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フェニルケトン尿症(PKU)

phenylketonuria, PKU


◆遺伝的な酵素欠陥のため、アミノ酸の一種であるフェニルアラニンが分解でき
ない。この代謝異常のため、放っておくと脳の成長が阻害されて知恵遅れになる。
早期に発見し、フェニルアラニンを抑えた食餌療法を行えば障害は回避される。
1961年 新生児の足の裏からとった微量の血液で遺伝病者を発見する方法が開発さ
れる。
1962年、マサチューセッツ州で半強制的なフェニルケトン尿症スクリーニング法が
成立。
その後6年間で50州中、43州及び1特別区で類似の法律が成立
だが、問題:検査の正確さ、差別 治療・援護体制がととのっていないままの検査
学会が警告 だが、スクリーニングの立法化は進む(米本[1987:25-26])
他にCooke[1977=1978:116-120]

◆その人の体の適当な組織の細胞を取ってきて、いったん細胞培養して、培養し
ている細胞にその酵素をつくる遺伝子を入れて、その組織にその遺伝子を入れた
細胞を戻してやるといった治療もできるかも けれどもまだまだ
(市川[1988:477-478])(参考:遺伝子治療)

◆「マス・スクリーニングの収支バランス
 わが国の現在のマス・スクリーニングの費用を計算してみると、一人の新生児に
必要な先天性代謝異常五疾患のスクリーニング費用は約九百円であり、甲状腺機能
低下症の費用は約千円である。一方、わが国の一年間の出生数を一五〇万人とする
と、一年間のスクリーニングに要する費用は四億四〇〇〇万円である。しかし、も
しスクリーニングを行なわず、すべてのフェニールケトン尿症、甲状腺機能低下症、
ホモシスチン尿症の患児の知能が遅れ、施設に収容され教育されると課程すると、
その費用は約二二億六〇〇〇万円に達すると考えてよい。」
(北川照男・大和田操 1985 「わが国で実施されている対象疾患、方法、疫学と
その特徴」、『医学のあゆみ』133-13:163、下記p.87に引用)

◆「……ところが、これらの検診の効果自体にいくつもの根本的な疑義が出され、
発生予防体制化の”加熱ぶり”からくる歪みが明らかになってきました。
 たとえば、フェニールケトン尿症のなかに一過性の高フェニールアラニン血症
(良性)といわれるものがしだいに多く発見され、これは発育が正常でなんの症状
も出てこないものです。また、患者発見率の半数を占めるヒスチジン血症は、知能
障害をおこすと考えられていたのに対し、結果的に全例が正常であることが明らか
となり、今では生化学的な個人差にすぎないといわれるに至っています。しかし、
いったん施策として始められると、変更がほとんどなされないのが行政の体質です。」
山本勝美 19871015 「母子保健とはなにか──保健所の歴史をふまえて」
日本臨床心理学会編[1987:61-118])

◆2002/04/09 先天性疾患理由に保険加入拒否 旭川医科大教授らが調査
 共同通信ニュース速報 [2002-04-09]
◆2002/04/18 <保険拒否>先天性の病気持つ子供に郵便局が
 毎日新聞ニュース速報
◆先天性疾患児の簡保加入を一律拒否 郵政事業庁
 朝日新聞ニュース速報 [2002-04-18]
◆2002/04/19 簡易保険への加入容認を要請へ 加入拒否問題で厚労相
 朝日新聞ニュース速報
◆2002/04/23 遺伝差別問題に取り組みへ=簡保などで加入拒否−日本医師会
 時事通信ニュース速報
◆2002/04/23 簡保加入拒否問題「真正面から取り組む」 医師会
 朝日新聞ニュース速報
 →遺伝子検査と保険

長尾 龍一・米本 昌平 編 1987 『メタ・バイオエシックス──生命科学と法哲学の対話』、日本評論社、279p. <433>
米本 昌平 1987 「遺伝病スクリーニングと優生学の狭間」,長尾・米本編[1987:21-40] <258,313,371-372,432,439>



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