仮の妊娠
the tentative pregnacy
「多くの女性に聞き取り調査をした結果、妊娠に新たな事態が生じていることが確かめられた。胎児のいない妊娠がそれである。そのために、妊娠を気づかれないようにマタニティ・ウェアを着るのを避けて毎日少しずつ膨らむお腹を大きなセーターで隠すという、冷たい沈黙が広まっていた。夢を断つ恐れを抱きながら、最初のかすかな胎動にも気づかないふりをしたり無感動を装い、ひたすら検査結果を知らせる電話を待っていた。」(Rothman[1994=1996:298])
(他に「仮の妊娠」(the tentative pregnacy)という表題のRothman[1986]、Gates[1994=1996:206-208]、Black[1994=1996]を参照のこと)。第5章に述べた、他者が現われる、現われ始めるという経験を、自らが制御、抑制しなければならないということであり、重要な指摘である。
◆Black, Rita Beck 1994 =1996 「生殖遺伝検査と妊娠喪失女性の体験」,Rothenberg ; Thomson eds. [1994=1996:315-344] <433> ※
◆Gates, Elena A. 1994 =1996 「出生前検査は妊婦に役立つのか」,Rothenberg ; Thomson eds.[1994=1996:193-215] <433>
◆Rothenberg, Caren H. ; Thomson, Elizabeth J. eds. 1994 Women & Prenatal Testing : Facing Challenges of Genetic Technology, Ohio State Univ. Press=1996 堀内成子・飯沼和三監訳,『女性と出生前検査安心という名の幻想』,日本アクセル・シュプリンガー出版,374p. <433> ※
◆Rothman, Barbara Katz 1986 The Tentative Pregnacy : Prenatal Diagnosis and the Future of Motherhood, Pandora Press <99,433> ※
◆――――― 1994 =1996 「仮の妊娠過去そして現在」,Rothenberg ; Thomson eds.[1994=1996:297-314] <433> ※
cf.出生前診断
*以上(今のところ)立岩『私的所有論』(→『私的所有論 第2版』)第9章注02・431頁からほぼそのまま
*情報を付加できるとよいと思っています。
※は生存学書庫所蔵