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出生・出産と技術/生殖技術 1983

出生・出産と技術/生殖技術



◆1983/01/01 東北大学:体外受精・胚移植(IVF&ET)に関する憲章
◆1983/04/12 徳島大学:「ヒト体外受精卵子宮内移植法」に関する申請についての倫理委員会判定



◆東北大学:体外受精・胚移植(IVF&ET)に関する憲章(1983年)

体外受精・胚移植(IVF&ET)に関する憲章(東北大学)

T 体外受精・胚移植の基本理念
1.体外受精・胚移植は医療行為として行う。
2.体外受精・胚移植は不妊症患者の幸福に貢献することを目的として行う。
3.体外受精・胚移植を行うにあたっては,日本産婦人科学会で定めた基準を遵守する。

付表1 日本産婦人科学会で定めた規準
1 臨床応用に際しては、動物実験によるquality controlを十分に行い得ること。
2 医師が統べての操作および処理に責任を持てる状況で行うこと。
3 実施に際しては、非実施者に方法と予想される成績について十分に説明し、その同意を得ること。
4 体外受精の段階でとどまったもの(the unbornなど)については、その取り扱いに十分注意すること。
5 被実施者は、合法的に結婚している夫婦とし、非配偶者間では行わないこと。6 疑問点については、本学会に照会すること。
*器具、操作、培養手技などについては、マウスなどの実験動物でその安全性を十分に確認すること。

4 体外受精・胚移植の実施にあたっては、遺伝子に影響を与えると思われる一切の操作を行わない。

U
体外受精・胚移植の実施要項
1 体外受精・胚移植に従事する医師は、生殖医学に関する高度の知識・技術の習得に努める。
2 体外受精・胚移植を行うに際し、各部署を担当する医師は自己の分担業務を正確に行い、協調し、診療成果の向上に努める。
3 体外受精・胚移植による患者の障害を防止するため、特に認定された医師がこれを実施する。
4 体外受精・胚移植を施行するに際しては、予め確実かつ充分な臨床検査を行い、適応・条件を正しく定める。
5 体外受精・胚移植は卵管に原因のある不妊症で、卵管形成術によっても治癒不可能と思われる場合を適応とする。
6 体外受精・胚移植は以下の条件が揃った場合に施行する。
a 合法的に結婚しており、夫婦ともに挙児を希望する。
b 被実施者は精神・身体ともに、妊娠・分娩・育児に耐えうる健康状態にある。
c 被実施者は、着床及び妊娠維持が可能な子宮を有する。
d 被実施者は、成熟卵の採取が可能な卵巣を有する。
e 被実施者の配偶者より、妊孕能のある精子を得ることができる。


V 体外受精・胚移植における患者管理
1 被実施者及びその配偶者に対して、体外受精・胚移植について、充分な理解を得るように説明する。
2 体外受精・胚移植の実施の決定及び術式の選択については、被実施者及びその配偶者の意志を尊重する。
3 体外受精・胚移植について被実施者及びその配偶者の了解を得た上で同意書を作成する。
4 体外受精・胚移植後妊娠に至るまでには、通常、多数周期にわたる長期間の連続施行が必要である。この期間における被実施者とその配偶者の精神的困難の克服を援助するために、可能な限りの努力を行う。
5 体外受精・胚移植にともなう被実施者、その配偶者の精神的・身体的・社会的な諸問題に対処するために、体外受精・胚移植に精通したカウンセラーを置く。カウンセラーは被実施者の要請に応じて業務を行う。
6 体外受精・胚移植に従事する医療担当者は法の定めるところに従い、業務上知り得た被実施者の秘密を漏洩しない。
7 体外受精・胚移植により妊娠したときには、妊娠・分娩の経過中における障害防止のため、および児の健全な発育のために、長期間にわたる健康管理を行う。

付 本憲章は、昭和五八年一月一日より施行する。

 
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■徳島大学:「ヒト体外受精卵子宮内移植法」に関する申請についての倫理委員会判定

「ヒト体外受精卵子宮内移植法」に関する申請についての倫理委員会判定(徳島大学)

判定 条件付承認
条件 下記1から9までを遵守すること

1 ヒト体外受精卵子宮内移植法(以下「本法」という。)を厳密に「医療行為」に限定して実施すること。
2 本法の実施にあたる医療チームは、目的達成に必要かつ十分な知識と技術とをもつ医師及び技術員であって、各分野ごとに十分に対応できる組織が構成されていること。
3 本法の実施に当たっては、十分な施設・設備が整備されていること。
4 本法の実施は、その全過程にわたって、指導にあたる医師が責任を負いうる情況の下で行われること。
5 本法を実施することができる対象は、次の各項に該当する者に限ること。
(1) 申請書における絶対的適応者で手術的あるいは保存的療法若しくはそれらの併用によっても妊娠の見込みのない者。ただし、将来本法が確立された段階においては、申請書における相対的適応の承認も考慮する。
(2) 法律上の夫婦であって、双方共に実子をもつことを熱望しており、本法の実施及び育児に伴う精神的、肉体的、年令的及び経済的な負担に耐え得ると判断される者。
(3) 本法の実施方法とそれに通常伴うリスク、現時点での成功率、先天性異常発生の可能性、目的達成のためには本法の反復実施の必要があるかもしれない点、経費の負担その他必要な事項について十分かつ適切な説明を夫婦が同時に受け、一定の考慮期間を経た後、自発的意志に基づく本法実施の依頼書と卵採取術の同意書を夫婦連名で提出する者。
6 採取された卵及び精子並びに受精卵は本来の目的以外に使用し、叉は使用させないこと。
7 本法実施の過程で遺伝子操作及びそれに類する一切の操作を絶対に行わないこと。
8 本法の実施対象となった夫婦及び出生児のプライバシーの権利は最優先されなければならない。本法の実施関係者は夫婦及び出生児にかかる一切の秘密を洩らさないこと。
 本法による出生児は社会的関心をあつめることが予想されるが、むしろ「ふつうの子供」として成長し得るよう慎重に配慮すること。
9 申請者は本委員会の求めがあればこの条件の遵守に関する報告書を本委員会に提出すること。
10 上記の各条件に違反した場合は、承認が取り消されることがある。
昭和五八年四月一二日
徳島大学医学部倫理委員会

●徳島大学医学部倫理委員会委員長 談話
1 昭和五七年一二月九日制定の徳島大学医学部倫理委員会規則によって本委員会が発足した。
2 昭和五七年一二月一四日産科婦人科学講座森崇英教授から「ヒト体外受精卵子宮内移植法」(以下「本法」という。)の実施計画について倫理審査申請書の提出があった。
3 同日、本委員会は、この申請書を受理し、倫理的、社会的観点からの審査を開始した。
 その後、医学研究者、生物学者、宗教家、法律家、報道関係者、評論家、児童教育学者等一五人(うち女性三人)に及ぶ各界の権威を専門委員に委嘱して体外受精についての意見を伺い熱心な討議が行われた。
4 その間、全国及び地元の報道関係者の関心が高く、論議の内容や問題点についてかなり詳細な報道が行われた。
 また、地元一般県民の関心も強く、集会、講演会、投書、アンケート調査その他の形で論議が高まり世論の結集に役立ったことは、本委員会としても幸であった。
5 本委員会は、本法が多様な価値観を有する国民各層からいまだ必ずしも圧倒的支持を得るに至っていないことに鑑み、医療面のみならず広く社会全般に及ぼす重大な影響を考慮し本法の実施にあたって厳重な条件を付した上で、医療行為の枠内で認めることとした。申請者にも本法実施に伴うマイナス面を最小限度にとどめるよう最大の努力を払うことを求める。
6 申請者は、本法がいまだ完成の域に達した技術でないことを認識し、不妊治療の最後の手段と考えられる場合に限定して行うことを求める。
 従って、先天異常の発生予防、その他の本法に関連する知識と技術の一層の向上改良に今後真剣に努力することを望む。
7 本法の実施を受けた夫婦及び出生児が直面すると予想される精神的、肉体的、家庭的及び社会的諸問題との対応については医療担当者や医療機関の能力を超えるものがあると考えられる。従って、本法実施前から出生児の成人に至る経過全体にわたって、夫婦及び出生児の相談を受け、また必要に応じて適切な処置をとることが不可欠と考えられるので、これらの対応措置が早急に実現できるよう国の配慮を期待したい。
昭和五八年四月一二日


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