都町田市南大谷11号 三菱化成生命科学研究所・内
 0427-24-6280 fax:0427-24-6301

 
 
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◆1997/02?

抗議および要望書

日本産科婦人科学会長         武田 佳彦 殿
日本産科婦人科学会倫理委員会委員長  佐藤 和雄 殿
日本産科婦人科学会倫理委員会     委員 各位
日本産科婦人科学会          委員 各位

                優生思想を問うネットワーク
                 代表 筒井 純子
                〒五三六 大阪市城東区中浜二丁目一〇−一三
                     全障連関西ブロック気付

 私たちは去る一月二〇日、貴学会との話し合いの場を持ったわけですが、話し合いにいたる経過および当日の貴会の対応は、真に市民の意見を聞こうという態度ではなく、内容的にもはなはだ納得しがたいものでありました。よって以下の点について個々に抗議し、あらためて公開の場での話し合いを要望いたします。

 1.話し合いの場の設定のしかたや態度が一方的です。

 私たちは昨年七月より三度にわたり貴会に話し合いを申し入れていました。しかし貴会からはこの半年間何の連絡もなく、今年一月九日になって突然手紙により、話し合いの日時場所を連絡してこられました。当日までの期間が短く、出席を希望しながらも日程調整がかなわず出席できなかったものもいます。また時間も一時間ではとても短く、意見を言い尽くせるものではありません。
 このような場の設定のしかたは一方的です。真に意見を聞こうというおつもりなら、互いの都合や希望をつきあわせながら設定していくべきものです。
 話し合いのなかにおいても、倫理委員長は「個人的には、臨床実施を認めるという意味で、見解を出す方向で考えている。」といわれ、すでに結論を決めておられるようです。反対意見を聞く前に考えを決めるのは早計です。また現時点で臨床実施を認める方に考えが傾いていたとしても、なぜそういう考えに至ったのか説明し、私たちと意見交換するべきです。しかしながら私たちの質問や意見に対し、以下の項目にも述べるように説明らしい説明をしておられません。そして、話半ばにもかかわらず一時間の終わり近くになると帰る準備を始められるなど、終始私たちの意見を十分聞こうという姿勢は見られませんでした。
 最初から結論をもったうえで、その説明もせず、一時間だけ意見を聞いてやるというような姿勢では、倫理委員会や学会内部で合意できたとしても、社会的理解をうることは到底できません。
 幹事長は「学会見解を出してからでも話し合いの機会はある」などとおっしゃいましたが、貴学会が今までに出した様々な見解について、市民団体が何度も話し合いの要求や質問状を出してきたにもかかわらず、一度も返答をしてこられませんでした。十分な時間をかけて話し合い、意見を聞いたうえで見解を出すべきです。

 2.受精卵の遺伝子診断に関する倫理委員会の審議内容を公開すべきです。

 私たちが、この件についてのこれまでの審議過程や内容について質問したにもかかわらず、「ここは我々が何をやっているかを話す場ではない。あなた方の意見を聞く場だ。」と言われました。また、倫理委員会の公開、議事録の公開についても、「学会の独自性があるからできない」と断られました。
 しかしこの問題は、人間の価値や出生についての考え方に大きく影響するものです。従って、その臨床実施の是非についての審議がどう進められているのかを明らかにし、かつ、広く社会に問題提起し、批判をあおぐべきものです。

 3.遺伝性疾患を持つ子の出生を防止することについての考えを明らかにすべきです。

 倫理委員会は、「検査をしてそれを知るということと、それをどう使うかということとは別だ。優生思想の問題には医師はタッチしない。」「検査を希望する人がいる。技術的に可能なら、それに答えたいと永田教授は言っている。」と言われました。しかし要望があるからといって何でもして良いというものではありません。この技術は、生まれて良い子、生まれて欲しくない子を区別するために使われるものであり、それを実施する医師には大きな責任があります。だからこそ、倫理委員会で審議されているのではないかと私たちは考えています。今回の問題だけでなく、精子選別、胎児診断に関する従来の貴学会の会合では、重篤な伴性遺伝性疾患、重篤な先天性疾患等に対象を限って実施するようにとの、規定を設けられておられます。そこには何らかの価値判断がなされているわけであり、上記の倫理委員会の発言とは矛盾しています。
 私たちは以前より、どのような考えでこのような枠を設けられているのか知りたいと思っていましたが、この度の受精卵の遺伝子診断の問題を機会に是非ともお聞きしたいと考えています。
 この点についての論議をさけようとされるのは、倫理委員会として無責任です。

 4.体外受精が中絶より安全だという倫理委員長の意見には納得できません。

 疾患を持つ子の出生防止のために、自然妊娠可能な人にまで体外受精を実施するのは女性にとって大きな負担だという私たちの意見に対し、倫理委員長は「体外受精は観血的でないから中絶より安全だ。」と言われました。しかし体外受精を実施するには、必然的に排卵誘発剤等を使用します。昨今それによる被害が次々と報じられており、決して安全と言いきれるものではありません。「安全」と言われるなら、十分な根拠を示すべきです。
 また、体外受精は一回の実施に当たり前後数週間の検査・投薬あるいは通院が必要であることや、成功率の低さから何度も繰り返さねばならないという問題もあります。加えて、受精卵の遺伝子診断については確定診断のため妊娠後の胎児診断が必要とされています。手術時に安全かどうかということのみで女性の負担を考えるべきではありません。一面的な見方による判断はあらためていただきたいと思います。

 5.社会的論議をまたず、臨床研究を名目に臨床実施を認めるべきではありません。

 私たちは問題点の一つとして、海外でも例が少なく、実験的意味合いが強いことを述べました。現段階で臨床実施するなら、人体実験の恐れがあり、希望者にはこういう点も含めて説明されているのかという疑問があるからです。
 これについて倫理委員長は、「臨床研究である可能性が高いからこそ、ガイドラインを作るべきだ。」と言われ、あくまで臨床実施を認める方向で考えておられるようです。もちろん種々の臨床研究に当たっては、それぞれ適切なガイドラインにのっとり、当事者への十分なインフォームド・コンセントのうえに実施すべきです。
 しかし受精卵の遺伝子診断については、遺伝性疾患を持つ可能性によって受精卵を選別するという目的そのものについて、社会的に十分な論議がされておりません。
ガイドラインを作って実施するのは社会的合意を得られた場合に許されるものであり、現段階で研究という名のもとに臨床実施に持ち込むのは医療の暴走です。

 6.公開の場での話し合いを要望します。

 上記に述べましたように一月二〇日の話し合いは、時間的にも内容的にもきわめて不十分なものでした。したがってあらためて、公開の場で話し合う機会を設けられるよう要望します。二月一五日迄にご返事いただけますようにお願いします。

 ※1997年 『全障連』144(1997.2.10):11-13より転載
  明らかな誤字を除いてそのまま転載した

 
 
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◆1997/03/30 「遺伝性疾患胎児の中絶、法規定求める」
 『読売新聞』1997/03/30

 遺伝相談に携わる医師、研究者で組織する日本人類遺伝学会(中込弥男理事長)は
二十九日までに、タブーとされてきた重い遺伝性疾患の胎児を中絶できる条項(胎児
条項)の導入を核とする母体保護法の見直しを国に求める方針を固めた。早ければ来
月十日の理事会で具体的な見解をまとめ、要望していく。
 昨年六月に優生保護法を改正した同法では、中絶は母体の安全を損なうケースや、
経済的理由、暴行などによる妊娠にしか認められておらず、遺伝性疾患については規
定していない。だが実際には、出生前の早期診断で胎児に異常が認められた場合に中
絶が行われていることが多い。
 このような現状に対し人類遺伝学会は、法的な枠組みがない状態で中絶されるのは
問題があるとして、昨年十月以降、見直しの動きが活発化。同学会理事会は今後、条
項に盛り込む表現など細部を詰め、国に要望する運びだ。しかし、必ずしも会員全員
に趣旨が周知徹底されているとはいえず、様々な意見が出て、時間がかかることも予
想される。
 今年に入り、中絶や不妊手術を手がける産婦人科医らによる日本母性保護産婦人科
医会(坂元正一会長)が、胎児条項の導入要望について検討したが、一部の障害者団
体の反発などで結論が棚上げされたままとなっている。旧優生保護法時代の一九七〇
年代にも日本医師会、国が胎児条項を検討したが、法改正に至らなかった経緯がある

 中込理事長は「法的な枠組みがないままでは、異常や障害を理由に中絶が行われて
も、専門家は医学的に妥当かチェックできない。今のままでいることが、必ずしも障
害者の人権を尊重することにはならない。反発は予想されるが、障害のある胎児が安
易に中絶されることを避けるためにも、こうした条項の導入は意味がある」と話して
いる。
 対象となる疾患について、人類遺伝学会では特に病名を挙げず、関連学会や医療機
関の倫理委員会にゆだねたい考えだが、鹿児島大産婦人科が学内倫理委員会に申請中
の受精卵診断や、同医会が導入を検討していた段階では、不治で致死的な遺伝性の病
気として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどが挙げられている。
[1997-03-30-06:48]


ファイル名等変更:20031227
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