生命の質に関わる技術
last update: 20131027
◆遺伝病・先天性疾患
◆遺伝相談(1-1・1-2)
◆不妊手術/断種(1-1・1-2)
◆産みわけ(1-2)-1-2)(↓)
◆人工受精を用いる方法(1-2)-2)(↓)
◆遺伝子レベルでの変更を行う(1-2)-3)(↓)
◆出生前診断・胎児診断(2-2)
◆関連文献
◆出生前診断の方法
◆関連年表
◆出生前診断の現状
◆羊水診断
◆絨毛診断
◆DNA診断
◆胎児鏡
◆画像診断/超音波診断
◆胎児血による診断
◆母体血によるスクリーニング
◆着床前診断
◆出生前診断・選択的中絶について・日本
◆出生前診断・選択的中絶について・外国
◆フランス
◆イギリス
◆ドイツ
◆スウェーデン
◆合衆国
◆北朝鮮
◆インド
◆中国
◆「生命倫理学者」
◆妊娠中絶(2-1))(↓)
◆胎児治療(↓)
◆出産後治療を行う(2-3))
◆治療停止/殺害
◆遺伝子治療
◆新生児スクリーニング(↓)
◆QOL (Quality of life)
1992.10〜 立岩真也
事前の知識・診断とそれに基づく処置という流れとして押えることができる。
例えばスクリーニング・診断については以下のような分類がある。
・出生直後に行う新生児スクリーニング
・普通の人に行う遺伝病遺伝子保有者のスクリーニング
・胎児の段階で行う胎児診断としてのスクリーニング(米本[1987:25 ])
(他に,診断についてCooke[1977=1978:89-146])
私達なりに,生の質に対する関与という観点から,分類して考えれば とりあえず
1受精以前に(どれほど正確なものかは別として)知識がある/知識を得る
1-1 個別に検査を行わずに得られている知識がある
1-2 検査によって知識を得る
1-2-1 出生直後・学校入学時…
1-2-2 婚姻時
1-2-3 婚姻後
それによって
1-1)生殖を行わない/行なわせない
断種/…
1-2)生殖を行う
1-2)-1自身の精子・卵子を用いる
1-2)-1-1従来通りの方法
…これはここでは問題がないとされた(した)場合のことなので扱わない
1-2)-1-2精子の段階で選別を行う→人工受精(AIH)を行う
1-2)-2他者の精子あるいは卵子あるいは受精卵を用いる
1-2)-3遺伝子レベルでの変更を行う
…これは現時点では不可能
2受精後に事前の知識に基づいてあるいは診断を行って
2-1 受精前の診断をもとにする(→1-1・1-2)
2-2 受精後診断を行う
それによって
2-1)妊娠中絶を行う
2-2)胎児治療を行う
2-3)出産後治療を行う
以上に加えてFletcher[1978]は
2-4)出生後,養子縁組又は里子の手続きをとることによって,両親の責任を免除
することをあげている。(白井勲他[1982:14])
2ー5)治療停止
以上を考えることができる。さらに
2-6)殺害
が事実として存在する。
以下は学術論文はほとんど検討しておらず,一般書の解説を引き移したもので
ある。そうしたものの中ではグループ・女の人権と性[1989]が手に入れやすく,
末尾の解説もよくまとまっている。
先に記したようにここ数年をとっても出生前診断に関する医学論文は1500件ほ
どはあるようだ。医学関係の雑誌にあたるのはこれからの仕事である。
出生前診断の実態については,生命倫理研究会・生殖技術研究チームが精力的
に調査を行い,その成果が1992年に発表された。
私達が最低限知るべきことは
1)技術
2)技術の適用の実態
2)と関係するが
3)社会的・政治的な促進・抑止の実態
さらにこれと関係するが
4)人々の意識
5)技術を正当化あるいは批判する,あるいはその用い方に言及する諸議論
である。
例えば3)に関しては,診断・治療?の適用範囲や,それを強制とするか否かと
いった問題,情報の提供のあり方などが,具体的に問題になっている。
こうしたことを区分けし,十分に整理して提出するには時間が足りない。以下
では1)を主な紹介の対象とし,2)〜については一部を断片的にとりあげるにとど
まる。この辺りについてはもうしばらく時間をいただきたい。
■産みわけ(1-2)-1-2)
◆「女の子が欲しい 生み分けに走る母たち」
『AERA』No.16 99年6月28日号
http://www.asahi.com/paper/aic/Mon/d_aera/19990621.html
(立岩がコメント)
・遺伝病に関係する場合
・男性を産みたいという要求,というか社会規範の存在
男女のどちらを産みたいか 調査結果の紹介:マシア[1987:127-128]
「1973年にスタンフォード大学医学センターが実施した調査によると,36%の親が,もし機会が与えられるなら子供の性の選択をすると答え,31%は確言はできないが多分すると回答している」(Howard & Rifkin[1977=1979:121])
従来から男の子,または女の子がほしいという夫婦に対して,性交日や性交方法の指導,食事の工夫や薬物投与などで,希望の性をもつ子どもを産ませる試みを行っている産婦人科医師グループなどがあったが,これらの方法はあまり確実なものではなかった。1986年に,より確かな産み分け方法として,慶応大学からパーコール法による女児産み分け法が発表された。これは受精すると女になるXX染色体を持つ精子と,男になるXY染色体を持つ精子とを遠心分離して,希望する性になる精子(たとえば,女児がほしいときは,XX染色体を持つ精子)だけを人工受精させる方法である。この精子の分離に,パーコールと呼ばれる液体が使われるので,パーコール法と呼ばれている。(グループ・女の人権と性編[1989:13]…前半)
*伴性劣性遺伝性疾患
染色体上に遺伝子が存在すると,性によって遺伝形式が異なるので,これを伴性遺伝と呼ぶ。…ある病気の遺伝子を持つ性染色体をX’とすると,これが子どもに伝えられるとき,女ならX’X,男ならX’Yという染色体を持つことになる。伴性劣性遺伝の場合には,X’Xはこの遺伝子の保因者とはなるが,形質は発現しない。…男性となるX’Yのみにこの形質が発現する。色盲,血友病,進行性筋ジストロフィーなどがあるが,日本産婦人科学会がパーコール法による女児産み分けを認めている「重篤な伴性劣性遺伝性疾患」の中には,色盲のように生命の予後を左右しない疾患は含まれない。(グループ・女の人権と性[1989:16]…一部略)
19860531 慶応大学産婦人科教室の飯塚理八教授らのグループがパーコール法による女児6人の出産に成功したと発表 95〜98%の確率(『朝日』19860531 中村[1987:113],マシア[1987:126],グループ・女の人権と性[1989:21](年表))他に斎藤[1985:94-96]
198606 パーコール法による女児産み分けの技術がすでに開業医の間で普及,実施されていることが明らかになる(『朝日』19860604→グループ・女の人権と性[1989:21](年表))
198608 インドネシアで,合成樹脂による精子分離で女児を産み分け,48人を誕生させたと精子学国際シンポジウムで発表(『読売』0820→グループ・女の人権と性[1989:22](年表))
198609 日本産婦人科学会の「診療・研究に関する倫理委員会」が,パーコール法による男女産み分け問題についての意見書を報告。産み分けの適用を原則として血友病などの伴性劣性遺伝性疾患の予防に限定するなどの内容(『読売』0908→グループ・女の人権と性[1989:22](年表))
198609 産婦人科の開業医で,パーコール法による産み分けが続けられていたることがわかる。失敗し男児出産も(『読売』0911→グループ・女の人権と性[1989:23](年表))
198611 日本産婦人科学会,「パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床応用に対する見解」を会告として発表。重い伴性劣性遺伝性疾患を回避するためにのみ行われるべきとして,実施の登録報告を義務づける(グループ・女の人権と性[1989:23](年表)
(以上,「出生前診断・選択的中絶について何が語られているか」該当箇所も参照のこと)
慶応大学の倫理委員会 伴性遺伝病への対応に限ることに(中村桂子[1987:128-130])他に三雲夏生[1988]・田村昭蔵[1988]・篠原睦治[1987]
妊娠中絶の項も参照のこと
◆立岩 真也 199906 男女産み分けについてのコメント,『AERA』
◆篠原 睦治 19871015 「科学的産み分け法の諸問題──特に「伴性遺伝病予防」にかかわって」 日本臨床心理学会編[1987:213-246]
◆三雲 夏生 19880630 「男女産み分けと倫理」 岡本・馬場・古庄編[1988:187-195]
◆田村 昭蔵 19880630 「産み分けの効果と倫理の接点は何か」 岡本・馬場・古庄編[1988:196-215]
◆根村 直美 199110 「男女産み分けの議論をめぐって」 お茶の水女子大学生命倫理研究会[1991:059-073]
◆根村 直美 19921030 「生命はどこまで選べるのか──出生前診断と男女うみわけ」 お茶の水女子大学生命倫理研究会[1992:161-189]
■人工受精を用いる方法(1-2)-2)・精子銀行
人工受精・体外受精一般については別の文書で紹介を行うことにする。
「精子銀行」
・「しばしば”凍結精子法の父”と言われている故H・J・マラーは,国立精子銀行の設立を40年ものあいだ説きつづけたが,彼は,不妊に悩む人々だけでなく,すべての親がその銀行を利用することを望んでいたのである。この”精子選択計画”によって,「深く幅のある知性,好奇心,他人に誠実で暖かい心,他人との調和性,人生や事業に喜びを感じる心,鋭い観賞力,表現や創造性に富む能力」などの点で優れた人々の精子を広範囲に利用できるようになると,彼は考えていたのだ。」(Howard & Rifkin[1977=1979:119])
・「民間の精子銀行……現在では,シカゴ,ロサンゼルス,ニューヨーク,オマハ,セントポールなど12の都市に」(Howard & Rifkin[1977=1979:115])
・クライオジェニック「社のAID用精子は,わずか35人の”十分に審査された”男性から提供されているが,オルセンによれば,「街からブラリと入って来て精子提供者になるというようなことは絶対にありえない。精子提供者として申請する者の75ないし80%は,3世代にわかる調査や血液テストを含む審査でふるい落とされる。」また,この審査の一部として,精子提供者は肉体的特徴,職業に関する情報,宗教,知能指数など調査書に記入しなければならないという。
医師が患者の女性のためにクライオジェニック社に接触してきた場合,同社は顧客になるかもしれ(p.118)ないその女性に対して「精子提供社一覧表」を送るが,それには同社の精子提供者のさまざまな特徴が記されている。女性の方は,それぞれの特徴について自分が重要と思う順に順位をつけて返送し,クライオジェニック社は彼女の指示に合う保存精子を選び出すのである。」(Howard & Rifkin[1977=1979:117-118])
・合衆国には精子銀行があって,精子のカタログ販売がされている。ノーベル賞をとった科学者の精子を集め,特にIQの高い女性にのみ人工受精するという計画があり,すでに10名以上の子供が生まれてきている(長尾他[1987])
・精子銀行がファイルしている提供者の情報は,年齢,体重,身長,民族,眼の色,髪の毛……などのからだの情報,それに本人や祖父母までの病歴(精神異常,放射線被爆,ぜんそく,アレルギー……),そして学歴,職業,特技,趣味(向井承子[1990:143])
・文献:1984の「NHK特集」で報道→『いま,生命を問う』(NHK取材班[1984]),Howard & Rifkin[1977=1979:115-122],『朝日』19800301夕→山田卓生[1987:237]
・AID:慶応大学で1949年から5000人の人が 3人を産んだ人が3人 必ずしも不妊に対する対応とはいえない(大田[1983:72]) 精子の提供者は明かされないが 「頭のよいこと,目の色,髪,教育程度,良家庭の者などまで要求する人もあるが,現在では頭脳の点を除くと…」(山口哲(医科歯科大)『婦人公論』1959→大田[1983:57])医学生の精子が用いられている(大田[1983])
・体外受精に関して 東北大学・徳島大学…で基準が出される 「医療行為」に限定(大田[1983]) 徳島大学の基準の作成過程について斎藤[1985]
・イギリスのエドワーズ,ステプトー──世界で初めて体外受精を成功させた2人──が凍結胚銀行の設立と出生前養子とを提案(『ニューヨーク・タイムズ』1982.02.11→斎藤[1985:103-104])
・アメリカにおける受精卵供給会社の設立計画(1984.02.04各紙→斎藤[1985:104])
■遺伝子レベルでの変更を行う(1-2)-3)
現在のところ不可能(のようだ 1992)
出生後行われる遺伝子治療については→2-3) 遺伝子治療
「1982年1月26日の欧州会議は,「遺伝的形質の不可侵性」を基本的人権として認め,それを保障するた(p.282)めに適切な法律を制定すべきであると勧告するに至った。また西ドイツでは政府委員会として「体外授精,ゲノム分析および遺伝子治療のための作業グループ」が結成され,法的見地からの勧告も用意されているという。」
(大谷實[1990:282-283])
■妊娠中絶
◆「胎児条項Q&A」(制作:玉井)
早期発見しても多くの場合治療できるわけではない →中絶
調査例 6つの産婦人科研究機関の集計で,7101〜8105 1517人が羊水診断を受
け,69胎児に染色体異常が発見され,胎児死亡を除く58例が人工中絶
(日下[1987:82])
脊髄脱の子供を持った母親が次に妊娠した時に,再び脊髄脱の子供が産まれる可
能性は2% 高年出産の場合0.003% そのため妊娠16〜18週に血液検査をして,
異常が認められれば妊娠を中絶(英国)しかし血液検査で異常値が得られても必
ずしも胎児に奇形があるとは限らない
(福間[1987:174])
男女の産み分けのための妊娠中絶
羊水検査あるいは絨毛診断の結果による中絶
・遺伝子に関係する場合 男の子供だけに発病する血有病・色弱(→伴性劣性遺
伝性疾患) 性別を判断し中絶 (米本[1987:34ff])
・男性を産みたいという要求,というか社会規範の存在
例えばインド かなりが羊水チェックによって 女性の場合──インドの場合,
女性が結婚する場合,女性の家庭に多額の出費が必要──中絶
(Arditi et al.eds.[1984])
(→「出生前診断・選択的中絶について何が語られているか」■「外国」)
◆Arditi, Rita ; Duelli Klein, Renate ; Minden, Shelly eds. 1984
Test-Tube Women: What Future for Motherhood ?, Pandora Press
=1986 ヤンソン由実子訳,『試験管の中の女』,
共同通信社(部分訳)234+12p. <91> ※
※は立岩研究室にあり。
■胎児治療
◆立岩真也『私的所有論』第9章注1(p.428)より
「胎児(胎内・出生前)治療についてHubbard[1984=1986:177-186]、相馬廣明[1988]、Kolata[1990=1992]、岩中督・土田嘉昭[1995]」
一部については治療可(別記)
狭義には,胎児に病気や異常が認められたとき,これを治療するために,子宮
内にある状態のままで,妊婦のからだを通して外科的な処置や,薬物の投与を行
うこと(胎児の胎内治療)をいうが,広義には異常の認められた胎児を人工妊娠
中絶することや,胎外生活が可能な時期に,放置すれば子宮内で胎児が死亡する
危険が認められたとき,帝王切開などの方法で早期に分娩させ,治療を行うこと
まで含まれる。
1胎児の胎内(子宮内)治療には次の2つがある。
1)胎児の状態を改善させる治療(たとえば胎児の発育遅延や早産による未熟児
を防止するために,妊婦に安静を命じたり,薬物の投与を行う。胎児仮死に際し
て,妊産婦に酸素や薬物の投与を行う)。
2)胎外生活が困難な時期で,放置すれば子宮内で胎児が死亡する危険が考えら
れるような異常が発見されたときに,妊婦を通して行われる治療。
最近脚光を浴びている胎児胎内治療とは,2)の胎児の病気を出生前に治療する
方法を指すことが多い。
2)にはさらに,
a妊婦のからだを通じて薬物を投与する(たとえば,胎児のある種の不整脈に
対して,妊婦にジギタリスを投与する。しかしこれによって妊婦にジギタリス中
毒を引き起こすことがある)。
b妊婦のお腹から子宮に針をさして,羊水や臍帯の血管,あるいは胎児の腹腔
内に,薬物の投与や,輸血をする(たとえばRh血液型不適合による,胎児水種
の場合,子宮内胎児への輸血が行われる)。
c子宮内の胎児に対して手術が行われる(たとえば,胎児の尿道閉鎖の場合,
妊婦の腹壁から,胎児の肪胱に細い管を入れて,胎児の尿が子宮の中の羊膜腔に
流れ込むようにする)。
(グループ・女の人権と性[1989:16]…全文)
他に相馬廣明[1988]
◆Arditi, Rita ; Duelli Klein, Renate ; Minden, Shelly eds. 1984 Test-Tube Women: What Future for Motherhood ?, Pandora Press=1986 ヤンソン由実子訳,『試験管の中の女』,共同通信社(部分訳)234+12p. <91> ※
◆Hubbard, Ruth 1984 =1986 「個人の勇気だけではどうにもならない」,Arditi et al. eds.[1984=1986:159-187] <268,428,433>
◆グループ・女の人権と性 編 1989 『アブナイ生殖革命』,
有斐閣選書792,270p. <90,98,429> ※
◆岩中 督・土田 嘉昭 1995 「出生前治療──アメリカの現況と将来の展望」,
武谷編[1995:100-106]
◇岡本 直正・馬場 一雄・古庄 敏行 編 1988
『医療・医学研究における倫理の諸問題』,東京医学社,376p. ※
◆相馬 廣明 1988 「胎内治療における倫理的諸問題」,
岡本他編[1988:262-274] <428,429>
◇武谷 雄二 編 1995 『出生前診断をめぐって』,
医歯薬出版,別冊・医学のあゆみ,141p.
◆相馬 廣明 1988 「胎内治療における倫理的諸問題」,岡本他編[1988:262-274] <428,429> ※
※は生存学資料室にあり。
■新生児スクリーニング
◆フェニルケトン尿症(PKU)
◆「マス・スクリーニングの収支バランス
わが国の現在のマス・スクリーニングの費用を計算してみると,一人の新生児に必要な先天性代謝異常五疾患のスクリーニング費用は約九百円であり,甲状腺機能低下症の費用は約千円である。一方,わが国の一年間の出生数を一五〇万人とすると,一年間のスクリーニングに要する費用は四億四〇〇〇万円である。しかし,もしスクリーニングを行なわず,すべてのフェニールケトン尿症,甲状腺機能低下症,ホモシスチン尿症の患児の知能が遅れ,施設に収容され教育されると課程すると,その費用は約二二億六〇〇〇万円に達すると考えてよい。」
(北川照男・大和田操 1985 「わが国で実施されている対象疾患,方法,疫学とその特徴」,『医学のあゆみ』133-13:163,下記p.87に引用)
◆「……ところが,これらの検診の効果自体にいくつもの根本的な疑義が出され,発生予防体制化の”加熱ぶり”からくる歪みが明らかになってきました。
たとえば,フェニールケトン尿症のなかに一過性の高フェニールアラニン血症(良性)といわれるものがしだいに多く発見され,これは発育が正常でなんの症状も出てこないものです。また,患者発見率の半数を占めるヒスチジン血症は,知能障害をおこすと考えられていたのに対し,結果的に全例が正常であることが明らかとなり,今では生化学的な個人差にすぎないといわれるに至っています。しかし,いったん施策として始められると,変更がほとんどなされないのが行政の体質です。」
(山本勝美 19871015 「母子保健とはなにか──保健所の歴史をふまえて」,日本臨床心理学会編[1987:61-118])
■参考
◆先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査に関する見解
(日本産科婦人科学会会告1988.1)
■この文書の執筆・編集の履歴
901009 「生命工学・先端医療データファイル」から一部読み込み「選択的中絶
・と・障害者/女性の運動」に「生命の質に関わる技術」加える。
901204 「選択的中絶・と・…VER1.20」 この中の「…技術」をVER.1.00とする
910420 VER.1.10 約460行 50行×10頁 生命倫理研究会で配布
920728 わずかの加筆・修正 1008 加筆・修正 [43行×14頁・50行×12頁]