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人工授精 artificial insemination



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非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG)

◆2006/08/05 AID討論会

◆坂井 律子・春日 真人 20040530 『つくられる命――AID・卵子提供・クローン技術』日本放送出版協会, 254p. ISBN:4-14-080875-6 1575 [amazon][bk1] ※

●立岩真也『私的所有論』第3章

◆注1(p.89)より
 「人工授精(artificial insemination)」は注射器で精液を直接子宮内に送り込む方法。夫の精子を用いる配偶者間人工授精(AIH=by husband)と他人の提供した精子を用いる非配偶者間人工授精(AID=by donor)に分けられる。日本での人工授精への言及、解説は既に明治二四年から見られ(上野千鶴子[1990b])、一九二〇年代には『主婦之友』誌上で取り上げられている(成田龍一[1994]、新村拓[1996:214-216])。日本で最初にAIDが行われたのは一九四九年慶応義塾大学病院(当時を飯塚理八が毎日新聞社会部医療取材版[1993:73ff]で語っている)。以来四〇年間で約一万人が生まれたという。AIHはより広範に行われ出生子数は明らかでない。(この数は『事件・家族』の家永登執筆「人工授精」の項より。)慶応義塾大学病院では約四〇年の間に約一万人が人工授精で生まれ、このうち約七千人がAIDによると推測される(家永[1995:423])。」

◆注3より
 「[…]代理母契約の実態報告等も含むArditi et al.eds.[1984=1988](抄訳、女性自身による人工授精 self-insemination に関するDuelli Klein[1984]他の訳はない)[…]」

◆注26より
 「フェミニズムの側からの議論としてZipper ; Sevenhuijen[1987]。「代理母はフェミニストの問題か?」という問いが立てられ、十年前、自らの友人が代理母出産をしたという話から始まる。「代理母それ自体が制御されうるという主張は神話である。生殖技術という文脈での議論は代理母が医学的あるいは他の規制的な介入なしで行われ、将来より頻繁に行われうるという事実を曖昧にする。卵提供のない代理母は簡単なのだ。…いくつかの政府の委員会は、確かに、例えば自己−受精のような自助的な技術が禁止されるべきことを推薦している。しかし、「体内」受精あるいは自己−受精である限りそれらは効果的に抑止することは不可能である。」(Zipper ; Sevenhuijen[1987:137,138])自己−受精(self-insemination)については Duelli Klein[1984]等(cf.第3章注03・86頁)」

■ずっと以前に作った資料

 排卵期に近い時期に子宮頚部付近の腟内に注射器によって精液を注入
 簡単で成功する見込みは高い
 素人用の道具一式も販売されている(Warnock[1985=1989:264])

 アメリカで産まれる子供のうち,約1%が人工授精によるもの
 (Howard & Rifkin[1977=1979:110])

 「人間の人工授精は南北戦争の頃にすでに行われた形跡があるが,はっきりと確
 認された第一号は1884年におこなわれたもの」(女性に知らせずにAIDを行う)
 (Howard & Rifkin[1977=1979:114])

@配偶者間人工授精AIH(artificial insemination from husband)
 :夫の精子による

A非配偶者間人工授精AID(from donor):
 夫以外の男の精子による
 100年も前から人間に知られた手続き
 (他の動物に対してはさらに前から用いられている)
 (Warnock[1985=1989:264])

・日本では57年から?×※
 ※194908 AIDによる日本での第1号児の出生
 (グループ・女の人権と性[1989:20]
 「わが国においても昭和二四年に最初の人工授精子が生まれ,現在では既に六〇
 〇〇名を超える人工授精子がいるそうです。」
 (大谷實[1985:26])(AIDかAIHかは不明)

・英国では毎年1000人かそれ以上(Warnock[1985=1989:263-264])
 1950年代 ざまざまな委員会がこれについて議論するために設立される 公の論
 争の主題になる
 1960 フィーバーシャム委員会報告書:批判的 なくなることを望んでいる
 (Warnock[1985=1989:264-265]…論議の紹介も)

 

◆2002/06/25 「<人工授精>夫の死後、凍結保存の精子で出産 日本では初」

 「夫を亡くした30歳代の女性(西日本在住)が、凍結保存していた夫の精子を使い、夫の死亡後に人工授精を受け、男児を出産したことが25日、分かった。夫の死後に妊娠したため、男児は法律上夫の子とは認められなかったが、女性は死後認知の申し立てをした。死亡した夫の精子による出産は、日本では初めてとみられる。」(毎日新聞)
[6月25日13時26分更新]

◆2002/06/25 「<人工授精>夫の死後、保存精子で出産 30歳代の女性」
 毎日新聞ニュース速報

 「夫を亡くした30歳代の女性(西日本在住)が、凍結保存してあった夫の精子を使って夫の死亡後に人工授精を受け、男児を出産していたことが25日、分かった。夫の死後に妊娠しているため、男児は法律上、夫の子とは認められなかった。このため女性は、地元の地裁に、父親の死後認知を求める申し立てをした。死亡した夫の精子による出産は、海外では例があるが、日本では初めてとみられる。
 女性は昨年、出産し、男児を「夫の嫡出子(結婚によって生まれた子)」として出生届を出した。しかし夫の死後300日以上経った出産であることなどを理由に、夫を父親と認めることを拒否された。
 凍結保存した精子の使用については現在、法律に規定がない。日本産科婦人科学会も体外受精で作った受精卵については、夫婦の一方が死亡した場合には使用しないよう定めているが、凍結精子については規定がない。
 女性の代理人の弁護士は「申し立てをしたのは事実。女性の了解が得られていないので、これ以上はコメントできない」と話している。
 国や学会には明確な規定なく 夫が死亡後に凍結保存された精子の扱いについては、夫の意思確認や相続など、倫理・法律的な問題が生じる恐れが強い。しかし、国や学会には明確な規定がなく、専門医や法律家によって早急なルールづくりが求められそうだ。
 精子の凍結保存は、不妊治療を行う医院などで広く行われている。採取した精子を濃縮後、マイナス約200度の液体窒素を使って凍結。半永久的に保存でき、安全性も高く、すでに多くの赤ちゃんが誕生している。
 しかし、日本産科婦人科学会は、卵子や胚(はい)の凍結保存については、離婚や死亡の場合は「十分な取り扱いが必要」と規定するにとどまり、精子については規定がない。
 厚生労働省厚生科学審議会生殖補助医療部会も、第三者から提供され、凍結保存された精子や卵子などについては、提供者が死亡した場合は廃棄する方針で検討しているが、夫婦間については議論していない。
 家族法が専門の中川淳・広島大名誉教授は「夫が死後に自分の精子を使って子供をつくることに、夫婦間で本当に合意が得られていたのか確認しなければならない。医療技術の進展に、法律が追いついていないのが現状で、法改正を含めた早急な議論が必要だ」と訴える。」【河内敏康】
[2002-06-25-13:21]

◇2002/06/26 <夫の死後出産>体外受精で妊娠成功 精子、別の医療機関で
 毎日新聞ニュース速報

 「夫の死後、凍結保存された夫の精子を使って出産した西日本在住の30代の女性は、西日本の医療機関で一昨年夏、卵子を取り出して受精させ、再び子宮に戻す体外受精で妊娠に成功していたことが分かった。精子は別の医療機関で採取して凍結保存したものを持ち込んでいた。昨年5月、さらに別の病院に移って出産したという。
 女性の体外受精を行った医院の院長は「女性は体外受精を希望し、夫の精子を持参した。当時は『夫は病気で同行できない』と聞いており、妊娠してから死亡したと思っていた」と話している。
 一方、海外では凍結保存の精子を使った出産は米、英など数カ国で既に実施されている。英国では、夫婦間の生前同意を条件に体外受精や人工授精を認めており、米国でも認めている州がある。しかし、日本では議論が進んでおらず、これまでは医療機関が倫理面から自粛していたのが実情だ。
 塚田敬義・岐阜大教授(医事法学)は「医療機関は精子や卵子の取り扱いや、父母の意思確認には慎重であるべきで、責任は重い」と指摘する。「今回のような妊娠・出産の形は法的、社会的な合意が得られておらず、それだけで親子関係を認めるべきだとは言い切れない。法律が安易に追認すると、今後同様の行為が増え、混乱した親子・親族関係が続発する可能性もある」と話す。
 医療問題に詳しい光石忠敬弁護士は「現実に生まれた子どもの人権に配慮するべきだ」と言う。そのうえで「死んだ夫の同意があったかどうかが問題。生まれてくる子どもは、できる限り父母によって養育される権利がある。今回のケースは夫が不慮の死などではなく、最初からいないことが分かっていることから倫理上の問題が生じると思う」と指摘する。」
[2002-06-26-01:06]

夫の生前の精子で出産

 「西日本在住の30歳代の女性が、医療機関に凍結保存していた夫の精子で、夫が病死した後に人工授精し、昨年5月に男児を出産していたことがわかった。夫の生前の精子を使って出産した事例は海外にはあるが、国内で判明したのは初めて。
 夫の死亡に伴い夫婦関係が消滅したため、男児は法律上、夫の子として認められていない。
 女性が出産した西日本の病院の医師によると、女性は西日本の別の医院で人工授精を受けた後、昨年2月、出産準備のためにこの病院を訪れた。
 現在の日本産科婦人科学会のガイドラインによると、夫以外の第三者の凍結精子を死後に使うことは制限されており、この医師は「夫婦の場合でもこうしたケースでは疑問があるかもしれない」と説明した。
 しかし、すでに女性が妊娠26週に入っていたうえ、出産を強く希望したことから、そのまま診療を継続し、女性は5月、無事に男児を出産した。
 女性は、今年4月になって同病院を再び訪れ、医師に対し、父親の死後認知を求める申し立てを裁判所に行う意向を説明し、提訴に必要な書類を受け取っていったという。
 居住地の市役所などによると、女性は当初、この市役所に「夫婦の嫡出子」として出生届を提出した。しかし、民法上、夫が死亡し、夫婦関係が消滅して300日以上経過してからの出生は、夫の嫡出子として認めていないことなどから、市役所は所管法務局に相談、昨年9月に「不受理」の回答があった。
 このため、女性は11月、生まれた子を夫婦の嫡出子とするよう、地元の家庭裁判所に不服申し立てをした。しかし、不受理との判断は変わらず、上級審を経て、今年5月には最高裁も同様の判断を最終的に下したため、女性は改めて父親が空欄のまま出生届を提出したという。」(読売新聞)
[6月25日12時55分更新]

◇2002/06/25 16:18 読: 夫の生前の精子で出産、死後認知求め提訴
 読売新聞ニュース速報

 西日本在住の30歳代の女性が、医療機関に凍結保存していた夫の精子で、夫が病
死した後に人工授精し、昨年5月に男児を出産していたことがわかった。夫の生前の
精子を使って出産した事例は海外にはあるが、国内で判明したのは初めて。夫の死亡
に伴い夫婦関係が消滅したため、男児は法律上、夫の子として認められず、女性は今
月、父親の死後認知を求める訴えを居住地の地裁に起こした。
 女性が出産した西日本の病院の医師によると、女性は西日本の別の医院で人工授精
を受けた後、昨年2月、出産準備のためこの病院を訪れた。
 現在の日本産科婦人科学会のガイドラインによると、夫以外の第三者の凍結精子を
死後に使うことは制限されており、この病院の医師は「夫婦の場合でもこうしたケー
スでは疑問があるかもしれない」と説明した。
 しかし、すでに女性が妊娠26週に入っていたうえ、出産を強く希望したことから、
そのまま診療を継続し、女性は5月、無事に男児を出産した。
 女性の居住地の市役所などによると、女性は出産後、市役所に「夫婦の嫡出子」と
して出生届を提出した。しかし、民法上、夫が死亡したり、離婚したりした場合、夫
婦関係が消滅して300日以上経過してからの出生は夫の嫡出子として認めていない。
夫は99年9月に死亡しているため、市役所は「疑義がある」と判断、所管法務局に
「受理伺」を提出した。
 法務局は9月、不受理とするよう市役所に回答。市役所の不受理処分を受けた女性
は11月、生まれた子を夫婦の嫡出子とするよう地元の家庭裁判所に不服申し立てを
した。
 家裁は12月に退けたため、女性は今年1月、高裁に即時抗告の申し立てを行った
が、やはり棄却。2月には最高裁に特別抗告を申し立てたものの、最高裁も5月、不
受理の最終的な判断を下した。このため、女性は改めて父親が空欄のまま出生届を提
出するとともに、父親の死後認知を求めて提訴した。

 ◆凍結技術は20年前に完成、倫理面の議論追いつかず◆

 【解説】精子や卵子の凍結技術が進んだ今、「故人の子供を出産する」こと自体は、
そう難しいことではなくなっている。特に精子の凍結は、不純物を除いて、液体窒素
で凍らせるだけという簡単な作業で、不妊治療の現場では日常的に行われているのが
実情だ。今回の親子関係の問題は、生殖技術の進展に、法や社会の対応が追い付いて
いないことを浮き彫りにした。
 実際に、こうした凍結技術は近年、著しい進歩を遂げている。精子や受精卵の凍結
技術は20年ほど前にほぼ完成し、半永久的に質を落とさずに保存することもできる。
さらに最近では、卵子を凍結する特殊な技術も各地で行われ始め、昨年4月に宮城県
内の病院で、凍結卵子を使った体外受精により国内初の子供が誕生。東京都内の不妊
クリニックなどには、がん患者らを対象に、自分の卵子を凍結保存しておく「卵子バ
ンク」も登場している。
 凍結受精卵や凍結卵子の保存期間については、日本産科婦人科学会の規則で「結婚
が継続している間」と規定しており、カップルが離婚したり、どちらかが死亡したり
した場合には保存できないとしている。
 一方、夫が死亡した場合、凍結精子をどう扱うかについては、同学会などでも明確
なルールがなく、各病院の倫理規定に任せているのが現状。
 ほとんどの病院では、内規で「子供の福祉を守るためにも、死亡した者の精子や卵
子は廃棄する」と定めているが、一方では「遺族のものである精子を、病院が勝手に
捨てるわけにはいかない。国が介入して治療を禁止するべきでもない」と、廃棄に疑
問を投げかける向きもある。
 すでに英米では、同じように亡き夫の子供を出産した例が数例ある。国内でも昨年
夏、亡き夫の精子を使った人工授精を希望して精子凍結を続けているケースが明らか
になったばかり。今後も、同様の希望者が続く可能性は大きい。
 すでに生まれている子供について法的にどう扱うのかを早急に対処する必要がある。
また亡くなってしまった人の子供を出産することの倫理面での是非についても、国な
どはきちんと検討をする必要がある。(科学部 本間 雅江)
[2002-06-25-16:18]

 

●文献

◆Firestone, Shulamyth 1970 The Dialectic of Sex : The Case for Feminist Revolution, William Morrow=1972 林弘子訳,『性の弁証法――女性解放革命の場合』,評論社,305p. ※ *
◆Arditi, Rita ; Duelli Klein, Renate ; Minden, Shelly eds. 1984 Test-Tube Women: What Future for Motherhood ?, Pandora Press=1986 ヤンソン由実子訳,『試験管の中の女』,共同通信社(部分訳),234+12p. <91>
◆Duelli Klein, Renate 1984 "Doing It Ourselves : Self-Insemination", Arditi et al. eds.[1984:382-390] <91,171>
◆石川 稔 1985 「精子銀行――アメリカにおける人工授精子法の展開」(新・家族法事情10・11) 『法学セミナー』362(1985-2):86-91, 363(1985-3):54-59 
◆坂本 優子 1985 「スウェーデン人工授精法――人工授精子の父性確定と生物学上の父の身元を知る権利をめぐって」,『六甲台論集』32-2:88-116
◆グループ・女の人権と性 編 1989 『アブナイ生殖革命』,有斐閣選書792,270p. <90,98,429> ※ *
◆Warnock, Mary 1985 A Qustion of Life: The Warnock Report on Human Fertilisationand Embryology, Basil Blackwell, 110p.=1992 『生命操作はどこまで許されるか――人間の受精と発生学に関するワーノック・レポート』,協同出版,222p. 2000<92> ※ *
◆家永 登 1991 「日本(2)・人工授精」 『比較法研究』53:75-83 
◆松川 正毅 1991 「フランスに於ける人工生殖と法――人工授精をめぐる問題」,『民商法雑誌』105-2:30-45(171-185),105-3:34-65(312-343) 
◆家永 登 1995 「日本における人工授精の状況」 唄・石川編[1995:423-431] 
◆菱木 昭八朗 1995 「スウェーデン人工授精法と改正親子法における人工授精子の父性」,『ジュリスト』835:114-123 

 <>内は立岩真也『私的所有論』で言及されている頁を示す

 ※データを付加してくださる方を求めています。


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