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天疱瘡


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last update:20180915


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■紹介  天疱瘡

◆定義(平成30年度 難病情報センターより)
・概要:天疱瘡は、自分の上皮細胞を接着させる分子に対する抗体により、皮膚や粘膜に水疱(みずぶくれ)あびらんを生じる自己免疫性水疱症です。厚生労働省の衛生行政報告例の統計によれば、天疱瘡で特定疾患医療受給者証を交付されている患者さんは日本全国で5500人ほど(平成25年度)となっています。世界での報告を見ると、年間発生率が100万人あたり1人から100人までと、人種および地域による差は大きいようです。南米やアフリカの一部には、落葉状天疱瘡を風土病として持つ地域があることも知られています。発症年齢は40〜60歳代に多く、また性別では女性にやや多い傾向があります。表皮または粘膜上皮の細胞どうしを接着させるデスモグレインというタンパクに対する自己抗体(自分自身を攻撃してしまうIgG抗体のこと)が病気を起こすことがわかっています。このような自己抗体が作られる詳しい原因は、まだわかっていません。
・遺伝について:遺伝することは、通常ありません。
・症状:大部分の症例は、尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡に分類されます。尋常性天疱瘡では、口腔を中心とした粘膜に水疱とびらんが生じます。痛みを伴い、病変が広範囲になると食事がとれなくなることがあります。粘膜優位型では粘膜症状が主体となりますが、粘膜皮膚型では全身に水疱・びらんが広がって、皮膚の表面から大量の水分が失われたり、感染を合併する場合があります。落葉状天疱瘡では、頭、顔面、胸、背中などに落屑(皮膚がフケ状に剥がれたもの)を伴う赤い皮疹(紅斑)や浅いびらんが生じます。重症例では全身の皮膚に拡大することもありますが、粘膜症状は見られません。
・治療法:病気の原因となる自己抗体の産生と働きを抑える免疫抑制療法を行います。現状では、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の内服が中心的な役割を果たします。ステロイドの総投与量を減らして副作用の頻度を下げるために、免疫抑制剤を併用することもあります。病気の勢いを抑えきれない場合には、血漿交換療法、免疫グロブリン大量静注療法、ステロイドパルス療法、などを併用することもあります。


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■関連サイト

◆難病情報センター 天疱瘡
 [外部リンク]天疱瘡
[外部リンク]稀少難治性皮膚疾患研究 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班
[外部リンク]公益社団法人 日本皮膚科学会
[外部リンク]天疱瘡・類天疱瘡友の会


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■ニュース

◆2018/7/20 「医療・生活 みんなの診察室」
『新潟日報モア』
口腔の荒れ・舌の痛み ウイルス性疾患の恐れ
 口の奥が熱く、粘膜が真っ赤になり口の中全体が荒れて熱いものが食べられません。その後、舌の奥にデコボコしたものができ、食後に痛みます。ひどいときは寒気がして首から肩まで凝ってしまいます。舌が痛くて寝られないときもあります。(十日町市・65歳女性)
 口腔(こうくう)内が荒れて喉などが痛むことと、首や肩に広がる舌の強い痛みが同時なのか、時間差があったのか。また、口腔内の荒れは粘膜のただれや水疱(すいほう)ができていたかなど、詳細がわかると診断の助けになると思います。一般的に口の中が赤く荒れて、咽頭や舌に疼痛(とうつう)を生じる病気には、真菌による口腔カンジダ症や、単純性ヘルペス感染や水痘・帯状疱疹(ほうしん)ウイルス感染などのウイルス性疾患、自己免疫疾患である天疱瘡(てんぽうそう)や類天疱瘡、A群溶血性レンサ球菌の感染による溶連菌感染症などが挙げられます。がん治療による口腔の放射線治療や化学療法の影響も考えられますが、今回の相談にがん治療についてのコメントがないことから除外できると考えます。舌の疼痛が著しい場合、神経痛であることも考えられ、三叉(さんさ)神経痛や舌咽神経痛なども疑われます。症状に時間差がある場合は口腔内の荒れとは別の疾患である可能性や、水痘・帯状疱疹ウイルス感染に付随して後発的に発症する神経合併症であることも考えられます。口腔内の荒れが継続している場合は、お近くの耳鼻咽喉科や口腔外科を、口腔内の症状は消失したが舌の疼痛が続いている場合はペインクリニックの受診をお勧めします。(新潟市民病院・歯科口腔外科)

◆2012/12/5 「患者を生きる 免疫と病気 天疱瘡E」
『朝日新聞』
 
◆2012/12/8 「患者を生きる 免疫と病気 天疱瘡D」
『朝日新聞』
 11年前に「尋常性天疱瘡」を発症した福岡県の歯科医、山口修さん(55)の皮膚や粘膜のただれは「軽くなったり、重くなったり」の症状を繰り返した。症状がぶり返した場合、のむステロイドの量が倍になり、「興奮状態」になって眠れなくなる。その勢いを借りて、休日には1日12時間以上もパソコンに向かい、調べた天疱瘡の情報を小冊子にまとめた。天疱瘡の症状は、口やのどの粘膜から始まることが多いが、それを最初に診察する歯科医の認識が足りない。自身の体験を踏まえて、そう感じていた。「天疱瘡の早期発見は歯科医の務めだと伝えたかった」。病気に負けてたまるか、という気持ちが後押しした。2003年10月、小冊子を大学の同級生や歯科医師の団体などに送った。そのころ、これまでとは違う症状がおしりや太ももに現れた。水ぶくれが小さく、赤みの広がりもない。痛みの感じも違っていた。久留米大病院皮膚科の主治医、橋本隆教授(61)は「どうやら『落葉状天疱瘡』に移行したようです」といった。「尋常性」よりも患者数が少なく、症状が比較的軽い型だという。「(病気の型が変わる)移行がまれにある」と本に書いてあったが、まさか自分が経験するとは思わなかった。波はあったものの、次第に症状は軽くなった。3年前からは、新しい水ぶくれがめったにできなくなった。今は2カ月ごとに血液などを検査し、再発がないか、眼を光らせている。昨年3月、患者会の「天疱瘡・類天疱瘡友の会」発足に参画し、副会長を引き受けた。「患者同士や医師らが情報交換する場が必要だ」と長年考えてきた橋本さんに口説かれた。天疱瘡だけでなく、主に高齢者の皮膚や粘膜に水ぶくれができる別の免疫の病気「類天疱瘡」も合わせ、九州を中心に約80人が会員になっている。友の会で話をすると、外見による誤った偏見を受けたり、ステロイドの後遺症に悩んだりする人が多い。医療面の支援に恵まれ、症状が落ち着いた自分は幸運だと思う。病気の詳しい情報と自分の体験を語り続け、一人でも多くの患者にこう伝えたい。「望みを捨てずに頑張ってください」

◆2012/12/7 「患者を生きる 免疫と病気 天疱瘡C」
『朝日新聞』
 免疫の異常で、皮膚や粘膜に水ぶくれやただれができる「尋常性天疱瘡」と診断された福岡県の山口修さん(55)は、久留米大病院の皮膚科に通院しながら、ステロイドや免疫抑制剤による治療を始めた。2002年6月。今度は口の粘膜がはがれた。食べ物が触れると激痛が走る状態だったが、「きちんと食べて、栄養もとらないと治らない」と自分に言い聞かせた。食事のたびに表面麻酔薬を口に含み、まひさせながら食べた。歯科医という職業柄、診察中はマスクやめがねが欠かせない。これらが触れて刺激を受ける鼻やほお、耳の裏などの皮膚が特にただれやすい。ある日、顔のただれが化膿し、膿がで出始めた。ステロイドなどで免疫力が弱くなっており、細菌に感染した。ガーゼなどをはり合わせて加工し、顔の膿がたれないように工夫した。昼休みには近くの内科クリニックで抗生剤の点滴を受けた。ウイルスが神経を刺激する帯状疱疹も経験した。神経を針で刺されたような激痛が、下の前歯から始まり、ほおや耳、目のまわりへ広がった。全身の痛みを軽くする「作戦」を常に考えていた。刺激の少ない赤ちゃん用のシャンプーやボディーソープで洗うとシャワーが少し楽になる。縫い目やタグが皮膚に当たると新たな水ぶくれができる。シャツや下着は裏返しにして、でこぼこが少ない状態で着た。靴下の締めつけ部が痛いので、ゴム糸を切って、「ルーズソックス」のようにした。顔の状態を見るため、手鏡をバッグに入れており、「まるで女子高生みたい」と家族で笑った。数カ月たつうちに、症状は次第に和らいでいった。病気の原因となる「抗体」を血液検査で調べながら、毎日のむステロイドの量を慎重に減らしていった。ところが、最初の量の半分以下になったとき、症状が再び悪化した。ステロイドの量を少し増やしただけでは効果は見られず、結局、のみ始めたころの「大量投与」の量に戻された。「なんじゃこれは。また最初からかい…… 」。治療開始から1年半の間に、このような「再発」を3度、繰り返した。

◆2012/12/6 「患者を生きる 免疫と病気 天疱瘡B」
『朝日新聞』
 福岡県の歯科医、山口修さん(55)は2001年秋、のどに痛みを感じた。近くの耳鼻咽喉科で内視鏡検査を受けると、粘膜が白くただれていた。ステロイドをのむとおさまったが、1カ月後にまた痛み出し、再びステロイド治療を受けた。翌年春、今度は頭の皮膚がただれた。「ノミか、ダニに刺されたか」と思い、近くの皮膚科診療所に診てもらった。しかし、原因はわからない。ちょうど髪を染めたばかりで「毛染めに(皮膚が)負けたんかねえ」といわれた。かさぶたが髪の毛にからむため、丹念にシャンプーをして、清潔を保つようにした。ところが、皮膚のただれはかえって広がった。やがて、鼻の皮膚が破れて赤くなり、背中や胸にも水ぶくれが出始めた。皮膚科の医師は「自分は患者をみたことがないが、天疱瘡かもしれん」といい、専門医として久留米大病院(福岡県久留米市)皮膚科の橋本隆教授(61)を紹介された。4月末、症状を見た橋本さんはすぐに天疱瘡だと確信。背中の皮膚の組織検査をすると表皮の内部が壊れており、天疱瘡の特徴がはっきり見えた。血液などからも、自分の皮膚や粘膜を攻撃してしまう「抗体」が見つかった。5月の連休明け、「尋常性天疱瘡」と正式に診断された。「天疱瘡は、死亡率が高い皮膚疾患だ」と30年前、歯科大の学生時代に習っていた。不安が募ったが、それはまだステロイドがなかったころの情報。完全には治せない難病だが、今はステロイドと免疫抑制剤の併用療法など、症状や苦痛を軽くする治療法があるという。橋本さんから「ぜひ、入院して治療を」と勧められた。ただ、入院すれば自分の歯科医院を休診することになり、大勢の患者に迷惑がかかる。「敵を知らないと闘病できない」。最新の医学書を読み、インターネットで海外の情報も集めた。その結果、通院しながら治療を受けることを決心した。とはいえ症状は厳しい。まるで全身やけどを負ったようで、どんな姿勢でも痛い。まともに睡眠が取れなかった。「無重力で宙に浮いたまま寝られたら」。宇宙飛行士がうらやましかった。

◆2012/12/5 「患者を生きる 免疫と病気 天疱瘡A」
『朝日新聞』
 口の粘膜のただれに悩んでいた東京都の女性(62)は2008年春、慶応大病院歯科・口腔外科を受診し、難病の「天疱瘡」の疑いが強まった。内ももやひざの裏にも水ぶくれができ始め、すぐに皮膚科の診察を受けた。歯ぐきの粘膜とももの皮膚の一部を切り取って検査したところ、表皮の内部が壊れる天疱瘡の特徴が見えた。皮膚科の主治医、天谷雅行教授(52)の勧めで入院。組織や血液中にある抗体の検査から、患者がもっとも多い「尋常性天疱瘡」という型だと確定した。すぐに、ステロイドと免疫抑制剤をのんで、免疫反応を抑える治療が始まった。皮膚の水ぶくれには自分で薬を塗った。ただれたところは、体液がしみ出さないようにガーゼでやさしく押さえてから、包帯を巻いた。病院内を歩き回ると、ひざの裏などの包帯がずるずると緩んでしまう。やむなく、病室で毛糸の編み物をしたり、孫が持ってきた大人の塗り絵をしたり。「韓流ドラマ」好きの友人が持ってきたDVDもよく見た。2週間ほどで検査の数値が下がり始め、口や皮膚の痛みもだいぶおさまってきた。「アゲンスト(向かい風)が急にフォロー(追い風)になったと感じ」と驚くほどの効果だった。1か月たらずで退院した。いまも少量のステロイドなどをのみ、新たな水ぶくれができない状態を保っている。ただ、入院中から、ステロイドの副作用である糖尿病に気をつけるよういわれていた。「食べ過ぎに気をつけろという意味かな」と思った。確かに、症状が軽くなるにつれ、食欲が止まらなくなった。外来で通院した帰り道、スーパーの食品売り場でたっぷり試食。これが「呼び水」になってレストランによく駆け込んだ。胴回りは最大で15センチ増えた。もう一つの副作用が骨粗鬆症。以前の骨密度は「実年齢より10歳若い」といわれていたのに、いまは逆に10歳ほど高齢に。テニスなどの激しいスポーツは禁止になった。「でもゴルフは、ボールが止まっているからいいんですって」。体重をあと8キロ減らすことを目標に、きょうもクラブを振るう。

◆2012/12/4 「患者を生きる 免疫と病気 天疱瘡@」
『朝日新聞』
 「わっ、何これ。のどがしみて、痛い」。車のエンジンをかけ、エアコンの冷風を顔に受けたとたん、思わずせき込んだ。」東京都に住む女性(62)がのどの不調に気づいたのは2007年暮れ。ゴルフの練習に出るときだった。次第に痛みは増したが「おせちを作らなきゃいけないし……」と我慢した。翌年の正月休みが終わったころ、近くの耳鼻咽喉科を受診し、うがい薬をもらった。しかし、歯が茶色になるほどうがいをしてものどの痛みは消えない。友人の皮膚科医に相談しても原因は分からなかった。やがて口内炎が次々にでき始めた。ほおや舌の粘膜のただれが常に3〜4カ所あり、歯ぐきは「吸血鬼のように」真っ赤になった。「私の歯、まさか抜け落ちるの?」。3月ごろには、歯肉がそげていくように感じた。近くの大学病院の口腔外科に行くと単純疱疹(ヘルペス)ウイルスの感染が疑われ、抗ウイルス薬が処方された。しかしやはり症状は変わらなかった。虫歯が1本もないのが自慢だった。なのに痛くてちゃんと歯を磨けない。若い歯科医が「きたない口だなあ」とつぶやくのを聞き、悲しくなった。痛みが増すにつれ、食事が難しくなった。辛いものやしょっぱいものがしみる。サラダドレッシングやトマトの酸味も絶対だめだ。食べられるのは、コーンスープや具なしの茶わん蒸し、プリン、おかゆ……。ホウレン草や白身魚はミキサーにかけ、のどに流し込んだ。「それは天疱瘡という病気かもしれない」。心配した息子が歯科クリニックの知人の歯科医に相談すると、聞いたこともない病名が飛び出した。皮膚や口・のどの粘膜がはがれ、やけどのような水ぶくれやただれができる難病。自分の皮膚や粘膜を攻撃する「抗体」ができてしまう、免疫の病気だ。知人の紹介で4月下旬、天疱瘡に詳しい慶応大病院(東京都新宿区)歯科・口腔外科の角田和之さん(44)を訪ねた。舌や歯ぐきのただれを見て、角田さんも天疱瘡を疑った。このころ、内ももやひざの裏の皮膚にも、水ぶくれができ始めていた。



*作成:戸田 真里
UP:20180915 REV:
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